特開2015-160623(P2015-160623A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160623(P2015-160623A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】流体貯留袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20060101AFI20150811BHJP
   E03B 3/03 20060101ALI20150811BHJP
   E03B 11/00 20060101ALI20150811BHJP
   B65D 90/04 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   B65D90/02 K
   E03B3/03 B
   E03B11/00
   B65D90/04 B
   B65D90/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-36022(P2014-36022)
(22)【出願日】2014年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藍原 寿明
【テーマコード(参考)】
3E070
【Fターム(参考)】
3E070AA03
3E070AB02
3E070AB03
3E070DA15
3E070JB02
3E070KA08
3E070KB02
3E070KC02
3E070RA01
3E070RA30
3E070SA01
3E070SA20
3E070VA01
(57)【要約】
【課題】タンク内に収容される袋についての鋭意研究により、大きなタンクの内壁に沿う状態で収容装備されるための構造に言及することができて、具体化が可能となる流体貯留袋の製造方法を提供する。
【解決手段】可撓性を有するシート材sからなるとともに流体貯留用のタンク内側に収容可能な流体貯留袋の製造方法において、タンクの頂壁内面に沿う状態で配置可能な袋頂壁と、タンクの底壁内面に沿う状態で配置可能な袋底壁との双方に一体化されるとともにタンクの側壁内面に沿う状態で配置可能な袋側壁2を、複数の短冊状のシート材sをそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部6,6が連結一体化されてなる接合部aを有する状態で繋ぎ合わせて周状のものとする製法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート材からなるとともに流体貯留用のタンク内側に収容可能な流体貯留袋の製造方法であって、
前記タンクの頂壁内面に沿う状態で配置可能な袋頂壁と、前記タンクの底壁内面に沿う状態で配置可能な袋底壁との双方に一体化されるとともに前記タンクの側壁内面に沿う状態で配置可能な袋側壁を、複数の短冊状の前記シート材をそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部が連結一体化されてなる接合部を有する状態で繋ぎ合わせて周状のものとする流体貯留袋の製造方法。
【請求項2】
前記袋底壁及び/又は前記袋頂壁を、複数の短冊状の前記シート材をそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部が連結一体化されてなる接合部を有する状態で繋ぎ合せることにより形成する請求項1に記載の流体貯留袋の製造方法。
【請求項3】
前記シート材をゴム製のものとして用意し、未加硫ゴムを用いての加硫接着により前記端部どうしを接合させて前記接合部が形成される接合工程を有する請求項1又は2に記載の流体貯留用袋の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程を、隣合う短冊状の前記シート材の端部どうしが未加硫ゴムを介して重ねられた状態で加硫接着されることにより行う請求項3に記載の流体貯留用袋の製造方法。
【請求項5】
前記シート材として、その厚み方向の中間に補強材が配された複合材料のものを用意する請求項1〜4の何れか一項に記載の流体貯留用袋の製造方法。
【請求項6】
前記補強材として合成樹脂製の布を用いる請求項5に記載の流体貯留用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水タンクや石油タンクなどの流体タンク内壁に沿う状態で収容装備されて、それら水や石油などの流体を貯留可能な流体貯留袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の流体を貯留する給水タンクや石油タンクは、その機能や環境への悪影響などから、漏洩しないことが絶対条件である。そのため、予め設定された耐用年数が経ると、問題が無くても新品に換えたり、付け換えたりしていることもある。
【0003】
通常、流体貯留用のタンクは、多数の壁面部材を、ボルトや溶接などの手段を用いて接合一体化することで構成されている。従って、耐用年数に満たない時期であっても、地盤沈下や地震などにより、タンクが不等沈下したり傾いたりすると、タンクに歪が生じ、それが原因となって接合部などから内部流体が漏洩するおそれがある。
また、発電所に設置される純水タンク、ホウ酸タンク、汚水タンク、或いは化学工場などに設置される各種の薬液タンクにおいては、タンク内壁の腐食を考慮する必要もある。
【0004】
そのため、従来においては、特許文献1に示されるように、タンクの底を二重壁構造にして強化したり、特許文献2にて開示されるように、タンク周囲にドーナツ状の新設タンクを配置した二重タンク構造のものが作られている。しかしながら、地震などの地殻変動が起こった際の歪の問題が軽減されることはあるが、根本的に解決するものではない。
【0005】
そこで、特許文献3においては、タンクの内側に水密性の袋体を設ける内外二重構造とすることにより、タンクの傾きや地震による衝撃にも袋体が追従でき、従って、漏れが無いように改善できる技術を示している。これにより、外側となるタンク自体の密閉性条件を緩和しながらも、全体としての漏洩防止性能が向上することが改善可能な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−035587号公報
【特許文献2】特開平11−256865号公報
【特許文献3】特開2000−282522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献3にて開示される袋体(流体貯留袋)は、各種の合成樹脂から成る旨の記載や、タンク内面に沿う形状のものとすることに関しては記載されている。
しかしながら、引用文献3においては、単に「袋体」としか記載されていないため、給水タンクや石油タンクなどの大型なタンクに適合した大型の袋とするために、どのように構成するのかについて、また、どのようにして作るのかについては不明なものであった。
【0008】
本発明の目的は、タンク内に収容される袋についての鋭意研究により、大きなタンクの内壁に沿う状態で収容装備されるための構造に言及することができて、具体化が可能となる流体貯留袋の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、可撓性を有するシート材sからなるとともに流体貯留用のタンクT内側に収容可能な流体貯留袋の製造方法において、
前記タンクTの頂壁内面31aに沿う状態で配置可能な袋頂壁1と、前記タンクTの底壁内面33aに沿う状態で配置可能な袋底壁3との双方に一体化されるとともに前記タンクTの側壁内面32aに沿う状態で配置可能な袋側壁2を、複数の短冊状の前記シート材sをそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部6,6が連結一体化されてなる接合部aを有する状態で繋ぎ合わせて周状のものとすることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流体貯留袋の製造方法において、
前記袋底壁3及び/又は前記袋頂壁1を、複数の短冊状の前記シート材sをそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部6,6が連結一体化されてなる接合部aを有する状態で繋ぎ合せることにより形成することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の流体貯留用袋の製造方法において、
前記シート材sをゴム製のものとして用意し、未加硫ゴム10,11を用いての加硫接着により前記端部6どうしを接合させて前記接合部aが形成される接合工程を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の流体貯留用袋の製造方法において、
前記接合工程を、隣合う短冊状の前記シート材の端部どうしが未加硫ゴムを介して重ねられた状態で加硫接着されることにより行うことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の流体貯留用袋の製造方法において、前記シート材として、その厚み方向の中間に補強材が配された複合材料のものを用意することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の流体貯留用袋において、前記補強材として合成樹脂製の布を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、次のような作用効果が得られる。給水タンクや石油タンクなどの側壁内面に沿う袋側壁は、頂壁や底壁に比べて、相当な長さのものとなり、従って、可撓性を有するシート材により作製することが困難になることが予測される。
そこで、複数の短冊状のシート材をそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部が連結一体化されてなる接合部を有する状態で繋ぎ合わせて周状のものとすることにより、工場などにおいて予め作製することができ、従って、現場にて繋ぎ合せる苦労なく製作容易に周状の袋側壁を得ることができる。
その結果、大きなタンクの内壁に沿う状態で収容装備されるための構造に言及することができて、具体化が可能となる流体貯留袋の製造方法を、作り易くて生産性に優れるものとして提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、径の大きなタンクに適合する袋頂壁や袋底壁は大径のものとなるから、やはり、袋側壁の場合と同様に、可撓性を有するシート材により作製することは難しいことが予測される。
そこで、複数の短冊状の前記シート材をそれらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部が連結一体化されてなる接合部を有する状態で繋ぎ合せることにより、工場などにおいて予め作製することができる。
従って、現場にて繋ぎ合せる苦労なく製作容易に大径の袋頂壁や袋底壁を作ることができるから、この点からも、生産性に優れる流体貯留袋の製造方法を提供することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、シート材をゴム製として、シート材どうしを加硫接着により繋ぎ合せる接合工程を採用することが可能となる。その結果、強度十分で、かつ、生産性にも優れる接合部を有する合理的な流体貯留袋の製造方法を提供することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、より具体的な構造を持つ接合部の作り方を特定したものであり、シート材どうしを未加硫ゴムを介して重ねて加硫接着させることにより、接着面を十分に広く取ることが可能になり、請求項3に係る発明による前記作用効果を強化することができる利点がある。
【0019】
請求項5の発明によれば、シート材として、その厚み方向の中間に補強材を有する複合材料でなるものを用いるから、基礎強度が格段に向上するようになり、大型タンク用としても十分な強度を有する好ましい流体貯留袋の製造方法とすることができる。この場合、請求項6の発明のように、合成樹脂製の布で構成された補強材を用いればより好都合な製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】流体貯留用袋の全体斜視図
図2】袋側壁の作り方を示し、(a)は短冊状ゴム引布の斜視図、(b)はゴム引布どうしを接合する部分の分解斜視図
図3】袋側壁の作り方を示し、(a)は接合工程を示す斜視図、(b)は所定数のゴム引布が接合一体化された状態を示す展開図
図4】接合部を示し、(a)は加硫接着前の接合部を示す側面図、(b)は接合部の加硫接着中の状態を示す模式的な側面図
図5】袋頂壁の作り方を示し、(a)は所定数のゴム引布が接合一体化された状態の平面図、(b)は外形カット及び孔加工された状態の平面図
図6】給水部上側の作り方を示し、(a)は分解斜視図、(b)は一体化された状態の斜視図
図7】給水部下側の作り方を示し、(a)は分解斜視図、(b)は袋頂壁に一体化された状態の斜視図
図8】袋頂壁と袋側壁との連結接合工程を示し、(a)は分解斜視図、(b)は一体化された状態の斜視図
図9】袋頂壁又は袋底壁と袋側壁との角接合部を示し、(a)は加硫接着前の角接合部を示す側面図、(b)は角接合部の加硫接着中の状態を示す模式的な側面図
図10】袋頂壁のボルト孔形成工程を示し、(a)は補強のゴム引布を設ける分解斜視図、(b)はボルト孔完成状態を示す斜視図
図11】袋底壁と袋側壁との連結接合工程を示し、(a)は分解斜視図、(b)は一体化された状態の斜視図
図12】袋側壁の閉じ方を示し、(a)は非接合部位を示す斜視図、(b)は接合後の状態を示す斜視図
図13】流体貯留袋の折り畳み方を示し、(a)は折り畳み途中の側面図、(b)は所定回折り畳んだ状態を示す側面図
図14】折畳まれた流体貯留袋の紐掛けを示し、(a)は紐掛け箇所の断面図、(b)は紐掛けされた運搬状態の模式的な側面図
図15】汚水タンクへの装着方法を示し、(a)は運搬状態の流体貯留袋を給水口から投入する作用図、(b)はタンク内部で流体貯留袋を広げる様を示す模式図
図16】(a)は、広げられた流体貯留袋のボルト止め状態を示す断面図、(b)はボルト止め構造を示す要部の断面図
図17】ゴム引布の別構造を示し、(a)は5層構造の断面図、(b)はフィルムを有する6層構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による流体貯留用袋、及び流体貯留用袋の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
〔実施例1〕
本発明による流体貯留袋Aは、図1に示すように、袋頂壁1、袋側壁2、袋底壁(図11も参照)3とを有する略円筒状の外観を呈する袋であり、円形フランジ状の給水部4が袋頂壁1の中心に、そして円形フランジ状の取水部5が袋側壁2の下端部に、それぞれ一体的に取付けられている。
この流体貯留袋Aは、図16(a)に示すように、汚水タンクTの内面に沿う形状及び大きさに仕上げられており、汚水タンク(「流体貯留用のタンク」の一例)Tの内袋として機能するものである。つまり、流体貯留袋Aの内装により、汚水タンクTは、内外二重構造の流体貯留タンクとして構成されている。
【0023】
流体貯留袋Aが汚水タンクTに正規に収容装備された状態では、図16(a)に示すように、汚水タンクTの頂壁31内面31aに袋頂壁1が沿っており、汚水タンクTの側壁32内面32aに袋側壁2が沿っており、かつ、汚水タンクTの底壁33内面33aに袋底壁3が沿った状態になっている。つまり、流体貯留袋Aは、タンクTの側壁32内面32aに沿う状態で配置可能な袋側壁2と、タンクTの底壁内面33aに沿う状態で配置可能な袋底壁3と、タンクTの頂壁内面31aに沿う状態で配置可能な袋頂壁1とを有して構成されている。
【0024】
汚水タンクTの頂壁31の中央には、タンク内に汚水(流体の一例)を入れ込んだり点検したりすることが可能な入口部34が形成されている。図16に示すように、入口部34は、円形の取水孔(符記省略)を有する円筒壁35、及びフランジ36を有して構成されている。給水部4の円筒状の給水口4aが円筒壁35の内面に沿い、フランジ部4bはフランジ36の上面側に沿い、かつ、複数箇所でボルト止め可能に構成されている。
取水部5の円筒状の取水口5aが、側壁32に形成されている出口部37の円筒壁38の内面に沿い、小フランジ5bは出口フランジ39の外面側に沿い、かつ、複数箇所でボルト止め可能に構成されている。
また、袋頂壁1の外周端部(袋側壁2の上端部)1aは、タンクTの頂壁31の外周端部に配置される上下向きで多数のボルト・ナット40により、頂壁31の内面31aに沿う状態に吊設可能に構成されている。
【0025】
次に、流体貯留袋Aの各パーツの構成や作り方などについて説明する。
【0026】
〔袋側壁2〕
袋側壁2は、短冊状のゴムシート(「可撓性を有するシート材」の一例であり、以後、シート材と略称する)sの複数を、それらのうちの互いに隣合うものどうしs,sの各端部6,6を連結一体化してなる接合部aを有する状態で一列に繋ぎ合せることにより、ループ状のもの、即ち、環状周壁(図11を参照)として構成されている。そして、袋底壁3及び袋頂壁1は、複数の短冊状のゴムシートsを、それらのうちの互いに隣合うものどうしの各端部6,6、を連結一体化してなる接合部aを有する状態で繋ぎ合せることにより形成されている(図5を参照)。
【0027】
ゴムシートsは、図2(a)や図4,9に示すように、インナーゴム層7、アウターゴム層8、これら両ゴム層7,8の間に積層される芯材(補強材の一例)9との三層によるゴム引布(複ゴム材)に構成されている。汚水側となるインナーゴム層7の材料としては、NBR配合ゴム(低溶出配合)が挙げられるが、それ以外のものでも良い。タンク側となるアウターゴム層8の材料としては、NBR/PVC(ポリマーブレンド配合ゴム:耐候NBR)が挙げられるが、それ以外のものでも良い。芯材9としては、ナイロン66による平織布が挙げられるが、それ以外のものでも良い。ゴムシートsの厚さは1.0〜3.0mmものもが使用される。
【0028】
袋側壁2の製造方法は次のとおりである。まず、図2(a)に示すように、短冊状のゴムシートsを、互いの長手方向を揃えた状態で一対用意し、次いで、図2(b)に示すように、帯状で未加硫(未架橋)の中間ゴムシート10と、未加硫(未架橋)で側面視形状がZ状の宛てゴムシート11,11とを用意する。
そして、図3(a)及び図4(a)に示すように、中間ゴムシート10を挟んで一対のゴムシートs,sどうしの端部6を重ねるとともに、一方のゴムシートsの端部6と中間ゴムシート10の一方の端部とに突合せ、かつ、一方及び他方のゴムシートs,sの各内側シート面12に沿う状態で一方の宛てゴムシート11を当て付ける接合工程を行う。この場合、他方のゴムシートsの端部6と中間ゴムシート10の他方の端部とに突合せ、かつ、一方及び他方のゴムシートs,sの各外側シート面13に沿う状態で他方の宛てゴムシート11を当て付ける。
【0029】
図4(a)に示す状態において、図3(a)及び図4(b)に示すように、一方の宛てゴムシート11と他方の宛てゴムシート11とを一対の押圧片14,15を用いて挟んでの加圧加熱による加硫処理を行う。この加硫処理による加硫接着により、中間ゴムシート10及び両宛てゴムシート11,11が加硫され、これら10,11,11と共に一対の加硫済みのゴムシートs,sも加硫接着されて一体化される箇所である接合部aが形成される。なお、接合部aは、図4(b)に示す状態から更に加硫されて材料が流れ変形するので、加硫後においては、断面形状が、角の殆どない楕円形のような形状を呈するようになる。
【0030】
この一連の工程による加硫接着を繰り返すことにより、図3(b)に示すように、多数の短冊状のゴムシートsを横一列に接合してゆき、所定径の袋側壁2に必要となる周長さを有する展開シートtsを作成する。そして、この展開シートtsの一対の端部どうしを、図4に示す工程による加硫接着を行って周状に繋ぎ合せること(図12等を参照)により、周状(ループ状)の、より具体的には円筒状の袋側壁2とすることができる。
【0031】
〔袋頂壁1〕
袋頂壁1とその製造方法について説明する。まず、図5(a)に示すように、短冊状のゴムシートsの所定数を接合部aにより一列に繋ぎ合せて、所望の径を含んだ大きさの矩形(正方形)ゴムシートksを作製する。この場合の各短冊状のゴムシートsどうしの接合方法(接合工程)は、図2図4に示す袋側壁2の場合と同じである。
【0032】
矩形ゴムシートksができたら、図5(b)に示すように、外周四隅を切り落として所定寸法の円形に仕上げるとともに、中心に給水用の孔16を開けて袋頂壁1を作製する。
なお、袋頂壁1の作製に用いるゴムシートsは、袋側壁2の作製に用いるゴムシートsと長さや幅が同じでも異なっていても良いが、3層のゴム引布の構造は同じであり、符号は同じsを用いるものとする。
【0033】
〔給水部4〕
給水部4とその製造方法について説明する。最初に、短冊状のゴムシートsを、その長手方向に周となる状態に丸めて端部どうしを加硫接着しての一体化により、1個所の接合部aを有する円筒状の給水口4aを作る〔図6(4a)を参照〕。その給水口4aの上端部に所定長さで複数の切り目を入れてから外側に折り曲げ、複数の貼り代17を形成する。
【0034】
図6(a)に示すように、複数の貼り代17の上下双方に、未加硫ゴムなどでなる環状の接着ゴム18を介して環状のゴム引布19(前記短冊状のゴムシートsから環状に切り出したもの)を当て付け、加圧加熱処理してそれら五者(ゴム引布19、接着ゴム18、貼り代17、接着ゴム18、ゴム引布19)を加硫接着により一体化する。その結果、図6(b)に示すように、給水口4aとフランジ部4bとを有する給水部4が作製される。このとき、ボルト取付用の多数の孔20を、フランジ部4bに形成しておくとよい。
【0035】
次に、図7(a)に示すように、給水部4〔図6(b)参照〕の給水口4a下端部に切り目を付け、前述の貼り代17の製法と同じ製作工程を行うことにより、袋頂壁1に取り付けるための複数の貼り代21を作製する。
それから、貼り代21の下側には、孔16と同心状に接着ゴム18を介して袋頂壁1を、かつ、貼り代21の上側には接着ゴム18を介してゴム引布19をそれぞれ当て付けた状態で加圧加熱処理し、加硫接着によりこれら五者(ゴム引布19、接着ゴム18、貼り代21、接着ゴム18、袋頂壁1)を加硫接着により一体化する。
【0036】
なお、前記五者の一体化を行う際は、予め下側の接着ゴム18及びゴム引布19を給水口4aに外嵌させておく。その場合、貼り代21の作製前に下側の接着ゴム18及びゴム引布19を給水口4aに嵌め入れておくのが好都合であるが、貼り代21が形成された後であっても、一旦、それら貼り代21を曲げ戻して、接着ゴム18及びゴム引布19を給水口4aに嵌め入れ可能である。
上記五者の加硫接着により、図7(b)に示すように、給水口4a及び多数の孔20付のフランジ部4bを有して、袋頂壁1に一体化された給水部4が作製される。
【0037】
〔袋底壁3、取水部5〕
袋底壁3の製造方法は、中心の孔16(図5参照)の形成が省略されている以外は袋頂壁1の作製方法と同じであり、円形の大きさも袋頂壁1と同じである。従って、この袋底壁3の作り方の説明は割愛する。
取水部5の構造及び製造方法、並びに袋側壁2への一体化構造及び一体化方法は、大きさは異なるものの、給水部4及びこれを袋頂壁1に一体化する場合と同じである。従って、この取水部5の作り方の説明も割愛する。
【0038】
〔袋頂壁1と袋側壁2との一体化〕
袋頂壁1と袋側壁2とは、図8に示すように、まず、袋頂壁1の外周端の全体を若干長さ下方に(袋側壁2側に)折り曲げて、リング状の垂下外周部1Aを形成する〔図8(a)参照〕。それから、袋頂壁1を、中間ゴムリング22と、内外のゴムリング23,24を伴った状態で、垂下外周部1Aが袋側壁2の上端部に外嵌する状態で袋側壁2に載せ付ける〔図8(b)参照〕。
袋側壁2は、この工程の前に、図8(a)に示されるように、展開シートts〔図3(b)を参照〕の状態から、一対のシート端部2t、2tにおける袋頂壁1側の端部どうしを、図4に示す構造及び方法での加硫接着による接合部aで一体化した状態(略スカート状態)に形成しておく。
【0039】
図9(a)に示すように、中間ゴムリング22は、軸心方向長さの短い円筒状で接着用の未加硫ゴムでなり、袋側壁2の外周面2aの上端部と垂下外周部1Aの内周面25との間に配置される。
内ゴムリング23は、断面形状がL字形状に形成された未加硫ゴムでなり、袋側壁2の内周面2bの上端部と袋頂壁1の底面1aの外周部との間に沿うように当て付けて配置される。
外ゴムリング24は、断面形状がZ字形状に形成された未加硫ゴムでなり、袋側壁2の外周面2aの上端部と、垂下外周部1Aの外周面26と、垂下外周部1A及び中間ゴムリング22それぞれの下端面(符記省略)とに沿う状態に当て付けて配置される。
【0040】
そして、図9(b)に示すように、内ゴムリング23と外ゴムリング24とを一対の押圧片27,28を用いて径方向に挟んで加圧及び加熱する加圧加熱処理を行う。この加圧加熱処理による加硫接着を行う連結接合工程により、中間ゴムリング22及び内外のゴムリング23,24が加硫され、これら22,23,24と共に一対の加硫済みのゴムシートsである垂下外周部1A及び袋側壁2の上端部が、加硫接着によりなる角接合部bによって一体化される。
【0041】
〔袋頂壁1のボルト孔〕
図10(a)に示すように、袋頂壁1の外周と同径の外周を持ち、周方向において複数に分割された円弧状ゴムシートesを用意する。これら円弧状ゴムシートesの下側面には、接着剤(自然架橋接着剤など)を塗布しておく。この円弧状ゴムシートesは、構造としてはゴムシートsと同じもの(ゴム引布)である。
【0042】
それから、図10(b)に示すように、各円弧状ゴムシートesを袋頂壁1の外周端部の上側周方向に、好ましくは隙間無く並べて配置し、接着させる。接着により円弧状ゴムシートesが袋頂壁1に一体化された状態において、それら両者を貫通する状態で多数のボルト孔29を周方向に並べて形成する。
【0043】
〔袋底壁3と袋側壁2との一体化〕
袋底壁3と袋側壁2との一体化工程は、基本、袋頂壁1と袋側壁2との一体化と同じであり、図11に示すように、上下をひっくり返した状態で行われる。なお、この一体化工程に先立ち、袋側壁2の一対のシート端部2t,2tにおける袋底壁3側の端部どうしを、図4に示す構造及び方法での加硫接着による接合部aで一体化した状態(上下両端接合状態)に形成しておく。
【0044】
まず、袋底壁3の外周端の全体を若干長さ下方に(袋側壁2側に)折り曲げて、リング状の折曲外周部3Aを形成する〔図11(a)参照〕。それから、袋底壁3を、中間ゴムリング22と、内外のゴムリング23,24を伴った状態で、折曲外周部3Aが袋側壁2の下端部(貯留袋Aとしての下端部)に外嵌する状態で袋側壁2に載せ付ける〔図11(b)参照〕。
そして、内ゴムリング23と外ゴムリング24とを一対の押圧片27,28を用いて径方向に挟んで加圧及び加熱する加圧加熱処理を行う〔図9(b)参照〕。この加圧加熱処理による加硫接着行う連結接合工程により、中間ゴムリング22及び内外のゴムリング23,24が加硫され、これら22,23,24と共に一対の加硫済みのゴムシートsである折曲外周部3A及び袋側壁2の下端部が、加硫接着によりなる角接合部bによって一体化される。
【0045】
〔袋側壁2の閉塞〕
袋底壁3が袋側壁2に一体化されたら、図12に示すように、袋側壁2の閉じ工程を行う。即ち、図12(a)に示すように、袋側壁2の一対のシート端部2t,2tは、その上下両端部を除く殆どの部分が離れた状態にある。従って、図2〜4に示すゴムシートsどうしの一体化工程(接合工程を含む)と同じ工程を一対のシート端部2t,2tに対して行うことにより、図12(b)に示すように、シート端部2t,2tどうしが接合部aで一体化されて、円筒状の袋側壁2となるように閉塞される。この閉じられて周状の袋側壁2が繋がることにより、流体貯留袋Aの完成状態が得られる。
【0046】
袋側壁2を、袋頂壁1と袋底壁3とを一体化してから最後に閉塞して周状にするのは、加圧加熱による加硫処理をするためのプレス機(図示省略)を取り出せるようにするためである。袋頂壁1や袋底壁3を袋側壁2と一体化するには、角接合部bを形成すべくプレス機又はその一部を袋側壁2の内部に入れておく必要があるから、プレス機又はその一部を取り出してから、最後に袋側壁2を加硫接着により閉塞して周状にするのが好都合である。但し、プレス機の改良やその他の手段で一体化を行う場合など、最初から袋側壁2を周状にしておく手段でも良い。
【0047】
図1図12(b)に示すように、流体貯留袋Aの作製が完成すると、商品としての運搬や汚水タンクTへの搬入が可能となるようにすべく、折り畳んだ出荷状態にする作業が行われる。まず、袋頂壁1と袋底壁3とを互いに離れる方向に引っ張りながら、図13(a)に示すように、袋側壁2を、山折り、谷折りを繰り返すなどして小幅な状態となるように複数に折り畳んでゆく。
そして、図13(a)に示す状態からさらに二つ折りし、図13(b)に示すように、折り畳まれて略棒状になった流体貯留袋Aを作製する。なお、図13(a),(b)は、袋側壁2部分の断面図として描いてある。
【0048】
図13(b)の状態に折り畳められている流体貯留袋Aに、図14(a),(b)にそれぞれ示すように、適宜の間隔で紐30を掛けて行く紐掛け作業を行う。この紐掛け作業により、複数箇所が紐30で締付けられて径の細い棒状が維持されるようにして、出荷状態の流体貯留袋Aoとする〔図14(b)参照〕。
【0049】
次に、流体貯留袋Aを汚水タンクTに内装する装着方法について説明する。
まず、図15(a)に示すように、汚水タンクTの入口部34から流体貯留袋Aoをタンク内に挿入する。
タンク内において、紐30を除去し、図15(b)に示すように、流体貯留袋Aを解すとともに広げて行く復元作業を行う。給水部4は、弾性変形させながら円筒壁35を通して外部に取り出すとともに、取水部5は、円筒壁38を通して出口部37の外部に取り出す。
【0050】
そして、タンク内において元の形状に広げられた流体貯留袋Aは、図16(a)に示すように、袋頂壁1の外周部がボルト・ナット40によって頂壁31の内面31a外周部に固定(吊設)されており〔図16(b)参照〕、フランジ部4bはボルト・ナット41によってフランジ36に固定され、また、小フランジ5bは出口フランジ39にボルト・ナット42によって固定することが可能である。頂壁31の内面31aに袋頂壁1が沿い、側壁32の内面32aに袋側壁2が沿い、底壁33の内面33aに袋底壁3が沿う状態、即ち、汚水タンクTの内面に流体貯留袋Aがほぼ隙間無く沿う状態に収容され、内外二重構造のタンクに構築することができる。
【0051】
〔別実施例〕
短冊状のゴムシートsや円弧状ゴムシートesは、図17(a)に示すように、3つのゴム層7,8、及び2つの芯材9が交互に積層されてなる5層構造のものでも良い。ゴム層7,8は、NBR配合ゴム(低溶出配合)やNBR/PVC(ポリマーブレンド配合ゴム:耐候NBR)などから適宜に選択して設定する。また、芯材9はナイロン66などによる平織布が挙げられる。一例として、インナーゴム層7及び中間ゴム層7はNBR配合ゴムで、かつ、アウターゴム層8はNBR/PVCとする構造が挙げられる。この5層構造のゴムシートsの厚さは1.5〜3.0mmのものが使用可能である。
【0052】
また、図17(b)に示すように、図17(a)に示すゴムシートs(ゴム引布)において、中間ゴム層7に接着処理などを伴ってフィルム43が埋設されているものを用いて、7層構造のゴムシートs(ゴム引布)を用いても良い。
シート材sを、ゴム以外の可撓性を有する材料や、これとゴムとの複合によるもので形成しても良い。また、円弧状ゴムシートesを、ゴムのみからなるシート材で形成しても良い。この7層構造のゴムシートsの厚さの例は1.5〜3.0mmである。
【0053】
袋頂壁1をボルト・ナット40で吊るす構造を省略した構成の流体貯留袋Aや、タンクTの内部に装備されるボルト・ナット40で吊り下げ可能な袋頂壁1を有する流体貯留袋Aとしても良い。また、給水部4を、袋頂壁1を構成するゴムシートsにおける接合部aの無い部分に一体化させても良い。
【0054】
以上述べたように、本発明による流体貯留袋の製造方法により作製された流体貯留袋Aによれば、汚水タンクTなどの流体貯留タンクの内側に装填して、硬い外側のタンクと柔かい内側の袋との内外二重構造の貯留手段を構築することができる。故に、地盤沈下や地震などが生じても、少なくとも内側の流体貯留袋Aはそれに追従して密閉性が維持できるようになるので、長期に亘って漏れの無い信頼性に優れるタンクの実現に寄与できる、という効果を奏することができる。
流体貯留袋Aの素材であるシート材sは、ゴムなどの可撓性を有するものであるから、生産性に優れるとともに、折り畳んで小さくできて持ち運び(運搬)も便利に行える優れものである。さらに、ゴム7,8に補強材9を埋設した複合材料でシート材sを形成すれば、飛躍的に流体貯留袋Aの強度が向上し、耐久性を大きく改善することができる。
【0055】
また、パーツである袋頂壁1、袋側壁2、袋底壁3などを、シート材sとしてゴム引布による短冊状のゴムシートsを加硫接着により繋ぎ合せて大きなものとする構造及び方法を採ることができる。これにより、工場において予め所定の大きさのものに作製しておくことが可能になり、タンク設置場所の現場にて流体貯留袋Aを構築するための施工を行う必要が無い、という点も実用上の大きな利点である。
【符号の説明】
【0056】
1 袋頂壁
2 袋側壁
3 袋底壁
6 端部
9 補強材
10,11 未加硫ゴム
31a 頂壁内面
32a 側壁内面
33a 底壁内面
T タンク
a 接合部
s 可撓性を有するシート材
図1
図2
図3
図4
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図10
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