(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160720(P2015-160720A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/00 20060101AFI20150811BHJP
B66B 29/00 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
B66B23/00 B
B66B29/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-37693(P2014-37693)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000232944
【氏名又は名称】日立水戸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】内山 香緒利
(72)【発明者】
【氏名】三村 一美
(72)【発明者】
【氏名】宇津宮 博文
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA02
3F321AA04
3F321CD20
3F321GA37
(57)【要約】
【課題】非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れた場合でも乗客コンベアの落下を防止できるとともに、建屋側支持梁から外れた非固定側支持梁が再び建屋側支持梁の上に自動的に戻ることが可能な乗客コンベアを提供する。
【解決手段】フレーム4の非固定側支持梁7が設けられている側の水平部において、フレーム4の下方に、フレーム4との間に所定の隙間gを有して設けられた追加建築梁5を有し、追加建築梁5は、2つの建屋側支持梁2a、3aの間の距離が大きくなって非固定側支持梁7が建屋側支持梁3aから外れた場合にフレーム4を支持するとともに、所定の隙間gは、2つの建屋側支持梁2a、3aの間の距離が元に戻る際に建屋側支持梁3aから外れた非固定側支持梁7が再び建屋側支持梁3aの上に戻ることが可能な大きさである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの建屋側支持梁の間に跨って配置されるフレームと、前記フレーム内において無端状に連結されて循環移動する複数の踏段とを有する乗客コンベアにおいて、
前記フレームは、少なくとも一部に水平部を有するとともに、長手方向の少なくとも一方の端部に、前記建屋側支持梁に対して移動可能に載置された非固定側支持梁を有し、
前記フレームの前記非固定側支持梁が設けられている側の水平部において、前記フレームの下方に、前記フレームとの間に所定の隙間を有して設けられた追加建築梁を有し、
前記追加建築梁は、前記2つの建屋側支持梁の間の距離が大きくなって前記非固定側支持梁が前記建屋側支持梁から外れた場合に前記フレームを支持するとともに、前記所定の隙間は、前記2つの建屋側支持梁の間の距離が元に戻る際に前記建屋側支持梁から外れた前記非固定側支持梁が再び前記建屋側支持梁の上に戻ることが可能な大きさであることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記追加建築梁と前記フレームとの間の一部の領域において、通常の状態では前記追加建築梁に常時負荷がかからない程度に前記追加建築梁と前記フレームとの間の隙間を0にする高さ調整部材を有することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記フレームは、長手方向の一方の端部に前記非固定側支持梁を有し、長手方向の他方の端部に、前記建屋側支持梁に対して移動できないように固定された固定側支持梁を有することを特徴とする請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記フレームは、長手方向の両方の端部に前記非固定側支持梁を有し、
前記追加建築梁は、前記フレームの長手方向の両方の端部において、前記フレームの下方に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記追加建築梁は、前記フレームの幅方向への移動を制限するガイドを有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道等を含む乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、2つの建屋側支持梁の間に跨って配置されるフレームと、このフレーム内において無端状に連結されて循環移動する複数の踏段とを有している。そして、このフレームは、長手方向の少なくとも一方の端部に、建屋側支持梁に対して移動可能に載置された非固定側支持梁を有している。
【0003】
このような非固定側では、例えば地震発生時や強風時などにおいて、乗客コンベアが設置された建屋が揺れ、2つの建屋側支持梁の間の距離が大きくなって、非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れる可能性がある。これに対応する為、建屋側に特許文献1に示すような回動手段と衝撃緩和のための弾性部材とで構成された落下防止装置を設けて対応した例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような構造では、非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れた場合に乗客コンベアが落下するのを防止することはできるものの、地震等が治まった後に自動的に元に戻ることはできないという問題があった。
【0006】
また、そもそも非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れることのないようにかかり代を大きく取るという方法も考えられるが、建屋側の制限等により大きなかかり代を確保できない場合もある。
【0007】
本発明の目的は、非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れた場合でも乗客コンベアの落下を防止できるとともに、建屋側支持梁から外れた非固定側支持梁が再び建屋側支持梁の上に自動的に戻ることが可能な乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成するため、例えば、2つの建屋側支持梁の間に跨って配置されるフレームと、前記フレーム内において無端状に連結されて循環移動する複数の踏段とを有する乗客コンベアにおいて、前記フレームは、少なくとも一部に水平部を有するとともに、長手方向の少なくとも一方の端部に、前記建屋側支持梁に対して移動可能に載置された非固定側支持梁を有し、前記フレームの前記非固定側支持梁が設けられている側の水平部において、前記フレームの下方に、前記フレームとの間に所定の隙間を有して設けられた追加建築梁を有し、前記追加建築梁は、前記2つの建屋側支持梁の間の距離が大きくなって前記非固定側支持梁が前記建屋側支持梁から外れた場合に前記フレームを支持するとともに、前記所定の隙間は、前記2つの建屋側支持梁の間の距離が元に戻る際に前記建屋側支持梁から外れた前記非固定側支持梁が再び前記建屋側支持梁の上に戻ることが可能な大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れた場合でも乗客コンベアの落下を防止できるとともに、建屋側支持梁から外れた非固定側支持梁が再び建屋側支持梁の上に自動的に戻ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。尚、各図において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0012】
図1は、乗客コンベアの全体構成を説明する側面図である。
図1に示す乗客コンベア1は、下階建屋2と上階建屋3との間に跨って設置されている。そして、乗客コンベア1は、2つの建屋側支持梁2a、3aの間に跨って配置されるフレーム4と、このフレーム4内において無端状に連結されて循環移動する図示しない複数の踏段とを有している。フレーム4は、少なくとも一部に水平部を有する。このフレーム4の水平部は、エスカレータや傾斜型の動く歩道の場合は、上部水平部と下部水平部である。フレーム4の上部水平部と下部水平部との間には傾斜部が設けられている。尚、図示しないが水平型の動く歩道の場合は、フレーム4の全体が水平部となる。そして、このフレーム4は、長手方向の一方の端部に、建屋側支持梁3aに対して移動可能に載置された非固定側支持梁7を有している。また、フレーム4は、長手方向の他方の端部に、建屋側支持梁2aに対して移動できないように固定された固定側支持梁9を有している。
【0013】
図2は、
図1のA部の拡大図である。
図1、
図2に示すように、フレーム4の非固定側支持梁3aが設けられている側の水平部において、フレーム4の下方に、フレーム4との間に所定の隙間gを有して設けられた追加建築梁5を有している。
【0014】
この追加建築梁5によって、例えば地震等により2つの建屋側支持梁2a、3aの間の距離が大きくなって非固定側支持梁7が建屋側支持梁3aから外れた場合に、隙間gがなくなって、フレーム4を支持することができるので、乗客コンベア1が落下するのを防止することができる。
【0015】
さらに、隙間gは、例えば地震等が治まって2つの建屋側支持梁2a、3aの間の距離が元に戻る際に、建屋側支持梁3aから外れた非固定側支持梁7が再び建屋側支持梁3aの上に戻ることが可能な大きさに設定されている。これによって、例えば地震等が治まった場合に、建屋側支持梁3aから外れた非固定側支持梁7が再び建屋側支持梁3aの上に自動的に戻ることが可能となる。尚、この隙間gの大きさとしては、例えば1〜2mmが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0016】
また、この隙間gが設けられていることにより、建屋側支持梁3aの上に非固定側支持梁7が載置された通常の状態では追加建築梁5には負荷がかからず、また、非固定側支持梁7が建屋側支持梁3aから外れて追加建築梁5に負荷がかかったとしても自動的に戻るようになっているので、追加建築梁5に常時負荷がかかりっぱなしになることはないので、追加建築梁5の強度を一時的な負荷に耐えられる強度に抑えることも可能である。
【0017】
ここで、フレーム4の長手方向における追加建築梁5の寸法8は、2つの建屋側支持梁2a、3aの間の距離が最も大きくなった場合でもフレーム4を支持できる大きさに設定する。
【0018】
図3は、
図1のA部の拡大図の変形例である。
図2との違いは、追加建築梁5とフレーム4との間の一部の領域において、通常の状態では追加建築梁5に常時負荷がかからない程度に追加建築梁5とフレーム4との間の隙間を0にする高さ調整部材10を有する点である。高さ調整部材10としては、例えばボルトやライナ等を用いることができる。尚、高さ調整部材10は、通常の状態では追加建築梁5に常時負荷がかからない程度に一部の領域の隙間を0にしているものであり、非固定側支持梁7が建屋側支持梁3aから外れていない場合は、負荷がかからない程度にフレーム4にぎりぎり接しているだけである。そして、通常でない状態、すなわち、非固定側支持梁7が建屋側支持梁3aから外れた場合には、負荷がかかり、フレーム4を下方から支持する。
【0019】
図4は、
図1のB方向から見た要部拡大図である。
図4に示す通り、追加建築梁5は、フレーム4の幅方向への移動を制限するガイド6を有している。これにより、フレーム4が幅方向にズレないため、地震等が治まったとき、非固定側支持梁7が元の位置に戻る際に、幅方向においても適切な位置に戻ることが出来る。尚、
図4では図示していないが、このガイド6は、フレーム4の幅方向両側に設けられている。
【0020】
以上説明した通り、本実施例によれば、非固定側支持梁が建屋側支持梁から外れた場合でも乗客コンベアの落下を防止できるとともに、建屋側支持梁から外れた非固定側支持梁が再び建屋側支持梁の上に自動的に戻ることが可能となる。
【0021】
尚、
図1で説明した実施例では、一端非固定、他端固定の場合を示しているが、これに限られず、両端非固定としてもよい。その場合は、追加建築梁5を建屋側支持梁2aの側にも追加する。すなわち、追加建築梁5は、フレーム4の長手方向の両方の水平部において、フレーム4の下方に設けられる。
【0022】
また、建屋側支持梁2aと建屋側支持梁3aは、同じ建屋内に設けられていてもよいし、それぞれ異なる建屋に設けられていてもよい。また、乗客コンベアの一例であるエスカレータに限定されず、乗客コンベアの他の例である動く歩道に適用してもよい。尚、本明細書においては、踏段の用語は、エスカレータにおける乗客載置部に限定されず、動く歩道の場合の乗客載置部も含まれるものとする。
【0023】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、これまでの実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 乗客コンベア
2 下階建屋
2a 建屋側支持梁
3 上階建屋
3a 建屋側支持梁
4 フレーム
5 追加建築梁
6 ガイド
7 非固定側支持梁
8 追加建築梁の寸法
9 固定側支持梁
10 高さ調整部材
g 隙間