【解決手段】耐火物からなる成形装置を用いて熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程を備えるガラス板の製造方法であって、成形工程でガラス板を成形するに先立って熔融ガラスを成形装置に流すことなく、耐火物からなる成形装置を焼成する焼成工程と、焼成工程で焼成する成形装置の温度を検出する検出工程と、を備え、成形工程では、焼成工程後、検出工程で検出した成形装置の温度が、熔融ガラスが軟化する温度以下となる前に、熔融ガラスの成形を開始する。
前記成形装置は、前記熔融ガラスをオーバーフローさせてガラス板を成形する成形体と、前記オーバーフローしたガラス板の進行方向に対して、順次温度が下がるように複数の部屋に分割する断熱板を有する徐冷炉と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐火物で構成された設備装置を低粘性の熔融ガラスに曝してガス抜きを行うと、耐火物に損耗が生じる場合があり、また、耐火物からのガス抜き(耐火物からの発泡)に時間を要していた。
【0005】
そこで本発明は、熔融ガラスによる耐火物の損耗を防ぎつつ、耐火物からガスを短時間で発泡させることができるガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、耐火物からなる成形装置を用いて熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記成形工程でガラス板を成形するに先立って前記熔融ガラスを前記成形装置に流すことなく、前記耐火物からなる成形装置を焼成し、前記耐火物が含むガスを放出させる焼成工程と、
前記焼成工程で焼成する成形装置の温度を検出する検出工程と、を備え、
前記成形工程では、前記焼成工程後、前記検出工程で検出した成形装置の温度が、前記熔融ガラスが軟化する温度以下となる前に、前記ガラス板の成形を開始する、
ことを特徴とする。
【0007】
前記成形装置は、前記熔融ガラスをオーバーフローさせてガラス板を成形する成形体と、前記オーバーフローしたガラス板の進行方向に対して、順次温度が下がるように複数の部屋に分割する断熱板を有する徐冷炉と、を備える、ことも可能である。
【0008】
前記焼成工程では、前記成形体を、1200℃から1600で少なくとも10時間、焼成する、ことが好ましい。
【0009】
前記耐火物は、ジルコン、ジルコニア、YPO
4、Al
2O
3、SiO
2、SiC、SiN及びそれらの組合せからなる、ことが好ましい。
【0010】
本発明の別の一態様は、熔融ガラスからガラス板を成形する耐火物からなる成形装置を備えるガラス板の製造装置であって、
前記成形装置でガラス板を成形するに先立って前記熔融ガラスを前記成形装置に流すことなく、前記耐火物からなる成形装置を焼成する成形炉と、
前記成形炉で焼成する成形装置の温度を検出する検出装置と、を備え、
前記成形装置は、前記検出装置が検出した前記成形炉で焼成した成形装置の温度が、前記熔融ガラスが軟化する温度以下となる前に、前記熔融ガラスの成形を開始する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熔融ガラスによる耐火物の損耗を防ぎつつ、耐火物からガスを短時間で発泡させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係るガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置について説明する。
【0014】
ガラス板の製造方法は、熔解工程と、清澄工程と、攪拌工程と、供給工程と、成形工程と、徐冷工程と、切断工程と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0015】
図1は、熔解工程〜切断工程を行うガラス板の製造装置100を模式的に示す図である。当該装置100は、
図1に示すように、主に溶解装置200と、成形装置300と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、ガラス供給管204,205と、を有する。
【0016】
熔解工程では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および/または電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程は、清澄槽202において行われ、清澄槽202内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれる酸素やSO
2の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により、成長し液面に浮上して放出され、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
攪拌工程では、ガラス供給管204を通って供給された熔融ガラスを、攪拌槽203においてスターラ等によって熔融ガラスを攪拌して均質化する。
供給工程では、ガラス供給管205を通して熔融ガラスが、成形装置300に供給される。
【0017】
成形工程では、成形装置300において、熔融ガラスをシートガラス(ガラス板)に成形し、ガラスの流れを作る。本実施形態では、成形装置300を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。なお、成形工程では、スロットダウンドロー法を用いて成形を行ってもよく、また、フロート法、ロールアウト法、リドロー法等の他の方法が用いられてもよい。
徐冷工程では、徐冷炉において、シートガラスが所望の厚さになり、平面歪が生じないように、さらに、熱収縮率が大きくならないように、冷却される。
切断工程では、切断装置400において、成形装置300で成形されたシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板は、さらに、所定のサイズに切断され、目標のサイズのガラス板が作製される。この後、ガラス端面の研削・研磨が行われた後、洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0018】
図2及び
図3は、成形装置300の構成を主に示す図であり、
図2は主に成形装置300の概略の側面図を示し、
図3は成形装置300の概略の正面図を示す。
成形装置300で成形されるガラス板は、例えば、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板あるいはカバーガラスに好適に用いられる。フラットパネルディスプレイ用ガラス基板としては、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板、酸化物半導体薄膜トランジスタが形成されるディスプレイ用ガラスが挙げられる。また、成形装置300で成形されるガラス板は、その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、ポリシリコンTFTを用いた液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
【0019】
成形装置300は、成形工程を行う成形炉40及び徐冷工程を行う徐冷炉50を備える。成形炉40及び徐冷炉50は、耐火レンガ、耐火断熱レンガ、あるいはファイバー系断熱材等の耐火物で構成された炉壁に囲まれて構成されている。具体的には、成形炉40及び徐冷炉50は、耐火物である、ジルコン、ジルコニア、YPO
4、Al
2O
3、SiO
2、SiC、SiN及びそれらの組合せからなる。成形炉40は、徐冷炉50に対して鉛直上方に設けられている。なお、成形炉40及び徐冷炉50をあわせて炉30という。炉30の炉壁で囲まれた炉内部空間に、成形体310と、雰囲気仕切り部材320と、冷却ローラ330と、冷却ユニット340と、搬送ローラ350a〜350hと、温度センサ355,360a〜360c(
図3参照)が設けられている。
【0020】
成形体310は、
図1に示すように、ガラス供給管205を通して熔解装置200から流れてくる溶融ガラスを、シートガラスGに成形する。これにより、成形装置300内で、鉛直下方のシートガラスGの流れが作られる。成形体310には、セラミック等の耐火物によって構成された細長い構造体であり、
図2に示すように断面が楔形状を成している。成形体310の頂部には、熔融ガラスMGを導く流路となる溝312が設けられている。溝312は、成形装置300に設けられた供給口311(
図3参照)においてガラス供給管205と接続される。ガラス供給管205を通して流れてくる熔融ガラスMGは、溝312を伝って流れる。溝312の深さは、溶融ガラスMGの流れの下流ほど浅くなっており、溝312から溶融ガラスが鉛直下方に向かって溢れ出るようになっている。溝312から溢れ出た熔融ガラスMGは、成形体310の両側の側壁を伝わって鉛直下方に流下する。側壁を流れた溶融ガラスMGは、
図2に示す成形体310の下方端部313で合流し、1つのシートガラスGが成形される。これによって、シートガラスGは、徐冷炉50に向かって流下する。
【0021】
成形体310の下方端部313の下方近傍には、雰囲気仕切り部材320が設けられている。雰囲気仕切り部材320は、一対の板状の断熱部材(例えば、成形体310と同一の耐火物)であって、シートガラスGを厚さ方向の両側から挟むように構成されている。すなわち、雰囲気仕切り部材320には、シートガラスGと接触しない程度に隙間があけられている。雰囲気仕切り部材320は、炉30内部空間を仕切ることにより、雰囲気仕切り部材320の上方の炉内部空間と下方の炉内部空間との間の熱の移動を遮断する。
【0022】
雰囲気仕切り部材320の下方には冷却ローラ330が設けられている。冷却ローラ330は、シートガラスGの幅方向の両端部近傍のシートガラスG表面と接触して、シートガラスGを下方に引き下げて、両端部近傍においてシートガラスGの厚さを所望の厚さにするとともに、シートガラスGを冷却(急冷)する。
【0023】
冷却ローラ330の下方には冷却ユニット340が設けられている。冷却ユニット340は、冷却ローラ330を通過したシートガラスGを冷却する。この冷却ユニット340による冷却により、シートガラスGの反りが抑制される。
【0024】
冷却ユニット340の下方には、搬送ローラ350a〜350hが所定の間隔で設けられ、シートガラスGを下方向に牽引する。冷却ユニット340の下方の空間は、徐冷炉50の炉内部空間となっている。徐冷炉50の炉内部空間は、雰囲気仕切り部材320により複数の空間に隔てられ、各空間での熱の移動を遮断している。搬送ローラ350a〜350hのそれぞれは、ローラ対を有し、シートガラスGの両側を挟むようにシートガラスGの幅方向の両側端部に設けられている。
【0025】
成形炉40及び徐冷炉50の炉壁S1、S2、S3a〜S3cは、セラミック、耐火レンガ、耐火断熱レンガ、あるいはファイバー系断熱材等の耐火物で構成され、成形装置300、搬送ローラ350a〜350h等を覆って、成形炉40及び徐冷炉50の内部空間を形成するように設置される。炉壁S1、S2、S3a〜S3c、雰囲気仕切り部材320により、区切り面411,412,413a〜413cで分割された複数の内部空間が形成され、各内部空間の温度が、後述するヒータ370により調整される。さらに、炉外部空間S3cの下方には、フロア414上に壁で区切られた空間S4(切断空間)が設けられている。
【0026】
成形炉40の炉内部空間には、熔融ガラスMG、炉内部空間、成形体310等の温度を計測、検出する温度センサ355(
図3参照)が設けられている。また、徐冷炉50の炉内部空間には、熔融ガラスMG、炉内部空間等の温度を計測、検出する温度センサ360a〜360c(
図3参照)が設けられている。また、炉壁S1〜S4には、炉壁S1〜S4の温度を計測、検出する温度センサ415a〜415e(
図3参照)が設けられている。温度センサ355,360a〜360c、415a〜415eは、例えば、測温抵抗体の温度センサ、熱電対の温度センサ、熱膨張式の温度センサ、赤外線測定方式の温度センサ等から構成され、後述する焼成によって変化する温度を検出する。
なお、温度センサ355,360a〜360c、415a〜415eは、センサの種類によって設置位置が異なり、熔融ガラスMG、炉内部空間等の温度を計測できる任意の位置に設置できる。また、以下では、温度センサ360a〜360c、温度センサ415a〜415eを総称する場合、温度センサ360、温度センサ415と記載する。
【0027】
炉30の内壁には複数のヒータ370が鉛直方向に沿って配置されている。ヒータ370は、例えば、抵抗加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱、誘導加熱によって発熱するシーズヒータ、カートリッジヒータ、セラミックヒータ等から構成され、熔融ガラスMGの温度、炉30内の温度を調節する。ヒータ370は、シートガラスGを成形する際には、炉30内を下方に進むときにシートガラスGが徐冷されるように、鉛直方向に沿って温度勾配を形成する。
【0028】
図4は、成形装置300における温度を制御する部分の構成を示す図である。成形装置300は、温度センサ355,360,415と、ヒータ370と、検出部301と、制御部302と、を備える。以下、ヒータ370の発熱量を制御することにより、成形装置300(成形体310、雰囲気仕切り部材320)、成形炉40及び徐冷炉50の炉壁S1、S2、S3a〜S3cを焼成して、ガス抜きする方法(発泡を促進する方法)について説明する。ここで、焼成とは、耐火物を加熱することにより、耐火物の隣り合う原料粒子間のすき間を小さくして、耐火物の気孔率、硬度を変化させることをいう。焼成を行うと原料粒子間のすき間が小さくなるため、耐火物のガス抜きを行うことができる。また、耐火物を加熱することによって耐火物を酸化反応させ、耐火物の反応余地をなくすことによって、耐火物の構造が変化しない安定状態にすることができる。
【0029】
まず、検出部301は、温度センサ355,360,415が検出した検出データに基づいて、成形体310の温度、炉30内の温度、炉壁S1、S2、S3a〜S3cの温度、熔融ガラスMGの温度等を検出し、検出した結果を制御部302に渡す。制御部302は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、ヒータ370を動作させて、炉30内の温度等を制御する。制御部302は、例えば、作業者からの指示、検出部302が検出した検出結果に基づいて、ヒータ370が発する熱量を制御し、炉30内の温度等を上昇させる。
【0030】
図5は、成形体の温度と焼成時間との関係を示す図である。制御部302は、温度センサ355が検出した検出データに基づいて検出部301により検出された成形体310の温度を、ヒータ370を動作させて、焼成温度T1まで上昇させる。ここで、焼成温度T1は、製品版のガラス板を成形する温度より高い温度であり、例えば、1200℃〜1600℃である。ガラスを成形する温度はガラス組成によって変化するものであるため、焼成温度T1はこのガラスを成形する温度より高い温度であれば、任意である。制御部302は、焼成時間t1だけ時間をかけて、成形体310の温度を焼成温度T1まで上昇させる。ここで、焼成時間t1は、例えば、10時間〜200時間であり、成形装置300を構成するセラミック等の耐火物の原料から水分、バインダを除去し、原料の粒子間距離を近づけ、かつ、酸化反応、構造変化等を促進させることができる時間であれば任意である。成形体310の内部にガスが存在すると、成形体310が熔融ガラスMGに曝された際に、熔融ガラスMGがガスを吸収・吸着して、熔融ガラスMG内にガスを取り込むおそれがあるため、原料の粒子間距離を近づけてガス抜きを行う。また、成形体310の温度が焼成温度T1に達するまでに、焼成時間t1だけ時間をかけることにより、成形体310の表面と内部との温度差や収縮差によって生じる破損を防ぐことができる。また、耐火物からなる成形体310を熔融ガラスMGに曝すことなく焼成すると、短時間で実施できる。熔融ガラスMG中に含まれる空気(酸素)量と、成形体310の周囲(炉壁に囲まれた領域)の空気(酸素)量とを比較すると、成形体310の周囲の酸素量の方が極めて多い。耐火物の焼成は、耐火物の反応余地をなくすために、耐火物を酸化反応させている。このため、酸素量が多いと、耐火物の酸化反応が促進され、熔融ガラスMGを用いない耐火物の焼成は、熔融ガラスMGを用いた耐火物の焼成より短時間になる。焼成条件である、昇温速度(焼成温度T1/焼成時間t1)、最高温度(焼成温度T1)、保持時間(焼成時間t2−t1)によって、成形装置300の気孔率、耐熱性、強度等の特性が決まるため、ガス抜き及び成形体310の耐久性の向上に重要である。昇温速度は、例えば、1℃/時間〜100℃/時間であるが、耐火物の厚さ、種類によって任意に変更できる。
【0031】
次に、制御部302は、成形体310の温度が焼成温度T1に達した後、ヒータ370を動作させ、焼成時間t2になるまで焼成温度T1を維持(保持)する。焼成温度T1を保持する保持時間t2−t1は、例えば、10時間〜200時間であり、原料の粒子同士が結合し収縮できる時間であれば任意である。制御部302は、焼成時間t2まで、成形体310の焼成を行う。また、成形体310の温度を焼成温度T1に保持することにより、成形体310だけでなく、成形炉40及び徐冷炉50の内部空間の天井面、側壁面(炉壁S1、S2、S3a〜S3c)、雰囲気仕切り部材320を焼成することもできる。加熱して焼成すると、耐火物は、隣り合う原料粒子が除々に接着し、粒子間のすき間が小さくなると同時に全体が収縮する。焼成することによって、ガスを捕捉した空間及び粒界間隙が小さくなりガスを放出でき、さらに、セラミック等で構成された、成形炉40(成形炉40の内部空間の炉壁S1、S2)、成形体310、雰囲気仕切り部材320、冷却炉50(冷却炉50の内部空間の炉壁S3a〜S3c)を収縮させることにより、焼成後において耐火物の変形を抑制することができ、ガラス板の製造中(操業中)の成形炉40、冷却炉50、雰囲気仕切り部材320の変形を抑制することもできる。また、耐火物である成形炉40、冷却炉50、雰囲気仕切り部材320を加熱することによって耐火物を酸化反応させ、耐火物の反応余地をなくすことによって、耐火物の構造が変化しない安定状態にすることができる。また、熔融ガラスMGで耐火物を覆うことなく焼成することにより、炉内の酸素を用いて耐火物を酸化できるため、短時間で焼成を行うことができる。なお、炉壁S1、S2、S3a〜S3c、雰囲気仕切り部材320は、熔融ガラスMGに曝されないため、熔融ガラスMGが炉壁S1等の内部にあるガスを取り込むおそれはない。このため、成形体310を焼成する焼成温度T1より低い温度で、炉壁S1、S2、S3a〜S3c、雰囲気仕切り部材320を焼成することができる。また、熔融ガラスMGを用いることなく成形体310等を焼成できるため、短時間で、簡便で効率的にガス抜きを行うことができる。また、焼成時間t2、保持時間t2−t1を長くすることにより、耐火物の表面(表層)だけでなく、内部も焼成できるため、ガス抜きを促進させることができ、また、耐火物の変形をより抑制することもできる。
【0032】
次に、制御部302は、焼成時間t2経過後、ヒータ370の発熱量を抑制し、又は、ヒータ370を停止し、成形体310を冷却する。そして、検出部301は、冷却中の成形体310の温度を検出し、成形体310の温度が、熔融ガラスMGが軟化する軟化温度T2になる焼成時間t3になる前に、成形装置300は、成形体310の溝312、つまり、セラミック等の耐火物で構成された部分に熔融ガラスMGを流し、シートガラスGの成形を開始する。ここで、軟化温度T2とは、ガラスが軟化し変形し始める温度をいい、約107.6poiseの粘度に相当するガラスの温度(例えば930℃〜980℃)である。成形体310の温度を、焼成温度T1から軟化温度T2まで下げて、耐火物の酸化反応を終了(抑制)させることにより、耐火物が収縮し、耐火物からの(再)発泡を防止している。しかし、成形体310の温度を下げすぎると、シートガラスGを成形する際の熔融ガラスMGの温度と成形体310の温度との温度差が生じる。この温度差があると、熔融ガラスMGが冷却され、また、成形体310が破損するおそれがあり、その破損した部分からガスが放出し、熔融ガラスMGに吸収される。このため、この温度差は小さい方がよい。成形体310において、シートガラスGを成形する際の熔融ガラスMGの温度は、約105.7〜107.5poiseの粘度に相当する温度(例えば1000℃〜1200℃程度)である。従って、熔融ガラスMGの温度と成形体310の温度との温度差は、好ましくは20℃〜270℃であり、より好ましくは20℃〜220℃である。なお、軟化温度T2は、例えば、ガラス徐冷点(約1013dPa・sの粘度に相当する温度)、ガラス歪点(約1014.5dPa・sの粘度に相当する温度)でもよい。成形体310を冷却することにより、耐火物をさらに収縮でき、ガラス板の製造中(操業中)の耐火物の変形を抑制することができる。
【0033】
以上説明したように、セラミック等で構成された耐火物を焼成することにより、耐火物のガス抜きを行うことができ、熔融ガラス内にガスが入り込むことを防ぐことができる。また、熔融ガラスを用いずに焼成を行うことにより、短時間で、簡便で効率的に耐火物のガス抜きを行うことができる。また、焼成によって耐火物を予め収縮させることにより、耐火物の変形を抑制することもできる。また、耐火物を加熱することによって耐火物を酸化反応させ、耐火物の反応余地をなくすことによって、耐火物の構造が変化しない安定状態にすることができる。
【0034】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0035】
本実施形態のガラス板に用いるガラスは、例えば、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダライムガラス、アルカリシリケートガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリアルミノゲルマネイトガラスなどを適用することができる。なお、本発明に適用できるガラスは上記に限定されるものではない。
【0036】
焼成時の温度を計測、検出する位置は、耐火物が熔融ガラスMGに曝される位置が好ましいが、成形炉40及び徐冷炉50の内部空間の任意に位置、炉壁S1、S2、S3a〜S3cの任意の位置、成形体310で成形されたシートガラスGの任意の位置であってもよい。また、焼成温度T1、軟化温度T2は、成形装置300が備える複数の温度センサ355,360,415のうち、いずれの温度センサが検出した温度であってもよく、また、平均値、最大値、最低値であってもよい。また、焼成時間t1,t2,t3は、成形体310、成形炉40、徐冷炉50、雰囲気仕切り部材320を焼成してガス抜きをできればよく、成形体310等のサイズ、材料等によって任意に変更することができる。
【0037】
溶解装置200、成形体310、成形炉40、徐冷炉50、雰囲気仕切り部材320等を備える成形装置300、ガラス供給管204,205等を組み上げたガラス板の製造装置100を焼成窯に入れて、ガラス板の製造装置100全体を焼成することにより、耐火物のガス抜きを行うこともできる。組み上げたガラス板の製造装置100全体を焼成することにより、耐火物全体を焼成でき、熔融ガラスに曝されない部分についても反応余地をなくすことができる。また、焼成後すぐに、ガラス板の製造装置100を用いて、ガラス板を製造することもできる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
焼成を行った耐火物と、焼成を行っていない耐火物とをそれぞれ用いて、ガラス板を成形した際に、ガラス板中に含まれるガスの量(泡の数)を比較した。耐火物は、ジルコン製の耐火レンガ(耐火材)を用いた。また、耐火物の焼成は、12時間かけて温度を1300℃まで上昇させ、1300℃を12時間維持することにより行った。また、熔融ガラスの組成は、SiO
2:60質量%、B
2O
3:10質量%、Al
2O
3:19.5質量%、CaO:5.3質量%、SrO:5質量%、SnO
2:0.2質量%である。この熔融ガラスを1270℃まで上昇させて、焼成を行った耐火物と、焼成を行っていない耐火物とをそれぞれ用いて、ガラス板を成形、徐冷した。成形、徐冷したガラス板中に含まれる泡の数を比較した結果を表1に示す。
【表1】
【0040】
表1に示すように、耐火物の焼成を行うことにより、熔融ガラス(ガラス板)が耐火物からガスを取り込むことを防ぐことができ、成形したガラス板中に含まれるガス(泡)を抑制することができた。
【0041】
以上の結果から、ジルコン製の耐火物を、1300℃で、少なくとも10時間焼成することにより、耐火物のガス抜きを行うことができた。
【0042】
(実施例2)
成形時の熔融ガラスMGの温度と焼成時の成形体310の温度との温度差がもととなり、耐火物からなる成形体310の表面と内部との収縮差によって生じる破損を確認した。成形時の熔融ガラスMGの温度を1000℃〜1200℃とし、焼成条件を実施例1と同一にし、焼成期間終了後に熔融ガラスMGを流し始める(シートガラスGを成形し始める)成形体310の温度T2を変化させて、成形体310の破損を確認した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0043】
表2に示すように、熔融ガラスMGを流し始める際の成形体310の温度を930℃以上にすることにより、成形体310の破損を抑制することができ、破損した成形体310からガスが放出して、熔融ガラスMGに吸収されることを防止することができた。
【0044】
以上の結果から、熔融ガラスを流し始める際のジルコン製の耐火物の温度を、930℃以上にすることにより、耐火物の破損によって熔融ガラス、シートガラスに泡が入ることを防止できた。