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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160802(P2015-160802A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】ガラス板の加工方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/04 20060101AFI20150811BHJP
   C03B 33/027 20060101ALI20150811BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20150811BHJP
【FI】
   C03B33/04
   C03B33/027
   B60J1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-86227(P2014-86227)
(22)【出願日】2014年4月18日
(62)【分割の表示】特願2014-34744(P2014-34744)の分割
【原出願日】2014年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000174220
【氏名又は名称】坂東機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】船城 明
(72)【発明者】
【氏名】島村 宗量
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB01
4G015FC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラス板の内域に開口部をスピーディーに、かつ良質に連続して加工成し得るガラス板の加工方法及び加工装置の提供。
【解決手段】ガラス板2の上面にカッターホイール11により閉曲線のスクライブ溝線9をガラス板2の厚み方向に対して、かつ閉曲線の内側域14に向って下り傾斜して刻み形成し、次にガラス板2を閉曲線の外側域18において、抑えた状態で、かつ上面側から閉曲線のスクライブ溝線9の内側域14の内方を吸着パットにより吸引持上げ動作を行ってガラス板2に上方に向った凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、前記閉曲線のスクライブ溝線9の内側域14を抜き取るようにしたガラス板2の加工方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方面に対して、かつ閉曲線の内側域に向って下り傾斜して刻み形成し、次に、ガラス板を閉曲線の外側域において、押えた状態で、かつ上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引持上げ動作を行ってガラス板に上方に向った凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取るようにしたガラス板の加工方法。
【請求項2】
本発明は、ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方向に対して、かつ、閉曲線の内側域に向って下り傾斜して刻み形式を行うスクライブポジションを、次に、ガラス板を閉曲線の外側域において上面側から押えた状態で、かつ、上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引上方へ持上げ動作を行っててガラス板に上方に向った凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取る抜き取りポジションを備えるガラス板の加工装置。
【請求項3】
上記抜き取りポジションでの、スクライブ溝線の内側域の内方の吸着パットにより吸引しての持上げ動作をNC制御モータにより、NC制御して行う請求項1及び請求項2のガラス板の加工方法及び加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の内域に開口部(穴)を切り抜き形成する方法及び装置に関する。
【0002】
また、本発明は、自動車におけるフロント窓と天井を兼ねるフロントガラス(パロラマルーフガラス)において、天井域にサンルーフ窓用の開口部を切り抜き形成するガラス板の加工方法及び加工装置に関する。
【0003】
更に、自動車のサイドガラス用ガラス板の内方に開口部を切り抜き形成する加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0004】
特許文献1には、自動車用のガラス板への開口部の形成が加圧水ジェットによる切り抜きによって行われていることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、磁気ディスクや光ディスク用のガラス基板をガラス板から切り抜く方法における、カッタホイールによるスクライブ方法が開示されている。
【0006】
このスクライブ方法は、カッタホイールとして、ホイール稜線に対して左右の刃角が異なるカッタホイールを用い、ガラス板面に垂直に立てた状態で移動し、ガラス板の厚み方向に対して傾斜したスクライブ溝を形成する方法である。また、ホイール稜線に対して左右の刃角が同一のカッタホイールを用い、ホイール稜線をガラス板面に対して傾斜させた状態で移動し、ガラス板の厚み方向に対して傾斜したスクライブ溝を形成する方法が開示されている。いずれも、ガラス板面にカッタホイールによってガラス板の厚み方向に対して傾斜したスクライブ溝を形成し、次いて、ガラス板面を加熱し、ガラス板を変形させ、スクライブ線下に抜き勾配を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−519642号公報
【特許文献2】特開平7−223828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1について、ガラス板への開口部の形成を、加圧水ジェットにより切り抜き形成するには、ガラス板の切断スピードが遅く、切り抜き終了までに非常に時間を要し、非常に低効率な加工作業である。
【0009】
特許文献2においては、カッタホイールを傾斜させてスクライブ線を形成している図及びカッタホイールを傾斜させてスクライブを行うとガラス板に厚み方向に傾斜したスクライブ溝が形成されるという説明しか開示されていない。カッタホイールを傾斜させてセットしたスクライブ装置の構造は全く開示がない。
【0010】
そこで、本発明は、ガラス板の内域に開口部をスピーディーに、かつ良質に形成できるガラス板の加工方法及び加工装置を提供するにある。
【0011】
また、開口部が形成されたガラス板を連続して加工成し得るガラス板の加工方法及び加工装置を提供するにある。
【0012】
ところで、本ガラス板の加工装置1は、このスクライブポジション4において、スクライブ線9を閉曲線の内側域48、即ちスクライブ線9の内側域14に向かって、かつガラス板の厚み方向に向かって下傾斜して形成する。
【0013】
この傾斜したスクライブ線9を形成する方式として用いるカッタホイール11がカッター稜線に対して左右の刃角が同じ場合は、カッタホイール11をガラス板面に対して傾斜させた姿勢にセットする。
【0014】
また、カッタホイール11がカッター稜線に対して左右の刃角が異なる場合には、ガラス板面に対して垂直した姿勢でセットする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方向に対して、かつ閉曲線の内側域に向かって下り傾斜して刻み形成し、次にガラス板を閉曲線の外側域において押えた状態で、かつ上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引し、上方へ持ち上げを行って、ガラス板に上方に向かった凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取るようにしたガラス板の加工方法である。
【0016】
また、本発明は、ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方向に対して、かつ閉曲線の内側域に向かって下り傾斜して刻み形成を行うスクライブポジションと、次に、ガラス板を閉曲線の外側域において押えた状態で、かつ上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引し、上方へ持ち上げを行って、ガラス板に上方に向かった凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取る抜き取りポジションを備えるガラス板の加工装置である。
【0017】
また、本発明は、上記抜き取りポジションでのスクライブ溝線の内側域の吸引しての持上げ動作をNC制御して行うようにしたガラス板の加工装置である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、開口部が形成されているガラス板(製品)の平面図である。
図2図2は、開口部形成のスクライブ線が形成されたガラス板の平面図である。
図3図3は、左右の刃角が同じカッタホイールを用いてのスクライブ中におけるカッタホイールの姿勢説明図である。
図4図4は、左右の刃角が異なるカッタホイールを用いてのスクライブ中におけるカッタホイールの姿勢説明図である。
図5図5は、閉曲線に形成されたスクライブ線の内側域を抜き取りする方向を示した説明図である。
図6図6は、ガラス板からスクライブ線の内側領域を抜き取りした状態を示す説明図である。
図7図7は、本ガラス板加工装置の正面図である。
図8図8は、本ガラス板のスクライブ装置の正面図である。
図9図9は、本ガラス板の加工装置を縦断面において示した各加工ポジション及び搬送装置の説明図である。
図10図10は、稜線に対して左右の刃角が同じカッタホイールを用いた場合のスクライブポジションの横断面図である。
図11図11は、稜線に対して左右の刃角が同じカッタホイールを用いた場合のスクライブポジションの横断面図である。
図12図12は、横断面により示した抜き取りポジションの説明図である。
図13図13は、横断面により示した抜き取りポジションの説明図である。
図14図14は、横断面により示した抜き取りポジションの説明図である。
図15図15は、研削加工ポジションの横断面図である。
図16図16は、稜線に対して左右の刃角が異なるカッタホイールを用いた場合のスクライブポジションの横断面図である。
図17図17は、抜き取りポジションの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の具体例を図面を参照して説明する。
【0020】
ガラス板の加工装置1は、図9図10に示すように、右から搬入ポジション3、スクライブポジション4、抜き取りポジション5、研削加工ポジション6、そして取出しコンベア7が等間隔をもって直線上に配設されている。
【0021】
さらに、背後にはガラス板2の搬送装置8を備える。
【0022】
尚、この搬送装置8は、上記搬入ポジション3の搬入待機コンベア75の上方、スクライブポジション4のスクライブワークテーブル13の上方、抜き取りポジション5のベルトコンベアの上方、研削加工ポジション6の研削ワークテーブル24の上方、及び搬出コンベア7の上方を直線に貫いて架設されている。
【0023】
上記搬入ポジション3は、搬入コンベア75上でガラス板2を位置決めしたうえで、搬入のためにガラス板2を待機させるポジションである。
【0024】
上記スクライブポジション4は、ガラス板2の内域にスクライブ線9を刻み形成するポジションである。
【0025】
尚、スクライブ線9は形成予定の開口部の形状に沿って形成され、閉曲線である。
【0026】
上記抜き取りポジション5は、スクライブポジション4において形成された閉曲線のスクライブ線9に囲まれた内側域14を上方へ抜き取り、ガラス板2に開口部10を形成するポジションである。
【0027】
上記研削加工ポジション6は、上記抜き取りポジション5において形成された開口部10の内縁エッヂ20を研削加工するポジションである。
【0028】
上記取出しコンベア7は、加工仕上りガラス板2を装置外へ取出しするコンベアである。
【0029】
上記搬送装置8は、ポジションとポジションの間、例えば、スクライブポジション4と抜き取りポジション5との間の距離分の往復直動を繰返し、ガラス板2を搬入ポジション3からスクライブポジション4へ、スクライブポジション4から抜き取りポジション5へ、抜き取りポジション5から研削加工ポジション6へ、研削加工ポジション6から取出しポジション7へと次々に置換えしながら送ってゆく。
【0030】
本ガラス板の加工装置1は、NC装置(図示なし)を備え、スクライブポジション4におけるガラス板2へのスクライブ線の形成、抜き取りポジション5における抜き取り動作、研削加工ポジション6におけるガラス板2に形成された開口部の内縁エッヂの研削及び搬送装置8の往復直動は、NC制御されて行われる。
【0031】
そして、本ガラス板の加工装置1は、図9に示すように、正面から見て左右方向FがX軸である。
【0032】
このX軸に沿って前記各ポジション3、4、5、6が配設されている。
【0033】
また、配送装置8も上記X軸と平行して配設されている。
【0034】
上記スクライブポジション4は、図9に示すように、下端にカッタホイール11を備えたスクライブヘッド12とガラス板2を平面支持するスクライブワークテーブル13を備える。また研削加工ポジション6は、下端に研削ホイール21を備えた研削ヘッド22とガラス板2を吸着保持する研削ワークテーブル24とを備える。尚、研削ワークテーブル24においてガラス板2を直接に吸着保持するのはテーブル本体の上面に配置した複数の吸盤23、23、23・・・である。
【0035】
スクライブポジション4のスクライブヘッド12と研削加工ポジション6の研削ヘッド22は、共に、角度制御手段17を介して共通X軸移動台25に装置されている。
【0036】
さて、図9図10に示されるように、本ガラス板の加工装置1の正面には、スクライブポジション4、抜き取りポジション5、研削加工ポジション6の上下において、直線に貫いて架台27が架設されている。架台27は、機台28の前後において立設された門型の枠体29、29に架設されている。この架台27の前面には、左右方向、即ちX軸に平行して配設された二基のガイドレール30、30と、ガイドレール30、30へこのガイドレール30、30に移動自在に組付されたスライドブロックを介してX軸直動自在に取付けしたX軸移動台25と、上記ガイドレール30、30の間に配設され、且つ、X軸移動台25にナットを介して連結された送りネジ31と、送りネジ31の一端に歯付ベルト、プーリを介して連結されたX軸サーボモータ32とを備え、上記X軸移動台25は、X軸サーボモータ32によってNC制御されてX軸移動を行う。
【0037】
上記、X軸移動台25の前面には、上記スクライブポジション4に対応した位置に軸受装置33が、研削加工ポジション6に対応した位置に軸受装置 34が取付けされている。
【0038】
軸受装置33には、ベアリング(図示無し)により保持された回転軸36とを備える。
【0039】
また軸受装置34には、ベアリング(図示無し)により保持された回転軸37を備える。
【0040】
上記回転軸36と37は回転軸心がXY平面座標系、つまり、ガラス板2の上面に対して直交した状態に組込まれ、ガラス板2の上面に直交して角度制御回動される。
【0041】
スクライブポジション4における回転軸36は、その下端部39にはクランプブラケット42、 ブラケット体43を介してスクライブヘッド12は取付けられている。さらに、この回転軸36の上端部38には、角度制御モータ40が平歯車41、41を介して連結されている。
【0042】
他方、回転軸37は、下端部39においてクランプブラケット44を介して研削ヘッド22が取付けされている。同じく、この回転軸37の上端部38には、角度制御モータ45が平歯46を介して連結されている。
【0043】
上記角度制御モータ40及び45のそれぞれは、共に、X軸移動台25の正面から立設されたブラケット47、47に保持されている。従って、回転軸36と回転軸37のそれぞれは、角度制御モータ40及び45により角度制御回動の駆動を受けて、それぞれの下端部39に取付けたスクライブヘッド12及び研削ヘッド22をガラス板2の上面に直交する軸線15の回りで角度制御回動させる。かつ角度制御モータ40と角度制御モータ45は同期制御駆動させ、スクライブヘッド12と研削ヘッド22との角度制御回動を同期して行わせる。
【0044】
さて、スクライブポジション4のスクライブヘッド12は、下端にカッタホイール11を備えたスプラインシャフト47と、このスプラインシャフト47を回転させないで往復直動自在に保持するヘッド本体48と、このヘッド本体48の上部に取付けられ、スプラインシャフト47を往復直動させてカッタホイール11を昇降し、かつ、ガラス板2にスクライブを行うとき、カッタホイール11をガラス板2にエアー弾性押圧するエアーシリンダ装置49と、ヘッド本体48をX方向及びY方向に位置を調整自在に取付けた ベース台50とからなる。
【0045】
そして、上記スクライブヘッド12は、ガラス板2の面へのスクライブ線9の形成において、エアーシリンダ装置49によりスプラインシャフト47を押し、カッタホイール11ガラス板2面に弾性押圧した状態で移動しスクライブ線9を形成する。
【0046】
従って、スクライブヘッド12の下端に備えるカッタホイール11として、図3に示すように、左右の刃角が同じのカッタホイール11を用いる場合は、図11図12に示すように、スクライブヘッド12はガラス板面に対して傾斜した姿勢で上記ブラケット体43に取付けされる。かつ、上記スクライブヘッド12は、形成するスクライブ線9に囲まれる内側域14に向って下り傾斜した姿勢で取付けされる。
【0047】
尚、スクライブヘッド12のブラケット体43へ取付けはベース台50において、形成するスクライブ線9の内側域に向って、下り傾斜して取付けされる。
【0048】
更に、スクライブヘッド12は、スクライブ動作時、下端に備えたカッタホイール11のスクライブポイント45が回転軸36の軸線15上に位置するように取付られている。
【0049】
上記スクライブヘッド12の下スクライブ線9の内側域14に向っての下り傾斜姿勢での取付けによって下端のカッタホイール11は、刃面側においてガラス板面に対してかつスクライブ線9の内側域に向って下り傾斜した姿勢で接し当った状態となっている。
【0050】
よって内域14側に傾いたカッタホイール11の移動により、閉曲線、矩形ラインに沿ってスクライブするとき、下り傾斜したスクライブ溝が形成され、当然ながら垂直クラック52の方向が常にスクライブ線9の内域14に向って斜め下方向に傾斜して形成される。
【0051】
尚、カッタホイール11の設定傾き角度の範囲は、図3に示すように、ホイール直径5mm、刃先下記度154°〜160°において垂直から1°〜10°である。最適は6.5°である。
【0052】
更に、スクライブヘッド11のブラケット体43への取付け構造は、カッターホイール11のガラス板2の上面に対しての傾き角度の変更設定が自由にできるようになっている。
【0053】
スクライブヘッド12の下端に備えるカッタホイール11として、図4図5に示すように、左右の刃角が異なるカッタホイール11Aを用いる場合は、図4図19図20に示すように、スクライブヘッド12はガラス板面に対して垂直にした姿勢で上記ブラケット体43に取付けされる。この場合、カッタホイール11Aは、刃角の稜線がガラス板面に対して垂直に立てた状態にセットされる。そして上記カッタホイール11は、刃角の小さい刃面側をスクライブ線9の内側域に向けてセットされる。
【0054】
一方、スクライブヘッド12に対応したスクライブワークテーブル13は、図9図10図11図12に示すように機台28の上面にY軸方向に沿って配設されたスライド装置54、54に載置されている。そして、これらのスライド装置54、54は、ガイドレール55、55と、このガイドレール55、55に組付けたスライドブロック56、56を備え、スクライブワークテーブル13はスライドブロック56、56、56、56に取付けられている。
【0055】
スクライブワークテーブル13のY軸移動は、ガイドレール55、55の間に設けられた送りねじ57と、送りねじ57に連結されたY軸制御モータ58とによって行われる。
【0056】
一方、研削加工ポジション6に対応した前記回転軸37の下端部39には、クランプブラケット65を介して研削ヘッド22が取付けられており、研削ヘッド22は、研削ホイール21を備えたスピンドルモータ60と、スピンドルモータ60を保持し、スピンドルモータ60、延いては研削ホイール21をX軸方向及びY軸方向に微調整移動させるX軸方向スライド装置61と、Y軸方向スライド装置62とを備えている。
【0057】
X軸方向スライド装置61において、クランプブラケット65を介し研削ヘッド22が回転軸37の下端部39に取付けられている。
【0058】
回転軸37の下端部39に取付けられた研削ヘッド22は、研削ホイール21における研削作業点が回転軸37の軸線上に位置するように設定調整されるようになっており、回転軸37の上端部38には、角度制御モータ45が平歯車46を介して連結されている。
【0059】
回転軸37は、角度制御モータ45により角度制御回転駆動を受けて、研削ヘッド22延いては研削ホイール21をガラス板2に直交する軸線17の回りで角度制御し、研削ホイール21の研削作業点を常に、研削加工の輪郭線の法線上に合わせて研削加工を行うようにしてある。
【0060】
研削ホイール21は上記位置調整手段60の調整によって、その周端面(研削面)が回転軸37の軸線15上に一致される。
【0061】
図中52は研削ヘッド22の上下位置設定スライド装置である。
【0062】
図中51は上方スライド装置52を上下駆動して研削ヘッド22、延いて研削ホイール21の高さ位置を切替る。開口部10の内縁20を研削加工するとき、下げてガラス板での高さに合す。
【0063】
また、研削加工ポジション6には、研削ホイール21を備えてX軸移動を行う研削ヘッド22に対応して、上面にガラス板2を平面吸着保持してY軸移動を行う研削ワークテーブル24が機台28において配設されている。
【0064】
研削ワークテーブル24は、テーブル本体68と、テーブル本体68の上面69に着脱自在に吸着させて配置した複数個のブロック吸盤23、23、23とからなり、テーブル本体68は、機台28の上面にY軸方向に沿って配設された2組のガイドレール70、70にスライドブロックを介して取付けられており、研削ワークテーブル24のY軸移動は、ガイドレール70、70に沿って組付けられた送りネジ71と、この送りネジ71に連結されたY軸制御モータ72の駆動によって行われる。
【0065】
抜き取りポジション5は、図12図13図14に示すように、搬送装置8により、スクライブポジション4から搬入されたガラス板2を載置するベルトコンベア装置80と、このベルトコンベア装置80の上方で、かつガラス板2に形成された閉曲線のスクライブ溝線9の内側域14に対応する位置に進行して来る内側域抜き取り装置81とを備える。上記ベルトコンベア装置80は、曲り易いベルト82が回し掛けられ、上面を形成している。
【0066】
ベルト82は載置ガラス板2全体に渡って支持面83がなく、内方域においてのみ、少なくとも2ヶ所に独立の部分範囲に支持面を有するのみである。
【0067】
一つは、上記搬送装置の直下において固定された支面体84、他の一つは、載置されたガラス板2のスクライブ溝線9の形成された範囲をXY平面移動する支持受け体85である。上記支面体84は、コンベア枠体86から固定支持されている。尚、支持受け体85は、上面が平面体のときと、押上げ体165の持ち上がりがある。
【0068】
支持受け体85は、下方位置において設けられた、Y方向移動手段87にNC制御されて移動されるように保持され、上記Y方向移動手段87は、X方向移動手段88にX方向にNC制御されて移動される。
【0069】
一方、上記抜き取り装置81は、数値制御モータ160によって上下動スピード上下動後、NC制御される吸盤装置161と、この吸盤装置161をY方向にNC制御され移動させるY移動手段162と、このY方向移動手段162をX方向にNC制御するX方向移動手段163とを備え、X方向移動手段163において、前記架台27の下面に取付けられている。尚、上記吸盤装置161は、下端に吸着パット162を備える。
【0070】
さて、この抜き取りポジション5の上記ベルトコンベア装置80のベルト82の上面にガラス板2が載置されると共に、搬送装置8のこの抜き取りポジション5に対応のガラス板持上げ装置117が復帰して、その吸着パット130、130、130、130がスクライブ溝線9の外側域の上方の位置に配置される。
【0071】
このときガラス板2は、ベルト82を介して支持体85により支持されると共に、スクライブ溝線9下にベルト82を介して支持受け体85が位置する。
【0072】
次に、押上げ体165が1mmから2mm程持上り、スクライブ溝線9下をベルト82を介して、下から押し上げ、スクライブ溝線9に沿って移動して、スクライブ溝線9のクラック進行を促す。次に、支持受け体85は、上面を平面にしてスクライブ溝線9の内側域の内方に位置する。すると、搬送装置8の吸着パット130、130、130、130が降下し、スクライブ溝線9の外側域を下に押える。するとスクライブ溝線9域は、下から支持受け体85で支持され、上から吸着パット130、130で押されるため、ガラス板2は上に凸状に曲げられ、クラックが更に進行する。
【0073】
この状態で、上から前記抜き取り装置81の吸着パット168が降下し、スクライブ溝線9の内方を吸着して、NC制御されて内方の吸着持上げ動作を行う。この持上げ動作は数ミリ単位の持上げ、停止、下げの上下動の繰返し、またはゆっくりと持上げを行い、内側域14を上方へ分離抜き取り、外へ出し、ベルトコンベア等の上に置く。すると、搬送装置8の吸着パット130、130、130、130が、外側域18(製品用)を吸着して上昇させ、次の加工ポジションへ移動させる。
【0074】
ガラス板2の搬送装置8は、往復動台120を備える。この往復動台120は、搬入ポジション3、スクライブポジション4、抜き取りポジション5、研削加工ポジション6の上方を、前記のX軸と並行して往復動を繰返す。
【0075】
上記往復動台120には、加工ポジションに対応した位置にガラス板持上げ装置115、116、117、118を備える。即ち、往復動台120には、搬入ポジション3に対応してガラス板持上げ装置115が、スクライブポジション4に対応してガラス板持上げ装置116が、抜き取りポジション5に対応してガラス板持上げ装置117が、研削加工ポジション6に対応してガラス板持上げ装置118が設けられている。
【0076】
これらガラス板持上げ装置115、116、117、118は一体となり往復動を行う。
【0077】
往復動台120の往復動は後述の搬送制御モータ119によって、NC制御されて行われる。また上記ガラス板持上げ装置115、116、117、118は、それぞれ昇降装置121、122、123、124を備える。
【0078】
それぞれの昇降装置121、122、123、124は、それぞれの上記ブラケット120の立面に上下方向に沿って、かつ両側に配設されたスライド装置126、126と、これら両側のスライド装置126、126のスライドシャフト127、127同士を上下において連結した連結体128、128と、下方の該連結体129の下面に取付けられ、複数の吸着パット130、130・・・を進行方向側面に備えたコ字形枠131と、下連結体129の上面に立設したラック132と、このラック132にかみ合わせたピニオンギア133とこのピニオンギア133が取付られこのピニオンギア133を駆動するサーボモータ134とを備える。
【0079】
上記の両側のスライド装置126及び126は、スライドブッシュ体135とこのスライドブッシュ体135内を上下スライドする上記スライドシャフト127とよりなり、このスライドブッシュ体135、135において上記ブラケット120の立面に上下方向に沿って取付けられている。また、上記ピニオンギア133を出力シャフトに取付けた上記サーボモータ134もまた上記ブラケット119に取付けられている。
【0080】
各々の昇降装置121、122、123、124は、サーボモータ134によりピニオンギア133が回転され、このピニオンギア133にかみ合うラック132を昇降し、このラック132を取付けている連結体129及びこの連結体129に取付けているコ字形枠131、延いては吸着パット130、130、130を昇降させる。コ字形枠131の降下によって吸着パット130、130、130がガラス板2の上面に接して、ガラス板2を吸着保持し、コ字形枠131の上昇によりガラス板2を持上げる。
【0081】
尚、コ字形枠131は、降下時、吸着パット130、130がガラス板を吸着また押圧するとき、ガラス板2に形成のスクライブ溝線9の外側域また開口部10の外側域に位置するように進行方向においてスクラブ溝線9また開口部10を挟んで両側の外側域上にフレーム171、171が前方に向って突説され、このフレーム171、171の側面に吸着パット130、130が取付られている。そして前方170が開口している。
【0082】
また、前記往復動台120は、第2架台145の下面において、X軸方向に平行に設置されたスライド装置144及び144に取付けられている。スライド装置144及び144は平行に取付けられたレール本体146、146と、このレール本体146及び146に組付けたスライドブロック147とからなり、これらスライドブロック147、147に上記往復動台120が取付られている。
【0083】
往復動台120の往復動は、上記レール本体146、146の間に取付けた送りネジ139と送りネジ139に連結した搬送制御モータ140とによりNC制御されて移動される。第2架台145は前記架台27の後方において枠体29、29に架設されている。
【符号の説明】
【0084】
1 加工装置
2 ガラス板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2015年5月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方に対して、かつ閉曲線の内側域に向って下り傾斜して刻み形成し、次に、ガラス板を閉曲線の外側域において、押えた状態で、かつ上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引持上げ動作を行ってガラス板に上方に向った凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取るようにしたガラス板の加工方法。
【請求項2】
抜き取りポジションでの、スクライブ溝線の内側域の内方の吸着パットにより吸引しての持上げ動作をNC制御モータにより、NC制御して行う請求項1に記載のガラス板の加工方法。
【請求項3】
ガラス板の上面にカッタホイールにより閉曲線のスクライブ溝線をガラス板の厚み方向に対して、かつ、閉曲線の内側域に向って下り傾斜して刻み形式を行うスクライブポジションを、次に、ガラス板を閉曲線の外側域において上面側から押えた状態で、かつ、上面側から閉曲線のスクライブ溝線の内側域の内方を吸着パットにより吸引上方へ持上げ動作を行っててガラス板に上方に向った凸面状の曲げを形成させ、スクライブ溝の進行を対向面に到達させ、上記閉曲線のスクライブ溝線の内側域を抜き取る抜き取りポジションを備えるガラス板の加工装置。
【請求項4】
抜き取りポジションでの、スクライブ溝線の内側域の内方の吸着パットにより吸引しての持上げ動作をNC制御モータにより、NC制御して行う請求項3に記載のガラス板の加工装置。
【請求項5】
互いに異なる一対の刃角を有していると共にガラス板の一方の面に対して直交して配されたカッタホイールをガラス板の一方の面に対して相対的に移動させながらカッタホイールをガラス板の一方の面に直交する軸線の周りに角度制御して当該カッタホイールの稜線をガラス板の一方の面に形成すべきスクライブ線の法線方向に向け、当該カッタホイールでガラス板の一方の面にスクライブ線を形成してガラス板に該軸線に対して傾斜したスクライブ溝線を生成するようにしたガラス板の加工装置。