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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160855(P2015-160855A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】ゴム架橋物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150811BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20150811BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20150811BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20150811BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K3/08
   C08K5/14
   C08K3/06
   C08J3/24 ZCEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-34975(P2014-34975)
(22)【出願日】2014年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】荒木 久雄
(72)【発明者】
【氏名】児玉 憲司
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA04
4F070AC05
4F070AC06
4F070AC56
4F070AE08
4F070GA05
4F070GA06
4F070GA10
4J002AC001
4J002DA048
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA106
4J002EK007
4J002EK027
4J002EK037
4J002EK047
4J002FD148
4J002FD157
(57)【要約】
【課題】ゴム混和物に硫黄が50〜3000ppm含まれていてもゴム架橋物と接する金属の腐食を抑えることができ、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋品と共用したりすることができるゴム架橋品の提供を目的とする。
【解決手段】ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とその他適宜の添加物を配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を架橋し、ゴム架橋物とする。金属粉の配合量は、ゴム100質量部に0.5〜10質量部とする。その他の添加物として、ゴム架橋物がゴムスポンジの場合に配合される発泡剤、架橋助剤等がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項2】
前記ゴム100質量部に前記金属粉を0.5〜10質量部配合したことを特徴とする請求項1に記載のゴム架橋物。
【請求項3】
ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を混練し、架橋することを特徴とするゴム架橋物の製造方法。
【請求項4】
前記ゴム100質量部に前記金属粉を0.5〜10質量部配合したことを特徴とする請求項3に記載のゴム架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム架橋物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム架橋物は、電気・電子製品のゴム部品、OA機器のゴム部品、電線被覆材、複写機器のローラ等のゴム製品に使用されている。
【0003】
ゴムの架橋には、通常、架橋剤として硫黄を用いる硫黄架橋が行われている。しかし、硫黄架橋を行ったゴム架橋物は、含有する硫黄から放出される硫黄ガスによって、ゴム架橋物と接する金属を腐食させる問題がある。
【0004】
硫黄による金属腐食を抑えるため、硫黄架橋に代えて有機過酸化物を用いる過酸化物架橋や電子線架橋を行い、硫黄を架橋剤としてゴム混和物に配合しないことが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
ところが、一般的にゴムに配合されるカーボンブラックやオイル等にも不純物として硫黄化合物が含まれているため、硫黄成分を完全に含まないようにするには、精製度の高い材料を使用しなければならず、コストが嵩む問題がある。
【0006】
また、ゴム架橋物の製造においては、製造スペースや生産設備の効率化等のため、同じ製造ラインを使用して硫黄架橋品と過酸化物架橋品を製造することがあり、その場合には硫黄を配合していない過酸化物架橋品にも硫黄が混入するおそれがある。そのため、硫黄の混入を防ぐには、過酸化物架橋品の製造の際には製造装置を入念に清掃したり、異なる製造ラインを使用したりする必要があり、作業が面倒になってコストが嵩んだり、製造スペースや製造装置の費用が嵩んだりする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−79364号公報
【特許文献2】特開2012−214757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、ゴム混和物に硫黄が50〜3000ppm含まれていても金属の腐食を抑えることができ、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋物の製造と共用したりすることができるゴム架橋物とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を架橋してなるゴム架橋物に係る。なお、混和物は、ゴムに種々の材料が配合されたゴム組成物を混練して得られたものを言う。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ゴム100質量部に前記金属粉を0.5〜10質量部配合したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を架橋することを特徴とするゴム架橋物の製造方法に係る。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、前記ゴム100質量部に前記金属粉を0.5〜10質量部配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び2の発明によれば、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と有機過酸化物とを配合したことにより、ゴム混和物内の金属粉が50〜3000ppmの硫黄と反応して硫黄が固定化され、ゴム架橋物と接触する金属を腐食しないようになる。そのため、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋品の製造と共用したりすることができるようになる。
【0014】
請求項3及び4の発明によれば、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合して混練し、架橋するため、ゴム混和物内の金属粉が50〜3000ppmの硫黄と反応して硫黄が固定化され、金属を腐食しないゴム架橋物を製造することができる。そのため、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋品の製造と共用したりすることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム架橋物は、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物とを配合し、硫黄の含有量が50〜3000ppmであるゴム混和物を架橋したものである。本発明のゴム架橋物は、銀配線、銅配線が結線される半導体基盤等に接触するシール材、ガスケット材等として好適なものである。
【0016】
ゴムとしては、過酸化物架橋を行えるゴムが用いられ、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0017】
金属粉としての銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉は、混練性の点から、粒径1〜100μmが好ましい。また、金属粉の量は、ゴム100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。0.5質量部未満の場合にはゴム架橋物における金属腐食腐防止効果が低くなる。一方、10質量部を超えるとゴム架橋物の物性が低下し、かつコストが嵩むようになる。また、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉は、少なくとも一種類が使用されるが、複数種類を組み合わせて使用してもよく、その場合には、銅粉と銀粉の組合せ、あるいは亜鉛粉と鉄粉の組合せとするのが、混練作業時の温度を共通にすることができるために好ましい。
【0018】
有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、ジターシャリーブチルパーオキサイド等があげられる。有機過酸化物の量は、ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましい。
【0019】
その他、ゴム混和物には、架橋助剤、加工助剤、顔料、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、充填剤、老化防止剤などが適宜配合される。
【0020】
架橋助剤としては、硫黄原子を含まないものが好ましく、例えば、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリオールなどを挙げることができる。架橋助剤の量は、ゴム100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましい。
【0021】
加工助剤としては、ステアリン酸やそのエステル類、ステアリン酸亜鉛などを挙げることができる。加工助剤の量は、ゴム100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0022】
顔料としては、カーボンブラックが一般的である。顔料の量は、ゴム100質量部に対して2〜50質量部が好ましい。
軟化剤としては、パラフィン類、ワックス類、アスファルト類などを挙げることができる。軟化剤の量は、ゴム100質量部に対して1〜50質量部が好ましい。
【0023】
発泡剤は、ゴム架橋物を発泡体(ゴムスポンジ)とする場合に必要となるものであり、無発泡体(ソリッド)とする場合には不要である。発泡剤としては、熱分解型の発泡剤が使用される。たとえば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアセトキシフェニルエタン、N,N’−ジニトロソペンタメチレン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素ナトリウム、ヒドラゾジカルボンアミド等を挙げることができる。発泡剤の量は、ゴム100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。
【0024】
発泡助剤としては、例えば、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛など)などを挙げることができる。発泡助剤の量は、ゴム100質量部に対して1〜15質量部が好ましい。
【0025】
難燃剤としては、有機系難燃剤や無機系難燃剤を使用することができる。有機系難燃剤としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、トリフェニルホスフェート、赤リン等を挙げることができる。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等を挙げることができる。難燃剤の量は、ゴム100質量部に対して2〜100質量部が好ましい。
【0026】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等を挙げることができる。充填剤の量は、ゴム100質量部に対して50〜300質量部が好ましい。
老化防止剤としては、フェノール系、イミダゾール系、ワックス等が使用される。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、4,4´−ビス(α,α´−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどを挙げることができる。老化防止剤の量は、ゴム100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0027】
前記ゴム架橋物は、ゴムに、銅粉、銀粉、亜鉛粉、鉄粉の中から選択された少なくとも一種類の金属粉と、有機過酸化物及びその他の適宜添加される前記材料を配合して混練したゴム混和物を架橋することにより得られる。
【0028】
前記混練は、配合物をバンバリーミキサーや加圧ニーダ、混練ロール等の混練機で行われる。前記混練時、金属粉が銅粉あるいは銀粉の場合には、加熱することなく混練を行うのが混和物に含まれる金属粉と硫黄との反応を良好とする上で好ましい。一方、金属粉が亜鉛粉あるいは鉄粉の場合には、160℃以上、より好ましくは160℃〜180℃で加熱しながら混練を行うのが、混和物に含まれる金属粉と硫黄との反応を良好とする上で好ましい。
【0029】
架橋は、前記ゴム混和物を、製品がパイプ状や棒状等の場合には押出成形機で押し出した後、加熱することにより行われ、一方、製品がリング状や板状等の場合には、金型に充填して加熱することにより行われる。架橋時の加熱温度は120〜200℃が好ましい。また、前記ゴム混和物に発泡剤が配合されている場合には、前記架橋時の加熱によって発泡し、ゴム架橋物の発泡体(ゴムスポンジ)が得られ、一方、発泡体が含まれていない場合にはゴム架橋物の無発泡体(ソリッド)が得られる。
【0030】
本発明では、前記ゴム架橋物の製造ラインは、架橋剤として硫黄を使用する硫黄架橋物の製造ラインとは別にしてもよく、あるいは硫黄架橋物の製造ラインと兼用してもよい、例えば、製造ラインで硫黄架橋物を一定期間製造した後、有機過酸化物を架橋剤として使用する本発明のゴム架橋物を同一の製造ラインで製造してもよい。
【0031】
このようにして製造されたゴム架橋物は、ゴム混和物に含まれていた50〜3000ppmの硫黄が金属粉と反応して固定化されているため、金属と接触して使用されても金属の腐食を抑えることができる。特に硫黄によって腐食し易い金属の種類である銀、銅等に対して腐食防止効果が高い。
【実施例】
【0032】
・実施例1A、1B、比較例1
表1のA−1、A−2、B−1の材料を次のように混練して混和物とし、得られた混和物を架橋して実施例1A、実施例1Bのゴム架橋物と比較例1のゴム架橋物を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1におけるA−1の材料は、EPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸である。
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)は、品名、EPDM4021、三井化学社製、カーボンブラック(顔料)は、品名旭#60G、旭カーボン社製、パラフィン系オイル(軟化剤)は、品名ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産社製、酸化亜鉛は、品名酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製、ステアリン酸(加工助剤)は、品名ステアリン酸50S、新日本理化社製である。
【0035】
表1におけるA−2の材料は、銅粉(金属粉)である。使用した銅粉は、品名CE−25、福田金属箔粉社製である。
表1におけるB−1の材料は、尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドである。
尿素(発泡助剤)は、品名セルペースト101W、永和化成工業製、有機過酸化物は、品名パーヘキサ25B、日本油脂社製、架橋助剤は、品名TAIC−M60、日本化成社製、アゾジカルボンアミド(発泡剤)は、品名ビニホールAC#3、永和化成工業社製である。
【0036】
実施例1Aでは、まずA−1のEPDMにカーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸を配合し、非加熱状態(常温、実施例では20℃)下においてバンバリーミキサーで混練し、A1混和物を得た。次に、A1混和物にA−2の銅粉を配合し、過酸化物架橋専属ラインで使用され、かつ洗浄された混練ロールによって非加熱状態(常温、実施例では20℃)下で混練し、A2混和物を得た。その後、A2混和物とB−1の尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドを、前記混練ロールにより混練りしてB1混和物を得た。
【0037】
前記B1混和物を密閉式の1次金型(内寸法410×410mm×40mm)内に充填し、密閉状態として140℃で12分間架橋した。架橋時間経過後、前記1次金型の密閉を解除し、除圧して金型を開き、1次発泡体を得た。
次に前記1次発泡体を、非密閉式の2次金型(内寸法1000×1000×100mm)に収容し、165℃で12分間加熱した。前記加熱時間経過後、2次金型に設けられている熱媒流路に通水して常温まで温度を下げ、2次発泡体を取り出し、ゴムスポンジからなる実施例1Aのゴム架橋物を得た。
【0038】
実施例1Bでは、前記実施例1AでB1混和物を得る際に、過酸化物架橋専属ラインの混練ロールに代えて、架橋剤として硫黄を使用する硫黄架橋ラインで使用されている75Lニーダを用いて混練を行った。なお、前記硫黄架橋ラインの75Lニーダは、硫黄架橋品の製造に使用した後に天然ゴムを入れて予め掃除した状態で使用した。その他の工程は前記実施例1Aと同様にして、ゴムスポンジからなる実施例1Bのゴム架橋物を得た。
【0039】
比較例1では、前記実施例1AにおいてA1混和物を得た後、A−2の銅粉を配合することなく、A1混和物にB−1の尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドを配合し、過酸化物架橋専属ラインの混練ロールに代えて架橋剤として硫黄を使用する硫黄架橋ラインで使用されている75Lニーダを使用して混練を行い、B1混和物を得た。なお、前記硫黄架橋ラインの75Lニーダは、硫黄架橋品の製造に使用した後に天然ゴムを入れて予め掃除した状態で使用した。その他の工程は、前記実施例1Aと同様にして、ゴムスポンジからなる比較例1のゴム架橋物を得た。
【0040】
前記実施例1A、1B及び比較例1のB1混和物に含まれる硫黄の量を測定する全硫黄試験を行った。全硫黄試験は、試料を電気炉で燃焼させ、生成した二酸化硫黄量を電位差滴定方式で測定して試料中の硫黄濃度を算出することにより行った。測定装置は、塩素硫黄分析装置(三菱化学株式会社製、製品名TOX−100)を使用した。結果は表1の評価欄に示す。
【0041】
また、実施例1A、1B及び比較例1のゴム架橋物に対して銀腐食試験を行った。銀腐食試験は、縦35mm、横10mm、厚さ1mmの銀メッキ鉄板上に、縦50mm、横20mm、厚さ2mmの板状とした実施例1A、1B及び比較例1のゴム架橋物の試験体を、それぞれ3枚重ねて載置し、銀メッキ鉄板と試験体を包み込むように食品包装用ラップ(日立化成製、製品名Vラップ5)で巻き、1kgの錘を載せて100℃の恒温槽で3日間放置した後、銀メッキ鉄板の試験体との接触面の色を目視で確認し、変色なしの場合には腐食無しと判断して「〇」、変色ありの場合には腐食有りと判断して「×」とした。結果は表1の評価欄に示す。
【0042】
実施例1Aでは硫黄を配合しなかったにも関わらず、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄が全硫黄試験結果によって350ppm検出された。また、実施例1Bでは、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄に加え、硫黄ラインを使用したことによる硫黄の混入もあって、硫黄が1420ppm検出された。比較例1でも実施例1Bと同様に不純物の硫黄と硫黄ラインの使用により混入した硫黄によって1400ppmの硫黄が検出された。
銀腐食試験では、実施例1A、1Bは銅粉を含むことによって銀の腐食が無く「〇」であったのに対し、比較例1では銅粉を含まないことによって銀の腐食があり「×」であった。
【0043】
・実施例2〜7、比較例2
表2のA−1、A−3、B−2の材料を次のように混練して混和物とし、得られた混和物を架橋して実施例2〜7のゴム架橋物と比較例2のゴム架橋物を製造した。
表2におけるA−1のEPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸は、表1のA−1と同一の材料である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2におけるA−3の材料は、銅粉(金属粉)、銀粉(金属粉)、鉄粉(金属粉)、亜鉛粉(金属粉)、硫黄である。銅粉(金属粉)は、品名CE−25、福田金属箔粉社製、銀粉(金属粉)は、品名AgC―G、福田金属箔粉社製、鉄粉(金属粉)は、品名CIP EW、BASFジャパン社製、亜鉛粉(金属粉)は、品名亜鉛末、ハクスイテック製、硫黄は、品名アルファグランS-50EN、東知社製である。
表2におけるB−2の材料は、有機過酸化物、架橋助剤である。有機過酸化物は、品名パーヘキサ25B−40、日本油脂社製、架橋助剤は、品名TAIC−M60、日本化成社製である。
【0046】
実施例2〜7及び比較例2では、まずA−1のEPDMにカーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸を配合し、3L加圧ニーダで混練し、実施例2〜7及び比較例2のA1混和物を得た。次に、A1混和物にA−3の金属粉(比較例2については金属粉を配合せず)と硫黄を各実施例及び比較例2に応じた種類及び配合量で配合し、各実施例及び比較例2に応じた温度で混練ロールにより混練してA3混和物を得た。混練温度は、金属粉として銅粉または銀粉を用いる実施例2〜5については非加熱(常温で実施例では20℃)とし、一方、金属粉として鉄粉あるいは亜鉛粉を用いる実施例6、7については170℃とし、また、金属粉を配合しない比較例2については非加熱(常温で実施例では20℃)とした。
その後、実施例2〜7及び比較例2のそれぞれのA3混和物とB2の有機過酸化物及び架橋助剤を、前記混練ロールにより混練りして実施例2〜7及び比較例2のB2混和物を得た。
【0047】
実施例2〜7及び比較例2のB2混和物を、それぞれ2mm×100mm×100mmの金型に仕込み、160℃で15分間加硫してソリッドゴムからなる実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物を得た。
実施例2〜7及び比較例2のB2混和物に含まれる硫黄の量を測定するため、実施例1A、1B及び比較例1と同様に全硫黄試験を行った。結果は表2の評価欄に示す。
【0048】
また、実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物に対して銀腐食試験を行った。銀腐食試験は、縦35mm、横10mm、厚さ1mmの銀メッキ鉄板上に、縦50mm、横20mm、厚さ2mmの板状とした実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物の試験体を、それぞれ3枚重ねて載置し、銀メッキ鉄板と試験体を包み込むように食品包装用ラップ(日立化成製、製品名Vラップ5)で巻き、実施例1A、1B及び比較例1と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
実施例2〜7及び比較例2では、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄と配合した硫黄とにより、全硫黄試験で2000〜2050ppmの硫黄が検出された。また、比較例2では、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄と配合した硫黄とにより、全硫黄試験で2010ppmの硫黄が検出された。
しかし、実施例2〜7においては、金属粉として銅粉、銀粉、鉄粉、亜鉛粉の何れかが含まれているため、銀腐食試験で銀の腐食が無く「〇」であった。それに対し、金属粉が含まれていない比較例2では、銀の腐食があり「×」であった。
【0050】
このように、本発明によれば、ゴム混和物に硫黄が50〜3000ppm含まれていても金属の腐食を抑えることができ、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋品と共用したりすることができる。