【実施例】
【0032】
・実施例1A、1B、比較例1
表1のA−1、A−2、B−1の材料を次のように混練して混和物とし、得られた混和物を架橋して実施例1A、実施例1Bのゴム架橋物と比較例1のゴム架橋物を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1におけるA−1の材料は、EPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸である。
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)は、品名、EPDM4021、三井化学社製、カーボンブラック(顔料)は、品名旭#60G、旭カーボン社製、パラフィン系オイル(軟化剤)は、品名ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産社製、酸化亜鉛は、品名酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製、ステアリン酸(加工助剤)は、品名ステアリン酸50S、新日本理化社製である。
【0035】
表1におけるA−2の材料は、銅粉(金属粉)である。使用した銅粉は、品名CE−25、福田金属箔粉社製である。
表1におけるB−1の材料は、尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドである。
尿素(発泡助剤)は、品名セルペースト101W、永和化成工業製、有機過酸化物は、品名パーヘキサ25B、日本油脂社製、架橋助剤は、品名TAIC−M60、日本化成社製、アゾジカルボンアミド(発泡剤)は、品名ビニホールAC#3、永和化成工業社製である。
【0036】
実施例1Aでは、まずA−1のEPDMにカーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸を配合し、非加熱状態(常温、実施例では20℃)下においてバンバリーミキサーで混練し、A1混和物を得た。次に、A1混和物にA−2の銅粉を配合し、過酸化物架橋専属ラインで使用され、かつ洗浄された混練ロールによって非加熱状態(常温、実施例では20℃)下で混練し、A2混和物を得た。その後、A2混和物とB−1の尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドを、前記混練ロールにより混練りしてB1混和物を得た。
【0037】
前記B1混和物を密閉式の1次金型(内寸法410×410mm×40mm)内に充填し、密閉状態として140℃で12分間架橋した。架橋時間経過後、前記1次金型の密閉を解除し、除圧して金型を開き、1次発泡体を得た。
次に前記1次発泡体を、非密閉式の2次金型(内寸法1000×1000×100mm)に収容し、165℃で12分間加熱した。前記加熱時間経過後、2次金型に設けられている熱媒流路に通水して常温まで温度を下げ、2次発泡体を取り出し、ゴムスポンジからなる実施例1Aのゴム架橋物を得た。
【0038】
実施例1Bでは、前記実施例1AでB1混和物を得る際に、過酸化物架橋専属ラインの混練ロールに代えて、架橋剤として硫黄を使用する硫黄架橋ラインで使用されている75Lニーダを用いて混練を行った。なお、前記硫黄架橋ラインの75Lニーダは、硫黄架橋品の製造に使用した後に天然ゴムを入れて予め掃除した状態で使用した。その他の工程は前記実施例1Aと同様にして、ゴムスポンジからなる実施例1Bのゴム架橋物を得た。
【0039】
比較例1では、前記実施例1AにおいてA1混和物を得た後、A−2の銅粉を配合することなく、A1混和物にB−1の尿素、有機過酸化物、架橋助剤、アゾシカルボンアミドを配合し、過酸化物架橋専属ラインの混練ロールに代えて架橋剤として硫黄を使用する硫黄架橋ラインで使用されている75Lニーダを使用して混練を行い、B1混和物を得た。なお、前記硫黄架橋ラインの75Lニーダは、硫黄架橋品の製造に使用した後に天然ゴムを入れて予め掃除した状態で使用した。その他の工程は、前記実施例1Aと同様にして、ゴムスポンジからなる比較例1のゴム架橋物を得た。
【0040】
前記実施例1A、1B及び比較例1のB1混和物に含まれる硫黄の量を測定する全硫黄試験を行った。全硫黄試験は、試料を電気炉で燃焼させ、生成した二酸化硫黄量を電位差滴定方式で測定して試料中の硫黄濃度を算出することにより行った。測定装置は、塩素硫黄分析装置(三菱化学株式会社製、製品名TOX−100)を使用した。結果は表1の評価欄に示す。
【0041】
また、実施例1A、1B及び比較例1のゴム架橋物に対して銀腐食試験を行った。銀腐食試験は、縦35mm、横10mm、厚さ1mmの銀メッキ鉄板上に、縦50mm、横20mm、厚さ2mmの板状とした実施例1A、1B及び比較例1のゴム架橋物の試験体を、それぞれ3枚重ねて載置し、銀メッキ鉄板と試験体を包み込むように食品包装用ラップ(日立化成製、製品名Vラップ5)で巻き、1kgの錘を載せて100℃の恒温槽で3日間放置した後、銀メッキ鉄板の試験体との接触面の色を目視で確認し、変色なしの場合には腐食無しと判断して「〇」、変色ありの場合には腐食有りと判断して「×」とした。結果は表1の評価欄に示す。
【0042】
実施例1Aでは硫黄を配合しなかったにも関わらず、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄が全硫黄試験結果によって350ppm検出された。また、実施例1Bでは、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄に加え、硫黄ラインを使用したことによる硫黄の混入もあって、硫黄が1420ppm検出された。比較例1でも実施例1Bと同様に不純物の硫黄と硫黄ラインの使用により混入した硫黄によって1400ppmの硫黄が検出された。
銀腐食試験では、実施例1A、1Bは銅粉を含むことによって銀の腐食が無く「〇」であったのに対し、比較例1では銅粉を含まないことによって銀の腐食があり「×」であった。
【0043】
・実施例2〜7、比較例2
表2のA−1、A−3、B−2の材料を次のように混練して混和物とし、得られた混和物を架橋して実施例2〜7のゴム架橋物と比較例2のゴム架橋物を製造した。
表2におけるA−1のEPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸は、表1のA−1と同一の材料である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2におけるA−3の材料は、銅粉(金属粉)、銀粉(金属粉)、鉄粉(金属粉)、亜鉛粉(金属粉)、硫黄である。銅粉(金属粉)は、品名CE−25、福田金属箔粉社製、銀粉(金属粉)は、品名AgC―G、福田金属箔粉社製、鉄粉(金属粉)は、品名CIP EW、BASFジャパン社製、亜鉛粉(金属粉)は、品名亜鉛末、ハクスイテック製、硫黄は、品名アルファグランS-50EN、東知社製である。
表2におけるB−2の材料は、有機過酸化物、架橋助剤である。有機過酸化物は、品名パーヘキサ25B−40、日本油脂社製、架橋助剤は、品名TAIC−M60、日本化成社製である。
【0046】
実施例2〜7及び比較例2では、まずA−1のEPDMにカーボンブラック、パラフィン系オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸を配合し、3L加圧ニーダで混練し、実施例2〜7及び比較例2のA1混和物を得た。次に、A1混和物にA−3の金属粉(比較例2については金属粉を配合せず)と硫黄を各実施例及び比較例2に応じた種類及び配合量で配合し、各実施例及び比較例2に応じた温度で混練ロールにより混練してA3混和物を得た。混練温度は、金属粉として銅粉または銀粉を用いる実施例2〜5については非加熱(常温で実施例では20℃)とし、一方、金属粉として鉄粉あるいは亜鉛粉を用いる実施例6、7については170℃とし、また、金属粉を配合しない比較例2については非加熱(常温で実施例では20℃)とした。
その後、実施例2〜7及び比較例2のそれぞれのA3混和物とB2の有機過酸化物及び架橋助剤を、前記混練ロールにより混練りして実施例2〜7及び比較例2のB2混和物を得た。
【0047】
実施例2〜7及び比較例2のB2混和物を、それぞれ2mm×100mm×100mmの金型に仕込み、160℃で15分間加硫してソリッドゴムからなる実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物を得た。
実施例2〜7及び比較例2のB2混和物に含まれる硫黄の量を測定するため、実施例1A、1B及び比較例1と同様に全硫黄試験を行った。結果は表2の評価欄に示す。
【0048】
また、実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物に対して銀腐食試験を行った。銀腐食試験は、縦35mm、横10mm、厚さ1mmの銀メッキ鉄板上に、縦50mm、横20mm、厚さ2mmの板状とした実施例2〜7及び比較例2のゴム架橋物の試験体を、それぞれ3枚重ねて載置し、銀メッキ鉄板と試験体を包み込むように食品包装用ラップ(日立化成製、製品名Vラップ5)で巻き、実施例1A、1B及び比較例1と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
実施例2〜7及び比較例2では、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄と配合した硫黄とにより、全硫黄試験で2000〜2050ppmの硫黄が検出された。また、比較例2では、使用した材料の不純物として含まれていた硫黄と配合した硫黄とにより、全硫黄試験で2010ppmの硫黄が検出された。
しかし、実施例2〜7においては、金属粉として銅粉、銀粉、鉄粉、亜鉛粉の何れかが含まれているため、銀腐食試験で銀の腐食が無く「〇」であった。それに対し、金属粉が含まれていない比較例2では、銀の腐食があり「×」であった。
【0050】
このように、本発明によれば、ゴム混和物に硫黄が50〜3000ppm含まれていても金属の腐食を抑えることができ、不純物として硫黄成分が含まれる材料を使用したり、製造ラインを硫黄架橋品と共用したりすることができる。