【課題】潜在性熱酸発生剤を硬化剤とするカチオン重合性樹脂組成物において、硬化速度を阻害することなく、可使時間を延長した作業性の高いカチオン重合性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ基を有する化合物と、下記式(1)で表される4級ホスホニウム塩と、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤とを含むカチオン重合性樹脂組成物であって、前記4級ホスホニウム塩/前記4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の質量比が0.001〜1であるカチオン重合性樹脂組成物である。
前記4級ホスホニウム塩が、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート又はメチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェートであることを特徴とする請求項1に記載のカチオン重合性樹脂組成物。
前記導電性粒子が、ニッケル、金、銀、パラジウム、銅及びハンダからなる群から選択される金属粒子であることを特徴とする請求項5に記載のカチオン重合性樹脂組成物。
前記エポキシ基を有する化合物と前記4級ホスホニウム塩とを含む混合液に、前記4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤を添加して混合することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のカチオン重合性樹脂組成物の製造方法。
前記4級ホスホニウム塩と前記4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤とを含む混合液に、前記エポキシ基を有する化合物を添加して混合することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のカチオン重合性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、エポキシ基を有する化合物と、4級ホスホニウム塩と、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤とを必須成分として含むものである。
【0012】
本発明で使用するエポキシ基を有する化合物としては、電子部品の接続用接着剤に一般に使用されているものであればよく、通常、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。このような化合物の具体例としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシ化合物等とエピクロルヒドリン又は2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族エポキシ樹脂、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なお、これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(NaやCl等)や加水分解性塩素などを低減した高純度品を用いることが、回路接続材料に用いる場合、イオンマイグレーションの防止のため好ましい。接着力が高く、耐熱性及び電気絶縁性に優れ、溶融粘度が低く、低圧力で接続が可能であるという点から、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。更に、脂環式エポキシ樹脂を単独で用いてカチオン重合させた場合、稀に反応による発熱量が大きいため樹脂自体が熱により変質する恐れがあるいう点から、脂環式エポキシ樹脂とグリシジル型のエポキシ樹脂とを併用することがより好ましい。この場合、グリシジル型エポキシ樹脂の含有量が多くなると硬化速度が遅くなるという点から、脂環式エポキシ樹脂とグリシジル型のエポキシ樹脂とは質量比で99:1〜25:75であることが好ましい。
【0013】
粘度が高いエポキシ樹脂や固形のエポキシ樹脂を使用する場合、反応性希釈剤を用いて粘度を低下させてもよい。反応性希釈剤とは、エポキシ樹脂の開環重合に対して反応性を備えたものであり、粘度を低下させることができるものであれば特に限定されない。反応性希釈剤の具体例としては、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なお、これらの反応性希釈剤は、不純物イオン(NaやCl等)や加水分解性塩素などを低減した高純度品を用いることが、回路接続材料に用いる場合、イオンマイグレーションの防止のため好ましい。
【0014】
本発明で使用する4級ホスホニウム塩は、下記式(1)で表される。この4級ホスホニウム塩を、後述する4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤と共に硬化触媒として用いることで、硬化速度を保持しつつ、可使時間を延長するという効果が得られる。
【0016】
式(1)において、R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一の基であっても異なる基であってもよく、それぞれ独立して、アルキル基又はフェニル基(−C
6H
5)を表す。式(1)におけるR
1〜R
4がアルキル基である場合、炭素原子数1〜16のアルキル基が好ましい。
また、式(1)において、X
−は、アニオンを表し、例えば、F
−、Cl
−、I
−、Br
−、SO
42−、BF
4−、PF
4−、SbF
6−、(OC
2H
5)
2P=O
−、(C
6H
5)
4B
−等が挙げられる。
【0017】
本発明において、4級ホスホニウム塩は固体であっても液体であってもよい。また、4級ホスホニウム塩を一般的な有機溶剤により希釈又は溶解させて使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類及びその誘導体、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類、塩素系有機溶剤、フロン系有機溶剤、石油系有機溶剤、その他の特殊有機溶剤等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。なお、3級ホスフィンは、空気中で速やかに酸化され、自然発火性を有するなど取り扱いが危険である。また、4級ホスホニウム塩の代わりに一般的な硬化助剤であるイミダゾールを用いると、硬化時間の点で大きく劣ることとなる。
【0018】
本発明における4級ホスホニウム塩は、3級ホスフィン化合物とアルキルハライドとの求核反応によって4級ホスホニウムハライドが得られ、この4級ホスホニウムハライドを、所望のアニオンに交換することによって合成することができる。
【0019】
本発明における4級ホスホニウム塩として市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、日本化学工業株式会社製の商品名:ヒシコーリン(登録商標)シリーズのグレード名:PX−2B(テトラエチルホスホニウムブロマイド(Tetraethylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−2C(テトラエチルホスホニウムクロリド(Tetraethylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4B(テトラブチルホスホニウムブロマイド(Tetra-n-butylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−4C(テトラブチルホスホニウムクロリド(Tetra-n-butylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4I(テトラブチルホスホニウムアイオダイド(Tetra-n-butylphosphoniumiodide))、グレード名:PX−48B(トリブチルオクチルホスホニウムブロマイド(n-Octyltri-n-butylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−4ET(テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオエート(Tetra-n-butylphosphonium o,o-diethylphosphorodithioate))、グレード名:PX−4BT(テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート(Tetra-n-butylphosphonium benzotriazolate))、グレード名:PX−4MI(トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド(Methyltri-n-butylphosphoniumiodide))、グレード名:PX−2H(テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド(Tetraethylphosphoniumhydroxide))、グレード名:THPS(テトラキスハイドロキシメチルホスホニウムサルフェート(Tetrakis(hydroxymethyl)phosphoniumsulfate))、グレード名:PX−4FB(テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(Tetra-n-butylphosphoniumtetrafluoroborate))、グレード名:PX−4PB(テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Tetra-n-butylphosphoniumtetraphenylborate))、グレード名:PX−4FP(テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(Tetra-n-butylphosphoniumhexafluorophosphate))、グレード名:PX−412B(ドデシルトリブチルホスホニウムブロマイド(n-Dodecyltri-n-butylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−412C(ドデシルトリブチルホスホニウムクロライド(n-Dodecyltri-n-butylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−416B(ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロマイド(n-Hexadecyltri-n-butylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−416C(ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド(n-Hexadecyltri-n-butylphosphoniumchloride))、グレード名:MTPPBr(トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド(Methyltriphenylphosphoniumbromide))、グレード名:ETPPBr(トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド(Ethyltriphenylphosphoniumbromide))、グレード名:ETPPI(トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド(Ethyltriphenylphosphoniumiodide))、グレード名:BTPPBr(トリフェニルブチルホスホニウムブロマイド(n-Butyltriphenylphosphoniumbromide))、グレード名:BzTPPBr(トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド(Benzyltriphenylphosphoniumbromide))、グレード名:BzTPPCl(トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド(Benzyltriphenylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−23B(トリエチルプロピルホスホニウムブロマイド(Triethylpropylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−25B(トリエチルペンチルホスホニウムブロマイド(Triethylpentylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−2BZC(トリエチルベンジルホスホニウムクロライド(Triethylbenzylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4BZC(トリブチルベンジルホスホニウムクロライド(Tributylbenzylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4BZB(トリブチルベンジルホスホニウムブロマイド(Tributylbenzylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−42B(トリブチルエチルホスホニウムブロマイド(Tributylethylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−43B(トリブチルプロピルホスホニウムブロマイド(Tributylpropylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−45B(トリブチルペンチルホスホニウムブロマイド(Tributylpentylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−46B(トリブチルヘキシルホスホニウムブロマイド(Tributylhexylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−48B(トリブチルオクチルホスホニウムブロマイド(Tributyloctylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−48C(トリブチルオクチルホスホニウムクロライド(Tributyloctylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4AlC(トリブチルアリルホスホニウムクロライド(Tributylallylphosphoniumchloride))、グレード名:PX−4AlB(トリブチルアリルホスホニウムブロマイド(Tributylallylphosphoniumbromide))、グレード名:PX−4MP(メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(Methyltri-n-butylphosphoniumdimethylphosphate))、グレード名:PX−8MP(メチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェート(Methyltrioctylphosphoniumdimethylphosphate))等が挙げられる。これらの中でも、少量の添加で、潜在性熱酸発生剤の速硬化性を保持しつつ、可使時間を効果的に伸ばすことができるという点から、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート及びメチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェートが好ましい。
【0020】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物における硬化触媒としての4級ホスホニウム塩の量は、後述する4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の量に対して決定され、4級ホスホニウム塩/4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の質量比が0.001〜1である。4級ホスホニウム塩/4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の質量比が0.001未満であると、可使時間の延長効果は得られない。一方、質量比が1を超えると、可使時間の延長効果が得られるものの、ゲル化時間が長くなり、硬化が起こりにくいといった問題が起こる。4級ホスホニウム塩/4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の質量比は、好ましくは0.005〜0.8であり、より好ましくは0.01〜0.7である。
【0021】
本発明で使用するホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤としては、加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生することのできる化合物であればよく、例えば、芳香族スルホニウム塩、チオフェニム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等が挙げられる。これらの中でも、化合物が比較的安定であり、エポキシ樹脂と混ぜたときの硬化が速いという点から、芳香族スルホニウム塩が好ましい。
【0022】
本発明におけるホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤として市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、三新化学工業株式会社製のサンエイド(登録商標)シリーズのSI−L85、SI−L110、SI−L145、SI−L160、SI−H15、SI−H20、SI−H25、SI−H40、SI−H50、SI−60L、SI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−80、サンエイドSI−100、サンアプロ株式会社製のTA−60、TA−100、TA−110、株式会社ADEKA製のアデカオプトンCP−66(対イオン:SbF
6)、アデカオプトンCP−77、KINGINDUSTRIESINC.製のTAG−2678、TAG−2713、TAG−2172、3M製のFC−520、日本曹達株式会社製のCI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064等が挙げられる。なお、これらの潜在性熱酸発生剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0023】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物における4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の量は、エポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.2質量%〜5質量%である。4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の含有量がエポキシ樹脂に対して10質量%より多いと、可使時間が短くなる場合がある。一方、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の含有量が0.1質量%より少ないと、硬化速度が遅くなってしまう場合がある。
【0024】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物には、可使時間や硬化速度に影響を及ぼさない限り、公知の添加剤を加えることができる。公知の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、有機溶剤、充填剤、チキソ付与剤、増粘剤、減粘剤、導電剤、レベリング剤、酸化防止剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、対抗安定剤、発泡剤、有機顔料、無機顔料、熱伝導剤、電気伝導剤、染料、帯電防止剤、透湿性工場剤、撥水剤、中空発泡体、難燃剤着色剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等の他、有機水溶性化合物、無機水溶性化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等のその他の樹脂を液状もしくは固体状で併用することができる。添加剤の代表的なものは、電気伝導剤、熱伝導剤及びチキソ付与剤である。
【0025】
本発明においては、上記電気伝導剤として、ニッケル、金、銀、パラジウム、銅、ハンダ等の金属粒子、カーボン粒子のようなそれ自体で導電性を有するもの、或いは芯材粒子の表面に金属皮膜を形成した導電性粒子を用いることができる。
【0026】
前記導電性粒子の粒径は、本発明のカチオン重合性樹脂組成物の具体的な用途に応じて適切に選択されるが、本発明においてカチオン重合性樹脂組成物を電子回路接続用の接着剤として用いる場合には、粒径が小さすぎると、対向電極間での導通ができなくなり、一方、導電性粒子の粒径が大きすぎると、隣接電極間の短絡が発生するため、導電性粒子の平均粒径は電気抵抗法を用いて測定された値で0.1μm〜1000μmであることが好ましく、0.5〜100μmであることがより好ましい。
【0027】
導電性粒子の形状は特に制限はない。一般に導電性粒子は粉粒状であり得るが、それ以外の形状、例えば繊維状、中空状、板状或いは針状であってもよく、粒子表面に多数の突起を有するもの、或いは不定形のものであってもよい。これらの中でも、球状の導電性粒子が充填性に優れるという点で特に好ましい。
【0028】
芯材粒子の表面に金属皮膜を形成した導電性粒子について更に説明する。使用できる芯材粒子としては、無機物であっても有機物であっても特に制限はなく用いることができる。無機物の芯材粒子としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の金属粒子、合金、ガラス、セラミックス、シリカ、金属又は非金属の酸化物(含水物も含む)、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素等が挙げられる。有機物の芯材粒子としては、例えば、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブテン、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル二トリル、ポリアセタール、アイオノマー、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
【0029】
芯材粒子の形状は特に制限はない。一般に芯材粒子は粉粒状であり得るが、それ以外の形状、例えば繊維状、中空状、板状あるいは針状であってもよく、粒子表面に多数の突起を有するもの、或いは不定形のものであってもよい。これらの中でも、球状の芯材粒子が導電性粒子とした場合に充填性に優れるという点で特に好ましい。
【0030】
前記芯材粒子の平均粒径は0.1μm〜1000μmであることが好ましく、0.5μm〜100μmであることがより好ましい。芯材粒子の平均粒径が小さすぎると、金属皮膜を形成した導電性粒子であっても対向電極間での導通ができなくなる場合がある。一方、芯材粒子の平均粒径が大きすぎると、隣接電極間の短絡が発生する場合がある。なお、芯材粒子の平均粒径は電気抵抗法を用いて測定された値を示す。
【0031】
更に、前述の方法によって測定された芯材粒子の粒度分布には幅がある。一般に、粉体の粒度分布の幅は、下記計算式(1)で示される変動係数により表わされる。
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100 ・・・(1)
この変動係数が大きいことは分布に幅があることを示し、一方、変動係数が小さいことは粒度分布がシャープであることを示す。この変動係数が50%以下、好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下の芯材粒子を使用することが好ましい。この理由は、異方性導電膜中の導電性粒子として用いた場合に、接続に有効な寄与割合が高くなるという利点があるからである。
【0032】
また、芯材粒子のその他の物性は、特に制限されるものではないが、樹脂材料からなる芯材粒子の場合は、下記計算式(2):
K(kgf/mm
2)=(3/√2)×F×S−3/2×R−1/2 ・・・(2)
〔式(2)中、F及びSはそれぞれ、微小圧縮試験機(MCTM−500島津製作所製)で測定したときの、芯材粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)及び圧縮変位(mm)であり、Rは、微小圧縮試験機(MCTM−500島津製作所製)で測定した芯材粒子の半径(mm)である〕で定義されるKの値が、20℃において10kgf/mm
2〜10000kgf/mm
2の範囲であり、且つ10%圧縮変形後の回復率が20℃において1%〜100%の範囲であるものが、電極同士を圧着する際に電極を傷つけることがなく、電極と十分に接触させることができる点で好ましい。
【0033】
芯材粒子の表面に金属皮膜を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション法等を利用する乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等を利用する湿式法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせて芯材粒子の表面に金属皮膜を形成してもよい。芯材粒子の表面に金属皮膜を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション処理を利用する等の乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式法、或いはこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0034】
本発明において、前記導電性粒子は、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の金属粒子、或いは芯材粒子の表面に金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の1種又は2種以上の金属皮膜を形成した導電性粒子を用いることが好ましく、特に無電解めっき法により芯材粒子の表面に金属皮膜を形成した導電性めっき粒子が、粒子表面が均一且つ濃密に金属皮膜で被覆されているという点で好ましく、とりわけ芯材粒子として樹脂を用いたものは金属粉に比べて比重が軽いために沈降しにくく、分散安定性が増し、樹脂の弾性による電気接続の維持ができるなどの点で好ましい。なお、前記金属皮膜の合金(例えばニッケル−リン合金やニッケル−ホウ素合金)も含まれる。
【0035】
導電性粒子として、導電性粒子の表面を絶縁体で被覆した被覆導電性粒子を用いることができる。導電性粉体の粒子表面を絶縁性無機質微粒子で被覆処理することにより、粒子同士の凝集を抑制し、また、保存安定性に優れたものにすることができる。
【0036】
熱伝導剤としては、窒化ホウ素、酸化アルミ、酸化チタン、シリカ等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。また粒子形状、大きさ、添加量は特に限定されない。
【0037】
本発明のカチオン重合性組成物は、上記した成分を一般的な装置を用いて混合することにより得ることができる。このような装置としては、例えば、プラネタリーミキサー、2本ロール、3本ロール、ビーズミル、ボールミル等が挙げられるが、1液均一化せしめるものであれば特に限定はしない。短時間に混練かつペースト中の気泡を取り除く作業が同時にできることから、自公転式真空脱泡攪拌機が適している。
【0038】
混練時に各構成成分を投入する順番は特に限定はしないが、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤をエポキシ樹脂に直接添加すると、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤とエポキシ樹脂とが接触した瞬間に反応が開始してしまうことがある。そのため、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤の投入は、予め可使時間延長剤である4級ホスホニウム塩が含まれているエポキシ樹脂に4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤を投入するか、又は予め4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤と4級ホスホニウム塩とを均一な溶液にしておくことが好ましい。このとき、4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤や可使時間延長剤としての4級ホスホニウム塩に影響を及ぼさない限り、一般的な有機溶剤、例えば、アルコール類、多価アルコール類及びその誘導体、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類、塩素系有機溶剤、フロン系有機溶剤、石油系有機溶剤、その他の特殊有機溶剤などを用いてもよい。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0039】
このようにして得られたカチオン重合性樹脂組成物は、例えば、60℃〜150℃で数秒間で接着させたいものにおいて、可使時間を気にすることなく使用することが可能であるため、接着構造体を製造するのに有用である。また、本発明のカチオン重合性樹脂組成物に電気伝導性粒子を添加した場合は、異方導電接着剤となり、特に回路基板や回路部品を電気的に相互に接続するために用いる電子材料用接着剤として適している。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
<メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェートの合成>
窒素環境下で、3級ホスフィンであるトリブチルホスフィン100gを60℃に加熱し、30℃のトリメチルホスフェート液を12時間かけて45g滴下した。滴下終了後、60℃で24時間熟成した。熟成後、イオンクロマトグラフで測定し、トリブチルホスフィンが反応で完全に消費されたのを確認した後、得られた透明液体をヘキサンで2回洗浄し、真空加熱しながら乾燥させ、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート90gを得た。
【0042】
<メチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェートの合成>
窒素環境下で、3級ホスフィンであるトリオクチルホスフィン100gを60℃に加熱し、30℃のトリメチルホスフェート液を12時間かけて45g滴下した。滴下終了後、60℃で24時間熟成した。熟成後、イオンクロマトグラフで測定し、トリブチルホスフィンが反応で完全に消費されたのを確認した後、得られた透明液体をヘキサンで2回洗浄し、真空加熱しながら乾燥させ、メチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェート90gを得た。
【0043】
<実施例1〜9>
表1に示した量のエポキシ樹脂、粘度調整剤及び4級ホスホニウム塩を、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して混合液とした。その後、得られた混合液に表1に示した量の潜在性熱酸発生剤を加え、更に、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して、カチオン重合性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は透明で且つ粘稠な液体であった。
【0044】
<実施例10>
表1に示した量の潜在性熱酸発生剤及び4級ホスホニウム塩を、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して混合液とした。その後、得られた混合液に表1に示した量のエポキシ樹脂及び粘度調整剤を加え、更に、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して、カチオン重合性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は透明で且つ粘稠な液体であった。
【0045】
なお、表1及び2において、エポキシ樹脂Aは、脂環式エポキシ樹脂(株式会社ダイセル社製、商品名:セロキサイド(登録商標)CEL2012P)、エポキシ樹脂Bは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社社製、商品名:jER828)、粘度調整剤は、日本アエロジル株式会社社製、商品名;アエロジル(登録商標)200、潜在性熱酸発生剤Aは、芳香族スルホニウム塩(三新化学株式会社社製、商品名:サンエイド(登録商標)SI-60L)、潜在性熱酸発生剤Bは、芳香族スルホニウム塩(三新化学株式会社社製、商品名:サンエイド(登録商標)SI-80L)、4級ホスホニウム塩Aは、上記で合成したメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、4級ホスホニウム塩Bは、上記で合成したメチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェート、イミダゾールは、四国化成株式会社社製、商品名:キュアゾール(登録商標)2E4MZである。
【0046】
【表1】
【0047】
<比較例1及び2>
表2に示した量のエポキシ樹脂及び粘度調整剤を、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して混合液とした。その後、得られた混合液に表2に示した量の潜在性熱酸発生剤を加え、更に、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して、カチオン重合性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は透明で且つ粘稠な液体であった。
【0048】
<比較例3>
表2に示した量のエポキシ樹脂、粘度調整剤及び4級ホスホニウム塩を、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して混合液とした。その後、得られた混合液に表2に示した量の潜在性熱酸発生剤を加え、更に、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して、カチオン重合性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は透明〜白色の液体であった。
【0049】
<比較例4>
表2に示した量のエポキシ樹脂、粘度調整剤及び硬化助剤としてのイミダゾールを、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して混合液とした。その後、得られた混合液に表2に示した量の潜在性熱酸発生剤を加え、更に、自公転式真空脱泡攪拌機で2000rpm、15分混練して、カチオン重合性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は透明で且つ粘稠な液体であった。
【0050】
【表2】
【0051】
<可使時間測定>
実施例1〜10及び比較例1〜4のカチオン重合性樹脂組成物について、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製レオメーターMARS IIを用い、せん断速度1[1/s]、25℃での粘度を測定した。
この樹脂組成物を35℃の恒温で保持し、24時間毎に粘度測定を行った。粘度が樹脂組成物調製直後と比較して2倍の粘度になるまでの時間を可使時間とし、その結果を表3に示す。
【0052】
<ゲル化時間測定>
実施例1〜10及び比較例1〜4のカチオン重合性樹脂組成物について、150℃の熱板上に樹脂組成物を0.2g載せ、かき混ぜながらゲル化するまでの時間(秒)を測定した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
<剥離接着強さ(90度剥離試験)>
実施例1〜10及び比較例1〜4のカチオン重合性樹脂組成物について、150℃の熱板上に200mm×200mm×0.05μmのアルミニウム箔を置き、樹脂組成物2gと四隅に厚み0.2mmになるようにスペーサーを置き、200mm×200mm×2mmのステンレス板をその上から載せ、10分間保持し接着させた。常温まで放冷後アルミニウム箔側を25mmの幅にスリットし、毎分50mmの速度で90度方向にアルミニウム箔を引き上げた。その結果、実施例1〜10及び比較例1〜2のカチオン重合性樹脂組成物では、同等の剥離接着強さが得られた。一方、比較例3及び4のカチオン重合性樹脂組成物は硬化しないため測定できなかった。
【0055】
以上の結果より、4級ホスホニウム塩と4級ホスホニウム塩以外の潜在性熱酸発生剤とを特定の質量割合で配合した実施例1〜10のカチオン重合性樹脂組成物は、ゲル化時間は短いままで、35℃で保持したとしても48時間以上の可使時間を確保できることが確認された。
【0056】
<実施例11〜20及び比較例5〜6の異方導電接着剤の調製>
実施例1〜10及び比較例1〜2で得られたカチオン重合性樹脂組成物95gに対し、金属被覆樹脂粒子(日本化学工業株式会社製、商品名:ブライト20GNR4.6−EH)5gを添加し、自公転式真空脱泡攪拌機により2000rpm、15分混練して、異方導電接着剤を得た。
【0057】
<可使時間及びゲル化時間の測定>
得られた実施例11〜20及び比較例5〜6の異方導電接着剤について、上記した可使時間測定及びゲル化時間測定と同様の方法で可使時間及びゲル化時間を評価した。結果を表4に示す。
【0058】
<抵抗値の測定>
実施例11〜20及び比較例5〜6の異方導電接着剤を用い、Al配線基板上にダミーICを140℃、8秒、1.5Nで実装した。実装したIC付基板を2端子法で測定した。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例11〜20の異方導電接着剤は、ゲル化時間は短いままで、35℃で保持したとしても48時間以上の可使時間を確保することができ、更に、接続抵抗値は低い値を示すことが確認された。