【実施例1】
【0010】
<1>全体構成
図1は、本発明の斜面安定化構造を示す概略平面図である。
本発明に係る斜面安定化構造は、斜面Xに所定間隔を設けて配置される複数の安定体Aと、隣接する安定体A間を互いに連結する連結材Bを少なくとも含んでなる。
説明の便宜上、連結材B、安定体Aの順に詳細について説明する。
【0011】
<2>連結材
図2は、連結材を示す概略平面図である。
連結材Bは、隣接する安定体A同士を繋げるための部材である。
連結材Bは、鋼棒等の剛性部材でも良いが、望ましくは、可撓性を備えた補強繊維製の帯状部材B1を用いることができる。
この連結材Bの両端には、フックB2を設けておき、後述する下部受圧板22の係留孔223に掛止することで、安定体Aを連結材に取り付けることができる。
その他、連結材Bには、該連結材Bの長さを伸縮可能な公知の機構を適宜設けておく。これは、安定体A間を接続した連結材Bの長さを縮めることで、該連結材Bに緊張力を導入するためである。
【0012】
<3>安定体
図3は、本発明の安定体を示す概略斜視図である。
安定体Aは、斜面Xに押圧力を導入するための部材である。
安定体Aは、斜面Xに所定間隔を設けて定着した補強材1と、該補強材1の露出部分に上下に積層するように装着する、上部受圧板21及び下部受圧板22からなる受圧ユニット2を少なくとも有してなる。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0013】
<3.1>補強材
補強材1は、斜面Xに設けて引張力を導入するための部材である。
補強材1はロックボルトなどの公知のアンカー部材を用いることができ、詳細な説明を省略する。
【0014】
<3.2>受圧ユニット
受圧ユニット2は、斜面Xを押さえつけるための部材である。
受圧ユニット2は、上下に積層するように配する上部受圧板21及び下部受圧板22を少なくとも含んでなる。
前記上部受圧板21及び下部受圧板22は、前記補強材1の地表での露出端を差し込むための挿入孔211,221をそれぞれ設け、これらの挿入孔が211,221連通する状態で積層配置する形態を呈する。
【0015】
<3.2.1>下部受圧板
下部受圧板22は、直接斜面Xに接地して、押圧力を伝達するための機能を少なくとも備える部材である。
【0016】
[下部受圧板の形状]
下部受圧板22は、平板状の部材であり、底部に斜面に接する押圧面222を設けている。
なお、本実施例では、下部受圧板22の平面視形状を円形状としているが、特に限定するものではない。
【0017】
[係留孔]
下部受圧板22は、連結材Bを係留するために、上下に貫通した複数の係留孔223を設けている。隣接する安定体A(下部受圧板22)の数と係留孔223の数は必ずしも一致させておく必要はなく、係留孔223の数をより多く設けてあれば問題は生じない。
【0018】
本実施例に係る下部受圧板33は、挿入孔221を中心に放射状に均等に配した6箇所の係留孔223を備えている。これらの係留孔を全て利用して隣接する下部受圧板22と適宜連結材Bによって連結すれば、全体として略ハニカム構造の略中央と交点部分に安定体Aが配置され、各外辺並びに対角線部分に連結材Bが位置することになる。
【0019】
[下部受圧板の素材]
下部受圧板22は、従来の受圧板と同様、金属製とすることが望ましい。これは、上部受圧板21から導入される押圧力を斜面Xに確実に伝達するためである。
【0020】
<3.2.2>上部受圧板
上部受圧板21は、下部受圧板22に斜面Xへの押圧力を伝達する機能を少なくとも備える部材である。
【0021】
[上部受圧板の平面形状]
上部受圧板21の平面形状は特に限定しないが、本実施例では挿入孔211を中心とした円盤形状を呈している。これは、補強材1への装着時に上部受圧板21の向きを考慮する必要がない点が有益であることによる。
なお、上部受圧板21は、装着後、平面投影視して前記下部受圧板22を完全に覆う程度の大きさを備えていることが望ましい。これは、下部受圧板21の腐食等を極力防止するための保護カバーとしての機能を高める為である。
【0022】
[底部の構造]
上部受圧板21の底部には、下部受圧板22と接する伝達面212と、下部受圧板22に係留する前記連結材BのフックB2を押さえる固定部213を形成してある。
固定部213は、丸みを持たせた凸形状とするなど多様な形状を採用することができるが、前記した連結材BのフックB2の形状に上手くおさまるような形状とすれば、より強固に位置決めすることもできる。
【0023】
固定部213は、上部受圧板21の底部の外側全周に渡って形成することもできるし、下部受圧板22の係留孔223の配置にあわせて、間欠的に設けても良い。
【0024】
なお、固定部213を全周に渡って設けておけば、上部受圧板21の装着に際し、下部受圧板22の係留孔223の位置を考慮する必要が無い点で有益である。
【0025】
そのほか、上部受圧板の底部には、補強目的でリブ224を設けても良い。
【0026】
[上部受圧板の素材]
上部受圧板21の素材は特に限定されないため、軽量で、耐腐食性、耐光性を備えた部材(例:繊維製、合成樹脂製など)を用いることで、多くの利点を得ることができる。
ただし、必要強度が絶対的に不足する箇所について、部分的に金属製としてもよい。
例えば、耐候性を備えたプラスチック製とすることにより、従来の受圧板よりも大幅な軽量化が可能となる。
【0027】
<3.3>その他の部材
安定体Aを構成するその他の部材として、前記補強材1に螺合して、前記受圧ニットを下方に押し下げる締結部材3や、補強材に装着するシース41、座金42、ワッシャ43、保護キャップ44などがある。
これらの部材は、公知の部材を用いれば良く、詳細な説明は省略する。
【実施例2】
【0028】
次に、前記した各部材を用いた斜面の安定化工法の手順について
図4を参照しながら説明する。
【0029】
<1>補強材の配置
まず、斜面Xに所定間隔を設けて補強材1を配置する。補強材の配置方法は公知の方法を用いることができる。例えば、斜面Xの穿孔箇所に補強材1を挿入し、当該穿孔箇所にグラウト材を注入して、補強材1を定着する方法などがある。
補強材1はシース41を設けつつ、その先端を地表面に露出しておく。
【0030】
<2>下部受圧板の設置
次に、前記補強材1の露出端に、挿入孔221を介して下部受圧板22を装着する。
この時点では、下部受圧板22は、斜面Xに置かれただけであるため、斜面Xを押さえつける力は作用していない。
【0031】
<3>連結材の係留、緊張力の導入
次に、隣接する下部受圧板22間に連結材Bを係留してから、該連結材Bの長さを縮めて緊張力を導入していく。
【0032】
<4>上部受圧板の装着
次に、上部受圧板21を装着し、さらに締結部材3を座金42及びワッシャ43を介しつつ補強材1に螺合して、各受圧板21,22を下方に押し下げていく。
このとき、上部受圧板21は下部受圧板22に斜面Xへの押圧力を伝達するだけでなく、下部受圧板22に係留している連結材Bを上方から押さえつけて位置決めする作用を生ずる。
【0033】
<5>頭部処理
補強材1の頭部に保護キャップ44を被せ、保護キャップ44の内部にグリースを充填して補強材1の頭部の保護処理を行う。
【0034】
<6>まとめ
これらの工程を順次行うことで、斜面Xの安定状態を維持した安定化構造を構築することができる。
【0035】
<7>機能・作用
本発明にかかる斜面の安定化工法によれば、下部受圧板22に係留した連結材Bの端部を上部受圧板21で固定することで、下部受圧板22からの連結材Bの離脱を防止しつつ該連結材Bの敷設方向を維持することとなり、地山の流動をさらに抑制することができる。
また、下部受圧板22に対して連結材をB点で連結するため、対向する下部受圧板22との連結材Bの敷設方向のズレを吸収することができる。
また、連結材Bに帯状部材B1を用いることで、地山を面で押さえる効果を得ることができる。
【0036】
<8>その他の手順
本発明に係る斜面の安定化方法は、連結材の緊張作業と、上部受圧板による連結材の係留部分の固定作業の手順を入れ換えて実施することもできる。