【解決手段】シャフト4の回転にともなってケース体3内で交差して配置された第一,第二両頭ピストン7,8が内サイクロイドの原理によってシリンダ16内を直線往復運動し、各シリンダ室22において吸入排気を繰り返す流体回転機において、各シリンダ室22を閉止するシリンダヘッド部17には、シャフト4から駆動伝達されて回転しシリンダ室22と連通路20a,20bを介して交互に連通する吸入孔19a及び吐出孔19bが設けられたロータリーバルブ19が対向するピストン7,8の長手方向軸線と交差して出力軸線と平行に回転可能に各々設けられている。
シャフトの回転にともなってケース体内で交差して配置された第一,第二両頭ピストンが内サイクロイドの原理によってシリンダ内を直線往復運動し、各シリンダ室において吸入吐出を繰り返す流体回転機であって、
前記各シリンダ室を閉止するシリンダヘッドには、前記シャフトから駆動伝達されて回転し前記シリンダ室と連通路を介して交互に連通する吸入孔及び吐出孔が設けられたロータリーバルブがピストンの長手方向軸線と交差して出力軸線と平行に回転可能に各々設けられていることを特徴とする流体回転機。
前記各シリンダ室と前記ロータリーシリンダの吸入孔若しくは吐出孔と連通するための前記シリンダヘッドに形成される連通路は、前記シリンダの軸心及び前記ロータリーバルブの軸心を含む面に対して対称形となるように形成されている請求項1記載の流体回転機。
前記シャフトの回転数を減速して伝達する減速機構を介して前記ロータリーバルブが回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の流体回転機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための一実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。先ず、
図1乃至
図13を参照して流体回転機の一例として四サイクルエンジン若しくはタービンを例示して説明するものとする。四サイクルエンジンは通常の着火式のガソリンエンジン、四サイクルディーゼルエンジン、空気エンジンなどを想定している。また、エンジンの特徴に直接関係しない燃料噴射装置、気液混合器(キャブレター)、マフラー、放熱構造(冷却フィン、冷却液を用いた冷却装置、ファンを備えた空冷装置等)、潤滑油(エンジンオイル)構造については、図示は省略するものとする。
【0013】
また、以下に説明する四サイクルエンジンは、前提として出力軸(シャフト)を回転させると、当該シャフトを中心に半径rの回転円に沿って第一クランク軸が回転し、当該第一クランク軸を中心に筒状の偏心カムが相対的に回転する。このとき、第一クランク軸に嵌め込まれた偏心カムの第二仮想クランク軸を中心とする半径rの回転軌跡(内サイクロイド)に沿って当該偏心カムに交差して組み付けられた両頭ピストン組がシャフトを中心とする半径2rの同心円(転がり円)の径方向に直線往復運動を行なう原理を応用して成り立っている。
【0014】
尚、以下の説明では、仮想クランクアームとは、部品単体でクランクアームが存在しなくても構造上クランクアームの存在が認められるものを言う。また、クランクアームが省略されていても機構上クランクアームの存在が認められるものを言う。また、仮想クランク軸とは、機構上のクランク軸が存在しなくとも回転中心となる軸芯の存在が仮想上認められるクランク軸を言う。また、ピストン組とは、ピストン単体のピストンヘッド部にシールカップ及びシールカップ押さえ部材やピストンリングなどのシール材が一体に組み付けられたものを言う。
【0015】
図2において、第一ケース体1と第二ケース体2とを組み付けて構成されるケース体3(
図1(G)参照)にシャフト4(分割された出力軸4a,4b)が回転可能に軸支されている。
図5に示すように第一ケース体1と第二ケース体2とは、四隅に設けられたねじ孔1a,2aを重ね合わせて、ボルト3aをねじ孔1a,2aにねじ嵌合させて一体に組み付けられている。このケース体3内には、
図2に示すように、第一クランク軸5を中心に相対的に回転可能な筒状の偏心カム6と該偏心カム6に軸受を介して互いに交差して組み付けられた第一両頭ピストン組7及び第二両頭ピストン組8が相対的に回転可能に収容されている。以下、具体的に説明する。
【0016】
図2において、第一クランク軸5は、シャフト4(分割された出力軸4a,4b)の軸心に対して偏心して組み付けられる。本実施形態では、
図4に示すように、出力軸4aは、第一バランスウェイト9の貫通孔9aに対して第一クランク軸5の一端と反対側から各々嵌め込まれる。そして、第一クランク軸5の一端に設けられたピン孔5aと第一バランスウェイト9のピン孔9b(
図4参照)を位置合わせした状態でピン9cをピン孔9b及びピン孔5aに嵌め込む。そして、ピン9cに直交する向きに形成された貫通孔9dと出力軸4aに設けられたねじ孔4cを位置合わせしてボルト9eを第一クランク軸5に突き当たるまでねじ嵌合させることで、第一クランク軸5、第一バランスウェイト9、出力軸4aが一体に組み付けられる。同様に、出力軸4bは、第二バランスウェイト10の貫通孔10aに対して第一クランク軸5の他端と反対側から各々嵌め込まれる。そして、第一クランク軸5の他端に設けられたピン孔5bと第二バランスウェイト10のピン孔10b(
図4参照)を位置合わせした状態でピン10cをピン孔10b及びピン孔5bに嵌め込む。そして、ピン10cに直交する向きに形成された貫通孔10dと出力軸4bに設けられたねじ孔4dを位置合わせしてボルト10eを第一クランク軸5に突き当たるまでねじ嵌合させることで、第一クランク軸5、第二バランスウェイト10、出力軸4bが一体に組み付けられる。尚、第一,第二バランスウェイト9,10は各出力軸4a,4bと一体に形成されていてもよい。
【0017】
図2において、第一バランスウェイト9に連結された出力軸4aは第一軸受11aにより第一ケース体1に回転可能に軸支されており、第二バランスウェイト10に連結された駆動軸4bは第一軸受11bにより第二ケース体2に回転可能に軸支されている。第一,第二バランスウェイト9,10は、出力軸4a,4bの周りに組み付けられ、第一クランク軸5及び偏心カム6を含む出力軸4a,4bを中心とした回転部品間の質量バランスをとるために設けられている。
【0018】
また、偏心カム6は中空筒状に形成されており、回転中心となる第一クランク軸5が挿通する筒孔6aと、該筒孔6aの軸心に対して偏心した筒体6bが軸心方向両側に各々連続して形成されている。筒体6bの軸心は、第一クランク軸5の軸心に対して偏心した第二仮想クランク軸と一致するようになっている。本実施形態では、交差する第一,第二両頭ピストン組7,8が2本であるため、第二仮想クランク軸は、第一クランク軸5を中心として180度位相がずれた位置に各々形成されている。偏心カム6は、例えばステンレススチール系の金属材が用いられ、MIM(メタルインジェクションモールド)により一体成形される。
【0019】
また、偏心カム6の筒孔6aには両側から一対の軸受ホルダ12a,12bが圧入されるか或いは筒孔壁に接着されて組み付けられる。一対の軸受ホルダ12a,12bには、少なくとも筒孔6aより大径の第二軸受13a,13bを各々保持可能な軸受保持部12c,12dが形成されている。軸受ホルダ12a,12bは、筒孔6aに両側から挿入されて組み付けられる。軸受ホルダ12a,12bは第二軸受13a,13bを介して偏心カム6を第一クランク軸5に対して相対的に回転可能に軸支する。第二軸受13aと第一バランスウェイト9の間及び第二軸受13bと第二バランスウェイト10との間にはワッシャー13c,13dを介して一体に組み付けられている。第一クランク軸5は、偏心カム6の回転中心となる。
【0020】
また、筒孔6aの軸心に対して偏心して長手方向両側に形成された一対の筒体6bの外周には、第三軸受14a,14bが各々組み付けられている。第一,第二両頭ピストン組7,8は、第二仮想クランク軸に対して軸直角方向に交差(直交)して重なり合って組み付けられ、互いに交差したまま第三軸受14a,14bを介して偏心カム6に対して相対的に回転可能に組み付けられる。
【0021】
以上の構成により、第一クランク軸5と第二仮想クランク軸(筒体6bの軸心)を結ぶ第二仮想クランクアームの長さを回転半径rとなるように設定することで、第一クランク軸5を中心として偏心カム6及び第一,第二両頭ピストン組7,8を軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる。
【0022】
また、
図2に示す第一,第二両頭ピストン組7,8において、ピストン本体7a,8aの長手方向両端部には、ピストンヘッド部7b,8b(図示せず)が起立形成されている。ピストンヘッド部7b,8bには、環状のシール材としてピストンリング7c,8c(図示せず)、リング押さえ部材7d,8d(
図4参照)が各々ボルト15により組み付けられている。ピストン本体7a,8aには金属材(アルミニウム材)が用いられ、耐食性を向上させるため表面処理(陽極酸化皮膜形成)されているのが好ましい。ピストンヘッド部7b,8bは、外周面を覆うピストンリング7c,8cを介して、シリンダ16(
図2参照)の内壁面とのシール性を保ちながら摺動するようになっている。リング押さえ部材7d,8d(
図4参照)には、後述する複数の突起部7e,8eが突設されている。
【0023】
図5に示すように、ケース体3の側面開口部(4か所)にはシリンダ16が各々組み付けられ、シリンダ開口部をシリンダヘッド部17で各々閉止するように組み付けられる。シリンダ16及びシリンダヘッド部17は、ケース体3に対して固定ボルト18によって組み付けられる。シリンダ16の開口部周縁部には凹溝16aが形成されている。この凹溝16aには環状のシールリング16bが嵌め込まれる。そして、シリンダヘッド部17の貫通孔17dに固定ボルト18を挿入してねじ孔1b及びねじ孔2bにねじ嵌合させることにより、シリンダヘッド部17及びシリンダ16がケース体3の4側面に各々一体に組み付けられる。
【0024】
図5において、各シリンダ16の開口部を閉止するシリンダヘッド部17には、シャフト4(出力軸4a,4b)から駆動伝達されて回転するロータリーバルブ19が両頭ピストン組7,8の長手方向軸線と交差して出力軸4a,4bと平行に回転可能に各々設けられている。シリンダヘッド部17には、シャフト4(出力軸4a,4b)と平行にバルブ用貫通孔17aが設けられている。このバルブ用貫通孔17aに筒体状のロータリーバルブ19が回転可能に貫通して設けられている。また、
図7(A)に示すように、ロータリーバルブ19の外周面には、吸入孔19a及び吐出孔19bが長手方向に2カ所ずつ設けられている。ロータリーバルブ19の内部には、吸入孔19aに接続する吸入路19c及び吐出孔19bに接続する排気路19dが互いに仕切られて形成されている(
図7(D)参照)。
【0025】
また、エンジン仕様の場合、シリンダ室において爆発工程(燃焼工程)を伴うため、温度変化や流体圧の変化によってロータリーバルブ19が変形するおそれがある。ロータリーバルブ19が変形すると、円滑な回転動作が妨げられる。そこで、
図7(A)〜(E)に示すようにロータリーバルブ19の長手方向に複数箇所で180°より小さい円弧状の一対のスリット19eが位相を変えて(例えば90°位相をずらして)形成されている。これにより、ロータリーバルブ19が熱膨張率の差により変形したり、側圧を受けて変形したりしようとしても、長手方向に複数箇所に設けられた一対のスリット19eによって応力が吸収されてしまうため、ロータリーバルブ19の回転が妨げられることがない。また、ロータリーバルブ19の外周にはバルブ貫通孔17a内で円滑に回転するための潤滑油のオイル溜り用凹溝19f(
図2,
図3参照)が周回して形成されていてもよい。オイル溜り用凹溝は、バルブ貫通孔17aの内壁に設けられていてもよい。
【0026】
また、
図8(A)〜(G)において、シリンダヘッド部17のシリンダ16の開口部に対向する対向面には、各シリンダ室とロータリーバルブ19の吸入孔19a若しくは吐出孔19bと連通するための連通孔として吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bが各々形成されている(
図8(D)(E)参照)。この吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bの形状は、シリンダ16の軸心及びこれと直交するロータリーバルブ19の軸心を含む基準面Mに対して対称形となるように各々形成されている(
図8(F)参照)。流体回転機が内燃機関の場合、燃焼室(シリンダ室)の爆発工程により第一,第二両頭ピストン組7,8が上死点へ押し上げられた際に、流体圧(ガス圧)がロータリーバルブ19に側圧として作用する。この側圧を基準面Mに対称に形成された吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bにより側圧を相殺することができる。よって、ロータリーバルブ19の円滑な回転が妨げられることがなくなる。尚、吸入側連通孔20a及び排気側連通孔20bとバルブ用貫通孔17aとを連通する交差する横孔は、シリンダヘッド部17に開口孔17bを設けて吸入側連通孔20a若しくは排気側連通孔20bを突き抜けて形成した後、各開口孔17bに止めねじ21を嵌め込んで閉塞される。この開口孔17bの一部は後述する点火プラグ23の装着孔として使用される(
図1(A)(D)(E)(F)(G)参照)。
【0027】
図5において、第一ピストンヘッド部7b,第二ピストンヘッド部8bとシリンダ16及びシリンダヘッド部17に囲まれて燃焼室(シリンダ室)22が4か所に形成されている。各シリンダヘッド部17には、燃焼室22に連通する吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bが各々形成されている。また、各シリンダヘッド部17の中央部には、点火プラグ(若しくはグロープラグ)23が各燃焼室22に対応して各々設けられている。燃焼室22が圧縮燃焼空気(混合ガス;気液混合体)で満たされた状態で点火プラグ23を点火すると爆発が生じるようになっている。
【0028】
尚、第一ピストンヘッド部7b及び第二ピストンヘッド部8bに組み付けられるリング押さえ部材7d,8dには、吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bに進入してデッドスペースを減少させる突起部7e,8eが形成されていることが好ましい。
【0029】
また、
図2において、ロータリーバルブ19には出力軸4bに駆動伝達される回転を減速して伝達するための減速機構24が設けられている。以下、具体的に説明する。
出力軸4bには第一ギア24aが一体となって回転可能に組み付けられている。この第一ギア24aには、第一アイドラギア24bが噛み合っている。第一アイドラギア24bは、第二ケース体2に嵌め込まれた抜け止めピン25により組み付けられ、抜け止めピン25を中心に従動回転する。第一アイドラギア24bは、段付きギアであり、第一大径ギア24b1が第一ギア24aと噛み合っている。第一アイドラギア24bの第一小径ギア24b2は、出力軸4bに設けられた第二アイドラギア24cと噛み合っている。第二アイドラギア24cは、段付きギアであり、第二小径ギア24c1が第一小径ギア24b2と噛み合っている。また第二アイドラギア24cの第二大径ギア24c2は、ロータリーバルブ19の一端側(排気側)に一体に設けられたバルブギア26と噛み合っている。第二アイドラギア24cは、出力軸4bに軸受24dを介して回転可能に組み付けられている。また、軸受24dは、出力軸4bに嵌め込まれたワッシャー24eを介して軸端にねじ嵌合するナット24fによって軸方向に位置決めかつ抜け止めされて組み付けられている。バルブギア26は、ロータリーバルブ19の外周に形成されたねじ部にナット27をねじ嵌合させて一体に組み付けられる。
【0030】
図2において、減速機構24は、ケース体3の下方であってシリンダヘッド部17と排気側ベース部29との間にスペーサ28を介して形成される収納空間に配置されている。排気側ベース部29の四隅には、ロータリーバルブ19の一端側(排気側)が挿通する貫通孔29aが形成されている。排気側ベース部29の下側には遮蔽部材30が重ね合わせて設けられる。遮蔽部材30の四隅にも、ロータリーバルブ19の一端側(排気側)が挿通する貫通孔30a(
図6参照)が形成されている。尚、排気側ベース部29と遮蔽部材30の間には、摺動シールリング31がロータリーバルブ19の外周に嵌め込まれている。
【0031】
また、遮蔽部材30には、排気側蓋材32が重ね合わせて組み付けられる。排気側蓋材32には、ロータリーバルブ19の排気側端部(排気路19d)に臨む排気通路32aが形成されている。排気通路32aは四隅に設けられたロータリーバルブ19の排気路19dどうしが連通するように環状に形成されている。排気通路32aは排気側蓋材32に設けられた排気口32bより排気されるようになっている(
図1(A)(C)(D)参照)。また、
図6に示すように排気通路32aを囲むように環状に形成されたシール材33を介して遮蔽部材30と排気側蓋材32が重ね合わせて組み付けられるため、排気通路32aの気密性が保たれるようになっている。
図2に示すように、遮蔽部材30と排気側蓋部材32は排気側ベース部29にボルト34をねじ嵌合させて一体に組み付けられる。また、排気側蓋部材32、遮蔽部材30、排気側ベース部29、スペーサ28は、固定ボルト35を各々の貫通孔に挿入してシリンダヘッド部17のねじ孔17g(
図8参照)とねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。
【0032】
また、ケース体3の上方には、吸入側ベース部36及び吸入側蓋部材37が重ね合わせて組み付けられる。吸入側ベース部36の四隅には、ロータリーバルブ19の他端側(吸入側)が挿通する貫通孔36aが各々形成されている。また、シール材38を嵌め込む凹溝36bも環状に形成されている。貫通孔36aには、ロータリーバルブ19の他端側が挿入されバルブ軸受39によって回転可能に支持される。バルブ軸受39は、ロータリーバルブ19の外周に嵌め込まれ、ロータリーバルブ19の外周に形成されたねじ部にナット40をねじ嵌合させて一体に組み付けられる。バルブ軸受39は、吸入側ベース部36によって、軸方向及び径方向に隙間を設けて保持されている。(隙間を設けた理由は、ロータリーバルブ19の軸方向荷重を受ける目的である。)吸入側蓋部材37には、ロータリーバルブ19の吸入側端部(吸入路19c)に臨む吸入通路37aが形成されている。吸入通路37aは四隅に設けられたロータリーバルブ19の吸入路19cどうしが連通するように環状に形成されている。吸入通路37aは、吸入側蓋部材37に設けられた吸入口37bから吸入されるようになっている(
図1(A)(B)(D)(G)参照)。
【0033】
また、
図6に示すように吸入側蓋部材37は、吸入通路37aを囲むように環状に形成されたシール材38を介して吸入側ベース部材36が重ね合わせて組み付けられるため、吸入通路37aの気密性が保たれるようになっている。
図2に示すように、吸入側蓋部材37は吸入側ベース部材36に内周側に8カ所に配置され外周側に4か所に配置されたボルト41によって一体に組み付けられている。また、吸入側ベース部材36は、ボルト42によってシリンダヘッド部17のねじ孔17e(
図8参照)とねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。また、吸入側蓋部材37及び吸入側ベース部材36は、4隅に配置された合計8カ所の固定ボルト43(
図6参照)を各々の貫通孔に挿入してシリンダヘッド部17のねじ孔17f(
図8参照)とねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。
【0034】
図2において、ロータリーバルブ19が所定方向に回転すると、第二アイドラギア24c、第一アイドラギア24bを介して第一ギア24aが回転し、出力軸4bが反対方向に減速して回転する。減速機構24による減速比は任意に設定できるが、
図2のエンジン仕様の場合には例えば1/4となるように設計されている。また
図3のタービン仕様の場合には、1/2となるように設計されている。
尚、
図3のタービン仕様の場合の流体回転機の構造は
図2と同様であり詳細な説明は省略するが、吸入動作と排気動作を切り替えるタイミングが異なる。
【0035】
次に四サイクルエンジンの組立構成の一例について
図4乃至
図6を参照して説明する。
先ず、
図4を参照して、第一、第二両頭ピストン組7,8の偏心カム6への組み立て構成例について説明する。偏心カム6の筒孔6aに第一クランク軸5を挿入し、偏心した一対の筒体6bの外周に第三軸受14a,14bを嵌め込み、その外周側に第一両頭ピストン組7,第二両頭ピストン組8を嵌め込む。第一両頭ピストン組7及び第二両頭ピストン組8は、ピストン本体7a,8aの両側に設けられたピストンヘッド部7b,8bの外周にピストンリング7c,8cが嵌め込まれ、突起部7e,8eが形成されたリング押さえ部材7d,8dがボルト15によって各々一体に組み付けられている。
【0036】
偏心カム6に第一両頭ピストン組7及び第二両頭ピストン組8が組み付けられた後、第一クランク軸5の軸方向両側より軸受保持部12c,12dに第二軸受13a,13bを保持した軸受ホルダ12a,12bを圧入して組み付ける。第一クランク軸5の両端には、ワッシャー13c,13dを介して第一,第二バランスウェイト9,10及び出力軸4a,4bが一体に組み付けられる。また、出力軸4a,4bにはワッシャー11c,11dが嵌め込まれる(
図4参照)。
【0037】
上述した第一、第二両頭ピストン組7,8が偏心カム6に組み付けられた回転体を、
図5に示すように第一ケース体1と第二ケース体2に収納する。第一軸受11aを出力軸4aにワッシャー11cを介して嵌め込み、第一ケース体1に回転可能に保持される。また、第一軸受11bを出力軸4bにワッシャー11dを介して嵌め込み、第二ケース体2に回転可能に保持される。また、シリンダ16を第一ケース体1と第二ケース体2の4面に各々挟み込んでピストンヘッド部7b,8bを挿入し、各シリンダ6にシリンダヘッド部17を各々組み付ける。また、第一ケース体1の四隅からボルト3aを嵌め込んで第二ケース体2とねじ嵌合させて、ケース体3に回転式シリンダ装置が収納される。
【0038】
図6において、回転式シリンダ装置の出力軸4a側に吸入ユニット、出力軸4b側に排気ユニットをそれぞれ組み付ける。
【0039】
吸入ユニットは、第一ケース体1側に組み付けられる。吸入側ベース部36を吸入側ベース部材36は、ボルト42によってシリンダヘッド部17のねじ孔17eとねじ嵌合することにより第一ケース体1側に一体に組み付けられる。4か所にあるロータリーバルブ19の外周にバルブ軸受39が各々嵌め込まれ、ナット40をねじ嵌合させてシリンダヘッド部17のバルブ用貫通孔17aに各々挿入される。吸入側蓋部材37を吸入側ベース部材36にボルト41によって一体に組み付ける。また、固定ボルト43を、吸入側蓋部材37及び吸入側ベース部材36の連通する貫通孔に挿入してシリンダヘッド部17のねじ孔17fとねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。
【0040】
また、排気ユニットは、第二ケース体2側に組み付けられる。減速機構24を第二ケース体2に組み付ける。出力軸4bに第一ギア24aを組み付け、これと噛み合う第一アイドラギア24bを抜け止めピン25によって組み付ける。また、出力軸4bに軸受24dを介して第二アイドラギア24cを組み付け、ワッシャー24eを介してナット24fをねじ嵌合して組み付け、これと噛み合う4個のバルブギア26をロータリーバルブ19の外周に嵌め込みナット27をねじ嵌合して組み付ける。実際には、原点位置となるピストンの上死点位置を確認しながら減速機構24が組み付けられる。
【0041】
そして、減速機構24を覆うように排気ユニットを組み付ける。スペーサ28を4か所ある貫通孔28aにロータリーバルブ19を挿通し、シリンダヘッド部17と図示しないねじ孔どうしを位置合わせして重ね合わせてボルト28bにより組み付ける。また、スペーサ28に排気側ベース部29をボルト29b(
図6参照)により一体に組み付ける。更に、遮蔽部材30と排気側蓋部材32を排気側ベース部29にボルト34をねじ嵌合させて一体に組み付ける。最後に、第二ケース体2(シリンダヘッド部17)に対してスペーサ28、排気側ベース部29、遮蔽部材30及び排気側蓋部材32を重ね合わせた状態で、固定ボルト35を各々の貫通孔に挿入してシリンダヘッド部17のねじ孔17gとねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。
【0042】
上述のように組み立てられた四サイクルエンジンは、シャフト(出力軸)4の回転に伴ってケース体3の4方に設けられたシリンダ室(燃焼室22)を閉止するシリンダヘッド部17に設けられたロータリーバルブ19が各々回転し、各ロータリーバルブ19に形成された吸入孔19aが吸入路19cと重なり合う範囲で燃焼室22と連通して吸入動作が行われ、各ロータリーバルブ19に形成された吐出孔19bが排気路19dと重なり合う範囲で燃焼室22と連通することで排気動作が繰り返し行われる。よって、出力軸4を中心としたエンジン構成部品の回転運動によって小型で簡素化したバルブ構造を通じて吸排気動作を実現でき、しかも内サイクロイドの原理を応用した回転運動により低振動かつ低騒音を実現することでエンジンの出力効率を向上できる四サイクルエンジンを提供することができる。また、回転による振動を低減することで、第一,第二両頭ピストン8,7は従来のレシプロタイプに比べてピストンヘッド部7b,8bの往復運動による機械的な損失を防いでエネルギー変換効率を高めることができ、しかもダンパー等の防振構造を簡略化することができる。
【0043】
ここで、四サイクルエンジンの燃焼サイクルの一例について
図9を参照して説明する。
図9(A)は、4つある燃焼室22a〜22dにおける第1〜第4ピストン位置に応じた燃焼サイクル(吸入・圧縮・爆発・排気)を示す工程表である。
図9(B)は、交差配置された第一,第二両頭ピストン組7,8を、第1〜第4ピストンに置き換えた説明図である。
図9(B)に示す第1ピストンは上死点から中間位置へ切り替わる途中であり、第3ピストンは下死点から中間位置へ移動中である。第2ピストンは、中間位置から下死点へ向かって移動中であり、第4ピストンは中間位置から上死点へ移動中である。また、
図9(C)は第1〜第4ピストンにより形成される燃焼室22a〜22dを含む断面説明図である。
【0044】
図9(A)において、第1ピストン〜第4ピストンは、
図9(C)に示す4か所に設けられた燃焼室22a〜22dにおける燃焼状態を説明するために
図9(B)に示す交差配置される第一,第二両頭ピストン組7,8に対して便宜的に付した呼称である。また、
図10に示すように、ロータリーバルブ19に形成される吸入孔19a及び吐出孔19bは各々180°対向する位置に形成され、ロータリーバルブ19の長手方向に形成される吸入孔19aと吐出孔19bとは周方向に45°位相がずれて形成されているものとする。
【0045】
図9(A)において、出力軸4の回転角度が0°(ロータリーバルブ19の回転角度が0°)の状態を例示している。このとき、第1燃焼室22aでは圧縮から爆発への動作切替中であり、第2燃焼室22bでは排気動作であり、第3燃焼室22cでは吸入から圧縮への動作切替中であり、第4燃焼室22dでは爆発動作が行われる。
【0046】
出力軸4の回転角度が90°まで回転すると、第1燃焼室22aでは爆発動作が行われ、第2燃焼室22bでは排気から吸入への動作切替中であり、第3燃焼室22cでは圧縮動作が行われ、第4燃焼室22dでは、爆発から排気への動作切替中となる。
【0047】
出力軸4の回転角度が180°まで回転すると、第1燃焼室22aでは爆発から排気への動作切替中であり、第2燃焼室22bでは吸入動作が行われ、第3燃焼室22cでは圧縮から爆発への動作切替中であり、第4燃焼室22dでは、排気動作が行われる。
【0048】
出力軸4の回転角度が180°まで回転すると、第1燃焼室22aでは爆発から排気への動作切替中であり、第2燃焼室22bでは吸入動作が行われ、第3燃焼室22cでは圧縮から爆発への動作切替中であり、第4燃焼室22dでは、排気動作が行われる。
【0049】
出力軸4の回転角度が270°まで回転すると、第1燃焼室22aでは排気動作が行われ、第2燃焼室22bでは吸入から圧縮への動作切替中であり、第3燃焼室22cでは爆発動作が行われ、第4燃焼室22dでは、排気から吸入へ動作切替中となる。
【0050】
出力軸4の回転角度が360°まで回転すると、第1燃焼室22aでは排気から吸入へ動作切替中であり、第2燃焼室22bでは圧縮動作が行われ、第3燃焼室22cでは爆発から排気へ動作切替中となり、第4燃焼室22dでは、吸入動作が行われる。
【0051】
出力軸4の回転角度が450°まで回転すると、第1燃焼室22aでは吸入動作が行われ、第2燃焼室22bでは圧縮から爆発へ動作切替中となり、第3燃焼室22cでは排気動作が行われ、第4燃焼室22dでは、吸入から圧縮動作へ動作切替中となる。
【0052】
出力軸4の回転角度が540°まで回転すると、第1燃焼室22aでは吸入から圧縮へ動作切替中となり、第2燃焼室22bでは爆発動作が行われ、第3燃焼室22cでは排気から吸入へ動作切替中となり、第4燃焼室22dでは、圧縮動作が行われる。
【0053】
出力軸4の回転角度が630°となると、第1燃焼室22aでは圧縮動作が行われ、第2燃焼室22bでは爆発から排気へ動作切替中となり、第3燃焼室22cでは吸入動作が行われ、第4燃焼室22dでは、圧縮から爆発へ動作切替中となる。
【0054】
そして、出力軸4の回転角度が720°となると(2回転すると)、回転角度が0°の状態に戻る。以下同様の動作を繰り返すことになる。
【0055】
図10−1〜
図10−8は、エンジン仕様のロータリーバルブの開閉動作とピストンの位置関係を示す説明図である。
図10−1〜
図10−8は、出力軸の回転角度が0°〜630°(ロータリーバルブの回転角度が0°〜−157.5°)の範囲で出力軸が90°(バルブが22.5°)ごとに回転した状態を図示している。ロータリーバルブ19の回転方向は、出力軸4の回転方向(例えば時計回り方向)と逆方向(例えば反時計回り方向(角度を−で表示))とする。説明に使用するピストンはいずれでもよいが、
図9(A)との関係では第2ピストン(第二両頭ピストン組8の一方側)の位置関係に対応している。また、シリンダヘッド部17に形成された吸入側連通路20aを上段に、吐出側連通路20bを下段に図示するものとする。尚、減速機構24は、エンジン仕様の場合出力軸4の回転に対してロータリーバルブ19の回転速度を1/4に減速して回転させるものとする。
【0056】
図10−1、
図10−2は、吸入工程を示す。
図10−1は出力軸の回転角度が0°、ロータリーバルブ19の回転角度が0°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは上死点にあり、排気から吸入への動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入してデッドスペースが必要最小限となるようになっている。
【0057】
図10−2は出力軸の回転角度が90°、ロータリーバルブ19の回転角度が−22.5°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aが連通状態となり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは上死点から下死点に向かって移動し、燃焼室22bには吸入孔19a,吸込側連通路20aを通じて吸入動作が行われる。第2ピストンの移動に伴い、リング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bから退避し始める。
【0058】
図10−3、
図10−4は、圧縮工程を示す。
図10−3は出力軸の回転角度が180°、ロータリーバルブ19の回転角度が−45°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは下死点にあり、吸入から圧縮へ動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bからほぼ退避した状態となる。
【0059】
図10−4は出力軸の回転角度が270°、ロータリーバルブ19の回転角度が−67.5°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aが遮断状態となり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは下死点から中間位置へ移動し、燃焼室22b内に吸入したガス(気液混合体)の圧縮動作が行われる。第2ピストンの移動に伴い、リング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入し始める。
【0060】
図10−5、
図10−6は、爆発工程を示す。
図10−5は出力軸の回転角度が360°、ロータリーバルブ19の回転角度が−90°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは上死点にあり、圧縮から爆発への動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入した状態となる。
【0061】
図10−6は出力軸の回転角度が450°、ロータリーバルブ19の回転角度が−112.5°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。点火プラグ23(
図1参照)を点火することにより燃焼室22bで圧縮されたガスが燃焼爆発を起こし、第2ピストンは上死点から下死点に向かって移動する。このとき、ロータリーバルブ19にも爆発に伴う側圧が作用するが、吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bがシリンダ16の軸心及びこれと直交するロータリーバルブ19の軸心を含む面に対して各々対称形となるように形成されているため、側圧が相殺されてロータリーバルブ19の円滑な回転が妨げられることがなくなる。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bから退避する。
【0062】
図10−7、
図10−8は、排気工程を示す。
図10−7は出力軸の回転角度が540°、ロータリーバルブ19の回転角度が−135°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは下死点にあり、爆発から排気への動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bからほぼ退避した状態となる。
【0063】
図10−8は出力軸の回転角度が630°、ロータリーバルブ19の回転角度が−157.5°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは連通状態となる。また、第2ピストンは下死点から上死点に向かって移動するため、燃焼室22b内の燃焼ガスは吐出側連通路20b、吐出孔19bを通じて排気される。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入する。
【0064】
出力軸の回転角度が720°、ロータリーバルブ19の回転角度が−180°となると、
図10−1の状態に戻る。以下同様の動作を繰り返すことになる。
以上のように各燃焼室22とロータリーバルブ19との連通路が極めて短いうえにリング押さえ部材8dには、吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bに進入してデッドスペースを減少させる突起部8eが形成されているので、吸入、圧縮、爆発、排気と動作切り替える際に流体を逃して、デッドスペースをさらに減らすことができる。
【0065】
次に、
図11−1〜
図11−4は、タービン仕様のロータリーバルブの開閉動作とピストンの位置関係を示す説明図である。
図11−1〜
図11−4は、出力軸の回転角度が0°〜270°(ロータリーバルブの回転角度が0°〜−135°)の範囲で、出力軸が90°(バルブが45°)ずつ回転した状態を図示している。ロータリーバルブ19の回転方向は、出力軸4の回転方向(例えば時計回り方向)と逆方向(例えば反時計回り方向(角度を−で表示))とする。ロータリーバルブ19に形成される吸入孔19aは180°対向する位置に形成され、吐出孔19bも180°対向する位置に形成されている。ロータリーバルブ19の長手方向に形成される吸入孔19aと吐出孔19bとは周方向に90°位相がずれて形成されているものとする。また、シリンダヘッド部17に形成された吸入側連通路20aを上段に、吐出側連通路20bを下段に図示するものとする。説明に使用するピストンはいずれでもよいが、エンジン仕様と同様に第2ピストン(第二両頭ピストン組8の一方側)を用いて説明する。また、
図10ではシリンダ16内を燃焼室としたが
図11ではシリンダ室22として説明するものとする。尚、減速機構24は、タービン仕様の場合、出力軸4の回転速度に対してロータリーバルブ19の回転速度を1/2に減速して回転させるものとする。
【0066】
図11−1、
図11−2は、吸入工程を示す。
図11−1は出力軸の回転角度が0°、ロータリーバルブ19の回転角度が0°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは上死点にあり、吐出から吸入への動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入してデッドスペースを可及的に減少させるようになっている。
【0067】
図11−2は出力軸の回転角度が90°、ロータリーバルブ19の回転角度が−45°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aが連通状態となり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは上死点から下死点に向かって移動し、シリンダ室22には吸入孔19a,吸込側連通路20aを通じて吸入動作が行われる。第2ピストンの移動に伴い、リング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bから退避し始める。
【0068】
図11−3、
図11−4は、吐出工程を示す。
図11−3は出力軸の回転角度が180°、ロータリーバルブ19の回転角度が−90°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは遮断状態にある。また、第2ピストンは下死点にあり、吸入から吐出への動作切替中にある。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bからほぼ退避した状態となる。
【0069】
図11−4は出力軸の回転角度が270°、ロータリーバルブ19の回転角度が−135°の状態を示す。ロータリーバルブ19の吸入孔19aと吸入側連通路20aは遮断状態にあり、吐出孔19bと吐出側連通路20bは連通状態となる。また、第2ピストンは下死点から上死点に向かって移動するため、シリンダ室22b内に吸入されたガスは吐出側連通路20b、吐出孔19bを通じて吐出される。第2ピストンのリング押さえ部材8dに形成された突起部8eは吐出側連通路20bに進入する。
【0070】
出力軸の回転角度が360°、ロータリーバルブ19の回転角度が−180°となると、
図11−1の状態に戻る。以下同様の動作を繰り返すことになる。
【0071】
図12(A)〜(G)は、シリンダヘッド部17に形成されるシリンダ室22とロータリーバルブ19との連通路の形態を変更した実施形態を示す。ロータリーバルブ19に形成される吸入孔19aは180°対向する位置に形成され、吐出孔19bも180°対向する位置に形成されている。ロータリーバルブ19の長手方向に形成される吸入孔19aと吐出孔19bとは周方向に90°位相がずれて形成されているものとする。
【0072】
シリンダヘッド部17に形成される吸入側連通路20aと吐出側連通路20bは、シリンダ16の軸心とロータリーバルブ19の軸心を含む面がシリンダヘッド部17と交差する部分に形成されている。即ち、
図12(E)に示すように、吸入側連通路20aと吐出側連通路20bは直列に配置されている。このように、バルブ貫通孔17aと吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bが直線的に配置されていると、
図8に示す加工用に必要な開口孔17bは不要になりシリンダヘッド部17の孔開け加工がし易くしかもシリンダ室22との連通路が更に短くなるので、デッドスペースを低減して出力効率を高めることができる。また、
図13に示すように、第一,第二両頭ピストン7,8のリング押さえ部材7d,8dに形成される突起部7e,8eも直列配置されて形成される。
【0073】
次に、
図13−1〜
図13−4は、他例にかかるタービン仕様のロータリーバルブの開閉動作とピストンの位置関係を示す説明図である。
図13−1〜
図13−4は、出力軸の回転角度が0°〜270°(ロータリーバルブの回転角度が0°〜−135°)における状態を図示するものとする。また、シリンダヘッド部17に形成された吸入側連通路20aを上段に、吐出側連通路20bを下段に図示するものとする。説明に使用するピストンはいずれでもよいが、第2ピストン(第二両頭ピストン組8の一方側)を用いて説明する。減速機構24は、タービン仕様の場合、出力軸4の回転に対してロータリーバルブ19の回転速度を1/2に減速して回転させるものとする。ロータリーバルブ19の回転方向は、出力軸4の回転方向(例えば時計回り方向)と逆方向(例えば反時計回り方向(角度を−で表示))とする。尚、吸入吐出動作は、
図11と同様であるので詳細説明は省略する。
【0074】
また、ロータリーバルブ19の吸入孔19a及び吐出孔19bを各々1カ所に設けるとすれば、減速比は1にすることも可能である。また、
図13−5に示すように、ロータリーバルブ19の吸入孔19a及び吐出孔19bを周方向3カ所に形成し、減速機構24の減速比を1/3と設定するようにしてもよく、この減速比率は任意に設定することができる。
【0075】
このように、シリンダヘッド部17に形成される吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bをシリンダ16の軸心とロータリーバルブ19の軸心を含む面がシリンダヘッド部17と交差する部分に形成することにより、各シリンダ室22からロータリーバルブ19へ連通する吸入側連通路20a及び吐出側連通路20bの構成を簡略化して製造コストを低減することができる。
【0076】
以上説明したように、各シリンダ室を閉止するシリンダヘッドにシャフトから駆動伝達されて回転しシリンダ室と連通路を介して交互に連通する吸入孔及び吐出孔が設けられたロータリーバルブが各々配置されているので、シリンダ室とロータリーバルブとの連通路はきわめて短いため、デッドスペースを可及的に減らして出力効率を高めることができる。
また、前記各シリンダ室と前記ロータリーバルブの吸入孔若しくは吐出孔と連通するための前記シリンダヘッドに形成される連通路は、前記シリンダの軸心及びこれと直交する前記ロータリーバルブの軸心を含む面に対して対称形となるように形成されていると、流体回転機が内燃機関の場合、シリンダ室の爆発工程により両頭ピストンが上死点へ押し上げられた際にロータリーバルブ19に作用する側圧を対称形に形成された連通路20a,20bにより流体圧を相殺することができる。よって、ロータリーバルブ19の円滑な回転が妨げられることがなくなる。
【0077】
前記ピストンヘッド部には、前記連通路に進入してデッドスペースを減少させる突起部が形成されていることが望ましい。これにより、シリンダ室とロータリーバルブを接続する連通路にピストンヘッド部に設けられた突起を進入させることで、流体を逃して、デッドスペースをさらに減らして出力効率を高めることができる。
【0078】
第一クランク軸5の両軸端部には、第一,第二バランスウェイト9,10が一体に組み付けられ、当該第一,第二のバランスウェイト9,10に出力軸4a,4bが一体に組み付けられるので、通常のクランク機構を構成するクランク軸やクランクアームなどの機構部品に比べて部品点数が少なく機構的に簡略化されたクランク機構を実現することができるうえに、エンジン構成部品間の回転バランスがとり易く、低振動かつ低騒音でエネルギーロスの少ない四サイクルエンジンを提供できる。
また、流体回転機としてはエンジンなどの内燃機関やタービンなどの外燃機関のほかに空気エンジンなど他の流体機械などに幅広く適用することができる。
また、出力軸とロータリーバルブの減速方法は、実施例に限定されるわけではなく、例えば出力軸側の歯車から各ロータリーバルブへ個別に歯車を設ける方法で連結されていても良い。