特開2015-161269(P2015-161269A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-161269(P2015-161269A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】流体制御システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20150811BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   F03D7/04 Z
   H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-38365(P2014-38365)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】満尾 和徳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 重哉
(72)【発明者】
【氏名】跡部 隆
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC02
3H178DD51X
3H178DD57Z
3H178EE02
3H178EE05
3H178EE08
3H178EE11
3H178EE23
3H178EE25
(57)【要約】
【課題】回転翼周りの剥離流れを効果的に制御するように無次元パラメータFを決めることを可能にし、翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータにより、回転翼の効率を向上させるものであり、回転翼の回転軸トルクを増加させるとともに、翼周りの非定常流れ場を安定させ、翼の耐久性向上にも寄与することが可能な流体制御システムを提供すること。
【解決手段】プラズマアクチュエータ110の電極対を所定の放電周波数で断続的に放電させるように制御する制御手段が、F=f×C/U≧0.5で定義される無次元数パラメータ:Fが、0.5以上となるように放電周波数(f)を制御するように構成されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚以上の翼を有する回転翼と、前記回転翼の前縁表面に設けられ放電によりプラズマを発生する電極対を有するプラズマアクチュエータと、前記電極対を所定の放電周波数で断続的に放電させるように制御する制御手段とを備えた流体制御システムであって、
前記制御手段が、前記放電周波数を変更可能であり、以下の式で定義される無次元数パラメータ:Fが、0.5以上となるように放電周波数(f)を制御するように構成されていることを特徴とする流体制御システム。
=f×C/U≧0.5
f:放電周波数
:回転翼の回転中心から半径方向所定位置における翼弦長
:前記半径方向所定位置における翼の回転速度と回転面に入射する流れの速度を合成した相対速度
【請求項2】
前記半径方向所定の位置が、翼長に対し回転中心から70%から80%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の流体制御システム。
【請求項3】
前記制御手段が、放電周波数の1周期(1/f)中の放電割合を制御可能であり、
前記放電割合が、10%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体制御システム。
【請求項4】
前記プラズマアクチュエータの電極対が、翼面に複数配置され、
前記制御手段が、前記複数の電極対の放電パラメータとして少なくとも放電周期、放電割合及び放電電圧を個別に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の流体制御システム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記複数の電極対と同数の個別電源を備えていることを特徴とする請求項4に記載の流体制御システム。
【請求項6】
前記制御手段が、前記複数の個別電源を冷却する冷却手段、及び、電流を監視する監視手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の流体制御システム。
【請求項7】
前記流体制御システムが、風速を計測する風速検出手段、翼の回転数を計測する回転数計測手段、及び、翼の回転面に対する風向を計測する風向計測手段を備え、
前記制御手段が、前記風速検出手段、回転数計測手段及び風向計測手段の出力を基に前記半径方向所定位置における翼と流れの相対速度(U)を演算する演算手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の流体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御し、回転翼の効率を向上させるのに好適な流体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DBDプラズマアクチュエータ(Dielectric Barrier Discharge Plasma Actuator)と呼ばれる放電を利用した流体制御デバイスの研究が国内外の大学を中心に行われており、翼の揚力向上や抵抗軽減等を追求する研究が行われ、流体制御デバイスの実用化に向けて、無人航空機や風車などへの適用も研究されている。
プラズマアクチュエータ510は、図7に模式的に示すように、例えば、回転翼501の表面等に2枚の薄膜電極511からなる電極対が配置されてなり、電源530からの電圧を印加することで電極511間に放電を発生させるように構成されている。
電極511として銅箔テープを使用し、電極511間に誘電体512としてポリイミドフィルムテープ(例えば、カプトン(商標名)粘着テープ)を使用して電極対を構成した場合、低電圧では放電は起きないがkVオーダーの高電圧をかけると放電を開始し、約2m/sの誘起流が生じる。
【0003】
図9に示すように、制御手段520からの電圧信号をアンプ531とトランス532を用いた電源530で昇圧してkVオーダーの電圧をプラズマアクチュエータ510の2枚の薄膜電極511に印加する。
なお、電流は電極511間で数mA程度しか流れないため消費電力は小さく、強い発熱は伴わない。
放電は効果的に流体を制御するため、図8に示すように、所定の割合で間欠的に放電させるのが一般的であるが、連続放電も可能である。
プラズマアクチュエータ510の電極511間に放電を発生させると、放電で誘起される流れによって、図10の参考写真(左がプラズマアクチュエータOFF、右がプラズマアクチュエータON)に示すように、翼の前縁から渦が発生し、翼上面の圧力が回復して上方へ引っ張られる力が作用して揚力が増加する。
回転翼の場合は、揚力が増加することにより回転軸に伝わるトルクが向上する。
【0004】
このようなプラズマアクチュエータの応用例として、誘起される流れによって流体の流れを制御するものが提案されている(特許文献1、2等参照。)。
特許文献1のものは、管路内を流れる流体の管路内での圧力損失や振動・騒音を低減することを目的として、前述の原理を用いて流れを制御するものである。
特許文献2のものは、風車等の回転翼の翼面上の流れを最適化することを目的として、前述の原理を用いて流れを制御するものである。
また、発明者も、固定翼、振動翼や回転翼に応用した場合の空力性能の改善に関して実証を行ってきた(非特許文献1乃至3等参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】満尾 和徳、渡辺 重哉、跡部 隆、塩原 辰郎、伊藤 健、田中 元史、「DBDプラズマアクチュエータによる水平軸風車の空力性能改善」、日本機械学会流体工学部門講演会講演論文集、社団法人日本機械学会、2012年11月17−18日
【非特許文献2】満尾 和徳、渡辺 重哉、跡部 隆、加藤 裕之、内田 竜朗、田中 元史、「プラズマアクチュエータによる動的失速翼の揚力向上」、日本機械学会2012年度年次大会、2012年9月9−12日
【非特許文献3】満尾 和徳、渡辺 重哉、跡部 隆(宇宙航空研究開発機構)、大久保 辰郎、内田 竜朗、田中 元史、「プラズマアクチュエータによる2次元動的失速翼の揚力改善」、航空宇宙学会年会、2012年4月
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−293925号公報
【特許文献2】特開2012−249510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した公知のプラズマアクチュエータの応用例では、一定の効果は得られるものの、それぞれ課題とする改善点が異なり、最適化された具体的な制御手段の構成についても確立していない。
特許文献1のものは、管路内を流れる流体の管路内での圧力損失や振動・騒音を低減することを目的とするもので、風車等の回転翼の表面にプラズマアクチュエータを設けるものとは挙動が全く異なり、風車等の回転翼の制御手段として応用することは不可能であった。
【0008】
特許文献2のものは、風車等の回転翼の翼面上の流れを制御するものであり、そのための制御手段を有しているが、当該制御手段は、条件に応じて放電を行うか否かを決定するもの、具体的には、完全失速状態となるような現象を捉え、この完全失速状態となった場合においても、早急にその状態を解消して、パワーカーブに沿った出力が得られるように放電をON/OFFするものである。
必要な時にのみプラズマアクチュエータを放電させて流れを制御するという効率的な制御手法を提案しているが、流れに対してプラズマアクチュエータをどのような放電無次元パラメータ(F)で動作させれば効果的な制御が可能であるかは開示されておらず、効果的な流れ制御を可能にするFの範囲についても開示されていない。
また、発明者は、非特許文献1乃至3等に示すように、各種の条件と効率の向上の関係を実証したが、具体的に実用化する際の最適化のために必要な制御手段に関する提案はなされていない。非特許文献2と3は2次元流れに適用した結果であり、風車の翼のように3次元的な流れに適用したものではない。
【0009】
本発明は、回転翼周りの剥離流れを効果的に制御するように無次元パラメータFを決めることを可能にし、翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータにより、回転翼の効率を向上させるものであり、回転翼の回転軸トルクを増加させるとともに、回転翼周りの非定常流れ場を安定させ、回転翼の耐久性向上にも寄与することが可能な流体制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る流体制御システムは、1枚以上の翼を有する回転翼と、前記回転翼の前縁表面に設けられ放電によりプラズマを発生する電極対を有するプラズマアクチュエータと、電極対を所定の放電周波数で断続的に放電させるように制御する制御手段とを備えた流体制御システムであって、制御手段が、放電周波数を変更可能であり、
=f×C/U≧0.5
f:放電周波数
:回転翼の回転中心から半径方向所定位置における翼弦長
:前記半径方向所定位置における翼の回転速度と回転面に入射する流れの速度(風車の場合、風速)を合成した相対速度。
で定義される無次元数パラメータ:Fが、0.5以上となるように放電周波数(f)を制御するように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係る流体制御システムによれば、電極対を所定の放電周波数で断続的に放電させるように制御する制御手段が、前述の式で定義される無次元数パラメータ:Fが、0.5以上となるように放電周波数(f)を制御するように構成されていることにより、変化する諸条件に追従して放電周波数(f)を最適に制御して効率を常に向上させることが可能となる。
が0.5未満では、いかなる回転条件下でも急激に効率向上の効果が低下する。
【0012】
本請求項2に記載の構成によれば、半径方向所定の位置が、翼長に対し回転中心から70%から80%の範囲内であることにより、風車のトルク性能への寄与が高い範囲において確実に前述の式で定義される放電周波数(f)を制御できるため、さらに確実に効率を向上させることが可能となる。
本請求項3に記載の構成によれば、放電割合が10%以下であることにより、放電のためのエネルギの消費が少なく、かつ、電極対の耐久性を向上することができる。
放電割合が2.5から10%では、放電割合の増加に伴い効率も向上するが、10%より大きくなると効率の向上はなく、エネルギの消費は増大し、放電時間の増加により電極対の寿命も低下する。
【0013】
本請求項4に記載の構成によれば、電極対が翼面に複数配置され、制御手段が複数の電極対の放電パラメータとして少なくとも放電周期、放電割合及び放電電圧を個別に制御することにより、回転翼の半径方向の位置に応じた最適な制御を行うことが可能となる。
本請求項5に記載の構成によれば、制御手段が複数の電極対と同数の個別電源を備えていることにより、電極対毎の個別の放電の制御をより確実に行うことが可能となる。また、1台の電源が不調になっても残りの電源で放電を維持させることができる。
本請求項6に記載の構成によれば、制御手段が複数の個別電源を冷却する冷却手段、及び、電流を監視する監視手段を備えていることにより、発熱や放電異常等のトラブルを防止することが可能となる。また、そのことで流体制御システムの寿命を延ばすことができる。
本請求項7に記載の構成によれば、制御手段が、風速検出手段、回転数計測手段及び風向計測手段の出力を基に半径方向所定位置(好ましくは回転中心から70%から80%の範囲内)における翼と流れの相対速度(U)を演算する演算手段を有していることにより、より確実に変化する流れに追従して制御し効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る流体制御システムが適用される風車の概略説明図。
図2】本発明の一実施形態に係る流体制御システムが適用される風車の正面図及び側面図。
図3図2の風車の放電周波数に対する回転軸トルク改善効果のグラフ。
図4図2の風車の無次元数パラメータ:Fに対する回転軸トルク改善効果のグラフ。
図5図2の風車の放電割合に対する回転軸トルク改善効果のグラフ。
図6図2の風車のプラズマアクチュエータの半径方向位置毎の放電周波数に対する回転軸トルク改善効果のグラフ。
図7】プラズマアクチュエータの模式図。
図8】プラズマアクチュエータの放電波形グラフ。
図9】プラズマアクチュエータの放電制御の説明図。
図10】翼の前縁の流れを可視化した参考写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の流体制御システムは、回転翼と、回転翼の前縁表面に設けられ放電によりプラズマを発生する電極対を有するプラズマアクチュエータと、電極対を所定の放電周波数で断続的に放電させるように制御する制御手段とを備え、制御手段が放電周波数を変更可能であり、無次元数パラメータ:Fが、0.5以上となるように放電周波数(f)を制御するように構成されている。
例えば、図1に示すように、3枚の回転翼101を有する風車100の各回転翼101の前縁表面にプラズマアクチュエータ110が設けられ、電源は中心のノーズ部102内に内蔵されている。制御手段は電源と同様にノーズ部102内に内蔵してもよく、外部に設けてもよい。
また、回転軸103には回転翼101の回転数を計測する回転数計測手段(図示せず)が設けられ、風車100に近接して、風速を計測する風速検出手段121、及び、回転翼101の回転面に対する風向を計測する風向計測手段122が設けられている。
なお、風速検出手段121、風向計測手段122は、風車100のノーズ部102の中に内蔵されていてもよい。
風速と風向と回転翼101の回転数を知ることができれば、放電の無次元パラメータF求めることができ、その無次元パラメータFに応じて、プラズマアクチュエータ110を放電させれば効果的な制御が可能になる。
【実施例1】
【0016】
以上のように構成された流体制御システムが適用される風車100の風洞試験を、JAXA 6.5m×5.5m低速風洞で実施した。
風車100は、図2に示すように、3枚翼で構成され、回転翼101のサイズは翼幅1m、翼弦長0.2mで、翼形状はNACA0012である。
また、回転部の回転中心は床面から2.5mの位置にあり、回転直径は、2.376mであり、回転翼101は回転面に対して10deg(一様流の向きに対して80deg)の角度で取り付け、回転方向はノーズ部102の方向から正面に見て時計回りに設定した。
【0017】
安全に試験が実施できるように風車100の回転部分は高い安全率を設定して製作するとともに、回転軸103に回生ブレーキ(サーボモータ)と電磁プレーキを取り付けるなどの安全対策をとった。
また、ナセル部104に振動センサを取り付け、風車100の動作の健全性を確認しながら実験を行った。
さらに、風洞試験を実施するにあたり、風洞に持ち込む前に風車100の性能を評価する予備実験を行い、安全性を十分確認し風洞試験を行った。
風車100は、最大420rpmで回転し、風速20m/sまで試験を行うことができ、風車100の回転数制御と圧力計測、軸トルク計測は1台のPCから制御計測できるようになっている。
【0018】
また、プラズマアクチュエータ110は、従来例と同様に、電極として銅箔テープを使用し、電極間に誘電体としてポリイミドフィルムテープ(例えば、カプトン(商標名)粘着テープ)を使用して電極対を構成し、回転翼101の前縁に取り付けた。
プラズマアクチュエータ110の電源はノーズ部102の中に内蔵されており、制御手段によって遠隔操作できるようになっている。
風洞試験では放電電圧Vpp=9kV、基本周波数:9kHz、放電周波数(変調周波数)f:20Hz〜300Hzまで変えて放電させた。
1周期サイクル中の2.5〜20%(放電割合:Duty=10%)の時間だけ間欠的に放電するよう設定して実験を行った。
プラズマアクチュエータ110は翼根側と翼端側に2分割されており、個別に制御できるように構成した。
電源は2台搭載されており、翼根側と翼端側のプラズマアクチュエータ110を個別に制御でき、またシンクロさせて放電させることもできる。
回転翼101の前縁は放電の絶縁性を高めるため樹脂で構成した。
【0019】
風洞実験では、風車100の回転面の下流側直近に回転軸トルクセンサ(歪センサ)が設置され、回転によって発生するトルクを計測した。
歪センサの出力はスリップリングを介して支柱内を通って風洞の外に導かれた。
その信号はアンプによって増幅され、データ収録装置に取り込んだ。
【0020】
プラズマアクチュエータ110による軸トルク改善効果を調べるために、プラズマアクチュエータ110を動作させた際の回転軸トルクと、軸トルク増加率を調べた。
試験条件は、風速U=10m/s、横滑り角(風向に対する回転面の角度)=−40deg、風車回転数=174rpmとした。
軸トルク増加率は、プラズマアクチュエータ110を動作させた際の回転軸トルクの値が、動作させない際の回転軸トルクの値に対してどれだけ向上するかで示した。
図3に示すように、軸トルク改善効果は放電周波数に依存し、プラズマアクチュエータ110を動作させた際の回転軸トルク及び軸トルク増加率は、放電周波数に対して右肩上がりに増加することが確認できた。
【0021】
次に、無次元放電周波数Fを以下の式で定義し、Fによる軸トルク改善効果を評価した。
=f×C/U≧0.5
f:放電周波数
:回転翼の回転中心から半径方向所定位置における翼弦長
:前記半径方向所定位置における翼の回転速度と回転面に入射する流れの速度を合成した相対速度
半径方向所定位置は、風車100のトルク性能への寄与が高いとされる回転中心から半径方向70%〜80%の範囲の75%の位置とした。この位置にUは依存し、Fは翼周りの流れの非定常無次元数と同じである。
試験条件は、U=7.5m/s、β=−40deg、130rpm、U=10m/s、β=−40deg、174rpm、U=20m/s、β=−40deg、348rpmとした。
図4に示すように、いずれの条件でも、F=0.5付近を境に揚力改善率の変化(傾き)が小さくなるものの、Fが0.5付近よりも大きい条件では軸トルク改善効果が高いことを確認した。
【0022】
次に、放電割合(Duty)を変えた試験結果を、図5に示す。
Duty=2.5〜10%間はDutyの増加に伴い高くなっているが、それ以降は軸トルク増加率は変わらない。
Dutyが大きくなると、それだけ放電エネルギを消費することになるので効率的ではなく、また、長時間放電は電極の耐久性に影響し放電時間は短い方が望ましいため、Dytyは10%以下が適切である。
【0023】
次に、回転翼101に設けた2つのプラズマアクチュエータ(半径方向内側と外側)の放電周波数を個別に変えて、放電周波数の効果を調べた。
図6に示ように、放電周波数が異なると高い効果が得られないことがわかった。
これは、翼面上の流れにおいて、プラズマによって生じる異なる非定常流(プラズマの放電周波数に依存)は、流れの境界(内側/外側電極の間)においてスムーズな流れを妨げる作用があるものと考えられる。
よって、同じ翼面上の隣接するプラズマアクチュエータ110の放電周波数(f)は同じ、または近い放電周波数である方が望ましい。なお、放電電圧やDutyは制限しない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明によれば、回転翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御して効率を向上させ、かつ、各種の諸元の回転翼に適応可能であり、変化する諸条件に追従して効率を向上させ、回転翼の回転軸トルクを増加させるとともに、回転翼周りの非定常流れ場を安定させ、回転翼の耐久性向上にも寄与することが可能であり、例えば、上述したような風車による発電の際の発電効率の向上に寄与することが可能である。
また、本発明に係る流体制御システムによれば、各種のプロペラ動力の省エネ化、タービン等の回転翼の高性能化(低燃費化)、空力騒音低減、航空機、自動車、鉄道等の抵抗軽減、航空機の揚力向上や制御等、様々な用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
100 ・・・風車
101、501 ・・・回転翼
102 ・・・ノーズ部
103 ・・・回転軸
104 ・・・ナセル部
110、510 ・・・プラズマアクチュエータ
511 ・・・電極
512 ・・・誘電体
520 ・・・制御手段
121 ・・・風速検出手段
122 ・・・風向計測手段
530 ・・・電源
531 ・・・アンプ
532 ・・・トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10