【解決手段】ケーシング51内に、水を加熱する第1電気ヒータ56とは別に、水に含まれるカルシウム成分を析出させるための第2電気ヒータ57をさらに備え、ユーザによって温水暖房装置が使用される通常運転を行う前に、第2電気ヒータ57にカルシウムを析出させて水に溶解しているカルシウム成分を除去する。
温水循環路に接続される温水流入配管接続部および温水流出配管接続部と、上記温水流入配管接続部から流入する循環水を所定温度まで加熱する電気ヒータとを有する温水加熱装置において、
上記電気ヒータは、上記循環水を加熱するための第1電気ヒータと、上記循環水に含まれているカルシウム成分を析出させるための第2電気ヒータとを備えていることを特徴とする温水加熱装置。
ヒートポンプユニットと、上記ヒートポンプユニットを熱源として生成された温水が循環する温水循環路を有する温水ユニットと、上記温水循環路の一部に含まれる放熱回路を有する暖房ユニットとを備えている温水暖房装置において、
上記温水ユニットの上記温水循環路内に、請求項1に記載の温水加熱装置が組み込まれていることを特徴とする温水暖房装置。
上記制御部は、上記第1電気ヒータにも通電して上記温水循環路内の水を加熱し、その水温が60℃未満の所定温度に達した時点で、上記第1電気ヒータへの通電をオフとし、以後は上記第2電気ヒータにのみ通電することを特徴とする請求項3に記載の温水暖房装置。
【背景技術】
【0002】
最近では、石油やガスなどの化石燃料を使用する燃焼系の温水暖房装置に代えて、ヒートポンプユニットを熱源とする温水暖房装置が提案されている。その一例として、例えば特許文献1には、ヒートポンプユニット(通常は屋外に設置)を熱源とし、温水ユニット(通常は屋内に設置)との間で熱交換することで温水を生成して、閉ループ型の温水循環路を循環させて給湯や床暖房器で放熱するヒートポンプ式温水暖房装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のヒートポンプ式温水暖房装置によれば、ヒートポンプユニットを熱源としているため、火災などの事故が起きにくく、CO
2排出量も少ないため地球環境にも優しい。また、ヒートポンプユニットの駆動制御が細かく設定できるため、温水の設定温度を低温から高温まで幅広く設定することができる。
【0004】
しかしながら、この種の温水暖房装置は、熱媒体として水が用いられているため、水温が60℃を越えると、水の中に溶解しているカルシウム成分(炭酸水素カルシウム:Ca(HCO
3)
2)が炭酸カルシウム:CaCO
3として析出して管壁などに付着する。
【0005】
この付着物は、スケール(水垢とも言う)と呼ばれ、特に熱交換器は、高温であり、そのパス長も長いため、スケールが付着しやすい。長期間の使用でスケールの付着量が多くなると、熱交換効率の低下や、最悪の場合は管の閉塞も懸念される。
【0006】
とりわけ、この種の温水暖房装置の多くは、欧米諸国において流通しているが、これらの地域において、水はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含んだ、いわゆる「硬水」であるため、スケールが付着しやすく、このスケールの除去が大きな課題となっている。
【0007】
また、この種の温水ユニットには、ヒートポンプユニットによって温められた温水をさらに加熱する補助ヒータを備えているものもあるが、この補助ヒータにスケールが析出して、熱効率が落ちることもある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、
図1ないし
図3を参照して、本発明の温水加熱装置および温水暖房装置について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
図1に示すように、この実施形態に係る温水暖房装置10は、ヒートポンプユニット20と、ヒートポンプユニット20を熱源とする温水ユニット30と、利用側の暖房端末を備えた暖房ユニット40とを備えている。
【0018】
ヒートポンプユニット20は、冷媒を圧縮する圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23および蒸発器24を備え、それらを冷媒配管25で接続した冷媒回路を有している。
【0019】
本発明において、ヒートポンプユニット20は、暖房用の熱源として用いるため、可逆サイクルのため四方弁は特に必要としない。したがって、温水を生成する熱源となりうる最小限の機能を備えていればよく、各構成要素の具体的な構成は、仕様に応じて任意に選定されて良い。
【0020】
熱交換器60は、水−冷媒熱交換器であって、この実施形態において、温水ユニット30の温水循環路31の一部分に設けられている所定容積の循環水用のタンク61内に凝縮器22が収納され、タンク61内で循環水が凝縮器22により加熱されて温水が生成される。なお、図示しないが、熱交換器60を例えば二重管熱交換器としてもよい。この実施形態において、熱交換器60は、スケール発生の予防対象となる熱源部の1つである。
【0021】
温水ユニット30は、熱交換器60で生成された温水が循環する温水循環路31を備えている。温水循環路31は、往路側(温水送出側)の温水接続口31aと復路側(温水戻り側)の温水接続口31bを介して暖房ユニット40側の放熱回路41と接続される。
【0022】
このように、温水循環路31の一部に、暖房ユニット40側の放熱回路41が含まれるが、以下の説明において、温水循環路31と放熱回路41を特に区別する必要がない場合には、放熱回路41を含めて温水循環路31と言う。
【0023】
温水循環路31のうちの熱交換器60と温水接続口31aとの間の往路側配管311には、熱交換器60で生成された温水をさらに加熱する温水加熱装置50を備えている。この実施形態において、温水加熱装置50(より詳しく言えば、その内部に含まれる第1電気ヒータ56)もスケール発生の予防対象となる熱源部に含まれる。
【0024】
温水加熱装置50は、熱交換器60で生成された温水の温度が所定温度に達していない場合に、図示しない給電電源から電気ヒータに通電され、温水の温度を所定温度にまで高める。なお、温水加熱装置50への通電制御は、温水ユニット30に設けられている制御部(CPU)70によって行われる。
【0025】
温水循環路31のうちの温水接続口31bと熱交換器60との復路側配管312には、ストレーナ34、圧力計35、膨張タンク36、給排水弁37、圧力安全弁38および循環ポンプ39がそれぞれ配置されている。
【0026】
ストレーナ34は、温水循環路31内を流れる水または温水(以下、まとめて循環水とする)に含まれるゴミや不純物を除去する。ストレーナ34の具体的な構成は、本発明において任意的事項である。
【0027】
圧力計35は、暖房ユニット40が接続されることにより閉ループ回路となる温水循環路31内の管内圧力を測定するために用いられる。圧力計35の測定データは、制御部70に送られる。
【0028】
膨張タンク36は、水の熱膨張を吸収するタンクである。給排水弁37は、温水循環路31内に水を注水したり、温水循環路31内の水を抜き取るために設けられており、先端には、水道管などに接続されるニップルと開閉コック(ともに図示しない)が設けられている。
【0029】
圧力安全弁38は、循環水が沸騰するなどして温水循環路31内の管圧が規定値以上となった際に、管破裂を防ぐために強制的に温水循環路31を外気に開放するリリーフバルブである。
【0030】
循環ポンプ39は、温水循環路31内の循環水を一方向(この実施形態では時計回り)に循環させるためのポンプであって、制御部70により、その駆動が制御される。
【0031】
暖房ユニット40は、往路側の温水接続口31aと復路側の温水接続口31bとを介して、温水ユニット30側の温水循環路31にそれぞれ接続される放熱回路41を備えている。放熱回路41には、熱源の利用側としての暖房端末42が設けられている。暖房端末42は、例えば床暖房装置やラジエータ、ファンコンベクタなどであってよい。
【0032】
本発明の特徴は、温水加熱装置50にある。すなわち、
図2に示すように、温水加熱装置50は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属製で、内部が中空な円筒状のケーシング51を備えている。ケーシング51は角筒状であってもよいが、その外周面には、図示しない断熱材が取り付けられていることが好ましい。
【0033】
ケーシング51の上端には、蓋板511が設けられ、下端には底板52が設けられている。蓋板511は、例えば絞り加工などによってケーシング51と一体成形されてもよいが、別体でロウ付けされてもよい。
【0034】
蓋板511の中央には、空気抜き孔53が設けられている。空気抜き孔53には、空気抜き弁33(
図1参照)が装着されている。
【0035】
ケーシング51の外周面の上端側には、ケーシング51内に水を引き込むための温水流入配管接続部54が設けられている。温水流入配管接続部54には、熱交換器60の流出側の配管が接続される。
【0036】
温水流入配管接続部54は、ケーシング51の上部に空気溜まり室BCを確保するため、ケーシング51の蓋板511から軸線方向に所定高さ低い位置に設けられている。空気溜まり室BCには、循環水を加熱した際に気泡として生じる空気が貯留される。
【0037】
ケーシング51の外周面の下端側には、温水流出配管接続部55が設けられている。温水流出配管接続部55には、往路側の温水接続口31aに至る配管が接続される。
【0038】
底板52は、ケーシング51の下面開放口を塞ぐように、ケーシング51の底部に例えばロウ付けされる。
【0039】
底板52には、ケーシング51内の循環水を加熱するための第1電気ヒータ56と、循環水に含まれるカルシウム成分を析出させるための第2電気ヒータ57とを備えている。
【0040】
この実施形態において、第1電気ヒータ56は、内部に図示しない電熱線を有する2本の発熱チューブをそれぞれ中央からU字状に折り曲げて、その折曲部分が上を向くように底板52から90°で交差させた状態で立設されている。この実施形態において、第1電気ヒータ56は、その高さが底板52から温水流入配管接続部54に至る高さまで形成されている。
【0041】
第1電気ヒータ56の両端は、図示しないヒータ電源への接続端子561として、底板52に設けられた挿通孔521から外側に引き出されている。第1電気ヒータ56は、別の態様として、複数本の発熱チューブを単に底板52から立てたものや、1本の発熱チューブを螺旋状に形成したものであってもよい。
【0042】
この実施形態において、第2電気ヒータ57は、第1電気ヒータ56と同種の内部に電熱線を有する発熱チューブからなり、中央からU字状に折り曲げて、その折曲部分が上を向くように底板52から立設されている。
【0043】
第2電気ヒータ57は、その高さが、少なくとも底板52からの温水流出配管接続部55に至る高さまで設けられていることが好ましい。第2電気ヒータ57の両端は、図示しないヒータ電源への接続端子571として、底板52に設けられた挿通孔522から外側に引き出されている。
【0044】
この実施形態において、第1電気ヒータ56の容量は3〜9kWであり、これに対して第2電気ヒータ57の容量は50W程度である。第2電気ヒータ57は、少なくとも第2電気ヒータ57の周囲の循環水のカルシウム析出温度まで加熱することができる容量を備えていればよい。
【0045】
この温水加熱装置50によれば、熱交換器60によって生成された温水は、温水流入配管接続部54を通ってケーシング51内に流入し、第1電気ヒータ56によってさらに加熱されたのち、下端側の温水流出配管接続部55から往路側の温水接続口31aに向けて流れる。
【0046】
循環水を加熱する際に発生した空気は、ケーシング51の上部にある空気溜まり室BCに集められ、上端の空気抜き孔53を通って空気抜き弁33から外気に放出される。
【0047】
さらには、循環水に含まれるカルシウム成分を析出させる専用の第2電気ヒータ57を、第1電気ヒータ56とは別に設けることで、温水暖房装置の設置時や水抜きメンテナンスを行った際に、第2電気ヒータ57を用いて予めスケール(炭酸カルシウム:CaCO
3)の除去を行うことで、ユーザによって温水暖房装置10が使用される際の通常運転時に第1電気ヒータ56や熱交換器60でのスケールの付着を防止できる。
【0048】
この実施形態において、底板52はケーシング51の下端に沿ってロウ付けによって一体的に取り付けられているが、溶接であってもよく、底板52のケーシング51との取付態様は仕様に応じて任意に変更されて良い。
【0049】
次に、
図3のフローチャートを参照して、カルシウム除去手順の一例について説明する。このカルシウム除去工程は、温水暖房装置10の設置後か、もしくは、メンテナンス時に配管内の循環水を入れ替えた後に行われ、ユーザーの使用に供する本運転前に、循環水に含まれているカルシウム成分を予め除去する。
【0050】
設置時について説明すると、ヒートポンプユニット20と温水ユニット30は予め連結されているとして、温水ユニット30に暖房ユニット40を配管接続して、ヒートポンプユニット20、温水ユニット30および暖房ユニット40の電源を含む温水暖房装置10のすべての電源をオフとし(ステップST1)、温水ユニット30の空気抜き弁33を開放する(ステップST2)。
【0051】
次に、給排水弁37に図示しない給水パイプを接続し、温水循環路31内に水(例えば、水道水)を注水する(ステップST3)。その際、圧力計35を確認して、配管内が規定圧力になるまで注水をしたのち(ステップST4)、給水パイプを抜き、給排水弁37を閉じる(ステップST5)。以上により、温水循環路31内に循環水が注水される。
【0052】
注水が完了したのち、温水ユニット30の電源を投入し、カルシウム除去モードを選択する(ステップST6)。このとき、ヒートポンプユニット20の電源はオフであり、ヒートポンプユニット20は停止している。
【0053】
これにより、制御部70は、循環ポンプ39を駆動して、温水循環路31内の水を循環させるとともに(ステップST7)、第1電気ヒータ56および第2電気ヒータ57への通電を開始し、温水循環路31内の循環水を加熱する(ステップST8)。
【0054】
制御部70は、図示しない温度センサを介して温水加熱装置50内の循環水の水温を監視し、その水温が60℃未満で予め設定されている所定温度(例えば50℃)となったと判断すると(ステップST9)、第1電気ヒータ56の電源をオフとし、第2電気ヒータ57への通電を継続する(ステップST10)。
【0055】
温水加熱装置50内の循環水の水温が60℃以上になると、循環水に含まれているカルシウム成分(炭酸水素カルシウム:Ca(HCO
3)
2)が第2電気ヒータ57の表面に炭酸カルシウム:CaCO
3として析出し始める。
【0056】
そこで、制御部70は、温水加熱装置50内の循環水の水温が60℃に達したと判断すると(ステップST11)、図示しないタイマーを起動して、所定の設定時間(例えば30分)になるまで第2電気ヒータ57への通電を継続する(ステップST12)。この通電時間の設定は、循環水の水量や水質等に応じて適宜決められてよい。
【0057】
上記ステップST12での判定がYESで、所定の設定時間が経過すると、制御部70は、循環ポンプ39と第2電気ヒータ57への通電をともにオフとして(ステップST13)、一連のカルシウム除去工程を終える。
【0058】
この実施形態において、カルシウム除去工程は、新規設置すると同時に行う場合について説明したが、例えばメンテナンスなどの際に、循環水を入れ替えた際にも同様のカルシウム除去工程が行われる。
【0059】
また、この実施形態において、カルシウム除去工程は、まず最初に第1電気ヒータ56と第2電気ヒータ57との両方に通電して、水温を析出温度域よりも低い60℃未満の所定温度まで昇温したのち、第1電気ヒータ56への通電をオフとし、そこから第2電気ヒータ57のみで60℃以上に昇温しているが、第2電気ヒータ57のみで常温状態から析出温度(60℃)まで昇温してもよい。このような態様も本発明に含まれる。また、循環水を60°未満の所定温度まで昇温させるためにヒートポンプユニット20を運転してもよい。
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、温水加熱装置50のケーシング51内に温水加熱用の第1電気ヒータ56とは別に、カルシウム析出用の第2電気ヒータ57を設けたことにより、ユーザによって温水暖房装置が使用される通常運転を行う前に、水に溶解しているカルシウム成分を除去することができ、その結果、通常運転時において、温水ユニット30内の熱交換器60や温水加熱装置50の第1電気ヒータ56でスケールが発生することを防止することができる。