【解決手段】欠陥検出装置100は、光源11と、対象物Pを支持する支持部12と、受光部13と、処理部20とを備える。処理部20において、微分回路21は、受光部13からの信号を微分し、バンドパスフィルタ22は、微分回路21からの信号のうち特定の周波数帯域の信号を通過させる。その結果、欠陥成分の信号を抽出することができる。これにより、使用する光学部品点数を減らして簡易な構成で対象物の欠陥を検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の検査装置のように光学的な処理により欠陥を検出する場合、例えば欠陥の種類ごとに多数の光学部品が必要になり、またそれらの位置合わせ等の光学的な調整が必要になる。そのため、その調整に多大な時間を要するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、使用する光学部品点数を少なくして簡易な構成により対象物の欠陥を検出することができる欠陥検出装置、処理装置、および欠陥検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る欠陥検出装置は、光源と、受光部と、微分回路と、バンドパスフィルタと、判定部とを具備する。
前記光源は、対象物に光を照射する。
前記受光部は、前記対象物からの光を検出しこれを信号に変換する。
前記微分回路には、前記受光部からの信号が入力される。
前記バンドパスフィルタには、前記微分回路からの信号が入力される。
前記判定部は、前記バンドパスフィルタからの信号に基づき、前記対象物の欠陥の有無を判定する。
この欠陥検出装置は、微分回路からの信号の周波数帯域のうちバンドパスフィルタにより所望の周波数帯域の信号を通過させることで、欠陥なしの信号振幅に比べ、欠陥ありの信号振幅を大きくして得ることができる。すなわち欠陥成分の信号を抽出することができる。これにより、使用する光学部品点数を減らして簡易な構成で対象物の欠陥を検出することができる。
【0011】
前記欠陥検出装置は、前記バンドパスフィルタからの信号が入力されるトランスバーサルフィルタをさらに具備してもよい。
これにより、バンドパスフィルタで抽出された欠陥を持つ対象物に対応する信号を選択的に増幅することができるので、SN比を向上させ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0012】
前記欠陥検出装置は、前記微分回路からの信号が入力され、前記バンドパスフィルタにより通過させる信号の周波数帯域より低い周波数帯域の信号を通過させるローパスフィルタをさらに具備してもよい。前記判定部は、前記ローパスフィルタからの信号に基づき、前記欠陥の有無をさらに判定してもよい。
これにより、バンドパスフィルタにより通過させる信号の周波数帯域より低い周波数帯域の信号に基づき、判定部が欠陥の有無を判定することで、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0013】
前記欠陥検出装置は、前記ローパスフィルタからの信号が入力されるトランスバーサルフィルタをさらに具備してもよい。
これにより、ローパスフィルタで抽出された、欠陥なしに対応する信号を増幅することができるので、SN比を向上させ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0014】
前記欠陥検出装置は、前記対象物を支持する支持部と、前記支持部と前記受光部とを相対的に移動させる移動機構とをさらに具備してもよい。
【0015】
前記光源は、パターン構造を有する前記対象物に光を照射するものであってもよい。
例えば格子パターン等、規則的なパターン構造を有する物体に光を照射することにより、受光部からそのパターンに対応する信号が得られやすくなり、欠陥の検出精度が向上する。
【0016】
本発明の一形態に係る処理装置は、微分回路と、バンドパスフィルタと、判定部とを具備する。
前記微分回路には、対象物からの光を検出する受光部からの信号が入力される
前記バンドパスフィルタには、前記微分回路からの信号が入力される。
前記判定部は、前記バンドパスフィルタからの信号に基づき、前記対象物の欠陥の有無を判定する。
【0017】
本発明の一形態に係る欠陥検出方法は、対象物に光を照射することを含む。
前記対象物からの光を検出することにより信号が生成される。
前記信号が微分される。
前記微分された信号のうち、特定の周波数帯域の信号が抽出される。
前記抽出された信号に基づき、前記対象物の欠陥の有無が判定される。
【0018】
本発明の一形態に係る欠陥検出装置は、光源と、受光部と、微分回路と、ローパスフィルタと、判定部とを具備する。
前記光源は、対象物に光を照射する。
前記受光部は、前記対象物からの光を検出しこれを信号に変換する。
前記微分回路には、前記受光部からの信号が入力される。
前記ローパスフィルタは、前記微分回路からの信号が入力され、前記対象物の欠陥に対応する周波数帯域より低い周波数帯域の信号を通過させる。
前記判定部は、前記ローパスフィルタからの信号に基づき、前記対象物の欠陥の有無を判定する。
この欠陥検出装置は、微分回路からの信号の周波数帯域のうちローパスフィルタにより所望の周波数帯域の信号を通過させることで、欠陥ありの信号振幅に比べ、欠陥なしの信号振幅を大きくして得ることができる。その結果、欠陥なしの信号の特定により、欠陥ありの信号を特定することができるので、使用する光学部品点数を減らして簡易な構成で対象物の欠陥を検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、使用する光学部品点数を少なくして簡易な構成により対象物の欠陥を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
1)欠陥検出装置の構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る欠陥検出装置の構成を示す模式図およびブロック図である。
【0024】
この欠陥検出装置100は、光源11と、対象物Pを支持する支持部12と、受光部13と、処理部20とを備える。
【0025】
光源11としては、例えばハロゲンランプ、蛍光ランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプ等が用いられる。あるいは、光源11として、固体レーザ光源や、ガスレーザ光源が用いられてもよい。
【0026】
対象物Pは、例えば透過型の液晶パネル等、規則的なパターンを有する構造を有し、光透過性を有する物体である。規則的なパターンとは、対象物が表示パネルである場合、格子パターン、つまり画素電極パターンである。
【0027】
支持部12は、例えば対象物Pの周囲の一部または全部を保持してこれを支持するように構成されている。
【0028】
受光部13は、対象物Pを透過した光を検出しこれを信号に変換する。受光部13は、光電変換素子を有していればどのような形態でもよい。光電変換素子としては、例えばフォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等が用いられる。受光部13は、支持部12に支持された対象物Pが、光源11とこの受光部13との間に位置するように、配置される。
【0029】
処理部20は、受光部13からの信号を取り込み、所定の処理を行う。例えば処理部20は、微分回路21、バンドパスフィルタ(BPF)22、トランスバーサルフィルタ(TBF)23、二値化回路24、パルス幅計測回路25、および判定部26を備える。
【0030】
微分回路21は、受光部13からの信号を微分する機能を有する。
【0031】
バンドパスフィルタ22は、微分回路21からの信号のうち所定の周波数帯域の信号を通過する機能を有する。
【0032】
トランスバーサルフィルタ23は、係数設定により、バンドパスフィルタ22を通過した信号のうち、欠陥を有する対象物Pに対応する信号、または、欠陥なしの対象物Pに対応する信号を選択的に増幅する機能を有する。
【0033】
二値化回路24は、トランスバーサルフィルタ23からの信号を任意の電圧レベル(閾値)でスライスし、二値化する機能を有する。
【0034】
パルス幅計測回路25は、二値化回路24による二値化処理に基づき生成されるパルスの幅を計測する機能を有する。
【0035】
判定部26は、二値化回路24による処理結果に基づき、欠陥の有無を判定する。すなわち、後でも説明するようにパルス幅計測回路25は必須の構成要素ではない。
【0036】
なお、後述するように、パルス幅計測回路25で計測されたパルス幅は欠陥サイズに対応するので、判定部26または図示しないコンピュータは、計測されたパルス幅に応じた欠陥サイズを算出することも可能に構成されている。
【0037】
2)実施例(実験例)
本実施例で用いられたハードウェアは、以下の通りである。
【0038】
光源:He-Neレーザ光源
受光部:CCDラインセンサ
対象物:液晶パネル(「欠陥なし」と「欠陥あり」の2種類)
信号の可視化手段:オシロスコープ
処理部:PC(Personal Computer)
【0039】
液晶パネルの欠陥の種類として、(a)割れ(クラック)と、(b)凹凸に大別される。今回の評価では、これらの欠陥サイズはおおよそ500μm〜1000μmであった。
【0040】
図2〜5、7は、本実施例において処理部20の各要素での処理で得られた信号をそれぞれ示す。本実施例では、支持部12は不動(固定)であり、任意の時間帯で、液晶パネルの一部の領域にレーザ光の照射が行われた。その任意の時間とは、1秒〜数秒(または数十秒)など、処理部20で必要な波形信号を得るための光量がCCDラインセンサにより得られる程度の時間であればよい。
【0041】
各図に示すグラフにおいて、横軸は時間(μs)を示し、縦軸は電圧(V)を示す。横軸の時間の単位(μs)は、本発明では重要ではない。また、信号の全体形状がガウシアン形状、つまり横軸で中心の50μs付近の振幅(つまり受光量)が最大となり、その中心から両方向に離れるほど振幅が小さくなっている。これは、本実施例では、光源11から出射されたレーザ光に対して、コリメート光学系等を用いた成形が行われなかったからである。本実施例は、このような簡易な光学系の構成によっても欠陥の有無を検出することができること示している。
【0042】
図2は、CCDラインセンサにより得られた電圧信号を示す。信号の各山および谷が液晶パネルのパターン構造、ここでは格子パターンを透過した0次光に対応する。本実施例では、上記のように光源11からのレーザ光はガウシアン光であるため、この図に示す信号の例では、横軸中心の50μsに現れた山、および、その両隣の2つの山の信号に着目すると理解しやすい。
【0043】
図2に示す例では、「欠陥あり」の信号の振幅は、「欠陥なし」の信号のそれに比べて小さくなっているが、両者で大きな差異は見られない。「欠陥なし」では、液晶パネルの格子パターンに対応する信号がきれいに現れているが、これに比べ、「欠陥あり」の信号の山形状が崩れているのがわかる。
【0044】
図3は、微分回路21により微分された電圧信号を示す。「欠陥あり」および「欠陥なし」の両方の信号の振幅は同程度であるが、計測区間内での振幅の数、つまり周波数に差が発生している。また、微分処理により、両方の信号ともに振幅が低下している。このことから、単に受光部13により得られた信号を微分するだけでは、SN比が低下し誤検出する可能性が高くなることがわかる。
【0045】
図4は、微分処理後、バンドパスフィルタ22を通過した信号を示す。バンドパスフィルタ22の信号の通過帯域は、180kHz〜230kHzとされた。本実施例においては、この周波数範囲は、上記した欠陥(a)、(b)に対応する範囲である。
図4からわかるように、「欠陥あり」および「欠陥なし」の両方の信号ともに、上記バンドパスフィルタ22を通過することにより、同様の周波数帯域内にある。しかし、両信号で振幅差が発生し、「欠陥あり」の信号の振幅が、「欠陥なし」のそれに比べて大きくなる。このように、両方の信号をきれいに分離することができる。
【0046】
図5は、バンドパスフィルタ22を通過後、トランスバーサルフィルタ23を通過した信号を示す。
図6は、本実施例に係る、例えば3タップを有するトランスバーサルフィルタの構成を示す。
【0047】
このトランスバーサルフィルタ23に入力された信号(f_in)は、遅延量(Z-1)を持つ遅延部32により順次所定の時間遅延される。入力信号、および遅延された2つの信号は3つの係数部34にそれぞれ入力されて各係数が乗算され、これら3つの信号が加算部36により加算された等化波形信号(f_out)が出力される。遅延量(Z-1)は、電圧の+側の振幅ピークが中心0に設定され、−側の振幅ピーク位置が-1、+1に設定される。
【0048】
図5に示すように、信号がトランスバーサルフィルタ23を通過することにより、「欠陥あり」の信号が選択的に増幅される。すなわち、微分処理前に受光部13から取得した信号振幅と同等なレベルの信号波形を成形することができている。
【0049】
図7は、二値化回路24での処理を示す。例えば0.5Vの電圧レベルを閾値としている。二値化処理の結果、基本的な処理として、判定部26は閾値を超えるレベルを持つ信号を「欠陥あり」と判定することができる。
【0050】
3)効果
以上のように、本実施形態に係る欠陥検出装置100は、微分回路21からの信号の周波数帯域のうちバンドパスフィルタ22により所望の周波数帯域の信号を通過させることで、欠陥なしの信号振幅に比べ、欠陥ありの信号振幅を大きくして得ることができる。すなわち、欠陥成分の信号を抽出することができる。これにより、使用する光学部品点数を減らして簡易な構成により対象物Pの欠陥を検出することができる。より具体的には、上記特許文献3では、欠陥の種類ごとに光学部品を用意し、その光学的な調整が必要である。これに対し本実施形態によれば、欠陥の種類ごとに光学部品を用意する必要がなく、また、その調整も不要であるので、安価な装置を実現できるとともにその光学調整のための作業者の労力も不要となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、画像処理を行う必要がないので短時間で欠陥を検出することができる。例えば、処理部20のうち、少なくとも微分回路21、バンドパスフィルタ22、およびトランスバーサルフィルタ23をアナログ電気回路により構成することができる。この場合、より高速な欠陥の検出処理が可能となる。あるいは、処理部20のすべての要素をアナログの電気回路で構成することも可能である。
【0052】
本実施形態に係る欠陥検出装置100は、トランスバーサルフィルタ23を備えるので、欠陥を持つ対象物Pに対応する信号を選択的に増幅することができる。その結果、判定部26に入力される信号のSN比を高め、欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0053】
例えば、トランスバーサルフィルタ23の代わりにオペアンプを用いて信号を増幅させてもよい。この場合は、欠陥ありとなしの信号の選択性はなく、両者ともに増幅される。
【0054】
上記実施例では、光源11からの光としてレーザ光を用いることにより、対象物Pのパターン構造および欠陥に対応する成分を含む信号を得やすくなるので、欠陥の有無の検出精度の向上に寄与する。しかしながら、上述のようにレーザ光ではないインコヒーレントな光ももちろん使用することができる。
【0055】
本実施形態に係る欠陥検出装置100は、パルス幅計測回路25を備えている。パルス幅計測回路25は、二値化処理に基づき、閾値超えの信号のパルス幅を計測することにより、判定部26は、予め設定された参照幅(判定のための基準幅)とパルス幅とを比較した結果に応じて、欠陥の有無を判定することも可能である。これにより欠陥の検出精度が向上する。
【0056】
パルス幅計測回路25は必須の要素ではなく、判定部26は、上述したように二値化処理による判閾値判定のみで判定を行ってもよい。このパルス幅計測回路25が設けられることにより、ノイズ等の影響による誤検出を抑えることができる。
【0057】
パルス幅計測回路25で計測されたパルス幅の情報は、利用者がこのパルス幅の情報に基づいて、二値化処理における閾値を適切な値に調整するための情報としても、利用され得る。これにより、欠陥の検出精度が向上する。
【0058】
本実施形態では、パターン構造を有する物体が、欠陥検出の対象物Pとされることにより、受光部13からそのパターンに対応する信号が得られやすくなり、欠陥の検出精度が向上する。
【0059】
4)本実施形態に係る欠陥の検出方法と干渉計による欠陥の検出方法との比較
例えば対象物Pが液晶パネルである場合に、本実施形態に係る欠陥の検出方法と、干渉計による欠陥の検出方法とを比較する。液晶パネルは、一般に、液晶層、配向膜、透明電極、カラーフィルタ、偏光板、および導光板等を有し、多数のフィルムや層で構成されている。干渉計は、例えば
図8に示すように、各層や膜40の表面40aおよび裏面40bから反射される光同士で多重干渉を発生させ、その干渉光を調べることにより、欠陥の有無を検出する。なお、
図8は、1層分の膜の表裏の両面での反射光を示している。
【0060】
図9は、日立製の分光光度計(U-4000)を用いて、液晶パネルの透過率の波長依存性を評価した結果を示す。多重干渉が発生している証明として、波長シフトにより波長域900nm〜1500nmで透過率の振幅変動が発生しているのが分かる。なお、ここでいう「欠陥」は、「膜厚の変動」の概念を含まないものとしている。
【0061】
つまり、多重干渉の発生により、膜の厚さにバラツキがある場合も干渉条件(明暗パターン)が変化してしまう。したがって、干渉計によって干渉条件を観察するだけでは、膜内にある欠陥等によるものなのか、膜厚の変化によるものなのか、切り分けが不可能であるという課題がある(
図10A、B参照)。
図10Aに示すように、膜40内に欠陥として異物42や凹凸がある場合と、
図10Bに示すように膜40の厚さが面内で一定でないとを比べると、干渉計による干渉光の強度分布が同じとなる場合があり、干渉計では見分けがつかない。
【0062】
これに対して、本実施形態に係る欠陥検出装置100は、干渉計の原理を用いなので、このような問題を生じず、欠陥と膜厚の変動との識別が可能となる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態に係る欠陥検出装置について説明する。これ以降では、上記第1の実施形態に係る欠陥検出装置100が含む部材や機能等について実質的に同様の要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0065】
1)欠陥検出装置の構成
図11は、本発明の第2の本実施形態に係る欠陥検出装置の処理部60の構成を示すブロック図である。
【0066】
処理部60は、上記第1の実施形態に係る処理部20の各要素を処理系統Aとして備え、処理系統Aとは別の処理系統Bをさらに備える。処理系統Bは、処理系統Aのバンドパスフィルタ22に代えてローパスフィルタ27を備える。このローパスフィルタ27は、処理系統Aのバンドパスフィルタ22により通過させる信号の周波数帯域より低い周波数帯域の信号を通過させる機能を有する。
【0067】
2)実施例(実験例)
図12は、「欠陥あり」および「欠陥なし」の両対象物Pについて、受光部13で得られる信号のスペクトルを示す。パターン構造を有する対象物Pについて、欠陥の検出精度をさらに高めるためには、この対象物Pのパターン構造に対応する空間周波数成分(低周波側)と、欠陥に対応する周波数成分(パターン構造に対応する周波数成分に比べ高周波側)とを分離することが好ましい。そして、これらのそれぞれの電圧(スペクトル)の変化を検出し、欠陥の有無を検出することによって誤検出の可能性が低減する。なお、
図12において縦軸および横軸は数値は規格化されたものである。
【0068】
上記第1の実施形態の欠陥検出装置100は、
図12において一点鎖線で囲まれた右側の楕円Aの範囲内の周波数帯域の信号を、バンドパスフィルタ22により通過させた。しかし、第2の実施形態の欠陥検出装置は、一点鎖線で示す左側の楕円Bの範囲である低周波側の帯域をローパスフィルタ27でフィルタリングする処理(処理系統B)をさらに含む。これにより、全周波数帯域をカバーすることができる。
【0069】
図12に示すように、欠陥を含む対象物Pでは、低周波側の帯域であるパターン構造に対応する信号の振幅は、欠陥を含まない対象物Pのそれに比べ、低下する。処理系統Bは、このことを利用して欠陥の有無を検出する。
【0070】
以下、処理系統Bでの処理の実施例について説明する。本実施例で用いられるハードウェアは、上記第1の実施形態で説明した実施例のものと基本的に同様である。
【0071】
図13は、
図3で示した微分処理後、ローパスフィルタ27を通過した信号を示す。ローパスフィルタ27の信号の通過帯域は、例えば0kHz〜100kHzとされた。
図13からわかるように、「欠陥あり」および「欠陥なし」の両方の信号ともに、ローパスフィルタ27を通過することにより、同様の低周波数帯域を有する。しかし、両信号で振幅差が発生し、「欠陥なし」の信号の振幅が、「欠陥あり」のそれに比べて大きくなる。
【0072】
図14は、ローパスフィルタ27を通過後、トランスバーサルフィルタ23Bを通過した信号を示す。このトランスバーサルフィルタ23Bは、
図6で示した構成と同様の構成であるが、係数は「欠陥なし」の信号を選択的に増幅するように変更されている。
図14に示すように、信号がトランスバーサルフィルタ23Bを通過することにより、「欠陥なし」の信号が選択的に増幅される。
【0073】
図15は、二値化回路24での処理を示す。例えば0.5Vの電圧レベルを閾値としている。二値化処理の結果、基本的な処理として、判定部26は閾値を超えるレベルを持つ信号を「欠陥なし」と判定することができる。
【0074】
欠陥検出装置は、処理系統AおよびBのうち少なくとも一方で「欠陥あり」と判定された場合に、「欠陥あり」と決定することができる。これにより、
図12で示したスペクトルの全域にわたって欠陥の有無が検出されるので、検出精度が向上する。
【0075】
あるいは、欠陥検出装置は、処理系統AおよびBのうちいずれか1つを利用者に選択させるような構成であってもよい。
【0076】
本実施形態の場合も、パルス幅計測回路25は必須の要素ではなく、判定部26は、二値化処理に基づいて、欠陥の有無を判定してもよい。
【0078】
上記第1、2の実施形態におけるバンドパスフィルタ22を用いずに、高周波のノイズ成分をカットするローパスフィルタ(0kHz〜230kHzの帯域の信号を通過)を用いた場合と、上記第1、2の実施形態とを比較する。この比較例に係るローパスフィルタの0kHz〜230kHzの帯域は、欠陥に対応する周波数成分も含む帯域である。
【0079】
図16は、微分回路21により微分された信号が、このローパスフィルタ(0kHz〜230kHz)を通した信号を示す。
図17は、そのローパスフィルタからの信号が、上記トランスバーサルフィルタ23Aを通過した信号を示す。
図18は、そのローパスフィルタからの信号が、上記トランスバーサルフィルタ23Bを通過した信号を示す。これら
図17、18に示す結果から、
図5、14と比べてもわかるように、トランスバーサルフィルタ23A,Bを通過した信号は、欠陥の有無の識別が困難となる。
【0080】
なお、
図17に示すグラフでは、「欠陥あり」の最高振幅値が1V程度とされ、「欠陥なし」の最高振幅値が0.5V程度となっており、一見すると二値化処理が可能にも見える。しかし、どちらの信号も時間軸方向では振幅値がバラバラであるので、誤検出の可能性が高くなる。したがって、欠陥の有無の識別は上述のように困難となる。
【0082】
上記第1、2の実施形態では、光源11からの光束内に、対象物Pにおける欠陥の検出対象領域が収まる例について説明した。光源11からの光束径より、対象部における欠陥の検出対象領域が大きい場合(例えばレーザ光のように光束径が小さい場合)、次のような第3の実施形態に係る装置構成および検出方法が採用される。
【0083】
図19は、本発明の第3の実施形態に係る欠陥検出装置を模式的に示す図である。本実施形態では、光源11からの光束径より、対象物Pのサイズが大きい。この欠陥検出装置200は、支持部12を、受光部13(および光源51)に対して少なくとも一方向に移動させる移動機構14を備える。移動機構14は、一方向に限られず、XYステージのようにx−y面内で支持部12を移動させるものであってもよい。あるいは移動機構14は、x、y、zの3軸で移動可能な構成であってもよい。
【0084】
本実施形態に係る受光部13は、エリアセンサであってもよいしラインセンサであってもよい。
【0085】
この欠陥検出装置200の処理部20'のブロック構成は、基本的には
図1または11で示した処理部20または60の構成と同様である。異なる点は、支持部12が移動している間、処理部20'が、所定の時間ごとに処理部の処理(微分回路21による微分処理から判定部26による判定処理まで)を実行する。
【0086】
この場合、二値化回路24による処理で閾値を超えたピーク数が欠陥サイズに対応する。したがって、処理部20'は、欠陥の有無だけでなく、ピーク数をカウントすることにより、欠陥サイズまでも計測することができる。
【0087】
また、欠陥サイズを計測する場合は、処理部20'は、移動機構14による支持部の位置情報と、その位置ごとのピーク数をコンピュータに転送し、対象物Pの検出対象領域の全部(またはある程度広い一部の領域)への光照射によるスキャン後に、欠陥の有無の判定および欠陥サイズの特定を一括で行うようにしてもよい。
【0088】
ただし、このように欠陥サイズを計測する場合、欠陥検出装置200は、光源51からの光をコリメートするコリメート光学系を備えることが望ましい。直線的な一定値である閾値による二値化処理では、ビームがガウシアンビームである場合より平行光である場合の方が、ピーク数を正確にカウントすることができ、その結果、欠陥サイズの計測の精度が向上するからである。
【0090】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0091】
欠陥検出装置は、トランスバーサルフィルタを備えず、バンドパスフィルタから出力された信号を二値化して、欠陥の有無を判定することももちろん可能である。
微分回路21は、複数回の微分処理を実行するように構成されていてもよい。
【0092】
上記第2の実施形態に係る欠陥検出装置の処理部60は、処理系統AおよびBの両方を備えていたが、処理系統Aを備えず、処理系統Bのみ備えていてもよい。
【0093】
上記実施形態では、欠陥の検出対象となる、光透過性を有する対象物として液晶パネルを例に挙げたが、これに限られず、その他の光透過性の対象物であってもよい。
【0094】
対象物として光透過性を有しない、つまり光反射型の物体であってもよい。反射型の物体としては、例えば半導体ウェーハやフォトマスク等、微細な回路パターンを有するものが挙げられる。またこの場合、対象物として反射型の表示パネルであってもよい。
【0095】
対象物として、パターン構造を有するものに限られない。受光部13で得られる信号のうち、欠陥に対応する周波数帯域の情報を予め得られており、その周波数帯域を有する信号を抽出することができれば、どのような対象物であってもよい。
【0096】
図19に示した第3の実施形態に係る欠陥検出装置200の移動機構14は、支持部12を移動させる構成であったが、光源51および受光部13を、不動の支持部12に対して移動させる構成であってもよい。
【0097】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。