【課題】電気的に直列接続される複数の被試験体に対して定電流試験を行う場合に、複数の被試験体の1つが異常状態になった場合でも他の被試験体の検査を継続することができる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】検査装置は、順に電気的に直列接続される複数の被試験体、に定電流を供給する定電流源12と、複数の被試験体の1つに並列接続され、接続される被試験体が異常状態となる場合に定電流の少なくとも一部をバイパスする、バイパス回路15を含む、バイパス手段21と、を備える。
複数の被試験体が電気的に直接接続され、定電流源が前記複数の被試験体に接続され、前記複数の被試験体の1つにバイパス回路が接続される検査回路を準備するステップと、
前記定電流源に前記複数の被試験体に定電流を供給させるステップと、
を備える検査方法であって、
前記バイパス回路は、接続される前記被試験体が異常状態となる場合に前記定電流の少なくとも一部をバイパスする、
ことを特徴とする検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置1の全体構成の一例を示す図であり、後述する被試験体13が配置されている構成が示されている。
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、複数(ここでは6個)の検査回路3及び複数(ここでは2個)の恒温槽11を備えている。各検査回路3は、定電流源12、及び被試験体配線部14を含んで構成されている。被試験体配線部14(図示せず)は被試験体13を配置するためのものであり、被試験体配線部14に被試験体13が配置されて、測定用ユニット10が形成される。検査装置1は、制御部2と相互にデータ通信可能に接続されている。ここでは、検査装置1に複数の検査回路3が備えられるとしたが、これに限定されることはなく、検査装置1に1個の検査回路3が備えられていてもよい。
【0020】
ここでは、複数(3個)の検査回路3に含まれる複数(計18個)の測定用ユニット10が、1個の恒温槽11に接して配置されている。恒温槽11は、内部温度を一定に保つ熱浴であり、これにより定められた温度環境下で接して配置される測定用ユニット10が、設定された温度に保たれており、測定用ユニット10に含まれる被試験体13を定められた温度環境下で検査することができる。しかし、これに限定されることはなく、1個の検査回路3に対して1個の恒温槽11が設けられてもよく、1個の検査回路3に含まれる複数の測定用ユニット10のうち一部に対して1個の恒温槽11が設けられてもよい。
【0021】
定電流源12は、出力電流が一定となる電源であり、被試験体配線部14に配置された複数の被試験体13に、各被試験体13の内部抵抗に関わらず定電流を供給する。
【0022】
制御部2は、例えば、パーソナルコンピュータ等であり、制御部2は、検査装置1が実行する検査を制御する。例えば、制御部2は、かかる検査の検査条件を設定する。具体的には、恒温槽11の内部温度、定電流源12の出力電流値、通電時間等を設定する。そして、制御部2は、検査中の検査条件を感知することもできる。
【0023】
被試験体13は、1以上の半導体素子30を1つのヒートシンクへ実装したチップオンキャリアとする。
図1に示す被試験体13は4個の半導体素子30を含んでいる。被試験体13の詳細については後述する。
【0024】
検査装置1は、測定用ユニット10に含まれる被試験体13に対して、所定の条件下で、定電流で通電するバーンイン試験を行う。例えば、測定用ユニット10に対して温度環境100℃、定電流量200mAにて100時間通電することで、初期不良を生じる被試験体13を検出する。
【0025】
ここで、本発明に係る検査装置1の主な特徴は、まず、検査装置1にて複数の被試験体13が順に電気的に直列接続されるよう構成されていることである。そして、検査装置1が、1つの被試験体13に並列に接続され、接続される被試験体13が異常状態となる場合に定電流の少なくとも一部をバイパスするバイパス回路15を含むバイパス手段21を備えることである。簡単のため、
図1には被試験体配線部14及びバイパス手段21は示されていないが、これらの詳細については後述する。
【0026】
また、本発明に係る検査方法の主な特徴は、被試験体13が配置された本発明に係る検査装置1(検査回路3)を準備するステップと、複数の被試験体13に定電流を供給させるステップとを備えることである。
【0027】
まず、検査実行時における検査装置1の回路構成及び回路動作について説明する。
【0028】
図2は、検査実行時の検査回路3の一例を示す図である。
図2に示すように、検査実行時の検査回路3は、順に電気的に直列接続された複数の(ここでは3個)被試験体13(13−1〜13−3)、各被試験体13に定電流を供給する定電流源12、及び複数の被試験体13それぞれに並列に接続される複数(ここでは3個)のバイパス回路15(15−1〜15−3)を含む閉回路により構成されている。なお、バイパス手段21は、複数のバイパス回路15を含んでいる。被試験体13は、被試験体配線部14(図示せず)にそれぞれ配置され、お互いが電気的に直列接続されている。そして、各被試験体13に、定電流源12が出力する定電流が供給される。
【0029】
バイパス回路15は、被試験体13のいずれかに異常が生じ(例えば、断線等)、被試験体13が正常状態から異常状態に変化した場合に、定電流の少なくとも一部をバイパスするバイパス回路15を備えている。これにより、一部の被試験体13の異常により検査回路3全体が機能しなくなることを防ぐ。なお、本明細書において、被試験体13が正常状態であるとは、被試験体13に含まれる1又は複数の半導体素子30のすべてが、所望の条件の範囲にあることであり、例えば、製品としての規格を満たしている状態をいう。また、本明細書において、被試験体13が異常状態であるとは、被試験体13に含まれる1又は複数の半導体素子30のいずれかになんらかの異常が発生し(例えば内部構造に異常が発生した場合など)、非常に高抵抗な状態になる又は実質的に絶縁状態となることである。被試験体13の異常状態とは、被試験体13に定電流を流す場合に被試験体13の両端の電圧が所定値以上となることである。被試験体13が異常状態になるとは、被試験体13の抵抗値が所定値以上となることとしてもよい。
【0030】
各バイパス回路15(15−1〜15−3)は、発光ダイオード16(16−1〜16−3)及び可変抵抗17(17−1〜17−3)が直列接続されて構成されている。発光ダイオード16は、順方向に電圧が印加された場合に、印加された電圧が所定の順方向電圧である閾値電圧V
th以下であるとほとんど電流を流さず、印加された電圧が閾値電圧V
th以上であると電流を流し、電流量に応じて光を発する、という特性を有する。なお、実際には、閾値電圧V
th以下であっても、閾値電圧V
th近傍では微小電流が流れている。よって、厳密に言えば、閾値電圧V
thは、発光ダイオード16に電流が流れ始める電圧値ではなく、ある程度電圧が上昇した後の電圧-電流特性の近似直線におけるx切片の値である。ここでは、閾値電圧V
th以下であっても、微小の電流(1mA程度)が流れているものとする。この特性を用いて、被試験体13が正常状態である場合は、発光ダイオード16に閾値電圧V
th以下の電圧が順方向に印加されるようにし、被試験体13が異常状態となった場合に発光ダイオード16に閾値電圧V
th以上の電圧が順方向に印加されるようにする。そうすることで、被試験体13が正常状態の場合は、バイパス回路15にはほとんど電流が流れず、被試験体13が異常状態となった場合に、定電流の少なくとも一部がバイパス回路15を流れることとなる。
【0031】
ここで、200mAの定電流試験を例として、具体的な検査回路3の構成について説明する。まず、被試験体13について、被試験体13−1を例として説明する。被試験体13−1に含まれる4個の半導体素子30は、正常状態にあっては、それぞれ順方向に1.5V印加したときに200mAの電流を通電する特性を有することとする。この場合、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は被試験体13−1には6Vの電圧が印加される。そして、被試験体13−1に並列に接続されているバイパス回路15−1にも6Vの電圧が印加されることとなる。このとき、発光ダイオード16−1に印加される電圧が発光ダイオード16−1の閾値電圧V
th以下となるよう可変抵抗17−1の値が設定される。例えば、発光ダイオード16−1は閾値電圧V
thが3.5Vの特性を有するとする。このとき、可変抵抗17−1の値が3.0kΩに設定されることで、発光ダイオード16−1及び可変抵抗17−1に流れる電流は1mA以下となり、発光ダイオード16−1に印加される電圧は3.0Vとなる。そうすることで、被試験体13−1が正常状態であり、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は、バイパス回路15−1にはほとんど電流が流れない。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合は、被試験体13−1の特性が変化することで(例えば、抵抗値が増大、印加される電圧が増大)、被試験体13−1に印加される電圧が増加するとともに、バイパス回路15−1に印加される電圧も増加する。そして、発光ダイオード16−1に印加される電圧が閾値電圧V
thである3.5V以上となると、バイパス回路15−1に電流が流れるとともに、発光ダイオード16−1が発光する。
【0032】
これにより、被試験体13−1が異常状態となった場合でもバイパス回路15−1を通電することで他の被試験体である被試験体13−2及び被試験体13−3に定電流を供給し続けることができる。また、バイパス回路15−1が通電すると発光ダイオード16−1が発光することで、被試験体13−1の異常を認識することができる。そして、直列に接続した複数の被試験体13に対して、1つの定電流源12により定電流試験を行えることで、被試験体13の数に比例して定電流源を増やすことなく、低コストで安定的に検査を行うことができる。
【0033】
ここでは、バイパス手段21は、複数(ここでは3個)の被試験体13それぞれに並列される複数(ここでは3個)のバイパス回路15を備えている。いずれの被試験体13が異常状態になる場合にも、バイパス回路15が定電流の少なくとも一部をバイパスするという観点より、バイパス回路15は、複数の被試験体13それぞれに備えられているのが望ましい。しかし、これに限定されることはなく、例えば、検査の目的に応じて、バイパス回路15は少なくとも1つの被試験体13に備えられていればよい。
【0034】
バイパス回路15の構成はこの例に限定されず、他の素子によって構成されていてもよい。以下に、バイパス回路15の他の構成について説明する。
【0035】
まず、バイパス回路15は、発光ダイオード16を並列に複数接続することとしてもよい。
図3は、発光ダイオード16を並列に複数接続した、検査実行時の検査回路3の一例を示す図である。
図3に示す、発光ダイオード16を並列に複数接続した、検査実行時の検査回路3は、
図2に示す検査実行時の検査回路3とは、バイパス回路15の構成に差異がある点を除けば、同一のものである。したがって、
図2に示す検査実行時の検査回路3と同等の構成には同符号を付し、その重複する説明は省略するものとする。
【0036】
ここで、
図3に示すバイパス回路15について、バイパス回路15−1を例として説明する。バイアス回路15−1は、発光ダイオード16−1及び発光ダイオード16−11が並列に接続され、並列に接続される2個の発光ダイオード16と可変抵抗17−1とが直列に接続されて構成されている。なお、発光ダイオード16が並列される個数は2個に限られず3以上の複数個であってもよい。ここでは、発光ダイオード16−1及び発光ダイオード16−11は同等の順方向電圧特性(例えば、閾値電圧V
thを3.5Vとする)を有することとする。この場合も、発光ダイオード16−1及び発光ダイオード16−11それぞれに印加される電圧が閾値電圧V
thである3.5V未満となるよう、可変抵抗17−1の値を設定する。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合は、被試験体13−1の特性が変化することで(例えば、抵抗値が増大、印加される電圧が増大)、被試験体13−1に印加される電圧が増加するとともに、バイパス回路15−1に印加される電圧も増加する。そして、発光ダイオード16−1及び発光ダイオード16−11それぞれに印加される電圧が閾値電圧V
thである3.5V以上となると、バイパス回路15−1に電流が流れるとともに、発光ダイオード16−1及び発光ダイオード16−11が発光する。なお、バイパス回路15−2、15−3においても、バイパス回路15−1と同様の動作がなされる。
【0037】
このように、バイパス回路15に含まれる発光ダイオード16を並列に複数接続することで、バイパス回路15に電流が流れた場合の各発光ダイオード16に流れる電流は少なくなる。これにより、各発光ダイオード16の劣化を抑制することができる。
【0038】
なお、上述した検査実行時の検査回路3の2つの例において、バイパス回路15は、発光ダイオード16だけで構成されていてもよい。この場合は、被試験体13の特性に応じて、最適な順方向電圧特性を有する発光ダイオード16を選定する。つまり、発光ダイオード16の閾値電圧V
thが、被試験体13に定電流が供給されている間に被試験体13に印加される電圧より大きくなるものを選定する。また、発光ダイオード16の特性に応じて、並列に接続させる被試験体13に含まれる半導体素子30の個数を調整してもよい。また、バイパス回路15に含まれる素子は発光ダイオード16に限定されることはなく、閾値電圧未満では電流がほとんど流れず閾値電圧以上では電流が流れる特性を持つ他の素子であってもよく、例えば、PINダイオード、ツェナーダイオード、アバランシェダイオード、バリスタであってもよい。
【0039】
次に、バイパス回路15は、発光ダイオード16及びツェナーダイオード18を含んで構成されていてもよい。
図4は、ツェナーダイオード18を用いた、検査実行時の検査回路3の一例を示す図である。
図4に示す、ツェナーダイオード18を用いた、検査実行時の検査回路3は、
図2に示す検査実行時の検査回路3とは、バイパス回路15の構成に差異がある点を除けば、同一のものである。したがって、
図2に示す検査実行時の検査回路3と同等の構成には同符号を付し、その重複する説明は省略するものとする。
【0040】
ここで、
図4に示すバイアス回路15について、バイアス回路15−1を例として説明する。バイパス回路15−1は、発光ダイオード16−1及びツェナーダイオード18−1が直列接続されて構成されている。ツェナーダイオード18−1は、逆方向に電圧が印加された場合に、印加された電圧が所定の逆方向電圧である降伏電圧V
br以下であるとほとんど電流を流さず、印加された電圧が降伏電圧V
br以上であると電流を流す、という特性を有する。この特性を用いて、流れる電流に対して、ダイオード16−1が順方向と、ツェナーダイオード18−1が逆方向とに、それぞれなるように、直列接続されている。すなわち、被試験体13−1が正常な場合は、発光ダイオード16−1に閾値電圧V
th以下の電圧が順方向に印加されるようにし、ツェナーダイオード18−1に降伏電圧V
br以下の電圧が逆方向に印加されるように直接接続される。これにより、被試験体13−1が正常状態の場合は、被試験体13−1に定電流が供給され、バイパス回路15−1にはほとんど電流が流れない。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合に発光ダイオード16−1に閾値電圧V
th以上の電圧が順方向に印加され、ツェナーダイオード18−1に降伏電圧V
br以上の電圧が逆方向に印加されるようにする。そうすることで、被試験体13−1が異常状態となった場合に、定電流の少なくとも一部がバイパス回路15−1を流れることとなる。
【0041】
ここで、200mAの定電流試験を例として、ツェナーダイオード18−1を含む具体的な検査回路3の構成について説明する。被試験体13−1に含まれる4個の半導体素子30は、それぞれ順方向に1.5V印加したときに200mAの電流を通電する特性を有することとする。この場合、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は被試験体13−1には6Vの電圧が印加される。そして、被試験体13−1に並列に接続されているバイパス回路15−1にも6Vの電圧が印加されることとなる。ここで、ツェナーダイオード18−1の降伏電圧V
brと発光ダイオード16−1の閾値電圧V
thとの和が、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間に被試験体13−1に印加される電圧(ここでは、6Vとなる)より大きくなるようにする。つまり、発光ダイオード16−1が閾値電圧V
thが3.5Vの特性を有するとすると、ツェナーダイオード18−1はその降伏電圧V
brが2.5Vより大きい(ここでは、5Vとする)特性を有するものとする。そうすることで、被試験体13−1が正常状態であり、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は、バイパス回路15−1にはほとんど電流が流れない。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合は、被試験体13−1の特性が変化することで(例えば、抵抗値が増大、印加される電圧が増大)、被試験体13−1に印加される電圧が増加するとともに、バイパス回路15−1に印加される電圧も増加する。そして、発光ダイオード15−1に印加される電圧が閾値電圧V
thである3.5V以上となり、かつ、ツェナーダイオード18−1に印加される電圧が降伏電圧V
brである5V以上となると、バイパス回路15−1に電流が流れるとともに、発光ダイオード16−1が発光する。
【0042】
これにより、バイパス回路15−1が、異なる特性を有するダイオードが複数選択され、複数選択されたダイオードが直列に接続されて構成されることで、バイパス回路15−1に電流が流れるための電圧条件を調整することができる。また、ツェナーダイオード18−1の降伏電圧V
brが発光ダイオード16−1の閾値電圧V
thより大きい特性を有するものとする、ツェナーダイオード18−1の降伏電圧V
brによりバイパス回路15−1に電流が流れるための電圧条件を調整するとともに、発光ダイオード16−1の発光により被試験体13−1が異常状態であることを認識することができる。なお、バイパス回路15−2及びバイパス回路15−3においても、上述したバイパス回路15−1と同様の動作がなされる。
【0043】
なお、ここでは、バイパス回路15に電流が流れるための電圧条件を調整できるよう、バイパス回路15が発光ダイオード16及びツェナーダイオード18を含んで構成される例について示したが、この組み合わせに限定されることはない。閾値電圧以下では電流がほとんど流れず閾値電圧以上では電流が流れる特性をそれぞれ持つ他の素子を複数用いてもよく、それらが2つ以上直列に接続されてバイパス回路15を構成することとしても同様の効果が得られる。
【0044】
具体的には、例えば、バイパス回路15は、バリスタ19及びアバランシェダイオード20を含んで構成されてもよい。
図5は、バリスタ19及びアバランシェダイオード20を用いた、検査実行時の検査回路3の一例を示す図である。
図5に示す、バリスタ19及びアバランシェダイオード20を用いた、検査実行時の検査回路3は、
図2に示す検査実行時の検査回路3とは、バイパス回路15の構成に差異がある点を除けば、同一のものである。したがって、
図2に示す検査実行時の検査回路3と同等の構成には同符号を付し、その重複する説明は省略するものとする。
【0045】
ここで、
図5に示すバイパス回路15について、バイアス回路15−1を例として説明する。バイパス回路15−1は、バリスタ19−1及びアバランシェダイオード20−1が直列接続されて構成されている。バリスタ19−1は、所定の電圧であるバリスタ電圧V
vaより小さい電圧が印加される場合は電気抵抗が高くほとんど電流を流さないが、バリスタ電圧V
va以上の電圧が印加されると電気抵抗が低くなり電流を流す、という特性を有する。アバランシェダイオード20−1は、逆方向に電圧が印加された場合に、印加された電圧が所定の逆方向電圧である降伏電圧V
br以下であるとほとんど電流を流さず、印加された電圧が降伏電圧V
br以上であると電流を流す、という特性を有する。これらの特性を用いて、被試験体13−1が正常な場合は、バリスタ19−1にバリスタ電圧V
va以下の電圧が印加されるようにし、アバランシェダイオード20−1に降伏電圧V
br以下の電圧が逆方向に印加されるようにする。そうすると、被試験体13−1が正常状態の場合は、被試験体13に定電流が供給され、バイパス回路15−1にはほとんど電流が流れない。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合にバリスタ19−1にバリスタ電圧V
va以上の電圧が印加され、アバランシェダイオード20−1に降伏電圧V
br以上の電圧が逆方向に印加されるようにする。そうすることで、被試験体13−1が異常状態となった場合に、定電流の少なくとも一部がバイパス回路15−1を流れることとなる。
【0046】
ここで、200mAの定電流試験を例として、バリスタ19−1及びアバランシェダイオード20−1を含む具体的な検査回路3の構成について説明する。被試験体13−1に含まれる4個の半導体素子30は、それぞれ順方向に1.5V印加したときに200mAの電流を通電する特性を有することとする。この場合、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は被試験体13−1には6Vの電圧が印加される。そして、被試験体13−1に並列に接続されているバイパス回路15−1にも6Vの電圧が印加されることとなる。ここで、バリスタ19−1のバリスタ電圧V
vaと、アバランシェダイオード20−1の降伏電圧V
brとの和が、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間に被試験体13−1に印加される電圧(ここでは、6Vとなる)より大きくなるようにする。つまり、バリスタ19−1がバリスタ電圧V
va3Vの特性を有するとすると、アバランシェダイオード20−1はその降伏電圧V
brが3Vより大きい(ここでは、4Vとする)特性を有するものとする。そうすることで、被試験体13−1が正常状態であり、被試験体13−1に200mAの定電流が供給されている間は、バイパス回路15−1にはほとんど電流が流れない。そして、被試験体13−1が異常状態となった場合は、被試験体13−1の特性が変化することで(例えば、抵抗値が増大、印加される電圧が増大)、被試験体13−1に印加される電圧が増加するとともに、バイパス回路15−1に印加される電圧も増加する。そして、バリスタ19−1に印加される電圧がバリスタ電圧V
vaである3V以上となり、かつ、アバランシェダイオード20−1に印加される電圧が降伏電圧V
brである4V以上となると、バイパス回路15−1に電流が流れる。
【0047】
これにより、バイパス回路15−1が、異なる特性を有するダイオードを複数直列に接続して構成されることで、バイパス回路15−1に電流が流れるための電圧条件を調整することができる。なお、なお、バイパス回路15−2及びバイパス回路15−3においても、上述したバイパス回路15−1と同様の動作がなされる。
【0048】
次に、本実施形態における検査装置1の検査対象となる被試験体13について詳しく説明する。
【0049】
図6は、多チャンネルチップオンキャリアである被試験体13の構造の第1例を示す図である。
図6に示す被試験体13は、同一基板上に形成される複数の半導体素子30を1つのヒートシンク50へ実装したチップオンキャリアであり、各半導体素子30は正電極(P電極40)と負電極(N電極)をそれぞれ備えている。すなわち、
図6に示すように、被試験体13は、上面にP電極40(40−1〜40−4)、下面にN電極を備えた4個の半導体素子30(30−1〜30−4)と、ヒートシンク50と、を含んで構成されている。ヒートシンク50の表面には、4個の互いに絶縁されたプローブN電極60(60−1〜60−4)が備えられており、それぞれのプローブN電極60は、半導体素子30の下面に備えられているN電極とダイボンディングされている。そして、半導体素子30の上面に備えられるP電極40と、ヒートシンク表面のプローブN電極60と、に電源を接続して電圧を印加することにより、半導体素子30は発光光70(70−1〜70−4)を端面発光する。なお、被試験体13に4個の半導体素子30(30−1〜30−4)を含む例を示したが、この例に限定されず、被試験体13は1以上の半導体素子を含むこととしてよい。
【0050】
図6に示すような4個の半導体素子30を実装した他チャンネルチップオンキャリア、25GB/S×4波長や28GB/S×4波長などの波長多重技術を用いた100GBEに代表されるインターフェースに適合する光送受信機に搭載されるものである。このような多チャンネルチップオンキャリアが光送受信機に搭載された後、各半導体素子は光送受信機の駆動系と直接ワイヤボンディングされる。なぜなら、多チャンネルチップオンキャリアが中継基板等を介して光送受信機と接続されると、寄生インダクタンス等により帯域が劣化してしまうからである。そこで、検査装置1が多チャンネルチップオンキャリアに対してバーンイン試験を行う際には、各半導体素子をワイヤボンディングせずに電気的に接続させる必要がある。なぜなら、ワイヤボンディングによって複数の半導体素子30が電気的に接続されて検査が行われると、検査終了後には光送受信機に搭載するために一旦バーンイン試験で用いたワイヤボンディングを外さなければならないからである。ワイヤボンディングは、荷重、超音波、熱等により接続されており、さらに、ワイヤボンディングのボールサイズ(〜100μm)と比較しP電極40のサイズは同程度くらいであり、極めて小さい。このことから、ワイヤボンディングによる接続、ワイヤボンディングの取外しを繰り返すことは半導体素子30の状態を変化させてしまう可能性がある(素子を傷つけるポテンシャルが増し、その結果、長期信頼性を低下させる危険性がある)。このように、定電流試験を行うことにより半導体素子30の状態が変化するのは望ましくない。
【0051】
以下に、被試験体13に含まれる複数の半導体素子を電気的に直列接続する配線方法について説明する。
【0052】
図7は、被試験体配線部14に
図6に示す被試験体13が配置された測定用ユニット10を示す図である。
図7に示すように、被試験体配線部14は複数のプローブ針80(80−1〜80−8)を含んでいる。複数のプローブ針80は、被試験体13に含まれる4個の半導体素子30(30−1〜30−4)がプローブ針80(80−1〜80−8)を介して順に電気的に直列接続されるように、配置されている。プローブ針80は、細さが100μm程であり、プローブ針80の先端部分は板ばねとして機能するよう形成されているので、プローブ針80の先端部分が電極に圧着することで電気的に接続される。
【0053】
まず、プローブ針80−1は半導体素子30−1のP電極40−1へ圧着され、プローブ針80−2は、プローブN電極60−1へ圧着される。そして、プローブ針80−3は、半導体素子30−2のP電極40−2へ圧着され、プローブ針80−4は、プローブN電極60−2へ圧着される。そして、プローブ針80−5は、半導体素子30−3のP電極40−3へ圧着され、プローブ針80−6は、プローブN電極60−3へ圧着される。そして、プローブ針80−7は、半導体素子30−4のP電極40−4へ圧着され、プローブ針80−8は、プローブN電極60−4へ圧着される。そして、プローブ針80−2とプローブ針80−3、プローブ針80−4とプローブ針80−5、及びプローブ針80−6とプローブ針80−7、がそれぞれ接続されるよう配線されることで、半導体素子30−1から半導体素子30−4まで各半導体素子30が順に電気的に直列に接続される。なお、半導体素子30−1から半導体素子30−4まで各半導体素子30が電気的に直列に接続されていれば、半導体素子30の接続順は問わない。
【0054】
このように、各被試験体13が、複数の半導体素子30を含む多チャンネルチップオンキャリアである場合にも、1つの定電流源を用いて、複数の被試験体13をともに定電流試験を行うことができる。
【0055】
さらに、板ばね状の先端部分を有するプローブ針80を電極に圧着することで、被試験体13に含まれる複数の半導体素子30の電極にワイヤボンディングすることなく、複数の半導体素子30が順に電気的に直列接続される。これにより、本実施形態に係る検査装置1は、ワイヤボンディングによる半導体素子30の状態への影響を無くすことができるという顕著な効果を奏する。
【0056】
図8は、本実施形態に係る被試験体13の構造の第2例を示す図である。
図8に示すように、被試験体13は、片面にP電極及びN電極を備えた4個の半導体素子31(31−1〜31−4)と、ヒートシンク50と、を含んで構成されている。ヒートシンク50の表面には、それぞれ4個の互いに絶縁されたプローブP電極41(41−1〜41−4)及びプローブN電極61(61−1〜61−4)が備えられており、4個のプローブP電極41−1〜プローブP電極41−4は、それぞれ半導体素子31の片面に備えられている4個のP電極と、4個のプローブN電極61−1〜プローブN電極61−4は、それぞれ半導体素子31の片面に備えられている4個のN電極と、ダイボンディングされている。そして、プローブP電極41とプローブN電極61とに電源を接続して電圧を印加することにより各半導体素子は発光光71(71−1〜71−4)を端面発光する。なお、被試験体13に4個の半導体素子31(31−1〜31−4)を含む例を示したが、この例に限定されず、被試験体13は1以上の半導体素子を含むこととしてよい。
【0057】
図9は、被試験体配線部14に
図8に示す被試験体13が配置された測定用ユニット10を示す図である。
図9に示すように、被試験体配線部14はプローブ針81(81−1〜81−8)を含んでおり、被試験体13に含まれる4個の半導体素子31(31−1〜31−4)は、プローブ針81(81−1〜81−8)を介して順に電気的に直列接続される。プローブ針81は細さが100μm程であり、プローブ針81の先端部分は板ばねとして機能するよう形成されているので、プローブ針81の先端部分が電極に圧着することで電気的に接続される。
【0058】
まず、プローブ針81−1は半導体素子30−1のプローブP電極41−1へ圧着され、プローブ針81−2は、プローブN電極61−1へ圧着される。そして、プローブ針81−3は、半導体素子31−2のプローブP電極41−2へ圧着され、プローブ針81−4は、プローブN電極61−2へ圧着される。そして、プローブ針81−5は、半導体素子31−3のプローブP電極41−3へ圧着され、プローブ針81−6は、プローブN電極61−3へ圧着される。そして、プローブ針81−7は、半導体素子31−4のプローブP電極41−4へ圧着され、プローブ針81−8は、プローブN電極61−4へ圧着される。そして、プローブ針81−2とプローブ針81−3、プローブ針81−4とプローブ針81−5、及びプローブ針81−6とプローブ針81−7、がそれぞれ接続されるよう配線されることで、半導体素子31−1から半導体素子31−4まで各半導体素子31が順に電気的に直列に接続される。なお、半導体素子31−1から半導体素子31−4まで各半導体素子31が電気的に直列に接続されていれば、半導体素子31の接続順は問わない。
【0059】
このように、同一方向にP電極とN電極とを配置した複数の半導体素子31を含む被試験体13を用いることで、各半導体素子31を順に電気的に直列接続するための被試験体配線部14の配線構造を簡易化できる。
【0060】
図10は、本実施形態に係る被試験体13の構造の第3例を示す図である。
図10に示すように、被試験体13は、4個の半導体素子が1つの半導体アレイ34として構成され、各半導体素子32の片面にP電極43(43−1〜43−4)及びN電極62(62−1〜62−4)が備えられている。そして、P電極43とN電極62とに電源を接続して電圧を印加することにより各半導体素子は発光光72(72−1〜72−4)を上方向へ面発光する。第3例の被試験体13は、
図5に示した方法で、検査装置1の被試験体配線部14に配置される。
【0061】
図11は、本実施形態に係る被試験体13の構造の第4例を示す図である。
図11に示すように、被試験体13は、4個の半導体素子が1つの半導体アレイ35として構成され、各半導体素子33の片面にP電極44(44−1〜44−4)及びN電極63(63−1〜63−4)が備えられている。そして、P電極44とN電極63とに電源を接続して電圧を印加することにより各半導体素子は受光面90(90−1〜90−4)により発光光73(73−1〜73−4)を検出する。第4例の被試験体13は、
図5に示した方法で、検査装置1の被試験体配線部14に配置される。
【0062】
以上、本発明の実施形態に係る検査装置及び検査方法について説明した。本発明は上記実施形態に限定されることなく、接続される被試験体が異常状態に変化した場合に前記定電流の少なくとも一部をバイパスする、バイパス回路が被試験体に並列接続される検査回路に広く適用することができる。