【課題】軽量であり、ゴムのように柔軟で基材への接着性に優れ、間隔が大きく変動するような隙間にも使用することが可能で、室温で空気中の湿気によって硬化するため施工が極めて容易であり、大量の中性子吸収剤を添加することができ、シリコーン樹脂と同程度あるいはそれ以上の中性子減速効果を有する中性子遮蔽材を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0014】
本発明の中性子遮蔽材は、(A)湿気硬化性基を有するオキシアルキレン系重合体、及び(B)ホウ素化合物を含有するものである。湿気硬化性基とは空気中の水分によって室温でも架橋反応を起こすことができる基であり、珪素原子に結合した加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基やイソシアネート基が例示できる。以下、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基を架橋性シリル基ともいう。従って、前記(A)湿気硬化性基を有するオキシアルキレン系重合体としては、例えば、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体や、ウレタン結合を有するオキシアルキレン系重合体を例示できる。
【0015】
前記(A)成分のオキシアルキレン系重合体は、本質的に下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
−R−O−・・・(1)
【0016】
前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基であり、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状もしくは分岐アルキレン基が好ましい。
【0017】
一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、
−CH
2O−、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(C
2H
5)O−、−CH
2C(CH
3)
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−
等が挙げられる。オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。また、重合体主鎖は直鎖状でもよく、分岐を有してもよい。
【0018】
前記(A)成分の重合体の主鎖骨格の具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のオキシアルキレン系重合体が挙げられる。これらの中では安価で粘度が低く取扱い易いポリオキシプロピレンが好ましい。
【0019】
有機高分子の中で多量の水素原子を含有し、中性子減速効果が大きいものとしてポリエチレンが知られている。ポリエチレンは理論上、8.58×10
22個/gの水素原子を有している。しかし、ポリエチレンは架橋性の重合体ではなく目地材等として使用することは困難である。これに対し、中性子遮蔽材として使用されている架橋性(硬化性)重合体にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が提案されおり、これらはそれぞれ4.24×10
22個/g、5.22×10
22個/gの水素原子を有している。ここで計算にはエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、シリコーン樹脂としてポリジメチルシロキサンを採用している。オキシアルキレン系重合体はオキシプロピレン重合体の場合、6.21×10
22個/gの水素原子を有しており、ポリエチレンには及ばないものの、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂より多くの水素原子を含有しており、中性子を減速する効果が大きい。(A)成分の重合体の水素原子密度としては5.0×10
22個/g以上が好ましく、5.5×10
22個/g以上がより好ましい。このような水素原子密度にするには単量体の種類を選択したり、共重合することにより可能である。
なお、有機重合体は多くが比重は1.0付近である。
【0020】
オキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号に示されるような有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる、有機アルミ−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号および特公昭59−15336号などに示される複金属シアン化物錯体触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。有機アルミ−ポルフィリン錯体触媒による重合法や複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0021】
前記湿気硬化性基の一つである、架橋性シリル基としては、架橋しやすく製造しやすい下記一般式(2)で示されるものが好ましい。架橋性シリル基は、1分子中に平均して0.5個以上含まれていればよく、特に限定はないが、中性子遮蔽材の硬化性や硬化後の物性等の点から、1分子中に平均して0.5個以上2.5個以下含まれるのが好ましく、0.8個以上2.0個以下含まれるのがより好ましい。架橋性シリル基は、重合体分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、架橋性シリル基が分子鎖の主鎖の末端にのみあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0023】
前記式(2)中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはR
13SiO−(R
1は、前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R
1が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の下記一般式(3)におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。
【0025】
該加水分解性基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、d+(eの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。架橋性シリル基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
【0026】
前記架橋性シリル基としては、下記一般式(4)で示される架橋性シリル基が、入手が容易である点から好ましい。
【0028】
(式中、R
1,X,aは前記と同じ)
上記R
1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R
13SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
【0029】
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシル基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシル基が特に好ましい。アルコキシル基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。
【0030】
架橋性シリル基の具体的な構造としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基[−Si(OR
2)
3]、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基[−SiR
1(OR
2)
2]が挙げられ、反応性が高いことにより、トリアルコキシシリル基[−Si(OR
2)
3]が好適であり、トリメトキシシリル基がより好適である。ここでR
2はメチル基やエチル基のようなアルキル基である。
【0031】
また、架橋性シリル基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性シリル基は、主鎖または側鎖あるいはいずれにも存在しうる。
【0032】
架橋性シリル基を形成する珪素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結された珪素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。
【0033】
オキシアルキレン系重合体への架橋性シリル基の導入は、分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性シリル基を有する化合物を反応させることにより行うことができる(以下、高分子反応法という)。
【0034】
高分子反応法の具体例として、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体に架橋性シリル基を有するヒドロシランや架橋性シリル基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を得る方法をあげることができる。不飽和基含有オキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0035】
また、高分子反応法の他の具体例として、末端に水酸基を有するオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基および架橋性シリル基を有する化合物を反応させる方法や末端にイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基および架橋性シリル基を有する化合物を反応させる方法をあげることができる。イソシアネート化合物を使用すると、容易に架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0036】
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の具体例としては、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同57−164123号、特公平3−2450号、特開2005−213446号、同2005−306891号、国際公開特許WO2007−040143号、米国特許3,632,557、同4,345,053、同4,960,844等の各公報に提案されているものをあげることができる。
【0037】
上記の架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0038】
前記ウレタン結合を有するオキシアルキレン系重合体において、ウレタン結合成分としては、たとえばトルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するオキシアルキレン系重合体との反応から得られるものをあげることができる。
【0039】
前記湿気硬化性基の一つである、イソシアネート基はよく知られており、‐NCOで表される基である。イソシアネート基は水酸基含有化合物やアミノ基含有化合物等の活性水素含有化合物と反応しウレタン結合や尿素結合等を有する化合物を生成する。複数のイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体を活性水素化合物と反応させると架橋硬化反応が進行し硬化物が得られる。オキシアルキレン系重合体へのイソシアネート基の導入は通常水酸基末端オキシアルキレン系重合体とポリイソシアネートを反応させることにより可能である。
【0040】
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定はなく、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、イソシアネートが3量体を形成したイソシアヌレート環を持つポリイソシアネート類が挙げられる。中でも耐候性の観点から、脂肪族イソシアネートが好ましい。例えばコロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、3官能性、イソシアヌレート化合物、Mw=600)、コロネートHXLV(日本ポリウレタン(株)製、3官能性、イソシアヌレート化合物、Mw=534)、タケネートD165N(三井化学(株)製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、タケネートD170N(三井化学(株)製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、デスモジュールN3300(住化バイエル社製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、デスモジュールN3900(住化バイエル社製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、トロネートHDT(Perstorp株製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、トロネートHDTLV1(Perstorp株製、3官能性、イソシアヌレート化合物)、トロネートHDTLV2(Perstorp株製、3官能性、イソシアヌレート化合物)などがあげられる。上記のイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
イソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体は空気中の水分、ポリオール化合物やポリアミン化合物等の活性水素含有化合物と反応させることにより架橋硬化する。また、空気中の水分等により、活性水素化合物を生成する化合物との組成物を製造し、この組成物を空気中の水分等によって硬化させることもできる。
【0042】
前記(A)成分の重合体の数平均分子量は特に制限はないが、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において、好ましくは2,000以上50,000以下、より好ましくは2,000以上30,000以下で分子量分布の狭いものが、硬化前の粘度が低いので取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が好適である。これらの(A)成分の重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。また、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体等の他の重合体を併用してもよい。
【0043】
前記(B)ホウ素化合物は中性子吸収剤であり、例えば、炭化ホウ素、窒化ホウ素,無水ホウ酸、ホウ素鉄、灰硼石、正ホウ酸、メタホウ酸等が挙げられ、炭化ホウ素がより好ましい。本発明において(B)成分のホウ素化合物は、(A)成分の湿気硬化性重合体100質量部に対して1〜500質量部含まれるものであり、10〜300質量部が好ましく、30〜300質量部がより好ましい。
【0044】
特公昭62−049305公報第3欄に記載されているように、通常のポリエチレンには無機ホウ素化合物等の無機充填剤をポリエチレン100質量部に対し70質量部程度しか添加できないとされている。特公昭62−049305公報では多量の充填剤を添加するため特殊なポリエチレンを使用している。本発明の(A)成分である湿気硬化性基を有するオキシアルキレン系重合体には100質量部以上、多い場合300質量部、さらには500質量部のホウ素化合物を添加でき、中性子の減速より吸収が求められる場合には本発明の中性子遮蔽材は特に有用である。
【0045】
本発明の中性子遮蔽材は、前記した成分に加えて、必要に応じて、(A)成分以外の重合体、充填材、希釈剤、可塑剤、揺変剤、水分吸収剤(保存安定性改良剤)、接着性付与剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、物性調整剤、難燃剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、着色剤、ラジカル重合開始剤などの物質を配合してもよい。
【0046】
硬化物の耐候性、基材への接着性あるいは耐薬品性を改善するために架橋性シリル基やイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を添加することができる。架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は本質的に式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0048】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基、R
3はアルキル基を示す)
式(5)におけるR
3はアルキル基であり、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R
3は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、ハロゲン原子やフェニル基等を有する置換アルキル基でもよい。R
3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等をあげることができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分子鎖は本質的に式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう本質的にとは該重合体中に存在する式(5)の単量体単位の合計が50質量%をこえることを意味する。式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70質量%以上である。
【0050】
式(5)以外の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体をオキシアルキレン系重合体と混合して使用する場合、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性が大きい点で、架橋性シリル基を有し分子鎖が、下記式(6):
【0052】
(式中、R
2は前記に同じ、R
4は炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記式(7):
【0054】
(式中、R
2は前記に同じ、R
5は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体が好ましい。
【0055】
前記式(6)のR
4としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基があげられる。なお、R
4は一種でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0056】
前記式(7)のR
5としては、たとえば2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素数6以上、通常は7〜30、好ましくは8〜20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、R
5は一種でもよく、2種以上混合したものであってもよい。また、式(6)の単量体単位と式(7)の単量体単位の存在比は、質量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
【0057】
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをラジカル共重合して得ることができる。また、架橋性シリル基を有する開始剤や架橋性シリル基を有する連鎖移動剤を使用すると分子鎖末端に架橋性シリル基を導入することができる。
【0058】
特開2001−040037号公報、特開2003−048923号公報および特開2003−048924号公報には架橋性シリル基を有するメルカプタンおよびメタロセン化合物を使用して得られる架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。また、特開2005−082681号公報合成例には高温連続重合による架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。
【0059】
特開2000−086999号公報等にあるように、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体であって架橋性シリル基が分子鎖末端に高い割合で導入された重合体も知られている。このような重合体はリビングラジカル重合によって製造されているため、高い割合で架橋性シリル基を分子鎖末端に導入することができる。本発明では以上に述べたような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することができる。
【0060】
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体やこの重合体と架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の混合物の具体例は、特開昭59−122541号、同63−112642号、同特開平6−172631号等の各公報に記載されている。また、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報には、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を得る方法が記載されている。
【0061】
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の混合物を使用する場合、オキシアルキレン系重合体100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を5〜200質量部使用することが好ましく、5〜50質量部使用することがさらに好ましい。
【0062】
本発明の中性子遮蔽材には湿気硬化性基を有するオキシアルキレン系重合体に加えて、上記した(メタ)アクリル酸エステル系重合体以外の架橋性シリル基を有する有機重合体を添加してもよい。使用される架橋性シリル基を有する有機重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。具体的には、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、および/またはスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
【0063】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体も架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体と同様に使用することができる。このような重合体は、例えば、特開2000−178533号公報にあるように水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体とポリイソシアネート化合物を反応させることによって得ることができる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の例は特開平7−10957公報や特開平7−197011公報に記載されている。
【0064】
また、(A)成分の湿気硬化性オキシアルキレン系重合体としてイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体を使用する場合には、水酸基等活性水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することもできる。
【0065】
(A)成分である湿気硬化性基を有するオキシアルキレン系重合体に湿気硬化性基を有する重合体であって(A)以外の重合体を使用する場合には、(A)成分は湿気硬化性重合体の合計量に対して30質量%以上、さらには35質量%以上、特には40質量%以上が好ましい。
【0066】
前記充填材としては、公知の充填材を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、レオロジーコントロール剤、炭酸マグネシウム、珪藻土含水ケイ酸、含水けい酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、スレート粉、マイカ、カオリン、ゼオライト、高分子粉体等が挙げられ、表面処理炭酸カルシウム、微粉末シリカ、及びレオロジーコントロール剤からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0067】
前記希釈剤としては、公知の希釈剤を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤,リニアレンダイマー(出光興産株式会社商品名)等のα−オレフィン誘導体,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤,エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤,クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル等のクエン酸エステル系溶剤,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の各種溶剤が挙げられ、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤,及びリニアレンダイマー等のα−オレフィン誘導体が粘度を下げる希釈効果が高く、より好適である。また、沸点150℃以上の希釈剤が好ましく、180℃以上の希釈剤がより好ましい。
【0068】
前記揺変剤としては、例えば、コロイダルシリカ等の無機揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機揺変剤、水添ヒマシ油誘導体、脂肪酸アマイドワックス、ステアリル酸アルミニウム、ステアリル酸バリウム等が挙げられる。前記揺変剤は単独で使用しても良く、または、2種類以上を併用しても良い。
【0069】
本発明の中性子遮蔽材は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明の中性子遮蔽材は大気中の湿気により常温で硬化することが可能であり、常温湿気硬化型の中性子遮蔽材として好適に用いられるが、必要に応じて、適宜、加熱により硬化を促進させてもよい。
【0070】
本発明の中性子遮蔽材を製造する方法は特に制限はなく、例えば、前記成分(A)及び(B)を所定量配合し、また必要に応じて他の配合物質を配合し、脱気攪拌することにより製造することができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0072】
(実施例1〜3)
表1に示す如く、攪拌機、温度計、窒素導入口、モノマー装入管および水冷コンデンサーを装着した500mLのフラスコに、(A)成分の重合体として変成シリコーンポリマー((株)カネカ製、商品名MSポリマーS303H)を100gと炭化ホウ素(ESK Ceramics 社製、商品名F220)を100g、揺変剤(楠本化成(株)製、商品名ディスパロン#6500)を10g入れ、混合した。該混合物を加熱(100℃)、撹拌を1時間することによって混練した。室温まで戻し、その混合物に希釈剤(JX日鉱日石エネルギー(株)製、商品名N−11、ノルマルパラフィン)を10g、水分吸収剤(信越化学工業(株)製、商品名KBM1003、ビニルトリメトキシシラン)を5g、接着性付与剤(信越化学工業(株)製、商品名KBM603、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン]を2g、錫触媒[日東化成(株)製、商品名ネオスタンU−220H)を3g、それぞれ添加し、25℃で脱気撹拌することにより、硬化性の中性子遮蔽材を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
表1における配合物質の配合量は質量部で示され、各配合物質の詳細は次の通りである。
・変成シリコーンポリマー:商品名303H、(株)カネカ社製。架橋性シリル基を有するオキシプロピレン系重合体、水素原子密度6.21×10
22(個/g)。
・炭化ホウ素:商品名F220、ESK Ceramics 社製。
・揺変剤:商品名ディスパロン♯6500、楠本化成(株)製。
・希釈剤:商品名N−11、JX日鉱日石エネルギー(株)製。
・水分吸収剤:商品名KBM1003、信越化学社製、ビニルトリメトキシシラン。
・接着性付与剤:シリコーンKBM603、信越化学社製、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン。
・錫触媒:商品名220H、日東化成(株)製。
【0075】
得られた中性子遮蔽材を空気中の湿分によって硬化させた後、硬化物の中性子遮蔽能を測定した結果、中性子は遮蔽された。硬化物の比重はそれぞれ1.33g/cm
3(実施例1)、1.56g/cm
3(実施例2)、1.71g/cm
3(実施例3) であった。また、下記測定方法により接着性試験と追従性試験を行った。結果を表1に示した。
【0076】
・基材に対する接着性試験
中性子遮蔽材を、硫酸アルマイト封孔処理アルミニウム(JISH4000、A5052P)およびスレート((株)ノザワ製、商品名フレキシブルシートN)に、接着面積が長さ25mm×幅25mm×厚み200μmとなるように塗布し、同素材同士を貼り合わせた。23±2℃相対湿度50±5%環境下で14日間養生後、引張速度50mm/分の速度で引張試験を行い、最大引張応力を測定した。評価基準は、以下の通りである。
○:1.0N/mm
2以上、×:1.0N/mm
2より小さい。
【0077】
・追従性試験
中性子遮蔽材を、型枠を用いて長さ150mm×幅15mm×厚み3mmとなるように充填し、23±2℃相対湿度50±5%環境下で14日間養生後、さらに30±2℃環境下で14日間養生させた硬化物を得た。得られた硬化物を長さ方向に30%伸長させ、破断するかどうかを目視にて評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:破断なし、×:破断あり。