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特開2015-161961煙感知器の感度試験方法および感度試験装置並びに煙感知器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-161961(P2015-161961A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】煙感知器の感度試験方法および感度試験装置並びに煙感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20150811BHJP
   G08B 17/107 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   G08B17/00 D
   G08B17/107 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-34839(P2014-34839)
(22)【出願日】2014年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】櫻沢 明夫
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085CA07
5C085CA11
5C085CA14
5C085CA25
5G405AA01
5G405AB02
5G405BA01
5G405CA16
5G405CA35
5G405FA16
(57)【要約】
【課題】感知器に試験用端子を設けたり試験装置に煙発生器を設けたりすることなく、個々の感知器の特性に応じた検査が行えるようにする。
【解決手段】煙濃度検出手段と、検出された煙濃度が所定値以上である場合に火災発報信号を出力する機能と、火災発報信号を出力可能な端子と、外部より入力された値を煙濃度検出手段の出力値に加算した値に基づいて煙濃度が所定値以上であるか否か判定する機能とを備えた煙感知器の感度を判定する感度試験方法において、煙感知器に対して所定の値および煙濃度が所定値以上であるか否かの判定実行指令を与えた後、煙感知器より火災発報信号が検出されたか否かを判定することを繰り返して煙感知器の感度を判定する。そして、上記繰返し実行に際して、上記所定の値として、正常火災判定範囲の下限値である作動範囲最小値よりも所定のステップ値だけ低い値からステップ値分ずつ高い値を順次煙感知器へ送るようにした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段と、該煙濃度検出手段により検出した煙濃度が所定値以上である場合に火災を報知する信号を出力する機能と、火災を報知する信号を出力可能な端子と、外部より入力された値を前記煙濃度検出手段の出力値に加算した値に基づいて煙濃度が所定値以上であるか否か判定する機能とを備えた煙感知器の感度を判定する感度試験方法であって、
前記煙感知器に対して所定の値および煙濃度が所定値以上であるか否かの判定実行指令を与えた後、前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定を複数回繰り返して前記煙感知器の感度を判定するものであり、
前記所定の値として、作動範囲の最小値よりも所定のステップ値だけ低い値から前記ステップ値分ずつ高い値を順次前記煙感知器へ送ることを特徴とする煙感知器の感度試験方法。
【請求項2】
予め試験を行なって煙がない状態での前記煙濃度検出手段の出力値および火災と判定したときの煙濃度の値を、前記煙感知器の内部の記憶手段に、初期値および火災発報煙濃度値として記憶させておき、
所定期間経過後に前記煙感知器に対して前記記憶手段に記憶されている初期値および火災発報煙濃度値を出力することを要求し、該要求に応じて前記煙感知器より出力された情報を受信した後、
前記煙感知器より出力され受信した前記初期値および火災判定煙濃度値に基づいて、前記火災判定煙濃度値から前記初期値を減算した値を所定の整数値で割った値を前記ステップ値として決定し、
前記煙感知器に対する前記判定実行指令の付与および前記火災を報知する信号が出力されたか否かの判定を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の煙感知器の感度試験方法。
【請求項3】
前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定の実行前に、前記煙感知器に対して現時点での前記煙濃度検出手段の出力値を出力することを要求し、該要求に応じて前記煙感知器より出力された現時点での前記煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っているか否か判断し、所定の許容範囲内に入っていない場合には前記煙感知器の感度は異常であると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の煙感知器の感度試験方法。
【請求項4】
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段を備えた感知器に設けられている一対の端子を外部より監視して火災を報知する信号が出力されたことを検出可能な火災発報信号検出手段と、
前記煙感知器に対して、所定の値および煙濃度が所定値以上であるか否かの判定を指令する信号を送信する送信手段と、
前記火災発報信号検出手段による火災発報信号の検出結果に応じて前記煙感知器の感度を判定する感度判定手段と、
を備え、
前記感度判定手段は、前記送信手段により、前記所定の値として、作動範囲の最小値よりも所定のステップ値だけ低い値から前記ステップ値分ずつ高い値を順次前記煙感知器へ送り、前記火災発報信号検出手段による火災発報信号の検出結果に応じて前記煙感知器の感度を判定することを特徴とする煙感知器の感度試験装置。
【請求項5】
前記送信手段により、感知器に対して当該感知器内部の記憶手段に記憶されている情報を出力することを要求する信号を送信したことに応じて前記煙感知器より出力された情報を受信する受信手段を備え、
前記煙感知器より出力された情報には、煙がない状態での前記煙濃度検出手段の出力値および火災と判定したときの煙濃度の値が含まれ、
前記感度判定手段は、前記受信手段によって受信した前記出力値および煙濃度の値に基づいて、前記煙濃度の値から前記出力値を減算した値を所定の整数値で割った値を前記ステップ値として決定することを特徴とする請求項4に記載の煙感知器の感度試験装置。
【請求項6】
人間が認知可能な態様で報知を行う報知手段を備え、前記感度判定手段は、前記送信手段により、前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定の実行前に、前記煙感知器に対して現時点での前記煙濃度検出手段の出力値を出力することを要求する信号を送信させ、該要求に応じて前記煙感知器より出力された現時点での前記煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っているか否か判断し、所定の許容範囲内に入っていない場合には前記煙感知器の感度は異常である旨を前記報知手段により報知させることを特徴とする請求項4または5に記載の煙感知器の感度試験装置。
【請求項7】
前記送信手段により信号を送信するための端子を前記受信手段によって信号を受信するための端子と共用するように構成されている請求項6に記載の煙感知器の感度試験装置。
【請求項8】
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段と、
前記煙濃度検出手段により検出した煙濃度が所定値以上であるか否か判定する火災判断手段と、
前記火災判断手段が、検出煙濃度が所定値以上であると判定した場合に火災の発生を報知する火災発報信号を出力する火災発報信号出力手段と、
前記火災発報信号を出力可能な一対の端子と、
を備えた煙感知器であって、
前記火災判断手段は、外部より前記一対の端子に入力された指令を解読する機能と、煙濃度が所定値以上であるか否かの判定実行指令を受信すると外部より入力された試験値を前記煙濃度検出手段の出力値に加算した値に基づいて煙濃度が所定値以上であるか否か判定する機能と、を有することを特徴とする煙感知器。
【請求項9】
データを記憶可能な記憶手段を備え、
前記火災判断手段は、外部より前記一対の端子に入力された第1指令に従い該指令が入力されたときに前記煙濃度検出手段により検出された煙濃度値を前記記憶手段に記憶させる機能と、前記一対の端子に入力された第2指令に従い前記記憶手段に記憶されている煙濃度値を前記一対の端子より出力させる機能と、を有することを特徴とする請求項8に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流入した煙の濃度が所定のしきい値に達したことを感知して火災の発生を検出する機能を有する煙感知器の感度試験方法および感度試験装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器には、煙感知器の他、熱感知器や複合型感知器などがある。このうち煙感知器は、暗箱と呼ばれる煙検出室内に、それぞれの光軸が互いに交差するように発光素子と受光素子とを配置し、発光素子から放射された光が煙検出室内に流入した煙の粒子によって散乱された光を受光素子に受光させ、その受光量が所定のレベルに達したことを感知すると火災発生と判断して火災発報信号を出力するように構成されているものがある。
【0003】
ところで、煙感知器は長年使用していると暗箱内部に埃や塵が堆積あるいは付着して、感知器の感度が変化してしまうおそれがあるため、定期的に点検を行う必要がある。そこで、設置場所に持ち込んで煙感知器の感度を検査する可搬型の感度試験装置が開発され実用化されている。また、感度試験装置には、出荷前の感知器を工場にて検査する感度試験装置もある。
【0004】
従来より種々の感知方式の感度試験装置が提供されており、例えば図6に示すように、煙感知器10に試験用の端子P0を設けるとともに、該試験用端子P0に外部の試験装置から電圧を印加すると、加算器(ダイオードD1,D2)で受光素子12からの信号を増幅器13で増幅した電圧に、端子P0への印加電圧を加算したものが火災判断回路15に入力されるように構成し、外部からどのくらいの電圧を印加したときに煙感知器から火災発報信号が出力されるか検査することで感知器の性能(感度)を判定する装置がある。
【0005】
また、実際に煙を発生させる煙発生器を内部に設け、発生させる煙の濃度を調整してどのくらいの濃度の煙を発生させたときに煙感知器から火災発報信号が出力されるか検査するようにした感度試験装置もある。このような感度試験装置に関する発明としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−362352号公報
【特許文献2】特開2002−352348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した感度試験装置のうち、前者の試験用端子に電圧を印加して感度を検査する装置は、もともと煙感知器が持っている初期ばらつきを考慮していないので、個々の煙感知器の特性に応じた検査が行えず、信頼性の高い検査結果が得られない。また、外部より電圧を印加するための試験用端子を必要とするため、煙感知器のコストアップを招くという課題がある。
一方、特許文献1に記載されている感度試験装置は、煙発生器を備えているため筺体が大きくなり持ち運びに不便であるとともに、所定の濃度の煙を発生させて安定するまでの時間が長くなるので、複数の煙感知器を検査する場合にトータルの検査所要時間が非常に長くなってしまうとともに、一連の操作も煩雑であるという課題がある。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、煙感知器に試験用端子を設けたり試験装置に煙発生器を設けたりすることなく検査が行え、操作が容易でありかつ検査所要時間を短くすることができるとともに、個々の煙感知器の特性に応じた検査が行え、信頼性の高い検査結果が得られる煙感知器の感度試験方法および感度試験装置並びに煙感知器を提供することにある。
【0009】
なお、受光信号に含まれるバックグランド信号のレベルを増幅部のゲインを増加させて高めることで、擬似的に感度試験用に必要な煙濃度を検出したときの受光信号を発生させ、実際に煙を煙検出室に流入させて試験を行うことなく感度試験を可能とするようにした煙感知器の感度試験装置に関する発明が提案されている(特許文献2)。しかし、この文献に記載されている感度試験装置は、増幅部のゲインの増加と同時に発光素子の電流を増加させることで回路において発生するノイズの影響を少なくして、正確な感度試験が行えるようにするもので、本願発明とは課題も課題を解決するための手段も相違している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段と、該煙濃度検出手段により検出した煙濃度が所定値以上である場合に火災を報知する信号を出力する機能と、火災を報知する信号を出力可能な端子と、外部より入力された値を前記煙濃度検出手段の出力値に加算した値に基づいて煙濃度が所定値以上であるか否か判定する機能とを備えた煙感知器の感度を判定する感度試験方法であって、
前記煙感知器に対して所定の値および煙濃度が所定値以上であるか否かの判定実行指令を与えた後、前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定を複数回繰り返して前記煙感知器の感度を判定するものであり、
前記所定の値として、作動範囲の最小値よりも所定のステップ値だけ低い値から前記ステップ値分ずつ高い値を順次前記煙感知器へ送ることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、試験装置に煙発生器を設けることなく、煙感知器の感度が変化したか否かの検査を行うことができるので、検査の際に実際に煙を発生させる必要がないため操作が容易であるとともに検査に要する時間を短くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の煙感知器の感度試験方法において、
予め試験を行なって煙がない状態での前記煙濃度検出手段の出力値および火災と判定したときの煙濃度の値を、前記煙感知器の内部の記憶手段に、初期値および火災発報煙濃度値として記憶させておき、
所定期間経過後に前記煙感知器に対して前記記憶手段に記憶されている初期値および火災発報煙濃度値を出力することを要求し、該要求に応じて前記煙感知器より出力された情報を受信した後、
前記煙感知器より出力され受信した前記初期値および火災判定煙濃度値に基づいて、前記火災判定煙濃度値から前記初期値を減算した値を所定の整数値で割った値を前記ステップ値として決定し、
前記煙感知器に対する前記判定実行指令の付与および前記火災を報知する信号が出力されたか否かの判定を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、煙感知器より出力された初期値および火災判定煙濃度値に基づいて、繰返し判定の際のステップ値を決定するため、個々の煙感知器の特性に応じた検査が行え、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の煙感知器の感度試験方法において、
前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定の実行前に、前記煙感知器に対して現時点での前記煙濃度検出手段の出力値を出力することを要求し、該要求に応じて前記煙感知器より出力された現時点での前記煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っているか否か判断し、所定の許容範囲内に入っていない場合には前記煙感知器の感度は異常であると判定することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、煙感知器の端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定の実行前に、煙感知器より出力された現時点での煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っているか否か判断して、所定の許容範囲内に入っていない場合には煙感知器の感度は異常であると判定するので、異常と判定された煙感知器については、所定のステップ値分ずつ高い値を順次煙感知器へ送り煙感知器の端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かを判定する手順を省略することができ、それによって検査に要する時間を短くすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段を備えた感知器に設けられている一対の端子を外部より監視して火災を報知する信号が出力されたことを検出可能な火災発報信号検出手段と、
前記煙感知器に対して、所定の値および煙濃度が所定値以上であるか否かの判定を指令する信号を送信する送信手段と、
前記火災発報信号検出手段による火災発報信号の検出結果に応じて前記煙感知器の感度を判定する感度判定手段と、
を備え、
前記感度判定手段は、前記送信手段により、前記所定の値として、作動範囲の最小値よりも所定のステップ値だけ低い値から前記ステップ値分ずつ高い値を順次前記煙感知器へ送り、前記火災発報信号検出手段による火災発報信号の検出結果に応じて前記煙感知器の感度を判定することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、試験装置に煙発生器を設けることなく、煙感知器の感度が変化したか否かの検査を行うことができるので、検査の際に実際に煙を発生させる必要がないため操作が容易であるとともに検査に要する時間を短くすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の煙感知器の感度試験装置において、
前記送信手段により、感知器に対して当該感知器内部の記憶手段に記憶されている情報を出力することを要求する信号を送信したことに応じて前記煙感知器より出力された情報を受信する受信手段を備え、
前記煙感知器より出力された情報には、煙がない状態での前記煙濃度検出手段の出力値および火災と判定したときの煙濃度の値が含まれ、
前記感度判定手段は、前記受信手段によって受信した前記出力値および煙濃度の値に基づいて、前記煙濃度の値から前記出力値を減算した値を所定の整数値で割った値を前記ステップ値として決定することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、煙感知器より出力された初期値および火災判定煙濃度値に基づいて、繰返し判定の際のステップ値を決定するため、個々の煙感知器の特性に応じた検査が行え、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の煙感知器の感度試験装置において、
人間が認知可能な態様で報知を行う報知手段を備え、前記感度判定手段は、前記送信手段により、前記煙感知器の前記端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かの判定の実行前に、前記煙感知器に対して現時点での前記煙濃度検出手段の出力値を出力することを要求する信号を送信させ、該要求に応じて前記煙感知器より出力された現時点での前記煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っているか否か判断し、所定の許容範囲内に入っていない場合には前記煙感知器の感度は異常である旨を前記報知手段により報知させることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、煙感知器より出力された現時点での煙濃度検出手段の出力値が所定の許容範囲内に入っていない場合には煙感知器の感度は異常であると判定するので、異常と判定された煙感知器については、所定のステップ値分ずつ高い値を順次煙感知器へ送り煙感知器の端子の状態を監視して火災を報知する信号が出力されたか否かを判定する手順を省略することができ、それによって検査に要する時間を短くすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の煙感知器の感度試験装置において、
前記送信手段により信号を送信するための端子を前記受信手段によって信号を受信するための端子と共用するように構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、感度試験装置に設ける端子の数を減らすことができ、それによって装置を小型化し、持ち運びを容易にすることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、
流入した煙の濃度を検出可能な煙濃度検出手段と、
前記煙濃度検出手段により検出した煙濃度が所定値以上であるか否か判定する火災判断手段と、
前記火災判断手段が、検出煙濃度が所定値以上であると判定した場合に火災の発生を報知する火災発報信号を出力する火災発報信号出力手段と、
前記火災発報信号を出力可能な一対の端子と、
を備えた煙感知器であって、
前記火災判断手段は、外部より前記一対の端子に入力された指令を解読する機能と、煙濃度が所定値以上であるか否かの判定実行指令を受信すると外部より入力された試験値を前記煙濃度検出手段の出力値に加算した値に基づいて煙濃度が所定値以上であるか否か判定する機能と、を有することを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、煙感知器に試験用端子を設けることなく、煙感知器の感度が変化したか否かの検査を行うことができるので、煙感知器の部品点数を減らし小型化を図ることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の煙感知器において、
データを記憶可能な記憶手段を備え、
前記火災判断手段は、外部より前記一対の端子に入力された第1指令に従い該指令が入力されたときに前記煙濃度検出手段により検出された煙濃度値を前記記憶手段に記憶させる機能と、前記一対の端子に入力された第2指令に従い前記記憶手段に記憶されている煙濃度値を前記一対の端子より出力させる機能と、を有することを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、外部の試験装置は試験開始前に試験対象の煙感知器内部の記憶手段から初期火災濃度値を読み出して、その値に応じた試験値を生成して感度試験を行うことができるので、個々の煙感知器の特性に応じた検査が行え、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、試験装置に煙発生器を設けることなく検査が行え、操作が容易でありかつ検査所要時間を短くすることができる煙感知器の感度試験方法および試験装置を実現することができる。また、個々の感知器の特性に応じた検査が行え、信頼性の高い検査結果が得られる煙感知器の感度試験方法および試験装置を実現することができる。さらに、煙感知器に試験用端子を設けることなく検査が行え、煙感知器の小型化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明を適用した感度試験装置による試験が可能な煙感知器の一実施形態を示すブロック図である。
図2】本発明を適用した煙感知器の感度試験装置および該感度試験装置と煙感知器の接続状態を示すブロック図である。
図3】本発明を適用した感度試験装置による試験が可能な煙感知器の出荷時における煙濃度と受光素子(煙濃度検出素子)の出力をAD変換した値との関係を示すグラフである。
図4】本発明を適用した感度試験装置による試験が可能な煙感知器の所定期間経過後の試験時における煙濃度と受光素子(煙濃度検出素子)の出力をAD変換した値の正常範囲を示すグラフである。
図5】実施形態の感度試験装置における演算制御部(CPU)によって実行される感度試験の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】従来の煙感知器の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る感度試験装置による試験が可能な煙感知器の一実施形態を示す。この実施形態の煙感知器は、暗箱と呼ばれる煙検出室を備え、該煙検出室内に、それぞれの光軸が互いに交差するように発光素子と受光素子とが配置されており、発光素子から放射された光が煙検出室内に流入した煙の粒子によって散乱された光を受光素子に受光させ、その受光量が所定のレベル達したことを感知すると火災発生と判断して火災発報信号を出力するように構成されている。
【0030】
上記のような機能を実現するために、本実施形態における煙感知器10は、図1に示すように、発光素子11および受光素子12と、受光素子12からの信号を増幅する増幅器13と、該増幅器13により増幅された信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するAD変換回路14と、該AD変換回路14からの出力値に基づいて火災の発生を判断する火災判断回路15を備えている。本実施形態においては、上記受光素子12と増幅器13とAD変換回路14とにより煙濃度検出手段が構成される。
火災判断回路15は、マイクロプロセッサ(CPU)およびROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶手段により構成される。また、後述の初期値等を記憶しておくために、火災判断回路15は、ROMとしてもしくはROMとは別個に、電気的に書き込み可能なEEPROMもしくはフラッシュメモリのような不揮発性メモリを備える構成とすると良い。電池によりバックアップされたRAMに初期値を記憶しても良い。
【0031】
また、煙感知器10は、屋内に配設されている一対の配線(ライン線Lとコモン線C)にそれぞれ接続される一対の端子(ライン端子およびコモン端子)16a,16bと、ライン線Lとコモン線Cに印加されている電圧(10V〜32V)から、感知器内部で使用する電源電圧(3Vや6V)を生成して各内部回路へ供給する電源回路17や、火災判断回路15によって火災の発生が検出された場合に、ライン線L−コモン線C間のインピーダンスを下げる(短絡を含む)ことによって、火災の発生を図示しない受信機へ知らせるためのスイッチで構成された短絡回路(インピーダンス切替え手段)18、ライン線Lとコモン線Cに接続される上記一対の端子16a,16bに接続され、該端子に外部より入力される信号(コマンド)を受信して火災判断回路15へ伝送したり、内部のデータを外部へ送信したりする送受信回路19を備える。
【0032】
図2には、本発明に係る煙感知器の感度試験装置20の構成例および該感度試験装置20と煙感知器10の接続関係が示されている。
図2に示すように、本実施形態の感度試験装置20は、ライン線Lとコモン線Cにそれぞれ接続される煙感知器10の端子16a,16bに対応する一対の端子21a,21bと、該端子21a,21bを介して煙感知器10へパルス信号(コマンドコード)を送出する送受信回路22と、感度試験に必要な演算や内部回路の制御等を行う感度判定手段としての演算制御部23を備える。演算制御部23は、マイクロプロセッサ(CPU)とROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶手段により構成される。
【0033】
また、感度試験装置20は、上記一対の端子21a,21bに接続され、端子間電圧に基づいて煙感知器10から火災発報信号が出力されたか否か判定する火災発報信号検出手段としての火災信号判定回路24や、AC100Vのような商用交流電圧を受けて、内部回路の動作に必要な直流電源電圧(3Vや6V)を生成して各内部回路へ供給する電源回路25、演算制御部23によって実行された試験結果を出力するLCD(液晶パネル)やLEDランプなどからなる表示部26、演算制御部23へ対する指令を入力するための操作ボタンからなる入力操作部27、演算制御部23による制御によって音を発生するブザーやスピーカなどの音響出力部28を備える。
【0034】
上記音響出力部28は必須のものでなく、省略しても良い。電源回路25はバッテリを内蔵しており、外部から交流電圧の供給がない場合、内部回路はバッテリからの電源電圧でも動作可能に構成されている。
一般に煙感知器には、ライン線Lとコモン線C接続するための端子金具(プラグに相当)が裏面より突出するように設けられ、建物の壁面に固定するための取付けベースには煙感知器の端子金具と結合離脱可能な取付け金具(ソケットに相当)が設けられており、煙感知器の本体を回すことで取付けベースに取り付けたり、外したりすることができるように構成されている。そこで、感度試験装置20の感知器装着部には、取付けベースと同様な、煙感知器の端子と結合離脱可能な金具を有するベース部材を設けておいて、試験の際に容易に感知器を装着部のベース部材に装着したり外したりできるように構成しておくと良い。
【0035】
次に、図2に示す感度試験装置20による試験手順について説明する。
なお、試験対象の煙感知器10は、工場出荷時に性能試験が実施され、図3に実線Bで示すような目標特性に近い特性となるように調整されており、出荷時には所定の性能を満たしていたものとする。また、本発明が適用される試験対象の煙感知器10は、内部にメモリを備え、該メモリには工場出荷時の性能試験で測定された当該感知器の初期値(煙のない状態での受光素子12の出力に対応するAD変換回路の出力値)と、当該感知器が火災発生と判定したときの煙濃度値とが記憶される。
【0036】
より具体的に説明すると、煙感知器10は、工場出荷時に、実際に種々の濃度の煙を流入させて動作を確認する性能試験が実施され、初期値の測定や所定の煙濃度(例えば図3のように10%/m)のときに火災と判定して火災発報するか否かの検査が実行される。そして、それらの値が目標値からずれている場合には、目標値に近づくように内部回路(補正値)が調整され、調整不能な製品は不良品と判定される。そして、性能試験で検出された初期値と火災発報したときの煙濃度値(デジタル値)が内部のメモリに記憶される。
なお、感知器の初期値が零にならないのは、発光素子から出た光が煙検出室の壁面で反射して受光素子に入るのを完全には防止できないこと、煙検出室には煙流入口が設けられるため内部に外部からの光が全く入らないように構成するのは困難であることが理由として考えられる。そこで、意図的に初期値がある所定の値になるように、煙検出室のラビリンス構造の色や表面処理を工夫した設計を行うこともある。
【0037】
一方、煙感知器10は、ビルや工場などの施設に設置後所定期間が経過すると、特性が劣化していないか判定するため、図4に示すように、初期値が所定の許容範囲D0min〜D0max内に入っているか否かの検査や、例えば煙濃度に換算して10%/m±2%/mのような正常火災判定範囲TDmin〜TDmax内で火災発報するという正常動作特性を有しているか否かの検査が実施される。
なお、感知器の感度の変化には、発光素子や受光素子のレンズに埃や塵が付着して感度が下がる場合の他、煙検出室の壁面に埃や塵が付着して反射光が増加して感度が上がる場合がある。図4には、このうち感度が上昇した場合の感知器の濃度検出特性が示されている。
また、感度試験装置20は、例えば感度試験の際に煙感知器10から受信した火災発報煙濃度値TDに基づいて正常火災判定範囲の下限値TDminと上限値TDmaxを計算で決定してもよいし、予め決定されている規定値を使用しても良い。初期値の許容範囲の下限値Dminと上限値D0maxについても同様に、煙感知器10から受信した初期値D0に基づいて決定してもよいし、規定値を使用しても良い。
【0038】
図5には、図2の感度試験装置20の演算制御部23による煙感知器10の感度試験手順の一例が示されている。なお、感度試験装置20による感度試験は、建物の天井等に設置されている煙感知器を取付けベースより外して感度試験装置20の装着部に装着する。
演算制御部23による感度試験では、図3に示すように、先ず送受信回路22により煙感知器10の火災判断回路(CPU)15に対して、内部のメモリに記憶されている初期値D0と火災発報煙濃度値TDおよび現在(煙のない状態)の受光素子12の出力に対応するAD変換回路の値(感知器の現在値)を返送することを要求するコマンドを送信する(ステップS1)。そして、送受信に要する時間を考慮した所定時間(例えば1秒)だけ感知器10からの返信を待ち、送られて来るデータを受信する(ステップS2)。なお、1回のコマンド送信で上記3つのデータを要求してもよいが、3回に分けてコマンドとデータの送受信を行なっても良い。
【0039】
次に、演算制御部23は、受信した感知器の現在値が、初期値に許容されている範囲D0min〜D0max内に入っているか否か判定する(ステップS3)。ここで、現在値が初期値に許容されている範囲D0min〜D0max内に入っていない(No)と判定すると、ステップS14へ移行して、表示部26へ感知器が異常であることを示すメッセージを表示するとともに、音響出力部28を鳴動させて異常音を発生させる。
【0040】
一方、ステップS3で、現在値が初期値に許容されている範囲D0min〜D0max内に入っている(Yes)と判定すると、ステップS4へ進んで、ステップS2で受信した初期値D0と火災発報煙濃度値TDとから感応値A(=TD−D0)を求め、該感応値Aに基づいて例えばA/20なる式でステップ値△S(Aの5%相当)を算出して、最小火災判定値TDminからステップ値△Sおよび初期値D0を減算した値(=TDmin−△S−D0)を算出して試験値Eとする。
なお、試験値Eを算出する際に初期値D0を減算しているのは、火災判断回路15は経年変化した現在の試験時の受光素子の出力のAD変換値すなわちDrに試験値Eを加算した値に基づいて火災の判断を行うためである。従って、TDmin−△Sが実質的な不作動範囲の最大値となる。
【0041】
続いて、演算制御部23は、煙感知器10の火災判断回路(CPU)15に対して、ステップS4で算出した試験値Eと試験実行コマンドとを送信する(ステップS5)。ここで、試験実行コマンドは、感知器の現在値Drに試験値Eを加算し、その値(=Dr+TDmin−△S−D0)に基づいて火災の判定を行うように指令するコマンドである。従って、煙感知器10は、上記試験値Eと試験実行コマンドを受信すると、(Dr+TDmin−△S−D0)の値とTDとを比較して火災の判定を行うこととなる。このとき仮に、感知器の感度が変化していなければ、現在値Drは初期値D0と同一となるはずであるので、煙感知器10は、(TDmin−△S)の値とTDとを比較して火災の判定を行うこととなる。感知器の感度が変化していなければ、煙感知器10の火災判断回路15は火災が発生していないと判断するはずである。
【0042】
そこで、演算制御部23は、上記コマンド送信後所定時間(例えば1秒)内に火災信号判定回路24が火災発報信号を検出したか、つまり煙感知器から火災発報信号が出力されたか監視する(ステップS6)。火災信号判定回路24は端子21a,21bの電圧を監視しており、煙感知器10の火災判断回路15が火災発生と判断して短絡回路16を作動させて、端子16a,16b間のインピーダンスを下げると、端子21a,21b間の電圧が小さくなるため、煙感知器10が火災発報したことを認識することができるようになっている。
従って、ステップS6における監視で、煙感知器10が火災発報したと判断した場合には、試験対象の煙感知器10は最小火災判定値TDminよりも低い煙濃度で火災発報すると判断することができる。そこで、図3の処理では、ステップS6における監視で、煙感知器10が火災発報した(ステップS7;Yes)と判断した場合には、ステップS14へ移行して表示部26へ感知器が異常であることを示すメッセージを表示するとともに、音響出力部28を鳴動させて異常音を発生させるようになっている(ステップS6→S14)。
【0043】
一方、ステップS6における監視で、煙感知器10が火災発報していない(ステップS7;No)と判断した場合には、ステップS8へ進み、演算制御部23は、ステップS5で算出した試験値E(=TDmin−△S−D0)に、1ステップ値△Sを加算した値(=TDmin−D0)を新たな試験値Eとする。すなわち、作動範囲の最小値である。
続いて、演算制御部23は、煙感知器10の火災判断回路(CPU)15に対して、ステップS8で算出した試験値Eと試験実行コマンドとを送信し、上記コマンド送信後所定時間(例えば1秒)内に火災信号判定回路24が火災発報信号を検出したか監視する(ステップS9)。そして、煙感知器10が火災発報した(ステップS10;Yes)と判断した場合には、ステップS13へ移行して表示部26へ感知器が正常であることを示すメッセージを表示するとともに、音響出力部28を鳴動させて正常音を発生させるようになっている(ステップS10→S13)。
【0044】
また、ステップS9における監視で、煙感知器10が火災発報していない(ステップS10;No)と判断した場合には、ステップS11へ進み、演算制御部23は、ステップS8で算出した試験値E(=TDmin−D0)に、1ステップ値△Sを加算した値(=TDmin−D0+△S)を新たな試験値Eとする(ステップS11)。
続いて、演算制御部23は、算出された試験値Eが最大火災判定値TDmaxよりも大きいか否か判定する(ステップS12)。そして、試験値Eが最大火災判定値TDmaxよりも大きくない(No)と判断した場合には、ステップS9へ戻って、煙感知器10の火災判断回路(CPU)15に対して、ステップS11で算出した試験値Eと試験実行コマンドとを送信し、上記コマンド送信後所定時間(例えば1秒)内に火災信号判定回路24が火災信号有りと判定したか監視する。
【0045】
また、ステップS10で、煙感知器10が火災発報した(Yes)と判断した場合には、ステップS13へ移行して表示部26へ感知器が正常であることを示すメッセージを表示するとともに、音響出力部28を鳴動させて正常音を発生させる(ステップS10→S13)。
一方、演算制御部23は、ステップS12で、試験値Eが最大火災判定値TDmaxよりも大きい(Yes)と判断した場合には、感知器は正常火災判定範囲TDmin〜TDmaxよりも高い濃度の煙を検知しても火災発報信号を出力しないということであるので、ステップS14へ移行して表示部26へ感知器が異常であることを示すメッセージを表示するとともに、音響出力部28を鳴動させて異常音を発生させるようになっている(ステップS12→S14)。
【0046】
上記のように、本実施形態の感度試験器20は、試験開始前に対象の感知器に記憶されている初期値D0と火災発報煙濃度値TDとから感応値A(=TD−D0)を求め、該感応値Aに基づいてステップ値△S(=A/20)を算出し、ステップ値△Sに応じて試験値Eを決定して感知器へ送信するとともに、試験値Eを1ステップずつ段階的に増加させながら各試験値を感知器へ送信して現在値に加算させることで火災発報するか否か検出することによって、感知器の感度が所望の許容範囲に入っている否か判定している。そのため、試験対象の各煙感知器の特性に応じた判定が可能になり、精度の高い判定結果が得られという利点がある。
【0047】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、感知器へ送信する試験値Eを決定するためのステップ値△Sの計算式としてA/20を使用したが、計算式はこれに限定されず、「10」や「25」など他の値を分母としても良い。また、ステップ値△Sは、試験対象の感知器の特性に依存させず、固定値を用いても良い。
【0048】
さらに、図5の感度試験処理では、試験装置から試験対象の煙感知器へ試験値を送信して火災発報信号が出力されたときの試験値が最大火災判定値TDmaxよりも大きい場合に、感知器が異常であると判断して異常の報知を行なっている(ステップS12→S14)が、火災発報信号が出力されたときの試験値に対応する煙濃度とステップS2で受信した工場出荷時の火災検知煙濃度とを比較して、所定値以上の差がある場合に感知器が異常であると判断するようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、煙感知器に設けられた送受信回路19および感度試験装置に設けられた送受信回路22が互いに有線通信方式でデータやコマンドの送受信を行うように構成したものを説明したが、送受信回路19および22として、無線通信方式でデータやコマンドの送受信を行うものを使用するようにしてもよい。
【0050】
さらに、前記実施形態では、煙感知器10の増幅器13と火災判断回路15との間にAD変換回路14を設けて検出濃度値をデジタル値に変換した後に判断基準値TDと比較するようにしているが、煙感知器10内に感度試験装置から送信されてきた試験値Eをアナログ値に変換するDA変換回路および該変換値と増幅器13の出力値とを加算する加算器(図6参照)と加算後の値と判断基準値(アナログ電圧)と比較するコンパレータを設けて、試験の際には前記実施例に準じて火災判断回路15がコンパレータの判断基準値を順次段階的に切り換えることで感度の判定を行うように構成しても良い。
また、以上の説明では、本発明を、煙感知器およびその感度試験装置に適用した場合を例にとって説明したが、感知器が煙感知機能の他、熱感知機能を有する複合型感知器である場合にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 煙感知器(監視装置)
11 発光素子
12 受光素子
13 増幅器
14 AD変換回路
15 火災判断回路
18 短絡回路(スイッチ回路)
19 送受信回路
20 感度試験装置
22 送受信回路
23 演算制御部
24 火災信号判定回路(火災発報信号検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2014年3月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
一方、煙感知器10は、ビルや工場などの施設に設置後所定期間が経過すると、特性が劣化していないか判定するため、図4に示すように、初期値が所定の許容範囲D0min〜D0max内に入っているか否かの検査や、例えば煙濃度に換算して10%/m±2%/mのような正常火災判定範囲TDmin〜TDmax内で火災発報するという正常動作特性を有しているか否かの検査が実施される。
なお、感知器の感度の変化には、発光素子や受光素子のレンズに埃や塵が付着して感度が下がる場合の他、煙検出室の壁面に埃や塵が付着して反射光が増加して感度が上がる場合がある。図4には、このうち感度が上昇した場合の感知器の濃度検出特性が示されている。
また、感度試験装置20は、例えば感度試験の際に煙感知器10から受信した火災発報煙濃度値TDに基づいて正常火災判定範囲の下限値TDminと上限値TDmaxを計算で決定してもよいし、予め決定されている規定値を使用しても良い。初期値の許容範囲の下限値D0minと上限値D0maxについても同様に、煙感知器10から受信した初期値D0に基づいて決定してもよいし、規定値を使用しても良い。
ここで、煙感知器10の火災判定回路15が、上記正常火災判定範囲に従って火災判定すると感知器が作動(火災発報)することになるので、「正常火災判定範囲」は「作動範囲」と言い換えることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
上記のように、本実施形態の感度試験器20は、試験開始前に対象の感知器に記憶されている初期値D0と火災発報煙濃度値TDとから感応値A(=TD−D0)を求め、該感応値Aに基づいてステップ値△S(=A/20)を算出し、ステップ値△Sに応じて試験値Eを決定して感知器へ送信するとともに、試験値Eを1ステップずつ段階的に増加させながら各試験値を感知器へ送信して現在値に加算させることで火災発報するか否か検出することによって、感知器の感度が所作動範囲に入っている否か判定している。そのため、試験対象の各煙感知器の特性に応じた判定が可能になり、精度の高い判定結果が得られという利点がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4