(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-162268(P2015-162268A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】撚り線導体および絶縁電線
(51)【国際特許分類】
H01B 5/08 20060101AFI20150811BHJP
H01B 5/10 20060101ALI20150811BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20150811BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
H01B5/08
H01B5/10
H01B5/02 A
H01B7/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-34838(P2014-34838)
(22)【出願日】2014年2月26日
(11)【特許番号】特許第5708846号(P5708846)
(45)【特許公報発行日】2015年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 勇人
【テーマコード(参考)】
5G307
5G309
【Fターム(参考)】
5G307BA02
5G307BB02
5G307BC09
5G307EA02
5G307EC03
5G307ED04
5G307EF02
5G309LA01
5G309LA06
(57)【要約】
【課題】高温油中における腐食を抑制可能な撚り線導体、また、これを用いた絶縁電線を提供する。
【解決手段】撚り線導体1は、少なくとも複数本の銅系素線20が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されている。銅系素線20は、表面にNi系めっき層を有している。撚り線導体1は、導体断面積が0.25mm
2以下であることが好ましい。絶縁電線5は、撚り線導体1と、撚り線導体1の外周に被覆された絶縁体4とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されている撚り線導体であって、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有していることを特徴とする撚り線導体。
【請求項2】
導体断面積が0.25mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の撚り線導体。
【請求項3】
上記撚り線導体の導体中心に、引張力に抗するためのテンションメンバが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撚り線導体。
【請求項4】
7本または8本の上記銅系素線より構成されている最外層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撚り線導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撚り線導体と、該撚り線導体の外周に被覆された絶縁体とを有することを特徴とする絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り線導体および絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の分野において、複数本の導体素線が撚り合わされてなる撚り線導体の外周に絶縁体が被覆されてなる絶縁電線が知られている。
【0003】
上記撚り線導体としては、具体的には、特許文献1に、ステンレス素線と、ステンレス素線の外周に撚り合わされた複数本の裸銅素線とを有する撚り線導体が開示されている。また、同文献には、裸銅素線を撚り合わせて円形圧縮した後、加工硬化により低下した伸びを改善するため、裸銅素線に熱処理を施して銅を軟化させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題がある。すなわち、上記絶縁電線は、例えば、高温のATFやCVTフルード等、高温油中で使用されることがある。この場合、油中に含まれる硫黄成分により、撚り線導体を構成する裸銅素線が腐食するおそれがある。裸銅素線が腐食すると、撚り線導体の強度や導電率が低下する。
【0006】
上記腐食を防止するため、裸銅素線の表面にSnめっき層を形成することが考えられる。しかし、Snめっきは、比較的融点が低い。そのため、銅が軟化する温度で上記熱処理がなされると、Snめっき層が溶融し、Snめっき層が剥がれやすくなる。それ故、高温油中において耐腐食性の良好な撚り線導体を得るのは困難である。特に、撚り線導体の導体断面が0.25mm
2以下の細径導体は、上記熱処理の影響を受けやすいためSnめっき層が溶融しやすい。
【0007】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、高温油中における腐食を抑制可能な撚り線導体、また、これを用いた絶縁電線を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されている撚り線導体であって、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有していることを特徴とする撚り線導体にある。
【0009】
本発明の他の態様は、上記撚り線導体と、該撚り線導体の外周に被覆された絶縁体とを有することを特徴とする絶縁電線にある。
【発明の効果】
【0010】
上記撚り線導体は、銅系素線の表面にNi系めっき層を有している。Ni系めっきは、Snめっきに比べ、融点が高い。また、Ni系めっきの融点は、銅系素線を構成する銅材の軟化温度よりも高い。そのため、上記撚り線導体は、円形圧縮された後、銅材の軟化のために熱処理が施された場合であっても、Ni系めっき層が溶融し難く、Ni系めっき層の剥離が生じ難い。それ故、上記撚り線導体は、高温油中における腐食を抑制することが可能となる。その結果、上記撚り線導体は、高温油中に曝された場合でも、強度や導電率の低下を抑制することができる。また、上記撚り線導体は、円形圧縮された後に熱処理が施されているので、適度な伸びも確保される。
【0011】
上記絶縁電線は、上記撚り線導体と、この撚り線導体の外周に被覆された絶縁体とを有している。そのため、上記絶縁電線は、高温油中における導体の耐腐食性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記撚り線導体は、導体断面積が0.25mm
2以下であるとよい。導体断面積が0.25mm
2以下の撚り線導体は、細径であるため、円形圧縮後の熱処理において加熱されやすい。そのため、従来、導体断面積が0.25mm
2以下の撚り線導体には、表面にSnめっき層が形成された銅系素線を用いることが特に困難であり、裸銅素線を用いざるを得なかった。その結果、導体断面積が0.25mm
2以下の撚り線導体は、高温油中における腐食を抑制することが特に困難であった。しかし、上記撚り線導体は、上述の構成を採用している。そのため、上記撚り線導体は、導体断面積が0.25mm
2以下の細径であっても、高温油中において十分な耐腐食性を発揮することができる。
【0014】
上記導体断面積は、細径化、軽量化等の観点から、好ましくは、0.2mm
2以下、より好ましくは、0.18mm
2以下、さらに好ましくは、0.15mm
2以下とすることができる。なお、上記導体断面積は、製造のしやすさ、強度、導電率などの観点から、0.1mm
2以上とすることができる。
【0015】
上記撚り線導体において、銅系素線は、素線を形づくる母材が銅または銅合金より構成されている。そして、この銅系素線は、その表面にNi系めっき層を有している。Ni系めっき層は、具体的には、NiめっきまたはNi合金めっきである。なお、めっきは、電気めっきであってもよいし、無電解めっきであってもよい。Ni系めっき層の厚みは、高温油中における耐腐食性の向上などの観点から、好ましくは、0.1〜5.0μm、より好ましくは、0.3〜3.0μm、さらに好ましくは、0.5〜1.5μm、さらにより好ましくは、0.8〜1.3μmとすることができる。
【0016】
銅系素線の外径は、円形圧縮される前の状態で、好ましくは、0.13〜0.15mm、より好ましくは、0.135〜0.145mmとすることができる。なお、上記にいう銅系素線の外径には、Ni系めっき層の厚みが含まれない。
【0017】
上記撚り線導体は、具体的には、例えば、撚り線導体の導体中心に、引張力に抗するためのテンションメンバが配置されている構成とすることができる。より具体的には、上記撚り線導体は、撚り線導体の導体中心に配置され、引張力に抗するためのテンションメンバと、テンションメンバの外周に撚り合わされた、複数本の上記銅系素線からなる最外層とを有する構成とすることができる。
【0018】
この場合には、撚り線導体に引張力が作用した場合に、その引張力に対してテンションメンバが抗するため、銅系素線にかかる引張力が緩和される。そのため、銅系素線の断線が生じ難い撚り線導体が得られる。また、この場合は、銅系素線の腐食抑制により、腐食に起因する断線も抑制されるので、断線を抑制する効果が大きくなる。したがって、この場合は、導体断面積が0.25mm
2以下の細径の撚り線導体に特に有用である。
【0019】
上記テンションメンバの材料としては、例えば、鉄、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。テンションメンバの材料は、好ましくは、ステンレスであるとよい。撚り線導体の高温油中における耐腐食性の向上に有利なためである。また、テンションメンバの外径は、円形圧縮される前の状態で、銅系素線の外径よりも大きいことが好ましい。具体的には、テンションメンバの外径は、円形圧縮される前の状態で、好ましくは、0.20〜0.30mm、より好ましくは、0.22〜0.23mmとすることができる。
【0020】
上記撚り線導体は、他にも例えば、導体中心に配置された銅系中心素線と、銅系中心素線の外周に撚り合わされた、上記銅系素線からなる最外層とを有する構成とすることもできる。なお、この場合、銅系中心素線は、表面に上記Ni系めっき層を有している。銅系中心素線の外径は、円形圧縮される前の状態で、最外層を構成する銅系素線と同径とされていてもよいし、異なる径とされていてもよい。また、銅系中心素線は、銅系素線と同じ銅材から構成されていてもよいし、合金元素の種類や割合等が異なる銅材から構成されていてもよい。
【0021】
上記撚り線導体は、具体的には、7本または8本の上記銅系素線より構成されている最外層を有しているとよい。
【0022】
この場合には、高温油中において耐腐食性に優れ、導体断面積が0.25mm
2以下の細径の撚り線導体を実現しやすくなる。
【0023】
上記撚り線導体は、撚り線径方向に円形圧縮されている。円形圧縮は、銅系素線の撚り合わせ時または撚り合わせ後に行うことができる。撚り線導体が円形圧縮されたものか否かは、例えば、導体断面を観察し、最外層を構成する銅系素線の外形に円形圧縮に起因する形状が現れているか否かを確認することによって判断することができる。また、撚り線導体に熱処理が施されているか否かは、銅系素線を構成する銅材の化学成分組成、伸び特性などを調べることによって判断することができる。円形圧縮後、銅材が軟化されていない場合には、伸び特性が悪い結果となるからである。
【0024】
上記絶縁電線は、上記撚り線導体の外周に絶縁体を有している。絶縁体としては、電気絶縁性を有する各種の樹脂やゴム(エラストマー含む)を含む組成物を用いることができる。上記樹脂やゴムは1種または2種以上併用することができる。上記樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリサルホン系樹脂などを例示することができる。
【0025】
上記樹脂は、好ましくは、ポリサルホン系樹脂であるとよい。この場合には、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が向上する。そのため、高温油中における耐腐食性に優れる上記撚り線導体との相乗効果により、高温油中、振動環境下における使用に特に適した絶縁電線が得られる。ポリサルホン系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルサルホンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することが可能である。
【0026】
上記絶縁体には、一般的に電線に利用される各種の添加剤が1種または2種以上含有されていてもよい。上記添加剤としては、具体的には、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、老化防止剤、滑剤、可塑剤、銅害防止剤、顔料などを例示することができる。
【0027】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例の撚り線導体および絶縁電線について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1の撚り線導体について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、本例の撚り線導体1は、少なくとも複数本の銅系素線20が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されている。銅系素線20は、表面にNi系めっき層(不図示)を有している。以下、これを詳説する。
【0030】
本例において、銅系素線20は、母材が銅または銅合金からなる。銅系素線20の表面に形成されているNi系めっき層は、NiめっきまたはNi合金めっきからなる。本例では、Ni系めっき層の厚みは、0.1〜5.0μmである。銅系素線20の外径は、円形圧縮される前の状態で、0.14mmである。
【0031】
また、本例において、撚り線導体1は、撚り線導体1の導体中心に、引張力に抗するためのテンションメンバ3が配置されている。具体的には、撚り線導体1は、撚り線導体1の導体中心に配置されたテンションメンバ3と、テンションメンバ3の外周に撚り合わされた、複数本の銅系素線20からなる最外層2とを有している。テンションメンバ3は、より具体的には、ステンレス線である。テンションメンバ3の外径は、円形圧縮される前の状態で、銅系素線2の外径よりも大きく形成されており、具体的には、0.225mmである。最外層2は、具体的には、いずれも表面にNi系めっき層が形成された8本の銅系素線2より構成されている。
【0032】
撚り線導体1は、次のようにして製造することができる。断面円形状のテンションメンバ3の外周に、表面にNi系めっき層が形成された断面円形状の8本の銅系素線20を撚り合わせる。この撚り合わせ時に、撚り線径方向に円形圧縮を行う。この円形圧縮後、銅系素線20を構成する銅または銅合金を軟化させるため、銅または銅合金の軟化温度に適した温度条件にて熱処理を施す。但し、上記熱処理温度は、NiめっきまたはNi合金めっきの融点よりも低く設定される。上記熱処理の方法としては、通電加熱法等を採用することができる。
【0033】
撚り線導体1は、上記円形圧縮により、導体断面積が0.25mm
2以下とされている。本例では、導体断面積は、具体的には、0.13mm
2とされている。
【0034】
次に、本例の撚り線導体の作用効果について説明する。
【0035】
本例の撚り線導体1は、銅系素線20の表面にNi系めっき層を有している。Ni系めっきは、Snめっきに比べ、融点が高い。また、Ni系めっきの融点は、銅系素線20を構成する銅材の軟化温度よりも高い。そのため、撚り線導体1は、円形圧縮された後、銅材の軟化のために熱処理が施された場合であっても、Ni系めっき層が溶融し難く、Ni系めっき層の剥離が生じ難い。それ故、撚り線導体1は、高温油中における腐食を抑制することが可能となる。その結果、撚り線導体1は、高温油中に曝された場合でも、強度や導電率の低下を抑制することができる。また、撚り線導体1は、円形圧縮された後に熱処理が施されているので、適度な伸びも確保される。
【0036】
(実施例2)
実施例2の絶縁電線について、
図2を用いて説明する。本例の絶縁電線5は、撚り線導体1と、撚り線導体1の外周に被覆された絶縁体4とを有している。撚り線導体1は、実施例1の撚り線導体1である。
【0037】
本例では、絶縁体は、具体的には、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、および、ポリフェニルサルホンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物からなる。絶縁体の厚みは、0.10〜0.35mmである。
【0038】
次に、本例の絶縁電線の作用効果について説明する。
【0039】
本例の絶縁電線5は、撚り線導体1と、撚り線導体1の外周に被覆された絶縁体4とを有している。そのため、絶縁電線5は、高温油中における導体の耐腐食性に優れる。
【0040】
以下、構成の異なる撚り線導体の試料を作製し、評価を行った。その実験例について説明する。
【0041】
(実験例)
φ0.225mmのステンレス線の外周に、表面に電気Niめっき層が形成されたφ0.14mmのNiめっき銅素線を8本撚り合わせて撚り線材とした。なお、上記Niめっき銅素線は、軟化のための熱処理が施されていない。また、上記撚り線材の形成時に、導体断面積が0.13mm
2となるように撚り線材に円形圧縮を行った。その後、円形圧縮された撚り線材に、電圧20Vで電流20Aを1秒間通電するという条件で通電加熱を行い、Niめっき銅素線を軟化させた。これにより、試料1の撚り線導体を得た。
【0042】
上記試料1の撚り線導体の作製において、Niめっき銅素線に代えて、裸銅素線を用いた点以外は同様にして、比較試料1の撚り線導体を得た。なお、用いた裸銅素線は、軟化のための熱処理が施されていない。
【0043】
上記試料1の撚り線導体の作製において、Niめっき銅素線に代えて、表面に電気Snめっき層が形成されたSnめっき銅素線を用いた点以外は同様にして、比較試料2の撚り線導体を得た。なお、用いたSnめっき銅素線は、軟化のための熱処理が施されていない。
【0044】
−高温油中での耐腐食性−
各撚り線導体を、200℃で2000時間、ATF(日産純正 ATF:NS−3)に浸漬した後、導体表面を目視にて観察した。導体表面に腐食が見られなかった場合を合格として「A」とした。導体表面に腐食が見られた場合を不合格として「C」とした。
【0045】
−強度−
上記高温油中に浸漬させる前の各撚り線導体と、上記高温油中に浸漬させた後の各撚り線導体について、同条件にて引張試験を行った。高温油中への浸漬前後で引張強さが10%以上低下した場合を、強度の低下が認められるとして「C」、高温油中への浸漬前後で引張強さの低下が10%以内であった場合を、強度の低下が認められないとして「A」とした。
【0046】
−導電率−
上記高温油中に浸漬させる前の各撚り線導体と、上記高温油中に浸漬させた後の各撚り線導体について、同条件にて導電率を測定した。高温油中への浸漬前後で導電率が10%以上低下した場合を、導電率の低下が認められるとして「C」、高温油中への浸漬前後で導電率の低下が10%以内であった場合を、導電率の低下が認められないとして「A」とした。
【0047】
表1に評価結果をまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示されるように、比較試料1の撚り線導体は、裸銅素線が撚り合わされている。そのため、高温油中で裸銅素線が腐食した。また、比較試料1の撚り線導体は、裸銅素線の腐食により、強度、導電率が低下した。
【0050】
比較試料2の撚り線導体は、Snめっき銅素線が撚り合わされている。そのため、高温油中でSnめっき銅素線が腐食した。これは、円形圧縮された撚り線材に、軟化のための熱処理を施した際に、Snめっき銅素線におけるSnめっき層が溶融し、Snめっき層が剥がれたためである。その結果、比較試料2の撚り線導体は、比較試料1の撚り線導体と同様に、強度、導電率が低下した。
【0051】
これらに対し、試料1の撚り線導体は、Niめっき銅素線が撚り合わされている。そのため、高温油中でNiめっき銅素線が腐食せず、良好な耐腐食性を有していることが確認された。また、試料1の撚り線導体は、高温油中における腐食が抑制されたため、強度、導電率の低下を抑制することができた。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 撚り線導体
20 銅系素線
5 絶縁電線
【手続補正書】
【提出日】2014年12月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されており、油に接した状態で使用される撚り線導体であって、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有していることを特徴とする撚り線導体。
【請求項2】
導体断面積が0.25mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の撚り線導体。
【請求項3】
上記撚り線導体の導体中心に、引張力に抗するためのテンションメンバが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撚り線導体。
【請求項4】
7本または8本の上記銅系素線より構成されている最外層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撚り線導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撚り線導体と、該撚り線導体の外周に被覆された絶縁体とを有することを特徴とする絶縁電線。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されて
おり、油に接した状態で使用される撚り線導体であって、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有していることを特徴とする撚り線導体にある。
【手続補正書】
【提出日】2015年1月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されており、油中で使用される撚り線導体であって、
上記油は、ATフルードまたはCVTフルードであり、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有しており、
上記円形圧縮によって上記Ni系めっき層が圧縮されていることを特徴とする撚り線導体。
【請求項2】
導体断面積が0.25mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の撚り線導体。
【請求項3】
上記撚り線導体の導体中心に、引張力に抗するためのテンションメンバが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撚り線導体。
【請求項4】
7本または8本の上記銅系素線より構成されている最外層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撚り線導体。
【請求項5】
上記銅系素線の外径は、上記円形圧縮される前の状態で、上記Ni系めっき層の厚みを除いて0.13〜0.15mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撚り線導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の撚り線導体と、該撚り線導体の外周に被覆された絶縁体とを有することを特徴とする絶縁電線。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題がある。すなわち、上記絶縁電線は、例えば、高温の
ATフルード(以下、ATF
ということがある。)やCVTフルード等、高温油中で使用されることがある。この場合、油中に含まれる硫黄成分により、撚り線導体を構成する裸銅素線が腐食するおそれがある。裸銅素線が腐食すると、撚り線導体の強度や導電率が低下する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも複数本の銅系素線が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されており、油
中で使用される撚り線導体であって、
上記油は、ATフルードまたはCVTフルードであり、
上記銅系素線は、表面にNi系めっき層を有して
おり、
上記円形圧縮によって上記Ni系めっき層が圧縮されていることを特徴とする撚り線導体にある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
(実施例1)
実施例1の撚り線導体について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、本例の撚り線導体1は、少なくとも複数本の銅系素線20が撚り合わされてなるとともに、円形圧縮された後、熱処理が施されている。
本例の撚り線導体1は、ATフルードまたはCVTフルード中で使用されるものである。銅系素線20は、表面にNi系めっき層(不図示)を有している。以下、これを詳説する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
撚り線導体1は、上記円形圧縮により、導体断面積が0.25mm
2以下とされている。本例では、導体断面積は、具体的には、0.13mm
2とされている。
また、撚り線導体1は、上記円形圧縮によってNi系めっき層が圧縮されている。