本発明のコネクタ1は、同軸ケーブル4の先端部に軸方向に沿って取り付けられる接続部40と、接続部40に対して折り曲げられる端子部41と、を有してL字型に形成される同軸端子3と、同軸端子3を複数並べて収容する複数の収容部21,25を有するハウジング本体10と、ハウジング本体10の各収容部21,25を閉塞するカバー11と、を含んで構成されるハウジング2と、各収容部21,25に収容された同軸端子3とカバー11の間に配置され、隣り合う複数の同軸端子3に亘るように延設される電波吸収体5と、を備え、電波吸収体5は、少なくとも各同軸端子3の接続部40と端子部41との間の折曲部分P1に対向するように配置され、各同軸端子3に接触または近接して設けられている。
前記各接触片は、端末処理された前記同軸ケーブルから露出して前記同軸端子に電気的に接続される中心導体に対向する位置に当接することを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、便宜上、各図において、Frを前方として設定すると共に、X方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向として設定する。
【0019】
図1ないし
図6を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るコネクタ1の構成について説明する。ここで、
図1および
図2はコネクタ1を示す斜視図である。
図3は、
図1におけるIII−III断面図である。
図4はコネクタ1を示す分解斜視図である。
図5はカバー11等を下方から示す斜視図である。
図6は同軸端子3を同軸ケーブル4にかしめる前の状態を示す斜視図である。
【0020】
図1ないし
図3に示すように、コネクタ1は、概略直方体状に形成されるハウジング2と、同軸ケーブル4に接続され、ハウジング2の内部に収容される4つの同軸端子3と、ハウジング2と各同軸端子3との間に配置される電波吸収体5と、を備えている。このコネクタ1は、相手側コネクタ100に嵌合することによって、4つの同軸端子3と相手側コネクタ100に保持される4つの相手側端子101とが電気的に接続されるようになっている(
図3参照)。
【0021】
ハウジング2は、合成樹脂等の絶縁性の材料によって構成されている。ハウジング2は、2分割可能な所謂2ピース構造であって、同軸端子3を複数並べて収容するハウジング本体10と、ハウジング本体10を閉塞するカバー11と、を備えている。
【0022】
図1ないし
図4に示すように、ハウジング本体10は、左右方向に長い略矩形箱状に形成される本体部12と、本体部12の前端部(先端部)から下方に突出するように一体形成される突設部13と、を有している。なお、本実施形態に係るコネクタ1の説明では、例えば、
図3において、下方向が相手側コネクタ100との嵌合方向であり、上方向が反嵌合方向である。
【0023】
図4に示すように、本体部12は、ベース部14と、ベース部14の左右方向両端部に立設する左右一対の外壁15と、左右一対の外壁15の間でベース部14から等間隔に立設する3つの基端側隔壁16と、を有している。
【0024】
各外壁15と各基端側隔壁16とは、同一の高さに形成されている。左右一対の外壁15は、それぞれ、前後方向略中央に段部を有し、前側が内側に向けて突出するように形成されている。3つの基端側隔壁16は、それぞれ、前後方向略中央に段部を有し、前側が左右方向に幅広くなるように形成されている。
【0025】
各外壁15と各基端側隔壁16との後側には、それぞれ、上端から下方に切り込まれる内側係止凹部17が形成されている。5つの内側係止凹部17の前端面は、前後方向で同一の位置に形成されている。なお、右側(
図4では奥側)の基端側隔壁16および中央の基端側隔壁16に形成される2つの内側係止凹部17は、それぞれ、平面視で左右対称となる略L字状に形成されている。具体的には、2つの内側係止凹部17は、互いに対向する側が後方に幅広くなるように形成されている。
【0026】
左右方向中央の基端側隔壁16の後端部には、前後方向に撓曲可能な本体側後端片18が形成されている。本体側後端片18は、各外壁15および各基端側隔壁16よりも高く(上方に長く)形成されている。本体側後端片18の上端部前面には、前方に突出する第1本体側フック18aが形成されている。
【0027】
左右方向中央の基端側隔壁16の前側には、上下方向に貫通する係止穴19が形成されている。係止穴19の前側内周面には、後方に突出する第2本体側フック19aが形成されている。
【0028】
本体部12の後側において、左右一対の外壁15の外側には、それぞれ、係止部20が一体形成されている。左右一対の係止部20は、それぞれ、外壁15の下端部に接続され、正面視で略L字状に形成されている。なお、各係止部20の外側壁は、本体側後端片18と同一の高さに形成されている。
【0029】
各係止部20の外側壁には、上端から下方に切り込まれる前後一対のスリット20aの間に外側片20bが形成されている。外側片20bには、下端から上方に切り欠かれる矩形状の係止開口部20cが形成されている。各外側片20bは、左右方向に撓曲可能に形成されている。なお、各係止部20の外側壁の後端部は、ベース部14および外壁15の後端面と同一平面を成し、基端側隔壁16よりも僅かに低く形成されている。
【0030】
本体部12は、ベース部14と、各外壁15と、各基端側隔壁16とによって囲まれて構成される4つの収容凹部21を有している。各収容凹部21は、同軸ケーブル4と、その先端部に接続される同軸端子3の基端部と、を収容するために、後方および上方を開放した空間として形成されている。隣り合う4つの収容凹部21は、基端側隔壁16によって仕切られて、左右方向に略等間隔に並設されている。
【0031】
図3に示すように、各収容凹部21の床面は、前側に位置する基準床面21aと、後側に位置し、基準床面21aよりも一段下がって形成される凸床面21bと、前後方向略中央部分で凸床面21bよりも一段下がって形成される凹床面21cと、を有している。また、上記したように、各外壁15の前側および各基端側隔壁16前側は、それぞれ、収容凹部21の左右幅を狭くするように形成されている。したがって、各収容凹部21の前側は、その後側よりも上下左右に狭く(小径に)なるように形成されている。なお、図面からは明らかではないが、
図4の手前から3番目の収容凹部21の後側は、他の収容凹部21よりも僅かに大きく(大径に)形成されている。
【0032】
なお、本体部12の下面の突設部13側には、収容凹部21に対応して前後方向に延びる4つの補強リブ12aが下方に突設されている(
図2参照)。
【0033】
図2ないし
図4に示すように、突設部13は、左右方向に等間隔に並設される4つの分割突設部22と、4つの分割突設部22の前面を連結するように一体形成される前端壁23と、を有している。突設部13の上端面は、本体部12の上端面と同一平面を形成している。
【0034】
4つの分割突設部22は、それぞれ、上下方向に長い略矩形箱状に形成されている。各分割突設部22の上端面は開放されている(
図4参照)。各分割突設部22の下端面には、円形の端子開口部22aが開口している(
図2参照)。
【0035】
図4に示すように、突設部13の上側内部には、各基端側隔壁16の前端部から延出する先端側隔壁24が、隣り合う分割突設部22の間に一体形成されている。
【0036】
4つの分割突設部22の内部には、それぞれ、端子開口部22aと収容凹部21とを連通させる収容孔部25が上下方向に形成されている。各収容孔部25は、同軸端子3の先端部を収容するために収容凹部21に連通して形成されている。隣り合う4つの収容孔部25は、先端側隔壁24によって仕切られて、左右方向に等間隔に並設されている。なお、各収容孔部25は、端子開口部22aよりも僅かに大径に形成されている。なお、収容凹部21と収容孔部25とが、請求項に言う「収容部」の一例であり、基端側隔壁16と先端側隔壁24とが、請求項に言う「隔壁」の一例である。
【0037】
図3および
図4に示すように、前端壁23には、ロックアーム26と、左右一対のガイドフック27と、が設けられている。
【0038】
ロックアーム26は、前端壁23の下端部から僅かに前側に傾斜して上方に延出する左右一対のアーム本体28と、左右一対のアーム本体28の上端部を連結するロック操作部29と、を有している。
【0039】
各アーム本体28は、前後方向に撓曲可能に形成されている。各アーム本体28は、上記した各外側片20bや本体側後端片18と同一の高さに形成されている。各アーム本体28の前面上部には、ロック突起28aが突設されている。ロック操作部29は、左右一対のアーム本体28よりも僅かに前方に突出して形成されている。ロック操作部29の左右方向中央部分には、前端から後方に切り欠かれる矩形状のロック凹部29aが形成されている(
図4参照)。
【0040】
図4に示すように、左右一対のガイドフック27は、互いに左右対称に形成され、左右方向両端に位置する分割突設部22の外側面と同一平面を有している。左右一対のガイドフック27は、それぞれ、前方に延出する先端部を内側に折り曲げて、平面視で略L字状に形成されている。
【0041】
次に、
図1、
図4および
図5を参照して、カバー11について説明する。カバー11は、ハウジング本体10の各収容凹部21および各収容孔部25を上方から閉塞するものである。カバー11は、ハウジング本体10を覆うように形成されるカバー本体30と、カバー本体30の前端部から前方に突出するように一体形成されるハンドル31と、を有している。
【0042】
カバー本体30は、ハウジング本体10を略覆う大きさの略矩形板状に形成されるプレート部32と、プレート部32の左右方向両端部に垂設される左右一対の垂設壁33と、を有している。
【0043】
プレート部32には、後端から前方に切り欠かれる矩形状のプレート凹部32aが形成されている。プレート凹部32aの左右方向中央部には、前後方向に撓曲可能なカバー側後端片34が垂設されている。カバー側後端片34は、各垂設壁33よりも僅かに下方に長く形成されている。カバー側後端片34の下端部後面には、後方に突出する第1カバー側フック34aが形成されている。
【0044】
図5に示すように、プレート部32の下面の略中央部には、前後方向に撓曲可能なカバー側中間片35が垂設されている。カバー側中間片35は、カバー側後端片34と略同一の長さに形成されている。カバー側中間片35の下端部前面には、前方に突出する第2カバー側フック35aが形成されている。
【0045】
図1および
図4に示すように、プレート部32の前側の左右両端部には、それぞれ、前後方向に細長い矩形状の固定開口36が貫通形成されている。また、
図5に示すように、プレート部32の下面の前側には、各収容凹部21に対応する位置に一対の押圧突起37が4組突設されている。プレート部32の下面の前端部には、各ガイドフック27に対応する位置に左右一対のガイド片38が垂設されている。
【0046】
図4および
図5に示すように、左右一対の垂設壁33の略後側半分には、それぞれ、内側に向けて凹むように凹設壁部39が形成されている。各凹設壁部39には、上端から下端までに亘って前後一対の凸条部39aが突設されている。左右一対の凸条部39aの間には、係止突起39bが突設されている。なお、後側の凸条部39aの上部は、ブロック状に形成されている。
【0047】
ハンドル31は、プレート部32の左右方向両端部を連結するように略矩形アーチ状に形成されている。ハンドル31には、正面視で、上端から下方に切り欠かれる略矩形状のハンドル凹部31aが形成されている(
図4参照)。ハンドル凹部31aの左右方向中央部には、上方に延出するハンドル凸部31bが形成されている。ハンドル凸部31bは、先端部を後方に折り曲げて、側面視で略L字状に形成されている。なお、カバー本体30の上面と、ハンドル31(ハンドル凸部31bを含む)の上面とは、同一平面を成している。
【0048】
次に、
図3および
図6を参照して、各同軸端子3について説明する。なお、4つの同軸端子3は、それぞれ、同様の構造を有しているため、以下、1つの同軸端子3に着目して説明する。
【0049】
図6に示すように、同軸端子3は、同軸ケーブル4の先端部に軸方向(前後方向)に沿って取り付けられる接続部40と、接続部40に対して折り曲げられる端子部41と、を有してL字型に形成されている。
【0050】
同軸端子3に接続される同軸ケーブル4は、絶縁体50を介して中心導体51の周囲に設けられる外部導体52を外部被覆53で被覆して構成されている。
【0051】
接続部40は、金属等の導電性材料から構成されている。接続部40は、後側から順に被覆圧着バレル部42と、外部導体圧着バレル部43と、絶縁体囲繞部44と、を有している。
【0052】
かしめる前の被覆圧着バレル部42は、後面視で略U字形状となる左右一対の被覆圧着片42aを有している。同様に、外部導体圧着バレル部43は、左右一対の導体圧着片43aを有し、絶縁体囲繞部44は、左右一対の囲繞片44aを有している。各被覆圧着片42aおよび各囲繞片44aは、側面視で上下方向に細長い長方形状に形成されている。一方の導体圧着片43aは、先端が三角形状に形成されており、他方の導体圧着片43aは、先端がV字状に形成されている。
【0053】
被覆圧着バレル部42の後端には、左右一対の係止凸片42bが設けられている。各係止凸片42bは、被覆圧着片42aの上下方向略中央で左右方向外側に向けて延設されている。
【0054】
端子部41は、外側から順に端子外部導体45と、端子絶縁体46と、端子内部導体47と、を有している(
図3参照)。
【0055】
端子外部導体45は、接続部40と一体となる1枚の板金(導電性材料)に折り曲げ加工等を行うことによって円筒状に形成されている。端子外部導体45の先端部には、略台形状に切り込まれる左右一対の嵌合片部45aが形成されている。
【0056】
端子絶縁体46は、絶縁性材料によって構成されている。端子絶縁体46は、円筒状に形成される絶縁本体部46aと、矩形筒状に形成される絶縁突部46bと、を有している。絶縁本体部46aは、端子外部導体45の内部に設けられている。絶縁突部46bは、絶縁本体部46aの基端部から絶縁体囲繞部44側にL字型に屈曲し、一対の囲繞片44aの間に配置されるようになっている。
【0057】
図3に示すように、端子内部導体47は、導電性材料によって構成される内部導体本体部47aと内部導体圧着バレル部47bとを有している。内部導体本体部47aは、絶縁本体部46aの内部に設けられ、その先端部は、二股に分離して形成されている。内部導体圧着バレル部47bは、内部導体本体部47aの基端部から絶縁体囲繞部44側にL字型に屈曲し、絶縁突部46bの内部に設けられている。
【0058】
次に、同軸端子3を同軸ケーブル4に接続する手順について説明する。なお、同軸ケーブル4に取り付ける前の同軸端子3は、接続部40と端子部41とが直線状に形成されている。
【0059】
まず、作業者は、各同軸ケーブル4に端末処理を施し、露出させた中心導体51に対して端子内部導体47の内部導体圧着バレル部47bをかしめる。その後、接続部40に対して端子部41をL字型になるように折り曲げる。次に、作業者は、同軸ケーブル4の外部被覆53に対して被覆圧着バレル部42をかしめ、外部導体52に対して外部導体圧着バレル部43をかしめる。また、作業者は、絶縁突部46bを包むように絶縁体囲繞部44の各囲繞片44aを折り曲げる。
【0060】
以上によって、同軸ケーブル4付き同軸端子3が構成される(
図4参照)。なお、接続部40と端子部41(正確には端子外部導体45)とは、1枚の板金で構成されている。このため、L字状に折り曲げられると、接続部40と端子部41との間に折曲部分P1が形成される(
図3および
図4参照)。折曲部分P1の後方には、接続部40と端子部41とが互いに干渉して組み合わせ部分P2が形成される(
図3および
図4参照)。この組み合わせ部分P2には、構造上、継ぎ目が生じる。
【0061】
次に、
図4、
図5、
図7ないし
図9を参照して、電波吸収体5について説明する。ここで、
図7はカバー11および電波吸収体5を示す底面図である。
図8および
図9は、電波吸収体5を示す背面図および側面図である。
【0062】
電波吸収体5は、電磁波(電波)を吸収して反射を抑制するものである。例えば、電波吸収体5は、導電性電波吸収材料から構成され、電磁波によって生じる電流を、当該材料内部の電気抵抗によって熱に変換する。一例として、電波吸収体5は、1枚のステンレス製の薄板(例えば、厚み0.1mm以上0.5mm以下程度)にプレス加工等を行うことによって一体形成されている。
【0063】
図4に示すように、電波吸収体5は、各収容凹部21および各収容孔部25に収容された同軸端子3とカバー11との間に配置され、隣り合う4つの同軸端子3に亘るように延設されている。電波吸収体5は、カバー11の内面に固定される固定部60と、固定部60から各同軸端子3に当接するように延設される4つの接触片61と、を有している。
【0064】
図4、
図7ないし
図9に示すように、固定部60は、左右方向に延設される帯状の固定部本体62と、固定部本体62から後方に延設される5つの規制部63と、左右方向両端の規制部63から上方に折り曲げられて形成される左右一対の掛合部64と、を有している。
【0065】
5つの規制部63は、左右方向に略等間隔に並設されている。各規制部63は、固定部本体62の後側縁部に接続して後方に延出する帯状の規制延出部63aと、規制延出部63aの後端部に接続する規制嵌合部63bと、を有している。なお、左右方向両端の規制部63(規制嵌合部63bおよび規制延出部63a)は、略左右半分に分割されたように形成されている。
【0066】
各規制延出部63aは、固定部本体62に対して片持ち梁状に設けられている。各規制嵌合部63bは、規制延出部63aよりも左右方向に幅広い略矩形状に形成されている。
【0067】
左右一対の掛合部64は、互いに左右対称を成し、それぞれ、上方に延出する先端部を内側に折り曲げて、正面視で略L字状に形成されている(
図8参照)。
【0068】
図4、
図7および
図8に示すように、4つの接触片61は、それぞれ、隣り合う一対の規制部63の間に配設されている。各接触片61は、底面視で後側に向けて細くなる略三角形状に形成されている(
図7参照)。各接触片61は、固定部本体62の後側縁部から後方に延出し、下方に傾斜して形成されている(
図9参照)。各接触片61は、固定部本体62との接続部分を中心として弾性力をもって上下方向に変位可能に形成されている。
【0069】
図8および
図9に示すように、各接触片61の後端部は、斜め上方に折り曲げられる屈曲片部61aが形成されている。また、各接触片61の屈曲片部61aの折れ曲がり部分には、下方に僅かに突出する接触突起61bが形成されている。
【0070】
図5および
図7に示すように、電波吸収体5は、各収容凹部21および各収容孔部25に対向するカバー11の内面(下面)に固定される。具体的には、作業者は、電波吸収体5をカバー11の下側からカバー側中間片35と各ガイド片38との間に臨ませる。作業者は、電波吸収体5の左右一対の掛合部64を、カバー11のプレート部32に開口した左右一対の固定開口36に挿通させる。電波吸収体5はステンレス製の薄板で一体形成されているため、各掛合部64は、左右方向外側に弾性変形して固定開口36を通過し、通過した後に自身の復元力によって左右方向内側に変形する。これにより、左右一対の掛合部64は、それぞれ、固定開口36の縁部に引っ掛かり、電波吸収体5は、プレート部32を抱え込むように固定される(
図1参照)。
【0071】
この状態で、各規制嵌合部63bは、一対の押圧突起37同士の間に嵌合して、左右方向の位置が規制される。また、各接触片61の屈曲片部61aは、一対の押圧突起37の間に配置され、左右方向に位置が規制される。
【0072】
次に、本実施形態に係るコネクタ1の組立手順について説明する。
【0073】
図4に示すように、作業者は、カバー11を取り外してハウジング2の収容凹部21および収容孔部25を露出させ、同軸端子3の端子部41(同軸ケーブル4の一部を含む。)を収容孔部25に挿入し、同軸端子3の接続部40を収容凹部21に挿入する。このとき、作業者は、接続部40に形成された左右一対の係止凸片42bを、外壁15や基端側隔壁16に切り込まれた内側係止凹部17に挿入する。これにより、例えば、同軸ケーブル4を後方に引っ張ったとしても、同軸端子3の引き抜きが規制される。
【0074】
作業者は、同様の手順で他の同軸端子3を挿入する。以上によって、本体部12に形成された4つの収容凹部21には、それぞれ接続部40が収容され、突設部13に形成された4つの収容孔部25には、それぞれ端子部41が収容される。つまり、ハウジング2に4つの同軸端子3が左右方向に並べられて収容される。この状態で、各収容凹部21では、凸床面21bに同軸ケーブル4が配置され、凹床面21cに被覆圧着バレル部42が配置され、基準床面21aに外部導体圧着バレル部43および絶縁体囲繞部44が配置される(
図3参照)。
【0075】
なお、
図4の手前から3番目の収容凹部21には、各係止凸片42bが通常よりも後方に移動した位置に設けられる同軸端子3が収容される。当該同軸端子3は、例えば、高周波信号の伝送等に用いられる。上記したように、当該収容凹部21を構成する2つの基端側隔壁16には、それぞれ、後側に向けて幅広く形成された内側係止凹部17が形成されている。このため、各係止凸片42bの位置を変更した同軸端子3は、他の収容凹部21に収容することができず、当該収容凹部21(
図4の手前から3番目)にのみ収容することができるようになっている。したがって、特殊な用途に用いる同軸端子3の収容位置を明確にすることができ、誤った位置に収容することを防止することができる。
【0076】
次に、作業者は、ハウジング2の上側からカバー11を取り付ける。作業者は、カバー11の各ガイド片38の先端部を、ハウジング2の各ガイドフック27に挿入して、カバー11を押下げる。押下げが進むと、カバー11の各垂設壁33が、ハウジング2の各外壁15と各係止部20との間に進入すると共に、各垂設壁33に形成された前後一対の凸条部39aが、各係止部20に形成された前後一対のスリット20aに進入する。続いて、各垂設壁33に形成された係止突起39bが、各係止部20に形成された外側片20bの上端部に接触する。そして、カバー11の押下げの進行に伴って、各外側片20bが左右方向外側に押し広げられる。更に押下げが進むと、各外側片20bの復元力によって、カバー11の各係止突起39bが、ハウジング2の各係止開口部20cに係合する。
【0077】
また、カバー11の押下げが進むと、カバー11のカバー側後端片34の下端部は、ハウジング2の本体側後端片18の上端部に接触する。カバー11の押下げの進行に伴って、カバー側後端片34は前方に撓曲し、本体側後端片18は後方に撓曲する。更に押下げが進むと、各片18,34の復元力によって、カバー側後端片34の第1カバー側フック34aが、本体側後端片18の第1本体側フック18aに係合する。
【0078】
また、カバー11の押下げが進むと、カバー11のカバー側中間片35(
図5参照)の下端部は、ハウジング2の係止穴19に進入し、第2本体側フック19aの上端部に接触する。カバー11の押下げの進行に伴って、カバー側中間片35は後方に撓曲する。更に押下げが進むと、カバー側中間片35の復元力によって、カバー側中間片35の第2カバー側フック35aが、第2本体側フック19aに係合する。
【0079】
以上によって、カバー11の押下げが終了し、カバー11は、各収容凹部21および各収容孔部25を閉塞した状態でハウジング2に固定される(
図1および
図2参照)。つまり、コネクタ1の組み立てが完了する。
【0080】
コネクタ1が組み立てられた状態で、カバー11のプレート部32の下面は、各外壁15および各基端側隔壁16の上端面に当接している。また、
図1に示すように、左右方向両端に位置する基端側隔壁16の後端部は、プレート部32のプレート凹部32aから露出している。また、ロックアーム26のロック操作部29は、アーチ状のハンドル31の内側に配置されている。さらに、ハンドル31のハンドル凸部31bは、ロック操作部29の操作を規制するようにロック凹部29aに配置されている。これにより、ロック操作部29の誤操作を防止することができる。
【0081】
図3に示すように、コネクタ1が組み立てられた状態で、4組設けられた一対の押圧突起37は、それぞれ、収容された各同軸端子3の接続部40に形成された絶縁体囲繞部44に当接している。これにより、各収容凹部21の内部における、同軸端子3の上下方向の位置が固定される。
【0082】
図3に示すように、コネクタ1が組み立てられた状態で、電波吸収体5は、少なくとも各同軸端子3の接続部40と端子部41との間の折曲部分P1および組み合わせ部分P2と、端末処理された同軸ケーブル4から露出する中心導体51と、に対向する(覆う)ように配置されている。詳細には、電波吸収体5の固定部本体62は、同軸端子3の折曲部分P1の上方に僅かに離間(近接)して配設されている。また、接続部40の軸方向に延びる各規制部63は、端末処理された同軸ケーブル4から露出する外部導体52に対向して配置されている。
【0083】
さらに、電波吸収体5は、各同軸端子3に接触して設けられている。詳細には、組み立て(カバー11の押下げ)の過程において、接続部40の軸方向に延びる各接触片61の接触突起61bは、同軸端子3の接続部40(絶縁体囲繞部44)に当接し、カバー11の押下げの進行に伴って、各接触片61は、上方に僅かに撓曲する。そして、コネクタ1の組み立てが完了すると、各接触片61は、弾性力をもって絶縁体囲繞部44に圧接された状態となっている。すなわち、各接触片61(接触突起61b)は、端末処理された同軸ケーブル4から露出して同軸端子3に電気的に接続される中心導体51に対向する位置に当接している。なお、各接触片61の撓曲に伴って、各接触突起61bは、絶縁体囲繞部44の表面上を摺りながら後方に僅かに移動する。このとき、屈曲片部61aが一対の押圧突起37に案内されるため、各接触突起61bは、左右方向にずれることなく直線的に移動する。
【0084】
次に、
図3を参照して、コネクタ1を相手側コネクタ100に接続(嵌合)する手順について簡単に説明する。なお、相手側コネクタ100の各相手側端子101は、例えば、基板やケーブル(いずれも図示せず)に電気的に接続されているものとする。
【0085】
作業者は、ハウジング2の突設部13を、相手側コネクタ100の嵌合凹部102に進入させる。コネクタ1の押下げが進むと、突設部13のロックアーム26(各アーム本体28)が、相手側コネクタ100の上端部に接触し、この押下げの進行に伴って、各アーム本体28は、前端壁23との接続部分を支点として後方に撓曲する。更に押下げが進むと、各アーム本体28の復元力によって、各アーム本体28のロック突起28aが、相手側コネクタ100の相手側ロック開口103に係合する。また、コネクタ1の各同軸端子3は、相手側コネクタ100の各相手側端子101に接続する。以上により、コネクタ1と相手側コネクタ100との接続(嵌合)が完了する。
【0086】
なお、コネクタ1と相手側コネクタ100との接続(嵌合)を解除する場合には、ロックアーム26のロック操作部29を後方に押圧し、各ロック突起28aと相手側ロック開口103との係合を解除し、相手側コネクタ100に対し、コネクタ1を上方に引き抜く。これにより、相手側コネクタ100からコネクタ1を取り出すことができる。
【0087】
上記したように、同軸端子3は、接続部40と端子部41とがL字状に折り曲がっているため、その構造上、組み合わせ部分P2に継ぎ目が形成される。また、同軸ケーブル4は、外部導体52を設けて電磁波を遮断するように構成されているが、端末処理されて露出した中心導体51およびこれに接続した同軸端子3からは、電磁波が放出される。
【0088】
以上説明した本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、電波吸収体5は、隣接する4つの同軸端子3に亘って設けられると共に、各同軸端子3の折曲部分P1および組み合わせ部分P2と、端末処理された中心導体51とに対向するように配置されている。このため、各同軸端子3や各中心導体51から発生し、隣接する同軸端子3等に向かう電磁波は、電波吸収体5によって遮断(吸収および反射)される。したがって、複数の同軸端子3等から発生する電磁波の干渉が阻止されるため、電磁界結合の発生を防止することができる。これにより、挿入損失の増加を有効に抑制することができ、高周波(例えば5.8GHz以上)の信号を正確に伝送することができる。
【0089】
また、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、電波吸収体5がカバー11の内面(下面)に固定されているため、各同軸端子3を収容したハウジング本体10にカバー11を取り付けるという簡易な手順で、電磁界結合の発生を防止可能なコネクタ1を容易に組み立てることができる。また、電波吸収体5がカバー11の内面に固定されているため、コネクタ1の組立時や使用時において、電波吸収体5の位置ずれを防止することができる。
【0090】
また、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、ハウジング本体10に収容された各同軸端子3を、各接触片61によって押えることができる。これにより、ハウジング本体10(各収容凹部21)の内部で同軸端子3が移動することで生じる挿入損失の変動を抑制することができる。
【0091】
また、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、隣接する4つの同軸端子3は、それぞれ、基板側隔壁16および先端側隔壁24によって隔離されるため、各同軸端子3を電気的に非接触状態で設定された位置に保持することができる。
【0092】
ところで、絶縁性の各隔壁16,24は、空気に比して高い誘電率を有しているため、各隔壁16,24を通った電磁波は、波長短縮されて各同軸端子3の組み合わせ部分P2の継ぎ目等から漏れ出し易くなる。このため、隣接する同軸端子3等の間で電磁界結合を生じ易くなる。この点、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、各同軸端子3等から発生する電磁波は、電波吸収体5によって遮断されるため、電磁界結合の発生を防止することができる。これにより、電磁界結合に伴う挿入損失の増加が抑制され、高周波の信号を正確に伝送することができる。
【0093】
なお、本実施形態に係るコネクタ1では、4つの同軸端子3を設けていたが、これに限らず、少なくとも2本以上の同軸端子3が設けられていればよい。また、複数の同軸端子3を左右方向に略等間隔に並設していたが、これに限らず、例えば、不均一な間隔で並べられていてもよいし、前後方向に多少ずれた状態で並べてもよい。
【0094】
なお、本実施形態に係るコネクタ1では、一例として、ステンレス製の電波吸収体5を用いていたが、本発明はこれに限定されない。電波吸収体5として、例えば、銅またはアルミニウム等の導電性電波吸収材料を用いてもよい。また、電波吸収体5として、ゴム、ウレタンまたはポリスチロール等の誘電体に、カーボン等の導電材料を混合した誘電性電波吸収材料を用いてもよいし、鉄、ニッケルまたはフェライト等の磁性材料によって電波を吸収する磁性電波吸収材料を用いてもよい。
【0095】
なお、本実施形態に係るコネクタ1では、固定部本体62は、同軸端子3の折曲部分P1から僅かに離間して配設されていたが、これに限らず、例えば、固定部本体62を同軸端子3の折曲部分P1および組み合わせ部分P2に接触させてもよい。なお、本実施形態に係るコネクタ1では、電波吸収体5は、各接触片61を介して各同軸端子3に接触していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電波吸収体5は、各同軸端子3に近接して設けられていてもよい。詳細には、電波吸収体5の最近接部分(例えば、各接触片61)と各同軸端子3(接続部40および端子部41の少なくともいずれか一方)との距離が、0.5mm以下であることが好ましい。更に好ましくは、当該距離を0.1mm以下とする。このように、各同軸端子3に近接させて電波吸収体5を配置した場合であっても、電磁界結合の発生が防止され、挿入損失の増加を有効に抑制可能であることが確認されている。
【0096】
なお、本実施形態に係るコネクタ1では、電波吸収体5は、左右一対の掛合部64を介してカバー11に固定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各掛合部64を省略した電波吸収体、または、単なる薄板状に形成した電波吸収体を、各同軸端子3とカバー11との間に挟み込むように設けてもよい。また、例えば、各同軸端子3またはカバー11(の内面)に貼付してもよい。また、例えば、電波吸収体をカバー11にインサート形成してもよい。
【0097】
なお、電波吸収体5は、少なくとも各同軸端子3の折曲部分P1に対向配置されていればよく、例えば、ハウジング本体10を全て覆うような大きさとなる電波吸収体5を設けてもよい。また、電波吸収体5の形状は任意であり、例えば、矩形板状や円板(楕円板)状等に形成してもよい。また、電波吸収体5は、並設した全ての同軸端子3に亘るように設けなくてもよい。例えば、
図4の手前から3番目の同軸端子3を高周波信号の伝送に用いる場合、電波吸収体5は、少なくとも、当該同軸端子3と、当該同軸端子3の左右に隣接する一対の同軸端子3と、に亘るように設ければよい。
【0098】
なお、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係るコネクタ1における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、且つ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。