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特開2015-162405多芯ケーブルおよび多芯ケーブル製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-162405(P2015-162405A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】多芯ケーブルおよび多芯ケーブル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20150811BHJP
   H01B 11/02 20060101ALI20150811BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   H01B7/02 Z
   H01B11/02
   H01B13/00 551Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-37845(P2014-37845)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 欣司
(72)【発明者】
【氏名】上柿 亮真
【テーマコード(参考)】
5G309
5G319
【Fターム(参考)】
5G309RA14
5G319DA07
5G319DB01
5G319DC01
(57)【要約】
【課題】複数の導体間でノイズを相互に打ち消す機能を有する多芯ケーブルにおいて、製造リードタイムの増大を回避しつつ特性インピーダンスの変動を抑制すること。
【解決手段】多芯ケーブル1は、複数の線状導体2と絶縁被覆3とを有する。複数の線状導体2は、相互に間隔を空けて同軸の螺旋に沿って並列している。絶縁被覆3は、複数の線状導体2の周囲に一体に成形され、複数の線状導体2の間を埋めるとともに複数の線状導体2を一括して覆っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に間隔を空けて同軸の螺旋に沿って並列した複数の線状導体と、
複数の前記線状導体の周囲に一体に成形され、複数の前記線状導体の間を埋めるとともに複数の前記線状導体を一括して覆う絶縁被覆と、を有する多芯ケーブル。
【請求項2】
樹脂成形部から一の搬送直線に沿って引き出される複数の線状導体の周囲に絶縁被覆を押出成形することによって多芯ケーブルを製造する多芯ケーブル製造方法であって、
前記樹脂成形部において前記線状導体各々が通る複数の貫通孔が形成された導体案内部材を前記搬送直線を中心に回転させる導体案内工程と、
前記樹脂成形部において前記導体案内工程を経た複数の前記線状導体に対してその周囲から流動状の合成樹脂を供給することにより、複数の前記線状導体の間を埋めるとともに複数の前記線状導体を一括して覆う前記絶縁被覆を押出成形する絶縁被覆成形工程と、を含む多芯ケーブル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯ケーブルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤーハーネスが、2本の絶縁電線を撚り合わせたツイスト電線を含むことがある。絶縁電線は、芯線とその周囲を覆う絶縁被覆とを有する電線である。
【0003】
ツイスト電線は、2本の絶縁電線相互間でノイズが打ち消し合う効果を示し、ノイズの影響を受けにくい。そのため、ツイスト電線は、CAN(Controller Area Network)又はIEEE(the Institute of Electrical and Electronics Engineers, inc.)の802.3規格のネットワーク等の通信媒体として採用されることが多い。自動車において、上記のネットワークは、自動車内のECU(Electronic Control Unit)およびその他の電装品等を接続するネットワークとして利用される。
【0004】
ところで、通信媒体として採用されるツイスト電線は、特性インピーダンス等の伝送特性が要求仕様を満たすように作られる。特に、IEEEの802.3規格のネットワークの通信媒体として採用されるツイスト電線は、より厳しい伝送特性が要求される。
【0005】
しかしながら、要求仕様を満たすようにツイスト電線が作られたとしても、このツイスト電線がワイヤーハーネスとして組み立てられる時、或いはツイスト電線の配送時等に、撚り合わされた2本の絶縁電線がばらけてしまうことがある。この場合、撚り合わされた2本の絶縁電線間の隙間の大きさが、作られた時と車両搭載時とで変化する。
【0006】
ツイスト電線において、撚り合わされた2本の絶縁電線間の隙間が変化すると、このツイスト電線の特性インピーダンスが変動し、通信障害等の不具合が生じてしまう。
【0007】
そこで、ツイスト電線の特性インピーダンスの変動を抑制するため、例えば、2本の絶縁電線の撚りが緩みにくくなるように、2本の絶縁電線がより小さなピッチで撚られたツイスト電線を用いることが考えられる。なお、ツイスト電線のピッチとは、絶縁電線各々が1周分(360度)だけ撚られている区間のツイスト電線の長さである。
【0008】
他にも、特許文献1に示されるツイスト電線が提案されている。このツイスト電線は、撚り合わされた2本の絶縁電線が絶縁電線の表面に形成された接着層で接着された構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−084365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ツイスト電線のピッチを小さくすることは様々な不都合を招く。例えば、ツイストのピッチが小さいほど2本の絶縁電線を撚る工程に時間がかかり、ツイスト電線の製造リードタイムが大きくなる。また、ツイスト電線の芯線各々に端子を接続する前に、ツイスト電線の端部において複数の芯線の撚りを解く工程に多くの手間および時間を要する。さらに、ツイストのピッチが小さいほど、ツイスト電線における単位長さ当たりの芯線の長さが長くなり、ツイスト電線が重くなる。
【0011】
また、特許文献1に示されるツイスト電線の製造においては、絶縁電線の表面に接着層を付与するという工程が必要となる。この場合、ツイスト電線の製造リードタイムが大きくなってしまう。
【0012】
本発明は、複数の導体間でノイズを相互に打ち消す機能を有する多芯ケーブルにおいて、製造リードタイムの増大を回避しつつ特性インピーダンスの変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1態様に係る多芯ケーブルは、複数の線状導体と絶縁被覆とを有する。複数の上記線状導体は、相互に間隔を空けて同軸の螺旋に沿って並列している。上記絶縁被覆は、複数の上記線状導体の周囲に一体に成形され、複数の上記線状導体の間を埋めるとともに複数の上記線状導体を一括して覆う。
【0014】
第2態様に係る多芯ケーブル製造方法は、樹脂成形部から一の搬送直線に沿って引き出される複数の線状導体の周囲に絶縁被覆を押出成形することによって多芯ケーブルを製造する方法である。上記多芯ケーブル製造方法は、導体案内工程と絶縁被覆成形工程とを含む。上記導体案内工程は、上記樹脂成形部において上記線状導体各々が通る複数の貫通孔が形成された導体案内部材を上記搬送直線を中心に回転させる工程である。上記絶縁被覆成形工程は、上記樹脂成形部において上記導体案内工程を経た複数の上記線状導体に対してその周囲から流動状の合成樹脂を供給することにより、複数の上記線状導体の間を埋めるとともに複数の上記線状導体を一括して覆う上記絶縁被覆を押出成形する工程である。
【発明の効果】
【0015】
上記の各態様において、複数の線状導体が同軸の螺旋に沿って並列している。そのため、複数の線状導体各々に生じるノイズは相互に打ち消し合う。また、同軸の複数の線状導体の周囲に一体に成形された絶縁被覆は、複数の線状導体の位置関係を同軸の螺旋に沿って並列した状態で一定に維持する。これにより、複数の線状導体を小さなピッチで捩じることなく、この多芯ケーブルが作られた時と車両搭載時との間で特性インピーダンスが変動することを抑制できる。
【0016】
また、複数の線状導体を小さなピッチで撚る場合の不都合、例えば、単位長さあたりの多芯ケーブルの重量が増大すること及び複数の線状導体を捩じる工程に時間がかかってしまうこと(製造リードタイムの増大)を防止できる。
【0017】
また、上記の各態様に係る多芯ケーブルの製造工程において、複数の絶縁電線をそれらの表面に接着層を付与した上で撚るといった製造リードタイムの増大の原因となる煩雑な工程を要しない。
【0018】
さらに、複数の線状導体を比較的小さなピッチの螺旋状にすることができるため、多芯ケーブルの端部の絶縁被覆が除去されると、複数の線状導体は互いに平行に近い状態で絶縁被覆から延び出た状態となる。従って、撚りを解く工程の負担を低減することができる。また、多芯ケーブルの端部の絶縁被覆を1回の工程で除去できるので、この多芯ケーブルの端末処理がより簡易になる。
【0019】
以上に示したことから、上記の各態様によれば、複数の導体間でノイズを相互に打ち消す機能を有する多芯ケーブルにおいて、製造リードタイムの増大を回避しつつ特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0020】
また、上記の第2態様においては、複数の線状導体の捩じり工程と捩じられた状態の複数の線状導体に絶縁被覆を形成する工程とを連続して行うことが可能となる。この場合、比較的短い製造リードタイムで多芯ケーブルを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る多芯ケーブル1の端部の側面図である。
図2】多芯ケーブル1の端部の平面図である。
図3】多芯ケーブル1の断面図である。
図4】本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法に使用される樹脂成形部及び導体案内部材を備えた多芯ケーブル製造装置10の主要部の断面図である。
図5】多芯ケーブル製造装置10の導体案内部材の断面図である。
図6】多芯ケーブル製造装置10の全体を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0023】
<多芯ケーブル>
図1〜3を参照しつつ、本実施形態に係る多芯ケーブル1について説明する。多芯ケーブル1は、例えば、自動車等の車両に搭載される。
【0024】
図1は、多芯ケーブル1の側面図である。図2は、多芯ケーブル1の平面図である。図3は、図1のII−II平面における多芯ケーブル1の断面図である。なお、図1,2に示される多芯ケーブル1は、端末部の被覆除去処理が施されている。
【0025】
多芯ケーブル1は、複数の線状導体2と絶縁被覆3とを有する。本実施形態は、多芯ケーブル1が2本の線状導体2を有する場合の事例である。多芯ケーブル1において、2本の線状導体2各々に生じるノイズは相互に打ち消し合う。
【0026】
線状導体2は、導電性を有する金属の線材である。線状導体2は、例えば、複数の細い金属の線材が撚り合わされた撚り線が円筒状に圧縮されることにより得られる圧縮導体である。しかしながら、線状導体2が、単に複数本の金属の線材が撚り合わされた撚り線である場合又は1本の金属の線材である場合等も考えられる。
【0027】
また、多芯ケーブル1において、線状導体2は、例えば、銅を主成分とする金属の線材である。しかしながら、線状導体2が、銅以外の金属、例えば、アルミニウム等を主成分とする金属の線材であることも考えられる。
【0028】
絶縁体である絶縁被覆3は、複数の線状導体2の周囲に一体に成形されている。絶縁被覆3は、複数の線状導体2の間を埋めるとともに複数の線状導体2を一括して覆っている。
【0029】
本実施形態において、絶縁被覆3の材料は、車両搭載時の温度環境又は耐薬品性などの要求仕様に応じて選定される。例えば、絶縁被覆3としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル又はポリアミド系ナイロンなどを主成分とする合成樹脂の部材が考えられる。
【0030】
多芯ケーブル1において、2本の線状導体2は、相互に間隔を空けて同軸の螺旋に沿って並列している。例えば、図1〜3に示される例のように、2本の線状導体2がそれぞれ同軸かつ同半径の螺旋に沿って相互に平行に並んでいる場合が考えられる。この場合、2本の線状導体2間の距離は、多芯ケーブル1の全長に亘って一定である。なお、ここでいう同軸、同半径及び平行は、多芯ケーブル1の製造のばらつきの範囲内において、概ね同軸、概ね同半径及び概ね平行であることを含む。
【0031】
本実施形態において、線状導体2の周囲に存在する絶縁被覆3により、2本の線状導体2の位置関係が一定に保たれる。
【0032】
絶縁被覆3において、複数の線状導体2の間を埋める部分の厚み、即ち、線状導体2相互の間隔は、線状導体2相互を電気的に絶縁するのに十分な厚みである。一方、絶縁被覆3における線状導体2各々よりも外周面側の部分の厚みは、他の仕様に基づき設定される。例えば、その厚みは、当該絶縁被覆3の周囲に配線され得る他の電線の影響による当該絶縁被覆3の伝送特性の変動が、許容範囲内に収まるように設定される。より具体的には、絶縁被覆3における線状導体2各々よりも外周面側の部分における最も薄い部分が、線状導体2相互の間隔よりも大きな厚みであることが考えられる。
【0033】
従って、図3に示される例において、絶縁被覆3の厚みは、2本の線状導体2の位置関係を維持するために十分な厚みである。そして、例えば、最も厚みの薄い部分における絶縁被覆3の外周面と線状導体2の外周面との距離が、2本の線状導体2の間の距離よりも長い場合が考えられる。
【0034】
本実施形態においては、多芯ケーブル1に対して振動又は曲げ等の外力が加わった場合に、2本の線状導体2の位置がずれることが防がれる。これにより、多芯ケーブル1における線状導体2相互間の距離が、この多芯ケーブル1の製造時と配送時等との間で変動してしまうことが抑制される。即ち、多芯ケーブル1の特性インピーダンスが多芯ケーブル1の製造時と車両搭載時との間で変動してしまうことが抑制される。
【0035】
ところで、図1,2には、端末処理がなされた多芯ケーブル1が示されている。図1,2に示される例において、多芯ケーブル1の端部の絶縁被覆3は剥がれた状態である。
【0036】
本実施形態においては、多芯ケーブル1の端部の絶縁被覆3を除去する工程を1回行うことで、2本の線状導体2が絶縁被覆3から延び出た状態となる。また、図1,2に示される例においては、多芯ケーブル1の端部の絶縁被覆3が除去される過程で、2本の線状導体2は、除去される絶縁被覆3でしごかれることによって、互いに平行に近い状態になる。この場合、容易に複数の線状導体2と端子とを一括で圧着或いは溶接することが可能となる。
【0037】
<効果>
本実施形態において、複数の線状導体2が同軸の螺旋に沿って並列している。そのため、複数の線状導体2各々に生じるノイズは相互に打ち消し合う。また、同軸の複数の線状導体2の周囲に一体に成形された絶縁被覆3は、複数の線状導体2の位置関係を同軸の螺旋に沿って並列した状態で一定に維持する。これにより、複数の線状導体2を小さなピッチで捩じることなく、この多芯ケーブル1の製造時と車両搭載時との間で特性インピーダンスが変動することを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態においては、複数の線状導体2を小さなピッチで撚る場合の不都合、例えば、単位長さあたりの多芯ケーブル1の重量が増大すること及び複数の線状導体2を捩じる工程に時間がかかってしまうこと(製造リードタイムの増大)を防止できる。また、本実施形態においては、複数の絶縁電線をそれらの表面に接着層を付与した上で撚るといった製造リードタイムの増大の原因となる煩雑な工程を要しない。
【0039】
また、本実施形態においては、複数の線状導体2を比較的小さなピッチの螺旋状にすることができるため、多芯ケーブル1の端部の絶縁被覆3が除去されると、複数の線状導体2は互いに平行に近い状態で絶縁被覆3から延び出た状態となる。従って、撚りを解く工程の負担を低減することができる。また、多芯ケーブル1の端部の絶縁被覆3を1回の工程で除去できるので、この多芯ケーブル1の端末処理がより簡易になる。
【0040】
従って、本実施形態の多芯ケーブル1によれは、製造リードタイムの増大を回避しつつ特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0041】
<多芯ケーブル製造方法>
次に、図4〜6を参照しつつ、本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法の一例について説明する。本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法は、樹脂成形部4と導体案内部材5とを用いて行われる導体案内工程及び絶縁被覆成形工程を含む。
【0042】
樹脂成形部4は、流動状の合成樹脂を押し出し成形することによって、多芯ケーブル1の絶縁被覆3を形成する工程を行う部分である。例えば、図1〜3に示される多芯ケーブル1は、樹脂成形部4から一の搬送直線Dに沿って引き出される複数の線状導体2の周囲に絶縁被覆3を押出成形することによって製造される。
【0043】
本実施形態において、導体案内工程及び絶縁被覆工程は、樹脂成形部4及び導体案内部材5を備える多芯ケーブル製造装置10を用いて行われる。なお、本実施形態における多芯ケーブル製造装置10は、さらに、ベアリング6、駆動ギア7、経路規制部8及び回転支持体9を備える。
【0044】
図4は、本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法における導体案内工程及び絶縁被覆成形工程を示した図であり、多芯ケーブル製造装置10の主要部の断面図である。図5は、図4のIII−III平面における断面図である。図6は、本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法における導体案内工程及び絶縁被覆成形工程を示した図であり、多芯ケーブル製造装置10の全体像を示した概略図である。
【0045】
<多芯ケーブル製造装置>
まず、本実施形態における多芯ケーブル製造装置10の導体案内部材5、ベアリング6、駆動ギア7、樹脂成形部4、回転支持体9及び経路規制部8の構成について説明する。
【0046】
導体案内部材5は、複数の線状導体2を通過させてガイドする部分である。導体案内部材5には、複数の線状導体2各々が通る複数の貫通孔51が形成されている。図4,5に示される例において、導体案内部材5には、線状導体2ごとに線状導体2が通る複数の貫通孔51が形成されている。貫通孔51各々は、搬送直線Dに対して間隔を隔てて搬送直線Dに沿って形成された直線状の孔である。
【0047】
以下の説明において、搬送直線Dに沿う方向における線状導体2の引き出し方向側のことを搬送下流側、搬送下流側に対し反対側のことを搬送上流側と称する。
【0048】
図4,5に示される例において、導体案内部材5の搬送上流側の部分には、さらに、駆動ギア7にかみ合う従動ギア52が形成されている。また、導体案内部材5における搬送下流側の部分は、錐状に形成されて搬送下流側に向けて徐々に小径になっている。以下、貫通孔51における搬送上流側の開口を、入口開口53と称する。また、貫通孔51における入口開口53に対して反対側、即ち、貫通孔51における搬送下流側の開口を出口開口54と称する。
【0049】
ベアリング6は、導体案内部材5を回転可能に支持する支持機構の一例である。図4に示される例においては、環状のベアリング6は、その中空部に配置された導体案内部材5を回転自在に支持する。なお、図4は、ベアリング6の詳細な内部の構造を、簡略化して示している。
【0050】
駆動ギア7は、導体案内部材5を回転させる回転動力機構の一例である。駆動ギア7は、導体案内部材5における従動ギア52にかみ合う形状で形成されている。図4,5に示される例においては、2つの駆動ギア7が導体案内部材5の従動ギア52にかみ合った状態で、導体案内部材5の両側に設けられている。多芯ケーブル製造装置10においては、この2つの駆動ギア7が回転することによって、導体案内部材5が搬送直線Dを中心に回転する。
【0051】
図4に示される樹脂成形部4は、多芯ケーブル1の押出成形に使用される金型である。図4に示される例において、樹脂成形部4には、搬送直線Dに沿って形成された第一空間41と、第一空間41に連なる第二空間42と、導体案内部材5の一部を収容可能な第三空間43と、が形成されている。第一空間41は、複数の線状導体2の通路でもある。
【0052】
第二空間42は、搬送下流側へ向けて徐々に径が小さくなる錘状の空間である。第二空間42は、不図示の合成樹脂供給装置から供給された流動状の合成樹脂が通る空間である。従って、流動状の合成樹脂は、第二空間42を経て第一空間41に供給される。
【0053】
第三空間43は、導体案内部材5の一部が収容される空間である。図4に示される例において、第三空間43は、導体案内部材5の搬送下流側の部分の輪郭形状に沿って形成された空間である。
【0054】
回転支持体9は、長い線状導体2が巻き付けられた状態のボビン21を支持する部分である。図6に示される例において、回転支持体9は、2つのボビン21を支持している。
【0055】
また、回転支持体9は、不図示の回転動力機構により、回転可能な部材である。例えば、回転支持体9における複数のボビン21は、回転軸を中心とする一の円上に支持されている。ボビン21は、線状導体2各々の供給源であり、線状導体2ごとに設けられている。
【0056】
経路規制部8は、回転支持体9に支持されたボビン21から繰り出される線状導体2の経路を規制する部分である。より具体的には、経路規制部8は、ボビン21各々から繰り出された線状導体2各々をそれらの間隔が搬送上流側から搬送下流側へ向けて徐々に狭まるように案内する。これにより、線状導体2各々が、ごく狭い間隔で形成された導体案内部材5の貫通孔51各々へ円滑に導かれる。
【0057】
例えば、経路規制部8は、線状導体2各々が通る複数の通路孔81が形成された板状の部材であることが考えられる。図6に示される例において、経路規制部8には、2つの通路孔81が形成されている。
【0058】
また、経路規制部8も回転支持体9と同様、回転可能な部分である。例えば、経路規制部8におけるその2つの通路孔81は、回転軸を中心とする一の円上に設けられている。
【0059】
また、経路規制部8は、経路規制部8自体が有する不図示の回転動力機構により回転することが考えられる。しかしながら、経路規制部8が、回転動力機構を有さず、回転支持体9が回転することによって動く線状導体2から受ける力のみで回転する場合も考えられる。
【0060】
回転支持体9、経路規制部8及び導体案内部材5は、少なくとも平均的には同じ回転周期で回転する。これにより、複数の線状導体2は、ボビン21各々から導体案内部材5に至る過程で捩れない。
【0061】
<多芯ケーブル製造方法:導体案内工程>
図4〜6を参照しつつ、本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法における導体案内工程の詳細について説明する。導体案内工程は、樹脂成形部4において、線状導体2各々が通る複数の貫通孔51が形成された導体案内部材5を搬送直線Dを中心に回転させる工程である。
【0062】
本実施形態における導体案内工程は、線状導体2各々が通る複数の貫通孔51が形成された導体案内部材5と経路規制部8及び回転支持体9とを搬送直線Dを中心に回転させる工程である。
【0063】
本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法は、相互に間隔を空けて搬送直線Dに沿う直線状の複数の線状導体2が、予め多芯ケーブル製造装置10における導体案内部材5の貫通孔51各々及び樹脂成形部4の第一空間41に通された状態で行われる。
【0064】
より具体的には、ボビン21各々から繰り出された線状導体2各々は、経路規制部8の通路孔81各々と、導体案内部材5の貫通孔51各々と、樹脂成形部4の第一空間41と、に通され、さらに、不図示の電線引出装置にセットされる。これにより、複数の線状導体2は、ボビン21から連続的に繰り出された後、経路規制部8、導体案内部材5及び樹脂成形部4を経由し、さらに、樹脂成形部4から一の搬送直線Dに沿って電線引出装置へ引き出される。
【0065】
本実施形態の導体案内工程においては、2本の線状導体2が通過中の導体案内部材5の従動ギア52に駆動ギア7がかみ合った状態で回転することにより、ベアリング6に回転可能に支持された導体案内部材5が回転する。その結果、複数の線状導体2は、導体案内部材5の貫通孔51における出口開口54よりも搬送下流側において、相互に間隔を空けて同軸の螺旋に沿って並列した状態になる。
【0066】
また、本実施形態における導体案内工程においては、導体案内部材5の回転と同期して、回転支持体9及び経路規制部8が、導体案内部材5が回転する向きと同じ向きに回転する。回転支持体9及び経路規制部8は、少なくとも平均的には、導体案内部材5の回転周期と同じ回転周期で回転する。
【0067】
回転支持体9及び経路規制部8が導体案内部材5と同じ向きで回転することにより、導体案内部材5の入口開口53に入る前の線状導体2が捩じれてしまうことを防止できる。
【0068】
<多芯ケーブル製造方法:絶縁被覆成形工程>
絶縁被覆成形工程は、導体案内工程の後に行われ、絶縁被覆3を押出成形する工程である。絶縁被覆成形工程においては、樹脂成形部4において導体案内工程を経た複数の線状導体2に対してその周囲から流動状の合成樹脂が供給される。これにより、複数の線状導体2の間を埋めるとともに複数の線状導体2を一括して覆う絶縁被覆3が押出成形される。
【0069】
本実施形態においては、導体案内部材5の貫通孔51の出口開口54から出た2本の線状導体2に対し、合成樹脂供給装置から第一空間41を経て流動状の合成樹脂が供給される。
【0070】
供給された流動状の合成樹脂は、第一空間41内において、2本の線状導体2の間を埋めるとともに複数の線状導体2を一括して覆う状態になる。そして、例えば、第一空間41内で流動状の合成樹脂が固まることにより、2本の線状導体2の間を埋めるとともに複数の線状導体2を一括して覆う絶縁被覆3が成形される。このようにして製造された多芯ケーブル1は、その後、樹脂成形部4から一の搬送直線Dに沿って引き出される。
【0071】
本実施形態に係る多芯ケーブル製造方法においては、複数の線状導体2に絶縁被覆3を形成する工程を含む一連の工程によって、多芯ケーブル1が連続的に製造される。この場合、電線の絶縁被覆を形成する工程(押出成形工程)と複数の絶縁電線を撚り合わせる工程とが個別に行われる場合に比べ、短い製造リードタイムで多芯ケーブル1を製造することが可能となる。
【0072】
<応用例>
多芯ケーブル製造方法において、第一空間41で、より速やかに絶縁被覆3を線状導体2に定着させるための冷却工程が行われていてもよい。
【0073】
また、導体案内部材5が、回転動力機構(駆動ギア7および従動ギア52)を有さず、回転支持体9が回転することによって動く線状導体2から受ける力のみで回転する場合も考えられる。
【0074】
なお、本発明に係る多芯ケーブル及び多芯ケーブル製造方法は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 多芯ケーブル
10 多芯ケーブル製造装置
2 線状導体
21 ボビン
3 絶縁被覆
4 樹脂成形部
41 第一空間
42 第二空間
43 第三空間
5 導体案内部材
51 貫通孔
52 従動ギア
53 入口開口
54 出口開口
6 ベアリング
7 駆動ギア
8 経路規制部
81 通路孔
9 回転支持体
D 搬送直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6