【課題】金属の筒体を成し、その筒体の一部に周方向において並ぶ複数の切れ目20が形成された構造を有する電磁シールド部材1において、切れ目形成部2の曲げ変形への耐性を簡易な構造によって高めること。
【解決手段】金属の筒体を成す電磁シールド部材1において、切れ目形成部2は、複数の切れ目20によって区切られた複数の帯状部21を含む。帯状部21各々は、切れ目形成部2の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部を含む。
前記凸状湾曲部は、前記帯状部各々におけるその両隣の前記切れ目無し部と連なる両端部の間の中間部に形成されており、前記両端部も湾曲している、請求項1に記載の電磁シールド部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2が示す電磁シールド部材が曲げられた場合、曲げ応力は主として切れ目形成部の帯状部に生じる。さらに、切れ目形成部の帯状部が屈曲すると、その曲げ応力は帯状部の屈曲した角部に集中しやすい。そのため、切れ目形成部が繰り返し変形し得る場合、切れ目形成部の補強または切れ目形成部の曲げ変形の制限などのための追加の対策が必要となり得る。
【0008】
切れ目形成部が繰り返し変形する原因としては、例えば、電磁シールド部材が、それを取り扱う作業者から外力を受けること、および車両から振動を受けることなどが考えられる。
【0009】
一方、車両に搭載される電磁シールド部材において、曲げ変形が繰り返し生じ得る場合に、極力簡易な構造によって曲げ変形への耐性を高められることが望ましい。
【0010】
本発明は、金属の筒体の一部に周方向において並ぶ複数の切れ目が形成された構造を有する電磁シールド部材において、切れ目が形成された部分(切れ目形成部)の曲げ変形への耐性を簡易な構造によって高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、上記課題を解決するための態様を示す。第1態様に係る電磁シールド部材は、金属の筒体を成し、切れ目形成部と切れ目無し部とを備える。上記切れ目形成部は、上記筒体の長手方向における一端側から他端側へ向かう方向に沿う複数の切れ目が周方向において並列に並んで形成された部分である。上記切れ目形成部は、複数の上記切れ目によって区切られた複数の帯状部を含む。上記切れ目無し部は、上記筒体の長手方向において上記切れ目形成部に隣接する部分である。上記切れ目形成部における複数の上記帯状部各々は、上記切れ目形成部の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部を含む。
【0012】
第2態様は第1態様の一例である。第2態様に係る電磁シールド部材において、上記凸状湾曲部は、上記帯状部各々におけるその両隣の上記切れ目無し部と連なる両端部の間の中間部に形成されており、上記両端部も湾曲している。
【0013】
第3態様は第2態様の一例である。第3態様に係る電磁シールド部材において、上記帯状部各々の前記中間部は、上記帯状部の長手方向において並ぶ複数の上記凸状湾曲部と、隣り合う2つの上記凸状湾曲部を繋ぎ上記切れ目形成部の外周面側において凹状に湾曲した凹状湾曲部と、を含む。
【0014】
第4態様は第3態様の一例である。第4態様に係る電磁シールド部材において、上記帯状部各々の上記凹状湾曲部は、上記切れ目無し部の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。
【0015】
第5態様は第2態様から第4態様のいずれか1つの一例である。第5態様に係る電磁シールド部材において、上記帯状部各々の上記両端部は、上記切れ目無し部の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。
【0016】
第6態様は第1態様から第5態様のいずれか1つの一例である。第6態様に係る電磁シールド部材は、アルミニウムを主成分とする金属部材である。
【0017】
第7態様は第1態様から第6態様のいずれか1つの一例である。第7態様に係る電磁シールド部材は、金属の板材が筒状に曲げられた構造の上記筒体を成す。
【発明の効果】
【0018】
上記の各態様によれば、電磁シールド部材が曲げられた場合、曲げ応力は帯状部の湾曲部した部分全体に分散しやすい。そのため、電磁シールド部材の切れ目形成部が繰り返し曲げられる場合において、切れ目形成部(帯状部)の曲げ変形への耐性を高めることができる。また、切れ目形成部を補強する部材および切れ目形成部の曲げ変形を制限する部材などの追加の部材を要することなく、簡易な構造によって曲げ変形への耐性を高めることができる。
【0019】
また、第2態様によれば、切れ目形成部の帯状部各々は、その両端部も中間部も湾曲しているため、曲げ応力がより広い範囲に分散しやすくなる。そのため、切れ目形成部(帯状部)の曲げ変形への耐性をより高めることができる。
【0020】
また、第3態様において、帯状部各々は、湾曲した両端部と複数の凸状湾曲部と凹状湾曲部とが一連に連なった構造を有し、この構造は湾曲した蛇腹構造を構成している。この場合、帯状部各々において曲げ応力がより広い範囲に分散しやすくなり、切れ目形成部(帯状部)の曲げ変形への耐性をより高めることができる。
【0021】
また、第4態様および第5態様において、帯状部各々における複数の凸状湾曲部以外の部分が、両隣の切れ目無し部の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。この場合、凸状湾曲部を曲げ応力の分散のために必要な高さで形成しつつ、切れ目形成部の外径(凸状湾曲部の位置の外径)と切れ目無し部の外径との差を小さくすることができる。
【0022】
また、第6態様によれば、比重の小さなアルミニウムが電磁シールド部材の主な金属材料であるので、電磁シールド部材を軽量化できる。また、アルミニウムは比較的硬度の低い金属材料であるため、帯状部の湾曲部が曲げ応力の集中を防ぐ効果がより顕著となる。
【0023】
また、第7態様によれば、電線の周囲において金属の板材を筒状に曲げることによって筒体を形成することができる。そのため、第7態様に係る電磁シールド部材は、編組線とは異なり電線の先通しを必要としない。そのため、電磁シールド部材を含むワイヤハーネスの組み立てが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される実施形態における電磁シールド部材は、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスに適用される車両用の電磁シールド部材の一例である。
【0026】
<実施形態>
まず、
図1〜3を参照しつつ、実施形態に係る電磁シールド部材1について説明する。電磁シールド部材1は、
図2が示す金属の板材が筒状に曲げられた構造の筒体を成している。電磁シールド部材1を備えるワイヤハーネスにおいて、電磁シールド部材1は、シールド対象である電線9の周囲を囲む。なお、
図1〜3において、電磁シールド部材1が取り囲む電線9が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0027】
電磁シールド部材1を構成する金属の板材は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属部材である。なお、電磁シールド部材1が、銅を主成分とする基材とその表面に錫などの金属のメッキとを有する板材、またはステンレスを主成分とする金属の板材などで構成されていることも考えられる。
【0028】
電磁シールド部材1は、切れ目形成部2と切れ目無し部3とを備える。切れ目形成部2は、複数の切れ目20が周方向において並列に並んで形成された部分である。一方、切れ目無し部3は、筒状の電磁シールド部材1(筒体)の長手方向において切れ目形成部2に隣接する筒状の部分である。
【0029】
例えば、電磁シールド部材1は、その長手方向において間隔を空けて並ぶ複数の切れ目形成部2を有している。
図1,2が示す例では、電磁シールド部材1は3箇所の切れ目形成部2を有している。なお、電磁シールド部材1が1つの切れ目形成部2のみを有する場合も考えられる。
【0030】
切れ目20各々は、筒状の電磁シールド部材1の長手方向における第一端101側から第二端102側へ向かう方向に沿って形成されている。筒状の電磁シールド部材1(筒体)の長手方向は、筒状の電磁シールド部材1の軸心方向でもあり、また、筒状の電磁シールド部材1の周方向に直交する方向でもある。
【0031】
本実施形態において、切れ目20各々は、筒状の電磁シールド部材1の長手方向に沿って形成されている。なお、切れ目20各々が、筒状の電磁シールド部材1の長手方向に対して斜めの方向に沿って形成されることも考えられる。
【0032】
また、本実施形態では、切れ目形成部2各々において、複数の切れ目20は周方向において等間隔で形成されている。
図1,2が示す例では、切れ目形成部2ごとに5つの切れ目20が等間隔で形成されている。また、切れ目形成部2における周方向の両端面22が対向する状態で、切れ目形成部2は筒状に形成されている。そのため、筒状の切れ目形成部2において、両端面22は実質的に切れ目と言える状態になっている。
【0033】
図2が示す例では、切れ目形成部2ごとに5つの切れ目20と両端面22が成す1つの切れ目とを併せた6つの切れ目が全周方向を6等分する間隔で形成されている。もちろん、切れ目形成部2ごとに6つ以上の切れ目20が形成される例、または、切れ目形成部2ごとに2つないし4つの切れ目20が形成される例なども考えられる。例えば、Nを2以上の整数として、切れ目形成部2ごとにN個の切れ目20と両端面22が成す1つの切れ目とを併せた(N+1)個の切れ目が全周方向を(N+1)等分する間隔で形成されていることが考えられる。
【0034】
電磁シールド部材1において、切れ目形成部2各々における切れ目20各々の間に帯状部21が形成されている。
図3は、電磁シールド部材1における帯状部21からその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図3において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9と曲がった状態の帯状部21とが仮想線で描かれている。
【0035】
帯状部21各々は、一連の筒状に形成された他の部分よりも曲がりやすい。そのため、電磁シールド部材1は、曲げ方向の外力が加わると、一部の帯状部21が外周面側へ突出するように曲がることにより、その曲がった帯状部21を内側にして曲がる。
【0036】
即ち、電磁シールド部材1は切れ目形成部2で曲げやすい。
図1の仮想線(二点鎖線)は、切れ目形成部2各々で折れ曲がった状態の電磁シールド部材1を示す。
【0037】
さらに、切れ目形成部2が形成する曲げ部の内側において、帯状部21が外周面側へ突出するように曲がるため、その曲げ部は扁平につぶれない。従って、電磁シールド部材1は、切れ目形成部2において扁平につぶれることなく曲がりやすい筒体である。
【0038】
本実施形態では、切れ目形成部2各々における切れ目20各々の間の帯状部21各々が、予め外周面側へ突出した形状に曲げられている。これにより、切れ目20各々が開いた状態になっている。帯状部21各々は、例えば、電磁シールド部材1の元になる金属板、即ち、筒状に曲げられる前の金属板に対するプレス加工によって曲がった形状に成形される。
【0039】
図3が示ように、帯状部21各々は、切れ目形成部2の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部211を含む。また、本実施形態において、凸状湾曲部211は、帯状部21各々におけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212の間の中間部に形成されている。
図3が示す例では、帯状部21は、両端部212の間に1つの凸状湾曲部211を有している。
【0040】
図3が示すように、帯状部21各々は、予め外周面側へ突出した形状に曲げられていることにより、切れ目20の長手方向において伸縮するように変形しやすい。そのため、電磁シールド部材1は、切れ目形成部2においてより曲がりやすい。
【0041】
切れ目無し部3は、切れ目20が形成されていない筒状の部分である。電磁シールド部材1において、少なくともその第一端101からの一部分と第二端102からの一部分とは、切れ目無し部3である。
【0042】
電磁シールド部材1における第一端101および第二端102各々からの一部分を成す2つの切れ目無し部3は、例えば不図示のシールドシェル部材に形成された筒状の部分に被せられて固定される。シールドシェル部材は、シールド対象となる電線9の接続相手である電装機器を収容する筐体に接続される金属部材である。
【0043】
本実施形態における電磁シールド部材1は複数の切れ目形成部2を有しているため、それら切れ目形成部2各々の間の部分も切れ目無し部3である。切れ目無し部3における周方向の両端を成す一対の縁部は、相互に連結されて連結部4を形成している。切れ目無し部3は、連結部4によって筒状に維持されている。
【0044】
切れ目無し部3における周方向の両端を成す一対の縁部のうちの少なくとも一方は、それに隣接する切れ目形成部2における周方向の端面22の位置から張り出して形成されている。これにより、切れ目形成部2の両端面22が対向する状態で、切れ目無し部3における周方向の両端を成す一対の縁部を重ねて連結することができる。
【0045】
連結部4は、例えば圧着、ステイプル留め、溶接または接着剤による接着などによって連結された一対の縁部である。
図1が示す例では、連結部4は、切れ目無し部3の一対の縁部は圧着または超音波溶接などによって部分的に接合されたスポット接合部40を有している。
【0046】
切れ目無し部3には、上記切れ目形成部との境界以外の領域にそれぞれ異なる直線に沿う複数の折り目31が形成されている。なお、各折り目は、直線に沿う山折り状もしくは谷折り状の折り目である。
【0047】
複数の折り目31は、例えば、電磁シールド部材1の元になる金属板、即ち、筒状に曲げられる前の金属板に対するプレス加工によって形成される。
【0048】
本実施形態における切れ目無し部3各々において、折り目31各々は、隣接する切れ目形成部2における切れ目20各々の端200から延びて形成されている。これら折り目31各々は、切れ目無し部3の外周面側から見て山折りされている折り目(山折り目)である。なお、切れ目無し部3の外周面側から見て山折りされている折り目31は、切れ目無し部3の外周面側において凸状を成す折り目である。折り目31は第一折り目の一例である。
【0049】
また、本実施形態においては、切れ目20各々の端200から1つの折り目31のみが延びて形成されている。前述したように、これら折り目31各々は、電磁シールド部材1(筒体)の長手方向に沿って形成されている。従って、切れ目無し部3各々には、それぞれ折り目31で区切られた複数の平板部3xが形成されている。本実施形態においては、平板部3x各々は矩形状である。
【0050】
図3が示すように、本実施形態において、切れ目形成部2の帯状部21各々は、その長手方向において両隣の切れ目無し部3における平板部3xと連なっている。
【0051】
<効果>
電磁シールド部材1は、編組線とは異なり電線9の先通しを必須としない。そのため、電磁シールド部材1を含むワイヤハーネスの組み立てが容易となる。
【0052】
電磁シールド部材1は、曲げられた場合、曲げ応力は帯状部21の湾曲した部分全体に分散しやすい。そのため、電磁シールド部材1の切れ目形成部2が繰り返し曲げられる場合において、帯状部21の曲げ変形への耐性を高めることができる。
【0053】
また、切れ目形成部2を補強する部材および切れ目形成部2の曲げ変形を制限する部材などの追加の部材を要することなく、簡易な構造によって曲げ変形への耐性を高めることができる。
【0054】
また、電磁シールド部材1の軽量化が重要である場合、アルミニウムを主成分とする金属部材が電磁シールド部材1として採用されれば好適である。アルミニウムは比較的硬度の低い金属材料であるため、帯状部21の凸状湾曲部211が曲げ応力の集中を防ぐ効果がより顕著となる。
【0055】
また、筒状の電磁シールド部材1の切れ目無し部3は、複数の折り目31が形成されていることによってそれらが形成されていない場合よりも折り曲げに対する強度が増す。そのため、切れ目形成部2を曲げるための外力によって切れ目無し部3までもが扁平状に変形してしまうことを抑制できる。
【0056】
ところで、切れ目形成部2を曲げるための外力が筒状の電線シールド部材1に加わった場合、切れ目無し部3に加わる応力は、その隣の切れ目形成部2における切れ目20各々の延長線上に集中しやすい。
【0057】
電磁シールド部材1において、複数の折り目31(第一折り目)は、切れ目形成部2の切れ目20各々の端200からその隣の切れ目無し部3へ延びて形成されている。このような折り目31各々は、応力が集中しやすい部分に形成されているため、より効果的に切れ目無し部3の変形を軽減する。
【0058】
<第1応用例>
次に、
図4を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第1応用例に係る帯状部21Aについて説明する。
図4は、帯状部21Aが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Aからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図4において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図4において、
図1〜3示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0059】
帯状部21Aも、帯状部21と同様に、切れ目形成部2の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部211を含む。凸状湾曲部211は、帯状部21Aにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212aの間の中間部に形成されている。
【0060】
帯状部21Aにおいては、両端部212aも湾曲している。そのため、帯状部21Aには、その両隣の切れ目無し部3の一方との境界部分から他方との境界部分に亘って角が形成されていない。
【0061】
帯状部21Aが電磁シールド部材1に適用される場合も、帯状部21が採用される場合と同様の効果が得られる。さらに、帯状部21Aは、その両端部212aも中間部(凸状湾曲部211)も湾曲しているため、曲げ応力がより広い範囲に分散しやすくなる。その結果、切れ目形成部2(帯状部21A)の曲げ変形への耐性をより高めることができる。
【0062】
<第2応用例>
次に、
図5を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第2応用例に係る帯状部21Bについて説明する。
図5は、帯状部21Bが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Bからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図5において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図5において、
図1〜4示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0063】
帯状部21Bも、帯状部21,21Aと同様に、切れ目形成部2の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部211を含む。凸状湾曲部211は、帯状部21Bにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212aの間の中間部に形成されている。
【0064】
帯状部21Bにおいて、両端部212aも湾曲している。そのため、帯状部21Aには、その両隣の切れ目無し部3の一方との境界部分から他方との境界部分に亘って角が形成されていない。
【0065】
帯状部21Bの中間部は、帯状部21Bの長手方向において並ぶ複数の凸状湾曲部211と、隣り合う2つの凸状湾曲部211を繋ぐ凹状湾曲部213とを含む。凹状湾曲部213は、切れ目形成部2の外周面側において凹状に湾曲した部分である。
【0066】
帯状部21Bが電磁シールド部材1に適用される場合も、帯状部21,21Aが採用される場合と同様の効果が得られる。
【0067】
さらに、帯状部21Bは、湾曲した両端部21aと複数の凸状湾曲部211と凹状湾曲部213とが一連に連なった構造を有している。この構造は、湾曲した蛇腹構造を構成している。この場合、帯状部21Bにおいて曲げ応力がより広い範囲に分散しやすくなる。その結果、切れ目形成部2(帯状部21B)の曲げ変形への耐性をより高めることができる。
【0068】
なお、
図5が示す例では、帯状部21Bは2つの凸状湾曲部211と1つの凹状湾曲部213とを含む。しかしながら、帯状部21Bが3つ以上の凸状湾曲部211とそれより1つ少ない凹状湾曲部213とを含むことも考えられる。
【0069】
<第3応用例>
次に、
図6を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第3応用例に係る帯状部21Cについて説明する。
図6は、帯状部21Cが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Cからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図6において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図6において、
図1〜5示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0070】
帯状部21Cも、帯状部21Bと同様に、中間部に形成された複数の凸状湾曲部211と凹状湾曲部213aとを含む。凹状湾曲部213aは、隣り合う2つの凸状湾曲部211を繋ぎ、切れ目形成部2の外周面側において凹状に湾曲した部分である。
【0071】
但し、帯状部21Cにおいて、凹状湾曲部213aは、切れ目無し部3の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。さらに、帯状部21Cにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212bも、切れ目無し部3の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。
【0072】
電磁シールド部材1において、凸状湾曲部211がより高く形成されているほど、さらに、凸状湾曲部211がより広い幅で形成されているほど、曲げ応力の分散効果が高まる。帯状部21Cが採用されれば、凸状湾曲部211を曲げ応力の分散のために必要な高さで形成しつつ、切れ目形成部2の外径(凸状湾曲部211の位置の外径)と切れ目無し部3の外径との差を小さくすることができる。
【0073】
<第4応用例>
次に、
図7を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第4応用例に係る帯状部21Dについて説明する。
図7は、帯状部21Dが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Dからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図7において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図7において、
図1〜6示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0074】
帯状部21Dも、帯状部21Aと同様に、中間部に形成された1つの凸状湾曲部211と湾曲した両端部212bとを含む。但し、帯状部21Dにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212bは、切れ目無し部3の内周面よりも内側へ窪んで湾曲している。
【0075】
帯状部21Dが採用されれば、凸状湾曲部211を曲げ応力の分散のために必要な高さで形成しつつ、切れ目形成部2の外径(凸状湾曲部211の位置の外径)と切れ目無し部3の外径との差を小さくすることができる。
【0076】
<第5応用例>
次に、
図8を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第5応用例に係る帯状部21Eについて説明する。
図8は、帯状部21Eが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Eからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図8において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図8において、
図1〜7示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0077】
帯状部21Eも、帯状部21Aと同様に、中間部に形成された1つの凸状湾曲部211を含む。但し、帯状部21Eにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212cは、湾曲形状ではなく平坦部と角部とを含む形状で形成されている。帯状部21Eが採用される場合も、帯状部21が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0078】
<第6応用例>
次に、
図9を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第6応用例に係る帯状部21Fについて説明する。
図9は、帯状部21Fが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Fからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図9において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図9において、
図1〜8示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0079】
帯状部21Fも、帯状部21Aと同様に、中間部に形成された1つの凸状湾曲部211と湾曲した両端部212dとを含む。但し、帯状部21Fにおけるその両隣の切れ目無し部3と連なる両端部212dは、凸状湾曲部211からその内側へくびれて湾曲している。
【0080】
帯状部21Fが採用されれば、隣り合う切れ目無し部3の間隔を広げることなく、凸状湾曲部211を曲げ応力の分散に有効な比較的大きな幅で形成することができる。
【0081】
<第7応用例>
次に、
図10を参照しつつ、電磁シールド部材1に適用可能な第7応用例に係る帯状部21Gについて説明する。
図10は、帯状部21Gが電磁シールド部材1に適用された場合における帯状部21Gからその両隣の切れ目無し部3に亘る部分の断面図である。
図10において、電磁シールド部材1によって囲まれる電線9が仮想線で描かれている。さらに、
図10において、
図1〜9示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0082】
帯状部21Gにおいては、その両隣の切れ目無し部3と連なる両端部が、切れ目形成部2の外周面側へ凸状に湾曲した凸状湾曲部211aを成している。さらに、帯状部21Gにおける両端の凸状湾曲部211aの間の部分は、切れ目形成部2の内周面側へ窪んで湾曲した凹状中間部214を成している。
【0083】
帯状部21Gが採用されれば、凸状湾曲部211aと凹状中間部214との高低差を曲げ応力の分散のために必要な高低差で形成しつつ、切れ目形成部2の外径(凸状湾曲部211aの位置の外径)と切れ目無し部3の外径との差を小さくすることができる。
【0084】
<その他の応用例>
電磁シールド部材1において、切れ目形成部2ごとの複数の切れ目20は、周方向の位置が一致するように並んで形成されている。しかしながら、切れ目無し部3を介して隣り合う2つの切れ目形成部2の一方における複数の切れ目20と他方における複数の切れ目20とが、周方向における異なる位置に形成されていることも考えられる。
【0085】
また、
図3,7,8が示す帯状部21,21D,21Eにおいて、両端部212a,212b,212cが、
図9が示す帯状部21Fの両端部212dと同様に、凸状湾曲部211からその内側へくびれて形成されていることも考えられる。
【0086】
また、
図6が示す帯状部21Cにおいて、両端部212bの一方のみが、
図5が示す帯状部21Bの両端部212aの一方と同様に、内周面側へ窪んでいない湾曲形状で形成されていることも考えられる。
【0087】
また、電磁シールド部材1が、金属の板材が筒状に曲げられた構造を有するのではなく、予め筒状に成形されたシームレスの筒体であることも考えられる。
【0088】
なお、本発明に係る電磁シールド部材は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態および各応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態および各応用例を適宜、変形するまたは一部を省略することによって構成されることも可能である。