(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-162639(P2015-162639A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】半導体基板へのマイクロホール形成方法、半導体装置及び半導体装置の製造装置。
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20150811BHJP
【FI】
H01L21/306 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-38423(P2014-38423)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】594056384
【氏名又は名称】小林 光
(72)【発明者】
【氏名】小林 光
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA09
5F043BB01
5F043BB02
5F043BB03
5F043BB04
5F043DD30
(57)【要約】
【課題】 化学的構造転写法によりシリコン基板(Siウェハ)表面に、マイクロホールを形成する。
【解決手段】 白金針を転写用部材として、フッ化水素酸(HF)と過酸化水素酸(H
2O
2)との混合溶液内でシリコン基板上に接触ないし接近させて同シリコン基板面の垂直方向に移動させながら、毎秒50nmのエッチング速度で同シリコン基板に、直径約26μm、深さ約207μmの高アスペクト比のマイクロホールが形成可能であった。このマイクロホールを利用すると、マイクロホール内に所定の導電体を配設して、多層の機能素子間の層間電気接続による立体配線構造が実現可能となり、半導体デバイスの多層化、高集積化、小型化を一段と向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒機能を有する第1の金属による転写用部材の針状体を、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中でシリコン基板上に接触ないし接近させて移動させながら、前記シリコン基板の表面部からマイクロホールを形成する半導体基板へのマイクロホール形成方法。
【請求項2】
第1の金属が白金(Pt),パラジウム(Pd),金(Au),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir)及びこれらを含む他の金属との合金の群から選ばれる請求項1に記載の半導体基板へのマイクロホール形成方法。
【請求項3】
シリコン基板が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非結晶性シリコン、疑似単結晶シリコンおよびシリコン化合物半導体の群から選ばれる請求項1〜2の一つに記載の半導体基板へのマイクロホール形成方法。
【請求項4】
半導体基板に、触媒機能を有する第1の金属による転写用部材の針状体を上下動させながら化学的構造転写してマイクロホール形成した半導体装置
【請求項5】
半導体基板に、触媒機能を有する第1の金属による転写用部材の針状体を上下動させながら化学的構造転写してマイクロホールを形成する工程をそなえた半導体装置の製造装置。
【請求項6】
針状体を白金とイリジウムとの合金を用いることを特徴とする請求項1〜請求項5の一つに記載のマイクロホール形成方法、半導体装置、もしくは半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板へ表面からのマイクロホール形成方法 並びにマイクロホールを備えた半導体装置及び半導体装置の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板(Siウェハ)に対して、白金等の触媒金属の微細粒子が共存するフッ化水素酸・過酸化水素水(HF・H
2O
2)混合溶液に作用させると、Siウェハの表面に、上記触媒金属の存在によって、開孔及びその開孔周辺での微細な多孔質層が形成されること、そして、この技術を太陽電池の受光面に適用することにより、光反射率を低減させて、太陽電池の変換効率を向上させることの可能なことが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、一方で、上述の従来技術では、その処理後に、上記溶液中の白金等の触媒金属がSiウェハの表面に付着・残存したままの場合、それが、例えば半導体表面のキャリア特性の低下要因となる懸念があり、かかる要因の影響をなくすことを含め、太陽電池の性能向上には解決すべき課題がある。
【0004】
本願発明者は、先に、白金メッシュ等をローラーに装着して用いて、シリコン基板を酸化しかつ溶解し得る溶液、例えば上述のフッ化水素酸・過酸化水素水(HF・H
2O
2)混合溶液等の処理溶液中で、上記白金メッシュ等を処理対象のシリコン基板に対向配置して接触乃至近接させたとき、同白金メッシュ等が、その表面形状を処理対象のシリコン基板表面の広い面積において、酸化と溶解との反応における触媒作用をなして、短時間に、そのシリコン基板表面を微細なナノクリスタル構造層に作り替える,転写用部材となること、すなわち、同白金メッシュ等を転写用部材として利用する技術(以下、この種の技術を化学的構造転写法と称する)を提示し、それにより、シリコン基板を低反射光特性の表面になして、高い光電変換性能の太陽電池を製造することを提案している(特許文献2)。
【0005】
また、本願発明者は、転写用部材の形状として、メッシュに限らず、貫通孔及び/又は非貫通孔が形成された触媒材、アイランド状の触媒材あるいは平板状の触媒材を用い得ること、さらに、上述の処理溶液中に1%以下の銀イオンなど少量の金属イオンが含まれていてもよいことを提示した(特許文献3)。
【0006】
また、本願発明者は、フッ化水素酸・過酸化水素水(HF・H
2O
2)混合溶液中で白金メッシュとシリコン基板とを接触乃至近接するだけで、白金メッシュのパターンがシリコン基板に転写される化学的転写法という技術を開発した。この反応では、接触させる白金メッシュの形状にシリコン基板がエッチングされるだけでなく、シリコン表面にシリコンのナノクリスタル層が形成される。シリコンナノクリスタル層については、シリコン表面に150〜200nmの厚さで形成することで2%以下の反射率を示す極低反射表面の形成が可能なことから、極低反射表面を有するシリコン太陽電池を作製し、極めて高い光電流密度(AM1.5 100mA/cm
2 照射下40mA/cm
2以上)と、変換効率17.6%を実現している。
【0007】
かかる化学的構造転写法を用いる場合においても、極低反射率を持ったシリコン基板表面を、迅速、確実に形成すること、並びにそのシリコン基板表面部におけるキャリア特性を安定に維持すること、また、それらを実現するための方策、手法として、上述の転写用部材の形状、構造、製作手法等には、別の利用、応用が見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005‐183505号公報
【特許文献2】国際特許公開:WO2011/099594
【特許文献3】国際特許公開:WO2013/024746
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、触媒金属の白金等を、シリコン基板を酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で、シリコン基板に近接乃至接触させたときの,同シリコン基板の表面反応(エッチング)により、白金等の触媒金属針の形状をシリコン基板へ転写して、シリコン基板へ高アスペクト比のマイクロホールを作製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、白金等の触媒金属針によるシリコン基板への開孔形成についても検討を行い、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で、上記白金等の触媒金属針をシリコン基板に近接乃至接触させて、その針状形態を転写して、シリコン基板へ高アスペクト比の開孔、いわゆるマイクロホールを作製することである。
【0011】
本発明で、上記白金等の触媒金属針には、白金(Pt),銀(Ag),パラジウム(Pd),金(Au),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir)及びこれらを含む他の金属との合金の群から選ばれる。また、上記触媒金属針は、針状表面に白金(Pt),銀(Ag),パラジウム(Pd),金(Au),ロジウム(Rh)の少なくとも1つが付着した針状剛体で置き換えることも可能である。
【0012】
なお、上述のシリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液は、例えば、50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)水と30wt%濃度の過酸化水素水(H
2O
2)とを適宜な体積比で混合したフッ化水素酸・過酸化水素水の混合溶液(HF+H
2O
2の溶液)が用いられる。
【0013】
転写用部材に、触媒金属針として,上述の白金等の金属針を用いる場合、白金(Pt)とイリジウム(Ir)との合金が適度の剛性があり適当である。
【0014】
また、転写用部材は、形成に際して、前記第1の金属の白金でなる転写用部材を第2の金属としての銀(Ag)を所定適量溶解させた溶液中に浸漬して引揚げることで、第1の金属の白金の表面に第2の金属を微量付着させたものを利用することができる。
【0015】
本発明は、シリコン基板として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非結晶性シリコン、疑似単結晶シリコンおよびシリコン化合物半導体(シリコンカーバイト、シリコンゲルマニウム等を含む)から選ばれるシリコン基材を選択的に使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、触媒金属の白金等の針を用いた化学的構造転写法により、シリコン基板へ高アスペクト比のマイクロホールを作製することができ、このマイクロホール内に導電体を配設して利用することで、多層の機能素子間の層間電気接続による立体配線構造が実現可能となり、半導体デバイスの多層化、高集積化、小型化を一段と向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の実施形態によるシリコン基板表面のSEM図である。
【
図3】本発明の実施例によるシリコン基板断面のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
つぎに、本発明を、実施の形態である各実施例により、図面を参照して詳細に述べる。
【0019】
白金等の針としては、一定強度の剛性を持つように、イリジウム(Ir)20wt%と白金(Pt)80wt%との合金細線で、
図1のSEM像(写真)による側面図に示したように、その先端部を尖らせた針状体に形成して用い、化学的転写法により、シリコン基板へ高アスペクト比のマイクロホールを作製することを試みた。
図2にシリコンの表面に形成したマイクロホールのSEM像(写真)による平面図を示し、
図3には同マイクロホールのTEM像による最大部の断面図を示した。
【0020】
本実施例での溶液は、フッ素樹脂のトレーに50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)と30wt%濃度の過酸化水素水(H
2O
2)とを体積比1対1割合で混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液200ミリリットル(mL)を用いた。
【0021】
溶液濃度、シリコン基板の抵抗値、及び触媒金属の針の形状を最適化することで、例えば、2.5mm平方に裁断されたp型比抵抗10Ωcmのシリコン基板面へ、前記イリジウム(Ir)・白金(Pt)の合金針状体を、垂直方向に上下動と順次移動とを繰り返しながら、平均では毎秒50nm(180μ/H)のエッチング速度で移動させて、前記針状体の外形寸法より大き目となる,直径約26μm、深さ207μmの高アスペクト比のマイクロホールを形成することができた。針状体の上下動は形成されるホールに薬液を供給することに有効に作用し、エッチング速度の向上に効果があった。
【0022】
さらに、転写用部材の母体となる針は、イリジウム以外で触媒機能を有する他金属と白金との合金も利用可能であり、その場合、上記他金属は溶液に不溶の金属との合金を用いることが好ましい。
【0023】
処理用溶液の調製にあたり、本実施例の50wt%濃度のフッ化水素(HF)酸と30wt%濃度の過酸化水素(H
2O
2)水とを体積比でフッ化水素酸(HF)水と過酸化水素水(H
2O
2)とを1対1の割合に混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液以外に、前述の実施例1の場合のように、50wt%濃度のフッ化水素(HF)酸と30wt%濃度の過酸化水素(H
2O
2)水とを体積比でフッ化水素酸(HF)水と過酸化水素(H
2O
2)水との比1対3,3対1,5対1,10対1のそれぞれに混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液のいずれかを用いること、或いはフッ化水素酸と過酸化水素水との混合比を適宜変えて利用することも可能である。
【0024】
また、溶液中に1ppm程度の銀(Ag)の微粒子を加えて、エッチング速度を向上させることも考えられる。
【0025】
さらに、本実施例の応用として、前記触媒金属の針を多数用いて、必要なマイクロホールを同時形成することも可能である。
【0026】
また、大面積の接触体を用いて、半導体のウェハの大面積を同時にエッチングして、その全域で薄膜化を行うことも可能である。
【0027】
本実施例では、p型シリコン基板を用いたが、n型基板を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、シリコン基板の表面に対して、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液、例えばフッ酸および過酸化水素水の混合の処理溶液中で転写用部材の表面で触媒金属を作用させて、または触媒機能を有する第1の金属による転写用部材を、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中に微量の触媒機能を有する第2の金属を含ませた,処理溶液中でシリコン基板上に接触ないし接近させることにより、上記シリコン基板の表面に高アスペクト比のマイクロホールを形成することを含み、また、このようなマイクロホールを多数形成して、そのホールに電極を埋め込んで利用する貫通電極を有する半導体装置に利用することができる。また、大面積の触媒体で半導体基板を同時にエッチングして、半導体基板の薄膜化に利用することも可能である。
【0029】
また、このマイクロホールを利用すると、マイクロホール内に所定の導電体を配設して、多層の機能素子間の層間電気接続による立体配線構造が実現可能となり、半導体デバイスの多層化、高集積化を一段と向上させることができる。