特開2015-162916(P2015-162916A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000003
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000004
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000005
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000006
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000007
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000008
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000009
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000010
  • 特開2015162916-プロテクタ及び電線付モジュール 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-162916(P2015-162916A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】プロテクタ及び電線付モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20150811BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   H02G3/04 J
   H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-35055(P2014-35055)
(22)【出願日】2014年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】上里 学
【テーマコード(参考)】
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5G309AA09
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD06
5G357DE08
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、プロテクタにおける部分同士を強固に連結する技術を提供する。
【解決手段】プロテクタ10が備える収容部13は、中空板材20で形成され、電線束9が配置される配線空間9Sを形成している。また、プロテクタ10が備える挿入部17は、収容部13における一方の側板部11に設けられており、収容部13における他方の側板部11に形成された貫通孔19に挿入されており、中空板材20で形成されている。そして、挿入部17の厚さW11が、貫通孔19の開口幅W21よりも大きくなっている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を保護するプロテクタであって、
一対の板状部と、前記一対の板状部の間に介在する介在部とで構成される中空板材で形成されており、前記電線が配置される配線空間を形成する収容部と、
前記収容部における第1部分に設けられ、前記収容部における前記第1部分とは異なる第2部分に形成された貫通孔に挿入された、前記中空板材で形成されている挿入部と、
を備え、
前記挿入部の厚さが、貫通孔の開口幅よりも大きい、プロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタにおいて、
前記挿入部は、前記第1部分における縁部よりも内側の部分において、基端部を除く部分が切断され、かつ、前記基端部において折り曲げられることによって前記第1部分から起立している、プロテクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロテクタにおいて、
前記挿入部の側部には、前記挿入部の挿入方向に直交する幅方向に凹む凹部が形成されている、プロテクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロテクタにおいて、
前記収容部が、筒状を成している、プロテクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプロテクタにおいて、
前記挿入部が、前記中空板材を複数重ねられて構成されている、プロテクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプロテクタにおいて、
前記中空板材が、プラスチックで形成されている、プロテクタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロテクタと、
前記プロテクタに収容されている少なくとも1本以上の電線と、
を備える、電線付モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロテクタ及び電線付モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等におけるワイヤーハーネスには、当該ワイヤーハーネスに含まれる電線をその配設経路に応じて経路規制すると共に保護するために、保護部材が取付けられることがある。
【0003】
このような保護部材の一例として、特許文献1では、長尺U字溝体のプロテクタ本体に、蓋体を設けたプロテクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−154324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプロテクタにおいては、蓋体の端部が、電線を収容するプロテクタ本体に設けられた閉鎖ロック部に固定されている。詳細には、閉鎖ロック部は、開口部が弾性変形することによって、蓋体端部に形成された長尺状の突部を内側に収納し、収納後に開口部が狭まることで、突部を保持する。このようにして、特許文献1に記載のプロテクタにおける異なる部分(蓋体の突部とプロテクタ本体の閉鎖ロック部)が連結される。
【0006】
又、電線収容部が複数の部材で構成されている場合には、これらの部材を連結する必要がある。部材同士を連結する手段としては、接着剤などを用いることが考えられるが、材料費や工程数が増えてしまう。また、連結手段として、特許文献1に記載の閉鎖ロック部のように、互いに嵌合することで係止し合うロック機構を設けることも考えられるが、加工コストが高くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造で、プロテクタにおける部分同士を強固に連結する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、電線を保護するプロテクタである。第1の態様に係るプロテクタは、一対の板状部と、前記一対の板状部の間に介在する介在部とで構成される中空板材で形成されており、前記電線が配置される配線空間を形成する収容部と、前記収容部における第1部分に設けられ、前記収容部における前記第1部分とは異なる第2部分に形成された貫通孔に挿入された、前記中空板材で形成されている挿入部と、を備える。前記挿入部の厚さが、貫通孔の開口幅よりも大きい。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様に係るプロテクタの一態様である。第2の態様に係るプロテクタにおいて、前記挿入部は、前記第1部分における縁部よりも内側の部分において、基端部を除く部分が切断され、かつ、前記基端部において折り曲げられることによって前記第1部分から起立している。
【0010】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係るプロテクタの一態様である。第3の態様に係るプロテクタにおいて、前記挿入部の側部には、前記挿入部の挿入方向に直交する幅方向に凹む凹部が形成されている。
【0011】
また、第4の態様は、第1から第3までの態様に係るプロテクタの一態様である。第4の態様に係るプロテクタにおいて、前記収容部が、筒状を成している。
【0012】
また、第5の態様は、第1から第4までの態様に係るプロテクタの一態様である。第5の態様に係るプロテクタにおいて、前記挿入部が、前記中空板材を複数重ねられて構成されている。
【0013】
また、第6の態様は、第1から第5までの態様に係るプロテクタの一態様である。第6の態様に係るプロテクタにおいて、前記中空板材が、プラスチックで形成されている。
【0014】
また、第7の態様は電線付モジュールである。第7の態様に係る電線付モジュールは、第1から第6までの態様のいずれか1態様に係るプロテクタと、前記プロテクタに収容されている少なくとも1本以上の電線と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係るプロテクタによると、挿入部が厚さ方向に押されて貫通孔に挿入された後、挿入部に復元力が働く。これによって、挿入部が貫通孔から抜け難くなる。このため、収容部における第1部分と第2部分の連結を、簡易な構成で実現することができる。
【0016】
第2の態様に係るプロテクタによると、廃棄部分を発生させることなく、挿入部を形成することができる。
【0017】
第3の態様に係るプロテクタによると、挿入部の側部に凹部が形成されていることによって、挿入部を貫通孔から抜け難くすることができる。
【0018】
第4の態様に係るプロテクタによると、全周囲から電線を保護することができる。
【0019】
第5の態様によると、中空板材が複数重ねられることによって、挿入部を頑強に構成することができる。
【0020】
第6の態様に係るプロテクタによると、収容部をプラスチック製の中空板材で形成することによって、強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係るプロテクタの斜視図である。
図2】第1の例に係る中空板材の部分切欠き斜視図である。
図3】第2の例に係る中空板材の部分切欠き斜視図である。
図4】第3の例に係る中空板材の部分切欠き斜視図である。
図5】第1実施形態に係るロック機構を拡大して示す部分斜視図である。
図6図1に示されるVI−VI位置から見たプロテクタの断面図である。
図7】挿入部が貫通孔に挿入される前のロック機構を示す部分断面図である。
図8】第1実施形態に係る挿入部の部分断面図である。
図9】第2実施形態に係るロック機構を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化されて図示されている場合がある。
【0023】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプロテクタ10の斜視図である。プロテクタ10は、後述するように、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材を、筒状に折り曲げることよって形成されている。
【0024】
中空板材は、複数の板状部材が、中空構造を介して間隙を設けて配置されているため、曲がり難い。また、中空構造を形成する構造体によって、中空板材の強度は優れたものとなっている。さらに、中空板材は、中空構造を有するため、強度の割に比較的軽量である。また、中空板材に使用される材料も、強度の割に少ない。このため、材料費を抑えることができる。
【0025】
プロテクタ10に、少なくとも1本の電線を含む電線束9が収容されることによって、電線モジュールが構成される。プロテクタ10は、電線束9を外部(例えば、電線束9の配索経路の周辺にある部材のエッジ部分)から保護する役割、電線束9を所定の配線経路に沿って規制する役割、あるいは、電線束9の断面形状を配線経路における経路スペースに応じた形状に維持する役割等を果たす。
【0026】
<中空板材>
ここで、中空板材の構成について説明する。図2は、第1の例に係る中空板材20の部分切欠き斜視図である。
【0027】
中空板材20は、一対の板状部21,板状部23と、当該一対の板状部21,23の間に挟み込まれて介在する介在部25とを備えている。
【0028】
板状部21,23および介在部25の材質は、特に限定されないが、例えば、PP(ポリプロピレン)等のプラスチック樹脂、紙、又は、これらの組み合わせ等が考えられる。板状部21,23および介在部25のうち少なくとも1つが紙によって形成される場合には、その表面に撥水処理等が施されることが好ましい。
【0029】
板状部21,23は、平板状に形成されている。介在部25は、板状部21,23の双方に連結されている。すなわち、板状部21,23が、介在部25を介して、所定の間隔をあけた状態で連結されている。
【0030】
介在部25は、凹凸形状を呈する板状に形成された部材である。かかる介在部25が、板状部21,23の間に挟み込まれた状態で、それぞれの内向き面に接合されている。板状部21,23及び介在部25の接合は、例えば、接着剤、粘着剤等によって行われる。これによって、介在部25が呈する凹凸形状に応じた中空構造が、一対の板状部21,23の間に形成される。
【0031】
介在部25は、山部27aと谷部27bとが波状に連続する形状に形成されている。山部27aの延在方向と谷部27bの延在方向とは、平行な位置関係にあり、従って、介在部25を平面視すると、複数の山部27aと複数の谷部27bとが交互に並列状に形成された構成とされている。山部27aの頂部と谷部27bの底部とは、湾曲していてもよいし、所定の角度をなして曲がっていてもよい。
【0032】
そして、介在部25が板状部21,23の間に挟み込まれ、谷部27bの底部の下面と板状部21とが接合されると共に、山部27aの頂部の上面と板状部23とが接合されている。
【0033】
このような中空板材20は、板状部21,23が間隔をあけて、介在部25によって連結されているため、曲がり難い。また、板状部21,23間に介在部25が介在しているため、当該介在部25によっても中空板材20が曲がり難くかつ凹み難いように補強される。特に、本例では、山部27a及び谷部27bの延在方向において、中空板材が曲がり難くなっている。このため、本中空板材20は、強度的に優れる。
【0034】
また、中空板材20の板状部21,23の間に中空構造が形成されている分、プロテクタ10の軽量化及び材料費の低減を図ることもできる。
【0035】
上記中空板材20の一製造例について説明しておく。
【0036】
介在部25は、例えば、平板状の部材を、凹凸面を有するプレス型の間に挟み込むことで形成することができる。例えば、帯状をなす平板状の部材を所定の搬送路に沿って連続的に供給すると共に、当該搬送路に沿って一対のローラを配設する。この一対のローラの表面には、凹凸形状を形成しておく。そして、帯状をなす平板状の部材を所定の搬送路に沿って搬送しつつ、当該平板状の部材を一対のローラで連続的に挟み込んでいくことで、介在部25を連続的に形成することができる。
【0037】
また、上記所定の搬送路に沿って、一対のローラの下流側に、一対の帯状の板状部21,23を連続的に供給して、当該一対の帯状の板状部21,23の間に介在部25を順次挟み込んで接着剤等で接合していく。これによって、中空板材20を連続的に製造することができる。
【0038】
なお、中空板材20に、電磁シールド部材が設けられていてもよい。電磁シールド部材としては、金属箔(アルミ箔)等を用いることができる。また、中空板材20に電磁シールド部材を取付ける構成としては、接着剤を用いた貼り合せ構成等を採用することができる。
【0039】
中空板材20の少なくとも一部に電磁シールド部材を設けることで、中空板材20によって形成されるプロテクタ内に収容される電線束9を、電磁的に遮蔽することができる。なお、電磁シールド部材は、中空板材20の一方主面に設けられていれば、ワイヤーハーネスに対する電磁シールドを行える。
【0040】
図3は、第2の例に係る中空板材20Aの部分切欠き斜視図である。中空板材20Aは、介在部25に代えて介在部25Aが用いられている点で、中空板材20とは異なっている。
【0041】
すなわち、介在部25Aは、凹凸形状を呈する板状に形成された部材であり、具体的には、介在部25Aの平面視において点在するように複数の突部29が形成された構成とされている。ここでは、介在部25Aを平面視した状態において、複数の突部29が縦横に一定間隔で並ぶように形成されている。
【0042】
突部29は、介在部25Aのうち平板状に延在する基板部31から一方主面側に突出するように形成されており、筒の上端部が閉じられた形状を呈している。ここでは、突部29は、上方に向けて徐々に狭まる形状、即ち、錐台形状に形成されている。突部29は、円錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台の角を丸めた形状に形成されていてもよい。
【0043】
そして、介在部25Aが板状部21,23の間に挟み込まれ、基板部31の下面が板状部21に接合され、突部29の頂部が上側の板状部23に接合されている。もちろん、基板部31の下面が板状部23に接合され、突部29の頂部が板状部21に接合されていてもよい。
【0044】
このような中空板材20Aによると、上記中空板材20と同様に、強度的に優れ、かつ、軽量化を図ることができる。特に、中空板材20Aは,点在する複数の突部29を備えているため、曲がり難さの方向性を無くすことができる。
【0045】
図4は、第3の例に係る中空板材20Bの部分切欠き斜視図である。
【0046】
この中空板材20Bは、樹脂材料によって形成された部材であり、プロテクタ10の内側に面する板状部21Bと、プロテクタ10の外側に面する板状部23Bと、板状部21B,23Bの間に介在する複数の介在部25Bとを備えている。
【0047】
図4に示されるように、中空板材20Bは、はしご状断面を有する形状に形成されている。具体的には、板状部21B,23Bは、平板状に形成されている。そして、板状部21B,23Bが、介在部25Bを介して間隔をあけた状態で連結されている。
【0048】
そして、板状部21B,23Bの間に、複数の介在部25Bが相互間に間隔をあけた並列状態で設けられている。
【0049】
各介在部25Bは、細長い板状に形成されており、両側の板状部21B,23Bに対して直交する姿勢で立設されている。板状部21B,23B及び介在部25Bは、一体成型されている。
【0050】
このため、中空板材20Bを、介在部25Bの延在方向に対して直交する面で切断すると、その切り口が、一対の板状部21B,板状部23Bの間に複数の介在部25Bが延在するはしご状断面となっている。
【0051】
このような中空板材20Bは、例えば、はしご状断面に応じた押出孔から樹脂を押出す押出成型装置によって、連続的に製造することができる。このため、中空板材20Bは、低コストで製造することが容易となっている。
【0052】
このような中空板材20Bによっても、上記中空板材20と同様に、強度的に優れたものとすることができ、かつ、軽量化を図ることができる。また、このような中空板材20Bは、樹脂材料の押出成型によって効率よく製造できるというメリットもある。
【0053】
なお、複数の介在部25Bは、板状部21B,23B間において、例えば、三角柱等の多角柱状の中空形状を形成するものであってもよい。特に、ハニカム構造を形成するものであれば、中空板材20Bの強度を高めることができる。
【0054】
なお、中空板材20,20A,20Bの厚み寸法は、1.5mm〜15.0mm程度であることが好ましい。
【0055】
また、中空板材20、20Bのように、空間が並列状に形成されたタイプについては、並列状に形成された空間を仕切る部分のピッチが、4mm〜20mm程度であることが好ましい。
【0056】
さらに、中空板材20Aのように、点在する突部によって中空構造が形成されているタイプでは、各突部のピッチが、2mm〜6mm程度であることが好ましい。
【0057】
以上が、中空板材の説明である。なお、以下の説明においては、プロテクタ10は、第1の例に係る中空板材20で構成されているものとする。しかしながら、他の中空板材20A,20Bが採用された場合であっても、中空板材20を採用したときと同様に、プロテクタ10を構成できる。
【0058】
図1に戻って、プロテクタ10は、電線束9を収容可能な筒状体となるように、1枚の中空板材20を折り曲げられことによって構成されている。このため、プロテクタ10は、その周方向に沿って、複数の側板部11が、角度をなすようにして連結されることによって、電線束9が配置される配線空間9Sに面する配線部を備えた収容部13を構成している。
【0059】
詳細には、本実施形態に係るプロテクタ10においては、1つの中空板材が、軸心方向に沿う4箇所で折り曲げられており、これによって、5つの側板部11が形成されている。そして、周方向に隣り合う2つの側板部11,11が90度を成すように折り曲げられ、かつ、5つの側板部11のうち両端にある側板部11,11が、重ねられた状態で連結されている。これによって、プロテクタ10は、横断面が略正方形となる筒状体に構成されている。プロテクタ10を筒状に構成することによって、収容されている電線束9を、全周囲の方向から保護することが可能となっている。
【0060】
図5は、第1実施形態に係るロック機構15を拡大して示す部分斜視図である。また、図6は、図1に示されるVI−VI位置から見たプロテクタ10の断面図である。図5及び図6に示されるように、側板部11,11の連結は、ロック機構15で構成されている。ロック機構15は、前述の互いに連結される2つの側板部11のうち、一方の側板部11(第1部分)に設けられた挿入部17、及び、他方の側板部11(第2部分)に形成された貫通孔19との組み合わせによって構成されている。
【0061】
貫通孔19は、一方向(ここでは、プロテクタ10の軸心方向(長手方向))に延びる細長いスリット状の孔であり、側板部11を貫通するように形成されている。また、挿入部17は、貫通孔19の延びる方向が長手方向となる板状部分となっている。
【0062】
図5及び図6に示されるように、挿入部17は、一方の側板部11の一部として構成されている。詳細には、挿入部17は、一方の側板部11(第1部分)における縁部111よりも内側の部分において、挿入部17の基端部41となる部分を除く位置で切断して形成された部分であって、基端部41で折り曲げられることによって、一方の側板部11(第1部分)から起立する部分となっている。このため、挿入部17が形成された一方の側板部11には、挿入部17と同じ形状の孔43が形成されている。また、貫通孔19は、他方の側板部11における、一方の側板部11の挿入部17に対応する位置(プロテクタ10における内外方向に重なる位置)に設けられている。このようにして形成された挿入部17を貫通孔19に挿入することによって、一方の側板部11と他方の側板部11に連結することができる。
【0063】
なお、挿入部17と同形状の挿入部を一方の側板部11の縁部111に形成してもよい。この場合、縁部111を所定形状に切断することで、縁部111に挿入部を形成できるが、廃棄部分が発生してしまう。これに対して、本実施形態に係る挿入部17の場合、側板部11を一部切り込むことによって形成できるため、廃棄部分が発生せずに済み、材料費を抑制することができる。
【0064】
図7は、挿入部17が貫通孔19に挿入される前のロック機構15を示す部分断面図である。図7に示されるように、挿入部17の厚さW11は、貫通孔19の開口幅W21よりも大きくなっている。このような挿入部17を、貫通孔19に挿入する方法について説明する。
【0065】
図8は、第1実施形態に係る挿入部17の部分断面図である。図8に示されるように、挿入部17は、一対の板状部21,23及び介在部25を有する中空板材20で構成されている。このため、一対の板状部21,23を互いに接近する方向に押圧することで、挿入部17の厚みを比較的容易に小さくする(すなわち、挿入部17を薄くする)ことができる。このため、挿入部17の厚さを薄くして、貫通孔19の開口幅W21よりも一時的に小さくすることによって、挿入部17を貫通孔19に挿入することが可能となる。
【0066】
また、挿入された後の挿入部17には、元の形状に戻ろうとする復元力が作用する。このため、挿入部17が厚み方向に広がることで、挿入部17の外周面が貫通孔19の内周面に押し当てられることとなる。これによって、挿入部17が貫通孔19から抜け難くなる。このように、中空板材20で構成される挿入部17を含むロック機構15を採用することによって、収容部13における一方の側板部11(第1部分)と他方の側板部11(第2部分)の強固な連結を、簡易な構造で実現することができる。
【0067】
また、図5に示されるように、挿入部17の両側の側部45には、貫通孔19に対する挿入部17の挿入方向D1(すなわち、挿入部17が起立する方向)に直交する幅方向D2に凹む凹部47が形成されている。このため、挿入部17には、凹部47から先端部49にかけて出っ張る部分が形成されている。したがって、挿入部17の側部45が側板部11に引っ掛かりやすいため、挿入部17が貫通孔19から抜け難くなっている。
【0068】
また、図5に示されるように、挿入部17は、その先端部49から基端部41に向かうに連れて、幅方向D2の長さが次第に長くなるように形成されている。このため、挿入部17の先端部49を貫通孔19に挿入することが容易となっている。
【0069】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同符号またはアルファベットを追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0070】
図9は、第2実施形態に係るロック機構15Aを示す部分断面図である。ロック機構15Aは、一方の側板部11に形成された挿入部17Aと、他方の側板部11に形成された貫通孔19Aによって構成されている。
【0071】
詳細には、挿入部17Aは、挿入部17と同様に、中空板材20である側板部11の部分が切り込まれ、基端部41Aで折り曲げることで側板部11から起立している。ただし、挿入部17Aは、二重に折り畳まれることによって、中空板材20が二重に重ねられてなる板状部分とされている。
【0072】
また、挿入部17Aの厚さW11Aは、貫通孔19Aの開口幅W21Aよりも大きくなっている。このため、挿入部17と同様に、挿入部17Aも貫通孔19Aに圧入されることによって、貫通孔19Aから抜け難くなっている。
【0073】
このようなロック機構15Aを採用した場合においても、側板部11,11の連結を簡易な構造で実現することができる。また、複数の中空板材20を重ねることによって、挿入部17Aを頑強に構成することができる。このため、挿入部17Aの形状を安定化させることができる。
【0074】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態に係る収容部13は、1つの中空板材20を折り曲げることによって構成されている。しかしながら、収容部が、複数の部材を周方向に連結させていくことによって筒状に形成されていてもよい。この場合において、一方に形成された挿入部17に、他方に形成された貫通孔19に挿入することによって、2つの部材の連結を実現してもよい。
【0076】
また、上記実施形態に係る収容部13は、筒状に形成されているが、必ずしも筒状でなくてもよい。例えば、収容部が、長手方向(配線方向)に沿って開口することで、内部が開放されている断面略U字状のプロテクタなども想定される。具体的には、プロテクタを、長尺状の底壁部材と、当該底壁部材の両側において起立する一対の側壁部材とで構成することが考えられる。この場合において、底壁部材と一対の側壁部材間の連結を、ロック機構15,15Aによって実現することができる。
【0077】
また、電線の延びる方向に沿って複数の部材を連結することによって、収容部を構成することも考えられる。この場合においても、2つの部材のうち、一方の部材に挿入部17を設け、他方の部材に貫通孔19を設けることによって、2つの部材を簡易な構造で連結することができる。
【0078】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 プロテクタ
11 側板部
13 収容部
15,15A ロック機構
17,17A 挿入部
19,19A 貫通孔
20,20A,20B 中空板材
21,21B,23,23B 板状部
25,25A,25B 介在部
41,41A 基端部
45 側部
47 凹部
49 先端部
9 電線束
9S 配線空間
111 縁部
W11,W11A 厚さ
W21,W21A 開口幅
D1 挿入方向
D2 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9