(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-163011(P2015-163011A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】アクティブフィルタ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/01 20060101AFI20150811BHJP
H02M 1/42 20070101ALI20150811BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
H02J3/01 B
H02M1/42
H02M7/12 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-38025(P2014-38025)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏
(72)【発明者】
【氏名】豊田 晃久
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英明
【テーマコード(参考)】
5G066
5H006
5H740
【Fターム(参考)】
5G066EA03
5H006AA02
5H006CA01
5H006CB08
5H006DA02
5H006DB01
5H006DC02
5H740AA01
5H740BA11
5H740BB02
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740NN03
(57)【要約】
【課題】直流コンデンサの2次の電圧脈動を抑制することにより、直流コンデンサの静電容量を低減し小型化を図ることができるアクティブフィルタを提供する。
【解決手段】
負荷12に電力を供給する電源11に接続され、負荷12に供給される負荷電流i
Lを検出し、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhを打ち消す補償電流i
Fを電源11側に供給するアクティブフィルタにおいて、補償電流i
Fの電流源としての直流コンデンサC
dと、3次の高調波電流補償に伴い直流コンデンサC
dに生じる2次の電圧脈動を抑制する逆相の基本波電流
〜i
F−1を電源系統に流すための制御部4とを具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷(12)に電力を供給する電源(11)に接続され、負荷(12)に供給される負荷電流(iL)を検出し、負荷電流(iL)に含まれる高調波電流(iLh)を打ち消す補償電流(iF)を電源(11)側に供給するアクティブフィルタにおいて、上記補償電流(iF)の電流源としての直流コンデンサ(Cd)と、3次の高調波電流補償に伴い上記直流コンデンサ(Cd)に生じる2次の電圧脈動を抑制する逆相の基本波電流(〜iF−1)を電源系統に流すための制御部(4)とを具備することを特徴とするアクティブフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷電流に含まれる高調波電流を低減するアクティブフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
図3及び
図4にアクティブフィルタの基本的な構成を示す。アクティブフィルタ1は、電源11から負荷12に供給される負荷電流i
Lを電流検出部2で検知し、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhと逆位相となる補償電流i
Fを供給することで、電源電流i
Sにおける高調波含有率を低減するものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来のアクティブフィルタの制御方法を示すが、このアクティブフィルタでは、負荷電流i
Lをα−β/d−q変換部31によって有効電力成分i
d(1)と無効電力成分i
q(1)とに分離し、LPF(ローパスフィルタ)32によって基本波成分を抽出し、d−q/α−β変換部33によってLPF出力から基本波電流i
Lfを演算、さらにこの基本波電流i
Lfと負荷電流i
Lとを減算して高調波電流i
Lhを算出し、この高調波電流i
Lhに基づき補償電流指令値i
F*を出力している。なお、図示はしていないが、アクティブフィルタには別途、出力電流制御部が設けられており、上記補償電流指令値i
L*に基づく補償電流i
Fを電源11側に供給する。また、補償電流i
Fの電流源として設けられる直流コンデンサC
dの電圧変動を許容範囲内に収めるために、LPF出力の有効電力成分の値を調整するV
d一定制御部を別途設けることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−113460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第n次の高調波電流をアクティブフィルタによって補償する(低減する)と、n−1次の電圧脈動が生じる。
【0006】
負荷12が三相ダイオード整流器である場合、電源電圧が三相平衡であれば、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhは5次、7次成分が支配的であり、通常、4次以下の成分はほとんど含まれない。高調波電流i
Lhを補償することで生じる電圧脈動は、次数が高いほど小さくなる特性を持つことから、この場合の電圧脈動は小さなものに留まり、問題になることは少ない。
【0007】
ところが、電源電圧の不均衡により負荷電流i
Lに3次成分が発生すると、3次成分を補償する際に、直流コンデンサC
dに2次、4次といった低次の電圧脈動が生じる。上記の通り、電圧脈動は次数が高いほど小となる、換言すれば、次数が低いほど大となることから、特に2次の電圧脈動は5次、7次成分を補償した際に生じる電圧脈動よりも大となり、他の次数の電圧脈動のように無視することはできず、過電圧として直流コンデンサC
dに加わることとなっていた。
【0008】
なお、例えば直流コンデンサC
dの静電容量をある一定値以上とすれば、電圧脈動を低減することが可能であるが、この場合、近年の小型化への要望に応えることができない。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、直流コンデンサの2次の電圧脈動を抑制することにより、直流コンデンサの静電容量を低減し小型化を図
ることができるアクティブフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のアクティブフィルタ1は、負荷12に電力を供給する電源11に接続され、負荷12に供給される負荷電流i
Lを検出し、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhを打ち消す補償電流i
Fを電源11側に供給するアクティブフィルタにおいて、上記補償電流i
Fの電流源としての直流コンデンサC
dと、3次の高調波電流補償に伴い上記直流コンデンサC
dに生じる2次の電圧脈動を抑制する逆相の基本波電流
〜i
F−1を電源系統に流すための制御部4とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクティブフィルタでは、負荷電流に含まれる高調波電流を打ち消す補償電流を電源側に供給する構成に加えて、3次の高調波電流補償に伴い直流コンデンサに生じる2次の電圧脈動を抑制する逆相の基本波電流
〜i
F−1を電源系統に流すための制御部を備えていることから、3次の高調波電流を補償した場合に生じる2次の直流コンデンサ電圧脈動を効果的に抑制することができる。そのため、直流コンデンサの静電容量を少なくすることが可能となり、結果、小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアクティブフィルタの制御方式を示すブロック図である。
【
図2】2次の直流コンデンサ脈動を示すグラフであって、(a)が実施例を、(b)が比較例を示す。
【
図3】アクティブフィルタの基本的な設置状態を示すブロック図である。
【
図4】負荷及びアクティブフィルタの基本的な構成を示す回路図である。
【
図5】従来のアクティブフィルタの制御方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のアクティブフィルタ1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明のアクティブフィルタ1は、従来のアクティブフィルタ同様、
図3及び
図4に示すように、負荷12に電力を供給する電源11に接続され、負荷12に供給される負荷電流i
Lを検出部(例えばACCT)2で検出し、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhを打ち消す補償電流i
Fを電源11側に供給するものである。
【0014】
また、制御方法についても、負荷電流i
Lをα−β/d−q変換部31によって有効電力成分i
d(1)と無効電力成分i
q(1)とに分離し、LPF(ローパスフィルタ)32によって基本波成分を抽出し、d−q/α−β変換部33によってLPF出力から基本波電流i
Lfを演算、この基本波電流i
Lfと負荷電流i
Lとを減算して高調波電流i
Lhを算出し、この高調波電流i
Lhに基づいて電流指令値i
F*を出力する点では、従来のアクティブフィルタと同様である。
【0015】
本発明のアクティブフィルタ1の特徴は、次の点にある。すなわち、負荷電流i
Lに含まれる高調波電流i
Lhの逆位相電流を電源系統に流すための制御部(以下、第1制御部と称す)3に加えて、3次の高調波電流補償に伴い直流コンデンサに生じる2次の電圧脈動を抑制する逆相の基本波電流
〜i
F−1を電源系統に流すための制御部(以下、第2制御部と称す)4を具備している点にある。
【0016】
このような構成を採用することにより、高調波電流i
Lhの逆位相電流に加えて、逆相の基本波電流
〜i
F−1が出力されるため、3次の高調波電流i
Lh3を補償した場合に生じる2次の電圧脈動を効果的に抑制することができる。
【0017】
以下、逆相の基本波電流
〜i
F−1によって2次の電圧脈動が抑制される仕組みについて詳細に説明する。
【0018】
第n次の高調波電流を補償した場合に発生する直流コンデンサ電圧の脈動分ν
dnは、電源電圧ν
Sを、線間電圧実効値V
S、周波数f
S=ω/2πの三相平衡正弦波とし、
【数1】
と仮定し、アクティブフィルタ1の各相の補償電流i
Fを、
【数2】
と仮定した場合、式3で表される(ただし、I
Fnは補償電流の第n次成分の実効値、ωは電源の角速度、C
dは直流コンデンサの静電容量、V
dは直流コンデンサ電圧の平均値、φ
Fnは位相である)。
【数3】
【0019】
そして、式3によれば、2次の電圧脈動はn=3、すなわち、3次の高周波電流を補償した場合に生じる(式4参照)。また、n=−1、すなわち、負荷電流
iLの逆相の基本波電流
〜i
F−1を補償した場合にも生じる(式5参照)。
【数4】
【数5】
【0020】
ここで、3次の高調波電流による2次の電圧脈動を打ち消すためには、式6に示すように、補償電流のn=−1の成分の振幅を等しく、位相を逆にすればよい。
【数6】
【0021】
なお、補償電流のn=3の成分は、式7により負荷電流i
Lのn=3の成分によって演算される。
【数7】
【0022】
そこで、3次の高調波電流i
Lh3を抽出すべく、本発明のアクティブフィルタ1においては、
図1に示すように、第2制御部4において、第1制御部3が対象とする角速度ωに対して角速度3ωを対象に、負荷電流i
Lをα−β/d−q変換部41によって有効電力成分i
d(3)と無効電力成分i
q(3)とに分離し、LPF(ローパスフィルタ)42によって3次の高調波電流成分を抽出し、d−q/α−β変換部43によってLPF出力から3次の高調波電流i
Lh3を演算している。そして、d−q/α−β変換部43から出力される3次の高調波電流i
Lh3に基づき、3次の高調波電流補償に伴い直流コンデンサC
dに生じる2次の電圧脈動を式4を用いて算出するとともに、式6から、補償された際、式4で算出された2次の電圧脈動に相当する振幅で且つ逆位相となる2次の電圧脈動を生じる逆相の基本波電流
〜i
F−1(式4で算出された2次の電圧脈動の抑制に必要なn=−1の成分)を算出する(式8参照)。なお、式を用いての演算は演算部44にて行われる。
【数8】
【0023】
そして、式9に示すように、高調波電流の逆位相電流である−i
Lhに、さらに第2制御部4からの逆相の基本波電流
〜i
F−1を加え、これに基づき補償電流指令i
F*を出力する。従って、この補償電流指令i
F*に基づき、図示しない出力電流制御部から電源11側に補償電流i
Fを供給すれば、逆相の基本波電流
〜i
F−1が図示しない出力電流制御部から電源11側に供給され、これにより生じる2次の直流コンデンサ電圧脈動によって、3次の高調波電流を補償することで生じる2次の直流コンデンサ電圧脈動が打ち消され、結果、抑制されるのである。
【数9】
【0024】
次に、
図2に基づいて実験結果を示す。実験は、
図4の回路において、負荷電流i
Lとしてn=3の高調波電流i
Lh3のみを流し、
図1に示す制御方法(実施例)と
図5に示す制御方法(比較例)とで、直流コンデンサ電圧の脈動の大きさを比較した。
【0025】
図2(a)(b)からわかるように、比較例(
図2(b)参照)の場合、およそ50ボルト程度の脈動が見られる。これに対して、実施例(
図2(a)参照)の場合、脈動はほとんど見受けられず、2次の直流コンデンサ電圧脈動を効果的に抑制していることが分かる。なお、実施例の場合、電源系統には逆相電流が流出するが、基本波であるため高調波補償特性に影響を与えることはない。
【0026】
このように、本発明のアクティブフィルタ1においては、3次の高調波電流i
Lh3を補償した場合に生じる2次の電圧脈動を効果的に抑制することができ、結果、直流コンデンサC
dの静電容量の低減を図ることができ、装置の小型化を図ることも可能となる。
【0027】
以上に、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、式4により算出された3次の高調波電流補償に伴う2次の電圧脈動の振幅と、逆相の基本波電流補償に伴う2次の電圧脈動の振幅とを等しくしていたが、必ずしもそうする必要は無く、電源系統への逆相電流の流出を抑えるために、あえて逆相の基本波電流の出力を弱める等の調整を行っても良い。
【符号の説明】
【0028】
1・・アクティブフィルタ、4・・第2制御部、11・・電源、12・・負荷、Cd・・直流コンデンサ、i
F・・補償電流、
〜i
F−1・・逆相の基本波電流、i
L・・負荷電流、i
Lh・・負荷電流の高調波電流、i
Lh3・・負荷電流の3次の高調波電流