【解決手段】 本発明の吸収性物品は、トップシートと、上記トップシートに対向するバックシートと、上記トップシートと上記バックシートとの間に配置され、木材パルプ繊維と高吸収性樹脂とを含む吸収体と、を備えた吸収性物品であって、上記吸収体は、圧搾溝が設けられた上面と、上記上面に対向する底面と、を規定し、上記圧搾溝は、上記底面と上記圧搾溝の最下部との距離が1mm以上であって2mm以下、かつ、上記上面から見た仕上げ幅が1mm以上であって3mm以下となるように設けられたものであることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品100,200,300を示す平面図である。本発明の実施形態では、吸収性物品100,200,300として、たとえば失禁用パッドを例として説明するが、失禁用のライナー、生理用ナプキン、紙おむつ等の他の吸収性物品であってもよい。なお、以下の説明において、吸収性物品100,200,300の長手方向は、吸収性物品100,200,300が着用されたときに着用者の前後にわたる方向となり、吸収性物品100,200,300の幅手方向は、長手方向に対して横又は直交する方向となる。
【0009】
図1ないし
図4において、吸収性物品100、200および300はそれぞれ、肌と当接する側から、液透過性のトップシート20、液拡散性シート30、吸収体40、および液不透過性のバックシート50を備える積層体からなっている。これにより、液拡散性シート30と吸収体40は、トップシート20とバックシート50によって内包された構造となっている。
【0010】
トップシート20は、吸収体40および液拡散性シート30を間にして、バックシート50と対向して配置されている。トップシート20は、たとえばバックシート50とほぼ同じ大きさで形成されている。しかし、これに限定されることはなく、バックシート50よりも小さく形成されていてもよい。トップシート20は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような不織布等の材料によって形成することが好ましい。
【0011】
吸収体40は、
図1に示すように、吸収性物品10の長手方向に延在した帯状をなす。たとえば、
図1において一点鎖線で示すとおり、矩形状となっていてもよいし、または、長手方向の両端において外側へ凸となる円弧状となっているとともに、ほぼ中央の両側は内側へ凸となる円弧状となっていてもよい。しかし、吸収体40の形状としては、このようなものに限定されることはない。吸収体40は、木材パルプと高吸水性樹脂(SAP:Super Absorbent Polymer)とを含む、マット状の部材によって構成されている。木材パルプには、フラッフ化パルプなどが含まれる。吸収体40は、肌当接面側から裏面側に向かって、圧搾溝46を有する。
図1に示すとおり、吸収体40は、長手方向および短手方向の少なくとも一方における側縁領域44と、側縁領域に囲まれた中央領域42と、を有する。
図1において、この中央領域42は破線で囲んで示される。この中央領域42の長手方向の長さは、吸収体40の長手方向の全長に対して、好ましくは60%以上であって90%以下になるように、より好ましくは70%以上であって90%以下になるように規定される。また中央領域42の短手方向の長さは、吸収体40の短手方向の全長に対して、好ましくは60%以上であって90%以下になるように、より好ましくは60%以上であって80%以下となるように規定される。
【0012】
図2ないし
図4において、圧搾溝46は、第1の圧搾溝46a,46c,46eと第2の圧搾溝46b,46d,46fとを含み、第1の圧搾溝46a,46c,46eは中央領域に配され、第2の圧搾溝46b,46d,46fは側縁領域44に配される。すなわち、46a,46c,46eは、吸収体40の短手方向および長手方向の少なくとも一方における、第2の圧搾溝46b,46d,46fよりも中央側に配され、第2の圧搾溝46b,46d,46fは、46a,46c,46eよりも側縁側に配される。
【0013】
図2の吸収体40A、
図3の吸収体40Bおよび
図4の第1の吸収体40aおよび第2の吸収体40b(以下、「吸収体40等」という)は、その厚さ方向において、上下中央領域40TCと、中央領域TCを挟む上下表面領域40TSと、を有する。吸収体40等は、上下中央領域40TCの高吸収性樹脂の含有率のほうが、上下表面領域40TSの高吸収性樹脂の含有率よりも高いものが好ましい。これにより、吸収体40全体における高吸収性樹脂の含有率が略均一になるように、高吸収性樹脂を分布させた場合と比較して、吸収体40の凹凸感が低減され、吸収性物品100,200,300の使用感を向上することができる。吸収体40等は、親水性不織布あるいは木材繊維シートで包まれた状態で形成されている。
図2ないし
図4に含むように、圧搾溝46は上下中央領域40TCを通って、最下部が上下表面領域40TSに配置されてもよい。
【0014】
吸収体40のトップシート20側の上面には液拡散性シート30が設けられている。液拡散性シート30は、吸収体40に接着剤などによって固着されていてもよい。液拡散性シート30は、
図2に示すように吸収体40より若干大きな面積で、吸収体40とほぼ相似形をなすように形成されている。なお、液拡散性シート30は、
図1において図示を省略している。液拡散性シート30は、比較的厚手の親水性の不織布からなり、後に詳述するトップシート20を介して滴下、流入される人体からの液体(たとえば尿)をたとえば長手方向へ輸送、拡散し、液戻りを減少させるものである。なお、液拡散性シート30は、省略されてもよく、その場合には吸収体40は、トップシート20に接着剤などによって固着される。
【0015】
図2ないし
図4に戻り、吸収体40は、トップシート20および/または液拡散性シート30と反対側の面において、バックシート50に接着剤などによって固着されている。バックシート50は、
図1に示すように吸収体40および液拡散性シート30の少なくとも一方よりも、大きな面積でほぼ相似形をなすように形成されている。バックシート50は、上述したように液不透過性を有し、吸収体40に吸収される尿等の液体が下着に漏れないような防水機能を有するようになっている。このようなバックシート50の材料には、たとえば、ポリエチレン等の薄いプラスチックフィルム等が用いられている。
【0016】
トップシート20は、その周辺部においてバックシート50の周辺部と一体に接合されることによって、吸収体40および液拡散性シート30をバックシート50ともに内包するようになっている。
【0017】
なお、トップシート20は、その短手方向の両脇であって、該トップシート20の周辺に近接する部分のそれぞれに長手方向に延在する一対の立体ギャザー80が形成されるようになっている。立体ギャザー80は、トップシート20の上部を立体的に立脚できるように形成された部分で、たとえば尿の横漏れを防止できるようになっている。なお、この立体ギャザー80は、周辺をトップシート20側に折り返したバックシート50によって形成するようにしてもよく、またトップシート20とバックシート50との重ね合せによって形成するようにしてもよい。立体ギャザー80間には、糸ゴムなどのゴム82が配されている。各構成部材は、それぞれ隣接する部分において、接着剤等で適宜相互に接着される。
【0018】
トップシート20および液拡散性シート30の少なくとも一方には、吸収性物品100,200,300の側縁に略沿って延びる表面圧搾溝22が設けられている。この表面圧搾溝22は、吸収体40の中央領域42の上方に設けられることが好ましい。これにより、表面圧搾溝22を介して滴下、流入される人体からの液体(たとえば尿)を吸収体40に良好に輸送および拡散することができる。
【0019】
この表面圧搾溝22は、吸収性物品100、200または300の長手方向に延びる一対の第1の表面圧搾溝22bと、短手方向に延びる一対の第2の表面圧搾溝22aと、を有してもよい。さらに、第1の表面圧搾溝22bは、吸収体の中央領域の長手方向の側縁部に沿って設けられ、第2の表面圧搾溝22aは、吸収体の中央領域の短手方向の側縁部に沿って設けられることが好ましい。
図1に示すように、第1の表面圧搾溝22bは、吸収性物品100、200および300の中央側に向かって凸形状で設けられ、第2の表面圧搾溝22aは、吸収性物品100、200および300の外側に向かって凸形状で設けられてもよい。第1の表面圧搾溝22bおよび第2の表面圧搾溝22aは、例えば、曲線状、直線状、ドット状および格子状などの形状となるように形成される。表面圧搾溝22と、吸収体40に設けられた圧搾溝46とは、平面視において重複しないように設けられてもよいし、重複するように設けられてもよい。
【0020】
本実施形態では、圧搾機60として、エンボスロール60を用いて説明するが、エンボスロール60に限らず、スタンプ型の圧搾機を用いることもできる。
【0021】
次に、本発明の実施形態について、実施形態1ないし実施形態3に分けて、詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図2は、
図1のX−X’線における断面図であって、本発明の実施形態1に係る吸収性物品100を示す断面図である。
【0023】
本実施形態1では、吸収体40として、吸収体40Aを用いる。吸収体40Aには、トップシート20などが設けられた肌当接面側からその裏面側に向かって第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとが設けられている。吸収体40Aの長手方向および短手方向の少なくとも一方において、第1の圧搾溝46aは、第2の圧搾溝46bよりも中央側に設けられる。例えば、
図1および
図2に示すとおり、吸収体40Aの長手方向および短手方向の少なくとも一方において、第1の圧搾溝46aは中央領域42に設けられ、第2の圧搾溝46bは側縁領域44に配されることが好ましい。第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、肌当接面側からその裏面側に向かって、エンボスロール60Aによって吸収体40Aを圧搾することで形成される。実施形態1においては、
図15に示すエンボスロール60であって、
図13に示す断面形態を有するエンボスロール60Aを、エンボスロール60として用いる。
図13は、
図15に示すエンボスロール60の奥行方向(z方向)における断面を示す断面図である。
図7および
図13に示すように、このエンボスロール60Aの突状部62aおよび突状部64aの先端部は、幅W11および幅W12が2mm以上であって4mm以下である。この突状部62aの先端部の幅W11と突状部64aの先端部の幅W12とは、大きさが同じであっても、異なっていてもよい。また、
図8に示すように、第1の圧搾溝46aは、吸収体40Aの圧搾溝46aが設けられた表面に対向する底面と、第1の圧搾溝46aの最下部と、の間の距離L11が1mm以上であって2mm以下になるように設けられている。すなわち、吸収体40Aの底面から1mm乃至2mmは第1の圧搾溝46aが設けられていない。さらにまた、
図8に示すように、第1の圧搾溝46aは、肌当接面側である吸収体40Aの上面側からみて、仕上げ幅D11が1mm以上であって3mm以下になるように設けられている。仕上げ幅D11は、第1の圧搾溝46aの底部の幅である。同様に、
図8に示すように、第2の圧搾溝46bは、吸収体40Aの圧搾溝46aが設けられた表面に対向する底面と、第2の圧搾溝46bの最下部と、の距離L12が2mmより大きくなるように設けられている。すなわち、吸収体40Aの底面から2mmは第2の圧搾溝46bは設けられていない。また、
図8に示すように、第2の圧搾溝46bは、肌当接面側である吸収体40Aの上面側からみて、仕上げ幅D12が1mm以上であって3mm以下になるように設けられている。仕上げ幅D12は、第2の圧搾溝46bの底部の幅である。これにより、実施形態1の吸収性物品は、吸収体が硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有することができる。
【0024】
吸収体40Aに設けられる第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、直線状、曲線状、ドット状または格子状などに、適宜形状を選択して形成される。
【0025】
図8に示すように、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40Aの底面との距離L12が、第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40Aの底面との距離L11よりも大きくなるように設けられている。これにより、吸収体40Aの長手方向および短手方向の少なくとも一方の側縁部の厚みが、中央部の厚みよりも小さい場合であっても、本実施形態の吸収性物品は、吸収体40Aが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有することができる。また、
図2に示すとおり、第1の圧搾溝46aは、第2の圧搾溝46bよりも溝の深さが大きいものであることが好ましい。
【0026】
図5ないし
図8を参照して、本発明の実施形態1にかかる吸収性物品100の製造方法を説明する。まず、
図5に示すように、吸収性物品の製造材料の長手方向に沿って、吸収性物品の製造材料を搬送しながら、吸収性物品100を製造する方法を説明する。
【0027】
まず、吸収材41をローラ11から給送し、ローラ13において吸収材41上に高吸収性樹脂を配し、高吸収性樹脂を挟みこむように、ローラ12から給送された吸収材43を吸収材41に重ねて配する。これをローラ14でプレスして、上下中央領域の高吸収性樹脂の含有率のほうが、上下表面領域の高吸収性樹脂の含有率が高い吸収体原材45を形成する。
図5および
図6に示すように、この吸収体原材45をさらに搬送して、カッター17で吸収体原材を切断することで矩形の帯状片を形成する。この際、カッター17による押圧によって、吸収体40Aとなる帯状片の長手方向および短手方向の少なくとも一方における側縁部が、その中央部よりも厚みが小さく形成される可能性がある。
【0028】
次に、
図5および
図7に示すように、エンボスロール60とアンビルロール16によって、吸収体40Aの長手方向および短手方向の少なくとも一方の側縁に略沿って、吸収体40Aとなる帯状片を圧搾する。これにより、この帯状片に第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとを形成する。エンボスロール60としては、
図15に示すエンボスロール60であって、
図13に示す断面形態を有するエンボスロール60Aを用いる。エンボスロール60Aは、第1の圧搾溝46aに対応する位置に第1の突状部62aを有し、第2の圧搾溝46bに対応する位置に第2の突状部64aを有する。第1の突状部62aと第2の突状部64aとは高さが異なり、第1の突状部62aのほうが第2の突状部64aよりも高さが大きくなるように設けられている。この第1の突状部62aは、先端部の幅W11が2mm以上であって4mm以下である。
図7に示すように、帯状片は、第1の圧搾溝46aが、圧搾溝46aが設けられていない吸収体40Aの底面と、第1の圧搾溝46aの最下部と、の間の距離L11が1mm以上であって2mm以下になるように、かつ、仕上げ幅D11が肌当接面側である吸収体40Aの上面から見て1mm以上であって3mm以下になるようになるように、エンボスロール60Aで帯状片が加圧されることで形成される。この加圧の際には、加熱を同時に行ってもよい。一方、第2の圧搾溝46bも、吸収体40Aの第2の圧搾溝46bが設けられた表面に対向する底面と第2の圧搾溝46bの最下部との間の距離L12が2mmよりも大きく、かつ、仕上げ幅D12が肌当接面側である吸収体40Aの上面から見て1mm以上であって3mm以下になるようにエンボスロール60Aで帯状片が加圧されることで形成される。この加圧の際にも、加熱を同時に行ってもよい。なお、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、同時に形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0029】
図5に示すように、この吸収体40Aをさらに給送して、該吸収体40Aの一方の側からはトップシート20、または、トップシート20と液拡散性シート30とをあてがい、他方の側からはバックシート50をあてがうことで、吸収体40Aを挟持して、ローラ15によって圧着する。これらは、接着剤などによって接着することで固着されてもよい。これにより、吸収体40は、トップシート20とバックシート50との間に挟まれた状態で固着される。その後、トップシート20の周辺とバックシート50の周辺を接合させることにより、吸収体40がトップシート20及びバックシート50によって内包されるようになる。
【0030】
そして、
図5に示すように、エンボスロール18を用いて、肌当接面側からトップシート20および液拡散性シート30の少なくとも一方に表面圧搾溝22を形成する。表面圧搾溝22は、
図1において、吸収体40の破線部で囲まれた中央領域42に設けられる。これにより、表面圧搾溝22を介して滴下、流入される人体からの液体を吸収体40に良好に輸送および拡散することができる。
【0031】
この後、矢印方向に更に搬送され、製品カッター19で各吸収性物品100が個片に切断された後、折畳機によって吸収性物品100が折り畳まれて、包装機に給送されて吸収性物品100が包装される。これにより、本実施形態に係る吸収性物品100が形成される。
【0032】
これにより、実施形態1の吸収性物品100の製造方法は、吸収体40Aが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有する吸収性物品100を製造することができる。
【0033】
(実施形態2)
図3は、
図1のX−X’線における断面図であって、本発明の実施形態2に係る吸収性物品200を示す断面図である。本発明の実施形態2に係る吸収性物品200は、実施形態1の吸収性物品100の第1の圧搾溝と第2の圧搾溝とが、第2の圧搾溝の最下部と吸収体の底面との距離と、第1の圧搾溝の最下部と吸収体の底面との距離とが略等しくなるように設けられている点においてのみ、実施形態1と異なる。従って、実施形態2の説明において、実施形態1と実質的に同一の部分には同一の符号を付して説明することで、重複した説明を省略し、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0034】
本実施形態2では、吸収体40として、吸収体40Bを用いる。吸収体40Bには、トップシート20などが設けられた肌当接面側からその裏面側に向かって、圧搾溝46として、第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとが設けられている。吸収体40Bの長手方向および短手方向の少なくとも一方において、第1の圧搾溝46cは、第2の圧搾溝46dよりも中央側に設けられる。例えば、
図1および
図3に示すとおり、吸収体40Bの長手方向および短手方向の少なくとも一方において、第1の圧搾溝46cは中央領域42に設けられ、第2の圧搾溝46dは側縁領域44に配されることが好ましい。第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとは、
図14に示されるエンボスロール60Bによって、吸収体40Bとなる帯状片を肌当接面側である上面側からその裏面側に向かって圧搾することで形成される。
【0035】
実施形態2においては、
図15に示すエンボスロール60であって、
図14に示す断面形態を有するエンボスロール60Bを、エンボスロール60として用いる。
図14は、
図15に示すエンボスロール60の奥行方向(z方向)における断面を示す断面図である。
図9および
図14に示すように、このエンボスロール60Bの突状部62bおよび突状部64bの先端部は、幅W21および幅W22が2mm以上であって4mm以下である。この突状部62bの先端部の幅W21と突状部64bの先端部の幅W22とは、大きさが同じであっても、異なっていてもよい。また、
図10に示すように、第1の圧搾溝46cは、吸収体40Bの第1の圧搾溝46cが設けられた表面に対向する底面と、第1の圧搾溝46cの最下部と、の間の距離L21が1mm以上であって2mm以下になるように設けられている。すなわち、吸収体40Bの底面から1mm乃至2mmは第1の圧搾溝46cが設けられていない。また、第1の圧搾溝46cは、肌当接面側である吸収体40Bの上面側からみて、仕上げ幅D21が1mm以上であって3mm以下になるように設けられている。仕上げ幅D21は、第1の圧搾溝46cの底部の幅である。同様に、
図10に示すように、第2の圧搾溝46dは、吸収体40Bの第2の圧搾溝46dが設けられた表面に対向する底面と、第2の圧搾溝46dの最下部と、の距離L22が1mm以上であって2mm以下になるように設けられている。すなわち、吸収体40Bの底面から1mm乃至2mmは第2の圧搾溝46dは設けられていない。また、
図10に示すように、第2の圧搾溝46dは、肌当接面側である吸収体40Bの上面側からみて、仕上げ幅D22が1mm以上であって3mm以下になるように設けられている。仕上げ幅D22は、第2の圧搾溝46dの底部の幅である。これにより、実施形態2の吸収性物品200は、吸収体40Bが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有することができる。実施形態2では、
図3に示すとおり、第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとは、第2の圧搾溝46dの最下部と吸収体40Bの底面との距離と、第1の圧搾溝46cの最下部と吸収体40Bの底面との距離と、が略等しくなるように設けられる。吸収体40Bは、第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとの溝の深さが略等しいことが好ましい。なお、第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとは、同時に形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0036】
次に、本発明の実施形態2にかかる吸収性物品200の製造方法を説明する。実施形態2にかかる吸収性物品200の製造方法においては、実施形態1にかかる吸収性物品100の製造方法と吸収体40の圧搾工程のみが異なる。それ以外は同様であるので、吸収体40の圧搾工程以外については、実施形態1にかかる吸収性物品100の製造方法の説明における「吸収体40A」を「吸収体40B」と読み替え、「吸収性物品100」を「吸収性物品200」と読み替えることで、実施形態2にかかる吸収性物品200の製造方法の説明を省略する。
【0037】
吸収体40となる吸収体40Bの圧搾工程では、
図5に示すように、エンボスロール60とアンビルロール16によって、吸収体40Bの長手方向および短手方向の少なくとも一方の側縁に略沿って、吸収体40Bとなる帯状片を圧搾する。これにより、吸収体40Bに第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとを形成する。エンボスロール60としては、
図15に示すエンボスロール60であって、
図14に示す断面形態を有するエンボスロール60Bを用いる。
図14に示すように、エンボスロール60Bは、第1の圧搾溝46cに対応する位置に第1の突状部62bを有し、第2の圧搾溝46dに対応する位置に第2の突状部64bを有する。
図14に示すように、この第1の突状部62bは、先端部の幅W21が2mm以上であって4mm以下であり、これにより、第1の圧搾溝46cは、吸収体40Bの圧搾溝46cが設けられた表面に対向する底面と、第1の圧搾溝46cの最下部と、の間の距離L21が1mm以上であって2mm以下になるように、かつ、仕上げ幅D21が肌当接面側である吸収体40Bの上面から見て1mm以上であって3mm以下になるように、エンボスロール60Bで帯状片が加圧されることで形成される。この加圧の際には、加熱を同時に行ってもよい。同様に、第2の圧搾溝46dも、第2の圧搾溝46dが設けられていない吸収体40Bの底面と、第2の圧搾溝46dの最下部と、の間の距離L22が1mm以上であって2mm以下になるように、かつ、仕上げ幅D22が肌当接面側である吸収体40Bの上面から見て1mm以上であって3mm以下になるようにエンボスロール60Bで帯状片が加圧されることで形成される。この加圧の際にも、加熱を同時に行ってもよい。
【0038】
これにより、実施形態2の吸収性物品200の製造方法は、吸収体40Bが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有する吸収性物品200を製造することができる。
【0039】
(実施形態3)
図4は、
図1のX−X’線における断面図であって、本発明の実施形態3に係る吸収性物品300を示す断面図である。本発明の実施形態3に係る吸収性物品300は、吸収体40が第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとを含む複数層が積層された吸収体40Cを有する点においてのみ、実施形態1および2の吸収性物品100,200と相違する。ここでは、第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとが重なった上下2層構造をなす吸収体40Cを用いたものを説明する。第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとは、
図4に示すように同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとが異なる形状である場合としては、例えば、第2の吸収体40bの平面部41bよりも、第2の吸収体40bの上方に配置される第1の吸収体40aの平面部41aほうが、面積が小さいものが挙げられる。図示していないが、第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとは、たとえば親水性不織布あるいは木材繊維シートで包まれた状態で形成されている。
【0040】
吸収体40Cは、圧搾溝46として、第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとを有する。第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、第1の吸収体40aとなる吸収体材料と第2の吸収体40bとなる吸収体材料とを重ねた状態で、
図15に示されるエンボスロール60によって肌当接面側である上面側から裏面側に向かって、この積層された吸収体材料を圧搾することで形成する。実施形態3においては、
図15に示すエンボスロール60であって、
図13に示す断面形態を有するエンボスロール60Aを、エンボスロール60として用いる。
図13は、
図15に示すエンボスロール60の奥行方向(z方向)における断面を示す断面図である。第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、それぞれ第1の吸収体40aを通って、第2の吸収体40bに至っている。
図11および
図13に示すとおり、このエンボスロール60Aの突状部62a,64aの幅W31,W32は2mm以上であって4mm以下である。第1の圧搾溝46eは、第1の圧搾溝46eの最下部と、最下層の第2の吸収体40bの底面と、の間の距離L31が1mm以上であって2mm以下である。すなわち、最下層の第2の吸収体40bの底面から1mm乃至2mmは第1の圧搾溝46eが設けられていない。また、
図12に示すように、第1の圧搾溝46eは、肌当接面側である第1の吸収体40aの上面からみて、仕上げ幅D31が1mm以上であって3mm以下である。仕上げ幅D31とは、第1の圧搾溝46eの底部の幅である。同様に、
図12に示すように、第2の圧搾溝46fは、第2の圧搾溝46fの最下部と、最下層の第2の吸収体40bの底面と、の距離L32が1mm以上であって2mm以下、または、2mmより大きく設けられる。すなわち、最下層の第2の吸収体40bの底面から1mm以上であって2mm以下、または、2mmは第2の圧搾溝46fが設けられていない。また、
図12に示すように、第2の圧搾溝46fは、肌当接面側である第1の吸収体40aの上面からみて、仕上げ幅D32が1mm以上であって3mm以下である。仕上げ幅D32とは、第2の圧搾溝46fの底部の幅である。これにより、実施形態3の吸収性物品300は、吸収体40Cが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有することができる。
【0041】
図12に示すように、第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、第2の圧搾溝46fの最下部と吸収体40Cの底面との距離L32が、第1の圧搾溝46eの最下部と吸収体40Cの底面との距離L31よりも大きく設けられてもよい。この場合、吸収体40Cの長手方向及び短手方向の少なくとも一方側縁部の厚みが、中央部の厚みよりも小さくなっても、吸収体40Cが硬くなることを防ぐことができ、吸収性物品300はより優れた柔軟性および吸収速度を有することができる。また、第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、第2の圧搾溝46fの最下部と吸収体40Cの底面との距離L32と、第1の圧搾溝46eの最下部と吸収体40Cの底面との距離L31と、が略等しくなるように設けられてもよい。
【0042】
第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとは、
図4に示すように、当接するだけで固着していなくてもよいし、互いに接着剤などによって固着するように構成してもよいことはいうまでもない。接着剤によって接着する場合には、肌当接面側である第1の吸収体40aの上面から形成する第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとは、接着剤を貫通するように形成することが好ましい。
【0043】
次に、本発明の実施形態3にかかる吸収性物品300の製造方法を説明する。実施形態3にかかる吸収性物品300の製造方法においては、吸収体40の圧搾工程のみにおいて、実施形態1にかかる吸収性物品100の製造方法と異なる。それ以外は同様であるので、吸収体40の圧搾工程以外については、実施形態1にかかる吸収性物品100の製造方法の説明における「吸収体40A」を「吸収体40C」と読み替えることで、「吸収性物品100」を「吸収性物品300」と読み替えることで、実施形態3にかかる吸収性物品300の製造方法の説明を省略する。
【0044】
まず、
図11に示すように、第1の吸収体40aとなる帯状片と、第2の吸収体40bとなる帯状片と、を積層した状態で、エンボスロール60によって肌当接面側から裏面側に向かって、この積層された帯状片を圧搾して吸収体40Cを形成する。実施形態3においては、
図13に示すエンボスロール60であって、
図13に示す断面形態を有するエンボスロール60Aを、エンボスロール60として用いる。
図13は、
図15に示すエンボスロール60の奥行方向(z方向)における断面を示す断面図である。
図11および
図13に示すように、このエンボスロール60Aの突状部62a,64aの幅W31,W32は2mm以上であって4mm以下である。また、
図12に示すように、第1の圧搾溝46eは、第1の圧搾溝46eの最下部と、最下層の第2の吸収体40bの底面である吸収体40Cの底面と、の間の距離L31が1mm以上であって2mm以下であって、かつ、第1の吸収体40aの上面からみた仕上げ幅D31が1mm以上であって3mm以下となるように、エンボスロール60Aにより積層された帯状片が加圧される。この加圧の際には、加熱を同時に行ってもよい。また同様に、
図12に示すように、第2の圧搾溝46fは、第2の圧搾溝46fの最下部と、最下層の第2の吸収体40bの底面である吸収体40Cの底面と、の距離L32が2mmより大きくなるように設けられ、かつ、第1の吸収体40aの上面からみた仕上げ幅D32が1mm以上であって3mm以下となるように、エンボスロール60Aによって積層された帯状片が加圧されて形成される。この加圧の際にも、加熱を同時に行ってもよい。なお、第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、同時に形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第1の吸収体40aと第2の吸収体40bとが接着剤によって接着する場合には、肌当接面側である第1の吸収体40aの上面から形成する第1の圧搾溝46cと第2の圧搾溝46dとは、この接着剤を貫通するように形成される。これにより、実施形態3の吸収性物品300の製造方法は、吸収体40Cが硬くなることを防ぐことができ、優れた柔軟性および吸収速度を有する吸収性物品300を製造することができる。ここでは、
図13に示す断面形態を有するエンボスロール60Aを用いて説明したが、
図14に示す断面形態を有するエンボスロール60Bを用いて、第1の圧搾溝46eと第2の圧搾溝46fとは、第1の圧搾溝46eの最下部と吸収体40Cの底面との距離L31と、第2の圧搾溝46fの最下部と吸収体40Cの底面との距離L32と、が略等しくなるように設けてもよい。
【0045】
(実施例)
[吸収性物品の作成]
[実施例1]
本発明の実施形態の実施例に係る吸収性物品として、長さが480mm、幅が190mmのものを形成し、トップシートを20g/m
2のエアースルー不織布とし、バックシートを20g/m
2の通気性ポリエチレンとした吸収性パッドを、長さ480mm、幅190mmで設けた。吸収体40は、長さ420mm、幅150mm、含有するSAPの量を4g、および、フラッフの量を21gとして形成した。吸収体40は、吸収体40の厚さ方向の中央にSAPが集中して分布したものを用いた。トップシート20には、表面圧搾溝22を
図1に示す形状で設けた。第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとは、吸収体40に格子形状で設けた。吸収体40は、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスロール60の突状部62,64の先端部の幅を2mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を1mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を3mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を1.5mmとしたものを形成して、実施例1の吸収パッドを得た。
【0046】
[実施例2]
吸収体40として、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスローラの突状部の先端部の幅を3mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を2mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を4mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を2mmとしたものを形成して用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の吸収パッドを得た。
【0047】
[実施例3]
吸収体40は、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスローラの突状部の先端部の幅を4mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を2mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を4mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を3mmとしたものを形成して用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の吸収パッドを得た。
【0048】
[比較例1]
吸収体40は、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスローラの突状部の先端部の幅を2mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を3mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を3mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を3.5mmとしたものを形成して用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の吸収パッドを得た。
【0049】
[比較例2]
吸収体40は、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスローラの突状部の先端部の幅を3mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を0mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を0mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を4mmとしたものを形成して用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の吸収パッドを得た。
【0050】
[比較例3]
吸収体40として、SAPが吸収体40の厚さ方向に均一に分布したものを形成して用いた以外は実施例2と同様にして、比較例3の吸収パッドを得た。
【0051】
[比較例4]
トップシート20に表面圧搾溝22を設けない以外は実施例2と同様にして、比較例4の吸収パッドを得た。
【0052】
[比較例5]
吸収体40は、圧搾溝46aおよび圧搾溝46bを形成するエンボスローラの突状部の先端部の幅を5mmとして、中央領域42に設けられた第1の圧搾溝46aの最下部と吸収体40の底面との距離を2mmとして、側縁領域44に設けられた第2の圧搾溝46bの最下部と吸収体40の底面との距離を4mmとして、第1の圧搾溝46aと第2の圧搾溝46bとの仕上げ幅を4mmとしたものを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5の吸収パッドを得た。
【0053】
[評価方法]
1.吸収速度の測定方法
重さ755.6gで中央に内径19mmの穴が設けられた定面積16.8cm2の円筒形の測定治具を、吸収パッド中央上に置き、測定治具の上記穴から生理食塩水40mlを注入した。生理食塩水が吸収パッドに接触した時から測定治具の上記穴の縁に生理食塩水が完全に吸い込まれるまでの時間を計測することで吸収速度を測定した。
【0054】
2.柔らかさの評価
20名のパネラーに対して、吸収パッドの柔らかさの評価を実施した。この評価では、実施例および比較例の吸収パッドについて、(a)凹凸感なし、(b)どちらでもない、(c)凹凸感ありのいずれかの評価を選択する官能試験を行った。(a)の評価が14〜20人のときを「○」、(a)の評価が8〜13人のときを「△」、(a)の評価が0〜7人のときを「×」とした。
【0055】
[評価結果]
表1は、このように形成した実施例1乃至3に示す吸収パッドの吸収速度および柔らかさを比較したものである。実施例1ないし3は、吸収速度が25秒/40ml以下であるから早く、規定範囲内の良好な吸収性を示し、官能試験による柔らかさの評価はいずれも「○」であった。一方、比較例1,3,4に示す吸収パッドは吸収速度が遅く、比較例2,3,5に示す吸収パッドは官能試験による柔らかさの評価はいずれも「×」または「△」であった。
従って、表1から、本発明の吸収性物品は、優れた柔軟性および吸収速度を有することが明らかとなった。
【0057】
以上、実施形態および実施例を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態および実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態および実施例に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。