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特開2015-16332センチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-16332(P2015-16332A)
(43)【公開日】2015年1月29日
(54)【発明の名称】センチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20141226BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20141226BHJP
【FI】
   A61B1/00 300D
   A61B1/04 370
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-140764(P2014-140764)
(22)【出願日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0081980
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507296791
【氏名又は名称】コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(72)【発明者】
【氏名】カン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パパヤン ゲリ ブイ
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA01
4C161AA02
4C161AA07
4C161AA13
4C161AA15
4C161AA16
4C161AA24
4C161AA26
4C161BB02
4C161BB05
4C161CC06
4C161FF40
4C161HH54
4C161JJ17
4C161LL02
4C161LL08
4C161MM01
4C161MM02
4C161NN01
4C161NN05
4C161PP11
4C161QQ02
4C161QQ03
4C161QQ07
4C161QQ09
4C161RR03
4C161RR04
4C161RR26
4C161SS22
4C161WW08
4C161WW17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】身体の内部のセンチネルリンパ節を観察するための装置であって、より詳しくは、センチネルリンパ節におけるICGのような蛍光物質による近赤外線蛍光を検出することで、センチネルリンパ節を観察するための装置、及び当該センチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【解決手段】ICGのような蛍光物質及び励起光により放出される近赤外線蛍光を可視光映像と共に再現する複合映像を具現するにあたって、近赤外線蛍光映像信号と可視光線反射光映像信号とを用いた色相対比方法及び/または時間変調方法によって、高い正確性をもってセンチネルリンパ節を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を放出する白色光源と、
近赤外線励起光を放出する近赤外線励起光源と、
前記観察対象からの反射光及び近赤外線蛍光を伝達する光診断組立体と、
前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光を検出し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号として処理する多波長映像処理部と、
前記多波長映像処理部から処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号から、二つの映像信号を合わせた複合映像を出力するディスプレイ部と、を含み、
前記多波長映像処理部では、検出された反射白色光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の映像信号に分離した後、近赤外線蛍光映像信号が検出されていないピクセルには、赤色(R)及び緑色(G)で可視光線反射光映像信号を具現し、近赤外線蛍光映像信号が検出されたピクセルには、検出された近赤外線蛍光映像信号を青色(B)のみで表示するように映像処理することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項2】
白色光を放出する白色光源と、
近赤外線励起光を放出する近赤外線励起光源と、
前記観察対象からの反射光及び近赤外線蛍光を伝達する光診断組立体と、
前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光を検出し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号として処理する多波長映像処理部と、
前記多波長映像処理部から処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号から、二つの映像信号を合わせた複合映像を出力するディスプレイ部と、を含み、
前記多波長映像処理部では、検出された反射白色光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の映像信号に分離した後、各ピクセルごとに反射白色光の青色(B)映像信号と近赤外線蛍光映像信号の強度を相対的に比較し、
前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度がより高い場合には、前記反射白色光の青色(B)映像信号を、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に当該ピクセルに表示し、
前記近赤外線蛍光映像信号の強度がより高い場合には、前記近赤外線蛍光映像信号のみを当該ピクセルに青色(B)で表示するように映像処理することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項3】
前記多波長映像処理部は、前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光の光経路を分離し、分離された可視光線チャネルと近赤外線チャネルとを形成する光分離器を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項4】
前記光分離器は、選択された波長範囲で選択的に光を透過または反射させる光分離プリズムであることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項5】
前記光分離器は、ダイクロイックプリズムであることを特徴とする請求項4に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項6】
前記多波長映像処理部には、前記光分離器の分離された光経路に沿って二つのイメージセンサがそれぞれの光経路上に配置されるように構成されることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項7】
前記二つのイメージセンサは、前記可視光線チャネル側に配置されるカラーイメージセンサと、前記近赤外線チャネル側に配置される単色イメージセンサであることを特徴とする請求項6に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項8】
前記単色イメージセンサは、軸上色収差の補正のために、前記カラーイメージセンサに比べて、所定の距離(Δ)ほど光分離器から離隔して配置されることを特徴とする請求項7に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項9】
それぞれのイメージセンサと前記光分離器との間には、光学フィルタがそれぞれ配置されることを特徴とする請求項6に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項10】
それぞれのイメージセンサには、それぞれ利得増幅器と、アナログ・デジタル変換器とが連結されることを特徴とする請求項6に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項11】
前記多波長映像処理部は、収集された映像信号を分析及び処理し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を生成するデジタル映像処理器を含むことを特徴とする請求項6に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項12】
前記多波長映像処理部は、二つのイメージセンサに対する共通のタイミング発生器をさらに含み、前記デジタル映像処理器は、前記タイミング発生器と同期化して映像処理作業を行うことを特徴とする請求項11に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項13】
前記デジタル映像処理器は、反射励起光または反射白色光を基準光として、前記基準光が一定であるように、前記利得増幅器の調整係数を自動的に調節することを特徴とする請求項11に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項14】
前記デジタル映像処理器から分析及び処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を組み合わせて、複合映像を形成するコンピュータをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項15】
前記デジタル映像処理器から分析及び処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を、前記コンピュータへ伝送する送受信器をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項16】
前記白色光源は、メタルハライドランプまたはキセノンランプであることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項17】
前記近赤外線励起光源は、800±20nmの光を放出するレーザ光源であることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項18】
前記光診断組立体は、腹腔鏡、硬性内視鏡、軟性内視鏡、カメラまたは手術顕微鏡のうちいずれか一つの映像システムを成す光診断組立体であることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項19】
前記光診断組立体を前記多波長映像処理部に連結する光アダプタをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項20】
近赤外線蛍光の観察のために使われる蛍光物質は、インドシアニングリーンであることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項21】
前記近赤外線励起光源から照射される励起光の出力は、多波長映像処理部のフレーム速度よりも低い周波数を有するパルスモードを有するように制御されることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項22】
同一な条件にてセンチネルリンパ節の蛍光強度に相応する蛍光強度を有する標準試験片をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項23】
前記標準試験片からの蛍光信号強度を前記観察対象からの蛍光信号強度と比較し、前記観察対象からの蛍光信号強度が、前記標準試験片からの蛍光信号強度よりも高い場合にのみ、センチネルリンパ節として判断するように構成されたことを特徴とする請求項22に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項24】
前記多波長映像処理部に入る反射励起光を遮断するための遮蔽フィルタがさらに含まれることを特徴とする請求項3に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置。
【請求項25】
観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階と、
前記観察対象からの反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階と、
前記反射白色光に対する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光信号を分離する段階と、
前記近赤外線蛍光を青色(B)映像信号として生成し、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に複合映像を生成する段階と、
生成された複合映像をディスプレイ部に出力する段階と、を含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項26】
観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階と、
前記観察対象からの反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階と、
前記反射白色光に対する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光信号を分離する段階と、
ピクセル別に前記近赤外線蛍光映像信号の強度と、前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度とを相対的に比較する段階と、
前記比較の結果によって、強度がより高い信号を当該ピクセルの青色(B)映像信号として選択するが、
前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度がより高い場合には、前記反射白色光の青色(B)映像信号を反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に当該ピクセルに表示し、
前記近赤外線蛍光映像信号の強度がより高い場合には、前記近赤外線蛍光映像信号のみを当該ピクセルに青色(B)で表示するように映像処理する段階と、
複合映像を生成して、ディスプレイ部に出力する段階と、を含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項27】
前記白色光及び近赤外線励起光を照射する段階では、前記観察対象に照射される近赤外線レーザの出力は、多波長映像処理部のフレーム速度よりも低い周波数を有するパルスモードを有するように制御する段階をさらに含み、近赤外線励起光が非連続的な光照射出力を有することを特徴とする請求項26または27に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項28】
前記反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階では、観察対象以外に標準試験片の蛍光信号を同時に収集することを特徴とする請求項26または27に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項29】
前記ディスプレイ部に出力された複合映像を分析する段階をさらに含み、
前記分析段階では、観察対象からの蛍光信号強度と、標準試験片からの蛍光信号強度とを比較し、観察対象からの蛍光信号強度がより高い場合には、最終的にセンチネルリンパ節として判断し、標準試験片からの蛍光信号強度がより高い場合には、センチネルリンパ節でないものとして判断することを特徴とする請求項28に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項30】
前記白色光及び近赤外線励起光を照射する段階の前に、標準試験片の蛍光を測定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項26または27に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項31】
前記標準試験片の蛍光を測定する段階の前に、標準試験片に白色光と励起光とを照射し、標準試験片からの反射白色光または反射励起光を基準光として設定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項30に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項32】
前記観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階では、予め設定された基準光のサイズが一定であるように、調整係数を調整する段階をさらに含むことを特徴とする請求項31に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項33】
前記ディスプレイ部に出力された複合映像を分析する段階をさらに含み、
前記分析段階では、観察対象からの蛍光信号強度と、標準試験片からの蛍光信号強度とを比較し、観察対象からの蛍光信号強度がより高い場合には、最終的にセンチネルリンパ節として判断し、標準試験片からの蛍光信号強度がより高い場合には、センチネルリンパ節でないものとして判断することを特徴とする請求項32に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【請求項34】
前記複合映像を生成する段階は、前記近赤外線蛍光が検出されるピクセルには、前記近赤外線蛍光の青色(B)が表示され、前記近赤外線蛍光が検出されていないピクセルには、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)が表示されるように映像処理することで、複合映像を生成する段階であることを特徴とする請求項25に記載のセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の内部のセンチネルリンパ節を観察するための装置であって、より詳しくは、センチネルリンパ節におけるICGのような蛍光物質による近赤外線蛍光を検出することで、センチネルリンパ節を観察するための装置、及び当該センチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センチネルリンパ節(Sentinel Lymph Node: SLN)とは、腫瘍がリンパ節を介して直接転移する場合、最初に到達するリンパ節であり、センチネルリンパ節生検とは、癌組織に染色色素を注入し、センチネルリンパ節を見つけた後、これを切除し、病理組織学的検査を行って癌が転移しているか否かを確認するものである。センチネルリンパ節で癌が発見されれば、癌周辺のリンパ節の全体を切除するが、発見されなければ、リンパ節に癌が転移していないものと判断し、リンパ節の切除を最小化することができる。
【0003】
このように、センチネルリンパ節生検は、リンパ節の最小切除によって、既存の手術において癌組織と共に周囲のリンパ節を完全に切除することによって生じる副作用と余病を最小化することができる。当該センチネルリンパ節生検は、既に乳房癌、黒色腫などでは標準手術技法として行われており、肺癌、食道癌、胃癌、甲状腺癌、婦人科癌、泌尿器癌、喉頭癌など全ての癌手術分野に拡大している。
【0004】
当該センチネルリンパ節生検において、目視ではセンチネルリンパ節の位置を正確に探すことができないので、追跡者として放射線同位元素を使用する核医学的映像方法、磁性を有する磁性流体を使用する映像方法、生体染料を使用する光学映像方法、または放射線同位元素と生体染料とを同時に並行する方法が使われる(dual tracer method)。
【0005】
患者への放射線の露出を最大限減らし、センチネルリンパ節の感知のための光学映像方法と、生体染料に多様な蛍光物質が研究されていた。例えば、ポリガンマグルタミン酸と光学映像染料複合体を含むセンチネルリンパ節検診用の光学映像プローブに係る研究などが進められていた。蛍光染料のうち、米国食品医薬品局(FDA)を含む多くの国家食品医薬品局において使用が許可されたものは、インドシアニングリーン(ICG)であって、近赤外線領域に光が励起され、かつ蛍光が発生する。また、10〜20mmの深さまで分布された生体組織の内部構造観察が可能であり、手術場のように白色可視光が照らす場所でも近赤外線蛍光観察が可能である。
【0006】
しかし、このような近赤外線蛍光染料は目視では見られないので、近赤外線蛍光を観察できる装備が開発されている。これに関し、近年、外科手術用の近赤外線観察装備にHEMS(Hyper Eye Medical System)という装備が開発された。
【0007】
当該HEMS装備は、ICG蛍光を観察するための映像装備として設けられた単一のカメラ3で可視光と近赤外線とを同時に測定し、明るい外部照明環境でも近赤外線蛍光を観察できるものであって、図1に示している。
【0008】
当該HEMS装備は、白色光源1と共に、励起光源2として760nmの波長を有する光源(NIR LED)を使用する。しかし、このような構造の装備は、開腹手術のみで臓器の外観が見られ、可視光のカラーと近赤外線複合映像においてICG蛍光映像と人体の表面で反射された白色光の眩しい光による映像との間で容易に混同が生じる。
【0009】
一方、特許文献1には、蛍光映像からセンチネルリンパ節を検出するシステムを開示している。特に、特許文献1では、キセノンランプにより励起光を含む白色光を放出し、励起光フィルタは、385〜435nmの波長帯域の光が透過するように設定した。この時、励起光により測定対象から獲得された蛍光と背景光の場合、観察対象と単一のCCDチップとの間に遮蔽フィルタが挿入されて、蛍光と背景光とを透過させ、CCDチップに撮像されるように構成し、TVカメラにより映像処理され、モニタを介して蛍光映像に見せるように構成される。しかし、当該装備は、5−ALAのような可視光線から蛍光を放出する造影剤のための装備であって、ICGのように近赤外線で蛍光を観察するには適していない。
【0010】
これに関し、特許文献2には、フルカラー反射光と近赤外線映像とを提供する映像システムが提案された。NIR及びフルカラー映像を獲得するための映像システムは、観察対象に可視光と近赤外線を供給する光源を含み、観察対象から独立して青色反射光及び緑色反射光を検出し、赤色反射光または観察対象から発生する近赤外線を交互に検出するように構成された数個のイメージセンサを有するカメラで構成される。
【0011】
光源とカメラに信号を伝達する制御装置は、連続的な青色光と緑色光を観察対象に照射し、赤色光と近赤外線励起光は、カメラから赤色光及び近赤外線蛍光映像を交互に獲得するように、光源とカメラを周期的にスイッチをオン・オフさせて同期化する。
【0012】
赤色反射光スペクトル成分と、近赤外線光スペクトル成分は、光源とカメラでのスイッチング同期化によって、複合された赤色光と近赤外線光の映像信号は、同一イメージセンサで交互に獲得され、赤色光スペクトルは、青色と緑色の反射光と共にフルカラー映像を提供したり、近赤外線光スペクトル成分は、近赤外線蛍光映像を見せる。しかし、上述のように光源とTVカメラの同期化作業は、装備を複雑にする。
【0013】
一方、可視光(400〜700nm)から近赤外線(700〜900nm)までの広範囲な光スペクトルを同時に観察する映像システムにおいて、CCDセンサのような映像獲得チップの焦点面上に焦点を合わせるために、色収差補正が必要である。特許文献3では、内視鏡装備において色収差を補正するために、特別な光学カプラを提案した。提案された光学カプラは、アフォーカルプリズム組み合わせと、イメージング光学系とで構成される。アフォーカルプリズム組み合わせは、異なる屈折率を有するプリズムで構成され、プリズムの境界には、ダイクロイックコーティングを行うことで、入射波長をそれぞれの適当なプリズムに入るようにする。屈折率の異なるプリズムを通過した可視光と近赤外線光は、相互の光経路長差を補正することで、色収差を補正する。しかし、このような方法により色収差を除去するためには、特殊な光学システムが要求され、既存の光学カプラは使用できないという問題点がある。
【0014】
併せて、可視光映像と近赤外線映像を同時に表示するにあたって、同一なモニタの二つの異なるスクリーン窓で可視光映像と近赤外線映像がそれぞれ見られるように構成する場合、または二つの映像を重畳して見られるように構成する場合に、可視光映像及び近赤外線映像を識別することが困難であるという問題点がある。
【0015】
基本的に、センチネルリンパ節を、センチネルリンパ節でないもの(非センチネルリンパ節)と識別することは、蛍光信号の強度値による。当該蛍光信号の強度値は、同一な装備を使用する場合にも、観察対象までの距離、TVシステムの検出感度の設定された媒介変数(ゲイン、シャッター、フレーム)、励起光の強度などに依存して相当な変化が生じる。したがって、検出結果の信頼性を確保するために、標準測定方法が必須的に要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−340796号公報
【特許文献2】米国公開特許第2011/0063427号公報
【特許文献3】米国公開特許第2011/0249323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上述の問題点を解決するために案出されたものであって、インドシアニングリーンのような蛍光物質及び励起光により放出される近赤外線蛍光を可視光映像と共に再現する複合映像を具現するにあたって、高い正確性をもって近赤外線蛍光及びセンチネルリンパ節を検出することが可能なセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明では、白色光を放出する白色光源と、近赤外線励起光を放出する近赤外線励起光源と、前記観察対象からの反射光及び近赤外線蛍光を伝達する光診断組立体と、前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光を検出し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号として処理する多波長映像処理部と、前記多波長映像処理部から処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号から、二つの映像信号を合わせた複合映像を出力するディスプレイ部と、を含み、前記多波長映像処理部では、検出された反射白色光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の映像信号に分離した後、近赤外線蛍光映像信号が検出されていないピクセルには、赤色(R)及び緑色(G)で可視光線反射光映像信号を具現し、近赤外線蛍光映像信号が検出されたピクセルには、検出された近赤外線蛍光映像信号を青色(B)のみで表示するように映像処理することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0019】
また、白色光を放出する白色光源と、近赤外線励起光を放出する近赤外線励起光源と、前記観察対象からの反射光及び近赤外線蛍光を伝達する光診断組立体と、前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光を検出し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号として処理する多波長映像処理部と、前記多波長映像処理部から処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号から、二つの映像信号を合わせた複合映像を出力するディスプレイ部と、を含み、前記多波長映像処理部では、検出された反射白色光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の映像信号に分離した後、各ピクセルごとに反射白色光の青色(B)映像信号と近赤外線蛍光映像信号の強度を相対的に比較し、前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度がより高い場合には、前記反射白色光の青色(B)映像信号を、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に当該ピクセルに表示し、前記近赤外線蛍光映像信号の強度がより高い場合には、前記近赤外線蛍光映像信号のみを当該ピクセルに青色(B)で表示するように映像処理することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0020】
また、前記多波長映像処理部は、前記光診断組立体から伝達された反射白色光及び近赤外線蛍光の光経路を分離し、分離された可視光線チャネルと近赤外線チャネルとを形成する光分離器を含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0021】
また、前記光分離器は、選択された波長範囲で選択的に光を透過または反射させる光分離プリズムであることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置 を提供する。
【0022】
また、前記光分離器は、ダイクロイックプリズムであることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0023】
また、前記多波長映像処理部には、前記光分離器の分離された光経路に沿って二つのイメージセンサがそれぞれの光経路上に配置されるように構成されることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0024】
また、前記二つのイメージセンサは、前記可視光線チャネル側に配置されるカラーイメージセンサと、前記近赤外線チャネル側に配置される単色イメージセンサであることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0025】
また、前記単色イメージセンサは、軸上色収差の補正のために、前記カラーイメージセンサに比べて、所定の距離(Δ)ほど光分離器から離隔して配置されることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0026】
また、それぞれのイメージセンサと前記光分離器との間には、光学フィルタがそれぞれ配置されることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0027】
また、それぞれのイメージセンサには、それぞれ利得増幅器と、アナログ・デジタル変換器とが連結されることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0028】
また、前記多波長映像処理部は、収集された映像信号を分析及び処理し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を生成するデジタル映像処理器を含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0029】
また、前記多波長映像処理部は、二つのイメージセンサに対する共通のタイミング発生器をさらに含み、前記デジタル映像処理器は、前記タイミング発生器と同期化して映像処理作業を行うことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0030】
また、前記デジタル映像処理器は、反射励起光または反射白色光を基準光として、前記基準光が一定であるように、前記利得増幅器の調整係数を自動的に調節することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0031】
また、前記デジタル映像処理器から分析及び処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を組み合わせて、複合映像を形成するコンピュータをさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0032】
また、前記デジタル映像処理器から分析及び処理された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を、前記コンピュータへ伝送する送受信器をさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0033】
また、前記白色光源は、メタルハライドランプまたはキセノンランプであることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0034】
また、前記近赤外線励起光源は、800±20nmの光を放出するレーザ光源であることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0035】
また、前記光診断組立体は、腹腔鏡、硬性内視鏡、軟性内視鏡、カメラまたは手術顕微鏡のうちいずれか一つの映像システムを成す光診断組立体であることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0036】
また、前記光診断組立体を前記多波長映像処理部に連結する光アダプタをさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0037】
また、近赤外線蛍光の観察のために使われる蛍光物質は、インドシアニングリーンであることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0038】
また、前記近赤外線励起光源から照射される励起光の出力は、多波長映像処理部のフレーム速度よりも低い周波数を有するパルスモードを有するように制御されることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0039】
また、同一な条件にてセンチネルリンパ節の蛍光強度に相応する蛍光強度を有する標準試験片をさらに備えることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0040】
また、前記標準試験片からの蛍光信号強度を前記観察対象からの蛍光信号強度と比較し、前記観察対象からの蛍光信号強度が、前記標準試験片からの蛍光信号強度よりも高い場合にのみ、センチネルリンパ節として判断するように構成されたことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0041】
また、前記多波長映像処理部に入る反射励起光を遮断するための遮蔽フィルタがさらに含まれることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提供する。
【0042】
一方、本発明では、観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階と、前記観察対象からの反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階と、前記反射白色光に対する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光信号を分離する段階と、前記近赤外線蛍光を青色(B)映像信号として生成し、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に複合映像を生成する段階と、生成された複合映像をディスプレイ部に出力する段階と、を含むセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0043】
併せて、本発明では、観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階と、前記観察対象からの反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階と、前記反射白色光に対する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光信号を分離する段階と、ピクセル別に前記近赤外線蛍光映像信号の強度と、前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度とを相対的に比較する段階と、前記比較の結果によって、強度がより高い信号を当該ピクセルの青色(B)映像信号として選択するが、前記反射白色光の青色(B)映像信号の強度がより高い場合には、前記反射白色光の青色(B)映像信号を反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に当該ピクセルに表示し、前記近赤外線蛍光映像信号の強度がより高い場合には、前記近赤外線蛍光映像信号のみを当該ピクセルに青色(B)で表示するように映像処理する段階と、複合映像を生成して、ディスプレイ部に出力する段階と、を含むセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0044】
また、前記白色光及び近赤外線励起光を照射する段階では、前記観察対象に照射される近赤外線レーザの出力は、多波長映像処理部のフレーム速度よりも低い周波数を有するパルスモードを有するように制御する段階をさらに含み、近赤外線励起光が非連続的な光照射出力を有することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0045】
また、前記反射白色光及び近赤外線蛍光を収集する段階では、観察対象以外に標準試験片の蛍光信号を同時に収集することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0046】
また、前記ディスプレイ部に出力された複合映像を分析する段階をさらに含み、前記分析段階では、観察対象からの蛍光信号強度と、標準試験片からの蛍光信号強度とを比較し、観察対象からの蛍光信号強度がより高い場合には、最終的にセンチネルリンパ節として判断し、標準試験片からの蛍光信号強度がより高い場合には、センチネルリンパ節でないものとして判断することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0047】
また、前記白色光及び近赤外線励起光を照射する段階の前に、標準試験片の蛍光を測定する段階をさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0048】
また、前記標準試験片の蛍光を測定する段階の前に、標準試験片に白色光と励起光とを照射し、標準試験片からの反射白色光または反射励起光を基準光として設定する段階をさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0049】
また、前記観察対象に白色光及び近赤外線励起光を照射する段階では、予め設定された基準光のサイズが一定であるように、調整係数を調整する段階をさらに含むことを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0050】
また、前記ディスプレイ部に出力された複合映像を分析する段階をさらに含み、前記分析段階では、観察対象からの蛍光信号強度と、標準試験片からの蛍光信号強度とを比較し、観察対象からの蛍光信号強度がより高い場合には、最終的にセンチネルリンパ節として判断し、標準試験片からの蛍光信号強度がより高い場合には、センチネルリンパ節でないものとして判断することを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【0051】
また、前記複合映像を生成する段階は、前記近赤外線蛍光が検出されるピクセルには、前記近赤外線蛍光の青色(B)が表示され、前記近赤外線蛍光が検出されていないピクセルには、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)が表示されるように映像処理することで、複合映像を生成する段階であることを特徴とするセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0052】
前述のように、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法は、下記のような効果がある。
【0053】
第一に、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法では、既存の映像システムを用いるとしても、短時間に高い正確性をもってセンチネルリンパ節の検出可能性を高めることができるので、癌が転移しているか否かの判断の正確性が高くなり、リンパ節の切除を最小化することができる。
【0054】
第二に、本発明によれば、近赤外線と可視光センサの焦点面の位置が互いに一致する必要がないので、光学システム、特に光学カプラを有する腹腔鏡において色収差を補正する必要がない。
【0055】
第三に、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法の場合、既存の腹腔鏡装備などに容易に適用ができるので、設備の改善のための更なるコスト消耗を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】従来のICG蛍光を観察するためのHEMS装備を概略的に示す図面である。
図2】本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置の概略的な構成を示す図面である。
図3】反射された可視光線、励起光、及び近赤外線蛍光の波長範囲を示す図面である。
図4】(A)は本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置の望ましい実施例であって、ICG腹腔鏡に適用された例を示す図面であり、(B)は本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置の望ましい実施例であって、ICGビデオスコープに適用された例を示す図面である。
図5】(A)は可視光線映像と近赤外線映像との間で色収差が生じることを概念的に示す図面であり、(B)は本発明の望ましい実施例によって軸上色収差を補正するために、二つのイメージセンサを配置する構造を概略的に示す図面である。
図6】ICG腹腔鏡を使用して、組織の同じ部位に対して抽出されたイメージ映像を示す図面である。
図7】本発明の一実施例によって、反射白色光で青色(B)の代わりに近赤外線蛍光信号を使用することで、反射白色光イメージ背景に近赤外線蛍光イメージ映像が重畳された複合イメージ映像の形成過程を順次に示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施例によって、白色光の青色(B)と近赤外線光の信号強度を比較することで、選択的に青色を出力する例を示すフローチャートである。
図9図8の実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置から獲得された複合映像を示す図面である。
図10】標準試験片が観察対象であるセンチネルリンパ節の側面に配置された状態で獲得された複合映像を示す図面である。
図11】観察対象近辺に標準試験片を位置させた場合、センチネルリンパ節の識別方法を示すフローチャートである。
図12】観察対象との測定距離変化による蛍光と反射光の信号変化を示すグラフである。
図13】標準試験片を観察対象の側面に配置できない場合、センチネルリンパ節の識別方法を示すフローチャートである。
図14】連続的な反射白色光信号、及び光検出イメージセンサのフレーム速度と非同期化された近赤外線蛍光励起光の周期的なパルス信号を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい一実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を詳細に説明する。
【0058】
図2は、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置の概略的な構成を示すものである。本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置において、測定する部位の観察対象に向かう光診断組立体を備え、当該光診断組立体は、映像システムの種類によって構成される。
【0059】
図2において、映像システムとして腹腔鏡が使われたものを例示しているが、硬性内視鏡または軟性内視鏡、カメラ及び手術顕微鏡のような他の映像システムも使われる。
【0060】
以下、図2を参照して、光診断組立体として腹腔鏡を具現したものを例示し、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を詳細に説明する。
【0061】
図2に示すように、本発明の一実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置は、複合光源部(Combined White-NIR Illuminator)10、腹腔鏡30、多波長映像処理システム50、コンピュータ70及びディスプレイ部80を含む。
【0062】
このような構成を有するセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置において、複合光源部10から放出された近赤外線波長帯の励起光と白色光は、光ガイド20を経て、光診断組立体である腹腔鏡30に含まれた光伝達モジュール31を介して、観察対象Aに伝達される。観察対象には、リンパ節11を含む多様な生物学的測定対象が考慮され、当該観察対象との比較観察のための標準試験片が用いられる。
【0063】
また、混合された白色光及び近赤外線を獲得するためには、白色光を放出するランプと、近赤外線を放出するレーザとが共に備えられる複合光源部10を使用する。
【0064】
望ましくは、前記複合光源部の白色光源は、メタルハライドランプまたはキセノンランプで構成し、前記複合光源部の近赤外線励起光源は、800±20nmの光を放出する近赤外線レーザ光源で構成する。
【0065】
本実施例において、白色光源及び近赤外線励起光源が一体に設けられた複合光源部を例示して説明したが、本発明は、そのような複合光源部の形態に限定されず、白色光及び近赤外線励起光を観察対象に提供可能ないずれの形態であってもよい。
【0066】
このように、複合光源部からの白色光及び近赤外線は、腹腔鏡の光伝達モジュール31を介して、観察対象側に照射され、観察対象から反射された可視光線及び近赤外線励起光、並びに近赤外線励起光による蛍光が放出される。
【0067】
これに関し、図3では、反射された可視光線、励起光、及び近赤外線蛍光の波長範囲を概略的に示している。
【0068】
また、本実施例において、観察対象から出る光(反射可視光線+近赤外線励起光及び蛍光)を多波長映像処理システム50に伝達するように構成されるところ、図2のように、腹腔鏡30及び光アダプタ40を含むように構成する。
【0069】
したがって、観察対象から出る光(反射可視光線+近赤外線励起光及び蛍光)は、腹腔鏡30に含まれた光イメージモジュール32と、光アダプタ40に含まれた光学カプラ41とを介して、多波長映像処理システム50に入る。
【0070】
一方、図2のように、本実施例において、可視光領域と近赤外線領域の映像を処理するための二つのイメージセンサが含まれるところ、前記多波長映像処理システムは、二つのイメージを同時に演算処理可能な多波長2チップTVシステムで構成する。
【0071】
ここで、観察対象から反射された二次光の経路に、励起光(近赤外線波長帯のレーザ励起光)が多波長映像処理システム50に浸透することを遮断し、その他の波長帯の光は透過させる遮蔽フィルタ42が設けられる。
【0072】
それは、多波長映像処理システムで処理するものは、観察対象の背景に対する反射白色光及び検出する蛍光であるので、その他の多量検出される反射励起光を遮蔽するためである。
【0073】
一方、前記多波長映像処理システム50には、光分離器51が設けられ、当該光分離器は、観察対象からの二次光を可視光線と近赤外線の二つの光に分離する。また、二つのチャネルに分けられた光のスペクトル選択のために、光学フィルタ52,53が使われた。
【0074】
ここで、光分離器には、プリズムを用いた光分離プリズムが使われ、より望ましくは、ダイクロイックプリズムが使われる。
【0075】
また、本実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置において、それぞれのチャネルには、分離された波長を感知するイメージセンサが設けられた。すなわち、前記光分離器51から可視光線が分離される可視光線チャネルには、カラーイメージセンサ54と光学フィルタ52とが設けられ、前記光分離器51から近赤外線(NIR)が分離される近赤外線チャネルには、単色イメージセンサ55と光学フィルタ53とが設けられる。
【0076】
二つのセンサは、共通のタイミング発生器61を含む同一なビデオ処理及び制御ユニット60により制御される。当該ビデオ処理及び制御ユニット60には、それぞれのセンサのための第1利得増幅器62、第2利得増幅器63、第1アナログ・デジタル変換器64、及び第2アナログ・デジタル変換器65が設けられる。結果として、このような構成から、白色光イメージと近赤外線蛍光イメージのデジタル映像が形成される。
【0077】
これに関し、本発明の望ましい実施例において、前記多波長映像処理部内に収集された映像信号を分析及び処理し、可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を生成するためのデジタル映像処理器66が含まれるように構成する。
【0078】
すなわち、ビデオ処理及び制御ユニット60に含まれた二つのチャネルのデジタル映像処理器66は、第1利得増幅器62と第2利得増幅器63で増幅係数を独立して調整するための制御信号を生成し、それは、自動利得制御(automatic gain control: AGC)条件を遂行するために必要である。ここで、自動利得制御条件を設定すれば、反射励起光または反射白色光のように予め設定された基準光の強度を一定に維持するように利得を制御することができる。
【0079】
また、デジタル映像処理器は、タイミング発生器61と同期化して作業を行い、ビデオ信号の処理を行った後、送受信部67を介してビデオ信号をコンピュータ70に伝達する。コンピュータ70では、可視光線反射光映像と近赤外線蛍光映像を映像処理し、二つの映像を複合映像にして、ディスプレイ部80のスクリーンに表す。
【0080】
図4A及び図4Bは、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置の具体的な実施例であって、図4Aは、ICG腹腔鏡に係るものであり、図4Bは、ICGビデオスコープに係るものである。
【0081】
すなわち、図4Aに示すように、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置は、身体内でセンチネルリンパ節を検出するために製作されたICG腹腔鏡の形態で使われ、図4Bのように人体が開腹された状態の手術で、センチネルリンパ節の検出のためのICGビデオスコープの形態で使われる。
【0082】
それぞれの場合、映像記録システムとして、図2のような多波長2チップTVシステムが使われ、近赤外線波長励起光源として、近赤外線レーザ11が使われ、白色光を照射するための光源12を含む。
【0083】
特に、ICG腹腔鏡において、近赤外線励起光と白色光とを同時に照射するために、白色光源には、可視光光源12を含み、近赤外線光源には、レーザ11を含む複合光源部(Combined VIS-NIR Light Source)10を使用した。
【0084】
また、ICGビデオスコープの場合は、複合光源部の代わりに、分離された手術用ランプ12と、近赤外線レーザ11とを使用し、腹腔鏡の代わりに、映像システムとしてカメラレンズ33が使われた。
【0085】
一方、可視光と近赤外線の二つの波長帯の映像スペクトルを同時に検出記録する場合に、可視光スペクトル領域に合わせて設計製作された映像システムは、色収差の問題が生じる。色収差は、軸上色収差と倍率色収差に分けられ、軸上色収差の問題が特に重要である。
【0086】
図5Aを参照すれば、可視光スペクトルイメージの焦点は、近赤外線スペクトルイメージの焦点に比べて、軸上で相対的に値Δほど差があり、それを軸上色収差という。
【0087】
本発明の一実施例において、該色収差の補正のために、可視光と近赤外線のチャネルそれぞれに対するイメージセンサを設けた。
【0088】
特に、図5Bに示すように、映像システムの後端には、波長によって光経路を調節するための光分離器が設けられ、望ましくは、当該光分離器は、選択的に光を透過または反射させることで、光を分離させる光分離プリズムを用いる。
【0089】
したがって、前記光分離器によって、可視光と近赤外線がそれぞれ区分され、区分された可視光と近赤外線は、それぞれカラーイメージセンサまたは近赤外線イメージセンサに入る。
【0090】
ここで、本実施例によれば、軸上色収差を補正するために、近赤外線イメージセンサの位置は、可視光の検出のためのカラーイメージセンサの位置に比べて、相対的に値Δほど移動されるように調整する。
【0091】
結局、距離が調整されたカラーイメージセンサ及び近赤外線イメージセンサは、移動された位置によって軸上色収差が補正される。
【0092】
したがって、本発明の一実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置において、色収差を減らすために、別々の可視光及び近赤外線の映像システムを使用することによるコスト増加と、複雑な光学モジュールの設置なしに、容易に軸上色収差を補正することで、二つの映像の焦点を同時に精密に調整することができる。
【0093】
一方、本発明において、近赤外線イメージ映像と可視光イメージ映像とを同時に具現するための新たな方式、及び当該方式によって製作されたセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置を提案する。
【0094】
一般のモニタを使用して、二つの重畳された映像を同時に具現するためには、反射可視光イメージ内に属した近赤外線蛍光イメージをいかなる方式によって差別化するのかという問題点が生じる。本発明では、当該近赤外線蛍光イメージを容易に識別するために、色相対比方式による新たな方法を使用した。
【0095】
色相対比方法の使用の際に、白色反射光で黄色−赤色の色調を有する生物学組織の特性を用いた。
【0096】
図6では、ICG腹腔鏡を使用して観察している中に獲得された映像の組織を示している。ここで、それぞれの映像は、反射白色光の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の信号がR、G、Bそれぞれのチャネルで白色光映像を分離した後に獲得された。また、近赤外線チャネルから獲得された近赤外線蛍光単一映像も見られる。
【0097】
すなわち、図6では、ICG腹腔鏡を使用して、組織の同じ部位に対するそれぞれのイメージ映像を示しているものであって、RGB映像では、白色光での本来の映像[White Reflection(RGB)]を表し、前記白色光映像をB、R、Gチャネルでそれぞれ分離した後のイメージ映像をそれぞれR、G、Bで表している。
【0098】
また、近赤外線蛍光から獲得したイメージ映像(NIR Fluorescence)を表示し、最後に、反射可視光イメージと蛍光イメージ(VIS Reflection Image + ICG fluorescence Image)の複合映像(Composite Image)を表している。
【0099】
前記図6の映像を比較すれば、チャネルBでは、生物組織に固有の形態をほとんど識別できないことを確認できる。ここで、観察対象の明るい部位は、強い光のスポットに該当する。すなわち、実際の人体内部の組織は、ほとんどR、Gカラーで表現ができ、Bカラーの場合、組織を識別するのに適していないことを確認できる。
【0100】
したがって、本発明の一実施例において、このような実験結果に基づいて、近赤外線蛍光イメージに、白色反射光で青色(B)のイメージを代替することで、白色光と共に近赤外線蛍光イメージを具現することができる。
【0101】
実施形態1
反射白色光とICG蛍光とを合わせたモード条件にて、複合映像の構成は、赤色(R)と緑色(G)の反射光イメージ背景に、近赤外線蛍光イメージが青色(B)イメージの代わりに選択された。
【0102】
反射白色光から獲得された青色は、組織のイメージのための特徴的な要素ではないので、近赤外線蛍光により表示されたリンパ節は、容易に他の組織と区別され、かつ反射白色光で見られるスポットとも区別される。複合イメージ映像において、イメージ背景を形成する反射白色光イメージは、単に赤色(R)と緑色(G)のカラーチャネルにより表現され、明るいスポットは、青色がないので、黄色で見られる。一方、近赤外線蛍光イメージ映像は、青色で見られる。
【0103】
すなわち、図6の右側下端では、複合映像を反射白色光(RGカラー)と近赤外線蛍光(Bカラー)で出力した映像を示しているものであって、イメージ背景に赤色(R)と緑色(G)のカラーチャネルにより組織が表現され、明るいスポット部分は、黄色(R+G)で表現され、近赤外線蛍光映像は、Bチャネルにより青色で表現される。
【0104】
これによって、組織の正確な構造と共に、近赤外線蛍光に係るリンパ節を同時に容易に観察できる。
【0105】
本実施例によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出方法を、図2に示す装置と関連して説明すれば、まず、腹腔鏡などの装備によって、カラーイメージ(反射白色光)及び単色イメージ(蛍光)が収集されれば、それらを光学カプラなどを介して多波長映像処理システムに伝達する。
【0106】
伝達されたカラーイメージ及び単色イメージについての情報は、光分離器により可視光領域と近赤外線領域とに分離された後、二つのイメージセンサにより電気的信号に変換される。
【0107】
イメージセンサにより変換された信号は、利得増幅器及びアナログ・デジタル変換器をそれぞれ経た後、デジタル映像処理器で可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号として処理されるが、本実施例においては、当該デジタル映像処理器により反射白色光と近赤外線蛍光をそれぞれRGカラーとBカラーのイメージで形成する。この時、イメージ形成過程において、タイミング発生器61により同期化されるので、白色光による背景と共に蛍光イメージ信号を獲得することで、複合映像信号を具現するための可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号が得られる。
【0108】
獲得された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号は、送受信器を介してコンピュータに伝達され、コンピュータでは、伝達された可視光線反射光映像信号及び近赤外線蛍光映像信号を組み合わせて、ディスプレイ部によって複合映像を具現することができる。
【0109】
これに関し、図7は、本実施形態によって、反射白色光で青色(B)の代わりに近赤外線蛍光信号を使用することで、反射白色光イメージ背景に近赤外線蛍光イメージ映像が重畳された複合イメージ映像の形成過程を順次に示すフローチャートである。
【0110】
図7に示すように、カラーイメージ(反射白色光)及び単色イメージ(蛍光)の収集段階が行われ、収集された白色光イメージをRGBチャネル上で分離し、白色光に対するR(White Reflection Image[i, j]R)、G(White Reflection Image[i, j]G)、B(White Reflection Image[i, j]B)信号をそれぞれ獲得する。
【0111】
次いで、蛍光イメージに対する信号をBカラー映像(Fluorescence Image[i, j]B)信号で生成し、白色光に対するR、G信号と共に複合映像を生成した後、それらから複合映像を出力する。
【0112】
すなわち、本実施例において複合映像を生成するにあたって、前記近赤外線蛍光が検出されるピクセルには、前記近赤外線蛍光の青色(B)が表示され、前記近赤外線蛍光が検出されていないピクセルには、反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)が表示されるように映像処理する。
【0113】
一方、上述の実施形態1とは異なり、本発明の他の望ましい実施例において、白色光の青色(B)と近赤外線蛍光のサイズを相対的に比較することで、両方から相対的に光の強度が高い方を各ピクセルごとに選択的に選択することによって複合映像を形成する方法を用いることで、複合映像を具現する。
【0114】
基本的に、白色光の青色(B)と近赤外線蛍光とが収集される強度は差があるので、その絶対的なサイズの比較ではセンチネルリンパ節の位置を把握するのに適していない。したがって、本発明の望ましい実施例において、前記白色光の青色(B)と前記近赤外線蛍光のサイズを相対的に比較する方式を用いることができる。
【0115】
例えば、近赤外線蛍光信号の強度は白色光の強度よりもはるかに低いので、近赤外線蛍光信号に一定の利得を乗じて信号を増加した後、そのサイズを相対的に比較するように構成する。
【0116】
実施形態2
本実施形態において、白色光の青色(B)と近赤外線の両方から相対的に光の強度を各ピクセルごとに比較することで、光の強度が高い方を青色(B)で選択して出力する。
【0117】
したがって、白色光の青色の強度が近赤外線の強度よりも高い場合には、白色光の青色が選択されることで、赤色(R)、緑色(G)と共に白色光のRGBカラーを具現する。また、近赤外線の強度が白色光の青色の強度よりも高い場合には、近赤外線が青色(B)で選択されることで、白色光の赤色(R)、緑色(G)と共に複合映像として出力される。
【0118】
図8は、上述の実施例によって、白色光の青色(B)と近赤外線光の信号強度を比較することで、選択的に青色を出力する例を示しているフローチャートである。
【0119】
図8に示すように、それぞれの色を表現する映像ピクセルにおいて、近赤外線光の信号強度が可視光の青色光の信号強度よりも高い時は、白色反射光の青色光を表すピクセルは、近赤外線蛍光ピクセルに代替することで、前記近赤外線蛍光映像信号のみを当該ピクセルに青色(B)で表示し、逆の場合は、反射白色光の青色(B)映像信号を反射白色光の赤色(R)及び緑色(G)の映像信号と共に、当該ピクセルに複合色相で表示するように出力する。当該ピクセルに青色で表示される。
【0120】
本実施形態によって獲得された複合映像は、図9に示している。すなわち、前記図9では、近赤外線の信号強度が青色光の信号強度を超える時、条件に対応する各ピクセルは、白色反射イメージ青色(B)チャネルの代わりに、近赤外線蛍光イメージチャネルで獲得した信号を表示したので、左右側に近赤外線蛍光イメージチャネルで獲得した信号が青色で表示されていることを確認できる。
【0121】
この場合、反射白色光で見られる明るいスポットは、初期の原色のように白色で見られ、近赤外線光の信号強度が白色光の青色光の信号強度よりも低い部位では、組織のカラー色調は変わらない。
【0122】
一方、本発明によるセンチネルリンパ節の近赤外線蛍光検出装置及びその方法において、このように、ディスプレイ部に提供される複合映像を分析する更なる過程によって、より正確にセンチネルリンパ節を識別する装置及びその方法を提供する。
【0123】
特に、本発明において、センチネルリンパ節をより正確に識別するために、標準試験片を使用するように構成する。
【0124】
具体的には、本発明において、基本的に、センチネルリンパ節と、センチネルリンパ節でないものとを区別するために、造影剤のインドシアニングリーン(ICG)を使用し、励起光を照射する時にICGから発生する蛍光信号強度の差によって区別する。当該蛍光信号強度は、色々な要素に依存する。観察対象に照射する光の強度、光経路上での信号光の損失程度、可視光と近赤外線の検出センサの感度、ビデオ処理及び制御装置の調整係数(ゲイン、シャッター)、装備と観察対象との間の測定距離などに依存する。そのうち、測定距離の変数は調節することが困難であるが、外科医者が観察対象の組織学的な特徴または要求される観察部位の細密な観察などによって測定距離の変動性が大きいためである。
【0125】
したがって、センチネルリンパ節を正確に識別するために、センチネルリンパ節と類似した蛍光強度を有する標準試験片が必要である。蛍光標準試験片は、血液の血清またはアルブミンを添加したICG溶液を基本に製作する。それらは、一般に蛍光強度を高める蛍光活性剤として使われた。また、活性剤として、蛍光強度を高めるだけでなく、蛍光をより安定して維持する有機物ではない他の物質を使用できる。本発明者らの研究により行われた実験において、活性剤の候補に美容シャンプーを使用する場合、縫い合わせられたプラスチック容器でICG溶液の蛍光強度は少なくとも一ヶ月間は変わらずに維持されることを観察した。ICGの一定の濃度の溶液を使用する時、標準試験片の蛍光強度と、観察対象とするセンチネルリンパ節の蛍光強度とを類似したものに調整することができる。
【0126】
センチネルリンパ節を識別するにあたって、標準試験片を観察対象の側面に配置した場合と、そうでない場合によって、二つの方法により具現する。
【0127】
まず、標準試験片を観察対象の側面に配置した場合を考慮するにあたって、標準試験片は、手術部位の蛍光強度の比較のために観察するセンチネルリンパ節の側面に配置する。このように、標準試験片が観察対象であるセンチネルリンパ節の側面に配置される例は、図10に示している。
【0128】
この場合、観察対象の蛍光信号強度と、標準試験片の蛍光信号強度の比較は、モニタを介して目視でまたは量的な評価によって行われる。リンパ節の蛍光強度(Fl_Lymph node)が標準試験片の蛍光強度(Fl_Standard Sample)よりも高い場合には、観察対象であるリンパ節はセンチネルリンパ節であり、逆の場合は非センチネルリンパ節である。ここで、リンパ節の蛍光強度は、観察対象からの蛍光信号を意味する。
【0129】
これに関し、図11は、観察対象近辺に標準試験片を位置させた場合についてのセンチネルリンパ節の識別方法を示すフローチャートである。
【0130】
すなわち、図11を参照すれば、腹腔鏡を観察対象に進入させた後、観察対象近辺に標準試験片を位置させる。次いで、観察対象であるリンパ節の蛍光信号と、標準試験片の蛍光信号とを比較する段階が行われ、その結果によって、センチネルリンパ節であるか否かを判断する。
【0131】
一方、標準試験片を観察対象の側面に配置しない場合を考慮する。
【0132】
リンパ節と標準試験片の蛍光信号強度の比較は、直接的な方法を使用するが、標準試験片を使用しない場合には、反射白色光信号を使用して、観察対象から測定距離の変化を自動的に計算することができる。
【0133】
図12は、観察対象との測定距離変化による蛍光と反射光の信号変化を示しているグラフであって、図12を参照すれば、観察対象の測定距離によって、ほぼ同一な割合で反射励起光と蛍光の強度が減少するということが分かる。
【0134】
したがって、反射励起光または反射白色光を基準光として、基準光が常に一定であるように、調整係数(ゲイン及びシャッターの媒介変数)を自動的に調整すれば、距離に関係なく、同一な蛍光の強度が得られる。
【0135】
すなわち、図2の装置を考慮すれば、デジタル映像処理器では、基準光信号が一定であるように、第1及び第2利得増幅器における調整係数を自動的に調節することで、距離に関係なく、同一な強度の蛍光信号が持続的に得られることとなる。
【0136】
これに関し、本実施例において、測定距離の補正のために、反射励起光を使用せず、反射白色光を使用した。この場合、測定距離による蛍光補正のための基準光として、赤色(R)または緑色(G)または青色(B)光から発生する信号を使用でき、望ましくは、観察組織の構造的特徴から少ない影響を受けるチャネルRから発生する光信号を使用できる。
【0137】
標準試験片を観察対象の側面に配置できない場合に、センチネルリンパ節の識別過程は、図13に示す。
【0138】
まず、標準試験片を設け、標準試験片に対する可視光及び近赤外線の信号の測定値によって、システムの校正作業が行われる。白色光と近赤外線の標準試験片の距離による信号の比例式は、各標準試験片の光強度を測定することによって遂行され、拡散反射値を測定する。
【0139】
人体内に腹腔鏡を挿入した後、予め設定された白色光の強度に合わせて、調整係数(ゲイン及びシャッターの媒介変数)が変化し、それによって、白色光チャネル(VISチャネル)の信号の自動的な増幅調整が行われる。この場合、当該媒介変数は、白色光だけでなく、近赤外線チャネルで互いに同一に変化することで、測定距離の誤差を除去する。
【0140】
センチネルリンパ節のある部位で蛍光の増加が観察されれば、蛍光強度を測定する。
【0141】
観察されたリンパ節の蛍光強度が蛍光標準試験片よりも高ければ、リンパ節は、センチネルリンパ節として判断し、逆の場合は、非センチネルリンパ節として判断する。
【0142】
一方、このような色相対比方法と共に、時間変調方法によって、センチネルリンパ節からの蛍光信号を検出することを考慮する。
【0143】
図14では、連続的な反射白色光信号、及び光検出イメージセンサのフレーム速度と非同期化された近赤外線蛍光励起光の周期的なパルス信号を示している。
【0144】
図14を参照すれば、時間変調方法の場合、白色光源の光照射は持続的に行われるので、反射白色光は持続的に出力される一方、近赤外線蛍光の場合、TVシステムのフレーム速度よりもはるかに低い周波数を有するパルスモードに転換されるように構成した。したがって、近赤外線励起光は、非連続的な光照射出力を有する。一方、この場合、レーザ光照射変調速度は、TVシステムのフレーム速度と同期化させる必要はない。
【0145】
したがって、持続的に出力される反射白色光による可視光背景イメージで、近赤外線蛍光イメージは周期的にきらめいて見られるので、近赤外線蛍光イメージを容易に識別することができる。
【0146】
このような時間変調方法は単独に用いられるが、望ましくは、実施形態1または実施形態2の色相対比方法と共に使われることで、センチネルリンパ節からの蛍光信号を容易に検出することができる。
【0147】
実施形態3
時間変調方法の使用によって、連続的なレーザ光の出力モードは、前記内視鏡の応用において使われるTVシステムの光検出センサの15Hz以上のフレーム速度よりもはるかに低い約1〜2Hzの繰り返し率を有するパルスモードに転換された。
【0148】
したがって、連続的な可視光イメージ映像背景で、近赤外線イメージ映像は、パルスモードによって周期的にきらめいて見られる。
【0149】
本実施形態において、色相対比方法と別途に時間変調が行われており、したがって、可視光イメージは、完全な色相(RGB)を維持する。一方、上述の実施形態1、2の色相対比方法と共に使われる場合には、選択的に青色(B)を近赤外線蛍光イメージに代替できるので、赤色(R)、緑色(G)で可視光イメージを形成したり、近赤外線蛍光イメージよりも青色(B)光信号がより大きい場合ならば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の完全な可視光イメージを形成することもできる。
【0150】
以上のように、本発明は、望ましい実施形態を参照して説明したが、当業者ならば、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、本発明の要素に対して修正及び変更可能であることを理解できるであろう。また、本発明の必須の領域を逸脱しない範囲内で、特別な状況や材料に対して多くの変更が行われる。したがって、本発明は、本発明の望ましい実施形態の詳細な説明に制限されず、特許請求の範囲内で全ての実施形態を含む。
【符号の説明】
【0151】
A 観察対象
S 標準試験片
10 複合光源部
11 近赤外線励起光源
12 白色光源
20 光ガイド
30 腹腔鏡
31 光伝達モジュール
32 光イメージモジュール
33 カメラレンズ
40 光アダプタ
41 光学カプラ
42 遮蔽フィルタ
50 多波長映像処理システム
51 光分離器
52,53 光学フィルタ
54 第1イメージセンサ
55 第2イメージセンサ
60 ビデオ処理及び制御ユニット
61 タイミング発生器
62 第1利得増幅器
63 第2利得増幅器
64 第1アナログ・デジタル変換器
65 第2アナログ・デジタル変換器
66 デジタル映像処理器
67 送受信部
70 コンピュータ
80 ディスプレイ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14