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特開2015-163602[(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン化合物の結晶形及びそれらの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-163602(P2015-163602A)
(43)【公開日】2015年9月10日
(54)【発明の名称】[(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン化合物の結晶形及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/06 20060101AFI20150814BHJP
   A61K 31/444 20060101ALN20150814BHJP
【FI】
   C07D401/06
   A61K31/444
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-13881(P2015-13881)
(22)【出願日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-13886(P2014-13886)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】濱田 まこと
(72)【発明者】
【氏名】清水 由紀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC12
4C063DD11
4C063EE01
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA08
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZA55
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】[(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン化合物の医薬品としての使用環境で安定な結晶形及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題は、(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのB型結晶などにより解決される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【請求項2】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにアセトン−酢酸エチル混合液を加えて、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【請求項3】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【請求項4】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンに水−エタノール混合液を加え、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【請求項5】
下記(a)〜(b)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1にある。
【請求項6】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにメタノールを加えて、溶液とした後、氷冷下にて結晶化させ、得られた結晶を氷冷下にて乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(b)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1にある。
【請求項7】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩の結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【請求項8】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化ナトリウム水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【請求項9】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカリウム塩の結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【請求項10】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化カリウム水溶液を添加し、作用させた後、溶媒を留去して得られた残渣にアセトンを加え、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【請求項11】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカルシウム塩の結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【請求項12】
水とエタノールとの混合液にN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩を溶解させた後、塩化カルシウム(II)水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【請求項13】
下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【請求項14】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンに水−エタノール混合液を加え、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶の製造方法。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、[(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン化合物の結晶形及びそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、貧血、貧血に由来する疾病など、プロリルヒドロキシラーゼ(prolyl hydroxylase、以下、「PHD」ともいう)、特にプロリルヒドロキシラーゼ2(以下、「PHD2」ともいう)が関与しているとされる疾患の治療剤及び予防剤として有用性が期待されるPHD阻害剤である[(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン化合物の結晶形及びその製造方法の結晶多形及びそれら製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の赤血球細胞は全身への酸素運搬を担い、恒常的な生体内の酸素濃度の維持に重要な働きをしている。ある種の疾病や事故・手術などによる出血により、血液中の赤血球数やヘモグロビン量が低下すると、倦怠感やめまい、息切れ等の貧血症状を呈する。貧血になると全身が酸素不足にさらされることになるが、この様な低酸素条件下では、生体は代償反応として、主に腎臓から赤血球の形成を促進する造血因子エリスロポエチン(以下、「EPO」ともいう。)を産生し、血液中の赤血球やヘモグロビン量を増加させて貧血の改善を促す。しかしながら、ある種の疾病においては、このエリスロポエチンによる赤血球新生作用が障害を受け、慢性的な貧血が持続する。例えば腎臓に障害を持つような腎不全患者では、この低酸素条件下でのエリスロポエチン産生機構が上手く機能せず、赤血球数やヘモグロビン量が低下した貧血(腎性貧血)を呈することが知られている(非特許文献1、2参照)。
【0003】
腎性貧血及び癌の化学療法やHIV感染患者の薬剤療法に伴う貧血の治療は、現在遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤等の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)により行われている。ESAは赤血球数、ヘモグロビン量を増加させ貧血に伴う症状を改善することで、患者の生活の質の向上に大きく貢献している。しかしながら一方で現在のESAはいずれも生物製剤であり高価な注射薬であることから、経口投与可能な貧血治療医薬品が望まれている。
【0004】
また最近の研究では、エリスロポエチンには、虚血に伴う低酸素状態に置かれた心臓や脳等の組織を保護する作用もあることが報告されている。したがって経口投与可能なESAは、腎性貧血を含む種々の原因で起こる貧血のみならず、さまざまな虚血性疾患にも幅広く適応できる可能性がある(非特許文献3参照)。
【0005】
エリスロポエチンの産生を増加させる因子として低酸素誘導因子(Hypoxia inducible factor、以下、「HIF」ともいう)が挙げられる。HIFは、酸素濃度の変化により分解が調節されるαサブユニットと、恒常的に発現しているβサブユニットからなる転写因子である。HIFのαサブユニット(HIF−α)の分解を調節する因子としてプロリルヒドロキシラーゼ(PHD−1, 2, 3)が知られている。正常の酸素圧条件下では、これらプロリルヒドロキシラーゼによりHIF−αのプロリン残基が水酸化され、速やかにHIF−αはプロテアソームにより分解される。一方、低酸素条件下では、プロリルヒドロキシラーゼの活性が低下するため、HIF−αの分解が抑制され、その結果エリスロポエチンを含むHIF応答性遺伝子の転写が促進される。従ってプロリルヒドロキシラーゼを阻害することで、HIF−αの安定化を促し、エリスロポエチンの産生を増加させることが可能となる(非特許文献1、2、4参照)。
【0006】
本発明の化合物は、これらプロリルヒドロキシラーゼの活性を阻害し、エリスロポエチン量を増加させ、それにより貧血を治療する手段を提供する。また貧血のみならずさまざまな虚血性疾患(脳卒中、心筋梗塞、虚血性腎障害など)や糖尿病性合併症(腎症、網膜症、神経症)等も、本発明化合物の投与による治療や予防あるいは症状の改善や緩和といった利益を得る可能性がある(非特許文献5参照)。
【0007】
一般的なPHD阻害剤としては、4−ヒドロキシイソキノリン誘導体(特許文献1参照)、5−ヒドロキシ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール誘導体(特許文献2参照)、4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン誘導体(特許文献3参照)、3−ヒドロキシピリジン誘導体(特許文献4参照)、2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール誘導体(特許文献5参照)等が報告されているが、本発明の構造を有する化合物は開示されていない。また、6−ヒドロキシ−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン誘導体(特許文献6参照)、4−ヒドロキシ−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン誘導体(特許文献7参照)、5−ヒドロキシ−3−オキソ−2,3−ジヒドロピリダジン誘導体(特許文献8参照)、6−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−1,3−ジオキシン誘導体(特許文献9参照)、4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,7−テトラヒドロフロ[3,4−b]ピリジン誘導体(特許文献10参照)、4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン誘導体(特許文献11、12参照)等が報告されているが、本発明化合物であるN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンは開示されていない。
【0008】
また、医薬品の観点からは、工業的規模における取扱いし易く、保存安定性に優れた物理的特性を有する化合物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2004/108681号
【特許文献2】WO2006/114213号
【特許文献3】WO2007/038571号
【特許文献4】US2007/0299086号
【特許文献5】WO2008/144266号
【特許文献6】WO2007/150011号
【特許文献7】WO2008/089051号
【特許文献8】WO2008/089052号
【特許文献9】WO2009/049112号
【特許文献10】WO2009/108496号
【特許文献11】WO2009/158315号
【特許文献12】WO2010/025087号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】American Journal of Physiology−Renal Physiology,2010,299,F1−13
【非特許文献2】American Journal of Physiology−Renal Physiology,2010,298,F1287−1296
【非特許文献3】The Journal of Physiology,2011,589,1251−1258
【非特許文献4】Expert Opinion on Therapeutic Patents,2010,20,1219−1245
【非特許文献5】Diabetes,Obesity and Metabolism,2008,10,1−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れたPHD2阻害作用を有し、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する新規な化合物の結晶形及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、下記式(A)で表されるN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン(以下、化合物(A)又は本発明化合物と記すこともある)が、優れたPHD2阻害作用を有すること、また、上記物理的特性に優れた化合物(A)の結晶及びそれらの製造方法を提供することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
【化1】
【0014】
以下、本発明の態様を説明する。
【0015】
(1)本発明の1つの態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、A形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【0016】
(2)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにアセトン−酢酸エチル混合液を加えて、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(A形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【0017】
(3)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、B形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【0018】
(4)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンに水−エタノール混合液を加え、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(B形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【0019】
(5)本発明の他の態様は、下記(a)〜(b)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、C形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1にある。
【0020】
(6)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにメタノールを加えて、溶液とした後、氷冷下にて結晶化させ、得られた結晶を氷冷下にて乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(b)の物性を有する結晶(C形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1にある。
【0021】
(7)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩の結晶(以下、ナトリウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【0022】
(8)本発明の他の態様は、 N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化ナトリウム水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(ナトリウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【0023】
(9)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカリウム塩の結晶(以下、カリウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【0024】
(10)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化カリウム水溶液を添加し、作用させた後、溶媒を留去して得られた残渣にアセトンを加え、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(カリウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【0025】
(11)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカルシウム塩の結晶(以下、カルシウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【0026】
(12)本発明の他の態様は、水とエタノールとの混合液にN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩を溶解させた後、塩化カルシウム(II)水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(カルシウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【0027】
(13)本発明の1つの態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、A形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1617cm-1、1546cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【0028】
(14)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにアセトン−酢酸エチル混合液を加えて、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(A形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1617cm-1、1546cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【0029】
(15)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、B形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【0030】
(16)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンに水−エタノール混合液を加え、溶液とした後、結晶化させ、得られた結晶を乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(B形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【0031】
(17)本発明の他の態様は、下記(a)〜(b)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶(以下、C形結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1614cm-1、1551cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある。
【0032】
(18)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンにメタノールを加えて、溶液とした後、氷冷下にて結晶化させ、得られた結晶を氷冷下にて乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(b)の物性を有する結晶(C形結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1614cm-1、1551cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある。
【0033】
(19)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩の結晶(以下、ナトリウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1559cm-1、1477cm-1、1414cm-1、及び1264cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【0034】
(20)本発明の他の態様は、 N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化ナトリウム水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(ナトリウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1559cm-1、1477cm-1、1414cm-1、及び1264cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【0035】
(21)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカリウム塩の結晶(以下、カリウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1603cm-1、1476cm-1、1391cm-1、及び1280cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【0036】
(22)本発明の他の態様は、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのアセトン懸濁液へ水酸化カリウム水溶液を添加し、作用させた後、溶媒を留去して得られた残渣にアセトンを加え、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(カリウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1603cm-1、1476cm-1、1391cm-1、及び1280cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【0037】
(23)本発明の他の態様は、下記(a)〜(c)の物性を有する、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのカルシウム塩の結晶(以下、カルシウム塩の結晶と記すこともある)を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1616cm-1、1576cm-1、1481cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【0038】
(24)本発明の他の態様は、水とエタノールとの混合液にN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンのナトリウム塩を溶解させた後、塩化カルシウム(II)水溶液を添加し、作用させた後、生じた結晶を濾取し、乾燥させることを特徴とする下記(a)〜(c)の物性を有する結晶(カルシウム塩の結晶)の製造方法を提供することである。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1616cm-1、1576cm-1、1481cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【0039】
(25)本発明の他の態様としては、
(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)、(13)、(15)、(17)、(19)、(21)、(23)のいずれかに記載の、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシン又はその塩の結晶を有効成分として含有する医薬を提供することである。
【0040】
(26)本発明の他の態様としては、
PHD2阻害剤である(25)に記載の医薬を提供することである。
【0041】
(27)本発明の他の態様としては、
EPO産生促進剤である(25)に記載の医薬を提供することである。
【0042】
(28)本発明の他の態様としては、
貧血の予防薬又は治療薬である(25)に記載の医薬を提供することである。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、優れたPHD2阻害作用を有するN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶を提供することが可能となった。該結晶は、室温付近の温度で安定な結晶形であり、保存安定性に優れている。また、本発明により、上記結晶を、同一品質で安定して得るための新規な製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】A形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図2】A形結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図3】A形結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図4】B形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図5】B形結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図6】B形結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図7】C形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図8】C形結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図9】ナトリウム塩の結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図10】ナトリウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図11】ナトリウム塩の結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図12】カリウム塩の結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図13】カリウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図14】カリウム塩の結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図15】カルシウム塩の結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図16】カルシウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を示す。
図17】カルシウム塩の結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図18】A形結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
図19】B形結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
図20】C形結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
図21】ナトリウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
図22】カリウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
図23】カルシウム塩の結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための態様を具体的に説明する。
【0046】
本発明化合物であるN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンは、前記に示した化学構造式を有している。
【0047】
本発明化合物の結晶(以下、「本発明結晶」ということがある)は、上述のように一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れたものである。
【0048】
本発明化合物の結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0049】
所定の有機溶媒に化合物(A)を加熱溶解させた後、徐冷することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ過、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)の結晶を得ることができる。なお、再結晶は、1度のみならず2度以上繰り返してもよいが、通常は1度のみ再結晶を行う。
【0050】
冷却させる時間は、10秒以上であれば特に制限されないが、通常10分から24時間であり、好ましくは30分から5時間である。
【0051】
また、結晶化に際しては種晶を使用することができる。種晶は、晶析のための溶液が入った容器の壁をスパチュラ(Spatula)でこするなど、当業者にとって良く知られた方法で取得しておくことができる。
【0052】
本発明化合物のA形結晶について、以下に説明する。
【0053】
化合物(A)のA形結晶は、以下の(a)〜(c)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが168℃〜172℃にある。
【0054】
また、化合物(A)のA形結晶は、以下の(d)の物性も有する。
(d)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1617cm-1、1546cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある。
【0055】
化合物(A)のA形結晶の粉末X線回折パターンは図1に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図2に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図3に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図18に示した通りである。
【0056】
なお、粉末X線結晶回折による特徴的なピークは、測定条件によって変動することがある。そのため、本発明化合物の粉末X線結晶回折のピークについて、誤差が生じたり、明確でなかったりする場合がある。
【0057】
また、同様に、赤外線吸収スペクトルの特徴的なピークも、測定条件によって変動することがある。そのため、本発明化合物の赤外線吸収スペクトルのピークについて、誤差が生じたり、明確でなかったりする場合がある。
【0058】
図1〜3及び18から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のA形結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のA形結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0059】
次に、化合物(A)のA形結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のA形結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0060】
所定の溶媒に化合物(A)を加熱溶解させた後、徐冷することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のA形結晶を得ることができる。
【0061】
溶媒に溶解前の、原料の化合物(A)は、非晶質又は結晶である。
【0062】
前記所定の溶媒の具体例としては、アセトン及び酢酸エチルこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0063】
アセトンと酢酸エチルとの混合溶媒における混合比は適宜に変更することができる。
【0064】
化合物(A)のA形結晶の結晶化は、通常0℃〜100℃で行う。好ましくは、20℃〜30℃である。
【0065】
析出した化合物(A)のA形結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離することができる。
【0066】
化合物(A)のA形結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。好ましくは、20℃〜30℃である。
【0067】
本発明化合物のB形結晶について、以下に説明する。
【0068】
化合物(A)のB形結晶は、以下の(a)〜(c)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが190℃〜195℃にある。
【0069】
また、化合物(A)のB形結晶は、以下の(d)の物性も有する。
(d)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1にある;
【0070】
化合物(A)のB形結晶の粉末X線回折パターンは図4に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図5に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図6に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図19に示した通りである。
【0071】
また、化合物(A)のB形結晶は、融点が、188℃〜194℃である。
【0072】
図4〜6及び19から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のB形結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のB形結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0073】
次に、化合物(A)のB形結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のB形結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0074】
所定の溶媒に化合物(A)のA形結晶を加熱溶解させた後、徐冷することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のB形結晶を得ることができる。
【0075】
前記所定の溶媒の具体例としては、エタノールなどの低級アルコール、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0076】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられる。好ましくは、エタノールである。
【0077】
水とエタノールとの混合溶媒における混合比は適宜に変更することができる。好ましい水−エタノールの混合比は5:4である。
【0078】
化合物(A)のB形結晶の結晶化は、通常0℃〜100℃で行う。好ましくは、20℃〜100℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0079】
析出した化合物(A)のB形結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離することができる。
【0080】
化合物(A)のB形結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。好ましくは、20℃〜100℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0081】
本発明化合物のC形結晶について、以下に説明する。
【0082】
化合物(A)のC形結晶は、以下の(a)〜(b)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークを有する;並びに
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1にある。
【0083】
また、化合物(A)のC形結晶は、以下の(c)の物性も有する。
(c)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1614cm-1、1551cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1にある。
【0084】
化合物(A)のC形結晶の粉末X線回折パターンは図7に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図8に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図20に示した通りである。
【0085】
図7〜8及び20から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のC形結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のC形結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0086】
次に、化合物(A)のC形結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のC形結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0087】
所定の溶媒に化合物(A)のA形結晶を加熱溶解させた後、徐冷することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のC形結晶を得ることができる。
【0088】
前記所定の溶媒の具体例としては、メタノールなどの低級アルコールが挙げられる。
【0089】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられる。好ましくは、メタノールである。
【0090】
化合物(A)のC形結晶の結晶化は、通常氷冷下で行う。
【0091】
析出した化合物(A)のC形結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離
することができる。
【0092】
化合物(A)のC形結晶の乾燥は、通常氷冷下で行う。
【0093】
本発明化合物のナトリウム塩の結晶について、以下に説明する。
【0094】
化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、以下の(a)〜(c)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが110℃〜114℃にある。
【0095】
また、化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、以下の(d)の物性も有する。
(d)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1559cm-1、1477cm-1、1414cm-1、及び1264cm-1にある。
【0096】
化合物(A)のナトリウム塩の結晶の粉末X線回折パターンは図9に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図10に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図11に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図21に示した通りである。
【0097】
図9〜11及び21から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0098】
次に、化合物(A)のナトリウム塩の結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0099】
所定の溶媒に化合物(A)のA形結晶を溶解又は懸濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し作用させることにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のナトリウム塩の結晶を得ることができる。
【0100】
前記所定の溶媒の具体例としては、アセトン、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0101】
アセトンと水との混合溶媒における混合比は適宜に変更することができる。
【0102】
化合物(A)のナトリウム塩の結晶の結晶化は、通常0〜100℃で行う。好ましくは、0℃〜30℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0103】
析出した化合物(A)のナトリウム塩の結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離することができる。
【0104】
化合物(A)のナトリウム塩の結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。好ましくは、20℃〜40℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0105】
本発明化合物のカリウム塩の結晶について、以下に説明する。
【0106】
化合物(A)のカリウム塩の結晶は、以下の(a)〜(c)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが233℃〜237℃にある。
【0107】
また、化合物(A)のカリウム塩の結晶は、以下の(d)の物性も有する。
(d)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1603cm-1、1476cm-1、1391cm-1、及び1280cm-1にある。
【0108】
化合物(A)のカリウム塩の結晶の粉末X線回折パターンは図12に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図13に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図14に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図22に示した通りである。
【0109】
図12〜14及び22から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のカリウム塩の結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のカリウム塩の結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0110】
次に、化合物(A)のカリウム塩の結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のカリウム塩の結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0111】
第1の所定の溶媒に化合物(A)のA形結晶を溶解又は懸濁させ、水酸化カリウム水溶液を添加し作用させた後、溶媒を留去して得られた残渣に第2の所定の溶媒を加えることにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のカリウム塩の結晶を得ることができる。
【0112】
前記第1の所定の溶媒の具体例としては、アセトン、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0113】
前記第2の所定の溶媒の具体例としては、アセトン、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0114】
前記第2の所定の溶媒として使用できるアセトンと水との混合溶媒について、混合比は適宜に変更することができる。
【0115】
化合物(A)のカリウム塩の結晶の結晶化は、通常0〜100℃で行う。好ましくは、0℃〜30℃であり、さらに好ましくは、0℃〜5℃である。
【0116】
析出した化合物(A)のカリウム塩の結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離することができる。
【0117】
化合物(A)のカリウム塩の結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。好ましくは、20℃〜40℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0118】
本発明化合物のカルシウム塩の結晶について、以下に説明する。
【0119】
化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、以下の(a)〜(c)の物性を有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークを有する;
(b)赤外線吸収スペクトル(KBr法)において、特性吸収帯が、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1にある;並びに
(c)示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが196℃〜200℃にある。
【0120】
また、化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、以下の(d)の物性も有する。
(d)赤外線吸収スペクトル(ATR法)において、特性吸収帯が、1616cm-1、1576cm-1、1481cm-1、及び1235cm-1にある。
【0121】
化合物(A)のカルシウム塩の結晶の粉末X線回折パターンは図15に、赤外吸収スペクトル(KBr法)は図16に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図17に、赤外吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)は図23に示した通りである。
【0122】
図15〜17及び23から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
また、後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0123】
次に、化合物(A)のカルシウム塩の結晶の製造方法について説明する。
化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、たとえば、以下の方法により製造することができる。
【0124】
所定の溶媒に化合物(A)のナトリウム塩の結晶を溶解又は縣濁させ、塩化カルシウム(II)水溶液を添加し作用させることにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ取、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のカルシウム塩の結晶を得ることができる。
【0125】
前記所定の溶媒の具体例としては、エタノールなどの低級アルコール、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0126】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノールなどが挙げられる。好ましくは、エタノールである。
【0127】
エタノールと水との混合溶媒における混合比は適宜に変更することができる。
【0128】
化合物(A)のカルシウム塩の結晶の結晶化は、通常0〜100℃で行う。好ましくは、20℃〜30℃である。
【0129】
析出した化合物(A)のカルシウム塩の結晶は、溶液からろ取、遠心分離などにより溶媒と分離することができる。
【0130】
化合物(A)のカルシウム塩の結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。好ましくは、20℃〜40℃であり、さらに好ましくは、20℃〜30℃である。
【0131】
本発明の化合物は、互変異性を有し、種々の互変異性体が存在する。本発明の化合物は、それらの異性体、及びそれらの異性体を任意の割合で含んだ混合物も含む。
【0132】
PHD2(プロリルヒドロキシラーゼドメイン−2)とは、プロリルヒドロキシラーゼファミリーに属するタンパク質である。PHD2は、低酸素誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼ活性を有する酵素であり、特に、通常の酸素状態においてHIF−1α、HIF−2α、HIF−3α分子(以下一括してHIF−α分子と呼ぶ)の特定のプロリン残基を水酸化(ヒドロキシ化)する作用を有する。
【0133】
HIF−α因子は、造血因子であるエリスロポエチンの転写因子である。PHD2はHIFを水酸化することで分解へと促し、過剰なエリスロポエチン産生を抑制している。本発明化合物は、前述の通り優れたPHD2阻害作用を有する。したがって、PHD2の阻害によって、HIF−1α分子の特定のプロリン残基を水酸化することを防ぎ、HIF−α分子の安定化に寄与する。これによって体内のEPOの産生を促し、貧血又は貧血に関連する疾患を予防又は治療することができる。
【0134】
よって、本発明化合物は、PHD2阻害剤、EPO産生促進剤、又は貧血若しくは貧血に関連する疾患の予防又は治療剤の有効成分として用いることができる。
【0135】
ここで、「貧血」には、腎臓の機能低下によりEPO産生能が落ちることで発症する「腎性貧血」、鉄代謝の不全による「鉄欠乏性貧血」の他、特定の原因によるその他の型の貧血が含まれる。
【0136】
ここで、「貧血に関連する疾患」とは、慢性腎臓病、心不全などが挙げられる。
【0137】
また本発明化合物により、PHD2を阻害しHIF−αの安定化を促すことで、虚血性疾患の改善、炎症性疾患の改善が期待できる。またHIF−α安定化によりVEGFなど血管新生を促す因子の発現増加のほか、発現されたEPOによる臓器保護作用などが期待できる。ここで言う臓器とは、腎臓、すい臓、脳などが含まれる。
【0138】
本発明化合物は、単独又は薬学的あるいは薬剤学的に許容される担体又は希釈剤と共に投与することができる。
【0139】
本発明の化合物を医薬として用いるためには、固体組成物、液体組成物及びその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。本発明の医薬は、本発明の化合物に薬学的に許容されるキャリヤーを配合して製造することができる。具体的には、常用の賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などを添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等に調製する事ができる。賦形剤、増量剤としては、たとえば、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用されるものを挙げることができる。
【0140】
また、本発明化合物は、α、β若しくはγ−シクロデキストリン又はメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することができる。
【0141】
本発明化合物をPHD2阻害剤などとして使用する場合は、本発明化合物をそのまま経口投与、又は非経口投与してもよい。また、本発明化合物を有効成分として含む剤として経口投与、又は非経口投与してもよい。非経口投与としては、静脈内投与、経鼻投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、舌下投与があげられる。
【0142】
本発明化合物の投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによっても異なるが、例えば、成人の貧血を呈した患者に経口投与する場合、通常1回量として0.1mg〜1000mg、好ましくは1mg〜200mgであり、この量を、1日に1回〜3回、又は2日〜3日に1回投与するのが望ましい。
なお、本発明化合物は、医薬品として望ましい性質を有している。例えば、エリスロポエチンの過剰な産生を回避しうる性質が挙げられる。
【0143】
本発明化合物のPHD2阻害活性を評価するには、例えば、本明細書の試験例に記載した方法など、公知の手法に従って行うことができる。
【実施例】
【0144】
次に、以下に示す参考例、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0145】
本明細書中で用いられている略語は下記の意味を示す。
s : シングレット(singlet)
d : ダブレット(doublet)
t : トリプレット(triplet)
q : クァルテット(quartet)
quin : クィンテット(quintet)
sept : セプテット(septet)
dd : ダブルダブレット(double doublet)
dt : ダブルトリプレット(double triplet)
td : トリプレットダブレット(triplet doublet)
m : マルチプレット(multiplet)
br : ブロード(broad)
J : カップリング定数(coupling constant)
Hz : ヘルツ(Hertz)
CHLOROFORM−d : 重クロロホルム
DMSO−d: 重ジメチルスルホキシド
METHANOL−d : 重メタノール
posi : positive(mode)
nega : negative(mode)
【0146】
H−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)は下記のフーリエ変換型NMRで測定した。
200MHz: Gemini2000 (Agilent Technologies)
300MHz: Inova300 (Agilent Technologies)
600MHz: JNM−ECA600 (JEOL)
解析にはACD/SpecManager ver.12.01(商品名)、ACD/Spectrus ProcessorTMなどを用いた。水酸基やアミノ基などのプロトンが非常に緩やかなピークについては記載していない。
【0147】
MS(マススペクトル)は以下の装置にて測定した。
PlatformLC (Waters)
LCMS−2010EV (Shimadzu)
LCMS−IT−TOF (Shimadzu)
GCT (Micromass)
Agilent6130 (Agilent)
LCQ Deca XP (ThermoFisher Scientific)
イオン化法としては、ESI(Electrospray Ionization、エレクトロスプレーイオン化)法、EI(Electron Ionization、電子イオン化)法、又は、ESI及びAPCI(Atmospheric Pressure Chemical Ionization、大気圧化学イオン化)法とのデュアルイオン化法を用いた。データは実測値(found)を記載した。通常、分子イオンピークが観測されるが、水酸基(−OH)を有する化合物の場合、フラグメントピークとしてHOが脱離したピークが観測されることもある。塩の場合は、通常、フリー体の分子イオンピーク若しくはフラグメントイオンピークが観測される。
【0148】
分取高速液体クロマトグラフィー(分取HPLC)による精製は以下の条件により行った。ただし、塩基性官能基を有する化合物の場合、本操作でトリフルオロ酢酸を用いたときには、フリー体を得るための中和操作等を行う場合がある。
機械:Gilson社 preparative HPLC system
カラム:Waters SunFireTM Prep C18 OBDTM 5μm 30x50mm
流速:40mL/min、検出法:UV 254nm
溶媒:A液;0.1%トリフルオロ酢酸含有水、B液;0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=90/10)、2分(A液/B液=90/10)、12分(A液/B液=20/80)、13.5分(A液/B液=5/95)、15分(A液/B液=5/95)
【0149】
X線結晶構造解析にはXR−AXIS RAPID II(Rigaku)装置を用いた。
【0150】
赤外線吸収スペクトル(KBr法)は、Spectrum One(Perkin Elmer)にて測定した。
【0151】
赤外線吸収スペクトル(ATR法)は、IRAffinity−1(Shimadzu)にて測定した。
【0152】
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)は、Thermo Plus Evo TG8120(Rigaku)にて測定した。
【0153】
フェーズセパレーターは、バイオタージ社のISOLUTE(登録商標) Phase Separatorを用いた。
【0154】
マイクロウェーブ反応装置はBiotage社Initiatorを用いた。
【0155】
化合物の命名には、ACD/Name (ACD/Labs 12.01, Advanced Chemistry Development Inc.)等のソフトを使用している場合がある。
【0156】
元素分析は以下の装置にて測定した。
2400II (Perkin Elmer)
vario MICRO cube (elementar)
MT−6 (ヤナコ分析工業)
【0157】
イオンクロマト分析は以下の装置にて測定した。
DX500 (ダイオネクス)
XS100 (三菱化学)
ICS3000 (ダイオネクス)
【0158】
融点は以下の装置にて測定した。
MP−J3 (ヤナコ機器開発研究所)
【0159】
本明細書では、室温とは20℃〜30℃を指す。
氷冷下とは0℃〜5℃を指す。
【0160】
参考例1
6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−カルバルデヒド
【0161】
【化2】
4−クロロフェノール(277g)のN,N−ジメチルホルムアミド(2.00L)溶液へ炭酸カリウム(328g)を加え、室温にて攪拌した。反応系へ6−ブロモニコチンアルデヒド(401g)及びN,N−ジメチルホルムアミド(160mL)を加え、内温99℃にて2.5時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応液を水(3.24L)へ加えた。さらに水(2.16L)を加えた後、室温にて17時間攪拌した。生じた析出物を濾取し、減圧下乾燥して表題化合物を茶色固体(451g)として得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 7.02 - 7.16 (m, 3 H) 7.35 - 7.46 (m, 2 H) 8.21 (dd, J=8.5, 2.3 Hz, 1 H) 8.61 (d, J=2.3 Hz, 1 H) 9.99 (s, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 234[M+H]+.
参考例2
エチル N−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−β−アラニネート
【0162】
【化3】
6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−カルバルデヒド(290g)、β-アラニンエチルエステル塩酸塩(210g)及びクロロホルム(1.24L)の混合物へ氷冷下、酢酸(82.0g)及びトリエチルアミン(138g)を順次加えた後、30分攪拌した。反応液へナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(395g)を加え、室温にて3時間攪拌した後、水(3.00L)を加えた。炭酸水素ナトリウム(417g)を加えた後、1時間攪拌した。水層を分離した後、クロロホルムで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別した後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣(446g)へ酢酸エチル(1.78L)及びNHシリカゲル(447g)を加え、1.5時間攪拌した。沈殿物をセライト(登録商標)濾過にて濾別し、濾液を減圧下濃縮して表題化合物を茶色油状物(403g)として得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.20 - 1.30 (m, 3 H) 2.52 (t, J=6.4 Hz, 2 H) 2.84 - 2.92 (m, 2 H) 3.76 (s, 2 H) 4.07 - 4.20 (m, 2 H) 6.83 - 6.93 (m, 1 H) 7.01 - 7.11 (m, 2 H) 7.29 - 7.39 (m, 2 H) 7.61 - 7.75 (m, 1 H) 7.99 - 8.13 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 335[M+H]+.
【0163】
なお、表題化合物のマレイン酸塩を、以下に示す手法で得ることができる。
【0164】
【化4】
参考例2で得られたエチル N−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−β−アラニネート(300mg)を酢酸エチル(4.5mL)に溶解し、マレイン酸(104mg)のエタノール(0.45mL)溶液を加えた。エタノール(0.45mL)及び酢酸エチル(1.5mL)を加えて室温にて18時間攪拌した。不溶物を濾取し、エチル N−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−β−アラニネートのモノマレイン酸塩を無色固体(357mg)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.20(t,J=7.2 Hz,3 H)2.72(t,J=7.1 Hz,2 H)3.16(t,J=7.1 Hz,2 H)3.33(br s,1 H)4.11(q,J=7.2 Hz,2 H)4.18(s,2 H)6.02(s,2 H)7.13 - 7.22(m,3 H)7.45 - 7.53(m,2 H)7.97(dd,J=8.6,2.4 Hz,1 H)8.22(d,J=2.4 Hz,1 H)8.66(br s,2 H).
MS ESI/APCI Dual posi : m/z 335[(M-C4H4O4)+H]+.
【0165】
得られた表題化合物のマレイン酸塩は、塩基等を作用させてフリー体にして、参考例3の出発物質として用いることができる。
参考例3
エチル N−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−N−(3−エトキシ−3−オキソプロパノイル)−β−アラニネート
【0166】
【化5】
エチル N−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−β−アラニネート(403g)の酢酸エチル(4.02L)溶液へ、氷冷下トリエチルアミン(247g)を加え、続いてエチルマロニルクロリドを3回に分けて(219g、36.3g、39.2g)加えた。1時間攪拌した後、反応液へ水(2.00L)を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を9%炭酸水素ナトリウム水溶液及び10%食塩水で順次洗浄した。不溶物をセライト(登録商標)濾過にて濾別した後、濾液を減圧下濃縮して表題化合物を含む混合物を茶色油状物(590g)として得た。
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 449[M+H]+.
参考例4
ナトリウム 1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−3−(エトキシカルボニル)−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−オレート
【0167】
【化6】
参考例3で得られた混合物(590g)のエタノール(1.20L)溶液へ、ナトリウムエトキシド(約20%、エタノール溶液、820g)を加え、室温にて3時間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテル(4.26L)を加えた後、13時間攪拌した。沈殿物を濾取し、表題化合物を淡黄色固体(313g)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.02 - 1.20 (m, 3 H) 2.07 (t, J=6.5 Hz, 2 H) 3.02 - 3.18 (m, 2 H) 3.94 (q, J=7.1 Hz, 2 H) 4.43 (s, 2 H) 7.01 (d, J=8.4 Hz, 1 H) 7.10 - 7.19 (m, 2 H) 7.40 - 7.47 (m, 2 H) 7.74 (dd, J=8.4, 2.5 Hz, 1 H) 8.04 (d, J=2.2 Hz, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 403[M+H]+.
参考例5
tert−ブチル N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシネート
【0168】
【化7】
ナトリウム 1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−3−(エトキシカルボニル)−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−オレート(191g)の1,2−ジメトキシエタン(1.50L)懸濁液へ、グリシン tert−ブチル塩酸塩(90.4g)を加え、1時間還流した。室温まで冷却した後、シリカゲルパッドにて不溶物を濾別し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をn−ヘキサン−酢酸エチル混合液にて粉末化し、析出物を濾取して表題化合物を無色固体(154g)として得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.49 (s, 9 H) 2.47 - 2.70 (m, 2 H) 3.25 - 3.41 (m, 2 H) 3.99 - 4.07 (m, 2 H) 4.56 (s, 2 H) 6.86 - 6.97 (m, 1 H) 7.02 - 7.13 (m, 2 H) 7.31 - 7.39 (m, 2 H) 7.64 - 7.74 (m, 1 H) 8.03 - 8.11 (m, 1 H) 10.06 - 10.52 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 488[M+H]+.
参考例6
エチル N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシネート
【0169】
【化8】
参考例4で得られたナトリウム 1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−3−(エトキシカルボニル)−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−オレート(450g)、グリシンエチル塩酸塩(178g)及び1,2−ジメトキシエタン(3.53L)の混合物へ、トリエチルアミン(108g)を加え、内温79℃にて1時間攪拌した。室温まで冷却した後、10%塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を減圧下濃縮し、得られた濃縮物へ酢酸エチル(2.19L)及びシリカゲル(567g)を加え、1時間攪拌した。沈殿物をセライト(登録商標)濾過にて濾別し、濾液を減圧下濃縮した。得られた濃縮物をエタノールで再結晶し、表題化合物を無色固体(393g)として得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.30 (t, J=7.1 Hz, 3 H) 2.49 - 2.69 (m, 2 H) 3.29 - 3.42 (m, 2 H) 4.06 - 4.15 (m, 2 H) 4.24 (q, J=7.1 Hz, 2 H) 4.53 - 4.59 (m, 2 H) 6.88 - 6.97 (m, 1 H) 7.03 - 7.13 (m, 2 H) 7.30 - 7.40 (m, 2 H) 7.70 (dd, J=8.5, 2.4 Hz, 1 H) 8.04 - 8.11 (m, 1 H) 10.08 - 10.50 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 460[M+H]+.
参考例7
メチル N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシネート
【0170】
【化9】
参考例4で得られた1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−3−(エトキシカルボニル)−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−オレート(1.63g)に対して、グリシンエチル塩酸塩の代わりにグリシンメチル塩酸塩(0.578g)を用いて、参考例6と同様な反応を行い、表題化合物を無色固体(0.940g)として得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.49 - 2.71 (m, 2 H) 3.29 - 3.41 (m, 2 H) 3.78 (s, 3 H) 4.07 - 4.19 (m, 2 H) 4.52 - 4.59 (m, 2 H) 6.86 - 6.97 (m, 1 H) 7.03 - 7.11 (m, 2 H) 7.31 - 7.40 (m, 2 H) 7.70 (dd, J=8.4, 2.5 Hz, 1 H) 8.05 - 8.12 (m, 1 H) 10.06 - 10.50 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 446[M+H]+.
実施例1
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)
【0171】
【化10】
tert−ブチル N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシネート(175g)へ4mol/L塩化水素−1,4−ジオキサン溶液(1.50L)を加え、室温にて14時間攪拌した。減圧下溶媒を留去した後、得られた残渣へアセトンを加え、懸濁し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣へ再度アセトンを加え、沈殿物を濾取した。得られた濾取物へアセトン及び4mol/L水酸化ナトリウム水溶液(359mL)を順次加えた。30分攪拌した後、沈殿物を濾取した。得られた濾取物へ、20%クエン酸水溶液(1.04L)及び酢酸エチル(1.20L)を順次加え、15時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別した後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をアセトン−酢酸エチル混合液にて再結晶し、析出物を濾取した。得られた固体をペンタン−酢酸エチル混合液にて1時間懸濁攪拌した。沈殿物を濾取し、表題化合物を無色固体(139g)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.41 - 2.79 (m, 2 H) 3.34 - 3.54 (m, 2 H) 3.90 - 4.10 (m, 2 H) 4.44 - 4.65 (m, 2 H) 7.05 (d, J=8.4 Hz, 1 H) 7.12 - 7.21 (m, 2 H) 7.40 - 7.50 (m, 2 H) 7.79 (dd, J=8.4, 2.5 Hz, 1 H) 8.10 (d, J=2.0 Hz, 1 H) 9.90 - 10.27 (m, 1 H) 12.77 - 12.95 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 432[M+H]+.
【0172】
上記固体の粉末X線回折パターン及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、A形結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=5.1度、13.7度、20.6度、及び23.4度にピークが認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、171℃に吸熱ピークが認められた。
実施例2
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)
【0173】
【化11】
エチル N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシネート(5.00g)のエタノール(10.0mL)懸濁液へ水(10.0mL)を加えた。反応液へ2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(11.4mL)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液へ2mol/Lクエン酸水溶液(11.4mL)を加え、室温にて1時間攪拌した。沈殿物を濾取し、濾取物をエタノール−水混合溶液(1:3)及び水にて順次洗浄し、表題化合物を無色固体(4.57g)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.40 - 2.77 (m, 2 H) 3.30 - 3.52 (m, 2 H) 3.92 - 4.11 (m, 2 H) 4.45 - 4.64 (m, 2 H) 7.05 (d, J=8.4 Hz, 1 H) 7.12 - 7.21 (m, 2 H) 7.39 - 7.50 (m, 2 H) 7.73 - 7.86 (m, 1 H) 8.06 - 8.16 (m, 1 H) 9.90 - 10.29 (m, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 432[M+H]+.
【0174】
上記固体の粉末X線回折パターン、赤外線吸収スペクトル及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、A形結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=5.1度、13.7度、20.7度、及び23.4度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1622cm-1、1553cm-1、1481cm-1、及び1238cm-1に特性吸収帯が認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、169℃に吸熱ピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1617cm-1、1546cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1に特性吸収帯が認められた。
実施例3
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(B形結晶)
【0175】
【化12】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)(30mg)へ水−エタノール混合液(5:4)を加え、80℃水浴で加熱し溶液とした後、室温にて終夜静置した。窒素気流下にて溶媒を留去し、表題化合物を無色固体(30mg)として得た。
【0176】
上記固体の粉末X線回折パターン及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、B形結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=4.2度、7.2度、12.5度、及び15.0度にピークが認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、191℃に吸熱ピークが認められた。
【0177】
また、B形結晶の融点を測定したところ、191℃であった。
【0178】
なお、表題化合物は次の手法でも得ることができる。
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)(130g)、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(B形結晶)(6.95g)及びエタノール(2.74L)との混合物を室温下132時間攪拌した。沈殿物を濾取、減圧乾燥し、表題化合物を無色固体(134g)として得た。
【0179】
上記固体の粉末X線回折パターン、赤外線吸収スペクトル及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、B形結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=4.1度、7.2度、12.4度、及び15.0度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1646cm-1、1567cm-1、1483cm-1、及び1235cm-1に特性吸収帯が認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、194℃に吸熱ピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1647cm-1、1560cm-1、1482cm-1、及び1228cm-1に特性吸収帯が認められた。
実施例4
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(C形結晶)
【0180】
【化13】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)(30mg)へメタノールを加え、80℃水浴で加熱し溶液とした後、終夜氷冷攪拌した。氷冷下窒素気流下にて溶媒を留去し、表題化合物を無色固体(30mg)として得た。
【0181】
上記固体の粉末X線回折パターン及び赤外線吸収スペクトルを測定したところ、C形結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=15.4度、18.4度、21.8度、及び24.7度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1622cm-1、1556cm-1、1482cm-1、及び1238cm-1に特性吸収帯が認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1614cm-1、1551cm-1、1398cm-1、及び1235cm-1に特性吸収帯が認められた。
実施例5
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシンナトリウム(ナトリウム塩の結晶)
【0182】
【化14】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)(29.1g)のアセトン(1L)懸濁液へ1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(67.5mL)を加え、室温にて13時間攪拌した。生じた析出物を濾取し、表題化合物を無色固体(29.7g)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.40 - 2.60 (m, 2 H) 3.34 (t, J=6.9 Hz, 2 H) 3.47 (d, J=4.4 Hz, 2 H) 4.52 (s, 2 H) 7.04 (d, J=8.4 Hz, 1 H) 7.12 - 7.21 (m, 2 H) 7.40 - 7.49 (m, 2 H) 7.79 (dd, J=8.4, 2.3 Hz, 1 H) 8.09 (d, J=2.3 Hz, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 432[M+H]+.
MS ESI/APCI Dual nega: m/z 430[M-H]-.
元素分析:C20H19ClN3NaO7の理論値:C,50.91, H,4.06, N,8.91. 実測値:C,50.75, H,4.07, N,8.86.
イオンクロマトグラフィー:C20H19ClN3NaO7の理論値:Cl,7.51, Na,4.87. 実測値:Cl,7.43, Na,4.90.
【0183】
上記固体の粉末X線回折パターン、赤外線吸収スペクトル及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、ナトリウム塩の結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=14.1度、17.3度、19.1度、及び26.9度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1566cm-1、1478cm-1、1266cm-1、及び1246cm-1に特性吸収帯が認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、112℃に吸熱ピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1559cm-1、1477cm-1、1414cm-1、及び1264cm-1に特性吸収帯が認められた。
実施例6
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシンカリウム(カリウム塩の結晶)
【0184】
【化15】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシン(A形結晶)(1.00g)のアセトン(25.0mL)懸濁液へ1mol/L水酸化カリウム水溶液(2.32mL)を加え、室温にて30分間攪拌した。減圧下溶媒を留去した後、アセトン(25.0mL)を加えた。室温にて30分、続いて氷冷下30分攪拌した後、沈殿物を濾取し、表題化合物を無色固体(959mg)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.43 - 2.62 (m, 2 H) 3.35 (t, J=7.1 Hz, 2 H) 3.42 (d, J=4.4 Hz, 2 H) 4.53 (s, 2 H) 7.05 (d, J=8.5 Hz, 1 H) 7.13 - 7.22 (m, 2 H) 7.40 - 7.49 (m, 2 H) 7.79 (dd, J=8.4, 2.5 Hz, 1 H) 8.09 (d, J=2.3 Hz, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 432[M+H]+.
元素分析:C20H17.6ClKN3O6.3の理論値:C,50.54, H,3.37, N,8.84. 実測値:C,50.59, H,3.70, N,8.85.
イオンクロマトグラフィー:C20H17.6ClKN3O6.3の理論値:Cl,7.46, K,8.23. 実測値:Cl,7.38, K,8.39.
【0185】
上記固体の粉末X線回折パターン、赤外線吸収スペクトル及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、カリウム塩の結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=12.8度、14.5度、20.0度、及び25.6度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1607cm-1、1547cm-1、1477cm-1、及び1284cm-1に特性吸収帯が認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、235℃に吸熱ピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1603cm-1、1476cm-1、1391cm-1、及び1280cm-1に特性吸収帯が認められた。
実施例7
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシンカルシウム(カルシウム塩の結晶)
【0186】
【化16】
N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)ピリジン−3−イル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]グリシンナトリウム(ナトリウム塩の結晶)(800mg)のエタノール懸濁液(12.5mL)へ、水(12.0mL)を加えた。塩化カルシウム(II)(純度90%、105mg)の水溶液(2.00mL)を加え、室温にて16時間攪拌した。水(4.00mL)及びエタノール(2.00mL)を加え、2時間攪拌した。沈殿物を濾取、減圧下乾燥し、表題化合物を無色固体(754mg)として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.35 - 3.70 (m, 4 H) 3.72 - 3.85 (m, 2 H) 4.51 (s, 2 H) 7.02 (d, J=8.5 Hz, 1 H) 7.11 - 7.20 (m, 2 H) 7.40 - 7.49 (m, 2 H) 7.79 (dd, J=8.5, 2.3 Hz, 1 H) 8.10 (d, J=2.0 Hz, 1 H).
MS ESI/APCI Dual posi: m/z 432[M+H]+.
元素分析:C20H19Ca0.5ClN3O7の理論値:C,51.23, H,4.08, N,8.96. 実測値:C,51.23, H,4.12, N,8.88.
イオンクロマトグラフィー:C20H19Ca0.5ClN3O7の理論値:Cl,7.56, Ca,4.27. 実測値:Cl,7.31, Ca,4.26.
【0187】
上記固体の粉末X線回折パターン、赤外線吸収スペクトル及び示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)を測定したところ、カルシウム塩の結晶であった。
粉末X線回折パターンについては、2θ=4.9度、9.8度、12.4度、及び25.8度にピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(KBr法)については、1622cm-1、1575cm-1、1485cm-1、及び1236cm-1に特性吸収帯が認められた。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)については、198℃に吸熱ピークが認められた。
赤外線吸収スペクトル(ATR法、クリスタル:ダイヤモンド)については、1616cm-1、1576cm-1、1481cm-1、及び1235cm-1に特性吸収帯が認められた。
【0188】
本発明の化合物のPHD2に対する阻害活性を、以下に示す試験例1及び2に従って測定した。
試験例1
【0189】
(1)ヒトPHD2の発現・調製
ヒトPHD2の発現は、昆虫細胞(HighFive細胞)にて行った。ヒトPHD2登録配列(NM_022051)をpFastBac1ベクター(Invitrogen)に導入し、配列を確認した。当該ベクターをSf9昆虫細胞(Invitrogen)に導入し、ヒトPHD2バキュロウィルスを取得した。この組換えウィルスをHighFive昆虫細胞(Invitrogen)に感染させ、27℃で72時間培養後、各種プロテアーゼ阻害剤を含んだ細胞溶解溶液を加え破砕懸濁した。破砕懸濁溶液を4℃、100,000×g,30分間遠心し、上清を回収して細胞ライセートとした。ウエスタンブロット解析により、PHD2バキュロウィルス感染細胞ライセートにのみ、ヒトPHD2蛋白質の発現を確認した。
【0190】
(2)ヒトPHD2阻害活性の測定
ヒトPHD2酵素活性は、HIF−1αの配列を基にした19残基の部分ペプチドを基質として測定した。具体的には、ペプチド中に含まれるプロリン残基をPHD2酵素が水酸化する時に同時に起こる2−oxoglutarateからsuccinic acidへの変換反応を利用した。すなわち、[14C]−2−oxoglutarateを反応系に添加して酵素反応を開始し、反応後に残存している[14C]−2−oxoglutarateを2,4−dinitrophenylhydrazine(DNPH)と結合させ沈殿物としてフィルターで除去した。その後、生成した[14C]− succinic acidの放射カウントを測定した。
酵素及び基質は、6.67mM KCl、2mM MgCl2、13.3μM硫酸鉄、2.67mMアスコルビン酸、1.33mM DTTを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で希釈し、試験化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。
試験化合物、HIF−1αペプチドおよび[14C]−2−oxoglutarateを96穴プレートにあらかじめ添加し、ヒトPHD2酵素溶液(4μg/well)を添加することにより反応を開始した。37℃で15分間インキュベーションした後、DNPHを含む停止液を添加し、室温で30分間静置した。その後過剰量の放射能ラベルしていない2−oxoglutarateを添加し、室温で60分間静置した。生成した沈殿物をフィルターで除去し、[14C]−succinic acidの放射カウントを(マイクロベータにて)定量した。各ウェルの放射カウントを測定し、試験化合物のヒトPHD2阻害活性を、基質無添加群および試験物質無添加群の値に基づいて計算した。
【0191】
(3)結果
本発明化合物のヒトPHD2阻害率(%、試験化合物濃度は1μM)を以下の表1に示す。
【0192】
【表1】
【0193】
表1に示された結果より、化合物(A)は、優れたPHD2阻害作用を有することが示された。
試験例2
【0194】
(1)ヒトPHD2の発現・調製
ヒトPHD2の発現は、ヒト細胞(293FT細胞)にて行った。ヒトPHD2登録配列(NM_022051)をpcDNA3.1/Hygro(+)ベクター(Invitrogen)に導入し、配列を確認した。当該ベクターを293FT細胞(Invitrogen)に導入し、37℃、5%炭酸ガス存在下で48時間培養後、各種プロテアーゼ阻害剤を含んだ細胞溶解溶液を加え破砕懸濁した。破砕懸濁溶液を4℃、100,000×g、30分間遠心し、上清を回収して細胞ライセートとした。ウエスタンブロット解析により、細胞ライセートにヒトPHD2蛋白質の発現を確認した。
【0195】
(2)ヒトPHD2阻害活性の測定
ヒトPHD2酵素活性は、HIF−1αの配列を基にした19残基の部分ペプチドを基質として、ペプチド中に含まれるプロリン残基の水酸化をFP(Fluorescence Polarization)法にて測定した。
酵素及び基質は、12.5mM KCl、3.75mMMgCl、25μM硫酸鉄、5mMアスコルビン酸、2.5mM DTTを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で希釈し、試験化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。
試験化合物及び基質溶液を384穴プレートにあらかじめ添加し、ヒトPHD2酵素溶液(40ng/ well)を添加することにより反応を開始した。30℃で20分間インキュベーションした後、EDTAを含む停止液を添加し、HIF−OH抗体溶液を添加・結合させて、水酸化されたプロリン残基の量を蛍光偏光測定法により定量した。
各ウェルの蛍光偏光を測定し、試験化合物のヒトPHD2阻害活性を、試験物質無添加群の値に基づいて計算した。
【0196】
(3)結果
本発明化合物のヒトPHD2阻害活性について、阻害率(%、試験化合物濃度は1μM)を以下の表2−1に、また、IC50(nM)を以下の表2−2に示す。
【0197】
【表2-1】
【0198】
【表2-2】
【0199】
表2−1及び表2−2に示された結果からも、化合物(A)は、優れたPHD2阻害作用を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明により、N−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンは、優れたPHD2阻害作用を有することが示された。従って、本発明化合物は、貧血、貧血に由来する疾病等の予防又は治療薬として使用することが可能である。また、本発明のN−[(1−{[6−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル]メチル}−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジニル)カルボニル]グリシンの結晶は、優れた保存安定性、その他の物性を有しており、医薬品原体として有用である。
図1
図2
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