【実施例】
【0174】
全般的方法
細胞株、アンドロゲンおよびレポーター
LNCaP細胞は、FSKによるARのリガンド非依存的活性化で特徴づけられている高分化ヒト前立腺癌細胞であるため(Nazarethら 1996 J. Biol. Chem. 271, 19900〜19907; およびSadar 1999 J. Biol. Chem. 274, 7777〜7783)、すべての実験について、最初にLNCaP細胞を使用した。LNCaP細胞は、内在性ARを発現し、前立腺特異抗原(prostate-specific antigen)(PSA)を分泌する(Horoszewiczら 1983 Cancer Res. 43, 1809〜1818)。LNCaP細胞は、細胞培養液中での単層としてか、または去勢された宿主においてアンドロゲン
非依存性に発展する、はっきり特徴づけられた異種移植モデルにおける腫瘍としての、いずれかで成長させることができる(Satoら 1996 J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 58, 139〜146; Gleaveら 1991 Cancer Res. 51, 3753〜3761; Satoら 1997 Cancer Res. 57, 1584〜1589; およびSadarら 2002 Mol. Cancer Ther. 1(8), 629〜637)。PC3ヒト前立腺
癌細胞は機能的なARを発現しないため(Kaighnら1978 Natl. Cancer Inst. Monogr. 49, 17〜21)、該細胞をARに対する化合物の特異性を調べるために使用した。AR NTDを特異的に標的とする低分子は、PC3細胞に対して効果を有しないはずである。このことは、低分
子がARを特異的に阻害してその阻害効果を媒介する場合、低分子はPC3細胞の増殖を変化
させないはずであるということを意味する。R1881は安定であり、不安定な生理学的リガ
ンドのジヒドロテストステロン(DHT)と関連する諸問題を免れているため、R1881を使用した。いくつかの選択的なレポーター遺伝子コンストラクトを用いて、レポーターの特異性を決定することができる。広範に使用されている、よく特徴づけられたAREによって駆
動されるレポーター遺伝子コンストラクトには、いくつかのAREを含み、アンドロゲンお
よびFSKによって高度に誘導される、PSA(6.1 kb)エンハンサー(enhance)/プロモー
ター(Uedaら 2002 A J. Biol. Chem. 277, 7076〜7085)、ならびにARR3-チミジンキナ
ーゼ(tk)-ルシフェラーゼ(ARR3-thymidine kinase (tk)-luciferase)があり、該ARR3-チミジンキナーゼ(tk)-ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼレポーターの上流にラットプロバシンARE1領域およびARE2領域の3つのタンデムリピートを含む人工的なレポーター
コンストラクトである(Snoekら 1996 J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 59, 243〜250)。CMV-luc(AREがなく、構成的に活性である)を使用して、化合物が転写に対する普遍的な阻害効果は有していないと判定した。
【0175】
動物モデル
いくつかの実験では、SCIDマウスを使用した。ヒトの細胞株および移植性腫瘍は、免疫無防備状態の動物において生存し、SCIDマウスが最良の生着率(take rates)を示すため、SCIDマウスを選択した。すべての手順は、ブリティッシュコロンビア大学動物倫理委員会(University of British Columbia Committee for Animal Ethics)によって認可されており、毎年再審査されている。適切な動物保護を提供することができない緊急事態の場合、獣医または動物管理チーム(Animal Care Team)の裁量により動物を安楽死させる。獣医が検査および診察を担当する。署名された動物管理認可証(Animal Care Certificate)には、明確に「動物管理委員会(Animal Care Committee)は、上記実験計画または教育課程のために動物を使用することを検討および認可しており、関連する動物は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)によって発行された実験動物の管理
−カナダの指針(Care of Experimental Animals − A Guide for Canada)に含まれる原則に従って保護されることを保証している」と記載されている。
【0176】
皮下異種移植
LNCaPまたはPC3のヒト前立腺癌細胞(1×10
6個の細胞)の懸濁液150 μlを、6〜8週齢
のオスの胸腺欠損SCIDマウスに、27ゲージ針を用い、側腹部領域に、皮下接種した。接種は、動物のイソフルラン(isofluorane)麻酔下において行った。腫瘍生着率(tumor take rate)はおよそ75%である。100 mm
3の腫瘍を有するマウスを無作為に治療群に割り当てた。去勢を以下に記載する通りに行った。触知可能、または目に見えかつ少なくとも40 mm
3となったLNCaP皮下腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍容積(式:L×W×H×0.5236)を測定した。動物を毎日モニターし、腫瘍を5日ごとに測定した。
【0177】
実験期間
腫瘍容積(1000 mm
3を超えない)の評価を、皮下異種移植実験の終了を決定する基準とした。
【0178】
組織学的検査(histology)および免疫組織化学的検査(immunohistochemistry)
ルーチン的な組織学的検査のために、実験完了時に主要な器官および異種移植片を収集し、10%の中性緩衝ホルマリン中で固定し、次いでパラフィンで包埋した。固定した切片
を切断し、ヘマトキシリン・エオシンにより染色した。異種移植片における増殖速度およびアポトーシスに対する化合物の考えられる効果を特定するために、Ki-67での免疫染色
およびTUNELアッセイを行った。Ki-67での免疫染色では、処理した組織切片に対して、0.5 μg/ml(1:50)のIgG濃度のMIB-1モノクローナル抗体を用いた。ARレベルを免疫組織化学的検査またはウエスタンブロット解析によって測定した。
【0179】
進行を誘導するためのアンドロゲン除去
去勢によってアンドロゲン除去を完全なものにした。イソフルラン麻酔下で、5 mmの垂直の切開術を使用して、精巣が結合している精巣上体脂肪パッドを穏やかに取り除き、身体から精巣を除去した。精巣を血液供給物に結合させている索(cord)を縫合糸を用いて結紮し、次いで切断した。次いで索を腹腔に戻した。外科用縫合糸を使用して、切り口を閉じた。痛みを軽減するために、手術前にブプレノルフィン(0.05 mg/kg)を注射した。
【0180】
異種移植片および器官の回収
解析のためにすべての異種移植片および主要な器官を回収した。回収は、CO
2ガスによ
る心拍停止によって屠殺した後に行い、異種移植片または器官を免疫組織化学的検査の解析のために取り出した。
【0181】
安楽死
動物は、CO
2ガスによる心拍停止によって屠殺した。この方法は、動物管理委員会(Animal Care Committee)によって定められた方針であり、環境に配慮したものであり、効率的であり、経済的であり、倫理的に認可されている。
【0182】
化学合成
すべての反応は、火炎乾燥した丸底フラスコ中で行った。フラスコにはゴムセプタムを装着し、別段明示しない限り反応はアルゴンの陽圧下で行った。ステンレス鋼シリンジを使用して、空気および水分に敏感な液体を移した。230〜400メッシュのシリカゲルを用いて、Stillら(Still, W. C., Kahn, M., Mitra, A., J. Org. Chem. 1978, 43, 2923)に記載された通りにフラッシュカラムクロマトグラフィーを行った。蛍光指示薬(254 nm)を含浸させた0.25 mm、230〜400メッシュのシリカゲルで予めコーティングされたアルミ
ニウム板を用いて、薄層クロマトグラフィーを行った。薄層クロマトグラフィープレートを、紫外線およびp-アニスアルデヒド溶液(1%のp-アニスアルデヒド、2%のH
2SO
4、20%の酢酸、および77%のエタノール)に曝露し、続いてヒートガン(約250℃)を用いて加熱(約1分)することにより、可視化した。Buechi B-114ロータリーエバポレーターで、約25 torr、25〜30℃で、有機溶液を濃縮した。
【0183】
市販の試薬および溶媒を、入手した状態で使用した。抽出およびクロマトグラフィーに使用したすべての溶媒は、HPLCグレードのものであった。順相SiゲルSep paks(登録商標)をWaters社から購入した。薄層クロマトグラフィープレートは、Kieselgel 60F
254であった。すべての合成試薬は、Sigma Aldrich Canadaから購入した。
【0184】
プロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルは、逆プローブ(inverse probe)を備えたBruker 400、およびBruker 400分光計を用いて25℃で記録し、これはδスケールにおいて
パーツパーミリオンで報告しており、そしてこれはNMR溶媒(CDCl
3:δ 7.24(CHCl
3)、DMSO-d
6:δ 2.50(DMSO-d
5))中の残存プロチウムを基準としている。データを以下の
ように報告する:化学シフト[多重度(s=シングレット、d=ダブレット、dd=ダブレットオブダブレット、ddd=ダブレットオブダブルダブレット、dm=ダブルマルチプレット、t=ト
リプレット、m=マルチプレット)、ヘルツ単位の結合定数、積分値(integration)]。カ
ーボン13核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルは、Bruker 400分光計を用いて記録し、これ
はδスケールにおいてパーツパーミリオンで報告しており、そしてこれは溶媒(CDCl
3:
δ 77.23、DMSO-d
6:δ 39.51)の炭素共鳴を基準としている。データを以下のように報
告する:化学シフト。フッ素核磁気共鳴(
19F NMR)スペクトルは、Bruker 300分光計を
用いて、25℃で記録し、δスケールにおいてパーツパーミリオンで報告している。データを以下のように報告する:化学シフト[多重度(td=ダブレットオブトリプレット)、ヘルツ単位の結合定数]。
【0185】
実施例1
いくつかのスクリーニング(screens)を適用して、AR NTDの活性を阻害する活性化合
物を同定した。最初のスクリーニング(screen)は、培養液中に保持されたLNCaP細胞を
含む(comprising of)、細胞に基づくアッセイであった。該アッセイは、アンドロゲン
(リガンド依存性)およびホルスコリン(リガンド非依存性)の双方を用いてARを活性化すること、ならびに粗製の抽出物の存在下および非存在下でLNCaP細胞による分泌されたPSAレベルを測定すること、から構成される。PSAは、いくつかのよく特徴づけられたAREを含む、アンドロゲンによって制御される遺伝子である。PSA遺伝子発現におけるアンドロ
ゲン非依存性の増大は、ARに依存する機構によって前立腺癌細胞で起こる。PNG 01-185抽出物は、アンドロゲンおよびホルスコリンの双方によって誘導されるPSAの分泌を阻止す
ることが観察された。
【0186】
内在性PSAタンパク質に対するPNG 01-185抽出物の阻害効果が転写レベルでのものであ
ることを保証するために、レポーター遺伝子コンストラクトも調べた。LNCaPヒト前立腺
癌細胞において、PSA-ルシフェラーゼレポーター遺伝子コンストラクトまたはARR3-ルシ
フェラーゼレポーターなどの、アンドロゲン応答エレメント(ARE)を含むアンドロゲン
応答性レポーターを測定することによって、内在性ARの活性化を測定した。単層として保持したLNCaP細胞にPSA-ルシフェラーゼをトランスフェクションし、該細胞を用いて海綿
から調製した粗製の抽出物およびいくつかの選択した市販の化合物をスクリーニングした。PSA-lucはアンドロゲンによって高度に誘導され、アンドロゲンの非存在下ではFSKによって誘導されるため、PSA-lucおよびARR3-lucの双方の測定を行った。R1881(1 nM)によりARのリガンド依存的活性化をもたらし、FSKの濃度(50 μM)によりARのリガンド非依
存的活性化をもたらした。PNG 01-185は、R1881およびFSKの双方によって誘導されるPSA-ルシフェラーゼの活性を阻止することが観察された(
図1)。対照は、ARを発現しない細
胞株での実験およびAREを含まない他のレポーターについての平行して行った実験を含む
ものであった。
【0187】
PNG 01-185抽出物を
図2に示すスキームに従って分画して、PNG 01-185-17を生じさせた。PNG 01-185-17の各画分をARR3-lucの活性について再度調べたところ、画分3および画分8は少なくとも50%の阻害を示した(
図3)。次に、これらの画分の、AR NTDの阻害能につ
いて調べた。
図4に示すように、LNCaP細胞にGal4DBD-AR
1-558および相補的な(complimentary)5XGal4UAS-ルシフェラーゼレポーターの発現ベクターをコトランスフェクション
した。FSKによるこのレポーターの誘導は、Gal4DBD-AR
1-558融合タンパク質のトランス活性化の尺度である(Sadar 1999 J. Biol. Chem. 274, 7777〜7783)。上記で同定した抽
出物を、商業的な供給業者から購入したいくつかの化合物とともに、かかるアッセイによってスクリーニングした。R1881は、かかるアッセイを誘導せず(Gal4DBD-AR
1-558キメラには存在しないARのリガンド結合ドメイン(LBD)に結合する)、そのため陰性対照とし
た場合以外は使用しなかった。これらの研究によりPNG 01-185-17-8がAR NTDの活性化を
阻害することが示された。
【0188】
表3における以下のもの:
【0189】
【表3-1】
【0190】
【表3-2】
【0191】
は、上記アッセイを用いて活性を示した、海綿抽出物に由来する化合物または市販の化合物の化学構造である。
【0192】
用量的な反応を示したそれぞれのヒット(hit)について、IC50を測定した。実施例2に記載したように、同定した抽出物を使用して、ARのトランス活性化に対する阻害効果をもたらした天然化合物のライブラリーから、精製形態の化合物を単離し、続いて実施例3に
記載した第二のスクリーニングを行った。
【0193】
表4における以下の化合物は、上記のアッセイにおいて活性を示さなかった。
【0194】
【表4】
【0195】
活性のある化合物のいくつかがBADGE(ビスフェノールAジグリシドエーテル(Bisphenol A Diglycidic Ether))に構造上類似することは、それらが工業起源のものである可能性が高いことを示している。収集した海綿は、おそらく汚染された海水からこれらの化合物を生物濃縮したものである。このことは、これらの化合物がどのような他の状況下においてもバイオアッセイでスクリーニングされた可能性が低いため、偶然の事象であった。
【0196】
実施例2
実施例1において記載した抽出物から精製された活性化合物を単離した。パプアニュー
ギニアのロロアタ島(Loloata Island)付近の保護された岩礁の岩の下から、5 Mの深さ
のところで、スキューバ(SCUBA)を用いて、ゲオジア・リンドグレニ(Geodia lindgreni)(Lendenfeld, 1903)試料を手で収集した。その後、その凍結させた海綿(890 g)をMeOHで徹底的に抽出し、その粗製の抽出物は、実施例1で上述したアッセイにおいて活性
があると認められた。セファデックス(Sephadex)LH20による逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー、および逆相グラジエントHPLCを連続的に適用することによって、該抽出物のバイオアッセイに導かれる分画により、PNG01-185-017-2、PNG01-185-017-5、PNG01-185-017-6、PNG01-185-017-7、およびPNG01-185-017-8の精製試料を得た(
図2)。NMRデ
ータおよびMSデータを分析することによってこれらの構造を明らかにし、該構造を上に実施例1において示している。
【0197】
活性抽出物のバイオアッセイに導かれる分画は、標準的なプロトコルに従うものであった。最初に、該粗製抽出物を水に懸濁させ、ヘキサン、CH
2Cl
2、およびEtOAcを用いて連
続的に抽出して、極性が異なる4つの細画分(sub-fractions)を生じさせた。この最初の分画に由来する活性画分について行った最初のクロマトグラフィーは、純粋なメタノールまたは混合溶媒系のいずれかを溶離液として用いる、セファデックス(Sephadex)LH20によるクロマトグラフィーであった。状況が必要とする場合、その後の分画を、オープンカ
ラムフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーもしくはフラッシュ逆相クロマトグラフィー、HPLC(順相および/もしくは逆相)、または遠心向流クロマトグラフィー(Ito Coil
装置を用いる)などによって行った。カナダのアルバータ州(Alberta)エドモントン(Edmonton)において、クライオプローブを備えたBruker AV600 NMR分光計、およびNANUC Varian 800 MHz NMR分光計を含む、一次元および二次元のNMR技術ならびに質量分析法を用いて、分光分析によって、新規な代謝産物の構造を解明した。実施例1において上述した
スクリーニング(ARE-ルシフェラーゼの活性、およびNTDのトランス活性化)を用いて精
製した化合物の活性について調べ、次いで実施例3において記載した第二のスクリーニン
グに使用した。
【0198】
実施例3
第二のスクリーニングを適用することによって、化合物を検証した。アンドロゲン受容体のN末端ドメイン(ARのNTD)のトランス活性化;他のステロイド受容体(特異性);PSA mRNAの内在性発現;AREに対するARの相互作用;N/C相互作用;およびアンドロゲンに応答した前立腺癌細胞の増殖、を阻害する能力について精製した化合物を試験した。
【0199】
AR NTDのトランス活性化
血清およびアンドロゲンの非存在下で、ホルスコリン(FSK)(PKAの活性を刺激する)およびIL-6はいずれも、ARのNTDのトランス活性化に関連する機構によって、前立腺癌細
胞におけるPSA遺伝子の発現を増大させる(Sadar, M.D., J. Biol. Chem. 274, 7777〜7783 (1999); Ueda, T., Bruchovsky, N., Sadar, M.D., J. Biol. Chem. 277, 7076〜7085
(2002); Ueda, T., Mawji, N.R., Bruchovsky, N., Sadar, M.D., J. Biol. Chem. 277,
38087〜38094 (2002 B); Quayle SN, Mawji NR, Wang J, Sadar M.D., Proc Natl Acad Sci U S A. 2007年1月23日; 104(4):1331〜6)。ヒトAR NTDのアミノ酸1〜558をGal4DBD
のC末端中へクローニングすることによって、AR NTDのトランス活性化を阻害する185-9-2の能力を試験した。こうしたキメラタンパク質の発現ベクターを、シス作用エレメントとしてのGal4結合部位を含むレポーター遺伝子(p5xGal4UAS-TATA-ルシフェラーゼ)とともに、LNCaP細胞中にコトランスフェクションした。細胞をビカルタミド(BIC、10 μM)または185-9-2(5 ug/ml=12 μM))で前処理してから、FSKまたはIL-6を加えた。ビカルタミドはARのLBDに結合し、これはGal4DBD-AR
1-558キメラには存在しないため、対照は、かかるアッセイに影響を及ぼさないビカルタミドを含むものであった。185-9-2は、ARのNTDのFSKによって誘導されるトランス活性化、およびIL-6によって誘導されるトランス活性
化の双方を基底レベルにまで減少させることが観察された(
図5)。185-9-2は、AR NTDのトランス活性化の阻害について、約6.6 μMのIC
50を有していると認められた。
【0200】
ステロイド受容体特異性
ARと、関連するヒトステロイド受容体PRおよびグルココルチコイド受容体(GR)とのアミノ酸の配列類似性は、DBDなどの一部のドメインにおいて、相当なものである。AR NTD
は、PRおよびGRと、15%未満の相同性しか共有していないが、これらの受容体は、いくつ
かの同じタンパク質(例えばSRC-1およびCBP)と相互作用する。そのため、レポーター遺伝子アッセイを用いて、AR活性を阻害する候補化合物がGRおよびPRの転写活性に効果を有するかを決定した。細胞に、全長のhGR、PRβ、および関連するレポーター(すなわちpGR-LucレポーターまたはPRE-E1b-Lucレポーター)の発現プラスミドで、コトランスフェク
ションした。次いで細胞をエタノールビヒクル、デキサメタゾン(GR)、4-プレグネン-3,20-ジオン(4-pregnene-3,20 dione)(プロゲステロン)(PR)で処理し、続いてルシ
フェラーゼ活性を測定した。185-9-2は、ARの転写活性を阻害したが、リガンドに応答し
てPRE-ルシフェラーゼの活性も、GRE-ルシフェラーゼの活性も阻害しなかった(
図6)。
対照的に、ビカルタミド(10 μM)は、PRの転写活性を阻害した。クリニックで現在使用される抗アンドロゲン剤には、プロゲステロン活性およびグルココルチコイド活性を有するものもある。成人男性において、PR活性の役割は、不明である。185-9-2は、他のステ
ロイド受容体のトランス活性化を阻害しない。これらの研究はまた、185-9-2がこれらの
ルシフェラーゼレポーターの誘導をそれらの同種の(cognant)リガンドに応答して阻害
しなかったため、185-9-2は転写または翻訳に対する非特異的および普遍的な効果は有し
ないという証拠も提供する。185-9-2は、いくつかのAREを含み、アンドロゲンおよびFSK
によって誘導されるPSA-ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性を阻止するため、185-9-2の阻害効果は、転写レベルのものであることが支持される。これらの研究は、185-9-2がARに対して特異的であることを示唆しており、他のステロイド受容体が影響を受ける場合とは対照的に、全身的送達からの副作用はほとんどないはずであることを暗示している。
【0201】
内在性遺伝子の発現
LNCaP細胞において、R1881(リガンド依存性)およびFSK(リガンド非依存性)の双方
によるPSA mRNAの誘導は、ARに依存している(Sadar, M.D., J. Biol. Chem. 274, 7777
〜7783 (1999); Wang G, Jones SJ, Marra MA, Sadar MD, Oncogene 2006; 25:7311〜23
)。化合物が内在性遺伝子の発現に対して効果を有するかどうかを試験するために、R1881に曝露したLNCaP細胞におけるPSA mRNAレベルを測定した。LNCaP細胞(無血清であり、
フェノールレッドを含まない培養液中)を化合物とともに1時間インキュベートしてから
、R1881(1 nM)を加え、さらに16時間インキュベートしてから、全RNAを収集し、単離した。QPCRを用いてmRNAレベルを測定した。PSA mRNAレベルをGAPDH mRNAレベルに対して正規化した。185-9-2は、R1881による内在性PSA mRNAの誘導をほぼ基線レベルにまで阻止するものと認められた(
図7)。
【0202】
DNA上でのARのAREとの相互作用
クロマチン免疫沈降(ChIP)を用いて、クロマチン構造との生理学的な関連において、PSA遺伝子のエンハンサー領域で、ARが内在性AREに結合することを185-9-2が妨げるかを
評価した。ARは、PSAプロモーターのARE上での恒常的な占有を示し、一方エンハンサーAREは、アンドロゲンに応答して、誘導可能に占有する(Jia L, Coetzee GA., Cancer Res.
2005年9月1日; 65(17):8003〜8)。これらの調節領域上でのARの占有は、アンドロゲン
治療から16時間でピークになる(Jia L, Choong CS, Ricciardelli C, Kim J, Tilley WD, Coetzee GA., Cancer Res. 2004年4月1日; 64(7):2619〜26; Louie MC, Yang HQ, Ma AH, Xu W, Zou JX, Kung HJ, Chen HW., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003年3月4日; 100(5):2226〜30; Wang Q, Carroll JS, Brown M., Mol Cell. 2005年9月2日; 19(5):631〜42)。LNCaP細胞を、185-9-2を加えて、または185-9-2なしで、DHTで短時間(3時間)また
は最適な時間(16時間)処理してから、1%のホルムアルデヒドで架橋し、細胞を収集した。細胞を溶解させ、超音波処理し、抽出物を抗AR抗体を用いる免疫沈降に使用した。185-9-2は、LNCaP細胞において、アンドロゲンに応答し、PSAエンハンサー上でARがAREと相互作用することを阻害した(
図8A)。ARのAREとの相互作用の減少は、ARタンパク質レベル
の減少によるものではなかった。これらの同じ時点で収集したLNCaP細胞から調製した、
溶解物全体に由来するARタンパク質をウエスタンブロット解析すると、185-9-2は、ARタ
ンパク質レベルを減少させないことが明らかになった(
図8B)。LNCaP細胞を185-9-2とともに長時間インキュベートしてもまた、ARタンパク質レベルは減少しなかった(
図9)。
したがって、185-9-2は、ARタンパク質レベルを減少させることによって、ARの転写活性
を阻害するのではないと考えられる。このことは、185-9-2の作用機構が、ARタンパク質
レベルを減少させ、他の研究所で探究されているAR mRNAハンマーヘッド型リボザイム、AR siRNA、ピラノクマリン、カルパイン、フェネチルイソチオシアナート、フルベストラ
ント、デクルシン、LAQ824、およびバイカレインなどの他の化合物には類のないものであることを示唆している。
【0203】
185-9-2はARの核移行を妨げない
これらの阻害剤のいずれかがARのトランス活性化を減少させ得る別の考えられる機構は、ARタンパク質の核移行を妨害することを含み得る。アンドロゲン、または別の経路によ
る刺激の双方が存在しない場合、ARは主として細胞質内に存在する。細胞分画および蛍光顕微鏡法(
図10のA、B)により、185-9-2は、アンドロゲンの非存在下で単独でARの核
移行を引き起こさず、アンドロゲン(ジヒドロテストステロン(dihydrotestsosterone)、DHT)に応答したARタンパク質の核移行も妨げないことが明らかになった。
【0204】
N/C相互作用
ARのリガンド依存性の活性は、逆平行二量体の形成のための、アミノ(N)末端とカル
ボキシ(C)末端との間の相互作用を必要とする(He B, Kemppainen JA, Voegel JJ, Gronemeyer H, Wilson EM., J Biol Chem. 1999, 274(52):37219〜25)。ビカルタミド、フ
ルタミド、およびシプロテロンアセタートなどの抗アンドロゲン剤は、単独でこの相互作用を刺激せず、それぞれの抗アンドロゲン剤は、アンドロゲンによって誘導されるN/C相
互作用を阻害する(Wong, C. I., Zhou, Z. X., Sar, M.およびWilson, E. M. (1993) J.
Biol. Chem. 268, 19004〜19012; Langley, E., Zhou, Z. X.およびWilson, E. M. (1995) J. Biol. Chem. 270, 29983〜29990; Kemppainen, J. A., Langley, E., Wong, C. I., Bobseine, K., Kelce, W. R.およびWilson, E. M. (1999) Mol. Endocrinol. 13, 440
〜454; Masiello D, Cheng S, Bubley GJ, Lu ML, Balk SP. (2002) J. Biol. Chem., 277, 29, 26321〜26326)。哺乳動物ツーハイブリッドシステムを使用して、この相互作用
を測定した。N末端でVP16に融合したAR NTDの1〜565番アミノ酸の融合タンパク質の発現
ベクター(VP16-ARTAD、N末端)、ARのLBDに融合したGal4のDBDの発現ベクター(アミノ
酸628〜919;Gal4-ARLBD;C末端)、およびGal4-ルシフェラーゼレポーターを、CV1細胞
にコトランスフェクションした(Masiello D, Cheng S, Bubley GJ, Lu ML, Balk SP. (2002) J. Biol. Chem., 277, 29, 26321〜26326)。アンドロゲンの非存在下では、VP16-ARTADとGal4-ARLBDとの間の検出できる相互作用はなかった(
図11)。アンドロゲンは、ビカルタミドによって阻止されたルシフェラーゼ活性の増大によって測定されるこの相互作用を刺激した(例えばMasiello D, Cheng S, Bubley GJ, Lu ML, Balk SP. (2002) J. Biol. Chem., 277, 29, 26321〜26326も参照されたい)。重要なことに、185-9-2は、アン
ドロゲンによって刺激されるN/C相互作用を阻害すると認められた(縦列6および2を比較
されたい)。したがって、185-9-2は、N/C相互作用を妨げることによって、ARの転写活性を阻害すると考えられる。
【0205】
増殖アッセイ
前立腺は、アンドロゲン依存性の器官であり、該器官ではアンドロゲンが支配的な分裂促進性刺激となっている(Isaacs JT, Scott WW, Coffey DS., Prog Clin Biol Res. 1979;33:133〜44)。このアンドロゲンへの依存性は、化学的去勢または去勢手術により前立腺癌を治療する、根底にある理論的根拠を提供する。アンドロゲン(0.1 nM)は、LNCaP
細胞の増殖を刺激する。臨床的に使用される抗アンドロゲン剤について観察されるのと同様に、185-9-2によるARのAF-1機能の妨害によってLNCaP細胞のアンドロゲン依存性の増殖が減少するかどうかを調べるために、LNCaP細胞を、ビカルタミド(10 μM、陽性対照)
または185-9-2(5 μg/ml)で1時間前処理してから、0.1 nMのR1881を加えた。4日後にBrdUの取り込みを測定すると、アンドロゲンに応答して増殖の変化を示した(
図12)。R1881(0.1 nM)は、対照(R1881および低分子のビヒクル)よりも増殖を増大させた。185-9-2は、アンドロゲンによって誘導される増殖の阻止において、ビカルタミドと同じくらい
効果的であると認められた。185-9-2は、機能的なARを発現しないPC3ヒト前立腺癌細胞の増殖を阻止しないと認められ(
図13、p>0.05)、したがって成長および生存についてARに依存しない(Kaighnら1978 Natl. Cancer Inst. Monogr. 49, 17〜21)。
【0206】
実施例4
皮下異種移植モデルを用いて、インビトロでアンドロゲン受容体の活性化を阻害する低分子がこうした腫瘍に対して何らかの効果を有するかどうかを調べた。LNCaP皮下異種移
植モデルおよびPC3皮下異種移植モデルを用いて、PNG01-185-017-9-2をインビボで調べた
。毒性、ARの内在性発現の必要性、ならびにPNG01-185-017-9-2が腫瘍成長およびアンド
ロゲン非依存性への進行に対して効果を有するかどうか、に関連する情報を提供するために、インビボ実験を行った。両方の異種移植モデルにおいて腫瘍容積をモニターした。
【0207】
PNG01-185-017-9-2はLNCaP異種移植片の腫瘍容積を減少させた
LNCaPヒト前立腺癌細胞は、内在性アンドロゲン受容体(AR)および前立腺特異抗原(PSA)を発現し、去勢された宿主においてアンドロゲン非依存性に発展する。LNCaP細胞(10
6個/ml)を少なくとも8週齢のNOD-SCIDオスマウス群に皮下移植した。細胞を75 μlのマトリゲル(Matrigel)を伴う75 μlのRPMI培地1640(5%のFBS)中に懸濁させ、麻酔下で
宿主の側腹部領域に注射した。腫瘍がおよそ100 mm
3(平均値=131.1±24.9 mm
3;n=19)
となったときに動物を去勢し、無作為に2つの群に分けた。去勢の1週間後、動物を20 mg/kg体重の腫瘍内(intratumoral)(i.t.)用量の185-9-2、または対等の容積のビヒクル
(対照のDMSO)で5日ごとに処置した。動物に25日の期間にわたって185-9-2を注射し、動物を最後の注射の5日後に収集した。合計5回の用量を動物に与えた。腫瘍容積および体重を5日ごとに測定した。185-9-2は、最初の注射後でさえも、腫瘍を有意に減少させると認められた(
図14)。実験の間に、185-9-2で処理した腫瘍は35.4±15.7 mm
3であったが
、ビヒクルで処理した腫瘍は成長を続け、435.6±334.9 mm
3であった。したがって、185-9-2は、腫瘍容積を減少させると認められ、単に成長を遅らせるものではなかった。この
ことは、185-9-2がアンドロゲン非依存性前立腺癌に対して治癒力のあるものであり得る
ことを示唆している。関連する化合物であるラセミ体のBADGE・2HCl(B3)の腫瘍内(I.T)送達もまた、185-9-2と同じ治療計画に従って、腫瘍容積を、成長させ続ける(105.2±15.1 mm
3から始まって256.6±73.4 mm
3まで)DMSOの腫瘍内(I.T.)送達と対比される、109.6±17.4 mm
3から79.0±63.6 mm
3に減少させると認められた(
図15のA)。血清PSAの測定値は、腫瘍容積のデータと相関していた(血清PSAのデータは示していない)。
【0208】
重要なことに、1日おきの尾静脈注射(50 mg/kg体重)による静脈内(i.v.)送達によ
り、同様の速度の腫瘍の細胞減少(cytoreduction)が示された(
図15のA)。185-9-2
の静脈内(i.v.)注射は、わずか2週間以内に、腫瘍を105.6±12.0 mm
3から64.3±29.6 mm
3に減少させると認められたが、DMSOの静脈内(i.v.)注射を受けた動物においては、腫瘍は187.9±42.8 mm
3であった。これらの有望なデータにより、全身的送達がアンドロゲ
ン非依存性前立腺癌の減少に有効であることが強調される。アポトーシスマーカー(TUNEL)および増殖マーカー(Ki67)を用いた免疫組織化学的検査(Immunohistochemistry)
(IHC)により、185-9-2の静脈内送達がアポトーシスを増大させ、増殖を減少させたことが示され(
図15のB)、このことは腫瘍の細胞減少(cytoreduction)と整合している。IHCデータは、治療に対して理解力のない商業的な試験所によって作成された。185-9-2は、動物の挙動または体重に変化がないことによって示される、動物に対する一般的な毒性をもたらすものではないと認められた(
図14のCおよび
図15のC)。静脈内(i.v.)送達によって185-9-2またはDMSOを受けたマウスから収集した肺、心臓、肝臓、脾臓、およ
び腎臓の切片を病理学的に精査すると、毒性の徴候は示されなかった(
図16)。
【0209】
収集した異種移植片におけるARタンパク質レベル
IHC(
図17のA)およびウエスタンブロット解析(
図17のB)は、185-9-2の静脈内送達(I.V.)または腫瘍内(I.T)送達が、ビヒクルで処理した異種移植片におけるARタン
パク質レベルと対比して、異種移植片におけるARタンパク質レベルを減少させなかったという証拠を提供する。異種移植片試料における上皮細胞の量を示すものとしてサイトケラチン18レベルを測定した。
【0210】
血管形成に対する効果
前立腺癌における血管形成は、主として血管内皮増殖因子(VEGF)に依存している。テストステロンは、前立腺におけるVEGFの強力な誘発因子であり(Haeggstroemら 1999 J U
rol. 161, 1620〜1625)、アンドロゲン非依存性腫瘍におけるVEGFの再発現は、アンドロゲンによって制御される遺伝子の再発現と一貫性がある(Gregoryら 1998 Cancer Res. 58, 5718〜5724)。VEGFの発現は、アンドロゲン非依存性(Mitsiadesら 2001 Expert Opin Investig Drugs. 10, 1099〜1115)および侵襲性の転移性疾患(Harperら 1998 J Pathol. 186, 169〜177; Balbayら 1999 Clin Cancer Res. 5, 783〜789; Melnykら 1999 J Urol. 161, 960〜963)と関連している。収集した腫瘍におけるVEGFの染色は、PNG01-185-017-9-2がVEGFの発現を阻害したことを示している(
図18)。
【0211】
去勢しなかった宿主における皮下PC3異種移植モデル
化合物が全身腫瘍組織量を減少させるためには内在性ARが発現していなければならないのかどうかの指標を与えるために、PC3異種移植モデルを使用した。PC3は、機能的なARを発現しないヒト前立腺癌細胞であり、したがって、AR NTDのトランス活性化を阻止するその特異性について選択されているこうした低分子による治療には反応しないはずである。PC3細胞をNOD-SCIDオスマウス群に皮下移植した。腫瘍がおよそ100 mm
3(n=9および10;
平均腫瘍容積=112.1±19.7 mm
3)となったときに、動物を無作為に2つの群に分けた。20 mg/kg体重の皮下用量で動物を5日ごとにPNG01-185-017-9-2または対等の容積のビヒクル
(対照のDMSO)で処置した。腫瘍容積および体重を5日ごとに測定した。LNCaP異種移植片とは対照的に、PNG01-185-017-9-2は腫瘍を減少させなかったが、PC3異種移植片の成長をわずかに遅らせた(
図19のA、B)。本明細書に示した先の実験と一貫して、動物の挙動によって示され、体重によって測定される毒性は、処置期間全体にわたって認められなかった(
図19のC)。
【0212】
実施例5
185-9-2の送達を向上させるために、BADGE・HCL・H2Oのグリシンエステル誘導体(
図20のA)を調製した。これは自由に水に溶解する。この化合物を細胞に基づく試験に付し
たところ、この化合物はインターロイキン6(IL-6)によって誘導されるARのNTDのトランス活性化を阻害すると認められた(
図20のB、レーン2をレーン4と比較されたい)。
【0213】
以下の表5は、示した化合物に関する実験データを含む。
【0214】
【表5-1】
【0215】
【表5-2】
【0216】
実施例6
(R)-BAGE(1)
【0217】
【化28】
【0218】
アルゴン雰囲気下、鉱油中60%の分散液としてのNaH(96 mg、2.40 mmol、2.2当量)を
無水ジメチルホルムアミド(5 mL)中に懸濁させた。この混合物を0℃に冷却し、ビスフ
ェノールA(250 mg、1.09 mmol、1当量)を加えた。15分後、シリンジによって(R)-エピ
クロロヒドリン(214 μL、2.73 mmol、2.5当量、99% ee)を加え、混合物を7時間室温で反応させた。次いでその溶液を脱イオン水(約3 mL)を用いてクエンチし、混合物を酢酸エチル(3×3 mL)で抽出した。有機層を脱イオン水(2 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネ
シウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および2%のメタノールを含むジクロロメタン)で精製して、(R)-BAGE(67 mg、22%)を白色の泡沫状残渣として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 9.13 (s, 1H), 7.09 (d, J = 8.8, 2H), 6.97 (d, J = 8.4, 2H), 6.83 (d, J = 8.8, 2H), 6.63 (d, J = 8.8, 2H), 4.25 (dd, J = 11.2, 2.8,
1H), 3.78 (dd, J = 11.2, 6.4, 1H), 3.29 (m, 1H), 2.82 (t, J = 4.8, 1H), 2.68 (dd, J = 4.8, 2.4, 1H), 1.54 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 156.5, 155.6,
143.8, 141.3, 128.0, 127.9, 115.2, 114.4, 69.5, 50.4, 44.4, 41.7, 31.4。TLC (5%
のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.45 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0219】
(R)-BADGE×H2O(5)
【0220】
【化29】
【0221】
(R)-BAGE(13 mg、0.045 mmol、1当量)の無水ジメチルホルムアミド攪拌溶液(0.3 mL)に、室温でK
2CO
3(6 mg、0.045 mmol、1当量)およびラセミ体のグリシドール(9 μL
、0.135 mmol、3当量)を加えた。60℃で6時間攪拌した後、得られた橙褐色の溶液に脱イオン水(0.2 mL)を加えた。この混合物を酢酸エチル(3×1 mL)で抽出した。有機層を
脱イオン水(2 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、2 gのシリカゲルSep pakでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および5%のメタノールを含むジクロロメタン)によって精製して、(R)-BADGE×H
2O(10.3 mg、63%)を無色の油状物として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.08 (dd, J = 8.0, 5.2, 4H), 6.83 (dd, J = 10.8, 8, 4H), 4.89 (d, J = 5.2, 1H), 4.62 (t, J = 5.6, 1H), 4.26 (dd, J = 11.6, 2.8, 1H), 3.93 (dd, J = 9.6, 4.0, 1H), 3.78 (m, 3H), 3.42 (t, J = 5.6, 2H), 3.29 (m, 1H), 2.82 (t, J = 4.8, 1H), 2.68 (dd, J = 4.8, 2.4 J = 11.6, 2.8, 1H), 1.57 (s, 6H)。TLC (5%のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.36 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0222】
(R)-BADGE×HI×H2O(6)
【0223】
【化30】
【0224】
(R)-BADGE×H
2O(10 mg、0.029 mmol、1当量)のアセトニトリル溶液(0.5 mL)に、CeCl
3・7H
2O(21 mg、0.057 mmol、2当量)およびNaI(9 mg、0.057 mmol、2当量)を加え
た。6時間室温で攪拌した後、得られた黄色の懸濁液を減圧下で濃縮した。この反応混合
物をジクロロメタン(2 mL)を用いて溶解し、H
2O(3×0.5 mL)で洗浄し、有機層を無水MgSO
4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を、2 gのシリカゲルSep pak
でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および10%のメタ
ノールを含むジクロロメタン)によって精製して、(R)-BADGE×HI×H
2O(9 mg、67%)を
無色の泡沫状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.09 (m, 4H), 6.81 (m, 4H), 5.52 (d, J = 4.8, 1H),
4.86 (d, J = 4.8, 1H), 4.59 (t, J = 5.6, 1H), 3.88 (m, 3H), 3.75 (m, 3H), 3.40 (m, 3H), 3.31 (m, 1H), 1.57 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 157.1, 156.7, 143.4, 143.0, 128.0, 127.9, 114.5, 114.4, 71.4, 70.6, 70.1, 68.6, 63.4, 41.8, 31.3, 12.7。TLC (5%のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.30 (UV、p-アニスアル
デヒド)。
【0225】
実施例7
ラセミ体のBADGE(9)
【0226】
【化31】
【0227】
丸底フラスコに連続的にNaH(200 mg、4.80 mmol、2.2当量)およびビスフェノールA(500 mg、2.18 mmol、1当量)を仕込み、内容物をアルゴン雰囲気下に置いた。無水ジメチルホルムアミド(5 mL)をシリンジによって導入し、得られた混合物を室温で攪拌した。15分後、ラセミ体のエピクロロヒドリン(700 μL、8.96 mmol、4.1当量)をシリンジに
よって加え、この混合物を室温で18時間反応させた。次いでその溶液を脱イオン水(約1 mL)でクエンチし、混合物を酢酸エチル(3×4 mL)で抽出した。有機層を脱イオン水(2
mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られ
た残渣をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)によって精製して、ラセミ体のBADGE(536 mg、72%)を白色の泡沫状残渣として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.10 (d, J = 8.8, 4H), 6.84 (d, J = 8.8, 4H), 4.25
(dd, J = 11.6, 2.8, 2H), 3.78 (dd, J = 11.2, 6.4, 2H), 3.29 (m, 2H), 2.81 (t, J
= 4.8, 2H), 2.68 (m, 2H), 1.60 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 156.6, 143.5, 128.0, 114.5, 69.5, 50.3, 44.4, 41.8, 31.3。TLC (5%のメタノールを含むジク
ロロメタン), Rf: 0.77 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0228】
(R)-BADGE(10)
【0229】
【化32】
【0230】
(R)-エピクロロヒドリンを使用した以外は、ラセミ体のBADGEについて前述したのと同
じ手順であった。
【0231】
ラセミ体のBADGE×2HCl(11)
【0232】
【化33】
【0233】
ラセミ体のBADGE(95 mg、0.279 mmol、1当量)のアセトニトリル溶液(1.0 mL)に、CeCl
3・7H
2O(208 mg、0.558 mmol、2当量)を加え、この混合物を6時間還流した。得られた白色のペーストをジクロロメタンとともにろ過し、その透明な懸濁液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を、2 gのシリカゲルSep pakでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および10%のメタノールを含むジクロロメタン)によって精
製して、ラセミ体のBADGE×2HCl(70 mg、61%)を無色の泡沫状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.09 (d, J = 8.8, 4H), 6.83 (d, J = 8.4, 4H), 5.50
(d, J = 5.2, 2H), 3.99 (m, 2H), 3.92 (d, J = 5.6, 4H), 3.73 (dd, J = 11.2, 4.4,
2H), 3.65 (dd, J = 11.2, 5.6, 2H), 1.57 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ
156.7, 143.4, 128.0, 114.5, 69.5, 69.3, 47.4, 41.8, 31.3。TLC (5%のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.31 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0234】
実施例8
(R)-BADGE×2HCl(12)
【0235】
【化34】
【0236】
出発物質として(R)-BADGEを使用した以外は、ラセミ体のBADGE×2HClについて前述したのと同じ手順であった。
【0237】
実施例9
ラセミ体のBADGE×2HI(13)
【0238】
【化35】
【0239】
ラセミ体のBADGE(60 mg、0.176 mmol、1当量)のアセトニトリル溶液(1.0 mL)に、CeCl
3・7H
2O(131 mg、0.352 mmol、2当量)およびNaI(53 mg、0.352 mmol、2当量)を加えた。3時間室温で攪拌した後、得られた黄色の懸濁液を減圧下で濃縮した。この反応混
合物をジクロロメタン(3 mL)を用いて溶解し、H
2O(3×1 mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を、2 gのシリカ
ゲルSep pakでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、およ
び10%のメタノールを含むジクロロメタン)によって精製して、ラセミ体のBADGE×2HI(55 mg、52%)を褐色泡沫状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.09 (d, J = 8.8, 4H), 6.82 (d, J = 8.8, 4H), 5.53
(d, J = 5.2, 2H), 3.87 (m, 4H), 3.71 (m, 2H), 3.40 (dd, J = 10.4, 4.8, 2H), 3.31 (m, 2H), 1.57 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 156.7, 143.5, 128.1, 114.5, 71.4, 68.6, 41.8, 31.3, 12.7。
TLC (5%のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.43 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0240】
実施例10
(R)-BADGE×2HI(14)
【0241】
【化36】
【0242】
出発物質として(R)-BADGEを使用した以外は、ラセミ体のBADGE×2HIについて前述した
のと同じ手順であった。
【0243】
実施例11
ラセミ体のBADGE×2HBr(15)
【0244】
【化37】
【0245】
ラセミ体のBADGE(60 mg、0.176 mmol、1当量)のアセトニトリル溶液(1.0 mL)に、CeCl
3・7H
2O(131 mg、0.352 mmol、2当量)およびNaBr(36 mg、0.352 mmol、2当量)を
加えた。室温で一晩攪拌した後、この懸濁液をジクロロメタン(6 mL)とともにろ過し、H
2O(3×2 mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を2 gのシリカゲルSep pakでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および5〜10%のメタノールを含むジクロロメタン)によって精製して、ラセミ体のBADGE×2HBr(33 mg、58%)を無色の泡沫状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.09 (d, J = 8.4, 4H), 6.83 (d, J = 8.8, 4H), 5.54
(d, J = 5.2, 2H), 3.98 (m, 2H), 3.93 (d, J = 5.6, 4H), 3.62 (dd, J = 10.0, 4.4,
2H), 3.53 (dd, J = 10.4, 5.2, 2H), 1.57 (s, 6H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ
156.7, 143.5, 128.1, 114.5, 70.2, 68.8, 41.8, 37.2, 31.3。TLC (5%のメタノールを含むジクロロメタン), Rf: 0.53 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0246】
実施例12
ラセミ体のBADGE×2HF(16)
【0247】
【化38】
【0248】
ラセミ体のBADGE(60 mg、0.176 mmol、1当量)の無水トルエン溶液(1.0 mL)に1MのTBAFのTHF溶液(0.88 mL、0.88 mmol、5当量)を加え、この混合物を80℃で12時間攪拌さ
せた。混合物を短経路のカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン、および5%のメタノールを含むジクロロメタン)にかけて、TBAFを除去した。得られた残渣を、2 g
のシリカゲルSep pakでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:30%の酢酸エチルを含むヘキサン)によって精製して、ラセミ体のBADGE×2HF(14 mg、22%)を無色の泡沫状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 7.09 (d, J = 8.4, 4H), 6.82 (d, J = 8.8, 4H), 5.40
(d, J = 5.2, 2H), 4.50 (ddd, J = 47.6, 9.6, 3.6, 2H), 4.39 (ddd, J = 47.6, 9.6,
3.6, 2H), 3.99 (dm, J = 20.8, 2H), 3.90 (m, 4H), 1.56 (s, 6H)。
19F NMR (282.4 MHz, DMSO-d
6): δ -230.4 (td, J = 50.4, 22.2)。TLC (5%のメタノールを含むジクロロ
メタン), Rf: 0.38 (UV、p-アニスアルデヒド)。
【0249】
実施例13
BADGE・HCl・H
2Oのトリグリシンエステル3の合成
【0250】
【化39】
【0251】
トリGly-Badge・HCL・H2O(1)のTFA塩3の合成実験:CH
2Cl
21 mLにBADGE・HCL・H
2O(1)(8.80 mg、0.02 mmol)を含む溶液に、BOC-GLy-OH(30.8 mg、0.18 mmol)、DMAP(触媒量)、およびDIPC(0.03 mL、0.18 mmol)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌し、次
いでろ過した。ろ液に2 mLのTFAを加え、室温で2時間攪拌し、次いで真空中で濃縮した。残渣をEtOAcと水との間に分配し、水層を濃縮し、乾燥させ、次いでLH-20カラムを通過させて(100%のMeOHを用いて溶出させた(elueted))、純粋な生成物3を得た。このTFA塩
生成物を濃縮した後、それを2 mLのMeOHに溶解し、次いで2 mLの2N HCLを加えた。この混合物を室温で5分間攪拌し、N
2気流下で濃縮し、次いで真空で一晩乾燥させて、HCl塩を得た。
【0252】
本発明の種々の実施態様を本明細書中に記載しているが、当業者の一般的な通常の知識によって、本発明の範囲内で、多数の改作および改変がなされ得る。かかる改変は、実質的に同じ方法で、同じ結果を達成するために、本発明の任意の態様を公知の均等物で置換することを含む。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。単語「含む(comprising)」は、本明細書中で、語句「含むが、限定されない(including, but not limited to
)」と実質的に同等のオープンエンドの用語として使用されており、単語「含む(comprises)」は、対応する意味を有する。本明細書中で使用される場合、単数形「1つの(a)
」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈によって明確に別段指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのもの(a thing)」への言及は、1個よりも多くのかかるものを含む。本明細書中での参考文献の引用は、かかる参考文献
が本発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書中で引用された、特許および特許出願を含むがこれらに限定されない、あらゆる優先権書類(1つまたは
複数)およびすべての刊行物は、それぞれの個々の刊行物が、具体的に、かつ個々に本明細書中で参照によって援用されることが示されている場合と同様に、かつ本明細書中に完全に示されている場合と同様に、本明細書中に参照によって援用される。本発明は、実質的に本明細書中で前述したすべての実施態様および変形形態、ならびに実施例および図面に関連するすべての実施態様および変形形態を含む。