【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 平成25年2月14日 販売した場所 KMC Music Inc.(住所又は居所:55 Griffin Road South Bloomfield,Connecticut 06002 United States)
【解決手段】表板10と、上縁部に形成されたネックブロック13と、ネックブロックの下方に位置し、表板の裏面に固着された力木16と、を有するボディーと、上下方向に延在し、ネックブロックと接合されているネックと、上下方向に延在し、ネックに埋設されたトラスロッド4と、ネックから力木まで上下方向に延在するようにネック及びボディーに埋設され、ネック及びボディーに固着されている補強部材5と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のギターでは、弦の張力の影響を長時間受けたときに経時変化によってネック及び指板全体が弦に対して弧状に反るように曲がる現象の発生を防ぐことはできないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る弦楽器は、表板と、上縁部に形成されたネックブロックと、前記ネックブロックの下方に位置し、前記表板の裏面に固着された力木と、を有するボディーと、上下方向に延在し、前記ネックブロックと接合されているネックと、上下方向に延在し、前記ネックに埋設されたトラスロッドと、前記ネックから前記力木まで上下方向に延在するように前記ネック及び前記ボディーに埋設され、前記ネック及び前記ボディーに固着されている補強部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、ネックは弦の張力の影響を長時間受けたときには経時変化によって曲がることがあるが、補強部材の作用により、ボディーとネックの接合部分が急激に屈曲することが防止される。ネックは、全長に亘って均一に弧状に反るように経時変化するだけなので、トラスロッドを用いてネックの反りを十分に矯正することができる。
【0008】
前記補強部材の下端部の底面は前記力木に固着されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、弦の張力によってネックの両端が引っ張られている状態においては、補強部材の下端部を力木が支持するので、ボディーとネックとの接合部分においてネックがボディーに対して屈曲することを更に効果的に防ぐことができる。
【0010】
前記補強部材は、前記トラスロッドの両側方に一対設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、補強部材とトラスロッドとが干渉することなく、トラスロッドを備える弦楽器のボディーとネックとの接合部分を効果的に補強することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ネックがボディーに対して屈曲することを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る弦楽器(ギター100)の構成例を示す正面図である。
図2は、ギター100の構成例を示す要部拡大縦断面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、弦楽器は、例えば、ギターであり、ボディー1とネック2と、ヘッド3と、トラスロッド4と、補強部材5と、指板6と、複数の弦7と、を備える。本実施の形態において、ギター100は六弦のギターであり、6本の弦7を備えるが、これに限られるものではい。以下では、便宜上、ボディー1からヘッド3に向かう方向を上といい、その反対方向を下ということがある。
【0017】
図3は、ギター100の構成例を示す正面斜視図であり、指板6及び一方の補強部材5を取り外した状態を示す図である。
図4は、ギター100の構成例を示す背面斜視図であり、後述する裏板11を取り外した状態を示す図である。
【0018】
図2〜
図4に示すように、ボディー1は、表板10と、表板10と対向して離間して位置する裏板11と、表板10と裏板11とを接続する側板12とを有し、中空に形成されている。そして、ボディー1の上縁部には、
図4に示すように、ネックブロック13が設けられている。以下では、便宜上、裏板11から表板10に向かう方向を表方向といい、その反対方向を裏方向ということがある。
【0019】
図1〜
図3に示すように、表板10は、中央部に円形のサウンドホール14を有する。サウンドホール14は、弦7の振動によって生じたボディー1の共鳴音を外部に放出する。
【0020】
また、
図1に示すように、表板10は、サウンドホール14の下方位置においてボディー1の幅方向に延在し、表方向に突出するサドル8を有する。サドル8は、短冊状に形成されており、弦7の下部を支持し、弦7の振動をボディー1に伝える。
【0021】
更に、表板10には、サドル8の下方位置において表板10から外方に突出するブリッジピン9が複数設けられている。弦7の本数に応じた数のブリッジピン9が表板10に設けられている。ブリッジピン9は、弦7の下端部をボディー1に係止している。
【0022】
また、
図3に示すように、表板10は、上端から下方に向かって切り欠かれた切欠部43を有する。切欠部43は、後述する長溝41の開口部を露出するように形成されている。
【0023】
更に、表板10は、上端から下方に向かって切り欠かれた一対の切欠部53を有する。切欠部53は、後述する長溝51の開口部を露出するように形成されている。
【0024】
また、
図4に示すように、表板10の裏面には、ブレーシング15が固着されている。ブレーシング15は、力木16を有する。この力木16は、表板10の裏面のネックブロック13とサウンドホール14との間の領域に固着されている。したがって、力木16はネックブロック13の下方に位置している。力木16は、大略角棒状に形成され、ボディー1の幅方向(ネック2の延在方向と交差する方向)に延在している。そして、力木16の両端は、表板10の周縁部に位置している。また、力木16には、上下方向に延在する貫通孔である孔42が形成されている。孔42は、トラスロッド4の軸線上に形成されている。
【0025】
図2に示すように、ネックブロック13は、ブロック状に形成され、表板10と裏板11との間に位置している。そして、ネックブロック13の表面は、表板10の裏面に固着されている。また、ネックブロック13の裏面は、裏板11の裏面に固着されている。
図3に示すように、ネックブロック13の上面には、ネック2の後述する突出部22と係合する凹溝17が形成されている。この凹溝17は、ネックブロック13の表面の延在方向と直交する方向から見て台形状に形成され、下方に向かうにしたがって幅寸法が大きくなるように形成されている。
【0026】
ネック2は、上下方向に延在する柱状に形成されている。本実施の形態において、ネック2は、マホガニー材によって構成されているがこれに限られるものではない。そして、
図2及び
図4に示すように、ネック2は、下端部の裏面から突出するように形成された踵状のネックヒール21を有している。ネックヒール21を含むネック2の表面から裏面までの寸法は、ボディー1の厚み寸法と略同一に形成されている。そして、
図3に示すように、ネック2は、ネック2の下端部から下方に突出するように形成された突出部22を有する。この突出部22は、ネック2の表面の延在方向と直交する方向から見て台形状に形成され、下方に向かうにしたがって幅寸法が大きくなるように形成されている。そして、突出部22は、ネックブロック13の凹溝17と嵌合するように形成され、ネックブロック13と嵌合した上で、接着材により接着されて接合されている。これによって、ボディー1とネック2とは一体的に接合されている。
【0027】
図1に示すように、ヘッド3は、ネック2の上端に連なるように設けられている。ヘッド3は、弦7の本数に応じた数のペグ31を備える。ペグ31には、弦7の上端部が巻きつけられて留められており、これを回転させることによって弦7にかかる張力を調整することができる。
【0028】
更に、ネック2とヘッド3との境界部分には、ネック2及びヘッド3の幅方向に延在し、表方向に突出するナット32が設けられている。ナット32は、短冊状に形成されており、弦7の上部を支持している。
【0029】
そして、
図2及び
図3に示すように、ボディー1及びネック2の境界部分には、表方向に開口する長溝41が形成されている。この長溝41は、トラスロッド4が埋設される溝であり、表方向に開口し、上下方向に一直線に延びている。そして、長溝41は、ボディー1とネック2との境界を跨ぎ、ネックブロック13を横断している。
【0030】
更に、ボディー1及びネック2の境界部分には、表方向に開口する長溝51がトラスロッド4の両側方に形成されている。この一対の長溝51は、一対の補強部材5が埋設される溝であり、表方向に開口し、上下方向に一直線に伸びている。そして、長溝51は、ボディー1とネック2との境界を跨ぎ、ネックブロック13を横断し、更に、力木16の幅方向(ギター100における上下方向)中間部まで延びている。なお、
図2及び
図4に示すように、ネックブロック13と力木16とは離間しているため、この部分において長溝51の底部は、ボディー1の内部空間と連通している。
【0031】
図5は、ギター100のネック2が順反りした状態を概略的に示す図である。
【0032】
トラスロッド4は、ネック2及び指板6の反りを矯正する機構であり、周知のトラスロッド機構によって構成される。本実施の形態において、トラスロッド4は、下端部に設けられた調整ナット46を回すことによって、弦7の張力によってネック2の両端が表方向に引っ張られるように弧状に反っている状態(
図5参照)(以下、「順反り」ということがある。)のネック2をその反対方向に反らし、ネック2の反りを矯正することができるようになっている。そして、トラスロッド4は、棒状体であり、
図2〜
図4に示すように、長溝41に埋設され、接着剤により接着されている。したがって、トラスロッド4は、上下方向に延在している。更に、
図2及び
図4に示すように、トラスロッド4は、下端が孔42に挿通されている。したがって、調整ナット46は孔42から露出しているので、例えばサウンドホールを介して挿入した工具を用いて調整ナット46を回すことができるようになっている。そして、上述の通り、表板10は、長溝41の開口部が露出するように上端から下方に向かって切り欠かれた切欠部43(
図2及び
図3参照)を有する。これによって、トラスロッド4は、切欠部43を通じて長溝41に埋設され、長溝41に接着される。
【0033】
図2及び
図3に示すように、補強部材5は、大略角棒状に形成され、各長溝51に埋設され、接着剤により接着されている。したがって、補強部材5は、ボディー1及びネック2に埋設されて固着され、トラスロッド4の両側方において上下方向に延在している。これによって、補強部材5の下端部の底面は、力木16に固着される。この接着剤としてエポキシ樹脂が例示される。補強部材5は、破断荷重及び曲げ強度がネック2を構成するマホガニー材よりも高いメイプル材によって構成されている。このように、補強部材5は、ボディー1及びネック2の境界部分に形成された長溝51に埋設されているので、ボディー1とネック2との接合部分を補強することができる。これによって、弦7の張力の影響によって、ボディー1とネック2との接合部においてネック2がボディー1に対して屈曲することを防ぐことができる。特に、補強部材5の下端部の底面は、力木16に固着されているので、弦7の張力によってネック2の両端が引っ張られている状態においては、補強部材5の下端部にかかる裏方向への力を力木16が支持し、ボディー1とネック2との接合部分においてネック2がボディー1に対して屈曲することを更に防ぐことができる。なお、補強部材5の材質はこれに限られるものではない。
【0034】
なお、本実施の形態において、補強部材5は、トラスロッド4と平行に延在するように構成しているがこれに限られるものではなく、これに代えて、ネック2の側縁と平行に延在するように構成してもよい。
【0035】
また、補強部材5は、トラスロッド4の両側方に一対設けられているので、補強部材5がトラスロッド4に干渉せず、ギター100のボディー1とネック2との接合部分を効果的に補強することができる。
【0036】
また、補強部材5には、スレンレス材のような鋼材よりも弾性係数が低く、ネック2の弾性係数に近い木材を用いているので、トラスロッド4の矯正力がネック2の全体に均一に効くようになっている。よって、
図5に示すように、トラスロッド4を用いてネック2の反りを適切に矯正することができる。
【0037】
そして、上述の通り、表板10は、一対の長溝51の開口部が露出するように上端から下方に向かって切り欠かれた一対の切欠部53(
図3参照)を有する。これによって、一対の補強部材5は、一対の切欠部53を通じて一対の長溝51に埋設され、これらの長溝51に接着される。
【0038】
図1に示すように、指板(Fingerboard)6は、ネック2の延在方向に延在する板状の部材であり、ネック2の上端部からサウンドホール14の上縁部までの表面を覆うようにボディー1の表板10及びネック2の表面に固着されている。したがって、長溝41に埋設されたトラスロッド4及び長溝51に埋設された補強部材5は、指板6によって覆われている。指板6は、指板6の延在方向と直交する方向に延在する複数のフレット61を有し、これら複数のフレット61は、所定間隔で指板6の表面に並ぶように設けられている。
【0039】
弦7は、上述の通り、ペグ31からブリッジピン9まで延在し、その途中に位置するサドル8及びナット32によって支持されている。そして、弦7は、上端部がペグ31に巻き取られることによって張力のかかった状態でサドル8及びナット32に架け渡されている。そして、トラスロッド4によってネック2の反りが調整されることによって、指板6からの弦7の高さ(弦高)が適切な高さとなるように調整されている。
【0040】
以上に説明したように、本発明のギター100は、ネック2は弦7の張力の影響を長時間受けたときには経時変化によって曲がることがあるが、補強部材5がネック2から力木16までトラスロッド4と平行に延在するようにネック2及びボディー1に埋設され、ネック2及びボディー1に固着されているので、ボディー1とネック2との接合部分が補強され、ボディー1とネック2の接合部分が急激に屈曲することが防止される。したがって、ネック2は、全長に亘って均一に弧状に反るように経時変化するだけなので、トラスロッド4の調整ナット46を回し、ネック2の反りを十分に矯正することができる。
【0041】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。