【解決手段】アルカリ金属14及び磁気回転同位体16を包囲する蒸気セル12を含む。NMRジャイロスコープシステムの受感軸とアライメントされ、蒸気セルを通して供給されることにより、アルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を生じさせる磁場を生成する磁場源18も含む。蒸気セル内のアルカリ金属を分極させることにより、アルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を促進する光ビームを生成するレーザ20も含む。蒸気セルから出射する光ビームに相当する検出ビームの測定された特性に基づいて、受感軸周りの回転角を計算するように構成された角回転センサ24をさらに含み、この特性は、磁気回転同位体の歳差運動に関連する。
前記オフセット角は、前記アルカリ金属の歳差運動の全周期中の前記アルカリ金属による前記光ビームの最小吸収と最大吸収との最大信号対雑音比に関連する最適角に相当する、請求項3に記載のシステム。
前記オフセット角は、前記アルカリ金属の歳差運動の全周期中の前記アルカリ金属による前記光ビームの最小吸収と最大吸収との最大信号対雑音比に関連する最適角に相当する、請求項16に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、一般にセンサシステムに関し、特に核磁気共鳴(NMR)ジャイロスコープシステムに関する。NMRジャイロスコープシステムは、アルカリ金属及び少なくとも1つの磁気回転同位体を有する蒸気セル(vapor cell)を含み得る。磁場源は、蒸気セルを通して供給される及びNMRジャイロスコープシステムの受感軸とアライメントされた実質的に均一な磁場を生成することができる。レーザは、蒸気セルを通して供給されてアルカリ金属を分極させる光ビームを生成することができ、従って、磁場に反応したアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動が促進される。一例として、システムは、第1の磁場に対して直角の磁場を生成する第2の磁場源も含むことができ、従って、アルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を引き起こすように受感軸とミスアライメントされた(misaligned)正味磁場(net magnetic field)を供給する。例えば、第2の磁場は、磁気回転同位体の共振周波数に相当する周波数を有し得る。
【0008】
システムは、光ビームを円偏光させる及び第1の磁場に対してオフセット角で蒸気セルを通して光ビームを供給する1組の光学系も含み得る。一例として、オフセット角は、アルカリ金属の歳差運動の全周期中のアルカリ金属による光ビームの最小吸収と最大吸収との最大信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)に関連する最適角に相当し得る。従って、蒸気セルから出射する光ビームに相当する検出ビームは、アルカリ金属の歳差運動周波数によって変調された強度を有し得る。システムは、検出ビームの強度をモニタリングする光検出器を含む角回転センサを含み得る。角回転センサは、アルカリ金属の歳差運動周波数の検出ビームを復調し、磁気回転同位体の歳差運動にほぼ等しい周波数を有し得る復調信号を生成することができる。従って、角回転センサは、復調信号に基づいてNMRジャイロスコープシステムの回転角を決定することができる。例えば、復調信号は、比較に基づいて(例えば、位相又は周波数差に基づいて)回転角を決定できるように、周波数基準と比較され得る。
【0009】
図1は、本発明の一態様による、核磁気共鳴(NMR)ジャイロスコープシステム10の一例を示す。NMRジャイロスコープシステム10は、様々な用途の何れかにおいて実装され得る。一例として、NMRジャイロスコープシステム10は、航空機及び/又は宇宙船用のナビゲーションシステムにおいて実装され得る。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、
図4の例においてより詳細に示されるような多軸ジャイロスコープシステムの一部でもよい。
【0010】
NMRジャイロスコープシステム10は、例えば、様々な形状及びサイズの何れかのガラスケースでもよい蒸気セル12を含む。蒸気セル12は、アルカリ金属14及び磁気回転同位体(gyromagnetic isotope)16を含む。一例として、アルカリ金属14は、ルビジウム(Rb)又はセシウム(Cs)蒸気でもよく、磁気回転同位体16は、ヘリウム−3、クリプトン−83、キセノン−129、及び/又はキセノン−131等の様々な希ガス同位体の何れでもよい。NMRジャイロスコープシステム10は、蒸気セル12を通る正味磁場B
Zを生成するように構成された磁場源18も含む。例えば、磁場B
Zは、蒸気セル12を通して供給される及びNMRジャイロスコープシステム10の受感軸とアライメントされた交流変調された直流磁場を含み得る。一例として、磁場源18は、蒸気セル12を実質的に取り囲む磁気ソレノイドとして構成されてもよい。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、蒸気セル12を実質的に取り囲み得る磁気シールド(不図示)を含んでもよく、従って、地磁場から等の外部磁場からの干渉が実質的に軽減される。
【0011】
NMRジャイロスコープシステム10は、1組の光学系22を介して蒸気セル12を通して供給される光ビームOPTを供給するレーザ20も含む。例えば、レーザ20は、電流信号(不図示)によって制御され得る垂直キャビティ面発光レーザ(vertical cavity surface-emitting laser : VCSEL)として構成されて、光ビームOPTの実質的に安定した波長を供給してもよい。一例として、光学系22は、光ビームOPTを円偏光させるように構成された4分の1波長板と、光ビームOPTを実質的にコリメートし、磁場B
Zに対するオフセット角θで蒸気セル12を通して光ビームOPTを供給する1組のミラー及び/又はレンズとを含み得る。光ビームOPTは、蒸気セル12内のアルカリ金属14を光ポンピングさせてアルカリ金属14を分極させ、それによって、磁場B
Zの交流成分に基づいてアルカリ金属14の歳差運動を促進するように構成され得る。さらに、磁気回転同位体16もまた、磁気回転同位体16をアルカリ金属14にスピンアライメントさせるスピン交換プロセスにより歳差運動する。一例として、オフセット角θは、アルカリ金属14の歳差運動の全周期中のアルカリ金属14による光ビームOPTの最小吸収と最大吸収との最大SNRに関連する最適角に相当し得る。
【0012】
具体的に、アルカリ金属14の歳差運動する粒子は、歳差運動周期において光ビームOPTと逆平行に近いほど、光ビームOPTの光子を吸収する可能性が高く、歳差運動周期において光ビームOPTと平行に近いほど、光ビームOPTの光子を吸収する可能性が最も低い。従って、磁場B
Z、従ってNMRジャイロスコープシステム10の受感軸から光ビームOPTを分離させることに基づいて、アルカリ金属14の歳差運動は、アルカリ金属14の歳差運動の周期にわたって変化する光ビームOPTの吸収プロファイルを定義し得る。光ビームOPTは、アルカリ金属14の歳差運動周期にわたる光ビームOPTのフォトンの可変吸収に基づいたアルカリ金属14の歳差運動周期にわたって変化する強度を有する検出ビームO
DETとして、蒸気セル12から出射する。さらに、以下により詳細に説明するように、磁気回転同位体16の歳差運動は、アルカリ金属14の歳差運動、従って検出ビームO
DETの強度に影響を与え得る。その結果、検出ビームO
DETの強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、本明細書に記載されるように、検出ビームO
DETの強度は、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を示し得る。
【0013】
NMRジャイロスコープシステム10は、角回転センサ24をさらに含む。角回転センサ24は、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角を計算するために検出ビームO
DETに基づいて磁気回転同位体16の歳差運動角を測定するように構成され得る。角回転センサ24は、光検出器26及び回転検出コンポーネント28を含む。光検出器26は、蒸気セル12から出射する光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度をモニタリングするように構成される。前述のように、検出ビームO
DETの変調強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、回転検出コンポーネント28は、磁気回転同位体16の歳差運動を決定するために検出ビームO
DETを復調するように構成され得る。それにより、復調された検出信号O
DETにおいて検出されるような磁気回転同位体16の歳差運動角の変化を処理して、回転運動に対応した受感軸周りの配向の変化を決定することができる。
【0014】
例えば、回転検出コンポーネント28は、磁気回転同位体16の測定された歳差運動角に基づいてNMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角を計算するように構成された機械化プロセッサを含み得る。一例として、回転検出コンポーネント28は、復調された検出信号O
DETによって示される磁気回転同位体16の測定された歳差運動角に基づいて蒸気セル12の受感軸周りの回転角を計算するように構成され得る。例えば、磁気回転同位体16の検出された歳差運動角は、安定した磁場B
Zにおける磁気回転同位体16の予想歳差運動角に相当する所定の基準信号と比較され得る。従って、蒸気セル12の回転は、磁気回転同位体16の測定された歳差運動角と基準信号との差(例えば、位相又は周波数差)から計算することができる。
【0015】
図1の例において記載したように、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角は、一般的なNMRジャイロスコープシステムの場合と比較してより単純化した方法で決定することができる。具体的には、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸とアライメントされた磁場B
Zに対するオフセット角で光ビームOPTを供給するという実装に基づいて、光ビームOPTは、アルカリ金属14を光ポンピング及び分極させるポンプビームとして、及び受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を決定するプローブビームとして動作する。その結果、NMRジャイロスコープシステム10は、2つ以上のレーザとは対照的に、単一レーザのみを用いて実装され得る。さらに、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を決定するための検出ビームO
DETの処理は、その処理が直線偏光信号のファラデー回転に基づくのではなく、一般的なNMRジャイロスコープシステムに対して行われるので、より単純化した費用効率の高い方法で実装され得る。従って、NMRジャイロスコープシステム10は、例えば案内及びナビゲーション用途用に、単純化したより費用効果の高いジャイロスコープとして実装され得る。
【0016】
NMRジャイロスコープシステム10は、
図1の例に限定されることを意図されていないことを理解されたい。一例として、蒸気セル12は、合計で2つ又は3つの磁気回転同位体等の、磁気回転同位体16を超える追加の磁気回転同位体を含み得る(例えば、磁場B
Zを安定化する及び/又は受感軸周りの回転の計算を行うため)。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、追加のコンポーネントがNMRジャイロスコープシステム10に含まれ得るように、
図1の例において簡潔さのために単純化して示されていることを理解されたい。例えば、NMRジャイロスコープシステム10は、磁場源18及び/又はレーザ20を安定化させる追加のコンポーネント及び光学系も含み得る。従って、NMRジャイロスコープシステム10は、様々な方法で構成され得る。
【0017】
図2は、本発明の一態様による、NMRジャイロスコープシステム50の別の例を示す。NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例におけるNMRジャイロスコープシステム10と実質的に同様に構成され得る。具体的には、NMRジャイロスコープシステム50は、
図2の例ではZ軸として示される受感軸52周りの回転角ROTを測定するように構成され得る。従って、NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例において前述したのと同様に、航空機及び/又は宇宙船用のナビゲーションシステムにおいて、及び/又は多軸ジャイロスコープシステムの一部として実装され得る。従って、
図2の例の以下の説明において、
図1の例が参照される。
【0018】
NMRジャイロスコープシステム50は、立方体、円筒形、又は球状等の様々な形状の何れかで配置され得る蒸気セル54を含む。蒸気セル54は、アルカリ金属14及び磁気回転同位体16(例えば、さらに少なくとも1つの追加の磁気回転同位体)を含む。NMRジャイロスコープシステム50は、Z軸に沿って、つまり、受感軸52と実質的に平行な方向に蒸気セル54を通る実質的に均一な磁場B
Zを生成する第1の磁場源56も含む。
図1の例における上記の説明と同様に、磁場源56は、蒸気セル54を実質的に取り囲む磁気ソレノイドとして構成されてもよい。
【0019】
さらに、NMRジャイロスコープシステム50は、磁場B
Zに対して実質的に直角な方向に(例えば、X軸に沿って)刺激磁場B
Xを生成するように構成された第2の磁場源57を含む。一例として、磁場B
Xは、磁場B
Zの交流成分の周波数よりもずっと低くなり得る、磁気回転同位体16の共振周波数に実質的に合わせられた(すなわち、アルカリ金属14の歳差運動周波数を決定づけ得る)周波数を持つ交流成分を有し得る。さらに、NMRジャイロスコープシステム50は、磁場B
Zに対するオフセット角θで光学系60(例えば、光信号OPTを円偏光させる4分の1波長板を含む)を通るように方向付けられ、検出ビームO
DETとして蒸気セル54から出射する光信号OPTを生成するように構成されたレーザ58を含む。一例として、オフセット角θは、アルカリ金属14の歳差運動の全周期中のアルカリ金属14による光ビームOPTの最小吸収と最大吸収との最大SNRに関連する最適角に相当し得る。例えば、オフセット角θは、アルカリ金属14の分極が磁場B
Zに平行な光信号OPTのベクトル成分の強度に正比例する場合のNMRジャイロスコープシステム50の構成において、約26.56°となり得る。従って、検出ビームO
DETの強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、本明細書に記載されるように、検出ビームO
DETの強度は、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を示し得る。
【0020】
光信号OPTは、磁場B
Z及び刺激磁場B
Sに反応した受感軸52周りのアルカリ金属14の歳差運動を促進するように、アルカリ金属14をスピン分極し得る。光学的にスピン分極されたアルカリ金属14は、磁場B
Z、つまり受感軸52と実質的に平行となり得る局所正味磁場(B
L)を生じさせる。一例として、光学的にスピン分極されたアルカリ金属14からの局所磁場B
Lは、実質的に均一な磁場B
Zと同じ又は反対の方向(例えば、光ポンプビームOPTの円偏光方向に応じて)を有し得る。スピン交換プロセスは、磁気回転同位体16に同様に正味スピン分極を得させる及び蒸気セル54において同様に歳差運動を行わせる。局所磁場B
Lは、磁気回転同位体16の歳差運動周波数に対して正味の影響を持ち得る。例えば、磁気回転同位体16の質量は、磁気回転同位体16に対する局所磁場の影響を決定するものとなり得る。一例として、磁気回転同位体16及び少なくとも1つの他の磁気回転同位体の異なる質量は、アルカリ金属14と磁気回転同位体16との結合(互いに短寿命分子で結合される)における質量シフトの低下を生じさせ得る。従って、磁気回転同位体16及び少なくとも1つの他の磁気回転同位体は、それぞれの光学的にスピン分極されたアルカリ金属14との相互作用の差により、異なる見かけ上の局所磁場B
Lを受け得る。
【0021】
一例として、光ビームOPTによってポンピングされると、アルカリ金属14を構成する原子は、それぞれの電子分極が急速に失われ、その結果、実質的にランダムに配向され得る。ランダム配向は、例えばCs−Xeスピン交換衝突プロセスに基づいて、例えば他の原子との衝突、磁場B
Zとアライメントされていない原子との衝突、及び/又は磁場B
Zとアライメントされた他の原子との衝突の結果として生じ得る。アルカリ金属14がポンプビームOPTとの相互作用の結果、特定の状態及びエネルギー準位に達すると、アルカリ金属14は、アルカリ金属14を実質的に均一な磁場B
Zにアライメントさせる力を受ける。例えば関連の磁気シールド(
図2の例では不図示)によって軽減され得る受感軸52を横断する磁場が存在しない場合、Xe等の磁気回転同位体16のスピン交換光学的ポンピング原子は、コヒーレントグループとして歳差運動を行わず、正味の横磁場歳差運動をもたらさない場合がある。しかしながら、前述のように、X軸に沿って設けられた磁場B
Xを、磁気回転同位体16の共振ラーモア周波数に合わせることができ、従って、磁気回転同位体16の原子に受感軸52の周りでグループとして歳差運動をさせる。その結果、磁場B
Xの振動特性に基づいて、それぞれの固有ラーモア周波数と共鳴状態となり得る磁気回転同位体16のスピンに対して正味トルクが働き、従って、磁気回転同位体16のスピンアライメントされた原子に同相での歳差運動をさせ得る。アルカリ金属14の完全にポンピングされた原子の電子スピンに対するトルクの大きさは、各ポンピングされた原子の磁気モーメントと、実質的に均一な磁場B
Zとの角度、並びに磁場B
Xの大きさの関数となり得る。
【0022】
NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例では各々が角回転センサ24の一部であり得る光検出器62及び回転検出コンポーネント64を含む。光検出器62は、蒸気セル54から出射する光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度をモニタリングするように構成され、従って、歳差運動信号PRE
CRを生成する。前述のように、検出ビームO
DETの変調強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、歳差運動信号PRE
CRは、アルカリ金属14の歳差運動に対応する搬送波周波数と、搬送波周波数よりも大幅に低い周波数を有する、従って磁気回転同位体16の歳差運動に対応する交流信号成分とを有する電気信号でもよい。従って、回転検出コンポーネント64は、磁気回転同位体16の歳差運動を決定するために歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成され得る。その結果、復調された歳差運動信号PRE
CRにおいて検出されるような磁気回転同位体16の歳差運動角の変化を処理して、NMRジャイロスコープシステム50の角回転ROTに対応した受感軸周りの配向の変化を決定することができる。
【0023】
図3は、回転検出コンポーネント100の一例を示す。回転検出コンポーネント100は、
図2の例における回転検出コンポーネント64に対応し得る。従って、
図3の例の以下の説明において、
図2の例が参照される。
【0024】
回転検出コンポーネント100は、光検出器62によって供給された歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成された復調器102を含む。一例として、復調器102は、磁場B
Zの交流成分に対応する周波数、つまり、アルカリ金属14の歳差運動周波数で歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成され得る。従って、復調器102は、歳差運動信号PRE
CRの搬送波周波数を除去して、磁気回転同位体16の歳差運動に対応する交流成分を有し得る信号PRE
DMを生成するように構成される。
【0025】
回転検出コンポーネント100は、局所発振器104及び信号処理部106を含む。局所発振器104は、所定の周波数を有した基準信号LOを生成するように構成される。例えば、基準信号LOの所定の周波数は、安定した磁場B
Zにおける磁気回転同位体16の予想歳差運動周波数に相当し得る。信号PRE
DM及び基準信号LOは、それぞれ信号処理部106に供給される。信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOを比較するように構成され得る。一例として、信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOの各々の位相及び/又は周波数を比較し得る。比較の結果、信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOの位相及び/又は周波数間の差に相当する差信号DIFFを生成し得る。回転検出コンポーネント100は、信号PRE
DMと基準信号LOとの差に基づいて、NMRジャイロスコープシステム50の受感軸周りの回転角ROTを計算するように構成された機械化プロセッサ108をさらに含む。従って、本明細書に説明されるように、受感軸52周りのNMRジャイロスコープシステム50の回転は、アルカリ金属14を分極することによってアルカリ金属14及び磁気回転同位体16の歳差運動を促進するように蒸気セル54を通して供給される円偏光光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度に基づいて決定され得る。
【0026】
図4は、本発明の一態様による、三軸ジャイロスコープシステム150の一例を示す。一例として、三軸ジャイロスコープシステム150は、航空機及び/又は宇宙船用等の様々なナビゲーション制御システム又はヨー、ピッチ、及びロール回転運動情報をモニタリングするデバイスの何れかにおいて実装され得る。
【0027】
三軸ジャイロスコープシステム150は、X軸ジャイロスコープシステム152、Y軸ジャイロスコープシステム154、及びZ軸ジャイロスコープシステム156を含む。
図4の例では、X軸ジャイロスコープシステム152は、X軸に関する受感軸を有し、Y軸ジャイロスコープシステム154は、Y軸に関する受感軸を有し、Z軸ジャイロスコープシステム156は、Z軸に関する受感軸を有し得る。各NMR蒸気セル158、160、及び162の回転軸は、
図4の例においてデカルト座標システム164によって示される。一例として、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、
図2の例におけるNMRジャイロスコープシステム50と実質的に同様に構成され得る。従って、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、アルカリ金属を分極することによって内部のアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を促進するように各蒸気セル158、160、及び162を通して供給される各円偏光光ビームOPTに相当する各検出ビームO
DETの強度に基づいて、X、Y、及びZ軸周りのそれぞれの回転角ROT
X、ROT
Y、及びROT
Zを決定するように構成され得る。
【0028】
図4の例では、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、それぞれの回転角ROT
X、ROT
Y、及びROT
Zを含む信号を運動センサ166に出力するものとして示される。従って、運動センサ166は、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスの総三軸回転運動を決定するように構成され得る。従って、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスのヨー、ピッチ、及びロールを決定することができる。従って、運動センサ166は、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスの三軸回転運動を表示、出力、及び/又は通知するように構成され得る。
【0029】
上記の前述の構造的及び機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、
図5を参照することにより、より理解されるであろう。説明を簡単にするために、
図5の方法を順に実行するものとして図示及び説明するが、本発明による一部の態様は、本明細書に図示及び説明されたものとは異なる順序で及び/又は他の態様と同時に実行し得るので、本発明は例示された順序に限定されないことを理解及び認識されたい。さらに、本発明の一態様による方法を実装するために、全ての例示された特徴が必要とは限らない場合がある。
【0030】
図5は、NMRジャイロスコープシステム(例えば、NMRジャイロスコープシステム10)における受感軸周りの回転角(例えば、信号ROT)を決定する方法200の一例を示す。202において、NMRジャイロスコープシステムの受感軸(例えば、受感軸52)とアライメントされた磁場(例えば、磁場B
Z)は、アルカリ金属(例えば、アルカリ金属14)及び磁気回転同位体(例えば、磁気回転同位体16)を包囲するように密封された蒸気セル(例えば、蒸気セル12)を通して供給される。204において、光ビーム(例えば、光ビームOPT)は、アルカリ金属を分極することによって、磁場に反応したアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を促進するように、磁場に対してオフセット角(例えば、オフセット角θ)で蒸気セルを通して供給される。206において、蒸気セルから出射する光ビームに相当する検出ビーム(例えば、検出ビームO
DET)の強度がモニタリングされる。208において、受感軸周りの回転角は、検出ビームの強度(例えば、光検出器26によってモニタリングされるような)に基づいて計算される。
【0031】
上記は本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で、構成要素又は方法の考えられるあらゆる組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者であれば、本発明の多くのさらなる組み合わせ及び置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に入る全てのそのような変更形態、改変形態、及び変形形態を包含するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一般にセンサシステムに関し、特に核磁気共鳴(NMR)ジャイロスコープシステムに関する。NMRジャイロスコープシステムは、アルカリ金属及び少なくとも1つの磁気回転同位体を有する蒸気セル(vapor cell)を含み得る。磁場源は、蒸気セルを通して供給される及びNMRジャイロスコープシステムの受感軸とアライメントされた実質的に均一な磁場を生成することができる。レーザは、蒸気セルを通して供給されてアルカリ金属を分極させる光ビームを生成することができ、従って、磁場に反応したアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動が促進される。一例として、システムは、第1の磁場に対して直角の磁場を生成する第2の磁場源も含むことができ、従って、アルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を引き起こすように受感軸とミスアライメントされた(misaligned)正味磁場(net magnetic field)を供給する。例えば、第2の磁場は、磁気回転同位体の共振周波数に相当する周波数を有し得る。
【0009】
システムは、光ビームを円偏光させる及び第1の磁場に対してオフセット角で蒸気セルを通して光ビームを供給する1組の光学系も含み得る。一例として、オフセット角は、アルカリ金属の歳差運動の全周期中のアルカリ金属による光ビームの最小吸収と最大吸収との最大信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)に関連する最適角に相当し得る。従って、蒸気セルから出射する光ビームに相当する検出ビームは、アルカリ金属の歳差運動周波数によって変調された強度を有し得る。システムは、検出ビームの強度をモニタリングする光検出器を含む角回転センサを含み得る。角回転センサは、アルカリ金属の歳差運動周波数の検出ビームを復調し、磁気回転同位体の歳差運動にほぼ等しい周波数を有し得る復調信号を生成することができる。従って、角回転センサは、復調信号に基づいてNMRジャイロスコープシステムの回転角を決定することができる。例えば、復調信号は、比較に基づいて(例えば、位相又は周波数差に基づいて)回転角を決定できるように、周波数基準と比較され得る。
【0010】
図1は、本発明の一態様による、核磁気共鳴(NMR)ジャイロスコープシステム10の一例を示す。NMRジャイロスコープシステム10は、様々な用途の何れかにおいて実装され得る。一例として、NMRジャイロスコープシステム10は、航空機及び/又は宇宙船用のナビゲーションシステムにおいて実装され得る。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、
図4の例においてより詳細に示されるような多軸ジャイロスコープシステムの一部でもよい。
【0011】
NMRジャイロスコープシステム10は、例えば、様々な形状及びサイズの何れかのガラスケースでもよい蒸気セル12を含む。蒸気セル12は、アルカリ金属14及び磁気回転同位体(gyromagnetic isotope)16を含む。一例として、アルカリ金属14は、ルビジウム(Rb)又はセシウム(Cs)蒸気でもよく、磁気回転同位体16は、ヘリウム−3、クリプトン−83、キセノン−129、及び/又はキセノン−131等の様々な希ガス同位体の何れでもよい。NMRジャイロスコープシステム10は、蒸気セル12を通る正味磁場B
Zを生成するように構成された磁場源18も含む。例えば、磁場B
Zは、蒸気セル12を通して供給される及びNMRジャイロスコープシステム10の受感軸とアライメントされた交流変調された直流磁場を含み得る。一例として、磁場源18は、蒸気セル12を実質的に取り囲む磁気ソレノイドとして構成されてもよい。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、蒸気セル12を実質的に取り囲み得る磁気シールド(不図示)を含んでもよく、従って、地磁場から等の外部磁場からの干渉が実質的に軽減される。
【0012】
NMRジャイロスコープシステム10は、1組の光学系22を介して蒸気セル12を通して供給される光ビームOPTを供給するレーザ20も含む。例えば、レーザ20は、電流信号(不図示)によって制御され得る垂直キャビティ面発光レーザ(vertical cavity surface-emitting laser : VCSEL)として構成されて、光ビームOPTの実質的に安定した波長を供給してもよい。一例として、光学系22は、光ビームOPTを円偏光させるように構成された4分の1波長板と、光ビームOPTを実質的にコリメートし、磁場B
Zに対するオフセット角θで蒸気セル12を通して光ビームOPTを供給する1組のミラー及び/又はレンズとを含み得る。光ビームOPTは、蒸気セル12内のアルカリ金属14を光ポンピングさせてアルカリ金属14を分極させ、それによって、磁場B
Zの交流成分に基づいてアルカリ金属14の歳差運動を促進するように構成され得る。さらに、磁気回転同位体16もまた、磁気回転同位体16をアルカリ金属14にスピンアライメントさせるスピン交換プロセスにより歳差運動する。一例として、オフセット角θは、アルカリ金属14の歳差運動の全周期中のアルカリ金属14による光ビームOPTの最小吸収と最大吸収との最大SNRに関連する最適角に相当し得る。
【0013】
具体的に、アルカリ金属14の歳差運動する粒子は、歳差運動周期において光ビームOPTと逆平行に近いほど、光ビームOPTの光子を吸収する可能性が高く、歳差運動周期において光ビームOPTと平行に近いほど、光ビームOPTの光子を吸収する可能性が最も低い。従って、磁場B
Z、従ってNMRジャイロスコープシステム10の受感軸から光ビームOPTを分離させることに基づいて、アルカリ金属14の歳差運動は、アルカリ金属14の歳差運動の周期にわたって変化する光ビームOPTの吸収プロファイルを定義し得る。光ビームOPTは、アルカリ金属14の歳差運動周期にわたる光ビームOPTのフォトンの可変吸収に基づいたアルカリ金属14の歳差運動周期にわたって変化する強度を有する検出ビームO
DETとして、蒸気セル12から出射する。さらに、以下により詳細に説明するように、磁気回転同位体16の歳差運動は、アルカリ金属14の歳差運動、従って検出ビームO
DETの強度に影響を与え得る。その結果、検出ビームO
DETの強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、本明細書に記載されるように、検出ビームO
DETの強度は、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を示し得る。
【0014】
NMRジャイロスコープシステム10は、角回転センサ24をさらに含む。角回転センサ24は、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角を計算するために検出ビームO
DETに基づいて磁気回転同位体16の歳差運動角を測定するように構成され得る。角回転センサ24は、光検出器26及び回転検出コンポーネント28を含む。光検出器26は、蒸気セル12から出射する光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度をモニタリングするように構成される。前述のように、検出ビームO
DETの変調強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、回転検出コンポーネント28は、磁気回転同位体16の歳差運動を決定するために検出ビームO
DETを復調するように構成され得る。それにより、復調された検出信号O
DETにおいて検出されるような磁気回転同位体16の歳差運動角の変化を処理して、回転運動に対応した受感軸周りの配向の変化を決定することができる。
【0015】
例えば、回転検出コンポーネント28は、磁気回転同位体16の測定された歳差運動角に基づいてNMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角を計算するように構成された機械化プロセッサを含み得る。一例として、回転検出コンポーネント28は、復調された検出信号O
DETによって示される磁気回転同位体16の測定された歳差運動角に基づいて蒸気セル12の受感軸周りの回転角を計算するように構成され得る。例えば、磁気回転同位体16の検出された歳差運動角は、安定した磁場B
Zにおける磁気回転同位体16の予想歳差運動角に相当する所定の基準信号と比較され得る。従って、蒸気セル12の回転は、磁気回転同位体16の測定された歳差運動角と基準信号との差(例えば、位相又は周波数差)から計算することができる。
【0016】
図1の例において記載したように、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸周りの回転角は、一般的なNMRジャイロスコープシステムの場合と比較してより単純化した方法で決定することができる。具体的には、NMRジャイロスコープシステム10の受感軸とアライメントされた磁場B
Zに対するオフセット角で光ビームOPTを供給するという実装に基づいて、光ビームOPTは、アルカリ金属14を光ポンピング及び分極させるポンプビームとして、及び受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を決定するプローブビームとして動作する。その結果、NMRジャイロスコープシステム10は、2つ以上のレーザとは対照的に、単一レーザのみを用いて実装され得る。さらに、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を決定するための検出ビームO
DETの処理は、その処理が直線偏光信号のファラデー回転に基づくのではなく、一般的なNMRジャイロスコープシステムに対して行われるので、より単純化した費用効率の高い方法で実装され得る。従って、NMRジャイロスコープシステム10は、例えば案内及びナビゲーション用途用に、単純化したより費用効果の高いジャイロスコープとして実装され得る。
【0017】
NMRジャイロスコープシステム10は、
図1の例に限定されることを意図されていないことを理解されたい。一例として、蒸気セル12は、合計で2つ又は3つの磁気回転同位体等の、磁気回転同位体16を超える追加の磁気回転同位体を含み得る(例えば、磁場B
Zを安定化する及び/又は受感軸周りの回転の計算を行うため)。さらに、NMRジャイロスコープシステム10は、追加のコンポーネントがNMRジャイロスコープシステム10に含まれ得るように、
図1の例において簡潔さのために単純化して示されていることを理解されたい。例えば、NMRジャイロスコープシステム10は、磁場源18及び/又はレーザ20を安定化させる追加のコンポーネント及び光学系も含み得る。従って、NMRジャイロスコープシステム10は、様々な方法で構成され得る。
【0018】
図2は、本発明の一態様による、NMRジャイロスコープシステム50の別の例を示す。NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例におけるNMRジャイロスコープシステム10と実質的に同様に構成され得る。具体的には、NMRジャイロスコープシステム50は、
図2の例ではZ軸として示される受感軸52周りの回転角ROTを測定するように構成され得る。従って、NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例において前述したのと同様に、航空機及び/又は宇宙船用のナビゲーションシステムにおいて、及び/又は多軸ジャイロスコープシステムの一部として実装され得る。従って、
図2の例の以下の説明において、
図1の例が参照される。
【0019】
NMRジャイロスコープシステム50は、立方体、円筒形、又は球状等の様々な形状の何れかで配置され得る蒸気セル54を含む。蒸気セル54は、アルカリ金属14及び磁気回転同位体16(例えば、さらに少なくとも1つの追加の磁気回転同位体)を含む。NMRジャイロスコープシステム50は、Z軸に沿って、つまり、受感軸52と実質的に平行な方向に蒸気セル54を通る実質的に均一な磁場B
Zを生成する第1の磁場源56も含む。
図1の例における上記の説明と同様に、磁場源56は、蒸気セル54を実質的に取り囲む磁気ソレノイドとして構成されてもよい。
【0020】
さらに、NMRジャイロスコープシステム50は、磁場B
Zに対して実質的に直角な方向に(例えば、X軸に沿って)刺激磁場B
Xを生成するように構成された第2の磁場源57を含む。一例として、磁場B
Xは、磁場B
Zの交流成分の周波数よりもずっと低くなり得る、磁気回転同位体16の共振周波数に実質的に合わせられた(すなわち、アルカリ金属14の歳差運動周波数を決定づけ得る)周波数を持つ交流成分を有し得る。さらに、NMRジャイロスコープシステム50は、磁場B
Zに対するオフセット角θで光学系60(例えば、光信号OPTを円偏光させる4分の1波長板を含む)を通るように方向付けられ、検出ビームO
DETとして蒸気セル54から出射する光信号OPTを生成するように構成されたレーザ58を含む。一例として、オフセット角θは、アルカリ金属14の歳差運動の全周期中のアルカリ金属14による光ビームOPTの最小吸収と最大吸収との最大SNRに関連する最適角に相当し得る。例えば、オフセット角θは、アルカリ金属14の分極が磁場B
Zに平行な光信号OPTのベクトル成分の強度に正比例する場合のNMRジャイロスコープシステム50の構成において、約26.56°となり得る。従って、検出ビームO
DETの強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、本明細書に記載されるように、検出ビームO
DETの強度は、受感軸周りのNMRジャイロスコープシステム10の回転を示し得る。
【0021】
光信号OPTは、磁場B
Z及び刺激磁場B
Sに反応した受感軸52周りのアルカリ金属14の歳差運動を促進するように、アルカリ金属14をスピン分極し得る。光学的にスピン分極されたアルカリ金属14は、磁場B
Z、つまり受感軸52と実質的に平行となり得る局所正味磁場(B
L)を生じさせる。一例として、光学的にスピン分極されたアルカリ金属14からの局所磁場B
Lは、実質的に均一な磁場B
Zと同じ又は反対の方向(例えば、光ポンプビームOPTの円偏光方向に応じて)を有し得る。スピン交換プロセスは、磁気回転同位体16に同様に正味スピン分極を得させる及び蒸気セル54において同様に歳差運動を行わせる。局所磁場B
Lは、磁気回転同位体16の歳差運動周波数に対して正味の影響を持ち得る。例えば、磁気回転同位体16の質量は、磁気回転同位体16に対する局所磁場の影響を決定するものとなり得る。一例として、磁気回転同位体16及び少なくとも1つの他の磁気回転同位体の異なる質量は、アルカリ金属14と磁気回転同位体16との結合(互いに短寿命分子で結合される)における質量シフトの低下を生じさせ得る。従って、磁気回転同位体16及び少なくとも1つの他の磁気回転同位体は、それぞれの光学的にスピン分極されたアルカリ金属14との相互作用の差により、異なる見かけ上の局所磁場B
Lを受け得る。
【0022】
一例として、光ビームOPTによってポンピングされると、アルカリ金属14を構成する原子は、それぞれの電子分極が急速に失われ、その結果、実質的にランダムに配向され得る。ランダム配向は、例えばCs−Xeスピン交換衝突プロセスに基づいて、例えば他の原子との衝突、磁場B
Zとアライメントされていない原子との衝突、及び/又は磁場B
Zとアライメントされた他の原子との衝突の結果として生じ得る。アルカリ金属14がポンプビームOPTとの相互作用の結果、特定の状態及びエネルギー準位に達すると、アルカリ金属14は、アルカリ金属14を実質的に均一な磁場B
Zにアライメントさせる力を受ける。例えば関連の磁気シールド(
図2の例では不図示)によって軽減され得る受感軸52を横断する磁場が存在しない場合、Xe等の磁気回転同位体16のスピン交換光学的ポンピング原子は、コヒーレントグループとして歳差運動を行わず、正味の横磁場歳差運動をもたらさない場合がある。しかしながら、前述のように、X軸に沿って設けられた磁場B
Xを、磁気回転同位体16の共振ラーモア周波数に合わせることができ、従って、磁気回転同位体16の原子に受感軸52の周りでグループとして歳差運動をさせる。その結果、磁場B
Xの振動特性に基づいて、それぞれの固有ラーモア周波数と共鳴状態となり得る磁気回転同位体16のスピンに対して正味トルクが働き、従って、磁気回転同位体16のスピンアライメントされた原子に同相での歳差運動をさせ得る。アルカリ金属14の完全にポンピングされた原子の電子スピンに対するトルクの大きさは、各ポンピングされた原子の磁気モーメントと、実質的に均一な磁場B
Zとの角度、並びに磁場B
Xの大きさの関数となり得る。
【0023】
NMRジャイロスコープシステム50は、
図1の例では各々が角回転センサ24の一部であり得る光検出器62及び回転検出コンポーネント64を含む。光検出器62は、蒸気セル54から出射する光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度をモニタリングするように構成され、従って、歳差運動信号PRE
CRを生成する。前述のように、検出ビームO
DETの変調強度は、磁気回転同位体16によって変化するようなアルカリ金属14の歳差運動に対応する。従って、歳差運動信号PRE
CRは、アルカリ金属14の歳差運動に対応する搬送波周波数と、搬送波周波数よりも大幅に低い周波数を有する、従って磁気回転同位体16の歳差運動に対応する交流信号成分とを有する電気信号でもよい。従って、回転検出コンポーネント64は、磁気回転同位体16の歳差運動を決定するために歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成され得る。その結果、復調された歳差運動信号PRE
CRにおいて検出されるような磁気回転同位体16の歳差運動角の変化を処理して、NMRジャイロスコープシステム50の角回転ROTに対応した受感軸周りの配向の変化を決定することができる。
【0024】
図3は、回転検出コンポーネント100の一例を示す。回転検出コンポーネント100は、
図2の例における回転検出コンポーネント64に対応し得る。従って、
図3の例の以下の説明において、
図2の例が参照される。
【0025】
回転検出コンポーネント100は、光検出器62によって供給された歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成された復調器102を含む。一例として、復調器102は、磁場B
Zの交流成分に対応する周波数、つまり、アルカリ金属14の歳差運動周波数で歳差運動信号PRE
CRを復調するように構成され得る。従って、復調器102は、歳差運動信号PRE
CRの搬送波周波数を除去して、磁気回転同位体16の歳差運動に対応する交流成分を有し得る信号PRE
DMを生成するように構成される。
【0026】
回転検出コンポーネント100は、局所発振器104及び信号処理部106を含む。局所発振器104は、所定の周波数を有した基準信号LOを生成するように構成される。例えば、基準信号LOの所定の周波数は、安定した磁場B
Zにおける磁気回転同位体16の予想歳差運動周波数に相当し得る。信号PRE
DM及び基準信号LOは、それぞれ信号処理部106に供給される。信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOを比較するように構成され得る。一例として、信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOの各々の位相及び/又は周波数を比較し得る。比較の結果、信号処理部106は、信号PRE
DM及び基準信号LOの位相及び/又は周波数間の差に相当する差信号DIFFを生成し得る。回転検出コンポーネント100は、信号PRE
DMと基準信号LOとの差に基づいて、NMRジャイロスコープシステム50の受感軸周りの回転角ROTを計算するように構成された機械化プロセッサ108をさらに含む。従って、本明細書に説明されるように、受感軸52周りのNMRジャイロスコープシステム50の回転は、アルカリ金属14を分極することによってアルカリ金属14及び磁気回転同位体16の歳差運動を促進するように蒸気セル54を通して供給される円偏光光ビームOPTに相当する検出ビームO
DETの強度に基づいて決定され得る。
【0027】
図4は、本発明の一態様による、三軸ジャイロスコープシステム150の一例を示す。一例として、三軸ジャイロスコープシステム150は、航空機及び/又は宇宙船用等の様々なナビゲーション制御システム又はヨー、ピッチ、及びロール回転運動情報をモニタリングするデバイスの何れかにおいて実装され得る。
【0028】
三軸ジャイロスコープシステム150は、X軸ジャイロスコープシステム152、Y軸ジャイロスコープシステム154、及びZ軸ジャイロスコープシステム156を含む。
図4の例では、X軸ジャイロスコープシステム152は、X軸に関する受感軸を有し、Y軸ジャイロスコープシステム154は、Y軸に関する受感軸を有し、Z軸ジャイロスコープシステム156は、Z軸に関する受感軸を有し得る。各NMR蒸気セル158、160、及び162の回転軸は、
図4の例においてデカルト座標システム164によって示される。一例として、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、
図2の例におけるNMRジャイロスコープシステム50と実質的に同様に構成され得る。従って、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、アルカリ金属を分極することによって内部のアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を促進するように各蒸気セル158、160、及び162を通して供給される各円偏光光ビームOPTに相当する各検出ビームO
DETの強度に基づいて、X、Y、及びZ軸周りのそれぞれの回転角ROT
X、ROT
Y、及びROT
Zを決定するように構成され得る。
【0029】
図4の例では、X軸、Y軸、及びZ軸ジャイロスコープシステム152、154、及び156の各々は、それぞれの回転角ROT
X、ROT
Y、及びROT
Zを含む信号を運動センサ166に出力するものとして示される。従って、運動センサ166は、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスの総三軸回転運動を決定するように構成され得る。従って、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスのヨー、ピッチ、及びロールを決定することができる。従って、運動センサ166は、三軸ジャイロスコープシステム150を含む関連の乗り物又はデバイスの三軸回転運動を表示、出力、及び/又は通知するように構成され得る。
【0030】
上記の前述の構造的及び機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、
図5を参照することにより、より理解されるであろう。説明を簡単にするために、
図5の方法を順に実行するものとして図示及び説明するが、本発明による一部の態様は、本明細書に図示及び説明されたものとは異なる順序で及び/又は他の態様と同時に実行し得るので、本発明は例示された順序に限定されないことを理解及び認識されたい。さらに、本発明の一態様による方法を実装するために、全ての例示された特徴が必要とは限らない場合がある。
【0031】
図5は、NMRジャイロスコープシステム(例えば、NMRジャイロスコープシステム10)における受感軸周りの回転角(例えば、信号ROT)を決定する方法200の一例を示す。202において、NMRジャイロスコープシステムの受感軸(例えば、受感軸52)とアライメントされた磁場(例えば、磁場B
Z)は、アルカリ金属(例えば、アルカリ金属14)及び磁気回転同位体(例えば、磁気回転同位体16)を包囲するように密封された蒸気セル(例えば、蒸気セル12)を通して供給される。204において、光ビーム(例えば、光ビームOPT)は、アルカリ金属を分極することによって、磁場に反応したアルカリ金属及び磁気回転同位体の歳差運動を促進するように、磁場に対してオフセット角(例えば、オフセット角θ)で蒸気セルを通して供給される。206において、蒸気セルから出射する光ビームに相当する検出ビーム(例えば、検出ビームO
DET)の強度がモニタリングされる。208において、受感軸周りの回転角は、検出ビームの強度(例えば、光検出器26によってモニタリングされるような)に基づいて計算される。
【0032】
上記は本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で、構成要素又は方法の考えられるあらゆる組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者であれば、本発明の多くのさらなる組み合わせ及び置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に入る全てのそのような変更形態、改変形態、及び変形形態を包含するものとする。