は、光軸に沿って移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行う。そして、所定の条件を満足することにより、動画撮影機能を備えた小型カメラに好適な、小型で、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、からなり、前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行うインナーフォーカス式レンズであって、
前記第3レンズ群の最も像側には負の屈折力を有する単レンズ成分が配置され、
以下に示す条件式を満足することを特徴とするインナーフォーカス式レンズ。
(1) (R1+R2)/(R1−R2)≦0.0
ただし、R1は前記負の屈折力を有する単レンズ成分の物体側空気境界面の曲率半径、R2は前記負の屈折力を有する単レンズ成分の像側空気境界面の曲率半径を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたインナーフォーカス式レンズは、35mmフィルムカメラ換算で中望遠の焦点距離をもち、内部に小型、軽量のフォーカス群を備えているため、良好なウォブリングを実行することができる。
【0007】
ところで、従来、光学像を受光して電気的な画像信号に変換する撮像センサにおいては、オンチップマイクロレンズ等で入射光の効率的な取り込みをするための制限があり、レンズ側で射出瞳をある一定以上大きくして撮像センサへの入射光束のテレセントリック性を確保することが望まれていた。
【0008】
しかしながら、近年の撮像センサでは開口率の向上やオンチップマイクロレンズの設計自由度が進み、撮影レンズ側に求められる射出瞳の制限も少なくなってきた。さらに、昨今のソフトウェアやカメラシステムの進歩、向上もあり歪曲収差がある程度大きく、従来では目立つものであっても画像処理により補正することも可能になってきている。
【0009】
このため、従来の撮影レンズでは、光学系の最像側に正レンズ成分を配置して、テレセントリック性が確保されていたが、近年ではその必要がなくなってきており、光学系の最像側に負レンズ成分を配置して撮像センサに対する光束の斜入射があってもオンチップマイクロレンズとの瞳のミスマッチ等による周辺減光(シェーディング)が目立ちにくくなってきた。また、光学系の最像側に負レンズ成分を配置することが可能になったことで、光学系口径の小型化が期待できる。
【0010】
これに対して、特許文献1に開示されたインナーフォーカス式レンズでは、光学系全長は短くなっているものの、光学系の最像側に正レンズ成分が配置されていることから、第3レンズ群(最も像側のレンズ)の口径の小型化が不十分である。このため、近年広く普及しているミラーレス一眼カメラをはじめとする光学系の口径方向の小型化が進んだカメラには対応が難しい。また、フォーカシングを行う際にウォブリングによる収差変動や変倍作用を抑制するためには、光学系の最像側に負レンズ成分を配置することがより好ましい。
【0011】
さらに、特許文献1に開示されたインナーフォーカス式レンズは、広角化を目的としたものではないため、広角化を図るうえで必要とされる、像面湾曲、歪曲収差の補正や周辺光量の確保といった点が考慮されていない。
【0012】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することを目的とする。また、広角から標準画角の焦点距離を有する、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の請求項1にかかるインナーフォーカス式レンズは、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、からなり、前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行うインナーフォーカス式レンズであって、前記第3レンズ群の最も像側に負の屈折力を有する単レンズ成分が配置され、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(1) (R1+R2)/(R1−R2)≦0.0
ただし、R1は前記負の屈折力を有する単レンズ成分の物体側空気境界面の曲率半径、R2は前記負の屈折力を有する単レンズ成分の像側空気境界面の曲率半径を示す。
【0014】
請求項1にかかる発明によれば、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができる。特に、第3レンズ群(最も像側のレンズ)の口径を縮小するとともに、軸外のコマ収差を良好に補正することができる。
【0015】
本発明の請求項2にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1の発明において、前記第3レンズ群の最も像側に配置された負の屈折力を有する単レンズ成分が単一の硝材で構成され、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(2) 30≦νen
ただし、νenは前記第3レンズ群の最も像側に配置された負の屈折力を有する単レンズ成分のe線に対するアッベ数を示す。
【0016】
請求項2にかかる発明によれば、第3レンズ群の最も像側に配置された負の屈折力を有する単レンズ成分の小型、軽量化が容易になるとともに、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0017】
本発明の請求項3にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1または2の発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(3) 0.18≦f1/f≦0.99
ただし、f1は無限遠物体合焦状態における前記第1レンズ群の焦点距離、fは無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離を示す。
【0018】
請求項3にかかる発明によれば、さらに、広角から標準画角の焦点距離を有する、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができる。
【0019】
本発明の請求項4にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜3のいずれか一つの発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(4) −29.0≦f3/f≦−5.4
ただし、f3は無限遠物体合焦状態における前記第3レンズ群の焦点距離、fは無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離を示す。
【0020】
請求項4にかかる発明によれば、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができる。
【0021】
本発明の請求項5にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜4のいずれか一つの発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(5) 0.51≦βinf/βmod≦2.07
ただし、βinfは無限遠物体合焦状態における前記第2レンズ群の近軸倍率、βmodは最至近距離物体合焦状態における前記第2レンズ群の近軸倍率を示す。
【0022】
請求項5にかかる発明によれば、フォーカシングによる画角変動を抑制して、結像性能を向上させることができる。
【0023】
本発明の請求項6にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜5のいずれか一つの発明において、前記第3レンズ群が、物体側から順に配置された、正の屈折力を有するフロントサブレンズ群と、負の屈折力を有するリアサブレンズ群と、により構成され、前記フロントサブレンズ群と前記リアサブレンズ群との間に該第3レンズ群中で最も広い軸上の空気間隔が形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項6にかかる発明によれば、さらに、結像面に近いレンズの口径を縮小するとともに、軸上収差や軸外収差(特に歪曲収差)を良好に補正することができる。
【0025】
本発明の請求項7にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜6のいずれか一つの発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(6) 0.01≦L1s/L≦0.53
ただし、L1sは前記第1レンズ群の最物体側面から開口絞りまでの軸上距離、Lは光学系全長(最物体側のレンズ面頂点から結像面までの空気換算光路長)を示す。
【0026】
請求項7にかかる発明によれば、結像性能を維持しながら前玉径および後玉径の縮小を図ることで、光学系の小型化を促進することができる。
【0027】
本発明の請求項8にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜7のいずれか一つの発明において、前記第2レンズ群が負の屈折力を有する単レンズ成分で構成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項8にかかる発明によれば、フォーカス群である第2レンズ群の小型、軽量化を図ることで、動画撮影に適したインナーフォーカス式レンズを提供することができる。
【0029】
本発明の請求項9にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜8のいずれか一つの発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(7) −2.12≦f2/f≦−0.18
ただし、f2は無限遠物体合焦状態における前記第2レンズ群の焦点距離、fは無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離を示す。
【0030】
請求項9にかかる発明によれば、さらに、光学系全長を短縮し、結像性能を向上させることができる。
【0031】
本発明の請求項10にかかるインナーフォーカス式レンズは、請求項1〜9のいずれか一つの発明において、最も物体側に配置されたレンズ以外のレンズにより構成されるレンズ群を光軸に対して垂直方向へ移動させることで像をシフトさせ、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(8) 0.15≦(1−βp)×βr≦4.50
ただし、βpは光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率、βrは光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率を示す。
【0032】
請求項10にかかる発明によれば、防振補正機能を備えた、小型のインナーフォーカス式レンズを提供することができる。特に、防振補正時の防振群の移動量を抑制して光学系口径の小型化を図ることができるとともに、防振補正能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができるという効果を奏する。さらに、広角から標準画角の焦点距離を有する、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができるという効果を奏する。本発明によれば、動画撮影にも好適な小型のインナーフォーカス式レンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
本発明にかかるインナーフォーカス式レンズは、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、からなっている。
【0037】
本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行う。このように、第2レンズ群を移動させてフォーカシングを行うことで、光学系全長の変化がなく、防塵、防音性能が高められる。
【0038】
また、最も物体側に正の屈折力を有する第1レンズ群を配置したことにより、後続する第2レンズ群へ導かれる光束径を縮小することができる。このため、フォーカス群である第2レンズ群の口径を小さくして、第2レンズ群の軽量化を図ることができる。この結果、高速かつ静粛性の高いフォーカシングが可能になり、動画撮影に有効である。また、第2レンズ群の口径を小さくすることができるため、光学系口径の小型化に有利である。
【0039】
さらに、最も像側に負の屈折力を有する第3レンズ群を配置したことにより、テレフォト性を高めるとともにバックフォーカスを短縮することが可能になり、光学系の小型化を促進することができる。
【0040】
本発明は、動画撮影が可能な小型カメラにも好適なインナーフォーカス式レンズ、すなわち、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することを目的としている。さらに、広角から標準画角の焦点距離を有する、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することを目的としている。そこで、かかる目的を達成するため、上記特徴に加え、以下に示すような各種条件を設定している。
【0041】
まず、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第3レンズ群の最も像側に負の屈折力を有する単レンズ成分を配置することが好ましい。このようにすることで、第3レンズ群(最も像側のレンズ)の口径の小型化をより促進することができ、近年広く普及しているミラーレス一眼カメラ等の小型カメラに好適である。
【0042】
なお、単レンズ成分とは、単一の研磨レンズや、非球面レンズ、複合非球面レンズ、接合レンズを含み、空気層をもち互いに接着されていない、たとえば正負の2枚レンズなどは含まない。
【0043】
本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第3レンズ群の最も像側に負の屈折力を有する単レンズ成分を配置することに加え、当該負の屈折力を有する単レンズ成分の物体側空気境界面の曲率半径をR1、当該負の屈折力を有する単レンズ成分の像側空気境界面の曲率半径をR2とするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(1) (R1+R2)/(R1−R2)≦0.0
【0044】
条件式(1)は、第3レンズ群の最も像側に配置される、負の屈折力を有する単レンズ成分の形状を規定する式である。条件式(1)を満足すると、当該単レンズ成分の物体側面の曲率半径が像側面の曲率半径より小さくなる。この結果、軸外コマ収差の良好な補正が可能になる。
【0045】
なお、上記条件式(1)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(1a) (R1+R2)/(R1−R2)≦−1.0
この条件式(1a)で規定する範囲を満足することにより、軸外コマ収差のより良好な補正が可能になる。
【0046】
さらに、上記条件式(1a)は、次に示す範囲を満足すると、軸外コマ収差の補正により効果を発揮する。
(1b) −100.00≦(R1+R2)/(R1−R2)≦−1.02
【0047】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズにおいて、第3レンズ群の最も像側に配置された負の屈折力を有する単レンズ成分が単一の硝材で構成されていることが好ましい。第3レンズ群中の当該単レンズ成分を単一の硝材、すなわち単レンズで構成すると、当該単レンズ成分の光軸方向、径方向の小型化が容易になる。また、当該単レンズ成分の軽量化を図ることもできる。
【0048】
そして、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズにおいて、第3レンズ群の最も像側に配置された負の屈折力を有する単レンズ成分のe線に対するアッベ数をνenとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(2) 30≦νen
【0049】
条件式(2)においてその下限を下回ると、倍率色収差が過補正になり、高い結像性能を維持することが困難になるため、好ましくない。
【0050】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、無限遠物体合焦状態における第1レンズ群の焦点距離をf1、無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離をfとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(3) 0.18≦f1/f≦0.99
【0051】
条件式(3)は、無限遠物体合焦状態における、第1レンズ群の焦点距離と光学系全系の焦点距離との比を規定する式である。条件式(3)を満足することにより、第1レンズ群の屈折力が適正なものとなって、前玉径の縮小および光学系全長の短縮を図るとともに、広角で、高い結像性能を備えた明るいインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
【0052】
条件式(3)においてその下限を下回ると、第1レンズ群の焦点距離が短くなって球面収差がアンダー側に過大となるばかりか、後続するレンズ群の近軸結像倍率が大きくなって後玉径が拡大し光学系の大型化につながるため、好ましくない。一方、条件式(3)においてその上限を超えると、第1レンズ群の焦点距離が長くなって光学系全長が延び、光学系の小型化を図ることが困難になる。
【0053】
なお、上記条件式(3)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(3a) 0.22≦f1/f≦0.90
この条件式(3a)で規定する範囲を満足することにより、小型、広角で、より良好な結像性能を備えた明るいインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
【0054】
さらに、上記条件式(3a)は、次に示す範囲を満足すると、小型、広角で、より高性能なインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
(3b) 0.30≦f1/f≦0.80
【0055】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、無限遠物体合焦状態における第3レンズ群の焦点距離をf3、無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離をfとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(4) −29.0≦f3/f≦−5.4
【0056】
条件式(4)は、無限遠物体合焦状態における、第3レンズ群の焦点距離と光学系全系の焦点距離との比を規定する式である。この条件式(4)を満足することにより、第3レンズ群の屈折力が適正化され、結像性能を劣化させることなく、光学系の全長および口径の小型化を達成することができる。
【0057】
条件式(4)においてその下限を下回ると、第3レンズ群の屈折力が弱くなる。このため、バックフォーカスが延び、光学系の小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(4)においてその上限を超えると、第3レンズ群の屈折力が強くなる。この場合、当該光学系全系におけるFナンバーが大きくなる傾向にあり、明るい光学系を得ることができない。この状態で明るい光学系を実現するためには、開口絞りを大きく開く必要がある。しかし、開口絞りを大きく開くと諸収差の発生が顕著になることから、結像性能の良好な光学系を実現するためには、収差補正のためにレンズ枚数を増やさなければならなくなる。特に、第1レンズ群を構成するレンズの枚数を増やす必要が生じる。光学系を構成するレンズ枚数が多くなると、光学系の小型、軽量化を図ることが困難になるため、好ましくない。
【0058】
なお、上記条件式(4)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(4a) −26.0≦f3/f≦−5.4
この条件式(1a)で規定する範囲を満足することにより、小型で、より優れた結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
【0059】
さらに、上記条件式(4a)は、次に示す範囲を満足すると、より小型、高性能なインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
(4b) −24.0≦f3/f≦−5.4
【0060】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、無限遠物体合焦状態における第2レンズ群の近軸倍率をβinf、最至近距離物体合焦状態における第2レンズ群の近軸倍率をβmodとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(5) 0.51≦βinf/βmod≦2.07
【0061】
条件式(5)は、無限遠物体合焦状態と最至近距離物体合焦状態とにおける第2レンズ群の近軸横倍率の比を規定する式である。条件式(5)を満足することにより、フォーカス群(第2レンズ群)を稼動させても倍率の変化を抑制することができ、フォーカシングの際の画角変動を抑えることができる。条件式(5)で規定した範囲から逸脱すると、フォーカシングの際の画角変動を抑制することができなくなる。フォーカス群の移動中に画角変動が起きると、像が揺れているように見えて画像の品位が低下する。
【0062】
なお、上記条件式(5)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(5a) 0.60≦βinf/βmod≦1.80
この条件式(5a)で規定する範囲を満足することにより、フォーカシング時の画角変動をより抑制することができる。
【0063】
さらに、上記条件式(5a)は、次に示す範囲を満足すると、フォーカシング時の画角変動をさらに小さくすることができる。
(5b) 0.68≦βinf/βmod≦1.60
【0064】
さらに、上記条件式(5b)は、次に示す範囲を満足すると、フォーカシング時の画角変動を極めて小さくすることができる。
(5c) 0.80≦βinf/βmod≦1.40
【0065】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第3レンズ群を、物体側から順に配置された、正の屈折力を有するフロントサブレンズ群と、負の屈折力を有するリアサブレンズ群と、により構成するとともに、フロントサブレンズ群とリアサブレンズ群との間に第3レンズ群中で最も広い軸上の空気間隔を形成している。
【0066】
このようにすることで、結像面に近いレンズ口径を縮小するとともに、結像性能を向上させることができる。すなわち、ミラーレス一眼カメラ等の小型カメラに搭載目的のショートフランジバックの光学系の小型化で課題となる像側のレンズ口径の拡大を、第3レンズ群の物体側に正の屈折力を有するフロントサブレンズ群を配置することで抑制できる。さらに、負の屈折力を有するリアサブレンズ群をフロントサブレンズ群の像側に空気間隔を設けて配置することで、正の屈折力を有するフロントサブレンズ群で軸上収差を補正しつつ、リアサブレンズ群において軸外収差、特に歪曲収差を良好に補正することができる。
【0067】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第1レンズ群の最物体側面から開口絞りまでの軸上距離をL1s、光学系全長(最物体側のレンズ面頂点から結像面までの空気換算光路長)をLとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(6) 0.01≦L1s/L≦0.53
【0068】
条件式(6)は、第1レンズ群の最物体側面から開口絞りまでの軸上距離と光学系全長との比を規定する式である。条件式(6)を満足することで、光学系全長に対する開口絞りの適切な位置を規定して、高い結像性能を維持しながら、光学系口径の小型化を実現することができる。
【0069】
条件式(6)においてその下限を下回ると、開口絞りが物体側に近づきすぎて像側のレンズ口径が拡大するばかりか、後群における軸外収差、主に歪曲収差の発生が顕著になるため、好ましくない。一方、条件式(6)においてその上限を超えると、開口絞りが像側に近づきすぎて、前玉の有効径の拡大につながり、光学系の小型化が困難になる。
【0070】
なお、上記条件式(6)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(6a) 0.012≦L1s/L≦0.500
この条件式(6a)で規定する範囲を満足することにより、高い結像性能を維持しながら、光学系口径のより小型化を実現することができる。
【0071】
さらに、上記条件式(6a)は、次に示す範囲を満足すると、光学系口径のさらなる小型化を実現することができる。
(6b) 0.013≦L1s/L≦0.400
【0072】
さらに、上記条件式(6b)は、次に示す範囲を満足すると、光学系口径のより一層の小型化を実現することができる。
(6c) 0.013≦L1s/L≦0.300
【0073】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第2レンズ群を負の屈折力を有する単レンズ成分で構成することが好ましい。
【0074】
第2レンズ群を負の屈折力を有する単レンズ成分で構成することでフォーカス群の小型、軽量化が達成され、高速のフォーカシングが可能になり、動画撮影に有効である。また、フォーカス群の小型、軽量化を図ることにより、フォーカス群の駆動をつかさどるアクチュエータ等の駆動手段の負荷も減少し、省電力化に資することになる。また、当該駆動手段の一層の小型化を促進することができる。
【0075】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、無限遠物体合焦状態における第2レンズ群の焦点距離をf2、無限遠物体合焦状態における光学系全系の焦点距離をfとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(7) −2.12≦f2/f≦−0.18
【0076】
条件式(7)は、無限遠物体合焦状態における、第2レンズ群の焦点距離と光学系全系の焦点距離との比を規定する式である。条件式(7)を満足することにより、光学系の小型化を実現しつつ、高い結像性能を維持することができる(特に像面湾曲の補正に有効)。
【0077】
条件式(7)においてその下限を下回ると、第2レンズ群の焦点距離が長くなって、第2レンズ群の負のパワーが弱くなりすぎる。この結果、フォーカシング時の第2レンズ群の移動量が増大して、光学系全長が延び、光学系の小型化が困難になる。一方、条件式(7)においてその上限を超えると、第2レンズ群の焦点距離が短くなって、第2レンズ群の負のパワーが強くなりすぎる。この結果、フォーカシング時の第2レンズ群の移動に伴う収差変動(特に像面湾曲の変動)、画角変動が過大となり、好ましくない。
【0078】
なお、上記条件式(7)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(7a) −1.90≦f2/f≦−0.19
この条件式(7a)で規定する範囲を満足することにより、より小型で、優れた結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
【0079】
さらに、上記条件式(7a)は、次に示す範囲を満足すると、より小型、高性能なインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
(7b) −1.50≦f2/f≦−0.20
【0080】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、最も物体側に配置されたレンズ以外のレンズにより構成されるレンズ群(防振群)を光軸に対して垂直方向へ移動させることで像がシフトされ、防振補正が行われる。そして、光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率をβp、光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率をβrとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(8) 0.15≦(1−βp)×βr≦4.50
【0081】
条件式(8)は、防振補正時に移動されるレンズ群の移動量に対する像のシフト割合を規定する式である。条件式(8)を満足することにより、防振補正時の防振群の移動量を抑制して光学系口径の小型化を図ることができるとともに、防振補正能力を向上させることができる。なお、防振群に最も像側に配置されたレンズが含まれる場合は、条件式(7)におけるβrの値は1になる。
【0082】
条件式(8)においてその下限を下回ると、所定量だけ像をシフトさせるために必要な防振群の垂直方向への移動量が増加して、光学系口径が大きくなり、光学系の小型化が阻害される。一方、条件式(8)においてその上限を超えると、防振群がわずかに移動した場合でも像が大きくシフトしてしまうので、防振補正能力が劣化してしまう。この状態で高い防振補正能力を維持しようとする場合、防振補正時における防振群の制御に極めて高い精度が要求される。この結果、防振群の駆動装置の構成が複雑化し、レンズユニットの製造コストに跳ね返ることになるため、好ましくない。
【0083】
なお、防振群は複数のレンズで構成しても、単レンズで構成しても防振補正効果は変わらない。防振群を単レンズで構成すると、防振群の小型、軽量化を図ることができるため、光学系全系の小型、軽量化に効果的である。防振群の小型、軽量化を図ることにより、防振群の駆動をつかさどる駆動手段の負荷も減少し、省電力化に資することになる。また、防振群に近軸曲率のパワーを弱める形状の非球面レンズを採用すると、防振補正時の片ボケや中心コマの変動を抑制することができる。
【0084】
なお、上記条件式(8)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(8a) 0.16≦(1−βp)×βr≦4.30
この条件式(8a)で規定する範囲を満足することにより、小型で、より優れた防振補正能力を備えたインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
【0085】
さらに、上記条件式(8a)は、次に示す範囲を満足すると、小型、で極めて優れた防振補正能力を備えたインナーフォーカス式レンズを実現することができる。
(8b) 0.16≦(1−βp)×βr≦4.00
【0086】
さらに、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第2レンズ群の最物体側面の曲率半径をR21、第2レンズ群の最像側面の曲率半径をR22とするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(9) 0≦(R21+R22)/(R21−R22)
【0087】
条件式(9)は、第2レンズ群における、最物体側面の形状と最像側面の形状を規定する式である。条件式(9)を満足することにより、第2レンズ群における、最像側面の曲率半径が最物体側面の曲率半径より小さくなる。この結果、強いパワーをもつ面に入射する光線角度の変化を小さくして、フォーカシング時の像面湾曲の変動を抑制することができる。
【0088】
なお、上記条件式(9)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(9a) 1≦(R21+R22)/(R21−R22)
この条件式(9a)で規定する範囲を満足することにより、フォーカシング時の像面湾曲の変動をより抑制することができる。
【0089】
さらに、上記条件式(9a)は、次に示す範囲を満足すると、フォーカシング時の像面湾曲の変動を極めて小さくすることができる。
(9b) 1≦(R21+R22)/(R21−R22)≦300
【0090】
また、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズにおいて、第1レンズ群中に非球面が形成された正レンズを配置すると、球面収差の補正に効果的である。特に、当該正レンズに近軸曲率のパワーを弱める形状の非球面を形成すると、球面収差の補正効果が向上する。
【0091】
また、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズにおいて、第2レンズ群を構成するレンズに非球面を形成すると、像面湾曲の補正により効果的である。特に、第2レンズ群を構成するレンズに近軸曲率のパワーを弱める形状の非球面を形成すると、像面湾曲の補正効果がより向上するとともに、フォーカシング時の像面湾曲の変動を抑える効果がより高くなる。
【0092】
また、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズにおいて、第3レンズ群を構成するレンズに非球面を形成すると、像面湾曲の補正に効果的である。特に、第3レンズ群を構成するレンズに近軸曲率のパワーを弱める形状の非球面を形成すると、像面湾曲の補正効果が向上する。
【0093】
なお、第2レンズ群に対して空気を隔てて像側に配置されるレンズは、正の屈折力を有する単レンズ成分であることが好ましい。かかる単レンズ成分を第2レンズ群の像側に配置することで、第2レンズ群の倍率を高めることができ、フォーカシング時の第2レンズ群の移動量を減少させることができる。この結果、光学系の小型化はもとより高速なフォーカシングも可能になる。
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、全長および口径の小型化が達成され、かつ高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができる。さらに、広角から標準画角の焦点距離を有する、高い結像性能を備えたインナーフォーカス式レンズを提供することができる。しかも、防振補正能力が優れた、小型のインナーフォーカス式レンズを提供することができる。このように、本発明によれば、動画撮影が可能な小型カメラにも容易に搭載できるインナーフォーカス式レンズを提供することができる。特に、上記各条件式を満足することで、動画撮影に好適な、より小型で高い結像性能を有するインナーフォーカス方式レンズを実現することができる。
【0095】
以下、本発明にかかるインナーフォーカス式レンズの実施例を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0096】
図1は、実施例1にかかるインナーフォーカス式レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
図1は、無限遠物体合焦状態を示している。このインナーフォーカス式レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G
11と、負の屈折力を有する第2レンズ群G
12と、負の屈折力を有する第3レンズ群G
13と、が配置されて構成される。
【0097】
第1レンズ群G
11は、物体側から順に、屈折力をもたないレンズL
111と、所定の口径を規定する開口絞りSと、正レンズL
112と、負レンズL
113と、正レンズL
114と、が配置されて構成される。正レンズL
112と負レンズL
113とは、接合されている。正レンズL
114の両面には、非球面が形成されている。
【0098】
第2レンズ群G
12は、負レンズL
121により構成されている。負レンズL
121の両面には、非球面が形成されている。第2レンズ群G
12は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行う。
【0099】
第3レンズ群G
13は、物体側から順に、正レンズL
131(フロントサブレンズ群)と、負レンズL
132(リアサブレンズ群)と、が配置されて構成される。正レンズL
131の両面には、非球面が形成されている。また、正レンズL
131と負レンズL
132との間には、空気間隔が形成されている。
【0100】
実施例1にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第1レンズ群G
11に含まれる正レンズL
114、または第3レンズ群G
13に含まれる正レンズL
131を光軸に対して垂直方向へ移動させることで防振補正を行う。また、第1レンズ群G
11の屈折力をもたないレンズL
111を除くすべてのレンズを一体的に光軸に対して垂直方向へ移動させることによっても防振補正を行うことが可能である。
【0101】
以下、実施例1にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0102】
(レンズデータ)
r
1=∞
d
1=0.6500 ne
1=1.51872 νe
1=64.00
r
2=∞
d
2=0.5000
r
3=∞(開口絞り)
d
3=3.8293
r
4=-9.4944
d
4=2.8640 ne
2=1.83945 νe
2=42.47
r
5=-5.8201
d
5=0.6500 ne
3=1.81184 νe
3=33.03
r
6=-16.1384
d
6=0.2000
r
7=22.3959(非球面)
d
7=3.2615 ne
4=1.85639 νe
4=39.85
r
8=-18.3976(非球面)
d
8=D(8)(可変)
r
9=19.3324(非球面)
d
9=0.6500 ne
5=1.82917 νe
5=23.86
r
10=10.5762(非球面)
d
10=D(10)(可変)
r
11=-17.1418(非球面)
d
11=4.1419 ne
6=1.74689 νe
6=49.07
r
12=-12.0908(非球面)
d
12=2.8770
r
13=-22.5833
d
13=1.0000 ne
7=1.83930 νe
7=37.09
r
14=-77.3086
d
14=Bf
【0103】
円錐係数(k)および非球面係数(A
4,A
6,A
8,A
10)
(第7面)
k=0,
A
4=-4.44632×10
-5,A
6=-3.60976×10
-8,
A
8=9.18001×10
-9,A
10=-2.80183×10
-11
(第8面)
k=0,
A
4=5.44540×10
-5,A
6=2.72131×10
-7,
A
8=3.22891×10
-9,A
10=9.43255×10
-12
(第9面)
k=0,
A
4=-2.70854×10
-5,A
6=-2.61994×10
-6,
A
8=2.06465×10
-8,A
10=-1.04244×10
-10
(第10面)
k=0,
A
4=3.25644×10
-5,A
6=-3.06186×10
-6,
A
8=-3.22202×10
-9,A
10=7.42390×10
-11
(第11面)
k=0,
A
4=1.76311×10
-4,A
6=1.34885×10
-6,
A
8=-1.04265×10
-8,A
10=3.35661×10
-12
(第12面)
k=0,
A
4=1.19215×10
-4,A
6=5.79903×10
-7,
A
8=2.49765×10
-9,A
10=-1.46183×10
-11
【0104】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離(物体距離300mm)
D(8) 1.0688 1.8929
D(10) 6.8075 5.9834
f(光学系全系の焦点距離) 27.5462 26.0246
Fno.(Fナンバー) 2.8840 2.8985
ω(半画角) 38.5881 38.3233
Y(像高) 20.29 21.07
Bf(バックフォーカス) 15.6482 15.6482
【0105】
(条件式(1)に関する数値)
R1(負レンズL
132の物体側空気境界面の曲率半径)=-22.5833
R2(負レンズL
132の像側空気境界面の曲率半径)=-77.3086
(R1+R2)/(R1−R2)=-1.83
【0106】
(条件式(2)に関する数値)
νen(負レンズL
132のe線に対するアッベ数)=37.09
【0107】
(条件式(3)に関する数値)
f1(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G
11の焦点距離)=13.6190
f1/f=0.49
【0108】
(条件式(4)に関する数値)
f3(無限遠物体合焦状態における第3レンズ群G
13の焦点距離)=-400.0000
f3/f=-14.52
【0109】
(条件式(5)に関する数値)
βinf(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
12の近軸倍率)=1.87
βmod(最至近距離物体合焦状態における第2レンズ群G
12の近軸倍率)=1.85
βinf/βmod=1.01
【0110】
(条件式(6)に関する数値)
L1s(第1レンズ群G
11の最物体側面から開口絞りSまでの軸上距離)=1.1500
L(光学系全長)=44.1482
L1s/L=0.03
【0111】
(条件式(7)に関する数値)
f2(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
12の焦点距離)=-29.1423
f2/f=-1.06
【0112】
(条件式(8)に関する数値)
・移動させるレンズ群(防振群)が第1レンズ群G
11の正レンズL
114である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=-0.33
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=2.02
(1−βp)×βr=2.69
・移動させるレンズ群(防振群)が第3レンズ群G
13の正レンズL
131である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=0.76
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=1.43
(1−βp)×βr=0.35
・移動させるレンズ群(防振群)が第1レンズ群G
11の屈折力をもたないレンズL
111を除くすべてのレンズである場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=0
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=1
(1−βp)×βr=1
【0113】
(条件式(9)に関する数値)
R21(負レンズL
121の最物体側面の曲率半径)=19.3324
R22(負レンズL
121の最像側面の曲率半径)=10.5762
(R21+R22)/(R21−R22)=3.42
【0114】
図2は、実施例1にかかるインナーフォーカス式レンズの諸収差図である。図中、曲線はe線(λ=546.074nm)に相当する波長の収差を表す。また、非点収差図におけるS,Mは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。
【実施例2】
【0115】
図3は、実施例2にかかるインナーフォーカス式レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
図3は、無限遠物体合焦状態を示している。このインナーフォーカス式レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G
21と、負の屈折力を有する第2レンズ群G
22と、負の屈折力を有する第3レンズ群G
23と、が配置されて構成される。
【0116】
第1レンズ群G
21は、物体側から順に、正レンズL
211と、所定の口径を規定する開口絞りSと、正レンズL
212と、負レンズL
213と、正レンズL
214と、が配置されて構成される。正レンズL
212と負レンズL
213とは、接合されている。正レンズL
214の両面には、非球面が形成されている。
【0117】
第2レンズ群G
22は、負レンズL
221により構成されている。負レンズL
221の両面には、非球面が形成されている。第2レンズ群G
22は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行う。
【0118】
第3レンズ群G
23は、物体側から順に、正レンズL
231(フロントサブレンズ群)と、負レンズL
232(リアサブレンズ群)と、が配置されて構成される。正レンズL
231の両面には、非球面が形成されている。また、正レンズL
231と負レンズL
232との間には、空気間隔が形成されている。
【0119】
実施例2にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第1レンズ群G
21に含まれる正レンズL
214、または第3レンズ群G
23に含まれる正レンズL
231を光軸に対して垂直方向へ移動させることで防振補正を行う。
【0120】
以下、実施例2にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0121】
(レンズデータ)
r
1=17.9780
d
1=3.1723 ne
1=1.49845 νe
1=81.21
r
2=-179.8468
d
2=0.5000
r
3=∞(開口絞り)
d
3=3.7714
r
4=-24.8117
d
4=1.6114 ne
2=1.49845 νe
2=81.21
r
5=-17.9439
d
5=0.6500 ne
3=1.73432 νe
3=28.10
r
6=47.4504
d
6=0.6736
r
7=28.5683(非球面)
d
7=2.9298 ne
4=1.88765 νe
4=36.97
r
8=-23.6412(非球面)
d
8=D(8)(可変)
r
9=38.5730(非球面)
d
9=0.6500 ne
5=1.62518 νe
5=57.96
r
10=12.3652(非球面)
d
10=D(10)(可変)
r
11=-19.3415(非球面)
d
11=1.4124 ne
6=2.00912 νe
6=28.91
r
12=-17.3396(非球面)
d
12=8.4378
r
13=-13.9954
d
13=1.0000 ne
7=1.58481 νe
7=40.61
r
14=-20.2884
d
14=Bf
【0122】
円錐係数(k)および非球面係数(A
4,A
6,A
8,A
10)
(第7面)
k=0,
A
4=-5.31140×10
-5,A
6=1.77167×10
-8,
A
8=-2.98858×10
-10,A
10=2.27493×10
-11
(第8面)
k=0,
A
4=3.94940×10
-6,A
6=-5.26041×10
-8,
A
8=-8.87342×10
-11,A
10=1.87394×10
-11
(第9面)
k=0,
A
4=7.42096×10
-6,A
6=-1.53328×10
-6,
A
8=1.49734×10
-8,A
10=-4.71441×10
-11
(第10面)
k=0,
A
4=1.80928×10
-5,A
6=-1.60282×10
-6,
A
8=6.53719×10
-9,A
10=3.47436×10
-12
(第11面)
k=0,
A
4=1.40765×10
-4,A
6=4.99455×10
-7,
A
8=-1.94373×10
-9,A
10=-9.37987×10
-12
(第12面)
k=0,
A
4=1.04350×10
-4,A
6=3.22665×10
-7,
A
8=6.06200×10
-10,A
10=-1.72843×10
-11
【0123】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離(物体距離300mm)
D(8) 1.2021 3.4333
D(10) 6.9558 4.7246
f(光学系全系の焦点距離) 48.4962 40.8401
Fno.(Fナンバー) 2.8840 2.9589
ω(半画角) 21.9113 20.7990
Y(像高) 21.63 21.63
Bf(バックフォーカス) 16.1817 16.1817
【0124】
(条件式(1)に関する数値)
R1(負レンズL
232の物体側空気境界面の曲率半径)=-13.9954
R2(負レンズL
232の像側空気境界面の曲率半径)=-20.2884
(R1+R2)/(R1−R2)=-5.45
【0125】
(条件式(2)に関する数値)
νen(負レンズL
232のe線に対するアッベ数)=40.61
【0126】
(条件式(3)に関する数値)
f1(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G
21の焦点距離)=22.0829
f1/f=0.46
【0127】
(条件式(4)に関する数値)
f3(無限遠物体合焦状態における第3レンズ群G
23の焦点距離)=-263.2280
f3/f=-5.43
【0128】
(条件式(5)に関する数値)
βinf(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
22の近軸倍率)=2.09
βmod(最至近距離物体合焦状態における第2レンズ群G
22の近軸倍率)=2.02
βinf/βmod=1.04
【0129】
(条件式(6)に関する数値)
L1s(第1レンズ群G
21の最物体側面から開口絞りSまでの軸上距離)=3.6723
L(光学系全長)=49.1482
L1s/L=0.07
【0130】
(条件式(7)に関する数値)
f2(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
22の焦点距離)=-29.3910
f2/f=-0.61
【0131】
(条件式(8)に関する数値)
・移動させるレンズ群(防振群)が第1レンズ群G
21の正レンズL
214である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=-0.19
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=2.20
(1−βp)×βr=2.62
・移動させるレンズ群(防振群)が第3レンズ群G
23の正レンズL
231である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=0.86
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=1.22
(1−βp)×βr=0.17
【0132】
(条件式(9)に関する数値)
R21(負レンズL
221の最物体側面の曲率半径)=38.5730
R22(負レンズL
221の最像側面の曲率半径)=12.3652
(R21+R22)/(R21−R22)=1.94
【0133】
図4は、実施例2にかかるインナーフォーカス式レンズの諸収差図である。図中、曲線はe線(λ=546.074nm)に相当する波長の収差を表す。また、非点収差図におけるS,Mは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。
【実施例3】
【0134】
図5は、実施例3にかかるインナーフォーカス式レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
図5は、無限遠物体合焦状態を示している。このインナーフォーカス式レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G
31と、負の屈折力を有する第2レンズ群G
32と、負の屈折力を有する第3レンズ群G
33と、が配置されて構成される。
【0135】
第1レンズ群G
31は、物体側から順に、正レンズL
311と、所定の口径を規定する開口絞りSと、負レンズL
312と、正レンズL
313と、が配置されて構成される。正レンズL
313の両面には、非球面が形成されている。
【0136】
第2レンズ群G
32は、負レンズL
321により構成されている。負レンズL
321の両面には、非球面が形成されている。第2レンズ群G
32は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態までのフォーカシングを行う。
【0137】
第3レンズ群G
33は、物体側から順に、正レンズL
331(フロントサブレンズ群)と、負レンズL
332(リアサブレンズ群)と、が配置されて構成される。正レンズL
331の両面には、非球面が形成されている。また、正レンズL
331と負レンズL
332との間には、空気間隔が形成されている。
【0138】
実施例3にかかるインナーフォーカス式レンズでは、第1レンズ群G
31に含まれる正レンズL
313、または第3レンズ群G
33に含まれる正レンズL
331を光軸に対して垂直方向へ移動させることで防振補正を行う。
【0139】
以下、実施例3にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0140】
(レンズデータ)
r
1=16.4363
d
1=5.5000 ne
1=1.49845 νe
1=81.21
r
2=-300.0000
d
2=0.5000
r
3=∞(開口絞り)
d
3=1.8212
r
4=-44.7468
d
4=0.7000 ne
2=1.72310 νe
2=29.27
r
5=373.5699
d
5=0.8417
r
6=20.8910(非球面)
d
6=3.3714 ne
3=1.49856 νe
3=81.16
r
7=-33.7365(非球面)
d
7=D(7)(可変)
r
8=90.3752(非球面)
d
8=0.6500 ne
4=1.58547 νe
4=59.22
r
9=11.0161(非球面)
d
9=D(9)(可変)
r
10=-23.8098(非球面)
d
10=1.3706 ne
5=1.82917 νe
5=23.86
r
11=-18.3476(非球面)
d
11=7.8919
r
12=-13.3351
d
12=0.7000 ne
6=1.49845 νe
6=81.21
r
13=-22.5577
d
13=Bf
【0141】
円錐係数(k)および非球面係数(A
4,A
6,A
8,A
10)
(第6面)
k=0,
A
4=-6.66384×10
-5,A
6=-3.55330×10
-7,
A
8=6.24915×10
-10,A
10=-8.69024×10
-12
(第7面)
k=0,
A
4=4.36278×10
-6,A
6=-1.41704×10
-7,
A
8=-1.53397×10
-10,A
10=-3.28298×10
-12
(第8面)
k=0,
A
4=-1.17365×10
-5,A
6=-9.52960×10
-8,
A
8=5.84886×10
-10,A
10=-3.14094×10
-12
(第9面)
k=0,
A
4=-9.90628×10
-6,A
6=-6.68574×10
-7,
A
8=8.71141×10
-9,A
10=-6.97618×10
-11
(第10面)
k=0,
A
4=8.76623×10
-5,A
6=-4.76558×10
-7,
A
8=1.66193×10
-8,A
10=-8.96128×10
-11
(第11面)
k=0,
A
4=5.77887×10
-5,A
6=-5.30380×10
-7,
A
8=1.24226×10
-8,A
10=-7.91033×10
-11
【0142】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離(物体距離300mm)
D(7) 1.2117 3.0915
D(9) 6.4767 4.5969
f(光学系全系の焦点距離) 58.5031 46.1351
Fno.(Fナンバー) 2.8840 3.0166
ω(半画角) 18.4621 17.3034
Y(像高) 21.63 21.63
Bf(バックフォーカス) 20.1130 20.1130
【0143】
(条件式(1)に関する数値)
R1(負レンズL
332の物体側空気境界面の曲率半径)=-13.3351
R2(負レンズL
332の像側空気境界面の曲率半径)=-22.5577
(R1+R2)/(R1−R2)=-3.89
【0144】
(条件式(2)に関する数値)
νen(負レンズL
332のe線に対するアッベ数)=81.21
【0145】
(条件式(3)に関する数値)
f1(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G
31の焦点距離)=21.4980
f1/f=0.37
【0146】
(条件式(4)に関する数値)
f3(無限遠物体合焦状態における第3レンズ群G
33の焦点距離)=-400.0000
f3/f=-6.84
【0147】
(条件式(5)に関する数値)
βinf(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
32の近軸倍率)=2.73
βmod(最至近距離物体合焦状態における第2レンズ群G
32の近軸倍率)=2.65
βinf/βmod=1.03
【0148】
(条件式(6)に関する数値)
L1s(第1レンズ群G
31の最物体側面から開口絞りSまでの軸上距離)=6.0000
L(光学系全長)=51.1482
L1s/L=0.12
【0149】
(条件式(7)に関する数値)
f2(無限遠物体合焦状態における第2レンズ群G
32の焦点距離)=-21.4928
f2/f=-0.37
【0150】
(条件式(8)に関する数値)
・移動させるレンズ群(防振群)が第1レンズ群G
31の正レンズL
313である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=0.37
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=2.72
(1−βp)×βr=1.72
・移動させるレンズ群(防振群)が第3レンズ群G
33の正レンズL
331である場合
βp(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群の横倍率)=0.76
βr(光軸に対して垂直方向へ移動させるレンズ群よりも像側に配置されたレンズの合成横倍率)=1.32
(1−βp)×βr=0.32
【0151】
(条件式(9)に関する数値)
R21(負レンズL
321の最物体側面の曲率半径)=90.3752
R22(負レンズL
321の最像側面の曲率半径)=11.0161
(R21+R22)/(R21−R22)=1.28
【0152】
図6は、実施例3にかかるインナーフォーカス式レンズの諸収差図である。図中、曲線はe線(λ=546.074nm)に相当する波長の収差を表す。また、非点収差図におけるS,Mは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。
【0153】
なお、上記各実施例中の数値データにおいて、r
1,r
2,・・・・は各レンズ、絞り面などの曲率半径、d
1,d
2,・・・・は各レンズ、絞りなどの肉厚またはそれらの面間隔、ne
1,ne
2,・・・・は各レンズのe線(λ=546.074nm)に対する屈折率、νe
1,νe
2,・・・・は各レンズのe線(λ=587.56nm)に対するアッベ数を示している。そして、長さの単位はすべて「mm」、角度の単位はすべて「°」である。
【0154】
また、上記各非球面形状は、非球面の深さをZ、曲率をc(1/r)、光軸からの高さをh、円錐係数をk、4次,6次,8次,10次の非球面係数をそれぞれA
4,A
6,A
8,A
10とし、光の進行方向を正とするとき、以下に示す式により表される。
【0155】
【数1】
【0156】
上記各実施例には、35mmフィルムカメラ換算で広角から標準画角の焦点距離をもつインナーフォーカス式レンズの一例を示した。上記各実施例のインナーフォーカス式レンズは、フォーカス群の小型、軽量化を図ることで、動画撮影に欠かせない高速なオートフォーカス処理を良好に行うことが可能になる。また、防振補正時の防振群の移動量を抑制することができるため、光学系口径の拡大を抑制することができる。特に、上記各条件式を満足することで、動画撮影に好適な、小型、広角で高い結像性能を備えたインナーフォーカス方式レンズを実現することができる。