核酸(例えば、天然の核酸、ゲノムDNA、cDNA、RNA、PCR等で増幅された核酸など)の検出に用いられている核酸ハイブリダイゼーションアッセイやPCRによる核酸の増幅およびアガロースゲル電気泳動によるアッセイが抱える煩雑な操作、低い検出感度、使用できる標識物質の制限等の問題を伴わずに、任意の核酸を簡便、且つ高感度で検出、定量する方法、ならびにその方法の実施に用いるデバイスの提供が要望されている。
アッセイに供する核酸の1本鎖領域におけるオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする領域を挟んで位置する領域にマスクオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることで、該プローブがハイブリダイズする領域をオープンにし、且つ標的核酸の1本鎖領域を安定な状態に保ち、その上で、斯かる1本鎖領域を有する核酸を、核酸クロマトグラフィーに供することで、目的とする標的核酸を極めて簡便に、且つ高感度で検出、定量することを達成した。
該クロマトグラフィーが、前記(a)および(b)、または(a)乃至(c)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素において、該展開要素における毛管現象に基づいて実施される、請求項1または2記載の方法。
該アンカーAが、オリゴヌクレオチド、ビオチン、抗体、蛋白質または糖鎖であり、該アクセプターA'が、オリゴヌクレオチド、アビジン、ストレプトアビジン、抗体または蛋白質である、請求項1乃至3、5乃至7ならびに12乃至19のいずれか一項記載の方法。
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、該展開要素が、(i)それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズする該オリゴヌクレオチドR2'のそれぞれが固定化された2つ以上の検出ゾーン、または(ii)それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズするそれぞれ異なるアンカーAをその末端に有するオリゴヌクレオチドR2'とそれぞれ結合し得るそれぞれ異なるアクセプターA'が固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、請求項3乃至22のいずれか一項記載の方法。
該デバイスがさらに、該展開要素と接して備えられた、該検出ゾーンを越えて展開された試料を吸収するための吸収ゾーンを備える、請求項6乃至23のいずれか一項記載の方法。
金属コロイド粒子が、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、白金-金コロイド粒子、パラジウム粒子、銀コロイド粒子、ロジウムコロイド粒子、ルテニウムコロイド粒子またはイリジウムコロイド粒子である、請求項25記載の方法。
前記(a)のハイブリダイゼーションが、領域M1および領域M2の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'のハイブリダイゼーションを含む、請求項29記載の方法。
該クロマトグラフィーが、前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素において、該展開要素における毛管現象に基づいて実施される、請求項29または30記載の方法。
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nがそれぞれ異なる標識L2で標識されており、該展開要素が、該それぞれの標識L2に結合する異なる物質がそれぞれ固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、請求項31乃至38のいずれか一項記載の方法。
前記(a)のハイブリダイゼーションが、領域M3および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーションを含む、請求項40記載の方法。
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合において、それぞれの標的核酸Nが同一の標識L2で標識されており、該展開要素が、それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズするそれぞれ異なるアンカーAをその末端に有するオリゴヌクレオチドR2'とそれぞれ結合し得るそれぞれ異なるアクセプターA'が固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、請求項48乃至51のいずれか一項記載の方法。
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nがそれぞれ異なる標識L2で標識されていることを特徴とする、請求項48乃至51のいずれか一項記載の方法。
該デバイスがさらに、該展開要素と接して備えられた、該検出ゾーンを越えて展開された試料を吸収するための吸収ゾーンを備える、請求項33乃至39ならびに44乃至56のいずれか一項記載の方法。
金属コロイド粒子が、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、白金-金コロイド粒子、パラジウム粒子、銀コロイド粒子、ロジウムコロイド粒子、ルテニウムコロイド粒子またはイリジウムコロイド粒子である、請求項58記載の方法。
該標的核酸Nが、真核生物、原核生物、細菌若しくはウイルスのゲノムに由来する核酸、該ゲノムを制限酵素で切断されて生ずるゲノム断片に由来する核酸、または人為的に増幅された核酸である、請求項1乃至63のいずれか一項記載の方法。
該展開要素を用いるクロマトグラフィーが、少なくとも1つの変性剤若しくはカオトロピック剤、または少なくとも1つの変性剤若しくはカオトロピック剤および少なくとも1つの無機塩を含むバッファー中で実施される、請求項1乃至65のいずれか一項記載に方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述のとおり、ヒトをはじめとする哺乳動物、宿主生物、植物、食品あるいは飲料等の細菌やウイルスによる感染の有無や程度の検査、ウイルスや細菌による感染あるいは遺伝子の変異の検出において、検出すべき標的核酸の一部の領域に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるハイブリダイゼーションやオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRを利用する遺伝子検査法が有用とされているものの、アッセイを実施する間、標的核酸を安定的に1本鎖の状態または1本鎖領域を有した状態に維持しながら、且つ煩雑な操作を伴わずに標的核酸を簡便且つ高感度で検出、定量できる方法は未だ提供されておらず、昨今のパンデミックに対する懸念、食の安全に対するニーズ、ならびに疾患の原因の特定、該疾患の治療および治療方法の開発に対するニーズに応え得る、斯かる検出、定量を可能とする新たな方法の開発、提供が望まれている。
【0019】
本発明は、ウイルス、細菌、微生物および遺伝子組み換え植物をはじめとする様々な生物に由来する核酸(例えば、天然の核酸、ゲノムDNA、cDNA、RNA、PCR等で増幅された核酸など)を、極めて簡便で、且つ高感度で検出、定量する方法、ならびにその方法の実施に用いるデバイスおよびキットを提供し、それにより斯かる社会的なニーズを充足することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは上記課題を解決すべく、ウイルス、細菌、微生物および遺伝子組み換え植物をはじめとする様々な生物に由来する核酸を簡便かつ高感度で検出、定量する方法について精力的に研究を行い、アッセイに供する1本鎖領域を有する標的核酸における、オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする領域を挟んで位置する領域にマスクオリゴヌクレオチド(後述するオリゴヌクレオチドM1'、オリゴヌクレオチドM2'、......オリゴヌクレオチドMX')をハイブリダイズさせることで、該プローブがハイブリダイズする領域をオープンにし、且つ標的核酸を安定的に1本鎖の状態または1本鎖領域を保持した状態に保ち、その上で、斯かる1本鎖領域を有する標的核酸を、メンブレン上で展開し、オリゴヌクレオチドプローブで捕捉し、捕捉された標的核酸(本発明においては、該標的核酸が他の1つ以上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッドを意味する)が有するまたは生ずる標識を指標に標的核酸を検出、定量するクロマトグラフィー(以下、「核酸クロマトグラフィー」という)またはイムノアッセイに供することで、目的とする標的核酸を極めて簡便に、且つ高感度で検出、定量できることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
即ち本発明は、具体的には、以下に記載する方法、デバイスおよびキット等に関する。
〔態様1〕
以下を含む、試料中に含まれる1種類またはそれぞれ異なる2種類以上の標的核酸を、クロマトグラフィーにより検出または定量する方法:
(a) 領域R1、それぞれ領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2、領域R1とは異なる領域R2、ならびにそれぞれ領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4を含む標的核酸Nの1本鎖領域中の、領域M1、領域M2、領域M3および領域M4の少なくとも1つの領域に対する、それぞれの領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドM1'、オリゴヌクレオチドM2'、オリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(b) 領域R1への、標識L1で標識された、該領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドR1'のハイブリダイゼーション;
(c) 領域R2への、該領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドR2'または末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'のハイブリダイゼーション;および
(d)前記(a)乃至(c)を経て形成された核酸ハイブリッドの、標識L1を指標とする検出または定量;ならびに
(e)必要に応じ、試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nの検出または定量のための、それぞれの標的核酸Nについての、上記の(a)乃至(d)の事項。
〔態様2〕
前記(a)のハイブリダイゼーションが、以下のいずれかを含む、態様1記載の方法:
(i)領域M1および領域M2の少なくとも1つの領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(ii)領域M3および領域M4の少なくとも1つの領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(iii)領域M1および領域M2の少なくとも1つの領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション、ならびに領域M3および領域M4の少なくとも1つの領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(iv)領域M1および領域M2の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'のハイブリダイゼーション;
(v)領域M3および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーション;
(vi)領域M1および領域M3の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM3'のハイブリダイゼーション;
(vii)領域M1および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーション;
(viii)領域M2および領域M3の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM2'およびオリゴヌクレオチドM3'のハイブリダイゼーション;
(ix)領域M2および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM2'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーション;または
(x)領域M1および領域M2の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'のハイブリダイゼーション、ならびに領域M3および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーション。
〔態様3〕
該クロマトグラフィーが、前記(a)および(b)、または(a)乃至(c)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素において、該展開要素における毛管現象に基づいて実施される、態様1または2記載の方法。
〔態様4〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、且つ
該展開要素の一部に、以下の混合物を適用する、態様3記載の方法:
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'。
〔態様5〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、且つ
該展開要素の一部に、以下の混合物を適用する、態様3記載の方法:
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1';ならびに
(iv)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'。
〔態様6〕
該クロマトグラフィーが、以下を備えるデバイスを用いて、展開要素における毛管現象に基づいて実施される、態様1または2記載の方法:
(i)前記(a)および(b)、または(a)乃至(c)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素;および
(ii)該展開要素に接して備えられた少なくとも該標的核酸Nを含む試料を適用するための適用ゾーン。
〔態様7〕
該デバイスがさらに、
(iii)該適用ゾーンおよび該展開要素のいずれにも接して備えられた所望のオリゴヌクレオチドを封入するための封入ゾーン、
を備える、態様6記載の方法。
〔態様8〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;および
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、該標的核酸Nを含む試料を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様9〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様10〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つが封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様11〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様12〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1';ならびに
(iii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、該標的核酸Nを含む試料を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様13〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1';および
(ii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;および
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様14〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様15〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(ii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;および
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様16〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つが封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1';および
(iii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様17〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;および
(ii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様18〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様19〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'、該オリゴヌクレオチドM2'、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、ならびに
(iv)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を適用する、態様6または7記載の方法。
〔態様20〕
該アンカーAが、オリゴヌクレオチド、ビオチン、抗体、蛋白質または糖鎖であり、該アクセプターA'が、オリゴヌクレオチド、アビジン、ストレプトアビジン、抗体または蛋白質である、態様1乃至3、5乃至7ならびに12乃至19のいずれかに記載の方法。
〔態様21〕
該アンカーAが、ビオチンであり、該アクセプターA'が、アビジンまたはストレプトアビジンである、態様20記載の方法。
〔態様22〕
該アクセプターA'が抗体である、態様20記載の方法。
〔態様23〕
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、該展開要素が、(i)それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズする該オリゴヌクレオチドR2'のそれぞれが固定化された2つ以上の検出ゾーン、または(ii)それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズするそれぞれ異なるアンカーAをその末端に有するオリゴヌクレオチドR2'とそれぞれ結合し得るそれぞれ異なるアクセプターA'が固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、態様3乃至22のいずれかに記載の方法。
〔態様24〕
該デバイスがさらに、該展開要素と接して備えられた、該検出ゾーンを越えて展開された試料を吸収するための吸収ゾーンを備える、態様6乃至23のいずれかに記載の方法。
〔態様25〕
標識L1が、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、着色リポソームまたは酵素である、態様1乃至24のいずれかに記載の方法。
〔態様26〕
金属コロイド粒子が、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、白金-金コロイド粒子、パラジウム粒子、銀コロイド粒子、ロジウムコロイド粒子、ルテニウムコロイド粒子またはイリジウムコロイド粒子である、態様25記載の方法。
〔態様27〕
酵素が、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼまたはβガラクトシダーゼである、態様25記載の方法。
〔態様28〕
該展開要素または該デバイスが、不透湿性固体材料からなるケース中に配置されている、態様3乃至27のいずれかに記載の方法。
〔態様29〕
以下を含む、試料中に含まれる1種類またはそれぞれ異なる2種類以上の標的核酸を、クロマトグラフィーにより検出または定量する方法:
(a) 領域R1、ならびにそれぞれ領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2を含み、標識L2で標識された標的核酸Nの1本鎖領域中の領域M1および領域M2の少なくとも1つに対する、それぞれの領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(b) 領域R1への、標識L1で標識された、該領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドR1'のハイブリダイゼーション;および
(c) 前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドの、該標識L2と該標識L2に結合する物質との結合を介した捕捉、ならびに該標識L1を指標とする検出または定量;ならびに
(d)必要に応じ、試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nの検出または定量のための、それぞれの標的核酸Nについての、上記の(a)乃至(c)の事項。
〔態様30〕
前記(a)のハイブリダイゼーションが、領域M1および領域M2の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'のハイブリダイゼーションを含む、態様29記載の方法。
〔態様31〕
該クロマトグラフィーが、前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素において、該展開要素における毛管現象に基づいて実施される、態様29または30記載の方法。
〔態様32〕
該検出ゾーンに、該標識L2に結合する物質が固定化されており、且つ
該展開要素の一部に、以下の混合物を適用する、態様31記載の方法:
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'および該オリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'。
〔態様33〕
該クロマトグラフィーが、以下を備えるデバイスを用いて、展開要素における毛管現象に基づいて実施される、態様29または30記載の方法:
(i)前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素;および
(ii)該展開要素に接して備えられた少なくとも該標的核酸Nを含む試料を適用するための適用ゾーン。
〔態様34〕
該デバイスがさらに、
(iii)該適用ゾーンおよび該展開要素のいずれにも接して備えられた所望のオリゴヌクレオチドを封入するための封入ゾーン、
を備える、態様33記載の方法。
〔態様35〕
該検出ゾーンに、該標識L2に結合する物質が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM1'および該オリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つ;および
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、該標的核酸Nを含む試料を適用する、態様33または34記載の方法。
〔態様36〕
該検出ゾーンに、該標識L2に結合する物質が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'および該オリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つ、
との混合物を適用する、態様33または34記載の方法。
〔態様37〕
該検出ゾーンに、該標識L2に結合する物質が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該オリゴヌクレオチドM1'および該オリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つが封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
との混合物を適用する、態様33または34記載の方法。
〔態様38〕
該検出ゾーンに、該標識L2に結合する物質が固定化されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM1'および該オリゴヌクレオチドM2'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、
との混合物を適用する、態様33または34記載の方法。
〔態様39〕
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nがそれぞれ異なる標識L2で標識されており、該展開要素が、該それぞれの標識L2に結合する異なる物質がそれぞれ固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、態様31乃至38のいずれかに記載の方法。
〔態様40〕
以下を含む、試料中に含まれる1種類またはそれぞれ異なる2種類以上の標的核酸を検出または定量する方法:
(a) 領域R2、ならびにそれぞれ領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4を含み、標識L2で標識された標的核酸Nの1本鎖領域中の領域M3および領域M4の少なくとも1つに対する、それぞれの領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つのハイブリダイゼーション;
(b) 領域R2への、該領域に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドR2'または末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'のハイブリダイゼーション;および
(c) 前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドの、該標識L2を指標とする検出または定量;ならびに
(d)必要に応じ、試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nの検出または定量のための、それぞれの標的核酸Nについての、上記の(a)乃至(c)の事項。
〔態様41〕
前記(a)のハイブリダイゼーションが、領域M3および領域M4の両方の領域に対する、それぞれオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'のハイブリダイゼーションを含む、態様40記載の方法。
〔態様42〕
該検出または定量が、
(A) 前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素において、該展開要素における毛管現象を利用するクロマトグラフィー;または
(B) (i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を、その表面に該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化された容積を有する固体支持体に適用し、該アンカーAと該アクセプターA'との結合を介して捕捉された前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドの検出または定量、により実施される、態様40または41記載の方法。
〔態様43〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、且つ
該展開要素の一部に、以下の混合物を適用する、態様42記載の方法:
(i)該標的核酸Nを含む試料;および
(ii)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ。
〔態様44〕
該検出または定量が、以下を備えるデバイスを用いて、展開要素における毛管現象を利用するクロマトグラフィーにより実施される、態様40または41記載の方法:
(i)前記(a)および(b)を経て形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素;および
(ii)該展開要素に接して備えられた少なくとも該標的核酸Nを含む試料を適用するための適用ゾーン。
〔態様45〕
該デバイスがさらに、
(iii)該適用ゾーンおよび該展開要素のいずれにも接して備えられた所望のオリゴヌクレオチドを封入するための封入ゾーン、
を備える、態様44記載の方法。
〔態様46〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つが封入されており、且つ
該適用ゾーンに、該標的核酸Nを含む試料を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様47〕
該検出ゾーンに、該オリゴヌクレオチドR2'が固定化されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ、
との混合物を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様48〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、
(i)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(ii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、該標的核酸Nを含む試料を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様49〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'が封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ、
との混合物を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様50〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンまたは該封入ゾーンに、該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つが封入されており、且つ
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;ならびに
(ii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様51〕
該検出ゾーンに、該アンカーAと結合し得るアクセプターA'が固定化されており、
該適用ゾーンに、
(i)該標的核酸Nを含む試料;
(ii)該オリゴヌクレオチドM3'および該オリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つ;ならびに
(iii)該末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'、
との混合物を適用する、態様44または45記載の方法。
〔態様52〕
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合において、それぞれの標的核酸Nが同一の標識L2で標識されており、該展開要素が、それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズするそれぞれ異なるアンカーAをその末端に有するオリゴヌクレオチドR2'とそれぞれ結合し得るそれぞれ異なるアクセプターA'が固定化された2つ以上の検出ゾーンを備えることを特徴とする、態様48乃至51のいずれかに記載の方法。
〔態様53〕
試料中に異なる2種類以上の標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸Nがそれぞれ異なる標識L2で標識されていることを特徴とする、態様48乃至51のいずれかに記載の方法。
〔態様54〕
該標識L2が、ビオチン、蛍光色素、ジゴキシゲニン(DIG)、抗体または酵素である、態様29乃至53のいずれかに記載の方法。
〔態様55〕
該標識L2がビオチンであり、且つ該標識L2に結合する物質がアビジン若しくはストレプトアビジンである、態様54記載の方法。
〔態様56〕
該標識L2に結合する物質が、抗体または酵素で標識された抗体である、態様29乃至38のいずれかに記載の方法。
〔態様57〕
該デバイスがさらに、該展開要素と接して備えられた、該検出ゾーンを越えて展開された試料を吸収するための吸収ゾーンを備える、態様33乃至39ならびに44乃至56のいずれかに記載の方法。
〔態様58〕
標識L1が、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、着色リポソームまたは酵素である、態様29乃至39のいずれかに記載の方法。
〔態様59〕
金属コロイド粒子が、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、白金-金コロイド粒子、パラジウム粒子、銀コロイド粒子、ロジウムコロイド粒子、ルテニウムコロイド粒子またはイリジウムコロイド粒子である、態様58記載の方法。
〔態様60〕
酵素が、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼまたはβガラクトシダーゼである、態様58記載の方法。
〔態様61〕
該展開要素または該デバイスが、不透湿性固体材料からなるケース中に配置されている、態様31乃至39ならびに41乃至60のいずれかに記載の方法。
〔態様62〕
該標的核酸Nの1本鎖領域が、2本鎖の核酸を変性して生成される1本鎖領域である、態様1乃至61のいずれかに記載の方法。
〔態様63〕
該標的核酸Nが、DNAまたはRNAである、態様1乃至62のいずれかに記載の方法。
〔態様64〕
該標的核酸Nが、真核生物、原核生物、細菌若しくはウイルスのゲノムに由来する核酸、該ゲノムを制限酵素で切断されて生ずるゲノム断片に由来する核酸、または人為的に増幅された核酸である、態様1乃至63のいずれかに記載の方法。
〔態様65〕
細菌のゲノム由来の核酸が、以下のいずれかである、態様64記載の方法:
1)GenBank Accession No. FR714927で識別される黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、以下SA)のゲノムDNA中の2653499〜2662118番目の領域、2656232〜2657658番目の領域または2656470〜2656799番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む黄色ブドウ球菌のゲノム核酸;
2)GenBank Accession No. AE015929で識別される表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、以下SE)のゲノムDNA中の384731〜393399番目の領域、385337〜388504番目の領域または385517〜385796番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む表皮ブドウ球菌のゲノム核酸;
3)GenBank Accession No. CP004061で識別される緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、以下PA)のゲノムDNA中の2386558〜2391818番目の領域、2386678〜2388735番目の領域または2387395〜2387664番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む緑膿菌のゲノム核酸;
4)GenBank Accession No. HF558530で識別される腸球菌(Enterococcus faecalis、以下EF)のゲノムDNA中の1837695〜1841178番目の領域、1838789〜1839704番目の領域または1839147〜1839386番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む腸球菌のゲノム核酸;
5)GenBank Accession No. AP012306で識別される大腸菌(Escherichia coli、以下EC)のゲノムDNA中の1286884〜1291840番目の領域、1290625〜1291839番目の領域または1291152〜1291460番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む大腸菌のゲノム核酸;
6)GenBank Accession No. CP001918で識別されるEnterobacter cloacaeのゲノムDNA中の1566239〜1568859番目の領域または1566732〜1566956番目の領域の一部または全部の核酸配列を含むEnterobacter cloacaeのゲノム核酸;または
7)GenBank Accession No. CP003785で識別される肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、以下KP)のゲノムDNA中の4082686〜4083937番目の領域、4082686〜4083380番目の領域または4082799〜4083096番目の領域の一部または全部の核酸配列を含む肺炎桿菌のゲノム核酸。
〔態様66〕
該展開要素を用いるクロマトグラフィーが、少なくとも1つの変性剤若しくはカオトロピック剤、または少なくとも1つの変性剤若しくはカオトロピック剤および少なくとも1つの無機塩を含むバッファー中で実施される、態様1乃至65のいずれかに記載に方法。
〔態様67〕
以下を備える、態様24乃至28ならびに57乃至66のいずれかに記載の方法に用いるためのデバイス:
(i)該形成された核酸ハイブリッドを捕捉し、検出または定量するための少なくとも1つの検出ゾーンを備える展開要素;
(ii)該展開要素に接して備えられた少なくとも該標的核酸Nを含む試料を適用するための適用ゾーン;
(iii)該適用ゾーンおよび該展開要素のいずれにも接して備えられた所望のオリゴヌクレオチドを封入するための封入ゾーン;および
(iv)該展開要素と接して備えられた、該検出ゾーンを越えて展開された試料を吸収するための吸収ゾーン。
〔態様68〕
該展開要素が、不透湿性固体材料からなるケース中に配置されている、態様67記載のデバイス。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマスクオリゴヌクレオチド(前記の例示的態様における「オリゴヌクレオチドM1'」、「オリゴヌクレオチドM2'」、「オリゴヌクレオチドM3'」、「オリゴヌクレオチドM4'」、.....「オリゴヌクレオチドMX'」)を用いた核酸クロマトグラフィーまたはイムノアッセイによる核酸を検出、定量する方法、並びに該方法に用いるためのデバイスおよびキットは、第1に、マスクオリゴヌクレオチドという技術的特徴を採用することで、以下の効果が奏される。
1) 検出すべき標的核酸中の1本鎖領域におけるオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする領域が、アッセイの間中、オープンな状態に保たれる。
2) アッセイの間中、標的核酸を安定的に1本鎖の状態または1本鎖領域を保持した状態に保たれる。
3) その結果、オリゴヌクレオチドプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションの速度が増大する。
4) マスクオリゴヌクレオチドを使用しない場合には、オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしないような標的核酸においても、マスクオリゴヌクレオチドを用いるとともに、本発明の核酸クロマトグラフィーまたはイムノアッセイを適用することで該標的核酸の検出が可能となる。
5) また、通常の核酸ハイブリダイゼーションにおいて、2本鎖核酸を1本鎖の状態または1本鎖領域を保持した状態にするために適用される変性条件(高温、塩濃度、カオトロピックイオンやホルムアミド等の変性剤の存在)のような非生理的条件下ではタンパク質や酵素などは容易に失活することから、核酸ハイブリダイゼーション法を利用した遺伝子検査において用いられる標識物質は、蛍光物質やジゴキシゲニンなどの低分子化合物や、ラジオアイソトープなどに限定されるところ、マスクオリゴヌクレオチドを用いることにより、変性条件を緩和することができることから、これまで利用できなかったタンパク等の標識物質、またはDNAポリメラーゼ等が利用可能となる。
【0023】
その上で、本発明のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーまたはイムノアッセイによる核酸を検出、定量する方法、並びに該方法に用いるためのデバイスおよびキットは、マスクオリゴヌクレオチドを用いることでオリゴヌクレオチドプロ―ブが結合する領域がオープンな状態となった安定的な1本鎖核酸または1本鎖領域を有する核酸に、核酸クロマトグラフィーという技術的特徴をさらに採用することにより、これまで全く報告されていない、極めて簡便に、短時間で、且つ高感度で標的核酸を検出、定量できるという効果を奏する。
【0024】
本発明のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーまたはイムノアッセイによる核酸を検出、定量する方法、並びに該方法に用いるためのデバイスおよびキットは、このような有利な効果を奏することから、ウイルス、細菌および微生物をはじめとする様々な生物に由来する任意の核酸(例えば、天然の核酸、ゲノムDNA、cDNA、RNA、PCR等で増幅された核酸など)を簡便、且つ高感度で検出、定量することができる。
【0025】
その結果、本発明の方法、デバイスおよび/またはキットを用いれば、ヒトをはじめとする哺乳動物、宿主生物、植物、食品あるいは飲料等の細菌やウイルスによる感染の有無や程度、ウイルスや細菌による感染あるいは遺伝子の変異が原因と疑われる様々な疾患(感染症、癌、代謝性疾患、遺伝病、等)の原因、並びに、遺伝子の多様性による様々な遺伝的特性を簡便且つ短時間で高い精度を以って特定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、上述した〔1〕乃至〔68〕に例示的に記載されるとおりの発明であって、本発明におけるマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーまたはイムノアッセイにより核酸を検出、定量する方法、並びに該方法に用いるためのデバイスおよびキット等を提供する。
【0028】
本発明の方法は、上述の
図2において模式的に示される標的核酸の捕捉と検出の方法の各原理(1)〜(7)を採用することを特徴とし、各態様には、以下の表1に例示的に示される態様が包含される。
【0029】
【表1】
表1に示される態様(a)乃至(d)は、前記の態様8〜11(ならびに23)にそれぞれ対応する。
表1に示される態様(e)乃至(l)は、前記の態様12〜19(ならびに23)にそれぞれ対応する。
表1に示される態様(m)乃至(p)は、前記の態様35〜38(ならびに39)にそれぞれ対応する。
表1に示される態様(q)および(r)は、前記の態様46および47にそれぞれ対応する。
表1に示される態様(s)乃至(v)は、前記の態様48〜51(ならびに52にそれぞれ対応する。
【0030】
本発明における「試料」とは、任意の生物(動物、植物、微生物、細菌、等)またはウイルスの生体もしくはその一部(器官、組織、体液、臓器もしくは成分、胎児、種子、卵、卵子もしくは精子、排泄物、またはそれらの一部、等)、それらの処理物、またはそれらのいずれかに由来する後述する「核酸」(ゲノムDNA、cDNA、mRNA、tRNA、rRNA、等)またはその断片を含む任意の調製物(溶液、懸濁液、培養液、培養上清、遠心上清、遠心残渣、等)を意味する。
なお、上記の任意の生物には、真核生物(例えば、動物、植物、菌類(真菌と同義。例えば、カビ、酵母、キノコ等)、藻類、原生生物(原虫)、等)、原核生物(細菌、古細菌、放線菌、ラン藻、等)、微生物、等が包含される。
【0031】
本発明における「動物」は、例えば、脊椎動物(例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、無顎類、等)および無脊椎動物を包含するがこれらに限られない。また、該動物には、遺伝子組み換え動物も包含される。
【0032】
本発明における「植物」は、例えば、種子植物、シダ植物、コケ植物、ストレプト植物、緑色植物、アーケプラスチダおよびバイコンダを包含するがこれらに限られない。また、該植物には、遺伝子組み換え植物も包含される。
【0033】
本発明における「微生物」は、例えば、原核生物(真正細菌(細菌)、古細菌)、藻類、原生生物、菌類、粘菌、真菌、原虫を包含するがこれらに限られない。また、該微生物には、遺伝子組み換え微生物も包含される。
【0034】
真菌としては、例えば、カンジダ属菌、アスペルギルス属菌、クリプトコッカス属菌、ムコール属菌、ニューモシスチス属菌、トリコフィートン属菌、トリコスポロン属菌、等を挙げることができるがこれらに限られない。
【0035】
原虫類としては、例えば、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、クドア(住肉胞子虫)、アメーバ赤痢、ザルコシスティス、リューシュマニア、トキソプラズマ、トリパノソーマ、等を挙げることができるがこれらに限られない。
【0036】
本発明における「細菌」は、例えば、国際細菌命名規約(International Code of Nomenclature of Bacteria)に従って分類される任意の細菌(例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌等の真正細菌)を包含するがこれらに限られない。また、該細菌には、遺伝子組み換え細菌も包含される。
【0037】
細菌としては、例えば、スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、エシェリヒア属菌、エンテロバクター属菌、ヘモフィリス属菌、クレブシエラ属菌、シュードモナス属菌、カンピロバクター属菌、バクテロイデス属菌、セラチア属菌、アシネトバクター属菌、マイコプラズマ属菌、マイコバクテリウム属菌、クロストリジウム属菌、バシラス属菌、プロテウス属菌、ナイセリア属菌、サルモネラ属菌、シゲラ属菌、ビブリオ属菌、エロモナス属菌、エルシニア属菌、リステリア属菌、クロノバクター属菌、シトロバクター属菌、ブルセラ属菌、パスツレラ属菌、ヘリコバクター属菌、モラクセラ属菌、レジオネラ属菌、トレポネーマ属菌、リケッチア属菌、クラミジア属菌、エンテロコッカス属菌、バークホルデリア属菌、ステノトロフォモナス属菌、エドワードシエラ属菌、ハフニア属菌、クルイベラ属菌、モルガネラ属菌、パントエア属菌、プロビデンシア属菌、コリネバクテリウム属菌、ミクロコッカス属菌、スフィンゴバクテリウム属菌、ブレバンディモナス属菌、アクロモバクター属菌、アルカリゲネス属菌、クロモバクテリウム属菌、ポルフィロモナス属菌、プレボテラ属菌、フソバクテリウム属菌、ラクトバシラス属菌、ペプトニフィラス属菌、エガセラ属菌、プロピオニバクテリウム属菌、カプノシトファーガ属菌、ヘモフィルス属菌、ガードネレラ属菌、等を挙げることができるがこれらに限られない。
【0038】
本発明における「ウイルス」は、例えば、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses)により分類される任意のウイルスおよびその変異体を包含するがこれらに限られない。例えば、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、一本鎖RNA(+鎖)ウイルス、一本鎖RNA(−鎖)ウイルス、一本鎖RNA(逆転写)ウイルス、または二本鎖DNA(逆転写)ウイルスに分類される任意のウイルスが包含される。また、該ウイルスには、遺伝子組み換えウイルスも包含される。
【0039】
ウイルスとしては、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、ノロウィルス、ロタウィルス、アデノウィルス、アストロウィルス、パピローマウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、コロナウイルス、ルビウイルス、SARSウイルス、等を挙げることができるがこれらに限られない。
【0040】
本発明における「核酸」は、天然の、または人為的に調製した任意の核酸(ゲノムDNA、cDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、mRNA、tRNA、rRNA、short interfering (siRNA)、shRNA(short hairpin RNA)、miRNA(micro RNA)、snRNA(small nuclear RNA)、tmRNA(transfer messenger RNA)、等)またはその断片を意味する。
例えば、標的核酸(即ち、標的核酸N)が原核生物である細菌由来の核酸の場合には、細菌のrRNA遺伝子中の23S、16Sまたは5Sサブユニットが挙げられる。標的核酸(即ち、標的核酸N)が真核生物である真菌由来の核酸の場合には、真菌のrRNA遺伝子中の28S、18S、5.8S若しくは5Sサブユニット、またはその周辺のinternal transcribed spacer (ITS)領域、またはintergenic spacer (IGS)領域が挙げられる。
該核酸は、二本鎖または一本鎖のいずれであってもよく、二本鎖である場合には、後述する「変性」により、一本鎖とすることができる。
【0041】
該核酸はまた、自己会合により分子内ループ等を含む、二次または三次構造を有するものも包含される。斯かる高次構造は、後述する「変性」や他の常法に従って解消させることができる。
【0042】
該天然の核酸は、前記の生物、細菌またはウイルス等に由来する核酸であって、該生物、細菌またはウイルスの生体もしくはその一部から取得される核酸並びに該取得された核酸に基づき酵素反応(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、等)により人為的に増幅、調製された核酸を包含するがこれらに限定されない。
【0043】
該酵素反応による核酸の増幅、調製は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)、LAMP(loop-mediated isothermal amplification)、TMA(transcription-mediated amplification)、TRC(transcription-reverse transcription concerned reaction)、LCR(ligase chain reaction)、SDA(standard displacement amplification)、NASBA(nucleic acid sequence-based amplification)等(臨床医学、Vol.36、p.19-24、2007)により行うことができる。
該人為的に増幅、調製される核酸にはまた、目的に応じて設計された塩基配列に基づきDNA/RNA合成機器を用いて調製される任意の核酸が包含される。
本願発明においては、前記のPCR、LAMP、TMA、TRC、LCR、SDAあるいはNASBA等の方法により増幅、調製された核酸は、当該方法において任意の条件(各プライマーの濃度、塩濃度、反応時間、反応温度、反応サイクル、等)において増幅、調製された核酸が包含される。例えば、PCRによる核酸の増幅ににおける各プライマーの濃度を例に挙げれば、PCRで使用される一組または2組以上の一対のプライマー(フォワードプライマー、リバースプライマー)において、フォワードプライマーとリバースプライマーの濃度は同一または異なっても良い(非対照PCR)。
【0044】
本発明における核酸は任意の大きさ、サイズ、塩基長を有していてもよく、例えば、約50〜約100,000bp、約50〜約50,000bp、約50-約10,000bp、約50-約5,000bp、約100〜約100,000bp、約100〜約50,000bp、約100-約10,000bp、約100-約5,000bp、約200〜約100,000bp、約200〜約50,000bp、約200-約10,000bp、約200-約5,000bp、約300〜約100,000bp、約300〜約50,000bp、約300-約10,000bp、約300-約5,000bp、約400〜約100,000bp、約400〜約40,000bp、約400-約10,000bp、約400-約5,000bp、約500〜約100,000bp、約500〜約50,000bp、約500-約10,000bp、約500-約5,000bp、約600〜約100,000bp、約600〜約50,000bp、約600-約10,000bp、約600-約5,000bp、約700〜約100,000bp、約700〜約50,000bp、約700-約10,000bp、約700-約5,000bp、約800〜約100,000bp、約800〜約50,000bp、約800-約10,000bp、約800-約5,000bp、約900〜約100,000bp、約900〜約50,000bp、約900-約10,000bp、約900-約5,000bp、
約1,000〜約100,000bp、約1,000〜約50,000bp、約1,000-約10,000bp、約1,000-約5,000bp、等であり得る。
【0045】
該核酸の断片は、前記の如くの天然または人為的に増幅、調製した核酸を、市販の様々な制限酵素(例えば、I型制限酵素、II型制限酵素、等)の1つまたは複数により処理、切断して生成される任意の大きさの核酸を包含する。
【0046】
例えば、本発明の方法およびデバイスを用いて、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、「SA」と略記する)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、「SE」と略記する)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、「PA」と略記する)、腸球菌(Enterococcus faecalis、「EF」と略記する)、大腸菌(Escherichia coli、「EC」と略記する)、Enterobacter cloacae(「ET」と略記する)、および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、「KP」と略記する)のゲノム由来の核酸を検出、定量する場合には、それぞれ、以下のゲノム中の領域の一部または全部を標的とすることができる。
【0047】
・
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
GenBank Accession No. FR714927(最終登録日:2011年11月21日)で識別される黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、「SA」と略記する)のゲノムDNA中の2653499〜2662118番目の領域、2656232〜2657658番目の領域または2656470〜2656799番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0048】
・
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、「SE」)
GenBank Accession No. AE015929(最終登録日:2010年3月5日)で識別される表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、「SE」と略記する)のゲノムDNA中の384731〜393399番目の領域、385337〜388504番目の領域または385517〜385796番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0049】
・
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、「PA」)
GenBank Accession No. CP004061(最終登録日:2013年4月9日)で識別される緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、「PA」と略記する)のゲノムDNA中の2386558〜2391818番目の領域、2386678〜2388735番目の領域または2387395〜2387664番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0050】
・
腸球菌(Enterococcus faecalis、「EF」)
GenBank Accession No. HF558530(最終登録日:2012年12月3日)で識別される腸球菌(Enterococcus faecalis、「EF」と略記する)のゲノムDNA中の1837695〜1841178番目の領域、1838789〜1839704番目の領域または1839147〜1839386番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0051】
・
大腸菌(Escherichia coli、「EC」)
GenBank Accession No. AP012306(最終登録日:2013年3月29日)で識別される大腸菌(Escherichia coli、「EC」と略記する)のゲノムDNA中の1286884〜1291840番目の領域、1290625〜1291839番目の領域または1291152〜1291460番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0052】
・
Enterobacter cloacae(「ET」)
GenBank Accession No. CP001918(最終登録日:2010年4月23日)で識別されるEnterobacter cloacae(「ET」と略記する)のゲノムDNA中の1566239〜1568859番目の領域または1566732〜1566956番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0053】
・
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、「KP」)
GenBank Accession No. CP003785(最終登録日:2013年3月12日)で識別される肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、「KP」と略記する)のゲノムDNA中の4082686〜4083937番目の領域、4082686〜4083380番目の領域または4082799〜4083096番目の領域の一部または全部の核酸配列。
【0054】
前記の2本鎖の核酸や高次構造を有する核酸は、熱、酸、アルカリ、カオトロピック剤または変性剤により変性(相補的ヌクレオチド鎖の間の水素結合を切断)させることにより1本鎖とし、あるいは一部の高次構造を解消させることができる。例えば、該核酸を、高温(約90℃以上)、高いpH(アルカリ性;pH約9以上)、低塩濃度、カオトロピックイオン、変性剤の存在、加圧、撹拌、等の条件下に付することにより、変性させ、一本鎖とし、あるいは一部の高次構造を解消させることができる。
【0055】
カオトロピック剤としては、例えば、ホルムアミド、尿素、チオ尿素、グアニジン、グアニジン塩酸、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化物イオン、または過塩素酸イオンが挙げられる。
【0056】
本発明における「標的核酸」は、本発明の検出、定量の方法または該方法に用いられるデバイスまたはキットにより検出、定量されるべき、試料中に含まれるか、または該試料に由来する核酸を意味し、好ましくは、もともと一本鎖である核酸、または変性の結果生じる1本鎖の核酸若しくは1本鎖領域を有する核酸である。
【0057】
該標的核酸には、後述する各種の標識物質で標識された核酸、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブおよび/または1つまたは複数のマスクオリゴヌクレオチド(前記の本発明の例示的な態様ならびに後述の「オリゴヌクレオチドM1'」、「オリゴヌクレオチドM2'」、「オリゴヌクレオチドM3'」、「オリゴヌクレオチドM4'」、......「オリゴヌクレオチドMX'」)がハイブリダイズした後の標的核酸も包含される。
本発明においては、このような、標的核酸に1つ以上のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズして形成された核酸を、「核酸ハイブリッド」と称する。
【0058】
該1本鎖の標的核酸は、本発明の検出、定量の過程において、該オリゴヌクレオチドプローブおよび/または該マスクオリゴヌクレオチドとの結合の後に、相補的な核酸とアニールすることにより再び2本鎖となる場合があるが、斯かる態様も本願発明の1つの態様に包含される。
【0059】
本発明においては、後述する本発明の核酸クロマトグラフィーに含まれる、標的核酸の1本鎖領域への、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブおよび/または1つまたは複数のマスクオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを、後述する核酸または核酸ハイブリッドを展開要素中で展開させるためのバッファー中に少なくとも1つの前記の変性剤またはカオトロピック剤を存在させることにより調節することができる。該バッファー中には、さらに核酸のハイブリダイゼーションにおいて通常使用される少なくとも1つの無機塩を存在させることができる。
【0060】
即ち、斯かるハイブリダイゼーションの工程において、前記の変性剤またはカオトロピック剤を存在させることにより、標的核酸と各種のオリゴヌクレオチドとの非特異的反応による結合を低減し、特異的反応を促進することにより分解能を高め、検出下限を低下させることにより、標的核酸の検出、定量の感度、正確性および迅速性を増大させることができる。
【0061】
該バッファー中には、例えば、10-40%、より好ましくは15-30%、さらに好ましくは20-25%のホルムアミド、1-7M、より好ましくは1-4M、さらに好ましくは2.5-4Mの尿素若しくはチオ尿素、0.5-5M、より好ましくは1-4M、さらに好ましくは1.2-3Mのグアニジン若しくはグアニジンイソチオシアネート、および/またはヨウ化物イオンや過塩素酸イオン等のカオトロピック剤を加えことができる。該バッファーには、さらにハイブリダイゼーションにおいて一般的に使用される無機塩類を加えることができる。
【0062】
該試料中には、1種類またはそれぞれ異なる2種類以上の標的核酸が含まれていてもよく、後述するとおり、本発明の方法ならびにデバイス若しくはキットを用いれば、試料中に含まれる該2種類以上の異なる標的核酸を同時に検出、定量することが可能である。
【0063】
本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様1〜66に代表されるが、この限りではない。)においては、例えば、1本鎖の標的核酸(以下、「標的核酸N」と称する。文字Nは、nucleic acidの頭文字N。)の任意の領域(以下、「領域R1」と称する。)への、オリゴヌクレオチドプローブR1'(以下、「オリゴヌクレオチドR1'」と称する。後述する標識L1で標識されていても良い。)のハイブリダイゼーションによる、標的核酸Nの捕捉(capture)を含む。
なお、本発明においては、該オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていても良い)を、キャプチャーオリゴヌクレオチドと称する場合がある。
【0064】
領域R1としては、例えば、標的核酸Nの5'末端または3'末端の近縁の領域が挙げられる。該領域R1の長さは、例えば、約10〜約300mer、約10〜約200mer、約10〜約150mer、約10〜約100mer、約10〜約90mer、約10〜約80mer、約10〜約70mer、約10〜約60mer、約10〜約50mer、約10〜約40mer、約10〜約30mer、約10〜約20mer、約15〜約300mer、約15〜約200mer、約15〜約150mer、約15〜約100mer、約15〜約90mer、約15〜約80mer、約15〜約70mer、約15〜約60mer、約15〜約50mer、約15〜約40mer、約15〜約30mer、約15〜約20mer、約20〜約300mer、約20〜約200mer、約20〜約250mer、約20〜約100mer、約20〜約90mer、約20〜約80mer、約20〜約70mer、約20〜約60mer、約20〜約50mer、約20〜約40mer、約20〜約30mer、約25〜約300mer、約25〜約200mer、約25〜約150mer、約25〜約100mer、約25〜約90mer、約25〜約80mer、約25〜約70mer、約25〜約60mer、約25〜約50mer、約25〜約40mer、約25〜約30merであり得る。
【0065】
領域R1にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')は、領域R1の塩基配列と相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプローブR1'の長さは、領域R1の長さに対応し、例えば、約10〜約300mer、約10〜約200mer、約10〜約150mer、約10〜約100mer、約10〜約90mer、約10〜約80mer、約10〜約70mer、約10〜約60mer、約10〜約50mer、約10〜約40mer、約10〜約30mer、約10〜約20mer、約15〜約300mer、約15〜約200mer、約15〜約150mer、約15〜約100mer、約15〜約90mer、約15〜約80mer、約15〜約70mer、約15〜約60mer、約15〜約50mer、約15〜約40mer、約15〜約30mer、約15〜約20mer、約20〜約300mer、約20〜約200mer、約20〜約250mer、約20〜約100mer、約20〜約90mer、約20〜約80mer、約20〜約70mer、約20〜約60mer、約20〜約50mer、約20〜約40mer、約20〜約30mer、約25〜約300mer、約25〜約200mer、約25〜約150mer、約25〜約100mer、約25〜約90mer、約25〜約80mer、約25〜約70mer、約25〜約60mer、約25〜約50mer、約25〜約40mer、約25〜約30merであり得る。
【0066】
また、斯かるオリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')は、領域R1にハイブリダイズする限り、所望により、領域R1の塩基配列に対し、1または複数のミスマッチまたはバルジを有していてもよい。
【0067】
本発明においては、領域R1にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')は、標識物質(以下、「標識L1」と称する。文字Lは、labelのL。)で標識されていてもよい。
【0068】
標識L1は、例えば、金属コロイド粒子(金コロイド粒子、白金コロイド粒子、白金-金(Pt-Au)コロイド粒子、パラジウムコロイド粒子、銀コロイド粒子、銅コロイド粒子、ニッケルコロイド粒子、ロジウムコロイド粒子、ルテニウムコロイド粒子、イリジウムコロイド粒子、等)、ラテックス粒子(白色ラテックス粒子、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、磁気ラテックス粒子、官能基修飾ラテックス粒子、等)、着色リポソーム、非金属コロイド(例えば、セレニウムコロイド)、各種の酵素(アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、またはβガラクトシダーゼ、等)、着色樹脂粒子、染料コロイド、不溶性粒状物質、蛍光色素、放射性同位体、等が挙げられる。
【0069】
本発明における標的核酸の検出、定量においては、さらに、標的核酸N中の領域R1とは異なる他の任意の領域(以下、「領域R2」と称する。)への、オリゴヌクレオチドプローブR2'(以下、「オリゴヌクレオチドR2'」と称する。末端に後述するアンカーAを有していても良い。)のハイブリダイゼーションを含む。
【0070】
後述するとおり、このオリゴヌクレオチドR2'を介して、L1標識オリゴヌクレオチドR1'と結合した標的核酸Nをクロマトグラフィーにより捕捉することができる(例えば、前記の本発明の態様1〜23;
図2における態様(1)〜(3);表1における態様(a)〜(l))。
なお、本発明においては、該オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)を、ディテクションオリゴヌクレオチドと称する場合がある。
【0071】
前記のオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズする標識核酸N中の領域R2としては、例えば、標的核酸Nの5'末端または3'末端の近縁の領域が挙げられる。該領域R2の長さは、例えば、約10〜約300mer、約10〜約200mer、約10〜約150mer、約10〜約100mer、約10〜約90mer、約10〜約80mer、約10〜約70mer、約10〜約60mer、約10〜約50mer、約10〜約40mer、約10〜約30mer、約10〜約20mer、約15〜約300mer、約15〜約200mer、約15〜約150mer、約15〜約100mer、約15〜約90mer、約15〜約80mer、約15〜約70mer、約15〜約60mer、約15〜約50mer、約15〜約40mer、約15〜約30mer、約15〜約20mer、約20〜約300mer、約20〜約200mer、約20〜約250mer、約20〜約100mer、約20〜約90mer、約20〜約80mer、約20〜約70mer、約20〜約60mer、約20〜約50mer、約20〜約40mer、約20〜約30mer、約25〜約300mer、約25〜約200mer、約25〜約150mer、約25〜約100mer、約25〜約90mer、約25〜約80mer、約25〜約70mer、約25〜約60mer、約25〜約50mer、約25〜約40mer、約25〜約30merであり得る。
【0072】
領域R2にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')は、領域R2の塩基配列と相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプローブR2'の長さは、領域R2の長さに対応し、例えば、約10〜約300mer、約10〜約200mer、約10〜約150mer、約10〜約100mer、約10〜約90mer、約10〜約80mer、約10〜約70mer、約10〜約60mer、約10〜約50mer、約10〜約40mer、約10〜約30mer、約10〜約20mer、約15〜約300mer、約15〜約200mer、約15〜約150mer、約15〜約100mer、約15〜約90mer、約15〜約80mer、約15〜約70mer、約15〜約60mer、約15〜約50mer、約15〜約40mer、約15〜約30mer、約15〜約20mer、約20〜約300mer、約20〜約200mer、約20〜約250mer、約20〜約100mer、約20〜約90mer、約20〜約80mer、約20〜約70mer、約20〜約60mer、約20〜約50mer、約20〜約40mer、約20〜約30mer、約25〜約300mer、約25〜約200mer、約25〜約150mer、約25〜約100mer、約25〜約90mer、約25〜約80mer、約25〜約70mer、約25〜約60mer、約25〜約50mer、約25〜約40mer、約25〜約30merであり得る。
【0073】
また、斯かるオリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')は、領域R2にハイブリダイズする限り、所望により、領域R2の塩基配列に対し、1または複数のミスマッチまたはバルジを有していてもよい。
【0074】
本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様12〜19、23、48〜52、等に代表されるが、この限りではない。)においては、前記のオリゴヌクレオチドR2'は、例えばその末端に任意のアンカー(以下、「アンカーA」と称する)を有していてもよい。一方で、後述する核酸のクロマトグラフィーに用いる「展開要素」の「検出ゾーン」に、該アンカーAに結合し得る、アンカーAとは別の「アクセプターA'」を固定化しておくことにより、該アンカーAとアクセプターA'との結合を介して、標的核酸Nを含む核酸ハイブリッド(標的核酸Nに、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドプローブR1'および/または該アンカーAを有するオリゴヌクレオチドプローブR2'がハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッド)が捕捉され、標的核酸を検出、定量することができる。
【0075】
該アンカーAとしては、オリゴヌクレオチド、ビオチン、抗体、蛋白質または糖鎖、等が挙げられ、また、該アクセプターA'としては、オリゴヌクレオチド、アビジン、ストレプトアビジン、抗体または蛋白質が挙げられる。
好ましい態様の1つとしては、該アンカーAがビオチンであり、および該アクセプターA'がアビジンまたはストレプトアビジンの組み合わせである。
【0076】
また、試料中に複数の異なる標的核酸Nが含まれる場合には、それぞれの標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブR2'にそれぞれ異なアンカーAを結合させることにより、斯かる複数の異なる標的核酸をクロマトグラフィーで同時に検出、定量することができる(例えば、
図4−9、4−11、4−12、等)。
【0077】
一方、本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様29〜52;
図2における態様(4)〜(7);表1における態様(m)〜(v))に代表されるが、この限りではない。)においては、標的核酸Nは、標識物質(以下、「標識L2」と称する。文字Lは、labelのL。)で標識されている(以下、場合により、「L2標識標的核酸N」と称する。)。
【0078】
そして、本発明においては、該L2標識標的核酸Nへの、後述する1つ以上のマスクオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および標的核酸N中の任意の領域(前記の「領域R2」に同じ)への、オリゴヌクレオチドプローブR2'(前記の「オリゴヌクレオチドR2'」に同じ)のハイブリダイゼーション若しくは標的核酸N中の任意の領域(前記の「領域R1」に同じ)への、L1標識オリゴヌクレオチドプローブR1'(前記の「L1標識オリゴヌクレオチドR1'」に同じ)のハイブリダイゼーションを通じて、L2標識標的核酸Nの捕捉を含む。
【0079】
本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様35〜39;
図2における態様(4);表1における態様(m)〜(p)、等に代表されるが、この限りではない。)においては、上述した本発明の態様1〜23と同様に、標的核酸Nの任意の領域R1への、L1標識オリゴヌクレオチドプローブR1'(「L1標識オリゴヌクレオチドR1'」)のハイブリダイゼーションによる、標的核酸Nの捕捉(capture)を含む。
【0080】
その上で、これらの態様においては、後述する核酸のクロマトグラフィーに用いる「展開要素」の「検出ゾーン」に、該標識L2に結合し得る物質を固定化しておくことにより、該標識L2と当該固定化された物質との結合を介して、標的核酸Nを含む核酸ハイブリッド(標的核酸Nに、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドプローブR1'がハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッド)を捕捉して、標的核酸を検出、定量することができる。
【0081】
ここで、標識L2としては、例えば、蛍光色素(FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、6-FAM(6-Carboxyfluorescein)、TET、VIC、HEX、NED、PET、ROX、Cy5、Cy3、Texas Red、JOE、TAMRA、等)、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、抗体、酵素(例えば、酵素が、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼまたはβガラクトシダーゼ、等)等が挙げられる。なお、該抗体は、前記の蛍光色素、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)等で標識されていても良い。
【0082】
標的核酸Nの斯かる標識L2による標識は、例えば、標的核酸がPCR等により増幅された核酸に由来する場合には、常法に従って、該PCRの過程で標識を付することができる。
【0083】
ここで、標識L2に結合する物質としては、例えば、標識L2に結合する抗体または酵素で標識した抗体が挙げられ、さらに、標識L2がビオチンの場合には、該物質としてはアビジンまたはストレプトアビジンが挙げられる。
また、該酵素としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、またはβガラクトシダーゼ、等が挙げられる。
【0084】
本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様46、47、;
図2における態様(5)、(6);表1における態様(q)、(r)等に代表されるが、この限りではない。)においては、後述する核酸のクロマトグラフィーに用いる「展開要素」の「検出ゾーン」に、標的核酸Nの任意の領域R2へハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドR2'を固定化しておくことにより、該領域R2と該オリゴヌクレオチドR2'とのハイブリダイゼーションを介して、標的核酸Nを捕捉して、標識L2を指標に標的核酸を検出、定量することができる。
【0085】
標識L2を指標とした該標的核酸Nの検出、定量は、例えば、標識L2への、該標識L2に結合する抗体または酵素で標識した抗体の結合を介して実施することができる。
【0086】
本発明における標的核酸の検出、定量の一つの態様(例えば、前記に例示した本発明の態様48〜51、等に代表されるが、この限りではない。)においては、標的核酸Nへの、その末端に任意のアンカー(以下、「アンカーA」と称する)を有しているオリゴヌクレオチドプローブR2'(「オリゴヌクレオチドR2'」)のハイブリダイゼーションを含む。一方で、後述する核酸のクロマトグラフィーに用いる「展開要素」の「検出ゾーン」または核酸のイムノアッセイに用いるマイクロプレート等の固体支持体に、該アンカーAに結合し得る、アンカーAとは別の「アクセプターA'」を固定化しておくことにより、該アンカーAとアクセプターA'との結合を介して、L2標識標的核酸Nを含む核酸ハイブリッド(L2標識標的核酸Nに、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチドおよび該アンカーAを有するオリゴヌクレオチドプローブR2'がハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッド)を捕捉して、標的核酸を検出、定量することができる。
【0087】
該アンカーAとしては、オリゴヌクレオチド、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)等の低分子化合物、抗体、蛋白質または糖鎖、等が挙げられ、また、該アクセプターA'としては、オリゴヌクレオチド、アビジン、ストレプトアビジン、抗体または蛋白質が挙げられる。
好ましい態様の1つとしては、該アンカーAがビオチンであり、および該アクセプターA'がアビジンまたはストレプトアビジンの組み合わせである。
【0088】
本発明における標的核酸の検出、定量においては、いずれの態様においても、標的核酸N(またはL2標識標的核酸N)中の領域R1を挟んで位置する(領域R1の両端に隣接する、または両端の近縁の)「領域M1」および「領域M2」(文字Mは、後述するmask oligonucleotide(マスクオリゴヌクレオチド)の頭文字M)、並びに標的核酸N中の領域R2を挟んで位置する(領域R2の両端に隣接する、または両端の近縁の)「領域M3」および「領域M4」の少なくとも1つの領域に対する、マスクオリゴヌクレオチドM1'、マスクオリゴヌクレオチドM2'、マスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも1つのハイブリダイゼーションを含む。
【0089】
即ち、標的核酸Nへのマスクオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、以下の態様を含む。
・領域M1のみへマスクオリゴヌクレオチドM1'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M2のみへマスクオリゴヌクレオチドM2'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M3のみへマスクオリゴヌクレオチドM3'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M4のみへマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1および領域M2の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'およびマスクオリゴヌクレオチドM2'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M3および領域M4の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1および領域M3の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'およびマスクオリゴヌクレオチドM3'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1および領域M4の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M2および領域M3の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM2'およびマスクオリゴヌクレオチドM3'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M2および領域M4の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM2'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1、領域M2及び領域M3にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'、マスクオリゴヌクレオチドM2'およびマスクオリゴヌクレオチドM3'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1、領域M2及び領域M4にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'、マスクオリゴヌクレオチドM2'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M1、領域M3及び領域M4にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'、マスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・領域M2、領域M3及び領域M4にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM2'、マスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
・ならびに領域M1、領域M2、領域M3及び領域M4にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'、マスクオリゴヌクレオチドM2'、マスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイズさせる態様。
【0090】
また、本発明においては、必要に応じ、さらに、標的核酸N中の領域M1、領域M2,領域M3および領域M4以外の他の1つ以上の領域(領域M5、M6、M7、M8、等)にそれぞれの領域にハイブリダイズし得る該領域に相補的な核酸配列を含むマスクオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる態様が包含される。
【0091】
本願発明においては、領域M1および領域M2の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM1'およびマスクオリゴヌクレオチドM2'をハイブリダイゼーションさせる態様、または領域M3および領域M4の両方にそれぞれマスクオリゴヌクレオチドM3'およびマスクオリゴヌクレオチドM4'をハイブリダイゼーションさせる態様が好ましい。
【0092】
ここで、「標的核酸N中の領域R1を挟んで位置する(領域R1の両端に隣接する、または両端の近縁の)「領域M1」および「領域M2」とは、例えば、標的核酸Nの5'末端から3'末端の方向で、各領域が、領域M1−領域R1−領域M2(または領域M2−領域R1−領域M1)の順序で存在することを意味する。
【0093】
また、併せて、領域M1と領域R1が、その間に1塩基のギャップもなく隣接していること、または領域M1と領域R1が1〜30mer、1〜29mer、1〜28mer、1〜27mer、1〜26mer、1〜25mer、1〜24mer、1〜23mer、1〜22mer、1〜21mer、1〜20mer、1〜19mer、1〜18mer、1〜17mer、1〜16mer、1〜15mer、1〜14mer、1〜13mer、1〜12mer、1〜11mer、1〜10mer、1〜9mer、1〜8mer、1〜7mer、1〜6mer、1〜5mer、1〜4mer、1〜3mer、2merまたは1mer離れて存在することを意味する。
領域M1と領域R1が、その間に1塩基のギャップもなく隣接するか、または1〜20merまで離れて存在する態様が好ましい。
好ましくは、領域M1と領域R1が、その間に1塩基のギャップもなく隣接するか、または1〜15merまで離れて存在する。
より好ましくは、領域M1と領域R1が、その間に1塩基のギャップもなく隣接するか、または1〜10merまで離れて存在する。
さらに好ましくは、領域M1と領域R1が、その間に1塩基のギャップもなく隣接するか、または1〜5merまで離れて存在する。
【0094】
領域M2と領域R1、領域M3と領域R2、および領域R4と領域R2との位置関係も、上記の領域M1と領域R1との位置関係と同様である。
【0095】
前記のとおり、本発明におけるマスクオリゴヌクレオチドとは、標的核酸NまたはL2標識標的核酸N中の領域M1、領域M2、領域M3および領域M4(所望に応じ、さらなる領域M5、M6、M7、M8、等を含む)のそれぞれの核酸配列と相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。
【0096】
マスクオリゴヌクレオチドの長さは、領域M1、領域M2、領域M3および領域M4のそれぞれの長さに対応し、それぞれ、例えば、約5〜約300mer、約5〜約200mer、約5〜約150mer、約5〜約100mer、約5〜約90mer、約5〜約80mer、約5〜約70mer、約5〜約60mer、約5〜約50mer、約5〜約40mer、約5〜約30mer、約5〜約20mer、約10〜約300mer、約10〜約200mer、約10〜約150mer、約10〜約100mer、約10〜約90mer、約10〜約80mer、約10〜約70mer、約10〜約60mer、約10〜約50mer、約10〜約40mer、約10〜約30mer、約10〜約20mer、約15〜約300mer、約15〜約200mer、約15〜約150mer、約15〜約100mer、約15〜約90mer、約15〜約80mer、約15〜約70mer、約15〜約60mer、約15〜約50mer、約15〜約40mer、約15〜約30mer、約15〜約20mer、約20〜約300mer、約20〜約200mer、約20〜約250mer、約20〜約100mer、約20〜約90mer、約20〜約80mer、約20〜約70mer、約20〜約60mer、約20〜約50mer、約20〜約40mer、約20〜約30mer、約25〜約300mer、約25〜約200mer、約25〜約150mer、約25〜約100mer、約25〜約90mer、約25〜約80mer、約25〜約70mer、約25〜約60mer、約25〜約50mer、約25〜約40mer、約25〜約30merであり得る。
【0097】
また、各マスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'、M4')は、各領域(M1、M2、M3、M4)にハイブリダイズする限り、所望により、各領域(M1、M2、M3、M4)の塩基配列に対し、1または複数のミスマッチまたはバルジを有していてもよい。
【0098】
本願発明の核酸の検出、定量は、試料中に2以上の標的核酸(例えば、異なる種類の細菌に由来する複数の標的核酸、特定の細菌の複数の変異型に由来する複数の標的核酸、特定の遺伝子の複数の変異型に由来する複数の標的核酸、マルチプレックスPCRにより増幅された複数のPCR産物に由来する複数の標的核酸、等)が含まれる場合にも適用することができる。即ち、本発明を用いれば、1回のアッセイで、斯かる複数の標的核酸を同時に検出、定量することができる。
【0099】
本発明においては、試料中に含まれるか、または含まれることが予測される1の標的核酸を検出、定量し、または2以上の異なる標的核酸を同時に検出、定量するには、該1つの標的核酸、または該2以上のそれぞれの異なる標的核酸ごとに、前記の1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'、M4')、オリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')および、必要に応じ、オリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')を設計、調製し、これら各種のオリゴヌクレオチドを用いて、後述する例えば、ラテラルフロー型若しくはフロースルー型のクロマトグラフィー(核酸クロマトグラフィー)、またはハイブリダイゼーション-ELISAを適用することにより実施することができる。
【0100】
即ち、例えば、検出、定量すべき標的核酸が3種類(標的核酸N
1、N
2、およびN
3)ある場合には、標的核酸N
1の検出のために必要な該標的核酸N
1にハイブリダイズし得る、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'、M4')、オリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')および、必要に応じ、オリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')を設計、調製する。また、標的核酸N
2の検出のために必要な該標的核酸N
2にハイブリダイズし得る、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'、M4')、オリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')および、必要に応じ、オリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')を設計、調製する。さらに、標的核酸N
3の検出のために必要な該標的核酸N
3にハイブリダイズし得る、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'、M4')、オリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')および、必要に応じ、オリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')を設計、調製する。
【0101】
本発明における核酸の検出、定量には、例えば、イムノクロマトグラフィーの原理を応用した核酸クロマトグラフィー(ラテラルフロー型、またはフロースルー型)、またはイムノアッセイを利用したハイブリダイゼーション-ELISAを用いることができるが、これらに限られない。
【0102】
核酸クロマトグラフィーによる態様としては、例えば、
図2(態様(1)〜(7))、
図4−1〜
図4−7、
図4−9〜
図4−12に模式的に示されるデバイスおよび原理を用いる態様を例示的に示すことができるが、これらの態様に限定されないことは言うまでもない。
【0103】
また、斯かる本発明における核酸クロマトグラフィーには、後述する本願発明におけるデバイスの「適用ゾーン」、「封入ゾーン」および「検出ゾーン」のそれぞれに、上述した標的核酸(標識L2で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、アクセプターA'、および/または標識L2に結合する物質を、前記の表1に例示的に示されるような組み合わせで適用、封入、および固定化する態様を例示的に示すことができるが、これらの態様に限定されないことは言うまでもない。
なお、斯かる本発明における核酸クロマトグラフィーは、所望により、1つ以上の「検出ゾーン」のみを備えた「展開要素」(後述)の一部を、容積を有する固体支持体(例えば、チューブ、バイアル、プレート、ビーカー、等)中の、標的核酸と上述の各種オリゴヌクレオチドとを含む液体試料に適用する(接触させる)態様、または該固体支持体の一部に、該液体試料を適用すること態様によっても実施することができる。
【0104】
ハイブリダイゼーション-ELISAによる態様としては、例えば、
図2(態様(5)、(6))、
図4−8に模式的に示される態様を例示的に示すことができるが、これらの態様に限定されないことは言うまでもない。
【0105】
以下にこれらの方法を概略するが、以下に概略する事項のそれぞれについても、本願発明に包含される様々な態様を実施における必要性に応じ所望の改変、変更、追加、等を行うことができることは言うまでもない。
なお、以下に例示的に示す各態様を含め、本願発明においては、前記の標的核酸(標識L2で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、ならびに各種の核酸ハイブリッドの間の相互のハイブリダイゼーション、アンカーAおよびアクセプターA'、ならびに標識L2と標識L2に結合する物質の間の結合は、アッセイの開始から終了までの間の全体を通じて生じるものの全てを包含し、特定の場所、部位、あるいは時点においてのみ生じるハイブリダイゼーションまたは結合のみを意味するものではない。
【0106】
また、本願発明においては、前記の標的核酸(標識L2で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、ならびに各種の核酸ハイブリッドの間の相互のハイブリダイゼーションは、ある特定の一のハイブリダイゼーションと、それと異なる一または二以上のハイブリダイゼーションのそれぞれが経時的に徐々に完成される態様、別々に起こる態様、ならびに同時に起こる態様、等、任意の態様が包含される。
【0107】
1.
ラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィー
例えば、
図4−1〜
図4−7、
図4−9〜
図4−12に模式的示した態様を例示的に挙げることができるが、これらの態様において採用される基本原理の平易な理解の目的のみのため、同原理について概説すると概ね以下のとおりである。
【0108】
しかしながら、以下に概略する同原理の説明を含め、本願発明においては、標的核酸(標識L2で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていてもよい)、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、ならびに各核酸ハイブリッドの間の相互のハイブリダイゼーション、ならびにアンカーAおよびアクセプターA'の間の結合および標識L2と標識L2に結合する物質との結合は、アッセイの開始から終了までの間の全体を通じて生じるものの全てを包含し、特定の場所、部位、あるいは時点においてのみ生じるハイブリダイゼーションまたは結合のみを意味するものではない。
【0109】
また、本願発明においては、標的核酸(標識L2で標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていてもよい)、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、ならびに各核酸ハイブリッドの間の相互のハイブリダイゼーションは、ある特定の一のハイブリダイゼーションと、それと異なる一または二以上のハイブリダイゼーションのそれぞれが経時的に徐々に完成される態様、別々に起こる態様、ならびに同時に起こる態様、等、任意の態様が包含される。アンカーAおよびアクセプターA'の間の結合についても同様である。
【0110】
図4−1および
図4−2に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド(標的核酸N、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド)を、検出ゾーンに固定化したオリゴヌクレオチドR2'によって捕捉し、標識L1を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸Nの存在および量を測定することができる。
【0111】
図4−3および
図4−4に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド(標的核酸N、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、および末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド)を、検出ゾーンに固定化したアンカーAに結合するアクセプターA'によって捕捉し、標識L1を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸Nの存在および量を測定することができる。
【0112】
図4−5および
図4−6に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド(標識L2で標識された標的核酸N、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド)を、検出ゾーンに固定化した標識L2に結合する物質によって捕捉し、標識L1を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸Nの存在および量を測定することができる。
【0113】
図4−7に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド(標識L2で標識された標的核酸N、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド)を、検出ゾーンに固定化したアンカーAに結合するアクセプターA'によって捕捉し、標識L2を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸Nの存在および量を測定することができる。
【0114】
図4−9に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーは、複数の標的核酸N(例えば、標的核酸N1、N2)を同時に検出、定量する態様の例示であって、この態様においては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド1(標的核酸N1、標的核酸N1用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、標的核酸N1用に調製された標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、および標的核酸N1用に調製された末端にアンカーA1を有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド1)、および核酸ハイブリッド2(標的核酸N2、標的核酸N2用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、標的核酸N2用に調製された標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'、および標的核酸N2用に調製された末端にアンカーA2を有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド2)を、検出ゾーンにそれぞれ固定化したアンカーA1に結合するアクセプターA1'およびアンカーA2に結合するアクセプターA2'によってそれぞれ捕捉し、標識L1を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸N1およびN2の存在および量を同時に測定することができる。
【0115】
図4−10に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーは、複数の標的核酸N(例えば、標的核酸N1、N2)を同時に検出、定量する態様の例示であって、この態様においては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド1(標識L2a(例えば、FITC)で標識された標的核酸N1、標的核酸N1用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N1用に調製された標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1' がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド1)、および核酸ハイブリッド2(標識L2b(例えば、Texas Red)で標識された標的核酸N2、標的核酸N2用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N2用に調製された標識L1で標識されたオリゴヌクレオチドR1'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド2)を、検出ゾーンにそれぞれ固定化した標識L2aに結合する物質1(例えば、抗FITC抗体)および標識L2bに結合する物質2(例えば、抗Texas Red抗体)によってそれぞれ捕捉し、標識L1を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸N1およびN2の存在および量を同時に測定することができる。
【0116】
図4−11に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーは、複数の標的核酸N(例えば、標的核酸N1、N2)を同時に検出、定量する態様の例示であって、この態様においては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド1(標識L2で標識した標的核酸N1、標的核酸N1用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N1用に調製された末端にアンカーA1を有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド1)、および核酸ハイブリッド2(標識L2で標識した標的核酸N2、標的核酸N2用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N2用に調製された末端にアンカーA2を有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド2)を、検出ゾーンにそれぞれ固定化したアンカーA1に結合するアクセプターA1'およびアンカーA2に結合するアクセプターA2'によってそれぞれ捕捉し、標識L2を指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸N1およびN2の存在および量を同時に測定することができる。
【0117】
図4−12に模式的に示される原理およびデバイス(またはキット)を用いるラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーは、複数の標的核酸N(例えば、標的核酸N1、N2)を同時に検出、定量する態様の例示であって、この態様においては、毛管現象と拡散により展開要素を移動して検出ゾーンに達した核酸ハイブリッド1(標識L2a(例えば、FITC)で標識した標的核酸N1、標的核酸N1用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N1用に調製された末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド1)、および核酸ハイブリッド2(標識L2b(例えば、Texas Red)で標識した標的核酸N2、標的核酸N2用に調製された1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド、および標的核酸N2用に調製された末端にアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズして生成される核酸ハイブリッド2)を、検出ゾーンにそれぞれ固定化したアンカーAに結合するアクセプターA'によってそれぞれ捕捉し、それぞれ異なる標識L2aおよび標識L2bを指標に検出することによって、液体試料中に含まれている標的核酸N1およびN2の存在および量を同時に測定することができる。
【0118】
本発明における「展開要素」とは、好ましい態様においては、シート状またはストリップ状の支持体(メンブレン)であって、毛管現象により、各種の核酸(例えば、標的核酸(標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'(標識されていても良い)、オリゴヌクレオチドR1'、オリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)、各マスクオリゴヌクレオチド、ならびにそれらの1つ以上が相互のハイブリダイゼーションを通じて形成される各種の核酸ハイブリッド)を含む液体試料がクロマトグラフ的に展開する機能を有する。
【0119】
展開要素としては、例えば、多孔質不溶性支持体(メンブレン)を使用することができ、例えば、プラスチック製多孔質支持体(メンブレン)、セルロース系多孔質支持体(メンブレン)、無機系多孔質支持体(メンブレン)が挙げられる。より具体的には、多孔質の、セルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、シリカ、グラスファイバーまたはこれらの誘導体などから調製されている支持体(メンブレン)が挙げられる。また、本発明おいては、展開要素が上記のような機能を有する限り、市販されるいずれの多孔質不溶性支持体(メンブレン)をも展開要素として用いることができる。
【0120】
本発明における「適用ゾーン」は、展開要素に接して配置される、前記の展開要素と同一または異なる材質からなるシート状またはストリップ状の支持体である。材質としては、前記の展開要素と同様のものが挙げられるが、目的に応じ、展開要素とは異なる材質を選択することができる。
この適用ゾーンは、その機能の面からサンプルパッドと称することもでき、例えば以下のような機能を備えるものであるが、この限りではない。
(i)液体試料を受ける。
(ii)液体試料を支持体中に均質に分配する。
(iii)所望により、液体試料の組成を変えるための試薬を含み得る。
(iv)フィルターとしての役割を果たすこともある。
(v)任意のオリゴヌクレオチド等の物質を封入し得る。
【0121】
本発明における「封入ゾーン」は、適用ゾーンと接して展開要素上に配置される前記の展開要素と同一または異なる材質からなるシート状またはストリップ状の支持体である。材質としては、前記の展開要素と同様のものが挙げられるが、目的に応じ、展開要素とは異なる材質を選択することができる。
この封入ゾーンは、その機能の面からコンジュゲートパッドと称することもでき、例えば、以下のような機能を備えるものであるが、この限りではない。
(i)任意のオリゴヌクレオチド等の物質を封入し得る。分析が行なわれないときは、該封入されたオリゴヌクレオチド等は、通常、乾燥して存在する。
(ii)該各種のオリゴヌクレオチドを素早く、均一に、定量的に放出する。
(iii)展開要素に該各種のオリゴヌクレオチドを均一に移動させる。
【0122】
本発明における「検出ゾーン」には、展開要素中を毛管現象により移動してきた各種の核酸を含む試料中に含まれる核酸ハイブリッド(該標的核酸Nに他の1つ以上のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッド)を捕捉し、検出するための物質(例えば、前述のオリゴヌクレオチドR2'、アンカーAに結合するアクセプターA'または標識L2に結合する物質)を固定化することができる。
【0123】
本発明においては、検出ゾーンへのオリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')の固定化は、該オリゴヌクレオチドR2'に導入し得るアミノ基(アミノリンカー(例えば、一級アミノ基が結合した直鎖炭素鎖))、カルボキシル基、チオール基、ヒドロキシル基などを介して検出ゾーンに固定化され得る。
例えば、該オリゴヌクレオチドR2'が有するアミノリンカーが、蛋白質(例えば、血清アルブミン、免疫グロブリン、等)を介して固相に固定化されることにより、該オリゴヌクレオチドR2'が固相に固定化され得る。
本発明においては、該検出ゾーンには、オリゴヌクレオチドプローブR2'(オリゴヌクレオチドR2')が有するアンカーAに結合し得る、アクセプターA'を固定化することができる。
【0124】
該アンカーAとしては、オリゴヌクレオチド、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)等の低分子化合物、抗体、蛋白質(例えばレクチン)または糖鎖、等が挙げられ、また、該アクセプターA'としては、オリゴヌクレオチド、アビジン、ストレプトアビジン、抗体または蛋白質(例えばレクチン)が挙げられる。該アクセプターA'が、オリゴヌクレオチドである場合には、前記と同様に、アミノ基(アミノリンカー(例えば、一級アミノ基が結合した直鎖炭素鎖))、カルボキシル基、チオール基、ヒドロキシル基などを介して検出ゾーンに固定化され得る。
例えば、該アンカーAがビオチンである場合には、検出ゾーンには、アビジンまたはストレプトアビジンがアクセプターA'として固定化され得る。
【0125】
また前記のとおり、試料中に含まれる複数の異なる標的核酸Nを検出するために、それぞれの標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブR2'にそれぞれ異なるアンカーAを結合させる場合には、それぞれの標的核酸Nを別個に検出するための個々の検出ゾーンに、それぞれのアンカーAに特異的に結合する別個の物質(抗原、抗体、等)がアクセプターA'として固定化され得る。
【0126】
本発明においては、該検出ゾーンには、標的核酸Nが有する標的L2(例えば、蛍光色素、ビオチン)に結合する物質(例えば、抗体、ストレプトアビジン)を固定化することができる。
例えば、標的L2が蛍光色素である場合には、検出ゾーンには、該蛍光色素に特異的に結合する抗体が固定化され得る。また、標的L2がビオチンである場合には、検出ゾーンには、アビジンまたはストレプトアビジンが固定化され得る。
【0127】
この検出ゾーンにおいて、試料中に含まれる目的の標識標的核酸Nを、標識L1、標識L2を指標に検出することから、テストラインと称することができる。
【0128】
本発明においては、上述の標識L1が例えば、金コロイド粒子などの金属コロイド粒子や、ラテックス粒子などである場合、検出ゾーンに固定された物質(前記のオリゴヌクレオチドR2'、アンカーAに結合するアクセプターA'または標識L2に結合する物質)により、標的核酸Nを含む核酸ハイブリッド(該標的核酸Nに他の1つ以上のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズして形成された核酸ハイブリッド)が捕捉されることにより、検出ゾーンに該粒子が有する赤色や青色などが線(ライン)が現れる。この着色ラインの着色の程度を指標に、標的核酸Nの有無、量を測定することができる。
【0129】
また、上述の標識L2が、例えば、上述した種々の蛍光色素(FITC、Texas Red、等)である場合には、該標識L2に、検出可能なように処置された、該蛍光色素に特異的に結合する抗体を結合させることにより標的核酸Nの有無、量を測定することができる。
【0130】
上述のとおり、本発においては、前記のラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーを用いて、試料中に含まれるか、または含まれることが予測される2以上の異なる標的核酸を同時に検出、定量することができる(例えば、
図4−9〜
図4−12の態様、等)。例えば、以下に概略するとおりに実施することができる。
【0131】
・当該2以上のそれぞれの異なる標的核酸N(即ち、標的核酸N
1、標的核酸N
2、標的核酸N
3、標的核酸N
4、・・・・標的核酸N
X(Xは任意の数))ごとに、それぞれの標的核酸N
Xにハイブリダイズし得る標識L1で標識したオリゴヌクレオチドプローブR1'(オリゴヌクレオチドR1')、即ち、標的核酸N
1にハイブリダイズし得るL1標識オリゴヌクレオチドR1'、標的核酸N
2にハイブリダイズし得るL1標識オリゴヌクレオチドR1'、標的核酸N
3にハイブリダイズし得るL1標識オリゴヌクレオチドR1'、標的核酸N
4にハイブリダイズし得るL1標識オリゴヌクレオチドR1'、・・・・標的核酸N
Xにハイブリダイズし得るL1標識オリゴヌクレオチドR1'、を設計、調製する。ここで、該各標的核酸は、所望により、同一またはそれぞれ異なる標識L2で標識されていても良い。また、標識L1は、所望により、標的核酸Nごとに、異なる標識物質も用いてもよい。
【0132】
・当該2以上のそれぞれの異なる標的核酸N(即ち、標的核酸N
1、標的核酸N
2、標的核酸N
3、標的核酸N
4、・・・・標的核酸N
X(Xは任意の数))ごとに、それぞれの標的核酸Nにハイブリダイズし得る検出用のオリゴヌクレオチドプローブR2(オリゴヌクレオチドR2')、即ち、標的核酸N
1にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドR2'、標的核酸N
2にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドR2'、標的核酸N
3にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドR2'、標的核酸N
4にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドR2'−4、・・・・標的核酸N
Xにハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドR2'、を設計、調製する。ここで、該各標的核酸は、所望により、同一またはそれぞれ異なる標識L2で標識されていても良い。また、該オリゴヌクレオチドR2'は、同一またはそれぞれ異なるアンカーAを有していても良い。
【0133】
・それぞれの異なる標的核酸N(即ち、標的核酸N
1、標的核酸N
2、標的核酸N
3、標的核酸N
4、・・・・標的核酸N
X(Xは任意の数))ごとに、該標的核酸N中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るマスクオリゴヌクレオチド、即ち、オリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方を設計、調製する。即ち、標的核酸N
1中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
2中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
3中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
4中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方;・・・・標的核酸N
x中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方、を設計、調製する。ここで、該各標的核酸は、所望により、同一またはそれぞれ異なる標識L2で標識されていても良い。
【0134】
・所望に応じ、それぞれの異なる標的核酸N(即ち、標的核酸N
1、標的核酸N
2、標的核酸N
3、標的核酸N
4、・・・・標的核酸N
X(Xは任意の数))ごとに、該標的核酸N中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズするマスクオリゴヌクレオチド、即ち、オリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方を設計、調製する。即ち、標的核酸N
1中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
2中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
3中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方; 標的核酸N
4中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方;・・・・標的核酸N
x中の領域R2を挟んで位置する領域M3および領域M4にそれぞれハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドM3'およびオリゴヌクレオチドM4'の少なくとも一方、または両方、を設計、調製する。ここで、該各標的核酸は、所望により、同一またはそれぞれ異なる標識L2で標識されていても良い。
【0135】
・試料中の該複数の標的核酸N
Xに、それぞれの標的核酸N
X用に調製した前記の種々のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、核酸ハイブリッドを形成させる。
【0136】
・デバイスの展開要素中を毛管現象により移動した複数種類の核酸ハイブリッドのそれぞれを、前記デバイスのそれぞれ異なる位置に設けられた、複数の標的核酸Nごとの検出ゾーン中に固定化された物質(前記のオリゴヌクレオチドR2'、アンカーAに結合するアクセプターA'または標識L2に結合する物質)により捕捉する。
【0137】
・標識L1が例えば、金コロイド粒子などの金属コロイド粒子や、ラテックス粒子などである場合、それぞれの検出ゾーン(テストライン)ごとに現れる着色の程度を指標に、それぞれの標的核酸Nの有無、量を測定することができる。
【0138】
本発明のラテラル型の核酸クロマトグラフィーにおいては、
図5−2に模式的に示されるとおり、上述した「展開要素」が、上述した標的核酸Nを検出するためのテストラインとしての検出ゾーンに加え、インターナルコントロール(内部対照)としての核酸を検出するための1または2以上のコントロールラインとしての検出ゾーンを併せて備えることができる。該1または2以上のコントロールラインとしての検出ゾーンは、標的核酸Nを検出するためのテストラインとしての検出ゾーンと後述する「吸収ゾーン」の間に配置されるのが好ましい。
【0139】
インターナルコントロールは、検出されるべき標的核酸Nとは別に用意される別個の核酸であって、標的核酸Nと同様に毛管現象により展開要素中を移動するが、上述した標識核酸Nが検出されるテストラインとしての検出ゾーンにおいて捕捉されることなく、該テストラインを通過し、コントロールラインとしての検出ゾーンにおいて捕捉、検出される。
コントロールラインとしての検出ゾーンにおけるインターナルコントロールの捕捉、検出は、上述したテストラインとしての検出ゾーンにおける標的核酸Nの捕捉、検出のための各種の手法と同様にして、インターナルコントロールにハイブリダイズするキャプチャーオリゴヌクレオチド、マスクオリゴヌクレオチドおよびディテクションオリゴヌクレオチドを用いて実施することができる。
【0140】
該コントロールラインとしての検出ゾーンにおけるインターナルコントロールの補足、検出は、上述した本発明のラテラル型の核酸クロマトグラフィーを実施するための各種デバイスを用いて所望の標的核酸Nの検査、検出を行うに際し、標的核酸Nの展開要素中の移動と併せて、インターナルコントロールとしての核酸を展開要素中を移動させ、インターナルコントロールを、コントロールラインとしての検出ゾーンで捕捉、検出することにより、そのデバイスが正常に機能したか否かを確認することを目的とする。
上述したとおり、標的核酸Nおよびインターナルコントロールの各検出ゾーンでの検出を、金コロイド粒子などの金属コロイド粒子やラテックス粒子が有する赤色や青色の色彩を利用して行う場合には、テストラインの着色の有無に拘わらず、コントロールラインにおいて着色ラインが現れた場合には、デバイスは正常に機能したことが確認される。一方、テストラインの着色の有無に拘わらず、コントロールラインにおいて着色ラインが現れない場合には、デバイスは正常に機能していないことが確認される。
【0141】
本発明における「吸収ゾーン」は、展開要素中を毛管現象により移動してくる液体試料を吸収するために、展開要素に接して配置することができる(例えば、適用ゾーンが配置された側と反対側の位置)。該吸収ゾーンは、前記の展開要素と同一または異なる材質からなるシート状またはストリップ状の支持体であっても良い。
この吸収ゾーンは、その機能の面から吸収パッドと称することもできる。
【0142】
上記のいずれの態様も含め、本発明においては、上述した種々の核酸(標的核酸、各種のオリゴヌクレオチド、核酸ハイブリッド、等)を含む液体試料を前記展開要素中で展開させるためのバッファー中に少なくとも1つの変性剤またはカオトロピック剤を存在させることができる。該バッファー中には、さらに核酸のハイブリダイゼーションにおいて通常使用される少なくとも1つの無機塩を存在させることができる。即ち、本発明の核酸クロマトグラフィーにおいては、変性剤またはカオトロピック剤を存在させることにより、標的核酸における1本鎖領域の適度な形成および標的核酸と各種のオリゴヌクレオチドとの特異的結合が促進され、また標的核酸と各種のオリゴヌクレオチドとの非特異的反応による結合が低減し、特異的反応の促進により分解能が高められ、検出下限が低下することにより、標的核酸の検出、定量の感度、正確性および迅速性を増大させることができる。
【0143】
本発明においては、前記のいずれの態様のデバイスも、不透湿性固体材料からなるケース(ハウジング)中に配置させておくことができる。
このケース(ハウジング)中へ配置された本発明のデバイスの一つの態様としては、
図5−1および
図5−2に模式的に示される態様を例示することができる。
図5−2に模式的に記載される態様は、
図5−1に模式的に記載される態様に包含される各種の態様のうちの好ましい態様の一例であって、当該デバイスにおける「展開要素」が、上述した標的核酸を検出するためのテストラインとしての検出ゾーンに加え、上述のとおりの、該デバイスが正常に機能するか否かを確認するための、インターナルコントロール(対照)としての核酸を検出するためのコントロールラインとしての検出ゾーンを併せて備える態様である。
【0144】
該ケース(ハウジング)は、上述した本発明のデバイス(キット)が備える適用ゾーンに試料を適用するための試料適用口、および検出ゾーンでの標的核酸の捕捉により生じる変化(例えば、標識L1に生じる色の変化)を観察するための検出窓を備え得る。
また、本発明のデバイスを該ケース(ハウジング)中に配置することにより、デバイスに含まれる試薬等が乾燥状態で保ち、室温での長期保存が可能となる。
【0145】
不透湿性固体材料からなるケース(ハウジング)としては、公知のまたは市販の製品が採用している任意のケース(ハウジング)を用いることができる。例えば、以下のような公知の技術および態様を、所望により改変しながら調製、使用できる(例えば、特許第2705768号公報、特許第2825349号公報、特開平6-230009号公報、特開平9-145712号公報、特開平2000-356638号公報、等を参照することができる。)。
【0146】
本発明においては、前記のデバイスは、試料中の所望の特定の標的核酸Nの検出、定量のためのデバイス(この場合、キットとも称する)として調製、提供することができる。
即ち、例えば、前記に例示されるような態様のデバイスに、さらに、該特定の標的核酸Nの検出、定量に必要な、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1'、M2'、M3'および/またはM4')、オリゴヌクレオチドプローブR1'(標識L1で標識されていてもよい)、ならびにオリゴヌクレオチドプローブR2'(アンカーAを有していても良い)を配備させることによりキットとすることができる。
また、例えば、試料中に含まれる標的核酸Nを、PCRに等により増幅した後に検出、定量する場合には、前記のキットに、該標的核酸NのPCR等による増幅に必要な一対の増幅用プライマー(例えばPCRプライマー)をさらに配備したキットを提供することができる。
【0147】
2.
フロースルー型の核酸クロマトグラフィー
フロースルー型の核酸クロマトグラフィーの原理は、基本的には、上述のラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーの原理と同様であるが、ラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、標的核酸NとオリゴヌクレオチドR1'および/またはオリゴヌクレオチドR2'とのハイブリダイゼーションが支持体(メンブレン)中において水平方向に(横に向かって)進むのに対し、フロースルー型の核酸クロマトグラフィーにおいては、斯かる各ハイブリダイゼーションが、垂直方向に(上から下へ)進む点で相違する。
【0148】
本発明においては、このフロースルー型の核酸クロマトグラフィーは、例えば、以下のコンポーネントを垂直方向に(上から下へ)に配置して備えるデバイスを用いて、上述のラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーと同様の操作により行うことができる。
【0149】
・少なくとも1または2以上の異なる標的核酸N(標識L2で標識されていても良い)を含む液体試料を適用するためのサンプルパッド。
・標的核酸Nごとに設計、調製された、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(M1、M2、M3および/またはM4; 1種類以上の、オリゴヌクレオチドR1'(標識L1で標識されていても良い)、および/またはオリゴヌクレオチドR2'(アンカーAを有していても良い)の1つ以上を、所望により含ませることができるコンジュゲートパッド(試薬紙とも称する)。
【0150】
・コンジュゲートパッド(試薬紙とも称する)を通過した、核酸ハイブリッド(該標的核酸Nと上記の1つ以上の各種オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより生成される核酸ハイブリッド)を捕捉し、検出するために、該核酸ハイブリッドを捕捉し得る物質(オリゴヌクレオチドR2'、アンカーAに結合するアクセプターA'または標識L2に結合する物質)が固定化されている検出パッド(検出紙、判定紙とも称する)。
・所望により、検出パッド(検出紙、判定紙)を通過した液体を吸収するための吸収パッドを備えていてもよい。
【0151】
上記のデバイスを用いたフロースルー型の核酸クロマトグラフィーにおいて、標識L1が例えば、金コロイド粒子などの金属コロイド粒子や、ラテックス粒子などである場合、検出パッド(検出紙、判例紙とも称する)に固定された該核酸ハイブリッドを捕捉し得る物質(オリゴヌクレオチドR2'、アンカーAに結合するアクセプターA'または標識L2に結合する物質)により、L1標識オリゴヌクレオチドR1'がハイブリダイズした標的核酸Nを捕捉することにより、検出パッド(検出紙、判定紙とも称する)が、該粒子が有する赤色や青色により着色する。この着色の程度を指標に、標的核酸Nの有無、量を測定することができる。
【0152】
上記に例示したフロースルー型の核酸クロマトグラフィー用のデバイスおよび該デバイスを用いる核酸クロマトグラフィーの手法の説明における各用語は、前記のラテラルフロー型の核酸クロマトグラフィーにおける各用語と同様に意味を有する。
【0153】
3.
ハイブリダイゼーション-ELISA
この方法を用いる本発明の核酸の検出、定量方法は、前述したとおりの、例えば、
図2(態様(5)、(6)、(7))、および
図4−8に模式的に例示されるとおりの態様を挙げることができる。
【0154】
斯かる態様においては、標的核酸Nへの、1つ以上のマスクオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドM1'、オリゴヌクレオチドM2'、オリゴヌクレオチドM3'および/またはオリゴヌクレオチドM4')およびアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'のハイブリダイゼーションを含む、核酸と核酸によるハイブリダイゼーションと、標的核酸Nに結合させた標識L2(例えば、蛍光色素、ビオチン、DIG、抗体、酵素、等)と該標識L2に結合する抗体(例えば、酵素標識抗体)との反応(即ち、ELISA; 酵素標識イムノアッセイ)を組み合わせて、目的の標的核酸を検出、定量することができる。
本発明においては、このハイブリダイゼーション-ELISAを用いて、試料中の標的核酸を、例えば、以下のようにして検出、定量することができる。
【0155】
なお、以下において、標的核酸N、領域R2、オリゴヌクレオチドプローブR1'、標識L2、標識L2で標識された標的核酸N、領域M1、領域M2、マスクオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドM1'、オリゴヌクレオチドM2')、核酸ハイブリッド、アンカーA、アクセプターA'等の用語の意義は、上記に定義したとおりである。
また、以下各操作は、同時または任意の順序で実施され得る。
【0156】
・試料中に含まれるか、由来する標的核酸Nを、標識物質(以下、「標識L2」と称する。例えば、蛍光色素(FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、6-FAM(6-Carboxyfluorescein)、TET、VIC、HEX、NED、PET、ROX、Cy5、Cy3、Texas Red、JOE、TAMRA、等)、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、等)で標識し、L2標識標的核酸Nとする。例えば、標的核酸がPCR等により増幅された核酸に由来する場合には、常法に従って、該PCR等による遺伝子増幅の過程で増幅産物に標識L2を付することにより、L2標識標的核酸Nを得ることができる。
【0157】
・標的核酸N中の領域R1を挟んで位置する領域M1および領域M2にそれぞれハイブリダイズするマスクオリゴヌクレオチド、即ち、オリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方を設計、調製し、オリゴヌクレオチドM1'およびオリゴヌクレオチドM2'の少なくとも一方、または両方を、L2標識標的核酸Nにハイブリダイズさせる。
【0158】
・同じく、L2標識標的核酸Nに、アンカーAを有するオリゴヌクレオチドオリゴヌクレオチドR2'をハイブリダイズさせる。
【0159】
・上記のハイブリダイゼーションを同時または任意の順序で行うことにより、L2標識核酸に1つ以上のマスクオリゴヌクレオチドおよびアンカーAを有するオリゴヌクレオチドR2'がハイブリダイズすることにより核酸ハイブリッドが形成される。
【0160】
・一方、容積を有する固体支持体(例えば、チューブ、バイアル、プレート、ビーカー、1つ以上のウェル(well)を有するマイクロプレート、等)の表面に該アンカーAに結合し得る物質であるアクセプターA'(例えば、該アンカーAがビオチンの場合には、アビジンまたはストレプトアビジン)を固定化する。
【0161】
・前述した標的核酸Nを含む試料と各オリゴヌクレオチドの混合物をマイクロプレートのウェルに加え、前記のハイブリダイゼーションを通じて生成された該核酸ハイブリッドが、該アンカーAと、支持体上に固定化されているアクセプターA'との結合を介して捕捉される。
【0162】
・次に、該反応溶液中に、標識L2を検出可能な物質(例えば、標識L2に結合する酵素等で標識された抗体)を加え、標識L2への該物質の結合により発する色やシグナルを検出することにより、該色やシグナルの程度を指標に、標的核酸Nの有無、量を測定する。
【0163】
ここで、例えば、標識L2がFITCである場合には、該物質としては、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP))で標識された抗FITC抗体を用いることができる。
【実施例1】
【0164】
種々の細菌のゲノムDNAのPCR産物のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーによる検出
1.
PCR用鋳型DNAの調製
PCR用の鋳型DNAは、ISOPLANT(NIPPON GENE)を用いてゲノムDNAとして調製した。
即ち、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、「SA」と略記する;菌株ATCC12600)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、「SE」と略記する;菌株ATCC14990)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、「PA」と略記する;菌株JCM5962)、腸球菌(Enterococcus faecalis、「EF」と略記する;菌株JCM5803)、大腸菌(Escherichia coli、「EC」と略記する;菌株JCM1649)、Enterobacter cloacae(「ET」と略記する;菌株JCM1232)、および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、「KP」と略記する;菌株JCM 1662)のそれぞれを3 mLのLB液体培地(ベクトンデッキンソン)で一晩培養して得た被検菌液1 mLを6,000 × gで5分間遠心後、沈渣を300 μLのExtraction Bufferで懸濁した後、150 μLのLysis Bufferを加えて混和後、50℃で15分間反応させた。
【0165】
次に各反応液に150 μLのSodium Acetate(pH 5.2)を加えて混和後、氷上で15分間静置し、12,000 × g、4℃、15分間遠心し、上清を回収した。各上清に2.5 倍量の100% Ethanolを加えて混合した後、12,000 × g、4℃、15分間遠心し、沈渣を70% Ethanolで洗浄した後、風乾させた。風乾した沈渣にTE buffer [10 mM Tris-HCl(pH 8.0)、1mM Ethylenediamine tetraacetic acid(EDTA)] 100 μL加えて溶解した後、RNase Aを1 μL(終濃度 10 μg/mL)加えて37℃、30分間反応させ、100 μLのTE buffer飽和phenolを加えて混和し、12,000 × g、15分間遠心した後、上清を回収した。10 μLの3 M sodium sacetate buffer(pH 6.0)と2.5 倍量の100% Ethanolを加えて混合した後、12,000 × g、10分間遠心した後、上清を捨て、100 μLの氷冷70% Ethanolを加えて再度12,000 × g、10分間遠心した。沈渣を風乾した後、50 μLのTE bufferに溶解し、鋳型DNAとした。
【0166】
2.
PCRによる核酸増幅
PCRにはTAKARA社のPrimeSTAR HS DNA Polymeraseを用いた。まず、PrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5 U/μL)0.2 μL 、5× PrimeSTAR Buffer(Mg
2+ plus)4 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)1.6 μL、鋳型 DNA 1 μL、およびそれぞれの細菌由来の鋳型ゲノムDNAに特異的な一対のオリゴヌクレオチドプライマー(10 pmol/μL)各0.4μLを滅菌水で20 μLにメスアップした。
【0167】
SA用のPCRプライマーとして以下に示すSA1F及びSA1Rを使用した。
・SA1F:5'- GGATTCAATGTCACATGAGCGTGATAAAAT -3' [配列番号1]
・SA1R:5'- AAAGCTCAAGGATATGCGATTACTGAAGCAG -3' [配列番号2]
SE用のPCRプライマーとして以下に示すSE1F及びSE1Rを使用した。
・SE1F:5'- TCAGAGGTCATGGAAAATCTTCACGAAC -3' [配列番号3]
・SE1R:5'- ATTGCCTCAGATTTATTAAAGCCTGCTAATTCTTC -3' [配列番号4]
PA用のPCRプライマーとして以下に示すPA1F及びPA1Rを使用した。
・PA1F:5'- AAGATCGGCGTATTCATCGGCGTC -3' [配列番号5]
・PA1R:5'- CCCAGGTCCTGATAGACCAGTTGATACCC -3' [配列番号6]
EF用のPCRプライマーとして以下に示すEF1F及びEF1Rを使用した。
・EF1F:5'- GAAGACAACGATTTATGTTTACGCTTTGGCA -3' [配列番号7]
・EF1R:5'- AATTCGGCGTATCAGCCATTTTCATTT -3' [配列番号8]
EC用のPCRプライマーとして以下に示すEC1F及びEC1Rを使用した。
・EC1F:5'- GTCAGGTAAGGCTAATTTCATTACCAGCAAAGG -3' [配列番号9](配列番号41のオリゴヌクレオチドEFA1と同一配列)
・EC1R:5'- CGGTCAGCCATAGGGTAAATGACCAC -3' [配列番号10]
ET用のPCRプライマーとして以下に示すET1F及びET1Rを使用した。
・ET1F:5'- GTTTCTGGCACGGCGTCAGC -3' [配列番号11]
・ET1R:5'- TGTGTGTCTAATCAGTTCCGCAGGG -3' [配列番号12]
KP用のPCRプライマーとして以下に示すKP1F及びKP1Rを使用した。
・KP1F:5'- CAGCCATCAGGTTGAGCATCATTAATCTT -3' [配列番号13]
・KP1R:5'- CAGCCGGAGAAATAGAGAAATCTTATGAATCAT -3' [配列番号14]
【0168】
PCRはVeriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で3分間保持した後、98℃で10秒間、68℃で1分間の反応を40サイクル繰り返し、68℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0169】
3.
PCR産物のアガロースゲル電気泳動による判定
増幅したPCR産物は、ミューピッド(アドバンス)を用いたアガロースゲル電気泳動により、2%アガロース(Agarose I、AMRESCO)、1× TAE バッファー[40 mM Tris-HCl (pH 8.0)、40 mM Acetic acid、1.0 mM EDTA] を用いて分離した。電気泳動後は、1 μg/mL エチジウムブロマイド溶液で染色し、染色後のDNAは、ゲルドキュメンテーション解析システムChemiDoc XRS(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて、紫外線下(260 nm)で撮影した。
【0170】
4.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
核酸クロマトグラフィーによるEC由来核酸の検出において用いる金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを以下のように調製した。
合成し、ビオチン化した、ビオチン化オリゴヌクレオチド(ビオチン- CGGTCAACGAGATGTGGTCT - 3') [配列番号15]を秤量し、1mM EDTAを加え、0.1M MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)緩衝液(pH7.8)を用いて希釈し、0.15nmolのビオチン化オリゴヌクレオチド溶液を調製した。
【0171】
ビオチン化オリゴヌクレオチド溶液に、ストレプトアビジン結合金コロイド粒子(BBI社製)を等量加え、良く撹拌した後、37℃、1時間インキュベートした。次に溶液に、終濃度0.1%になるようビオチン溶液を加えて、更に37℃、15分インキュベートした。得られた混合溶液を15,000 × g、5分間遠心した後、上清を捨て、1mM EDTA、0.5%BSA加20mM Tris-HCl(8.0) 5mlを加えて、再度15,000 × g、5分間遠心を行い、上清を除去し、1mM EDTA、0.5%BSA加20mM Tris-HCl(8.0) を加えて撹拌した。この溶液をEC由来核酸の検出に用いられる金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの溶液とした。
【0172】
以下、上記と同様の方法で、各種細菌(SA、SE、PA、EF、ET、KP)由来の核酸の核酸クロマトグラフィーによる検出において用いる金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを調製した。
上記キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAB):5'- GGCTCATCTTCTAGTGGTGC - 3' [配列番号16]
・SE核酸検出用(SEB):5'- GGCCAAAAGTGAAGACATTG - 3' [配列番号17]
・PA核酸検出用(PAB):5'- CCATCTTTTCCAGGCGATGC - 3' [配列番号18]
・EF核酸検出用(EFB):5'- ACAAATGGGGCTGGAGGTTC - 3' [配列番号19]
・ET核酸検出用(ETB):5' - CAACCCTCAGGACACCACTT - 3'[配列番号20]
・KP核酸検出用(KPB):5' - CAACTCGGGATCGGCAAACA - 3' [配列番号21]
【0173】
5.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
核酸クロマトグラフィーによるEC由来核酸の検出において用いるメンブレンに固定化するBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを以下のように調製した。Sigma社製の牛血清アルブミン(BSA)150 mgを5 mM EDTAを加えた0.1 M リン酸緩衝液(pH6.7)2 mlに溶解した。
【0174】
次にThermo Scientific社製のSATA (N-succinimidyl-S -acetylthioacetate)をBSAの4倍モルになるよう調製し、37℃、90分インキュベートした。その後、混合液に終濃度0.5 Mになるようヒドロキシアミン溶液を加えて、更に37℃、60分インキュベートする。これらの混合液に2 M リン酸緩衝液を加えて、pH6.0に調製しマレイミド化BSA溶液とした。
【0175】
合成したオリゴヌクレオチド(5'-CGACAGTACGCAGCCACGAT - 3') [配列番号22]を秤量し、5mM EDTAを加えた0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を用いて希釈し、650 nmol/mlのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。ドージン化学社製EMCS(N-[6-Maleimidocaproyloxy]succinimide)をオリゴヌクレオチドの50倍モルとなるように調製し、オリゴヌクレオチド溶液と混合し、37℃で30分インキュベートした。その後、常法に従い、エタノール沈殿を行った。
【0176】
沈殿に5 mM EDTA加 0.1 Mリン酸緩衝液(pH6.0)を加えて溶解し、等量のマレイミド化BSA溶液を加え、37℃、60分インキュベートした。その後、N-エチルマレイミドを終濃度0.1%になるように添加した。マレイミド化BSAとオリゴヌクレオチドの混合物の全量を、Bio Sepra社製ACA44充填カラム(内径:1.5cm x 60 cm)を用いて、5mM EDTAを加えた0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)緩衝液で溶出させ、精製した。
【0177】
以下、上記と同様の方法で、各種細菌(SA、SE、PA、EF、ET、KP)由来の核酸の核酸クロマトグラフィーによる検出においてメンブレンに固定されるBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを調製した。
BSAと結合させるディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0178】
・SA核酸検出用(SAA):5'- GCCGTGCTCAATACAGCTCC - 3' [配列番号23]
・SE核酸検出用(SEA):5'- GGACATGATATGGGGGGCAT - 3' [配列番号24]
・PA核酸検出用(PAA):5'- CGAGACGGCCCCAGACCTAT - 3' [配列番号25]
・EF核酸検出用(EFA):5'- AAGCAGGCTATCGGATTCTC - 3' [配列番号26]
・ET核酸検出用(ETA):5'- GTGGCTGACCTTAATGAACC - 3' [配列番号27]
・KP核酸検出用(KPA):5'- ATCACTGGCTGGCAAGGCAC - 3' [配列番号28]
【0179】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
BioDot社製XYXZ300塗布機を用いて、Advanced Microdevice社製ニトロセルロースメンブレン上に、BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを、1.1μg/テスト(1テストは1mmx5mm幅のラインを意味する)になるように塗布し、室温で一晩乾燥することによりディテクションオリゴヌクレオチドを、BSAを介してメンブレン上のテストラインに固定化した。
【0180】
次に2%BSAを加えた0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に、ディテクションオリゴヌクレオチドを固定化したメンブレンを4℃、1晩浸漬させブロッキングを行った。その後、メンブレンを室温で十分に乾燥させた。ディテクションオリゴヌクレオチドが固定化された乾燥済のメンブレンに、Advanced Microdevice社製サンプルパッド、吸水パッドおよび日本ポール社製コンジュゲートパッドを貼り合わせた。貼り合わせたシートをBioDot社ギロチンカッターを用いて5mm幅に切断し、核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップとした(
図5−1)。
前記において細菌ごとに調製したBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを用いて細菌ごとにテストストリップを調製した。
【0181】
7.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0182】
・SA核酸検出用(SAA1):5'- CAGTAATATAATAGTCTTTATCTACACTTTCTAAT -3' [配列番号29]
・SA核酸検出用(SAA2):5'- ACTTGTAGAGACACCCGTTAATACT -3' [配列番号30]
・SA核酸検出用(SAB1):5'- TAAAGCGTCGCTTAGAAATAATC -3' [配列番号31]
・SA核酸検出用(SAB2):5'- TAAATCTTCAAGTATTCGTGTAGATG -3' [配列番号32]
【0183】
・SE核酸検出用(SEA1):5'- TAAATATCGATTCTGCACATATTTTA -3' [配列番号33]
・SE核酸検出用(SEA2):5'- CATTGCGAGTGAATTTACTG -3' [配列番号34]
・SE核酸検出用(SEB1):5'- GTGATTACATTGACAATTGTTTC -3' [配列番号35]
・SE核酸検出用(SEB2):5'- CAAATGGTTTCAACAAATTAATG -3' [配列番号36]
【0184】
・PA核酸検出用(PAA1):5'- AGCCTAGTCCAGCGGG -3' [配列番号37]
・PA核酸検出用(PAA2):5'- TTGTCATTACGGGGCGT -3' [配列番号38]
・PA核酸検出用(PAB1):5'- GACCTCAGGCCGTTAACAT -3' [配列番号39]
・PA核酸検出用(PAB2):5'- CGTGCATCGGGCTGTG -3' [配列番号40]
【0185】
・EF核酸検出用(EFA1):5'- GAAGACAACGATTTATGTTTACGCTTTGGCA -3' [配列番号41](配列番号9のオリゴヌクレオチドEC1Fと同一配列)
・EF核酸検出用(EFA2):5'- TATACGCCTTTTGAAACGGT -3' [配列番号42]
・EF核酸検出用(EFB1):5'- AATCAATGGGGAAATTTTTTA -3' [配列番号43]
・EF核酸検出用(EFB2):5'- TTTTAATGAGTCAAAGATTAGCGG -3' [配列番号44]
【0186】
・EC核酸検出用(ECC1):5'- TAACAGTAAGCTGGTCATGG -3' [配列番号45]
・EC核酸検出用(ECC2):5'- CAGTACAACACGACGATTTATG -3' [配列番号46]
・EC核酸検出用(ECD1):5'- GATCGCTATCGAGGGGTATT -3' [配列番号47]
・EC核酸検出用(ECD2):5'- TTATGAGTGCTAAACAAGCTAAA -3' [配列番号48]
【0187】
・ET核酸検出用(ETA1):5'- GGTCAACACCCCACAGGA -3' [配列番号49]
・ET核酸検出用(ETA2):5'- AAATCATTCAAAAGAATGCTGAAC -3' [配列番号50]
・ET核酸検出用(ETB1):5'- TGGCGGTATGGATGGG -3' [配列番号51]
・ET核酸検出用(ETB2):5'- TGCTGCATACGCTCTCTGA -3' [配列番号52]
【0188】
・KP核酸検出用(KPA1):5'- CGCGGCCCTTTTTT -3' [配列番号53]
・KP核酸検出用(KPA2):5'- ATATTGCCATTGTTTATTTTTC -3' [配列番号54]
・KP核酸検出用(KPB1):5'- CTATTTTTAGCAGCTTGTTCAA -3' [配列番号55]
・KP核酸検出用(KPB2):5'- CTCATTTACCAGGAATAATCTTAC -3' [配列番号56]
【0189】
8.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で細菌ごとに調製したテストストリップを用いた(
図5−1)。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
【0190】
前記で調製した各細菌に由来するゲノム核酸のPCR産物の溶液10 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(28.6% Formamide、1.43×SSC、0.143% BSA、1.43 mM EDTA、0.143% Dextran Sulfate)を49 μL加え、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に、前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを10 μL添加し、全量をメンブレン(テストストリップ)のサンプルパッド(
図5−1)に滴下した。
なお、対照試験として、マスクオリゴヌクレオチドを用いずに、同様に核酸クロマトグラフィーを行った。
【0191】
9.
結果
各細菌のそれぞれのゲノムDNAを鋳型とするPCR産物のアガロースゲル電気泳動での検出の結果を
図6に示す。
この結果、PCRにより、それぞれの細菌について、目的とするゲノムDNAが増幅されたことが示された。
各細菌のPCRによる増幅したゲノムDNAの核酸クロマトグラフィーの結果を
図7に示す。
この結果、マスクオリゴヌクレオチドを用いることで、発色感度が顕著に上昇した。
【実施例2】
【0192】
細菌のゲノムDNAの制限酵素処理断片のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーによる検出
1.
細菌ゲノムDNAの調製
大腸菌(Escherichia coli、以下「EC」と略記する;菌株JCM1649)及びEnterobacter cloacae(以下「ET」と略記する;菌株JCM1232)を5 mLのBHI液体培地(ベクトンデッキンソン)で一晩培養した。被検菌液を1,870 × g(Allegra 6KR Centrifuge、ベクトンデッキンソン)で10分間遠心して上清を捨てた後、TE バッファー[10 mM Tris-HCl(pH 8.0)、1mM Ethylenediamine tetraacetic acid(EDTA)]で洗浄し、再度1,870 × gで10分間遠心し、上清を捨て、900 μLのTE バッファーで懸濁した。次に懸濁液に5 mg/mL リゾチーム(生化学工業)を300 μL加えて37℃で30分、その後10 mg/mL Protease K(ロシュ・ダイアグノスティックス)150 μLを加えて37℃で30分処理し、さらに10 % SDS 150 μLを添加した。
【0193】
その液に等量のTE飽和フェノールを加えて混和した後、1,870 × gで10分間遠心して上清を回収し、上記操作を再度繰り返して上清液を回収した。次に回収した上清液に4 mLの冷エタノールを添加して混和しゲノムDNAを析出させ、白金耳によりゲノムDNAを巻き取り回収した後、冷70%エタノールで洗浄し、風乾した後500 μLのTEに溶解した。次に溶液に、0.5 mg/mL RNase A(ロシュ・ダイアグノスティックス)を20 μL加えて37℃で2時間、その後10 mg/mL Protease K(ロシュ・ダイアグノスティックス)20 μLを加えて55℃で1時間処理した。
【0194】
その液に等量のTE飽和フェノール/クロロホルム液を加えて混和した後、1,870 × gで10分間遠心して上清を回収し、上記操作をさらに2回繰り返して上清液を得た。その後、得られた上清液に1 mLのエーテルを加えて混和した後1,870 × gで10分間遠心して上清を捨て、再度同じ操作を繰り返した後、風乾によりエーテルを気化させ、2 mLの冷エタノールを添加して混和してゲノムDNAを析出させ、白金耳によりゲノムDNAを巻き取り回収した後、冷70%エタノールで洗浄し、風乾した後200 μLのTEに溶解して細菌ゲノムDNA溶液を得た。
【0195】
2.
細菌ゲノムDANの制限酵素による処理
制限酵素はBgl II (タカラバイオ)を用いた。前記で得た150 μgの細菌ゲノム、およびH バッファー250 μL、Bgl II (10 U/μL)100 μLを滅菌水で2.5 mLにメスアップし、37℃で16時間反応させた。次いで、反応液に、5 mLの冷エタノールを添加して混和し、20,000 × gで10分間遠心してDNAを沈殿させ、上清を捨てた後に冷70%エタノールで洗浄し、風乾した後50 μLのTEに溶解して制限酵素処理された細菌ゲノムDNAの断片を得た。
【0196】
3.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
5'末端チオール化オリゴヌクレオチドを滅菌蒸留水で200 μMとなるように溶解し、その200 μLに、0.08 M DTT(dithiothreitol)を200 μL添加して室温で16時間放置した。その後、滅菌蒸留水にて溶媒置換を行った。10 μMの5'末端チオール化オリゴヌクレオチド200 μLを金コロイド粒子溶液(ワインレッドケミカル社、或いはBritish BioCell International社)200 μLと混合し、50℃で22時間放置した。次に200 μMのdATPを200 μL添加して6時間放置した後、最終濃度が0.1 M NaCl、10 mM リン酸緩衝液(pH 7.0)とし、更に12時間放置した。その後、5,000 × g、15分間遠心した後、同緩衝液で洗浄し再分散させ、核酸クロマトグラフィーで使用する金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを得た。必要に応じ、0.1% PEG(polyethylene glycol;分子量20,000)を含む同緩衝液を用いた。
なお、上記キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・ET核酸検出用(ETB2-2):5'- GTGCCGCTCACCACACCATT -3' [配列番号57]
【0197】
4.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
ディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・ET核酸検出用(ETA2-2):5'- TCACGACGACGAACGTACGC -3' [配列番号58]
【0198】
5.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
BioDot社製XYXZ300塗布機を用いて、Advanced Microdevice社製ニトロセルロースメンブレン上に、BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを、1.1μg/テスト(1テストは1mmx5mm幅のラインを意味する)になるように塗布し、室温で一晩乾燥することによりディテクションオリゴヌクレオチドを、BSAを介してメンブレン上のテストラインに固定化した。
【0199】
次に2%BSAを加えた0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に、ディテクションオリゴヌクレオチドを固定化したメンブレンを4℃、1晩浸漬させブロッキングを行った。その後、メンブレンを室温で十分に乾燥させた。ディテクションオリゴヌクレオチドが固定化された乾燥済のメンブレンに、Advanced Microdevice社製サンプルパッド、吸水パッドおよび日本ポール社製コンジュゲートパッドを貼り合わせた。貼り合わせたシートをBioDot社ギロチンカッターを用いて5mm幅に切断し、核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップとした(
図1)。
【0200】
6.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノムDNA核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0201】
・ET核酸検出用(ETA3):5'- ACCAGTGGGGAGATCACG -3' [配列番号59]
・ET核酸検出用(ETA4):5'- GATAAACTCGTTACCGGTCA -3' [配列番号60]
・ET核酸検出用(ETB3):5'- AGAACAGCCTGCAGGAGA -3' [配列番号61]
・ET核酸検出用(ETB4):5'- AACTACGTATGGCTGAGCC -3' [配列番号62]
【0202】
7.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で調製したテストストリップを用いた(
図5−1)。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
【0203】
前記で制限酵素処理により調製した細菌(ET、EC)のゲノムDNA断片の溶液10 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(28.6% Formamide、1.43×SSC、0.143% BSA、1.43 mM EDTA、0.143% Dextran Sulfate)を49 μL加え、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に、前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを10 μL添加し、全量をメンブレン(テストストリップ)のサンプルパッド(
図5−1)に滴下した。
なお、対照試験として、マスクオリゴヌクレオチドを用いずに、同様に核酸クロマトグラフィーを行った。
【0204】
8.
結果
制限酵素処理した細菌のゲノムDNA断片の核酸クロマトグラフィーの結果を
図8に示す。
この結果、検出すべき核酸が、細菌のゲノムDNA(PCR産物ではない)であっても、マスク用オリゴヌクレオチドを用いることで標的核酸が高感度で検出された。
【実施例3】
【0205】
細菌ゲノムDNAのマルチプレックスPCRによるPCR産物のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーによる標的核酸の特異的な検出
1.
マルチプレックスPCR用の鋳型ゲノムDNAの調製
血液寒天培地上で、Campylobacter jejuni (菌株ATCC700819)、Campylobacter jejuni (菌株81-176)、Campylobacter coli (菌株ATCC33559)、Campylobacter coli (菌株ATCC43478)、Campylobacter fetus (菌株ATCC27374)、Campylobacter fetus (菌株ATCC19438)、Campylobacter hyointestinalis (菌株ATCC35217)、Campylobacter lari (菌株ATCC43675)およびCampylobacter upsaliensis (菌株ATCC43956株)を37℃、3日間、微好気条件下で培養した。得られた各菌株のコロニーをTEに懸濁し、ボイル法を用いて鋳型ゲノムDNAを調製した。すなわち、懸濁液を沸騰水浴中で10分間煮沸し、氷水上で急冷した後、12,000 × g、10分間遠心した後、上清を分取し、鋳型ゲノムDNAを得た。
また、E. coli (菌株C600)を、BHI液体培地(ベクトンデッキンソン)で一晩培養した後、TEにて10倍希釈し、得られた希釈液からボイル法を用いて同様にして鋳型ゲノムDNAを調製した。
【0206】
2.
マルチプレックスPCRによる核酸増幅
PCRにはTAKARA社のEx Taq DNA Polymeraseを用いた。まず、Ex Taq DNA Polymerase(2.5 U/μL)0.2 μL 、10× Ex Taq Buffer 4 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)3.2 μL、鋳型ゲノムDNA 1 μL、ならびに以下に示す3菌種(Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、およびCampylobacter fetus)のそれぞれの鋳型ゲノムDNA中のcdtC遺伝子に特異的な一対のオリゴヌクレオチドプライマー(10 pmol/μL、各2 μL、合計12 μL)を、滅菌水で40 μLにメスアップし、マルチプレックスPCRを行った。PCRは、Veriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、反応系を94℃で3分間保持した後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間の反応を30サイクル繰り返し、72℃で3分間保持の条件で反応させた。
【0207】
Campylobacter jejuni用のPCRプライマーとして以下に示すCjcdtCU1及びCjcdtCR2を使用した。
・CjcdtCU1:5'- TTTAGCCTTTGCAACTCCTA-3' [配列番号63]
・CjcdtCR2:5'- AAGGGGTAGCAGCTGTTAA -3' [配列番号64]
Campylobacter coli用のプライマーとして以下に示すCccdtCU1及びCccdtCR1を使用した。
・CccdtCU1:5'- TAGGGATATGCACGCAAAAG -3' [配列番号65]
・CccdtCR1:5'- GCTTAATACAGTTACGATAG -3' [配列番号66]
Campylobacter fetus用のプライマーとして以下に示すCfcdtCU2及びCfcdtCR1を使用した。
・CfcdtCU2:5'- AAGCATAAGTTTTGCAAACG -3' [配列番号67]
・CfcdtCR1:5'- GTTTGGATTTTCAAATGTTCC -3' [配列番号68]
【0208】
4.
PCR産物のアガロースゲル電気泳動による判定
マルチプレックスPCRにより増幅したPCR産物は、ミューピッド(アドバンス)を用いたアガロースゲル電気泳動により、2%アガロース(Agarose I、AMRESCO)、1× TAE バッファー[40 mM Tris-HCl (pH 8.0)、40 mM Acetic acid、1.0 mM EDTA]を用いて分離した。電気泳動後は、1 μg/mL エチジウムブロマイド溶液で染色し、染色後のDNAは、ゲルドキュメンテーション解析システムChemiDoc XRS(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて、紫外線下(260 nm)で撮影した。
【0209】
5.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
核酸クロマトグラフィーによる各細菌ゲノムDNAの検出において用いる金コロイド粒子標識オリゴヌクレオチドを、実施例2と同様の方法で調製した。
各細菌の検出用のキャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・Cj核酸検出用(Cj-SH): 5'- CCTTGCACCCTAGATCCTAT-3' [配列番号69]
・Cc核酸検出用(Cc-SH): 5'- TCCTGACTCTAGTATCGCCA -3' [配列番号70]
・Cf核酸検出用(Cf-SH): 5'- TCAGATCGCTCCTAGCGGAT -3' [配列番号71]
【0210】
6.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
100 nmolの5'末端アミノ化オリゴヌクレオチドを含む0.1 M MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)緩衝液400 μLに、3.5 mg/50 μLのEMCS(N-[6-Maleimidocaproyloxy] succinimide)を添加し、37℃で30分間反応させた。反応後、エタノール沈殿法により精製し、5 mM EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、0.1 mM リン酸緩衝液(pH 6.0)に溶解した。マレイミド基が導入されたオリゴヌクレオチドの量を260 nmにおける吸光度より求めた。
【0211】
Sulfhydryl Addition Kit(Thermo scientific)を用いて、BSA(Bovine Serum Albumin)にSATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)を導入した。即ち、2 mgのBSAを溶解した1 mLのPBS(Phosphate buffered saline)に、17.3 mMのSATA溶液を16 μL添加し、室温で30分間反応させた。次に5 mgのHydroxylamine・HClを溶解させたConjugation Buffer Stock(10 X)100 μLを添加し、室温で2時間反応させた。その後、Maleimide Conjugation Bufferに溶媒交換した。回収した溶出液の280 nmにおける吸光度からSH基導入BSAの量を求め、次の反応に用いた。
【0212】
上記で調製したマレイミド基導入オリゴヌクレオチドとSH基導入BSAを混合し、37℃で1時間反応させ、BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを調製した。反応後、Amicon Ultra 30K(ミリポア)を用いて、BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを濃縮し、Quick Start Bradford 1 X Dye Reagent(Bio-Rad)を用いて量を測定した。
【0213】
各細菌の検出用のディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・Cj核酸検出用(Cj-NH): 5'- AGCGCCTTTAGGGATACCTC -3' [配列番号72]
・Cc核酸検出用(Cc-NH): 5'- TAAGCCCTAGGGGCGATGAT -3' [配列番号73]
・Cf核酸検出用(Cf-NH): 5'- ACGCAATGCAAACACCGGAA -3' [配列番号74]
【0214】
6.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノムDNA核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
【0215】
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0216】
・Cj核酸検出用(Cjf1): 5'- GCTTAGAAACGGGAATTTTTTTA -3' [配列番号75]
・Cj核酸検出用(Cjf2): 5'- AAAAGATCCTATTGATCAAAATTGG -3' [配列番号76]
・Cj核酸検出用(Cjg1): 5'- AAAACGCTTTGGAATAGCC-3' [配列番号77]
・Cj核酸検出用(Cjg2): 5'- TTTTTTTGCTGAAGTAAATGAAC-3' [配列番号78]
【0217】
・Cc核酸検出用(Ccf1): 5'- GCCTTTTGGCTATGTTCAGTTTA -3' [配列番号79]
・Cc核酸検出用(Ccf2): 5'- ATATGCCTAGCTGTTTTAAGTGAA -3' [配列番号80]
・Cc核酸検出用(Ccg1): 5'- CAATCAATGCATGAGCACTTT -3' [配列番号81]
・Cc核酸検出用(Ccg2): 5'- TAGAAAATCGCTTTGGTTTAGG -3' [配列番号82]
【0218】
・Cf核酸検出用(Cff1): 5'- CATAACCGACGCTTTTCAAAT -3' [配列番号83]
・Cf核酸検出用(Cff2): 5'- TTCCTATAAATATAAAGCGATTTTCAG -3' [配列番号84]
・Cf核酸検出用(Cfg1): 5'- CCGACGTAAAAATGTGCCT -3' [配列番号85]
・Cf核酸検出用(Cfg2): 5'- TTTTAGCACTAAAAAACTGCAAG -3' [配列番号86]
【0219】
7.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
吸収パッドとしてCellulose Fiber Sample Pad(ミリポア)を装着したニトロセルロースメンブレンであるHi Flow Plus 180 Membrane Card(ミリポア)を約5 mm幅に切断した。ニトロセルロース上の一部(テストライン)に前記で調製した1 mg/mLのBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを1 μLスポットして風乾し、ディテクションオリゴヌクレオチドをBSAを介して固定化し、細菌ごとの核酸クロマトグラフィー用のメンブレン(テストストリップ)を作製した(
図5−1)。
【0220】
8.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で調製した各細菌用のメンブレン(テストストリップ)を用いた。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
【0221】
前記で調製した各細菌に由来するゲノム核酸のマルチプレックスPCRによるPCR産物の溶液10 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(28.6% Formamide、1.43×SSC、0.143% BSA、1.43 mM EDTA、0.143% Dextran Sulfate)を49 μL加え、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に、前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを10 μL添加し、全量をメンブレン(テストストリップ)のサンプルパッド(
図5−1)に滴下した。
【0222】
9.結果
C. jejuni、C. coliおよびC. fetusのcdtC遺伝子を鋳型としてマルチプレックスPCRによるPCR産物のアガロースゲル電気泳動による検出の結果を
図9に示す。
この結果、マルチプレックスPCRにより、3菌種のそれぞれについて、目的とするcdtC遺伝子が増幅されたことが示された。
一方、近縁種である他のカンピロバクター属菌および大腸菌では増幅バンドは検出されなかった。
各細菌それぞれについてのPCR産物を、前記で作製したC. jejuni用の核酸クロマトグラフィー、C. coli用の核酸クロマトグラフィーおよびC. fetus用の核酸クロマトグラフィーに供しところ、それぞれのPCR産物が鮮明に検出された(
図10)。
【実施例4】
【0223】
核酸クロマトグラフィーにおけるマスクオリゴヌクレオチドの効果
1.
PCR用鋳型DNAの調製
ECに対するPCR用の鋳型DNAは、実施例1と同様の方法で調製した。
2.
PCRによる核酸増幅
PCRにはTAKARA社のTakara LA Taqを用いた。まず、Takara LA Taq(5 U/μL)0.2 μL 、10× LA PCR BufferII(Mg
2+ free)2 μL、25 mM MgCl
2 2 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)1.6 μL、鋳型 DNA 1 μL、および一対のオリゴヌクレオチドプライマー(10 pmol/μL)各0.4μLを滅菌水で20 μLにメスアップした。
【0224】
EC用のPCRプライマーとして以下に示すEC2F及びEC2Rを使用した。
・EC2F:5'- CGCATTTTTATTAATGCTTTCG -3' [配列番号87]
・EC2R:5'- GGGCTGGCAGAGAGAGTG -3' [配列番号88]
【0225】
PCRはVeriti 96 well Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で3分間保持した後、94℃で30秒間、60℃で1分間、72℃で1分間の反応を40サイクル繰り返し、72℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0226】
3.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・EC核酸検出用(ECB2):5'- TCGTGGGAACACAACCAGTC - 3' [配列番号89]
【0227】
4.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
ディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・EC核酸検出用(ECA2):5'- GCCTGATAAACTTCCGCCTC - 3' [配列番号90]
【0228】
5.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌由来PCR産物上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチド(ECC3、ECC4)を調製した。
【0229】
また、対照試験用に、前記で調製したEC遺伝子増幅用の一対のオリゴヌクレオチドプライマー(EC2FおよびEC2R)を用いたPCRにより増幅されるPCR産物の核酸配列には含まれない核酸配列を有する2つのコントロールオリゴヌクレオチド(CT7、CT8)を調製した。
【0230】
調製したディテクションオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・ECC3:5'- CAACCAGTTGATGATGGATC -3' [配列番号91]
・ECC4:5'- GCCACTCTCTCTGCCAGC -3' [配列番号92]
・CT7:5'- CGTGAAGATTTTCCATGACC -3' [配列番号93]
・CT8:5'- CATAAACCCGAGGAATAACG -3' [配列番号94]
【0231】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
【0232】
7.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で細菌ごとに調製したテストストリップを用いた(
図5−1)。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
【0233】
前記で調製した各細菌に由来するゲノム核酸のPCR産物の溶液10 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(20% Formamide、1×SSC、0.1% BSA、1 mM EDTA)を90 μL加え、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に、前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを10 μL添加し、全量をメンブレン(テストストリップ)のサンプルパッド(
図5−1)に滴下した。
なお、対照試験として、マスクオリゴヌクレオチドを用いない核酸クロマトグラフィーを行った。
【0234】
8.
結果
各マスクオリゴヌクレオチドを組み合わせて添加した際の核酸クロマトグラフィーの結果を
図11に示す。
マスクオリゴヌクレオチド2種(ECC3+ECC4)或いは1種(ECC4)のみの添加で核酸クロマトグラフィーの発色感度が高まった。
【実施例5】
【0235】
核酸クロマトグラフィーにおける至適マスクオリゴヌクレオチドの検討
1.
PCR用鋳型DNAの調製
SA、SE及びEFに対するPCR用の鋳型DNAは、実施例1と同様の方法で調製した。
【0236】
2.
PCRによる核酸増幅
SA、SE及びEFに対するPCR産物は、実施例1と同様の方法で調製した。
【0237】
3.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例2と同様の方法で調製した。
キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAB):5'- GGCTCATCTTCTAGTGGTGC - 3' [配列番号16]
・SE核酸検出用(SEB):5'- GGCCAAAAGTGAAGACATTG - 3' [配列番号17]
・EF核酸検出用(EFB):5'- ACAAATGGGGCTGGAGGTTC - 3' [配列番号19]
【0238】
4.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例3と同様の方法で調製した。
ディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAA):5'- GCCGTGCTCAATACAGCTCC - 3' [配列番号23]
・SE核酸検出用(SEA):5'- GGACATGATATGGGGGGCAT - 3' [配列番号24]
・EF核酸検出用(EFA):5'- AAGCAGGCTATCGGATTCTC - 3' [配列番号26]
【0239】
5.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
【0240】
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌由来PCR産物上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAB1):5'- TAAAGCGTCGCTTAGAAATAATC -3' [配列番号31]
・SA核酸検出用(SAB2):5'- TAAATCTTCAAGTATTCGTGTAGATG -3' [配列番号32]
・SE核酸検出用(SEB1):5'- GTGATTACATTGACAATTGTTTC -3' [配列番号35]
・SE核酸検出用(SEB2):5'- CAAATGGTTTCAACAAATTAATG -3' [配列番号36]
・EF核酸検出用(EFB1):5'- AATCAATGGGGAAATTTTTTA -3' [配列番号43]
・EF核酸検出用(EFB2):5'- TTTTAATGAGTCAAAGATTAGCGG -3' [配列番号44]
【0241】
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌由来PCR産物上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
調製したディテクションオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAA1):5'- CAGTAATATAATAGTCTTTATCTACACTTTCTAAT -3' [配列番号29]
・SA核酸検出用(SAA2):5'- ACTTGTAGAGACACCCGTTAATACT -3' [配列番号30]
・SE核酸検出用(SEA1):5'- TAAATATCGATTCTGCACATATTTTA -3' [配列番号33]
・SE核酸検出用(SEA2):5'- CATTGCGAGTGAATTTACTG -3' [配列番号34]
・EF核酸検出用(EFA1):5'- GAAGACAACGATTTATGTTTACGCTTTGGCA -3' [配列番号41]
・EF核酸検出用(EFA2):5'- TATACGCCTTTTGAAACGGT -3' [配列番号42]
【0242】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
実施例3と同様の方法で調製した。
【0243】
7.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
実施例3と同様の方法で調製した。
【0244】
8.
結果
各細菌のPCRによる増幅したゲノムDNAの核酸クロマトグラフィーの結果を
図12に示す。
この結果、キャプチャーオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチド、ディテクションオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチドのどちらがより効果的かはPCR産物の配列に依存するものの、どの細菌においても双方のマスクオリゴヌクレオチド添加により最も発色感度が高まった。
【実施例6】
【0245】
核酸クロマトグラフィーにおける至適マスクオリゴヌクレオチドの検討
(本願発明の核酸クロマトグラフィーによる標的核酸の定量の検討、ならびにマスクオリゴヌクレオチドの条件検討)
1.
PCR用鋳型DNAの調製
SA用の鋳型DNAは、実施例1と同様の方法で調製した。
【0246】
2.
PCRによる核酸増幅
SAに対するPCR産物は、実施例1と同様の方法で調製した。
【0247】
3.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例2と同様の方法で調製した。
キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAB):5'- GGCTCATCTTCTAGTGGTGC - 3' [配列番号16]
【0248】
4.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
ディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAA):5'- GCCGTGCTCAATACAGCTCC - 3' [配列番号23]
【0249】
5.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌由来PCR産物上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする以下に示す三対のマスクオリゴヌクレオチドを調製した。
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドに1塩基のギャップもなく隣接したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAB1:5'- TAAAGCGTCGCTTAGAAATAATC -3' [配列番号31]
・SAB2:5'- TAAATCTTCAAGTATTCGTGTAGATG -3' [配列番号32]
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドから5mer離れたマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAB3:5'- CTAAAGCGTCGCTTAGAAA -3' [配列番号95]
・SAB4:5'- CTTCAAGTATTCGTGTAGATGC -3' [配列番号96]
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドから10 mer離れたマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAB5:5'- CGCTAAAGCGTCGCTT -3' [配列番号97]
・SAB6:5'- AGTATTCGTGTAGATGCAT -3' [配列番号98]
【0250】
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌由来PCR産物上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする三対のマスクオリゴヌクレオチドを細菌ごとに調製した。
【0251】
調製したディテクションオリゴヌクレオチドに1塩基のギャップもなく隣接したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAA1:5'- CAGTAATATAATAGTCTTTATCTACACTTTCTAAT -3' [配列番号29]
・SAA2:5'- ACTTGTAGAGACACCCGTTAATACT -3' [配列番号30]
調製したディテクションオリゴヌクレオチドから5mer離れたマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAA3:5'- AAACAGTAATATAATAGTCTTTATCTACACTTT -3' [配列番号99]
・SAA4:5'- TAGAGACACCCGTTAATACTAAATG -3' [配列番号100]
調製したディテクションオリゴヌクレオチドから10 mer離れたマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SAA5:5'- TCTTCTAAAACAGTAATATAATAGTCTTTATCTAC -3' [配列番号101]
・SAA6:5'- ACACCCGTTAATACTAAATGATT -3' [配列番号102]
【0252】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
【0253】
7.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
実施例1と同様の方法で調製した。
検出にはイムノクロマトリーダ(C10066-10、浜松ホトニクス)を用いて発色強度を測定した。隣接したマスクオリゴヌクレオチドを添加した状態で、X軸にPCR産物濃度、Y軸に発色強度を指標として検量線を作成した。また、発色強度の比較のために、一定濃度のPCR産物を用いて5mer或いは10 mer離れたマスクオリゴヌクレオチドを添加した群、及び対照試験として、マスクオリゴヌクレオチドを用いない核酸クロマトグラフィーでの発色強度を測定し、上記検量線から隣接したマスクオリゴヌクレオチド添加時のPCR産物量に換算した。対照試験での発色強度に相当するPCR産物量を1倍とし、各マスクオリゴヌクレオチド添加時の発色強度に相当するPCR産物量から発色感度を算出した。
【0254】
8.
結果
隣接したマスクオリゴヌクレオチド添加時の検量線を
図13に示す。
図に示すように、濃度依存的に発色強度が増し、定量可能であることが示唆された。
また、各マスクオリゴヌクレオチド添加時の発色強度の比較検討を表2に示す。
【0255】
【表2】
【0256】
表に示すように、隣接したマスクオリゴヌクレオチドが最も発色強度が高かったものの、キャプチャー及びディテクションオリゴヌクレオチドから5mer離れたマスクオリゴヌクレオチド添加でも同等の発色強度が得られた。キャプチャー及びディテクションオリゴヌクレオチドから10 mer離れたマスクオリゴヌクレオチド添加では、隣接したマスクオリゴヌクレオチド添加時の発色強度よりは低下したものの、マスクオリゴヌクレオチド無添加時よりは発色強度が高かった。
【実施例7】
【0257】
核酸クロマトグラフィーにおける至適マスクオリゴヌクレオチドの検討
(マスクオリゴヌクレオチドの標的核酸への接触のタイミングの検討)
1.
PCR用鋳型DNAの調製
SA及びSE用の鋳型DNAは、実施例1と同様の方法で調製した。
【0258】
2.
PCRによる核酸増幅
SA及びSEに対するPCR産物は、実施例1と同様の方法で調製した。
【0259】
3.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例2と同様の方法で調製した。
キャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAB):5'- GGCTCATCTTCTAGTGGTGC - 3' [配列番号16]
・SE核酸検出用(SEB):5'- GGCCAAAAGTGAAGACATTG - 3'[配列番号17]
【0260】
4.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例3と同様の方法で調製した。
ディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAA):5'- GCCGTGCTCAATACAGCTCC - 3' [配列番号23]
・SE核酸検出用(SEA):5'- GGACATGATATGGGGGGCAT - 3'[配列番号24]
【0261】
5.
コンジュゲートパッドの調製
5.0%ショ糖を含む2 mMリン酸緩衝液(pH7.2)を用いてマスクオリゴヌクレオチドを4μMとなるように希釈した。その溶液を、10 mm×150 mmのサイズに裁断したグラスファイバー(ミリポア)に塗布した後、乾燥したものをコンジュゲートパッドとした。また対照として、マスクオリゴヌクレオチドを含まない5.0%ショ糖を含む2 mMリン酸緩衝液(pH7.2)を塗布、乾燥したコンジュゲートパッドを調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・SA核酸検出用(SAA1):5'- CAGTAATATAATAGTCTTTATCTACACTTTCTAAT -3' [配列番号29]
・SA核酸検出用(SAA2):5'- ACTTGTAGAGACACCCGTTAATACT -3' [配列番号30]
・SA核酸検出用(SAB1):5'- TAAAGCGTCGCTTAGAAATAATC -3' [配列番号31]
・SA核酸検出用(SAB2):5'- TAAATCTTCAAGTATTCGTGTAGATG -3' [配列番号32]
・SE核酸検出用(SEA1):5'- TAAATATCGATTCTGCACATATTTTA -3' [配列番号33]
・SE核酸検出用(SEA2):5'- CATTGCGAGTGAATTTACTG -3' [配列番号34]
・SE核酸検出用(SEB1):5'- GTGATTACATTGACAATTGTTTC -3' [配列番号35]
・SE核酸検出用(SEB2):5'- CAAATGGTTTCAACAAATTAATG -3' [配列番号36]
【0262】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
吸収パッドとしてCellulose Fiber Sample Pad(ミリポア)を装着したニトロセルロースメンブレンであるHi Flow Plus 180 Membrane Card(ミリポア)に、前記で調製したコンジュゲートパッド及びCellulose Fiber Sample Pad(ミリポア)を貼り合わせ、約5 mm幅に切断した。これに、前記で調製した1 mg/mLのBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドを1 μLスポットして風乾し、ディテクションオリゴヌクレオチドをBSAを介して固定化し、核酸クロマトグラフィー用のメンブレン(テストストリップ)を作製した。
【0263】
7.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
前記で調製したPCR産物或いはTEの溶液10 μLに、4 μMのマスク用オリゴヌクレオチド或いはTEを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(28.6% Formamide、1.43×SSC、0.143% BSA、1.43 mM EDTA)を49 μL加え、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に、前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを10 μL添加し、全量をメンブレン(テストストリップ)のサンプルパッドに滴下した。
【0264】
8.
結果
図14に示すように、標的PCR産物と金コロイド標識プローブをアプライし、コンジュゲートパッドでマスクオリゴを反応させたケースにおいても、マスクオリゴの効果が発揮され、強い発色が見られた。
【実施例8】
【0265】
ハイブリイゼーション-ELISAによる、オリゴヌクレオチドプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションのマスクオリゴヌクレオチドによる促進効果の検討
1.
PCR用鋳型DNAの調製
QIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN)を用いて、ヒト血液から、ヒトβ-globin遺伝子を含むゲノムDNAを調製した。
また、ボイル法を用いて、大腸菌(Escherichia coli、以下EC)から鋳型ゲノムDNAを調製した。
即ち、大腸菌(Escherichia coli、以下「EC」と略記; 菌株JCM1649)を3 mLのLB液体培地(ベクトンデッキンソン)で一晩培養した後、被検菌液50 μLをTE バッファー [10 mM Tris-HCl(pH 8.0)、1mM Ethylenediamine tetraacetic acid(EDTA)] 450 μLに加え、10分間100℃処理した。100℃処理後、12,000 × g(MX-160、TOMY)、10分間遠心し上清を回収し、鋳型DNAとして得た。
【0266】
2.
PCRによる核酸増幅
まず、ヒトβ-globin遺伝子に対するPCRにおいて、Takara Taq(5 U/μL)0.25 μL 、10×PCR Buffer(Mg
2+ plus)5 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)4 μL、鋳型 DNA 1 μL、および以下に示すヒトβ-globin遺伝子増幅用の一対のオリゴヌクレオチドプライマー(GM1FおよびGM1R;それぞれ10 pmol/μL)各5 μLを滅菌水で50 μLにメスアップした。
なお、プライマーGM1Rは、5'末端をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されている。
【0267】
・GM1F:5'- GGTTGGCCAATCTACTCCCAGG -3' [配列番号103]
・GM1R:5'- FITC-TGGTCTCCTTAAACCTGTCTTG -3' [配列番号104]
【0268】
PCRはVeriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で3分間保持した後、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を35サイクル繰り返し、72℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0269】
次に、ECのゲノムDNAに対するPCRにおいて、Takara LA Taq(5 U/μL)0.5 μL 、10× LA PCR Buffer II(Mg
2+ free)5 μL、25 mM MgCl
2溶液 5 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)4 μL、鋳型 DNA 1 μL、および以下に示すECのゲノムDNA増幅用の一対のオリゴヌクレオチドプライマー(EC2RおよびEC2F;それぞれ10 pmol/μL)各5 μLを滅菌水で50 μLにメスアップした。
なお、プライマーEC2Fは、5'末端をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されている。
【0270】
・EC2F:5'- FITC-GTCAGGTAAGGCTAATTTCATTACCAGCAAAGG-3' [配列番号105]
・EC2R:5'- CGGTCAGCCATAGGGTAAATGACCAC-3' [配列番号106]
【0271】
PCRはVeriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で3分間保持した後、98℃で10秒間、68℃で1分30秒間の反応を40サイクル繰り返し、68℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0272】
3.
PCR産物のアガロースゲル電気泳動による判定
増幅したPCR産物はQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した後、ミューピッド(アドバンス)を用いたアガロースゲル電気泳動により、2%アガロース(Agarose I、AMRESCO)、1× TAE バッファーを用いて分離した。
電気泳動後は、1 μg/mL エチジウムブロマイド溶液で染色し、染色後のDNAは、ゲルドキュメンテーション解析システムChemiDoc XRS(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて、紫外線下(260 nm)で撮影した。
【0273】
4.
ハイブリダイゼーション-ELISAに用いるマイクロプレートの作製
ヒトβ-globin遺伝子の核酸にハイブリダイズするビオチンで標識されたキャプチャーオリゴヌクレオチド(GMA)を調製した。
・GMA:5'-Biotin- ATGGTGCACCTGACTCCTGA -3' [配列番号107]
図4−8に模式的に示すように、該ビオチン標識キャプチャーオリゴヌクレオチド(GMA)を、ストレプトアビジンでコートされたマイクロプレート(NUNC IMMOBILIZER STREPTAVIDIN F96、NUNC)に加え、プレートに固相化した。
【0274】
5.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチド(GMA)がハイブリダイズするヒトβ-globin遺伝子の核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチド(GMA1、GMA2)を調製した。
【0275】
また、対照試験用に、前記で調製したヒトβ-globin遺伝子増幅用の一対のオリゴヌクレオチドプライマー(GM1FおよびGM1R)を用いたPCRにより増幅されるPCR産物の核酸配列には含まれない核酸配列を有する2つのコントロールオリゴヌクレオチド(CT5、CT6)を調製した。
【0276】
・GMA1:5'- AGCAACCTCAAACAGACACC-3' [配列番号108]
・GMA2:5'- GGAGAAGTCTGCCGTTACTG-3' [配列番号109]
・CT5:5'- GGTCAGCCATAGGGTAAATGAC-3' [配列番号110]
・CT6:5'- TTATGATGTCAGAGGTCATGG-3' [配列番号111]
【0277】
6.
ハイブリダイゼーション-ELISAによる核酸の検出
まずTEバッファーまたはQIAquick PCR Purification Kit により精製したPCR産物2.5 μL(0.4 μM)に、5 μMの一対のマスクオリゴヌクレオチドまたは5 μMのコントロールオリゴヌクレオチドをそれぞれ1 μL、または対照として、TEバッファー2 μLを添加し、10 μL の125 mM NaOHを加え5分間変性させた。
【0278】
次に50 mMリン酸バッファー(pH 7.0)を100 μL加えて混和した後、全量をマイクロプレートに添加し、37℃で1時間反応させた。次に37℃に温めた300 μLの2 x SSCT(300 mM NaCl、30 mM クエン酸ナトリウム、0.05% Tween20)による洗浄を3回繰り返し、PBST(0.05% Tween20含PBS)で50,000倍希釈したHRP標識抗FITC抗体(ロックランド)を100 μL添加し、室温で30分間反応させた。反応後、300 μLのPBSTによる洗浄を3回繰り返し、100 μLのTMB溶液(KPL)を添加して室温で10分間の反応後、100 μLの1 Mリン酸で反応を停止させ、プレートリーダー680XR(Bio-Rad)を用いて450 nmの吸光度を測定した。
【0279】
7.
結果
それぞれのPCR産物のアガロースゲル電気泳動での検出の結果を
図15に示す。
ヒトβ-globin遺伝子増幅用のプライマーを用いたPCRでは目的とする262 bpのPCR産物が検出された。また、ECゲノムDNAの増幅用のプライマーを用いたPCRでは目的とする309 bpのPCR産物が検出された。
それぞれのPCR産物のハイブリダイゼーション-ELISAによる検出の結果を以下の表3に示す。
【0280】
マスクオリゴヌクレオチドを用いない場合のヒトβ-globin遺伝子のPCR産物の吸光度は、0.473±0.036であったのに対し、PCR産物の変性時にマスクオリゴヌクレオチドを添加しておくことで、吸光度は約1.5倍の0.739±0.037に上昇した。
また、マスクオリゴヌクレオチドのみでのアッセイ、およびヒトβ-globin遺伝子のPCR産物の代わりにE. coli由来のゲノムDNAのPCR産物にマスクオリゴヌクレオチドを加えて行ったアッセイでは、吸光度はいずれも低い値を示した。
【0281】
さらに、ヒトβ-globin遺伝子のPCR産物の核酸配列には含まれない核酸配列を有するコントロールオリゴヌクレオチド(CT5、CT6)を添加したアッセイにおける吸光度は、マスクオリゴヌクレオチドを加えないで行ったアッセイにおける吸光度と同様に低い値を示した。
この結果、マスクオリゴヌクレオチドを用いることで、ハイブリダイゼーション-ELISAにおける標的核酸の検出感度が増大することが明らかとなった。
【0282】
【表3】
【実施例9】
【0283】
各種の細菌のrRNA遺伝子の16Sサブユニットを標的としたPCR産物のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーによる検出
1.
PCR用鋳型DNAの調製
各種の細菌のPCR用の鋳型DNAは、菌の沈渣を作製し、実施例1と同様の方法で調製した。また、陰性対照試験として、各種の真菌についても同様にて、PCR用の鋳型DNAを調製した。
【0284】
使用した菌株を培養方法ごとに以下に記す。
(1)BHI液体培地で通常大気下、37℃で培養
Staphylococcus aureus(菌株ATCC 12600);
Staphylococcus epidermidis(菌株ATCC 14990);
Pseudomonas aeruginosa(菌株ATCC 10145);
Enterococcus faecalis(菌株ATCC 19433);
Escherichia coli(菌株ATCC 11775);
Enterobacter cloacae(菌株JCM 1232);
Klebsiella pneumoniae(菌株JCM 1662);
Burkholderia cepacia(菌株JCM 5507);
Stenotrophomonas maltophilia(菌株JCM 1975);
Acinetobacter baumannii(菌株ATCC 17978);
Pseudomonas fluorescens(菌株JCM 5963);
Pseudomonas putida(菌株JCM 6157);
Pseudomonas stutzeri(菌株JCM 5965);
Citrobacter freundii(菌株JCM 1657);
Citrobacter koseri(菌株JCM 1659);
Edwardsiella tarda(菌株JCM 1656);
Enterobacter aerogenes(菌株JCM 1235);
Enterobacter amnigenus(菌株JCM 1237);
Hafnia alvei(菌株JCM 1666);
Klebsiella oxytoca(菌株JCM 1665);
Kluyvera intermedia(菌株JCM 1238);
Morganella morganii(菌株JCM 1672);
Pantoea agglomerans(菌株JCM 1236);
Proteus mirabilis(菌株JCM 1669);
Proteus vulgaris(菌株JCM 20339);
Providencia rettgeri(菌株JCM 1675);
Serratia liquefaciens(菌株JCM 1245);
Serratia marcescens(菌株ATCC 274);
Staphylococcus haemolyticus(菌株JCM 2416);
Staphylococcus hominis(菌株ATCC 27844);
Staphylococcus saprophyticus(菌株JCM 2427);
Enterococcus avium(菌株JCM 8722);
Enterococcus durans(菌株IFO 13131);
Enterococcus faecium(菌株JCM 5804);
Corynebacterium diphtheriae(菌株JCM 1310);および
Micrococcus luteus(菌株JCM 1464)
【0285】
(2)BHI液体培地で通常大気下、30℃で培養
Sphingobacterium multivorum(菌株IFO 14947);
Brevundimonas diminuta(菌株IFO 14213);
Achromobacter xylosoxidans(菌株IFO 15126);
Alcaligenes faecalis(菌株JCM 20522);
Chromobacterium violaceum(菌株IFO 12614);
Acinetobacter calcoaceticus(菌株JCM 6842);
Vibrio vulnificus(菌株JCM 3725);
Aeromonas hydrophila(菌株JCM 1027);
Aeromonas sobria(菌株JCM 2139);
Salmonella enterica(菌株IFO 3313);
Bacillus cereus(菌株IFO 15305);および
Bacillus subtilis(菌株JCM 1465)
【0286】
(3)BHI寒天培地で嫌気下、37℃で培養
Bacteroides fragilis(菌株JCM 11019);
Bacteroides thetaiotaomicron(菌株JCM 5827);
Bacteroides vulgatus(菌株JCM 5826);
Porphyromonas asaccharolytica(菌株JCM 6326);
Porphyromonas gingivalis(菌株JCM 8525);
Prevotella intermedia(菌株JCM 12248);
Fusobacterium necrophorum subsp funduliforme(菌株JCM 3724);
Lactobacillus acidophilus(菌株JCM 1132);
Lactobacillus fermentum(菌株JCM 1173);
Clostridium difficile(菌株JCM 1296);
Clostridium perfringens(菌株JCM 1290);
Peptoniphilus asaccharolyticus(菌株JCM 1765);
Eggerthella lenta(菌株JCM 9979);および
Propionibacterium acnes(菌株JCM 6425)
【0287】
(4)血液寒天培地で5% CO
2下、37℃で培養
Capnocytophaga canimorsus(菌株ATCC 35979);
Streptococcus agalactiae(菌株JCM 5671);
Streptococcus pneumoniae(菌株ATCC 33400);
Streptococcus pyogenes(菌株JCM 5674);および
Streptococcus sanguinis(菌株JCM 5708)
(5)チョコレート寒天培地で5% CO
2下、37℃で培養
Neisseria lactamica(菌株ATCC 23970);
Neisseria meningitidis(菌株ATCC 13077);および
Haemophilus influenzae(菌株ATCC 33391)
【0288】
(6)BCYE寒天培地で5% CO
2下、37℃で培養
Legionella pneumophila(菌株JCM 7571)
(7)血液寒天培地で微好気下、37℃で培養
Campylobacter jejuni(菌株ATCC700819)
(8)血液寒天培地で通常大気下、37℃で培養
Corynebacterium jeikeium(菌株JCM 9384)
(9)BHI寒天培地で5% CO
2下、37℃で培養
Gardnerella vaginalis(菌株JCM 11026)
【0289】
(10)YPD液体培地で通常大気下、30℃で培養(陰性対照試験用の真菌)
Candida albicans(菌株IFO 1385);
Candida glabrata(菌株NBRC 0622);
Candida krusei(菌株IFO 1395);
Candida parapsilosis(菌株IFO 1396);
Candida tropicalis(菌株IFO 1400);
Aspergillus fumigatus(菌株TIMM 0063);および
Cryptococcus neoformans(菌株TIMM 0354)
(11)BHI寒天培地で通常大気下、30℃で培養(陰性対照試験用の真菌)
Trichosporon cutaneum(菌株JCM 1462)
【0290】
2.
PCRによる核酸増幅
PCRにはTAKARA社のPrimeSTAR HS DNA Polymeraseを用いた。まず、PrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5 U/μL)0.2 μL 、5× PrimeSTAR Buffer(Mg
2+ plus)4 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)1.6 μL、鋳型 DNA 0.1ng、一対のオリゴヌクレオチドプライマー(10 pmol/μL)各0.4μLを滅菌水で20 μLにメスアップした。
以下のPCRプライマーを調製、使用した。
・16S-10F:5'- GTTTGATCCTGGCTCA -3' [配列番号112]
・16S-800R:5'- TACCAGGGTATCTAATCC -3' [配列番号113]
PCR反応は、「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」(日本薬局方参考情報)に準じて実施した。
PCRは、Veriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で1分間保持した後、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を30サイクル繰り返し、72℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0291】
3.
PCR産物のアガロースゲル電気泳動による判定
実施例1と同様の方法で実施した。
【0292】
4.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例2と同様の方法で実施した。
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・16S rDNA検出用:5'- GCAGCAGTAGGGAATCTTCG-3' [配列番号114]
【0293】
5.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例3と同様の方法で調製した。
BSAと結合させるディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・16S rDNA検出用:5'- CACACTGGAACTGAGACACG -3' [配列番号115]
【0294】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
実施例3と同様の方法で調製した。
前記において、BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドをメンブレンに固定化し、5mm幅に切断し、核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップとした(
図5−1)。
【0295】
7.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを調製した。
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする細菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0296】
ディテクションオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチド(M1')
・16S rDNA検出用:5'- TGGTCTGAGAGGATGATCAGT -3' [配列番号116]
ディテクションオリゴヌクレオチド用且つキャプチャーオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチド(M2'および M3')
・16S rDNA検出用:5'- GTCCAGACTCCTACGGGAG-3' [配列番号117]
【0297】
キャプチャーオリゴヌクレオチド用マスクオリゴヌクレオチド(M4')
・16S rDNA検出用:5'- ACAATGGGCGAAAGCCT -3' [配列番号118]
【0298】
8.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で細菌ごと、および真菌ごとに調製したテストストリップを用いた。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
【0299】
前記で調製した各細菌および各真菌に由来するゲノム核酸のPCR産物の溶液1.25 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(24% Formamide、1×SSC、0.1% BSA、1 mM EDTA、0.5M グアニジン塩酸塩)を30 μL、TEを加え全量を70μLにし、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを5 μL添加した。この溶液にテストストリップを浸し核酸クロマトグラフィーを行った。
【0300】
9.
結果
各細菌及び各真菌それぞれのゲノムDNAを鋳型とするPCR産物を核酸クロマトグラフィーで検出した結果を表4および
図16(表4に示した各種の菌種の一部)に示す。
この結果、マスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーにより、試験した全ての細菌について、検出すべき標的核酸(rRNA遺伝子の16Sサブユニット)が高感度で検出された。一方、陰性対照試験として実施したいずれの真菌についても、試験結果は陰性であった。
【0301】
【表4】
【実施例10】
【0302】
各種の真菌ゲノムDNAのPCR産物のマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーによる検出
1.
PCR用鋳型DNAの調製
PCR用の鋳型DNAは、ZR Fungal/Bacterial DNA MiniPrep(ZYMO RESARCH)を用いてゲノムDNAとして調製した。
即ち、以下の各真菌を、それぞれを3 mLのYPD液体培地(Q-Biogene)で30℃一晩培養して得た被検菌液1 mLを6,000 × gで3分間遠心後、沈渣を500 μLのPBSで懸濁した後、6,000 × gで3分間遠心し沈渣を回収した。
Candida albicans(「CA」と略記する;菌株NBRC1385);
Candida glabrata(「CG」と略記する;菌株NBRC0005);
Candida krusei(「CK」と略記する;菌株NBRC0011);
Candida parapsilosis(「CP」と略記する;菌株NBRC1396);
Candida tropicalis(「CT」と略記する;菌株NBRC1400);
Candida guilliermondii(「CGu」と略記する;菌株NBRC0566);
Candida kefyr(「CKf」と略記する;菌株NBRC0586);
Candida lusitaniae(「CL」と略記する;菌株ATCC66035);および
Candida metapsilosis(「CM」と略記する;菌株NBRC0640)
【0303】
各試料に、酵素試薬(Zymolyase 20T(SEIKAGAKU)5 mgを含むPBS 1 mL)300 μL加えて溶解した後、37℃で1時間反応させた。
450 μLのLysis Bufferを加えて混和後、ZR BashingBead Lysis Tubeへ移し、Vortex により5分間混和し、10,000 × g、4℃、1分間遠心した。上清400 μLをZymo Spin IV spin filter に移し、7,000 × gで1分間遠心した。
ろ液に1200 μL のFungal/Bacterial DNA Binding Buffer を加え混合し、混合液800 μL をZymospin IIC Column に移し、10,000 × gで1分間遠心した。残りの混合液800 μL をZymospin IIC Column に移し、10,000 × gで1分間遠心した。Zymospin IIC Column を 新しいCollection tube に移し、200 μL のDNA Pre wash Bffer を加え10,000 × gで1分間遠心した。500 μL のFungal/Bacterial DNA wash Bffer を加え10,000 × gで1分間遠心した。Zymospin IIC Column を 新しいエッペンチューブに移し、80 μL のDNA Elution Bffer を加え1 分間置き、10,000 × gで30秒間遠心し、ろ液を鋳型DNAとした。
【0304】
2.
PCRによる核酸増幅
PCRにはTAKARA社のPrimeSTAR HS DNA Polymeraseを用いた。まず、PrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5 U/μL)0.2 μL 、5× PrimeSTAR Buffer(Mg
2+ plus)4 μL、dNTP Mixture(各2.5 mM)1.6 μL、鋳型 DNA 0.1ng、一対のオリゴヌクレオチドプライマー(10 pmol/μL)各0.4μLを滅菌水で20 μLにメスアップした。
以下のPCRプライマーを調製、使用した。
・ITS1F:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCGT -3' [配列番号119]
・ITS1R:5'- CGTTCTTCATCGATG -3' [配列番号120]
PCR反応は、「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」(日本薬局方参考情報)に準じて実施した。
PCRはVeriti Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用い、94℃で1分間保持した後、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を30サイクル繰り返し、72℃で5分間保持の条件で反応させた。
【0305】
3.
PCR産物のアガロースゲル電気泳動による判定
実施例1と同様の方法で実施した。
【0306】
4.
金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドの調製
実施例2と同様の方法で実施した。
調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・ITS1検出用:5'- AGGTGAACCTGCGGAAGGAT -3' [配列番号121]
【0307】
5.
BSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
調製したBSAと結合させるディテクションオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
・CA核酸検出用:5'- TTGGCGGTGGGCCCAGCCTG -3' [配列番号122]
・CG核酸検出用:5'- CACACGACTCGACACTTTCT -3' [配列番号123]
・CK核酸検出用:5'- CTACACTGCGTGAGCGGAAC -3' [配列番号124]
・CP核酸検出用:5'- TGGTAGGCCTTCTATATGGG -3' [配列番号125]
・CT核酸検出用:5'- TCTTTGGTGGCGGGAGCAAT -3' [配列番号126]
【0308】
6.
核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップの調製
実施例1と同様の方法で調製した。
前記において、真菌ごとに調製したBSA結合ディテクションオリゴヌクレオチドをメンブレンに固定化、5mm幅に切断し、核酸クロマトグラフィーに用いるテストストリップとした(
図5−1)。
【0309】
7.
マスクオリゴヌクレオチドの調製
前記で調製したキャプチャーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする真菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを真菌ごとに調製した。
同様に、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする真菌ゲノム核酸上の領域を挟んで位置する5'側および3'側のそれぞれの領域にハイブリダイズする一対のマスクオリゴヌクレオチドを真菌ごとに調製した。
調製したマスクオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。
【0310】
・CA核酸検出用:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCG -3'[配列番号119]
(前記のオリゴヌクレオチドITS1Fと同一配列)
・CA核酸検出用(CAA2):5'- CATTACTGATTTGCTTAATTGCAC -3'[配列番号127]
・CA核酸検出用:5'- GTTTTTCTTTGAAACAAACTTGCT -3'[配列番号128]
・CA核酸検出用:5'- CCGCCAGAGGTCTAAACTTAC -3'[配列番号129]
【0311】
・CG核酸検出用:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCG -3'[配列番号119]
(前記のオリゴヌクレオチドITS1Fと同一配列)
・CG核酸検出用:5'- CATTACTGATTTGCTTAATTGCAC -3'
[配列番号127]
(前記のオリゴヌクレオチドCAA2と同一配列)
・CG核酸検出用:5'- TTCCAAAGGAGGTGTTTTAT -3'[配列番号130]
・CG核酸検出用:5'- AATTACTACACACAGTGGAGTTTAC -3'[配列番号131]
【0312】
・CK核酸検出用:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCG -3' [配列番号119]
(前記のオリゴヌクレオチドITS1Fと同一配列)
・CK核酸検出用:5'- CATTACTGATTTGCTTAATTGCAC -3'
[配列番号127]
(前記のオリゴヌクレオチドCAA2と同一配列)
・CK核酸検出用:5'- GAAAACAACAACACCTAAAATG -3' [配列番号132]
【0313】
・CP核酸検出用:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCG -3[配列番号119]
(前記のオリゴヌクレオチドITS1Fと同一配列)
・CP核酸検出用:5'- CATTACAGAATGAAAAGTGCTTAAC -3[配列番号133]
・CP核酸検出用:5'- TCTTTTTTTGAAAACTTTGCTT -3'[配列番号134]
・CP核酸検出用:5'- GCCTGCCAGAGATTAAACTC -3'[配列番号135]
【0314】
・CT核酸検出用:5'- GTAACAAGGT(T/C)TCCG -3[配列番号119]
(前記のオリゴヌクレオチドITS1Fと同一配列)
・CT核酸検出用:5'- CATTACTGATTTGCTTAATTGCAC -3'
[配列番号127]
(前記のオリゴヌクレオチドCAA2と同一配列)
・CT核酸検出用:5'- CACATGTGTTTTTTATTGAACAAATT -3'
[配列番号136]
・CT核酸検出用:5'- CCTACCGCCAGAGGTTATAA -3'[配列番号137]
【0315】
8.
核酸クロマトグラフィーによる核酸の検出
核酸クロマトグラフィーには、前記で真菌ごとに調製したテストストリップを用いた。テストラインには、前記で調製したディテクションオリゴヌクレオチドがBSAを介して固定化されている。
前記で調製した各真菌に由来するゲノム核酸のPCR産物の溶液1.25 μLに、それぞれ4 μMのマスク用オリゴヌクレオチドを1 μL添加し、核酸クロマトグラフィー用展開バッファー(20% Formamide、1×SSC、0.1% BSA、1 mM EDTA、0.5M グアニジン塩酸塩)を30 μL、TEを加え全量を65μLにし、95℃で5分間処理した後4℃で急冷した。その後、溶液に前記で調製した金コロイド粒子標識キャプチャーオリゴヌクレオチドを5 μL添加した。この溶液にテストストリップを浸し核酸クロマトグラフィーを行った。
【0316】
9.
結果
各真菌それぞれのゲノムDNAを鋳型とするPCR産物のアガロースゲル電気泳動による検出結果を
図17に、また核酸クロマトグラフィーの結果を
図18に示す。
この結果、全ての真菌について、目的とするゲノムDNAがPCRにより増幅され、そのPCR産物(標的核酸)をマスクオリゴヌクレオチドを用いた核酸クロマトグラフィーにより高感度で特異的に検出できることが示された。