【解決手段】アーム2の一方の端に、プリントヘッド部8と、ワーク10との接触面にローラ604、605が設置されたヘッド取付部6とを有する印刷ユニット5が取り付けられ、アーム2の他方の端はアーム支持部3に回転可能に支持されている。アーム支持部3には、アーム2にトルクを付与するトルク発生手段320が搭載され、そのトルク発生手段320によってアーム2に付与されるトルクにより、印刷ユニット5を、搬送装置によって搬送中のワーク10に押し付ける。ヘッド取付部6に設置されたローラ604、605をワーク10に当接させながら、ワーク10の搬送に従い、印刷ユニット5を、印刷対象物10の側面のうち印刷ユニット5と対向する前面に沿って移動させながらワーク10の前面に印刷を行う。
前記ヘッド取付部の側面のうち前記印刷対象物と接触する面には、前記ヘッド取付部のケースを保護する保護板が取付けられている、請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置。
前記ローラの表面には、垂直方向の位置が前記プリントヘッドのインク吐出面と重なる部分を除いて、円筒状のライニングが装着されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1の
図1に示されるように、インクジェットによる印刷は、コンベア等の搬送装置上を、印刷対象物が所定の速度(一定速度とは限らない)で搬送されているのに対し、プリントヘッドは、搬送装置の側方に設置されており、プリントヘッドに対して印刷対象物が相対的に移動することを利用して印刷が行われる。従って、インクジェットを用いて印刷できるのは、搬送装置による搬送方向と平行の面に対してのみである。
【0009】
インクジェット装置による印刷は非接触にて行われるが、印刷精度を高めるためには、プリントヘッドと印刷対象物との距離を一定に保つ必要がある。具体的には、特許文献2に示すように、搬送装置上を搬送される印刷対象物の位置ずれや蛇行を防止するための搬送安定化機構を設ける必要がある。
【0010】
また、印刷量を増やすためには、前述したようにプリントヘッドの設置台数を増やして、印刷対象物の側面の上下または両側面に印刷することとなる。これは、搬送装置を使用する限り、搬送方向と平行な面にしか印刷されず、搬送方向と垂直な面への印刷は難しいからである。
【0011】
搬送装置による搬送方向と垂直に位置する面に印刷を行うためには、以下のいずれかの方法を採用する必要がある。
A.手動であるか自動であるかを問わず、搬送装置に載置された印刷対象物の向きを変更する。
B.2つの搬送装置を直角(L字状)に位置するように設置し、第1の搬送装置の搬送方向と直交する面を、第2の搬送装置の搬送方向と平行となる面にする。
C.搬送装置を一時停止し、プリントヘッドを動かして搬送方向と直交する面に印刷する。
【0012】
しかし、Aの方法は、手動、自動に関わらず追加の手間を要し、Bの方法は、搬送装置を直交する二方向に設置する場所を要し、Cの方法は、搬送装置を停止する時間を要し、それぞれ問題がある。さらに、上記A、B、Cのいずれの方法においても、直交する2つの側面に印刷するためには、2つ以上のプリントヘッドが必要であり、コスト面でも問題がある。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みて成されたもので、搬送装置を停止させることなく、かつ1つのプリントヘッドを用いて、直交する2つの側面に連続して印刷することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明にかかる印刷装置は、
印刷対象物の表面にインクを吐出して印刷を行うプリントヘッド部、および前記印刷対象物との接触面にローラが設置されたヘッド取付部を有する印刷ユニットと、
一方の端に前記印刷ユニットが水平面内での回転が可能な状態で取付けられたアームと、
前記搬送装置の近傍に設置され、前記アームの他方の端を、水平面内での回転が可能な状態で支持するアーム支持部と、を備え、
前記アーム支持部には、前記アームにトルクを付与するトルク発生手段が搭載され、当該トルク発生手段によって前記アームに付与されるトルクにより、前記印刷ユニットを、搬送中の前記印刷対象物に押し付けると共に、
前記ローラを前記印刷対象物に当接させながら、前記印刷対象物の搬送に従い、前記印刷ユニットを前記印刷対象物の側面のうち前記印刷ユニットと対向する前面に沿って移動させ、
前記印刷ユニットの移動中に、前記プリントヘッド部を用いて前記印刷対象物の前面に印刷を行うことを特徴とする。
【0015】
もしくは、本発明にかかる印刷装置は、上述の印刷ユニット、アームおよびアーム支持部を備えた印刷装置において、
前記アーム支持部には、前記アームにトルクを付与するトルク発生手段が搭載され、当該トルク発生手段によって前記アームに付与されるトルクにより、前記印刷ユニットを、搬送中の前記印刷対象物に押し付けると共に、
前記ローラを前記印刷対象物に当接させながら、前記印刷対象物の搬送に従い、前記印刷ユニットを前記印刷対象物の側面に沿って移動させ、
前記印刷ユニットの移動中に、前記プリントヘッド部を用いて前記印刷対象物の側面のうち隣接する2つの側面に連続して印刷を行うことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記印刷ユニットは、更に軸周りに揺動する揺動部を有し、
前記ヘッド取付部は、前記揺動部を介して前記アームに取付けられ、
当該揺動部は、前記ヘッド取付部に外力が加わらないとき、前記アームに対して常に同じ姿勢を維持するように構成されていることが好ましい。
【0017】
前記ヘッド取付部には、前記ローラの回転量を検出するエンコーダが搭載され、前記プリントヘッド部によるインクの吐出を制御するコントローラは、前記エンコーダによって検出された回転量に基づいてインク吐出のタイミングを制御することが好ましい。また前記ローラの回転軸と前記エンコーダの回転軸はベルトによって連結されていることが好ましい。
【0018】
前記アーム支持部には、更に、前記アームの回転範囲を規制する規制手段が搭載されていることが好ましい。また前記ヘッド取付部の側面のうち前記印刷対象物と接触する面には、前記ヘッド取付部のケースを保護する保護板が取付けられていることが好ましい。
【0019】
前記アーム支持部の高さを調整する高さ調整部を更に備えることが好ましい。また前記ローラの表面には、垂直方向の位置が前記プリントヘッドのインク吐出面と重なる部分を除いて、円筒状のライニングが装着されていることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる印刷装置において、前記プリントヘッド部は、前記ヘッド取付部のケースの上面に、第1の取付金具を用いて取り付けられ、かつ前記揺動部は前記ケースの下方に配置されていてもよい。もしくは、前記プリントヘッド部は、前記ヘッド取付部のケースの下面に、第2の取付金具を用いて取り付けられ、かつ前記揺動部は前記ケースの上方に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる印刷装置を用いれば、印刷対象物の載置方向や搬送装置を変更することなく、また搬送装置を停止させることなく、1つのプリントヘッドを用いて、印刷対象物の直行する2つの側面に連続して印刷ができるため、コストをかけることなく印刷対象物への印刷量を増やすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかる印刷装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態を様々に変更できる。
【0024】
(実施の形態1)
<印刷装置の機構系の構成>
図1に、本発明の実施の形態1にかかる印刷装置の機構系の構成部材と待機状態における配置を示す。印刷装置1は、アーム2、アーム支持部3、高さ調整部4および印刷ユニット5で構成されている。
【0025】
アーム2は中間部が約90度折れ曲がった状態で湾曲しており、一方の端には、印刷ユニット5が、水平面内での回転が可能な状態で取付けられ、他方の端は、水平面内での回転が可能な状態でアーム支持部3に支持されている。アーム支持部3は、搬送装置であるベルトコンベア(以降、「コンベア」と略す)の近傍に設置された台座402上に、高さ調整部4を介して設置されている。
【0026】
印刷ユニット5は、コンベア11の搬送経路上に配置されており、コンベア11によって搬送された印刷対象物(以降、「ワーク」という)10に当接する。印刷ユニット5は、ヘッド取付部6、揺動部7およびプリントヘッド部8を備えている。
【0027】
ヘッド取付部6は、アーム2の先端に取付けられた揺動部7の上に搭載されており、ワーク10との接触によって印刷ユニット5に外力が加わった場合、軸を中心に回転して、印刷ユニット5の側面がワーク10に密着する。
【0028】
ヘッド取付部6の上部にはプリントヘッド部8が取り付けられており、ヘッド取付部6がワーク10に当接したときに、複数の吐出孔からインクを吐出して、ワーク10の側面に印刷を行う。
【0029】
一方、アーム支持部3には、トルク発生手段であるエアシリンダ310(
図3参照)が搭載されている。エアシリンダ310はアーム2にトルクを付与するもので、アーム2の先端に取り付けられた印刷ユニット5が、コンベア11によって搬送されるワーク10に当接したときに、印刷ユニット5をワーク10に押し付けるように作用する。
【0030】
上述したように、アーム2はエアシリンダ320によって常に反時計回りのトルクが付与されているが、待機状態においては、後述するストッパー330(
図3参照)の作用により、
図1に示す位置に保持される。同様にヘッド取付部6は、プリントヘッド部8がワーク10を向いた状態に保持されている。
【0031】
揺動部7は、印刷ユニット5がワーク10に当接したとき、ワーク10に押されて回転するが、待機状態では、後述するカム機構の働きにより、アーム2に対して常に同じ姿勢(角度)を維持する。従って、待機状態では、アーム2と印刷ユニット5は、
図1に示す位置および姿勢に保持される。
【0032】
ワーク10の印刷面の高さは、高さ調整部4を用いてアーム支持部3の高さを調整することにより変えることができる。作業者が高さ調整部4のハンドル401を回転させると、アーム支持部3が上下方向に移動して、プリントヘッド部8の高さを調整できる。
【0033】
本発明の印刷装置1を用いて印刷を行うワーク10は、コンベア11による搬送中に印刷ユニット5が側面に当接し、またアーム2に付与されたトルクによって印刷ユニット5が押し付けられことから、ある程度の固さを持った立体物である必要がある。ワーク10は、
図1に示されるような六面体に限定されず、多角柱や円柱であっても構わない。代表的なワークとして、段ボール箱、一斗缶、発泡スチロール箱、ドラム缶、材木、鉄骨、コンクリート片等が挙げられる。
【0034】
なお、本実施の形態では、印刷装置1をワーク10の搬送経路の右側に配置したが、搬送経路の左側に配置してもよい。その場合、アーム2には、エアシリンダ320によって時計回りのトルクが付与される。
【0035】
印刷装置1の各部の構成について説明する前に、本発明にかかる印刷装置1の基本的な動作を説明する。本発明にかかる印刷装置1は、プリントヘッド部8が取り付けられた印刷ユニット5を、コンベア11によって搬送されるワーク10の側面に押し付けると共に、ワーク10の搬送を利用して、印刷ユニット5をワーク10の側面に沿って移動させ、その移動中にプリントヘッド部8を用いてワーク10の側面に印刷を行うものである。
【0036】
本発明にかかる印刷装置1は、ワーク10の搬送以外に特別な動力や複雑な制御を必要とせずに印刷を行うことができるために、低コストで故障が少ない印刷装置を実現できる。更に、ワーク10の直交する2つの側面に連続して印刷することができるため、従来の印刷装置に比べ、同一の印刷を行うのに要する時間を大幅に短縮できる。
【0037】
以下、上述の動作を実現する印刷装置1の各部の構成について、それぞれ説明する。最初に、アーム2について説明する。アーム2は、印刷ユニット5を支える部分であるため、十分な強度持ち、その一方で、移動を容易にするため、できるだけ軽量であることが好ましい。このような観点より、アームには、アルミニウム等の金属板か樹脂板を角筒状に加工したものが好ましい。
【0038】
またアーム2は、ワーク10の側面のうち前面(ワークの搬送方向と直交する面)に印刷する際に、アーム2がワーク10に接触しないようにワーク10側に湾曲している。なお、アーム2の湾曲の程度は、印刷箇所がワーク10の前面のどこであるかによって変える必要がある。
【0039】
次に、
図2および
図3を参照して、アーム支持部3および高さ調整部4について説明する。
図2はアーム支持部3の正面図、
図3はアーム支持部3の上プレート301から下方を見た状態の、一部切欠きの平面図である。
【0040】
なお、図では煩雑さを避けるため、エアシリンダ320に圧縮空気を供給するチューブやバルブを省略している。また、図には部材を固定するボルトやナットが表示されているが、これらは汎用の締結部材であるため、符号を付して説明することはしない。以後も同様である。
【0041】
アーム支持部3は、金属製の上プレート301と下プレート302が、複数のシャフト303a、303bおよび303c、更に後述するブロック411を介して、一定の間隔を隔てた状態でボルト等により締結されたものである。また上プレート301の下面には支持板304が取り付けられ、下プレート302の上面には支持板305が取り付けられている。
【0042】
角筒状のアーム2の後端部の上下両面には、補助プレート311と312がパイプステイ313を用いて取付けられ、更に、アーム2および補助プレート311、312を貫通するように円柱状の軸314が取り付けられている。軸314は、それぞれ軸受315を介して支持板304と305に回転可能な状態で支持されており、アーム2は軸314を中心として回転できる。
【0043】
アーム支持部3の上プレート301と下プレート302との間の空間には、トルク発生手段であるエアシリンダ320と、アーム2の回転範囲を規制するストッパー330が収容されている。エアシリンダ320は、矢印で示すように、アーム2に反時計回りのトルクTを付与するものである。
【0044】
エアシリンダ320のピストンロッド321は、一対の補助プレート312、313間に取り付けられたブロック322に固定され、エアシリンダ320の他方の端はシャフト303aに、軸受を介して回転可能な状態で取り付けられている。エアシリンダ320に圧縮空気を供給してピストンロッド321を縮めることにより、アーム2に軸314回りのトルクTが付与される。
【0045】
一方、棒状のシャフトの外周面にネジ溝が形成されたストッパー330は、途中にウレタン製のリング331および332が取り付けられており、リング331および332の位置は、それぞれ、隣接する一対のナット335、336の締結位置を変えることによって調整できる。
【0046】
ストッパー330の一方の端は補助プレート311、312間に取り付けられたブロック333に固定され、他方の端は浮いた状態に保たれている。ストッパー330の中間部には、シャフトを通す孔が形成されたブロック334が配置され、ブロック334の上下端部は上プレート301および下プレート302にそれぞれ固定されている。
【0047】
ブロック333は補助プレート311および312に回転自在に固定され、またブロック334は上プレート301および下302に回転自在に固定されているので、アーム2が回転したときに、ストッパー330はブロック334を支点として自由に回転できる。
【0048】
エアシリンダ320の働きによってアーム2が矢印で示す方向、すなわち反時計回りに回転しようとしても、リング331がブロック334に当接して、アーム2の回転は阻止される。この状態では、アーム2の先端に取り付けられた印刷ユニット5は、
図1に示す位置に保たれる。
【0049】
これに対し、コンベア11によって搬送されるワーク10が印刷ユニット5に当接して、アーム2が時計回りに回転すると、
図3においてリング331がブロック334から離れ、リング332がブロック334に当接するまで回転することができる。
【0050】
このように、エアシリンダ320によって、アーム2に反半時計回りのトルクが常に付与され、その一方、ストッパー330によってアーム2の回転範囲が規制される。アーム2の動きに伴って、アーム2の先端に取り付けられた印刷ユニット5はワーク10の搬送経路上に保持され、またワーク10が当接した後は、印刷ユニット5はワーク10に押されて移動する。
【0051】
次に、
図1および
図3を参照して、アーム支持部3の高さを調整する高さ調整部4の構成を説明する。高さ調整部4は、金属製の台座402に固定された一対のガイドシャフト403および404、ガイドシャフト403および404の上端を固定するトッププレート405、上端がトッププレート405に回転可能な状態で支持されたネジシャフト406、ネジシャフト406の上端に取付けられたハンドル401(以上、
図1に示す)、アーム支持部3の2枚の支持板304および305の間にはめ込まれたブロック411、ならびにこのブロック411に取り付けられた一対の固定ネジ412および413(以上、
図3に示す)で構成されている。
【0052】
ブロック411には、一対のガイドシャフト403、404を通す孔と、内周面にネジシャフト406の雄ネジに螺合する雌ネジが形成された孔が設けられている。操作者がハンドル401を回してネジシャフト406を回転させると、その回転に従ってアーム支持部3の支持板304、305が、ガイドシャフト403、404に沿って上方または下方に移動する。
【0053】
プリントヘッド部8の高さ、すなわちワーク10への印刷高さを変えたい場合には、操作者がハンドル401を回すと、ネジシャフト406の回転に従ってアーム支持部3が上方または下方に移動する。その後、固定ネジ412および413を閉めてブロック411をガイドシャフト403および404に固定する。
【0054】
なお、本実施の形態では、高さ調整部4を用いてプリントヘッド部8の高さを調整したが、アーム支持部3を台座402に固定すると共に、台座402の高さを変えることによってプリントヘッド部8の高さを調整するようにしてもよい。もしくは、アーム支持部3を、金具を用いてコンベア11の本体に直接取り付け、金具を取り付ける位置によって、プリントヘッド部8の高さを調整するようにしてもよい。
【0055】
次に、
図4〜
図7を参照して、印刷ユニット5を構成するヘッド取付部6、揺動部7およびプリントヘッド部8の構成を説明する。
図4は印刷ユニット5の正面図、
図5は同平面図、
図6は
図4のA−A線で切断したヘッド取付部6の断面図、
図7は
図4のB−B線で切断した揺動部6の断面図である。
【0056】
ヘッド取付部6は、直方体形状のケース601内に、回転軸603を備えたヘッド支持体602が収容されている。ヘッド取付部6のケース601の上面には、一対のローラ604および605、プリントヘッド部8を固定するための取付金具606、および印刷の際のタイミング信号を発生させるエンコーダ607が設置されている。またケース601の側面のうちワーク10と当接する面には保護板608が取り付けられている。なお、実際の装置では、エンコーダ607からコントローラ(
図8参照)との接続用のケーブルが引き出されているが、図では、煩雑さを避けるために省略している。
【0057】
ヘッド取付部6のケース601およびヘッド支持体602は、ローラ604、605等を固定する土台となる部分であるため、アーム2と同様の理由で、十分な強度をもち、かつ移動を容易にするため、できるだけ軽量であることが好ましい。具体的には、アルミニウムや樹脂板が好ましい。
【0058】
ローラ604および605は、プリントヘッドユニット8のインク吐出面を挟むように左右に配置され、それぞれのローラの上部と下部には、リング状のライニング609が装着されている。なお、ケース601の角は、ローラ604および605の回転を妨げないように丸く切り落とされている。
【0059】
ローラ604および605は、ヘッド取付部6がコンベア11で搬送されるワーク10に当接し、ワーク10の側面に沿って移動する際に円滑な移動を実現するものである。このため、それぞれのローラ604および605のライニング609の外周は保護板608より前方に突き出ている。
【0060】
なお、ローラ604および605のライニング609を上下部分だけに設けているのは、垂直方向の位置がプリントヘッド部8のインク吐出面と重なる部分にライニングを設けると、インクが吐出された面にライニング609が接触して印刷面を汚してしまうのを避けるためである。
【0061】
ライニング609はワーク10と当接すると共に、ワーク10との摩擦力によって回転する部分であるため、当接時の衝撃を吸収すると共に、摩擦係数の大きな素材を使用することが好ましい。具体的には、ゴム、スポンジ、ウレタン、表面加工された金属等が好ましい。
【0062】
なお、ローラ604および605の外周面にライニング609を取り付ける代わりに、ローラ604および605そのものを上述のいずれかの素材で作製すると共に、ライニングを装着したローラと同様の形状に加工してもよい。
【0063】
プリントヘッド部8は、断面がL字状の取付金具606を用いて、ケース601の上面に固定されている。プリントヘッド部8は、プリントヘッド801、インクカートリッジ802、ヘッド制御部803およびケーブル引出部804で構成されており、プリントヘッド801のインク吐出面806には、縦方向に並んだ複数のインク吐出孔が形成されている。
【0064】
なお、本実施の形態では、インクカートリッジ802を用いてプリントヘッド801にインクを供給しているが、インクカートリッジ802の代わりにインクタンクからインクを供給するようにしてもよい。
【0065】
印刷ユニット5を横方向に移動させながら、ヘッド制御部803によって、それぞれの吐出孔に対してインク吐出の有無とタイミングを制御することで、印刷面に任意のパターンの印刷を行うことができる。
【0066】
ヘッド制御部803の内部には印刷制御用の回路が収納されており、ケーブル引出部804から引き出されたケーブル805によって印刷装置のコントローラ(
図8参照)と接続されている。
【0067】
ヘッド取付部6のヘッド支持体602の中心部には、揺動部7の支持プレートに固定された軸603が収容されており、ヘッド支持体602は、軸受610を介して軸603に回転可能な状態で支持されている。コンベア11により搬送中のワーク10の側面に印刷ユニット5が当接すると、アーム2に付与されたトルクによってヘッド支持体602およびケース601が回転し、ローラ604および605がワーク10の側面に押し付けられる。
【0068】
図5に示すように、ケース601の上面には左右に一つずつ円弧状の孔611が形成されている。一方、
図4に示すように、その孔611の下には、円柱状のヘッド支持体602が設置されている。ヘッド支持体602は軸受610により軸603に対して回転可能な状態で支持されている。
【0069】
従って、ヘッド支持体602に対してケース601を任意の角度回転させ、その状態でビス612を用いてケース601をヘッド支持体602に固定することにより、ヘッド取付部6をアーム2に対して任意の角度で取り付けることができる。
【0070】
次に、
図6を参照して、ローラ604、605の回転量を検出するエンコーダ607について説明する。ヘッド取付部6のケース601内の4隅のうち、前部には、ローラ604および605の回転軸621および622が取り付けられている。またケース601の後部の左隅には、テンショナー623の回転軸624が4が取り付けられている。またケース601の後部の右隅には、エンコーダ607の回転軸625が取り付けられている。
【0071】
そしてこれら4つの回転軸621、622、624および625の間にベルト626が張られている。なお、テンショナー623は、ベルト626をケース601の4隅に張るため、およびベルト626の着脱やメンテナンスを容易にするために設けられている。
【0072】
ワーク10に当接したローラ604および605がワーク10に沿って回転しながらワーク10の側面を移動すると、その回転が回転軸621、622、624およびベルト626を介してエンコーダ607の回転軸625に伝達され、エンコーダ607でローラ604および605の回転量が検出される。
【0073】
ワーク10に対する印刷ユニット5の相対速度は、ワーク10の搬送に伴って変化する。一方、ローラ604および605の回転量は、印刷面に対するプリントヘッド801の移動量に対応しているため、この回転量に応じて吐出孔からのインクの吐出のタイミングを制御すれば、任意の位置に任意のパターンの印刷を行うことができる。
【0074】
なおローラ604および605のうち一方のローラの回転軸のみにベルト626を巻き付け、その回転をエンコーダ607の回転軸に伝達するようにしても、印刷ユニット5の移動量を検出できるが、ローラ604および605と印刷面の接触状態を考慮すると、ローラ604および605の両方の回転軸にベルト626を巻き付けたほうが、移動量検出の信頼性が高まる。また、エンコーダ607の回転軸とローラ604および605を連結する手段としてギアを利用してもよい。ギアを利用した場合、ベルトに比較して経年劣化に強い材質を使用できるため、装置の信頼性が高まる。
【0075】
次に、
図7を参照して、揺動部7の構成と機能を説明する。揺動部7は、アーム2に対してヘッド取付部6を回転可能な状態で支持する共に、カム機構により、ヘッド取付部6に外力が加わらないときには、ヘッド取付部6をアーム2に対して、常に同じ姿勢(角度)を維持するものである。揺動部7は、プレート701、一対のスライダーレール702、スライダー703、一対のコイルバネ704、内輪カム705およびカムフォロア707で構成されている。
【0076】
プレート701の端部はボルトによりアーム2に固定されている。プレート701上には一対のスライダーレール702が一定の間隔を保って設置されており、その間にスライダー703が摺動可能な状態で設置されている。また、一対のスライダーレール702の間には、これらと平行に一対のコイルバネ704が配置されており、コイルバネ704の一方の端はプレート701に取り付けられ、他方の端はスライダー703に取り付けられている。
【0077】
プレート701は印刷ユニット5全体を支える部分であるため、十分な強度持ち、その一方で、移動を容易にするため、できるだけ軽量であることが好ましい。そのため、材質はアルミニウム等の金属板か樹脂板を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0078】
ハート型のカム溝が形成された内輪カム705は、軸受706を介して、回転可能な状態で軸603に支持されており、その上端部は、ボルトによってヘッド支持体602に固定されている。またスライダー703の上部には、ボールベアリングを備えたカムフォロア707が取り付けられている。
【0079】
カムフォロア707は内輪カム705のハート型のカム溝に接しており、カムフォロア707が取り付けられたスライダー703は、一対のコイルバネ704によって紙面に向かって右方向に引っ張られている。内輪カム704のカム溝は若干偏芯しているため、内輪カム705はコイルバネ704の長さが一番短くなる位置、すなわち
図7に示した位置に保持される。
【0080】
印刷ユニット5に外力が加わって軸603回りに回転すると、ヘッド支持体602に固定された内輪カム705も回転する。内輪カム705が回転するとコイルバネ704が伸びて、内輪カム705を一番安定した状態(
図7に示す状態)に戻そうとする力が働くが、その力が外力よりも弱い場合には、外力によって内輪カム705は回転を続ける。
【0081】
従って、印刷ユニット5に搬送中のワーク10が当接したとき、印刷ユニット5はローラ604および605がワーク10に当接した状態を保ったまま、ワーク10の側面を横方向に移動することになる。
【0082】
ワーク10への印刷が終了して印刷ユニット5がワーク10から離れ、内輪カム705に加わる外力がなくなると、コイルバネ704の力によって内輪カム705は揺動を繰り返しながら
図7に示す状態に戻され、その後はその状態を維持する。
【0083】
なお、揺動部の構成は
図7に示したカム機能に限定されない。本実施の形態では、小型化を図るために内輪カムを用いたカム機構を採用したが、容積に余裕があれば、外輪カムを用いたカム機構を採用してもよい。更に、ソレノイド等を用いて同様の機能を実現してもよい。
【0084】
<印刷装置の制御系の構成>
次に、
図8および
図9を参照して、印刷装置の制御系の構成と動作を説明する。
図8は、印刷装置1の制御系の構成を示すブロック図、
図9は、動作説明用のタイミングチャートである。
【0085】
印刷装置1は、動作制御用のコントローラ9を備えており、コントローラ9は、コンベア11に隣接した箇所に設置された筐体(図示せず)に収容されている。またコントローラ9とプリントヘッド部8のヘッド制御部803はケーブル805(
図5参照)で接続されている。ケーブル806はアーム2が動くたびに外力が働き断線する恐れがあるので、耐屈曲性を備えたケーブルを用いることが好ましい。
【0086】
コントローラ9は、制御部901、入力表示部902および記憶部903で構成され、更に制御部901は、通常、インクジェットの制御に最適化して設計されたCPUおよび波形をコントロールするIC等で構成されている。入力表示部902は、タッチパネル式の液晶ディスプレイで構成され、プリントヘッド801を用いて印刷面に印刷する文字や数字、パターン等のデータを入力するのに用いられる。
【0087】
前述したように、プリントヘッド801は、縦方向に複数形成された吐出孔からインクを選択的に吐出して印刷面にドットを形成することによって印刷を行う。通常は、プリントヘッド801に対して印刷面を横方向にずらしながら、吐出孔からの選択的な吐出を繰り返すことによって、印刷面にドットがマトリクス上に形成され、このドットパターンによって文字やパターンが表現される。
【0088】
不揮発性メモリで構成された記憶部903には、あらかじめ文字や図形等のデータが記憶されており、制御部903は、入力表示部902から入力された文字等に対応するデータを読み出し、そのデータをヘッド制御部803に送信する。
【0089】
コントローラ9にはワーク10を検出する光電センサ12が接続されている。図示しないが、光電センサ12には、発光器と受光器が一体となった反射型のセンサを用いている。発光器から放射された光が、コンベア11上を搬送されるワーク10に反射して受光器に入力すると、光電センサ12から検出信号が制御部901に送信される。制御部901は光電センサ12からの検出信号を受けた後、内蔵のタイマで時間を計測し、所定の時間τが経過した後、ヘッド制御部803に印刷用のデータを送信する。
【0090】
上述の時間τは、光電センサ12がワーク10の接近を検出してから、ヘッド取付部6の一対のローラ604と605がワーク10の側面に当接して横方向に移動を開始するまでの時間に対応しており、予め設定された値が記憶部903に格納されている。
【0091】
制御部901は、エンコーダ607で検出されたローラ604、605の回転量に基づいてインク吐出のタイミングを制御する。前述したように、ローラの回転量は印刷面に対するプリントヘッド801の移動量に比例しているので、ローラの回転量が所定の値を超える毎に吐出孔からインクを吐出すれば、インクのドットによって、文字等を印刷することができる。
【0092】
次に、
図9のタイミングチャートに従って、プリントヘッド801からインクを吐出する際のタイミング制御について説明する。
【0093】
制御部901は、光電センサ12から
図9の(b)に示すワーク検出パルスを受信すると、
図9の(a)に示すクロックを計数して、予め定めた時間τの経過を待つ。
【0094】
一方、制御部801には、
図9の(c)に示すようにエンコーダ607からローラ604、605の回転量に比例した間隔でパルスが入力される。前述したように、このパルスの数はワーク10に対するプリントヘッド801の移動量に対応しているため、制御部9は所定の数のパルスを受信する毎に、
図9の(d)に示すインク吐出のタイミングを定めるパルスを、印刷する文字等の1列分のデータと共にヘッド制御部803に送信する。
【0095】
タイミングパルスと1列分のデータを受信したヘッド制御部803は、受信したデータから、吐出孔駆動用の信号を作成してプリントヘッド801に送信し、選択された吐出孔からインクを吐出する。エンコーダ607から送信されるパルスが所定の数経過する毎に、上述の処理を繰り返すことによって、ワーク10の側面に文字等が印刷される。
【0096】
<プリントヘッドによる印刷動作>
次に、
図10および
図11を参照して、プリントヘッド部8によるワーク10への印刷動作について説明する。
図10は、ワーク10への印刷が開始される前の印刷装置1の各部の配置を示す。また
図11は、ワーク10に対する印刷ユニット5の移動の様子を示す。以下、コンベア11で搬送される直方体形状のワーク10の隣接する2つの側面に連続して印刷を行う場合について説明する。
【0097】
図10に示すように、待機状態においては、印刷ユニット5は、コンベア11の上方、すなわちワーク10の搬送経路上に保持されている。アーム2は、エアシリンダ320によって付与されたトルクにより、初期位置(
図10に示した位置)に戻る力を備えている。また、初期位置において、印刷ユニット5の前面6Aは、前述した揺動部7の作用によりワーク10の前面10Aと正対する位置に保持されている。
【0098】
ワーク10がコンベア11上を搬送されてくると、
図10の(A)に示すように、印刷ユニット5の前面6Aがワーク10の前面10Aと接触する。揺動部7の機能によって、ローラ604および605がワーク10の前面10Aに接触し、ワーク10は、印刷ユニット5を矢印で示したワーク搬送方向へ押し出す。
【0099】
次に、
図11の(B)に示すように、ヘッド取付部10は、アーム2に付与されるトルクおよび揺動部7の働きにより、前面6Aがワーク10の前面10Aと正対する位置関係を保ちながら、ワーク10の前面10Aに沿って横方向に移動する。印刷ユニット5がワーク10の前面10Aに沿って移動するとき、ローラ604および605が回転し、その回転量は、ベルト626を介してエンコーダ607に伝えられる。
【0100】
エンコーダ607で検出されたローラ604および605の回転量は、コントローラ9の制御部901に送信される。コントローラは、エンコーダ607で測定した回転量のデータに基づいてインク吐出のタイミングを制御する。このようにして、ワーク10の前面10Aの所定の位置に所定のドットパターンの印刷が行われる。
【0101】
印刷ユニット5がワーク10の前面10Aに沿って移動していくと、
図10の(C)に示すように、印刷ユニット5はワーク10の角部10Bに達して前面10Aから飛び出す。このとき、印刷ユニット5は、アーム2に付与されたトルクによって、軸603を中心として時計回りに回転する。そして、ローラ604および605はワーク10から離れる。
【0102】
このとき、印刷ユニット5の前面5Aに取り付けられた保護板608とワークの角部10Bが接触する。
図5に示すように、プリントヘッド801は、保護板608の後方に位置しているため、印刷ユニット5が回転する際、プリントヘッド801がワーク10の角部10Bに接触することはない。
【0103】
さらにワーク6が搬送されると、
図11の(D)に示すように、印刷ユニット5の前面6Aがワーク10の側面10Cと正対するようになる。このときも、アーム2に付与されたトルクにより、印刷ユニット5の正面5Aがワーク10の側面10Cに押し付けられ、再びローラ604および605がワーク10に接触して回転する。
【0104】
このときから、再びエンコーダ607による回転量の検出が可能となるため、ワーク10の側面10Cの所定の位置に連続して、かつ正確に印刷することができる。ワーク10の前面10Aと側面10Cに印刷する内容は、あらかじめコントローラ9の記憶部903に格納されているため、印刷ユニット5の移動に合わせて吐出孔からのインクの吐出を制御するだけで、ワーク10の前面10Aと側面10Cに異なる内容を印刷することができる。
【0105】
さらにワーク10が搬送され、印刷ユニット5がワーク10の側面10Cを通過すると、アーム2に付与されたトルクによって、印刷ユニット5は再び搬送経路上の待機位置(
図10に示した位置)へ戻る。また印刷ユニット5も、揺動部7によって与えられ復元力によって
図9に示した姿勢に保持され、次のワークの印刷準備が完了する。
【0106】
上述したように、本発明にかかる印刷装置を用いることにより、コンベアによって搬送されるワークの複数の印刷面に連続して印刷することができる。また、印刷する文字やパターンが変わっても簡単に対応できるため、製造現場における多種多様な品質管理体制を、印刷装置という面から低コストでサポートすることができる。
【0107】
図12を参照して、プリントヘッド801を複数搭載した印刷ユニット5について説明する。プリントヘッド8を複数搭載することによって、一度に印刷可能な面積を大きくしたり、複数の色を付けて多色化することができる。
【0108】
図12は、同じプリントヘッドを3つ搭載することにより、一度に印刷可能な面積を大きくした例である。3つのプリントヘッド801a、801b、801cは、破線で示したように、それぞれ、隣り合う他のプリントヘッドが有するインク吐出面806a、806b、806cの上端または下端に、自らのインク吐出面の下端または上端を合わせるように、配置される。こうすることによって、印刷可能範囲を、切れ目なく大きくすることが可能である。なお、印刷可能範囲が大きくなったことに対応して、ローラ604および605の長さ、およびライニング609を設ける位置を変更することが好ましい。
【0109】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ワークの前面10Aと側面10Cに連続して印刷を行う場合について説明したが、印刷装置を設置する位置を変えることによって、ワーク10のもう一方の側面と後面に連続して印刷することが可能となる。
図12に、その場合のワーク10に対する印刷ユニット5の移動の様子を示す。
【0110】
図10に示したように、実施の形態1では、印刷装置1のアーム支持部3をワーク10の搬送経路の右側に設置したが、本実施の形態では、アーム支持部3をワークの搬送経路に対して左側に設置する。更に、
図10では印刷ユニット5をワーク10の搬送経路上で待機させたが、本実施の形態では、
図13の(E)に示すように、印刷ユニット5をワークの搬送経路から外れた位置で待機させる。
【0111】
本実施の形態においては、アーム2は、機械的なロック装置(図示せず)を用いて
図13の(E)に示す位置に保持されている。光電検出センサ12によってワーク10の接近が検出されたとき、ロック装置が解除される。すると、エアシリンダ320によってアーム2に付与されるトルクにより、印刷ユニット5が
図13の(E)に示す位置から(F)に示す位置に移動して、ワーク10の側面10Dに当接する。
【0112】
その後、印刷ユニット5は、コンベア11のよるワーク10の搬送に伴い、アーム2に付与されたトルクによって側面10Dから、角部10Eを通って後面10Fに移動し、
図11を用いて説明したのと同様の制御によって、側面10Dおよび後面10Fへの印刷が行われる。
【0113】
従って、本実施の形態で説明した印刷装置と実施の形態1で説明した印刷装置とを、ワーク10の搬送経路の左右に1台ずつ設置すれば、一度の搬送で直方体形状のワーク10の4つの側面の全てに印刷を行うこともできる。
【0114】
なお、エアシリンダ320によりアーム2に付与されるトルクの値は、後面10Fの印刷においては、印刷ユニット5がワーク10を追いかける形態になるため、ワークに押し返される実施の形態1に比べて大きくする必要がある。
【0115】
また、本実施の形態では、ワーク10の後面10Fの印刷が終了して、印刷ユニット5がワーク10から離れた後、エアシリンダ320に供給する圧縮空気の方向を変えて、アーム2に逆方向のトルクを付与してアーム2を時計回りに回転させ、印刷ユニット5を搬送経路から外れた位置まで移動させる。その後、再度エアシリンダ320に供給する圧縮空気の方向を変えると、ストッパー(図示せず)の作用によって、印刷ユニット5は
図13の(E)に示す待機位置に保持される。
【0116】
上述した本実施の形態の印刷装置と実施の形態1で説明した印刷装置とを、ワーク10の搬送経路の左右に1台ずつ設置すれば、一度の搬送で直方体形状のワーク10の4つの側面の全てに印刷を行うことができる。
【0117】
(実施の形態3)
実施の形態1にかかる印刷装置では、印刷ユニット5を揺動部7の上方に配置していた。これに対し、本実施の形態にかかる印刷装置では、印刷ユニット5を揺動部7の下に配置している。
図14は、本実施の形態にかかる印刷装置の印刷ユニット5の正面図、
図15は同じく側面図である。図では、プリントヘッド部8の印刷ユニット5への取付構造がよく分かるように、左側のローラ604を省略している。
【0118】
最初に、印刷ユニット5を揺動部7の下方に配置する理由を説明する。
図4に示すように、プリントヘッド部8の下方には揺動部7と印刷ユニット5のケース601が配置され、それぞれに機構部品が収納されているため、かなりの高さとなる。一方、ワークによっては、高さの低いものもあり、そのようなワークには、実施の形態1の印刷装置では印刷が難しい。
【0119】
そこで、本実施の形態では、印刷ユニット5と揺動部7の配置を逆転させた状態でアーム2に取付けている。ただし、プリントヘッド部8については、上下を逆転して設置すると、プリントヘッド801へのインクの供給に支障が出るため、
図4に示した姿勢を維持する必要がある。
【0120】
本実施の形態では、ヘッド取付部6のケース601の下面に中間接続部材631を取り付け、この中間接続部材631に、プリントヘッド部8を支持する断面がL字状の取付金具606を、スライダー632を介して取り付けている。
【0121】
長尺状の中間接続部材631の各側面には溝が形成されており、そのうち左右の溝には取付金具606を支えるスライダー632の上端部に形成された突起が係合している。スライダー632を溝に沿って摺動させることにより、プリントヘッド部8を前後方向(
図15において左右方向)に移動させることができる。
【0122】
プリントヘッド部8をヘッド取付部6に取付ける際の手順を説明する。最初に、プリントヘッド部8の側面に取付金具606を取り付け、更に取付金具606の上面に一対のスライダー632を仮止めする。その状態で、仮止めされたスライダー632の上端の突起を中間接続部材631の左右の溝に係合させ、更にスライダー632を取付金具606に固定する。この状態では、プリントヘッド部8および取付金具606は、中間接続部材631の後端部に位置している。
【0123】
次に、スライダー632を用いてプリントヘッド部8を中間接続部材631の前方にスライドさせ、最後に、中間接続部材631の下面の溝に挿入されたボルト633のレバーを回転して、ボルト633を中間接続部材631に固定する。
【0124】
上述したように、中間接続部材631を用いることによって、取り付けの準備作業を、スペースに余裕のある中間接続部材631の後端部で行うことができるために、プリントヘッド部8をヘッド取付部6にスムーズに取り付けることができる。また上述した構成を採用すれば、プリントヘッド部8のインク吐出面806をワーク10の側面の下方に設定できるため、高さの低いワークであっても、問題なく印刷できる。