【解決手段】シート材の製造装置30は、シート材料19の少なくとも一部を高温状態で圧縮することによって、少なくとも一部が高剛性に加工されたシート材を製造する。シート材の製造装置30は、シート材料19の搬送路Pの途中で、シート材料19を連続的に挟込み可能に配設された一対のローラ40と、シート材料19を加熱する加熱機構60、149と、一対のローラ40よりもシート材料19の搬送路Pの下流側の位置で、シート材料19を挟込んでシート材料19を搬送する一対の搬送用ローラ96bを少なくとも一組含み、一対の搬送用ローラ96bの少なくとも一方の外周表面に滑り抑制用凹凸部196が形成されている搬送部と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るシート材の製造装置及びシート材の製造方法について説明する。
【0025】
<シート材について>
説明の便宜上、製造対象となるシート材10及び当該シート材10から製造される保護材20について説明する。
図1は保護材20を示す斜視図であり、
図2はシート材10を示す斜視図である。
【0026】
シート材10は、高温状態で圧縮されることによって高剛性に加工可能なシート材料を加工することによって、少なくとも1本の電線Wの保護に適した構成となるように加工されたシートである。ここでは、シート材10は、部分的に加工状態が異なるように加工されている。部分的に加工状態が異なる態様としては、高剛性に加工された部分とこの部分よりも柔軟な状態に保たれた部分とが存在する態様、ある部分(平坦な部分又は凹凸部の間等)に対して一方主面側に突出する(他方主面側から見ると凹む)凹凸部が形成された態様等が挙げられる。
【0027】
かかるシート材料としては、複数の繊維が織られずに絡み合ったシート材であって、加熱によって少なくとも一部が溶融して高剛性を呈するように加工可能な不織シート材料を用いることが好ましい。
【0028】
具体的は、不織シート材料としては、絡み合う基本繊維と、接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点を有する樹脂である。そして、この不織シート材料を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱することで、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこむ。この後、不織シート材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織材料が加熱前の状態よりも硬くなる。また、接着樹脂が溶融している状態で、不織シート材料を圧縮すると、当該不織シート材料は、その圧縮時における所定の成形形状に維持される。
【0029】
接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0030】
上記基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得るものであればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。基本繊維と接着樹脂の組合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点は接着樹脂の融点よりも大きく、このため、不織材料をその融点間の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織材料は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。つまり、上記不織シート材料を、高温状態で、所定の面間に挟み込んで圧縮することで、不織シート材料が前記所定の面に応じた所定形状に成型され、冷却されると、当該成型された形状に維持される。
【0031】
シート材10は、上記不織シート材料を高温状態で圧縮することにより形成されたものであり、少なくとも1本の電線Wの保護に適した状態となるように加工されている。
【0032】
すなわち、シート材10は、方形状、ここでは、一方向に長い長方形板形状に形成されている。
【0033】
シート材10の長手方向において間隔をあけて複数(ここでは5つ)の柔軟部分12が形成されており、その他の部分は、当該柔軟部分12よりも剛性が高い(ここでは硬い)高剛性部分14に形成されている。高剛性部分14は、不織シート材料を上記バインダの融点よりも高い温度条件で所定の面間に挟んで圧縮することにより形成されている。かかる高剛性部分14は、加工後の所定形状、ここでは、平板状形状を保つことができる部分である。柔軟部分12は、上記高剛性部分14を加工する際に、不織シート材料を当該高剛性部分14よりも圧縮度合を小さくして又は圧縮しないことによって形成された部分であり、比較的柔軟な状態を保ったままに維持された部分である。不織シート材料のうち柔軟部分12に対する圧縮度合を小さくすること又は圧縮しないようにすること等で、上記高剛性部分14を加熱する際に、本柔軟部分12に含まれるバインダが部分的に溶けたとしても、柔軟部分12は、高剛性部分14よりも柔軟な状態を保つ。
【0034】
各柔軟部分12は、シート材10の幅方向全体に亘って形成される細長い領域部分に形成されている。
【0035】
また、このシート材10には、その長手方向に沿う線状の折目18が形成されている。折目18は、例えば、シート材10の一方主面側から他方主面に達する手前まで部分的に切込むことにより形成されている。ここでは、折目18は、高剛性部分14にも柔軟部分12にも形成されているが、高剛性部分14のみに形成されていてもよい。折目は、上記構成の他、その延在方向に沿って間欠的に切れ目が形成されたミシン目によって構成されていてもよい。
【0036】
上記折目18は、シート材10の幅方向において間隔をあけて複数本(ここでは、4本)形成されている。具体的には、シート材10から保護材20を組立てた状態で、底部22とその両側壁部24、25との各間、一方の側壁部24とその外方の合わせ片26との間、及び、他方の側壁部25とその外方の蓋部28との間に、折目18が形成されている。
【0037】
上記シート材10を上記折目18で折ることで、ワイヤーハーネスWHを覆った状態で保護可能な保護材20が形成される(
図1参照)。
【0038】
すなわち、シート材10を、底部22と両側壁部24、25との間の折目18で直角に折ると、底部22の両側に側壁部24、25が立設された、半角筒状の保護本体部が形成される。
【0039】
また、一方の側壁部24とその外方の合わせ片26との間の折目18を外向けに直角に折ることで、一方の側壁部24の縁部に外向きに延出する合わせ片26が形成される。合わせ片26は、蓋部28の外縁部が重ね合される部分であり、保護本体部の内側に折られていてもよい。
【0040】
また、他方の側壁部25をその外方の蓋部28との間の折目18を折ることで、保護本体部の上方開口を閉じるように配設可能な蓋部28が形成される。
【0041】
そして、保護本体部内にワイヤーハーネスWHが収容された状態で、蓋部28で保護本体部の上方開口を閉じて、蓋部28の外縁部を上記合わせ片26に重ね合せる。この状態で、蓋部28の外縁部と合わせ片26とを、熱溶着、超音波溶着、両面テープ等で接合すると、保護材20がワイヤーハーネスWHを収容した状態で当該ワイヤーハーネスWHに組付けられる。なお、保護材20の保護対象は、少なくとも1本の電線Wである。
【0042】
なお、上記合わせ片26が省略されてもよく、さらに、蓋部28が省略されていてもよい。この場合、保護材がワイヤーハーネスを覆った状態で、粘着テープが螺旋巻きされること等で、保護材がワイヤーハーネスを覆った状態を維持してもよい。
【0043】
この保護材20は、上記ワイヤーハーネスWHを覆うことによって当該ワイヤーハーネスWHを保護する役割を果す。
【0044】
また、この保護材20は、高剛性部分14と柔軟部分12とがその延在方向に沿って交互に設けられた構成とされている。このため、高剛性部分14は、ワイヤーハーネスWHを十分に保護すると共にワイヤーハーネスWHを直線の経路状態に維持する役割を果す。また、柔軟部分12は、ワイヤーハーネスWHを保護しつつ、当該ワイヤーハーネスWHを配設対象となる経路に沿って曲げることができるようにする役割を果す。
【0045】
また、上記保護材20は、シート材10を折ることによってワイヤーハーネスWHを保護可能な形状に形成されるため、ワイヤーハーネスWHの組立図板上において、事前に折られたシート材10をワイヤーハーネスWHに組付けることで、又は、シート材10を折りつつワイヤーハーネスWHに組付けることができる。このため、ワイヤーハーネスWHの組立図板設備の構成を簡易化できる。また、シート材10は、偏平な形状を呈しているため、保管効率、運送効率等に優れるという利点がある。
【0046】
なお、シート材10に対して、柔軟部分12と高剛性部分14との両方が設けられていること、折目18が設けられていることは必須ではない。
【0047】
例えば、シート材の全体が高温状態で圧縮され、その全体が高剛性に加工されていてもよい。また、高温状態での圧縮加工によってリブ形状部分が作られていてもよい。さらに、シート材が高温状態で圧縮されることよって、部分円筒状部分又は部分角筒状部分が連続する形状に形作られ、当該半円筒状部分又は半角筒状部分が複数組合わされて、少なくとも1本の電線Wの保護に適した形状の保護材が構成されてもよい。
【0048】
以下では、上記のようなシート材をなるべく安価な設備で、効率よく製造できるようにするための製造装置及び製造方法について説明する。
【0049】
<シート材の製造装置及び製造方法について>
図3は実施形態に係るシート材の製造装置30を示す概略斜視図であり、
図4は一対のローラ40によってシート材料19を挟込んだ状態を示す説明図であり、
図5は一対の搬送用ローラ96bの間でシート材料19を挟み込んだ状態を示す説明図である。なお、
図4は、一対のローラ40の回転軸を通る断面における説明図である。
【0050】
このシート材の製造装置30は、上記したように高温状態で圧縮されることによって高剛性に加工可能なシート材料19を用いて、少なくとも一部で高剛性となるように加工されたシート、ここでは、
図2に示すシート材10を製造するためのものである。
【0051】
このシート材の製造装置30は、シート材料19を連続的に搬送するシート供給搬送機構90を備えており、このシート供給搬送機構90によるシート材料19の搬送路Pの途中に、一対のローラ40と、加熱機構60と、ローラ式冷却機構270とが設けられた構成とされている。
【0052】
<シート供給搬送機構について>
ここで、シート材料19を連続的に搬送するためのシート供給搬送機構90について説明しておく。
【0053】
シート供給搬送機構90は、シート材料19を搬送する搬送路Pにおける搬送方向に沿って設けられるものであり、搬送方向上流側に設けられるシート供給部92と、シート供給部92からシート材料19を引出して搬送路Pに沿って搬送する搬送駆動部94とを備える。
【0054】
シート供給部92は、長尺帯状のシート材料19が巻回収容されたシート巻回部を備えており、このシート巻回部がその中心軸周りに回転可能に支持された構成とされている。このシート巻回部からシート材料19を連続的に引出すことができるようになっている。なお、ここでは、シート材料19を、シート材10の幅寸法(
図2参照、柔軟部分12の長さ寸法)で切断することで、当該シート材料19から複数のシート材10を製造することを想定している。このため、シート材料19は、上記シート材10の長さ寸法(柔軟部分12の延在方向に対して直交する方向の長さ寸法)と同じであるか当該長さ寸法よりも大きな幅で、かつ、シート材10を複数個形成することができる長さ寸法(シート材10の幅寸法よりも十分に長い寸法)に設定されている。なお、シート材料19の両側部は必要に応じて切除される。
【0055】
搬送駆動部94は、一対の第1搬送用回転体95と、一対の第2搬送用回転体96と、回転駆動機構97とを備える。
【0056】
一対の第1搬送用回転体95は、シート供給部92に対して搬送路Pの下流側(ここでは、シート供給部92の近く)に、当該シート供給部92から引出されるシート材料19を挟込み可能に設けられている。
【0057】
第1搬送用回転体95は、シャフト95aと、左右の搬送用ローラ95bと、ギヤ95cとを備える。
【0058】
シャフト95aは、シート材料19の幅寸法よりも大きな長さ寸法に形成されており、その両端部がシート材料19の両側外方にはみ出るように配設される。左右の搬送用ローラ95bは、上記シャフト95aに対してシート材料19の両側部に接触可能な間隔をあけて回転不能に取付けられている。ギヤ95cは、平歯車であり、上記シャフト95aの一端部に回転不能に取付けられている。
【0059】
一対の第1搬送用回転体95のシャフト95aは、シート供給部92から搬送路Pに沿って引出されるシート材料19の一方主面側(
図3では上側)及び他方主面側(
図3では下側)で、図示省略の支持機構によってシート材料19の幅方向に沿った姿勢で回転可能に支持されている。
【0060】
この状態で、一対の第1搬送用回転体95の両端部側では、シート材料19を介して対向し合う一対の搬送用ローラ95bが、搬送路Pに沿って引出されるシート材料19の側部を挟込んでいる。このため、一対の第1搬送用回転体95が互いに異なる方向であってシート材料19を搬送方向に沿って送出す方向に回転することで、シート材料19が搬送路Pの搬送方向下流側に搬送される。
【0061】
また、上記状態で、一対の第1搬送用回転体95のギヤ95c同士が噛合っている。このため、一対の第1搬送用回転体95は、同期して互いに反対方向に回転するようになっている。
【0062】
一対の第2搬送用回転体96は、搬送部として、上記一対の第1搬送用回転体95に対して、間隔をあけて搬送路Pの下流側の位置で、搬送路Pに沿って搬送されるシート材料19を挟込み可能に設けられている。一対の第1搬送用回転体95と一対の第2搬送用回転体96との間には、シート材の製造装置30の一対のローラ40及び加熱機構60を配設可能な間隔が設けられている。
【0063】
第2搬送用回転体96は、上記第1搬送用回転体95と同様構成であり、即ち、シャフト95aに対応するシャフト96aと、左右の搬送用ローラ95bに対応する左右の搬送用ローラ96bと、ギヤ95cに対応するギヤ96cとを備える。
【0064】
一対の第2搬送用回転体96のシャフト96aは、搬送路Pに沿って搬送されるシート材料19の一方主面側(
図5では上側)及び他方主面側(
図5では下側)で、図示省略の支持機構によってシート材料19の幅方向に沿って回転可能に支持されている。
【0065】
この状態で、一対の第2搬送用回転体96の両端部側では、シート材料19を介して対向し合う一対の搬送用ローラ96bが、搬送路Pに沿って引出されるシート材料19の側部を挟込んでいる。より具体的には、左側の組の上下一対の搬送用ローラ96bがシート材料19の左側部を挟込み、右側の組の上下一対の搬送用ローラ96bがシート材料19の右側部を挟込み、それぞれの左右組の一対の第2搬送用回転体96が、上記一対の第1搬送用回転体95と同様に回転することで、シート材料19が搬送路Pの搬送方向下流側に搬送される。この搬送用ローラ96bの構成については、後でさらに説明する。
【0066】
また、上記状態で、一対の第2搬送用回転体96のギヤ96c同士が噛合っており、一対の第2搬送用回転体96は、同期して互いに反対方向に回転する。
【0067】
回転駆動機構97は、上記一対の第1搬送用回転体95及び一対の第2搬送用回転体96を、同期して回転駆動するように構成されている。
【0068】
具体的には、回転駆動機構97は、モータ等の回転駆動部97aと、伝達用環状部材としての連動ベルト97c、97dとを備える。
【0069】
連動ベルト97cは、回転駆動部97aの回転軸97bと一方(ここでは、下側)の第1搬送用回転体95のシャフト95aの他端部に巻掛けられている。これにより、回転駆動部97aの回転軸97bの回転運動が、連動ベルト97cを介して一方の第1搬送用回転体95に伝達される。
【0070】
また、連動ベルト97dは、一方(ここでは、下側)の第1搬送用回転体95のシャフト95aの一端部と一方の第2搬送用回転体96のシャフト96aの一端部とに巻掛けられている。これにより、一方の第1搬送用回転体95の回転運動が、連動ベルト97dを介して一方の第2搬送用回転体96に伝達される。
【0071】
この搬送駆動部94によると、シート供給部92により引出されるシート材料19を、一対の第1搬送用回転体95及び一対の第2搬送用回転体96のそれぞれにおいて挟み込んだ状態で、回転駆動部97aを回転駆動させると、一対の第1搬送用回転体95及び一対の第2搬送用回転体96が、搬送路Pに沿ってシート材料19を搬送方向下流側に搬送するように、同期して回転する。これにより、シート供給部92に巻回収容されたシート材料19を、搬送路Pに沿って連続的に引出して搬送することができる。一対の第1搬送用回転体95と一対の第2搬送用回転体96との間では、シート材料19は同一平面上に延在した状態で、連続的に搬送される。
【0072】
なお、回転駆動部から一対の第1搬送用回転体及び一対の第2搬送用回転体への回転運動の伝達は、歯車等を利用した他の伝達機構によって行われてもよい。一対の第1搬送用回転体には回転運動が伝達されず、シート材料の搬送に伴って従動回転するものであってもよいし、また、一対の第1搬送用回転体は省略されてもよい。
【0073】
<一対のローラについて>
一対のローラ40は、シート材料19が第1搬送用回転体95から第2搬送用回転体96に向けて搬送される搬送路Pの途中で、シート材料19を連続的に挟込み可能に配設されている。また、ここでは、一対のローラ40の少なくとも一方側の外周面は、凹凸形状を有する形状に形成されている。この凹凸形状によって、シート材料19を部分的に加工状態が異なるように加工することができる。一対のローラの両方が凹凸形状を有さない形状に形成されていてもよい。
【0074】
より具体的には、一対のローラ40は、第1搬送用回転体95から第2搬送用回転体96に向けて搬送されるシート材料19を両面側から挟む位置で、回転可能なように、シャフト48によって回転可能に支持されている。
【0075】
シャフト48は、シート材料19の幅寸法よりも大きな長さ寸法に形成されており、その両端部がシート材料19の両側外方にはみ出るように配設される。一対のシャフト48は、図示省略の支持部によってシート材料の一方主面側及び他方主面側のそれぞれで、図示省略の支持部によって回転可能に支持されている。
【0076】
シャフト48には、ヒータ149が設けられている。ヒータ149は、ローラ40を加熱するものであり、ここでは、棒状のヒータ149がシャフト48内に挿通されている。そして、ヒータ149の熱がシャフト48を介してローラ40に伝わり、これにより、ローラ40が加熱されるようになっている。
【0077】
なお、一対のローラ40が加熱されることは必須ではない。例えば、シャフト48内に、冷媒等を流し、ローラ40を冷却するようにしてもよい。
【0078】
一対のローラ40は、一対のシャフト48のそれぞれに対して回転不能に取付けられている。ローラ40は、円柱状に形成されており、その長さ寸法は、シート材10に対して加工を行う幅(ここでは、シート材10の長さ方向寸法(柔軟部分12に対して直交する方向の寸法)と同じ)と同じに設定されている。
【0079】
ローラ40の外周面には、凹凸形状として、非圧縮用凹部42が形成されている。より具体的には、ローラ40の外周面には、その長手方向に沿って間隔をあけて複数の非圧縮用凹部42が形成されている。非圧縮用凹部42は、ローラ40の外周面の周方向に沿って連続的に凹む溝形状に形成されている。非圧縮用凹部42の幅は、シート材10における柔軟部分12の幅と同じに設定されている。非圧縮用凹部42の深さは、一対のローラ40によってシート材料19を挟み込んだ状態で、当該シート材料19の表面が非圧縮用凹部42の底部に接触しない程度に設定されていることが好ましいが、これは必須ではない。
【0080】
非圧縮用凹部42の各間の寸法、及び、両端の非圧縮用凹部42とローラ40の端部との間の寸法は、シート材10の高剛性部分14の幅と同じに設定されている。一対のローラ40のそれぞれに上記非圧縮用凹部42が形成されており、一対のローラ40は、それぞれの非圧縮用凹部42を対向させた状態で、シート材料19を挟込むように配設される。
【0081】
シャフト48の一端部にはギヤ49が回転不能に取付けられている。ギヤ49は、平歯車であり、一対のシャフト48の一端部のギヤ49が噛合っている。これにより、一対のローラ40は、同期して互いに反対方向に回転するようになっている。
【0082】
一対のローラ40がシート材料19を挟込んだ状態では、ローラ40の外周面のうち非圧縮用凹部42が形成された部分以外の部分は、シート材料19を比較的高い圧縮度合で挟込んでおり、非圧縮用凹部42が形成された部分では、シート材料19を圧縮していないか若しくは比較的低い圧縮度合で挟込んでいる(
図4参照)。
【0083】
また、一方のローラ40(ここでは、上側のローラ40)が取付けられたシャフト48の他端部と、一方の第1搬送用回転体95のシャフト95a(ここでは上側のシャフト95a)の他端部とに、連動ベルト97eが巻掛けられている。これにより、回転駆動部97aによる回転運動が、一対の第1搬送用回転体95及び連動ベルト97eを介して、一方のシャフト48に伝達され、一対のローラ40も、一対の第1搬送用回転体95、一対の第2搬送用回転体96等と連動して回転する。なお、一対のローラ40は、シート材料19の搬送に伴って、従動回転する構成であってもよい。
【0084】
また、ここでは、一対のローラ40は、シート材料19の両側部を除き、その中間部を挟むように配設されている。もっとも、一対のローラ40は、シート材料19の幅方向全体を挟込み、その両側部をも高剛性に加工するものであってもよい。
【0085】
<ローラ式冷却機構について>
ローラ式冷却機構270は、一対の後続ローラ272と、冷媒を冷却する冷却装置(チラー)276と、冷媒管278とを備える。
【0086】
一対の後続ローラ272は、一対のローラ40に対してシート材料19の搬送路Pの下流側で、シート材料19を挟込み可能に構成されている。
【0087】
ここでは、一対の後続ローラ272は、上記ローラ40と同様形状に形成されており、外周面に、上記非圧縮用凹部42と同様の非圧縮用凹部273が形成されている。一対の後続ローラ272は、ローラ40に対してなるべく近くに設けられていることが好ましい。なお、一対の後続ローラ272の外径と、一対のローラ40の外径とは異なっていてもよい。
【0088】
一対の後続ローラ272は、一対のローラ40の下流側で、当該一対のローラ40から送出されるシート材料19を両面側から挟む位置で、回転可能なように、一対のシャフト274によってそれぞれ回転可能に支持されている。なお、シャフト274は、上記シャフト48と同様構成であり、図示省略の支持部によって回転可能に支持されている。
【0089】
また、一対のシャフト274の一端部には、ギヤ274aが回転不能に取付けられている。ギヤ274aは、上記ギヤ49と同様構成であり、一対のシャフト274の一端部のギヤ274aが噛合っている。これにより、一対の後続ローラ272は、同期して互いに反対方向に回転するようになっている。
【0090】
また、一対のシャフト274の一方(ここでは下側)の他端部と一対のシャフト48の一方(ここでは下側)の他端部に、連動ベルト97fが巻掛けられている。これにより、回転駆動部97aの回転軸97bの回転運動が、連動ベルト97fを介して一方のシャフト274にも伝達され、これにより、一対の第1搬送用回転体95、一対の第2搬送用回転体96及び一対のローラ40と同期して、一対のシャフト274及び一対の後続ローラ272が回転する。
【0091】
冷却装置276は、冷媒を冷却する圧縮機を備えている。冷媒管278は、冷却装置276と一方のシャフト274の一端部との間、一対のシャフト274の他端部間、及び、他方のシャフト274の一端部と冷却装置276とを連結するように配設されている。これにより、冷却装置276によって冷却された冷媒が、一対のシャフト274を通って一対の後続ローラ272を冷却しつつ循環するようになっている。
【0092】
そして、一対のローラ40によって加熱されたシート材料19を、後続ローラ272によって挟込んでより直接的に冷却することができるようになっている。これにより、柔軟部分12については予熱が伝わるのを抑制してより柔軟に加工でき、高剛性部分14については接着樹脂が硬化する前に自己の復元力によって原形に戻ってしまうのを抑制してより高剛性に加工することができる。
【0093】
また、後続ローラ272のうち非圧縮用凹部273が形成された部分では、加熱直後のシート材料19をなるべく圧縮しない状態に保つことができるので、当該後続ローラ272によって柔軟部分12が圧縮されてしまうことを抑制できる。また、後続ローラ272のうち非圧縮用凹部273が形成された部分以外の部分では、シート材料19が圧縮されつつ冷却されるので、より高剛性に加工される。
【0094】
このように、本ローラ式冷却機構270を設けることで、硬い部分と柔軟な部分とをより明確に作り分けることができる。
【0095】
なお、本ローラ式冷却機構270が設けられていることは必須ではなく、自然冷却等によってシート材料を冷却してもよい。
【0096】
<加熱機構について>
加熱機構60は、シート材料19が一対のローラ40で挟込まれる位置及びその位置よりも前記搬送路Pの上流側の位置の少なくとも1箇所で、シート材料19を加熱可能に構成されている。
【0097】
ここでは、加熱機構60が、第1加熱機構として、シート材料19が一対のローラ40で挟込まれる位置よりも前記搬送路Pの上流側の位置で、シート材料19を加熱する例を説明する。
【0098】
加熱機構60は、熱風吹出部62と、熱風発生部64と、これらの間を連結する熱風管66とを備える。
【0099】
熱風吹出部62は、搬送路Pのうち一対の第1搬送用回転体95と一対のローラ40との間、ここでは、当該間に沿って搬送されるシート材料19の一方主面側(
図5では上側)の位置に設けられている。熱風吹出部62は、シート材料19の幅と同程度の幅を有する偏平な箱形状に形成されている。熱風吹出部62のうちシート材料19に対向する部分には、熱風吹出口が設けられている。
【0100】
熱風発生部64は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する等することで、気体(例えば、空気)を加熱するヒータと、気体を熱風吹出部62に向けて送出す送風機構等を備えている。熱風発生部64と熱風吹出部62とは、熱風管66によって連結されている。
【0101】
そして、熱風発生部64によって加熱された気体が、上記熱風管66を通って熱風吹出部62に向けて送られ、熱風吹出口から吹出される。そして、シート材料19が熱風吹出部62のうち熱風吹出口の対向領域を通過する際に、熱風吹出口から吹出された熱風がシート材料19の幅方向全体に亘って吹付けられ、これにより、シート材料19が加熱される。熱風吹出口から吹出される熱風の温度は、シート材料19を接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱できる温度であり、好ましくは、シート材料19を接着樹脂の融点よりも高い温度で、かつ、基本繊維の融点よりも低い温度に加熱できる温度である。
【0102】
なお、加熱機構としては、上記の他、シート材料19を直接加熱する赤外線ヒータ等が用いられてもよい。
【0103】
なお、上記ローラ40に組込まれたヒータ149は、シート材料19を加熱する第2加熱機構である。すなわち、本装置では、加熱機構は、第1加熱機構としての加熱機構60と、第2加熱機構としてのヒータ149とを備える。
【0104】
<一対の第2搬送用回転体について>
ところで、第2搬送用回転体96の一対の搬送用ローラ96bは、一対のローラ40よりも搬送路Pの下流側の位置に設けられている。そして、加熱され少なくとも一部で高剛性となるように加工されたシート材料19を挟込んで、当該シート材料19を搬送路Pに沿って送る。加熱されたシート材料19は、一対のローラ40による挟込みの有無に拘らず、加熱によって幾分収縮し、滑りやすい表面形状を呈する。シート材料19の両側部が一対のローラ40によって実際に挟込まれていれば、シート材料19の両側部は加圧圧縮され、より、滑りやすい表面形状を呈する。
【0105】
このため、一対の搬送用ローラ96bによって、加熱後のシート材料19を挟込んで送出そうとしても、一対の搬送用ローラ96bの外周面が加熱後のシート材料19の表面に対して滑ってしまい、第2搬送用回転体96がシート材料19をうまく送出せない事態が生じ得る。そうすると、搬送路Pにおいて、第2搬送用回転体96の手前で、シート材料19が弛んでしまう恐れがある。これにより、後工程での諸処理、例えば、シート材料19を裁断する処理等をうまく行えない恐れがある。
【0106】
そこで、上下一対の搬送用ローラ96bの少なくとも一方、ここでは、上下一対の搬送用ローラ96bの両方の外周表面に、滑り抑制用凹凸部196が形成されている(
図3及び
図5参照)。
【0107】
ここでは、搬送用ローラ96bの外周表面に、その周方向に交差する2方向の複数の平行溝を形成することによって、換言すれば、アヤ目状の複数の溝を形成することによって、滑り抑制用凹凸部196を形成している。搬送用ローラ96bの外周表面には、アヤ目状に線状突起が形成されていてもよい。
【0108】
これにより、搬送用ローラ96bの外周面が、加熱されたシート材料19の表面に対して摩擦力が大きくなって滑り難くなり、上下一対の搬送用ローラ96bがシート材料19をより確実に送出せるようになる。
【0109】
<動作について>
以上のように構成されたシート材の製造装置30の動作について説明する。
【0110】
まず、初期状態において、シート供給部92から引出されたシート材料19が、一対の第1搬送用回転体95間、熱風吹出部62の下方、一対のローラ40間、一対の後続ローラ272間、及び、一対の第2搬送用回転体96間を通って、搬送路Pに沿って配設されるようにする。
【0111】
この状態で、熱風吹出部62から熱風を吹出し、ヒータ149により一対のローラ40を加熱し、さらに、冷却装置276により一対の後続ローラ272を冷却した状態で、回転駆動部97aの駆動により、一対の第1搬送用回転体95、一対のローラ40、一対の後続ローラ272、及び、一対の第2搬送用回転体96を回転させる。
【0112】
すると、シート供給部92から連続的に引出されるシート材料19が、搬送方向上流側で、熱風吹出部62からの熱風によって加熱される。この際の加熱温度は、接着樹脂の融点よりも低い温度(僅かに低い温度)であることが好ましい。
【0113】
この後、シート材料19は、熱風吹出部62の下流側から一対のローラ40間に送込まれる。
【0114】
一対のローラ40で挟込まれたシート材料19は、ローラ40の外周面のうち非圧縮用凹部42が形成された部分以外の部分では、接着樹脂の融点以上の温度に加熱されつつ、比較的高い圧縮度合で挟込まれる。これにより、シート材料19のうち、ローラ40の外周面のうち非圧縮用凹部42が形成された部分以外の部分で挟込まれた部分は、比較的薄くかつ高剛性に保たれた高剛性部分14に加工される。
【0115】
また、一対のローラ40で挟込まれたシート材料19は、ローラ40の外周面のうち非圧縮用凹部42の部分では、圧縮されず、又は、比較的低い圧縮度合で挟込まれる。これにより、シート材料19のうち、ローラ40の外周面のうち非圧縮用凹部42の部分で挟込まれた部分は、比較的厚くかつ柔軟性を保った柔軟部分12に加工される。
【0116】
次に、シート材料19は、一対のローラ40間から一対の後続ローラ272に向けて送込まれる。
【0117】
一対の後続ローラ272によって、シート材料19が挟込まれることで、シート材料19は直接的に冷却される。このため、柔軟部分12については予熱が伝わるのを抑制してより柔軟に加工でき、高剛性部分14については接着樹脂が硬化する前に自己の復元力によって原形に戻ってしまうのを抑制してより高剛性に加工することができる。
【0118】
次に、シート材料19は、左右組の一対の搬送用ローラ96bによって挟込まれて、一対の後続ローラ272間から引出され、外部に向けて送出される。この際、一対の搬送用ローラ96b間でシート材料19が滑り難いため、それよりも上流側の一対の後続ローラ272による送出し速度と同期して、シート材料19を搬送することができる。このため、一対の搬送用ローラ96bよりも上流側でシート材料19が垂れにくく、シート材料19を円滑に送出すことができる。
【0119】
シート供給部92より供給されるシート材料19に対して連続的に上記加工が行われることで、シート材料19の長手方向に沿って、少なくとも部分的に高剛性に加工されたシート材料19を得ることができ、かかる、シート材料19をその長手方向において分割するように切断することで、上記シート材10を製造することができる。
【0120】
<効果等>
このように、本実施形態に係るシート材の製造装置30及び製造方法によると、一対の搬送用ローラ96bの少なくとも一方の外周表面に滑り抑制用凹凸部196が形成されているため、一対の搬送用ローラ96bのうち滑り抑制用凹凸部196が形成されたものとシート材料19との間で滑りを抑制でき、シート材料19を連続的に加工する際において、当該シート材料19をより確実に搬送できる。これにより、本製造装置30におけるシート材料19の搬送失敗による装置の可動停止を抑制でき、また、本製造装置30の下流側でのシート材料19の裁断等をより確実に実施でき、本製造装置30の稼働率を向上させることができる。
【0121】
また、搬送用ローラ96bの外周表面に滑り抑制用凹凸部196を形成することで、簡易かつ安価な構成で、滑りを抑制することが可能となる。
【0122】
なお、シート材料19を挟む一対の搬送用ローラ96bのうち少なくとも一方に、滑り抑制用凹凸部196が形成されていれば、少なからず、シート材料19の滑りを抑制してより確実にシート材料19を搬送することができる。なお、シート材料19を挟む一対の搬送用ローラ96bのうちの一方だけに、滑り抑制用凹凸部196を設ければ、より安価にシート材料19の滑りを抑制することができる。
【0123】
なお、搬送用ローラ96bに形成される滑り抑制用凹凸部196の形状は上記例に限られない。
【0124】
例えば、
図6に示すように、搬送用ローラ96bに対応する搬送用ローラ296bの外周表面に対して、その軸方向に対して平行な複数の溝(又は線状突起)が並列状に形成されることで、滑り抑制用凹凸部296が形成されていてもよい。その他、搬送用ローラの外周表面に対して、細かい点状突起又は点状凹部が多数形成されることで、滑り抑制用凹凸部196が形成されていてもよい。
【0125】
もっとも、搬送用ローラ96bのように、アヤ目状の滑り抑制用凹凸部196が形成されていれば、簡易に滑り抑制用凹凸部196を形成することができ、また、搬送用ローラ96bの軸方向においてもシート材料19の滑りを有効に抑制することができるというメリットがある。
【0126】
<変形例>
なお、加熱機構として、加熱機構60及びヒータ149の双方を設けることは必須ではない。もっとも、シート材料19を、加熱機構60だけで加熱した場合、或は、ヒータ149によって一対のローラ40だけで加熱した場合には、シート材料19を、接着樹脂の融点以上に一気に加熱するため、各加熱温度を比較的高温にする必要があり、柔軟にすべき部分も硬くなってしまう恐れがある。これに対して、加熱機構60によってシート材料19をある程度予備加熱(例えば、接着樹脂の融点未満の温度に加熱)した後に、本一対のローラ40によって主として高剛性に加工すべき部分を、接着樹脂の融点以上に加熱することが可能となり、柔軟にすべき部分を柔軟に保つことができる。これにより、高剛性に加工すべき部分と柔軟にすべき部分とを明確に作り分けることができる。
【0127】
また、ローラ式冷却機構270は省略されてもよい。また、一対のローラ40に、シート材料19を所定形状(例えば、搬送路Pに沿って連続して凹む形状)に形成するための凹凸形状が形成されていてもよい。また、シート材料19の搬送路Pの途中に、シート材料19を部分的にカットして切断容易な線(例えば、ミシン目等)するプレス刃等が設けられていてもよい。
【0128】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。