【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、酢酸の製造方法の方法を提供し、該方法は、
(a)メタノールおよび/またはその反応性誘導体並びに一酸化炭素を、カルボニル化触媒、随意にカルボニル化触媒促進剤、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸および水を含む液体反応組成物を含有する第1の反応域に導入する工程、
(b)第1の反応域から、少なくとも一部の液体反応組成物を、溶解および/または同伴する一酸化炭素並びに他のガスとともに取り出す工程、
(c)取り出された液体反応組成物の少なくとも一部を、溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部が消費される第2の反応域へ送る工程、
(d)少なくとも一部の液体反応組成物を第2の反応域からフラッシュ分離域へ送り、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、および一酸化炭素含有低圧排気を含む蒸気画分、並びにカルボニル化触媒および随意にカルボニル化触媒促進剤を含む液体画分を形成する工程、
(e)蒸気画分をフラッシュ分離域から1つ以上の蒸留域へ送り、酢酸生成物を回収する工程からなり、
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度が、170〜195℃の範囲であり、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より少なくとも8℃高い。
【0011】
本発明の方法において、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、第1の反応域液体から取り出された反応組成物の温度より少なくとも8℃高い。この温度の上昇により、フラッシュ分離域において、カルボニル化触媒および随意のカルボニル化触媒促進剤から酢酸および他の凝縮可能成分をより良く分離できるようになる。これにより、フラッシュ分離域からの蒸気画分は、より酢酸に富み、これにより、より高い収率で酢酸を得ることが可能になる。さらに、液体画分の容量および流速が、減じるであろう。
【0012】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけて、液体反応組成物の温度を上げることにより、そうしなければ採用されたであろう温度より低い温度で、第1の反応域を稼働することができる。第1の反応域の低下した温度での稼働により、一酸化炭素の分圧の増加がもたらされるであろう。一酸化炭素の分圧の増加によりカルボニル化の速度の増加がもたらされるであろうから、これは好都合で有りうる。
【0013】
あるいは、カルボニル化の速度の増加が望ましくない場合、例えば、高圧の排気を第1の反応域から放出する速度を減じることによって、一酸化炭素の分圧を維持することができる。このことは、一酸化炭素の大気への消失が減少されるので、好都合である。
【0014】
これにより、本発明は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造のより良い方法を提供する。特に、上述のように、酢酸生成物の収率が向上し、それにより、より経済的な方法が提供される。
【0015】
本発明の方法において、適切なメタノールの反応性誘導体として、酢酸メチル、ジメチルエーテルおよびヨウ化メチルが挙げられる。本発明の方法において、メタノールおよび/またはその反応性誘導体の混合物を反応物として用いてもよい。好ましくは、メタノールおよび/または酢酸メチルが、反応物として用いられる。
【0016】
酢酸メチルは、メタノールおよび/またはその反応性誘導体が酢酸生成物または溶媒と反応することによって、液体反応組成物中において、その場(in situ)で形成されうる。好ましくは、第1の反応域における液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、2〜50重量%の範囲であり、より好ましくは、3〜35重量%である。
【0017】
好ましくは、第1の反応域における液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、独立して、1〜20重量%の範囲であり、好ましくは、2〜16重量%である。
【0018】
本発明の方法では、VIII族貴金属のカルボニル化触媒を採用してよい。好ましくは、カルボニル化触媒は、ロジウム、イリジウムまたはその混合物を含む。触媒がロジウムである場合、随意のカルボニル化触媒促進剤は、例えば、ヨウ化リチウムなどのヨウ化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ土類金属、アルミニウム族金属のヨウ化物および/または有機ヨウ化物塩から成る群から選ばれうる。触媒が、イリジウムの場合などの、随意のカルボニル化触媒促進剤は、ルテニウム、オスミウム、レニウムおよびその混合物からなる群から選ばれうる。
【0019】
カルボニル化触媒がイリジウムである場合、イリジウム触媒は、液体反応組成物に可溶な、任意のイリジウム含有化合物を含んでよい。イリジウム触媒は、液体反応組成物に可溶であるか可溶な形態に変換可能である、いずれの適切な形態で、液体反応組成物に加えられてもよい。好ましくは、イリジウムは、例えば、水および/または酢酸などの1つ以上の液体反応組成物成分に可溶な酢酸塩などの塩化物を含まない化合物として使用してよく、従って、そのなかで溶液として反応に加えられてよい。液体反応組成物に加えられてよい適切なイリジウム含有化合物として、IrCl
3、IrI
3、IrBr
3、[Ir(CO)
2I]
2、[Ir(CO)
2Cl]
2、[Ir(CO)
2Br]
2、[Ir(CO)
4I
2]
−H
+、[Ir(CO)
2Br
2]
−H
+、[Ir(CO)
2I
2]
−H
+、[Ir(CH
3)I
3(CO)
2]
−H
+、Ir
4(CO)
12、IrCl
3.4H
2O、IrBr
3.4H
2O、Ir
3(CO)
12、イリジウム金属、Ir
2O
3、IrO
2、Ir(acac)(CO)
2、Ir(acac)
3、酢酸イリジウム、[Ir
3O(OAc)
6(H
2O)
3][OAc]および六塩化イリジウム酸H
2[IrCl
6]、好ましくは、酢酸塩、シュウ酸塩およびアセト酢酸塩などのイリジウムの塩化物を含まない錯体が挙げられる。
【0020】
好ましくは、第1のおよび第2の反応域における、液体反応組成物中のイリジウム触媒の濃度は、独立して、イリジウムの重量で100〜6000ppmの範囲である。
【0021】
カルボニル化触媒がイリジウムの場合、カルボニル化触媒促進剤は、好ましくは、ルテニウムである。促進剤は、液体反応組成物に可溶である、任意のルテニウム含有化合物を含んでよい。ルテニウム促進剤は、液体反応組成物に可溶であるか可溶な形態に変換可能である、いずれかの適切な形態で、液体反応組成物に加えられうる。好ましくは、ルテニウム促進剤化合物は、例えば、水および/または酢酸などの1つ以上の液体反応組成物成分に可溶な酢酸塩などの塩化物を含まない化合物として使用してよく、従って、そのなかで溶液として反応に加えてよい。
【0022】
使用することのできる適切なルテニウム含有化合物として、ルテニウム塩化物(III)、ルテニウム塩化物(III)三水和物、ルテニウム塩化物(IV)、ルテニウム臭化物(III)、ルテニウムヨウ化物(III)、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、ギ酸ルテニウム(III)、[Ru(CO)
3I
3]
−H
+、テトラ(アセト)クロロルテニウム(II,III)、酢酸ルテニウム(III)、プロピオン酸ルテニウム(III)、酪酸ルテニウム(III)、ペンタカルボニルルテニウム、トリルテニウムドデカカルボニル、およびジクロロトリカルボニルルテニウム(II)ダイマー、ジブロモトリカルボニルルテニウム(II)ダイマーなどの混合ルテニウムハロカルボニル、およびテトラクロロビス(4−サイメン)ジルテニウム(II)、テトラクロロビス(ベンゼン)ジルテニウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)ルテニウム(II)ポリマーおよびトリス(アセチルアセトネート)ルテニウム(III)などの他の有機ルテニウム錯体が挙げられる。
【0023】
好ましくは、ルテニウム含有化合物は、例えばアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩または他の金属塩といった、反応を阻害しうるイオン性のヨウ化物を供与したり、その場(in−situ)で生じたりする不純物を含まない。
【0024】
好ましくは、ルテニウム促進剤は、1つ以上の蒸留域からカルボニル化反応域へリサイクルされた液体反応組成物、液体画分および/またはいかなる液体プロセスストリームにおける溶解度まで、有効量で存在する。
【0025】
ルテニウム促進剤は、液体反応組成物において、各ルテニウム促進剤:イリジウムのモル比が[0.1〜100]:1、好ましくは[0.5超]:1、より好ましくは[1超]:1、並びに、好ましくは[20以下]:1、より好ましくは、[15以下]:1、およびさらに好ましくは、[10以下]:1の範囲で、適切に存在する。
【0026】
第1および第2の反応域の各々において、液体反応組成物中のルテニウム促進剤の濃度は、独立して、6000ppm未満である。適切な促進剤濃度は、400〜5000ppm、例えば2000〜4000ppmである。
【0027】
適切なロジウムカルボニル化触媒は、例えば欧州特許出願公開第0161874明細書、米国特許第6,211,405号明細書および欧州特許出願公開第0728727号明細書に記載されている。
【0028】
カルボニル化触媒がロジウムの場合、液体反応組成物中のロジウム触媒濃度は、好ましくは、ロジウムの重量で、50〜5000ppm、好ましくは、100〜1500ppmの範囲である。
【0029】
ロジウムが、触媒として用いられる場合、例えば欧州特許出願公開第0161874号明細書、米国特許第6,211,405号明細書および欧州特許出願公開第0728727号明細書に記載のように、ヨウ化リチウムなどのヨウ化アルカリ金属が、促進剤として好ましくは用いられる。
【0030】
一酸化炭素は、第1の反応域に、1×10
5〜7×10
6Nm
−2、好ましくは、1×10
5〜3.5×10
6Nm
−2の分圧で適切に存在する。
【0031】
水は、例えばメタノールと酢酸生成物のエステル化反応によって、液体反応組成物において、その場(in situ)で形成されうる。さらにまたはあるいは、水は、液体反応組成物の他の成分とともにまたは別に、第1の反応域に独立して導入されることができる。イリジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第1の反応域における、液体反応組成物中の水の量は、適切には最高15重量%まで、例えば少なくとも0.5重量%、10重量%まで、好ましくは8重量%までである。ロジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第1の反応域における水の量は、好ましくは0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは、1〜8重量%の範囲である。
【0032】
第1の反応域は、従来の液相カルボニル化反応域を含んでよい。第1の反応域は、1×10
6〜2×10
7Nm
−2、好ましくは1.5×10
6〜1×10
7Nm
−2、より好ましくは1.5×10
6〜5×10
6Nm
−2の範囲の反応圧力で稼働してよい。
【0033】
本発明の方法の工程b)において、液体反応組成物の少なくとも一部は、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに、第1の反応域から取り出され、工程c)において、取り出された液体並びに溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部は、第2の反応域に送られ、そこで、溶解および/または同伴する一酸化炭素は、さらなるカルボニル化によって消費され、さらなる酢酸を製造する。好ましくは、実質的にすべての液体反応組成物が、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに第1の反応域から取り出され、第2の反応域に送られる。
【0034】
好ましくは、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度は、185〜195℃の範囲である。
【0035】
第2の反応域は、第1の反応域の反応圧力と実質的に同じ反応圧力で稼働してよい。
【0036】
好ましくは、第2の反応域は、第1の反応域の容量の5〜20%、より好ましくは、10〜20%の範囲の容量を有する。
【0037】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前に、液体反応組成物の温度を上げることは、第1の反応域から取り出された液体反応組成物に溶解および/または同伴する一酸化炭素に加え、一酸化炭素を第2の反応域へ導入することによって達成することができる。
【0038】
あるいはまたはさらに、温度上昇は、第2の反応域に熱を加えることによって達成することができる。
【0039】
追加の一酸化炭素を第2の反応域へ導入することにより、そこで起こるカルボニル化の量が増加する。未反応のメタノールが存在しない場合、カルボニル化の増加により、液体反応組成物中に存在する酢酸メチルおよび水が消費され、酢酸が形成される。具体的には、1モルの酢酸メチル、1モルの水および1モルの一酸化炭素により、2モルの酢酸が生成されるであろう。そのような酢酸メチルのカルボニル化は、発熱性であり、従って、このカルボニル化により、第2の反応域における温度上昇がもたらされる。
【0040】
第2の反応域に導入することのできる追加の一酸化炭素の適当な量は、第1の反応域に導入された一酸化炭素の全量の0.5〜20%、好ましくは1〜15%、より好ましくは1〜10%である。
【0041】
一酸化炭素は、第2の反応域に、1×10
5〜3.5×10
6Nm
−2、好ましくは1×10
5〜1.5×10
6Nm
−2の範囲の分圧で適切に存在する。
【0042】
第2の反応域におけるカルボニル化の増加は、それ自体、多くの利点がある。特に、酢酸が製造されるため、フラッシュ分離域における蒸気画分は、さらに酢酸に富むであろう。また、酢酸メチルおよび水が消費されるため、そうでない場合に必要とされるであろうエネルギーより少ない必要エネルギーで、生成物酢酸が軽質成分(酢酸メチルおよび水を含む)から分離されるであろう。
【0043】
あるいは、酢酸メチルおよび水が、第2の反応域において消費されるので、第1の反応域は、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の組成に悪影響を与えることなく、より高い酢酸メチルおよび水の濃度で稼働されうる。また、メタノールカルボニル化プロセスにおける副産物の形成は、酢酸メチルおよび水の濃度が増加するにしたがって、減少する傾向にあるので、より高い酢酸メチルおよび水の濃度で、第1の反応域を稼働することにより、副産物を全体的に減少させることができる。
【0044】
第2の反応域における液体反応組成物の全滞留時間は、適切には、10秒〜5分、好ましくは、30秒〜3分の範囲である。
【0045】
追加の一酸化炭素が第2の反応域に導入される場合、その追加の一酸化炭素は、第2の反応域内の複数の場所に別々に供給されてよい。そのような追加の一酸化炭素は、H
2、N
2、CO
2およびCH
4などの不純物を含有してよい。追加の一酸化炭素は、第1の反応域からの高圧の排気で構成されていてよく、これにより、第1の反応域はより高いCO圧力での稼働が可能となり、結果として一酸化炭素のより速い流れが第2の反応域に供給される。さらに、これにより、高圧の排気処理の必要性を取り除くことができる。
【0046】
また、追加の一酸化炭素は、例えば別のプラントからの一酸化炭素に富んだストリームなどの、別の一酸化炭素含有ガスストリームで構成されていてよい。
【0047】
イリジウムにより触媒され、ルテニウムにより促進されたカルボニル化プロセスにおいて、第1および第2の反応域に導入された一酸化炭素の全量が、イリジウム触媒および/またはルテニウム促進剤の沈澱を最小限にするのに十分であることが好ましい。欧州特許第1506151号明細書によると、フラッシュ分離域で形成された蒸気画分から複数の蒸留域に分けることのできる、低圧排気中の一酸化炭素の濃度を、式Y>mX+C(式中、Yは低圧排気中の一酸化炭素のモル濃度、Xは液体反応組成物中のルテニウムの重量ppm濃度、mは約0.012、Cは約−8.7)にしたがって、維持することにより、(イリジウム触媒およびルテニウム促進剤である)触媒系の沈澱が最小限となる。本発明の方法において、低圧排気中の一酸化炭素の濃度は、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度に対して、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、10℃上昇する毎に、mX+Cの値より約15モル%高いことが好ましい。
【0048】
好ましくは、第1および第2の反応域は、溶解および/または同伴する一酸化炭素を含む液体反応組成物を第1の反応容器から取り出して第2の反応容器に送る手段で別々の反応容器に維持される。適切な独立した第2の反応容器反応容器は、栓流反応器として働くことができる容器を含んでより。例えば、第2の反応容器は、第1の反応容器とフラッシュ分離域との間のパイプの部分であってよい。
【0049】
あるいは、第2の反応容器は、例えばシールパン(seal pan)といった第1の反応容器の一体化した部分を含んでよい。さらなる実施形態において、第2の反応域は、第1の反応容器の一体化した部分と独立した第2の反応容器の両方を含みうる。第2の反応域の設計は、適切には、例えば、第2の反応域における逆混合を最小限にする、または実質的に排除するものである。
【0050】
好ましくは、第2の反応域における液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、2〜40重量%、より好ましくは、2〜25重量%の範囲である。
【0051】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけての液体反応組成物の温度の増加が、第2の反応域への追加の一酸化炭素の導入によって達成される場合、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、好ましくは、第1の反応域から取り出された反応組成物中の酢酸メチルの濃度より、少なくとも1.5重量%低い。
【0052】
イリジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第2の反応域における液体反応組成物中の水の量は、適切には、少なくとも0.5重量%、最大15重量%まで、例えば10重量%まで、好ましくは、8重量%までである。ロジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第2の反応域における水の量は、好ましくは0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜8重量%の範囲である。
【0053】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけての液体反応組成物の温度の増加が、第2の反応域への追加の一酸化炭素の導入によって達成される場合、フラッシュ分離域に送られた液体反応組成物中の水の濃度は、好ましくは、第1の反応域から取り出された反応組成物中の水の濃度より少なくとも0.4重量%低い。
【0054】
好ましくは、第2の反応域における液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、1〜20重量%,好ましくは2〜16重量%の範囲である。
【0055】
本発明の方法の工程d)において、工程c)からの液体反応組成物の少なくとも一部は、フラッシュ分離域へ送られる。適切に、工程c)からの液体反応組成物の実質的にすべては、フラッシュ分離域に送られる。あるいは、工程c)からの液体反応組成物の1つ以上の部分は、第2の反応域から取り出され、例えば、廃熱ボイラーループ(loop)へ送られてよい。
【0056】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、215℃以下である。フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度を215℃以下に維持することにより、カルボニル化触媒および/またはカルボニル化触媒促進剤の分解など、いくつかの不利な点を回避しうる。
【0057】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、195〜215℃、より好ましくは、200〜215℃の範囲である。
【0058】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物は、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より10〜20℃高い温度である。
【0059】
液体反応組成物は、フラッシングバルブを介して、フラッシュ分離域に送られてよい。
【0060】
フラッシュ分離域は、断熱性のフラッシュ容器を含んでよい。あるいは、フラッシュ分離域は、加熱手段を含んでよい。
【0061】
フラッシュ分離域は、0〜10barg、好ましくは、0〜3bargの範囲の圧力で稼働してよい。
【0062】
好ましくは、フラッシュ分離域からの液体画分の少なくとも一部は、第1の反応域および/または第2の反応域にリサイクルされる。
【0063】
前述のように、フラッシュ分離域における分離の改善により、液体画分の量および流速の減少をもたらされる。これにより、少なくとも一部の液体画分が第1の反応域にリサイクルされる場合、液体画分の流速減少は、第1の反応域における冷却の低下をもたらすであろう。第1の反応域における冷却の低下によって、もしそうでなければ無駄に消費されたかもしれない熱を有用に活用できるようにし、それによって、プロセスのエネルギー必要量を減じられる。さらに、液体画分の流速が減少するので、第1の反応域から第2の反応域へ送られた液体反応組成物および第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の流速もまた減少するであろう。その結果、フラッシュ分離域へ送られたカルボニル化触媒および随意のカルボニル化触媒促進剤の単位時間当たりの量が、減少するであろう。また、蒸気画分は酢酸に富むので、フラッシュ分離域へ送られた触媒および随意の促進剤の生成された酢酸単位当たりの量もまた、減少するであろう。
【0064】
該方法の工程e)において、酢酸生成物は、フラッシュ分離域からの蒸気画分より蒸留によって回収される。蒸留域は、酢酸の製造において用いられる従来のいずれの蒸留装置であってもよい。例えば、蒸留域は、酢酸産物をヨウ化メチルおよび酢酸メチルなどの軽質成分から分離する、第1の蒸留カラムを含んでよい。軽質成分は、頂部において(overhead)除去され、第1のまたは第2の反応域にリサイクルされよい。他に頂部において除去されるのは、窒素、一酸化炭素、水素および二酸化炭素などの凝縮不能なガスを含む低圧排気である。そのような低圧排気ストリームは、排気処理セクションへ送られてよく、例えばフレアを介して大気に放出される前に、ヨウ化メチルなどいかなる凝縮可能な物質も除去される。蒸留域は、水およびより高い沸点をもつ副産物などのさらなる不純物を生成物酢酸から取り除くためのさらなる蒸留カラムを含んでよい。
【0065】
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度は、そこを通して液体反応組成物が取り出される第1の反応域の排気口で測定してよい。
【0066】
第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、そこを通して液体反応組成物が送られるフラッシュ分離域の注入口で測定することができる。液体反応組成物が、フラッシングバルブを介してフラッシュ分離域へ送られる場合、第2反応域から送られた液体反応組成物の温度は、フラッシングバルブにおいて測定されてよい。
【0067】
本発明の方法は、バッチまたは連続プロセスとして、好ましくは連続プロセスとして、行われうる。