特開2015-164971(P2015-164971A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015164971-酢酸の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-164971(P2015-164971A)
(43)【公開日】2015年9月17日
(54)【発明の名称】酢酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/12 20060101AFI20150821BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20150821BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150821BHJP
【FI】
   C07C51/12
   C07C53/08
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-129057(P2015-129057)
(22)【出願日】2015年6月26日
(62)【分割の表示】特願2010-547240(P2010-547240)の分割
【原出願日】2009年2月11日
(31)【優先権主張番号】08250564.5
(32)【優先日】2008年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591001798
【氏名又は名称】ビーピー ケミカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ブリーデン,クライブ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フルーム,サイモン,フレデリック,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘニガン,ショーン,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,スティーブン,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA22
4H006BA23
4H006BB17
4H006BC51
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD84
4H006BE40
4H006BS10
4H039CA65
4H039CF30
(57)【要約】
【課題】酢酸の改良された製造方法を提供する。
【解決手段】メタノールおよび/またはその反応性誘導体並びに一酸化炭素を、カルボニル化触媒、随意にカルボニル化触媒促進剤、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸および水を含む液体反応組成物を含有する第1の反応域に導入する工程、第1の反応域から、少なくとも液体反応組成物の一部を、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに取り出す工程、取り出された液体反応組成物の少なくとも一部を第2の反応域へ送る工程、少なくとも一部の液体反応組成物を第2の反応域からフラッシュ分離域へ送る工程を含み、第1の反応域液体から取り出された反応組成物の温度が170〜195℃の範囲であり、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、第1の反応域液体から取り出された反応組成物の温度より少なくとも8℃高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸の製造方法であって、
(a)メタノールおよび/またはその反応性誘導体並びに一酸化炭素を、カルボニル化触媒、随意にカルボニル化触媒促進剤、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸および水を含む液体反応組成物を含有する第1の反応域に導入する工程、
(b)第1の反応域から、少なくとも一部の液体反応組成物を、溶解および/または同伴する一酸化炭素並びに他のガスとともに取り出す工程、
(c)取り出された液体反応組成物の少なくとも一部を、溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部が消費される第2の反応域へ送る工程、
(d)少なくとも一部の液体反応組成物を第2の反応域からフラッシュ分離域へ送り、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、および一酸化炭素含有低圧排気を含む蒸気画分、並びにカルボニル化触媒および随意にカルボニル化触媒促進剤を含む液体画分を形成する工程、
(e)蒸気画分をフラッシュ分離域から複数の蒸留域へ送り、酢酸生成物を回収する工程からなり、
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度が、170〜195℃の範囲であり、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より少なくとも8℃高い、
酢酸の製造方法。
【請求項2】
第1の反応域における、液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度が、2〜50重量%、好ましくは、3〜35重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の反応域における、液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度が、1〜20重量%、好ましくは、2〜l6重量%の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カルボニル化触媒がイリジウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カルボニル化触媒促進剤が、ルテニウム、オスミウムおよびレニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カルボニル化触媒促進剤がルテニウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カルボニル化触媒がロジウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
カルボニル化触媒促進剤が、ヨウ化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ土類金属、アルミニウム族金属のヨウ化物および/または有機ヨウ化物塩からなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
カルボニル化触媒促進剤が、ヨウ化アルカリ金属でありヨウ化リチウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一酸化炭素が、1×10〜7×10Nm−2、好ましくは、1×10〜3.5×10Nm−2の分圧で、第1の反応域に存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1の反応域における液体反応組成物中の水の濃度が、少なくとも0.5重量%から15重量%まで、好ましくは、8重量%までである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
第1の反応域における液体反応組成物中の水の濃度が、0.1〜15重量%、好ましくは、1〜15重量%、より好ましくは、l〜8重量%の範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
第1の反応域が、1×10〜2×10Nm−2、好ましくは、1.5×10〜1×10Nm−2、より好ましくは、1.5×10〜5×10Nm−2の範囲にある反応圧力で稼働されてよい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1の反応域液体から取り出された液体反応組成物の実質的にすべてが、第2の反応域へ送られる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度が、185〜195℃の範囲である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
第2の反応域が、第1の反応域と実質的に同じ圧力で運転操作される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第2の反応域が、第1の反応域の容量の5〜20%、好ましくは、第1の反応域の容量の10〜20%の範囲にある容量を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第1の反応域から取り出された液体反応組成物中に溶解および/または同伴する一酸化炭素に加えて、一酸化炭素が第2の反応域へ導入される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
第2の反応域に導入された追加の一酸化炭素の量が、第1の反応域に導入された一酸化炭素の量の0.5〜20%、好ましくは、1〜15%、より好ましくは、1〜10%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の反応域に熱が加えられる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
一酸化炭素が、1×10〜3.5×10Nm−2、好ましくは、1×10〜1.5×10Nm−2の範囲の分圧で、第2の反応域に、適切に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第2の反応域における液体反応組成物の滞留時間が、適切には10秒〜5分、好ましくは30秒〜3分の間である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
追加の一酸化炭素が、第1の反応域からの高圧の排気から構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
低圧排気中の一酸化炭素の濃度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度に対してフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が10℃上昇する毎に、mX+Cの値より約15モル%高く、ここでXは液体反応組成物中のルテニウムの重量ppm濃度、mは約0.012、Cは約−8.7である、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
第1および第2の反応域が、別々の反応容器に維持される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第2の反応域が、プラグ流反応器として働くことができる容器を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
容器が、第1の反応域およびフラッシュ分離域の間のパイプの部分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第2の反応域における液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度が、2〜40重量%、好ましくは、2〜25重量%の範囲にある、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度より少なくとも1.5重量%低い、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
第2の反応域における液体反応組成物中の水の濃度が、少なくとも0.5重量%から15重量%まで、好ましくは、8重量%までである、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
第2の反応域における液体反応組成物中の水の濃度が、0.1〜15重量%、好ましくは、1〜15重量%、より好ましくは、1〜8重量%の範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項32】
フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物中の水の濃度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物中の水の濃度より少なくとも0.4重量%低い、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
第2の反応域における液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度が、1〜20重量%、好ましくは、2〜16重量%の範囲にある、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、215℃以下である、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、195〜215℃、好ましくは、200〜215℃の範囲である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より、10〜20℃高い、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
フラッシュ分離域が、断熱性のフラッシュ容器を含む、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
フラッシュ分離域からの液体画分が、第1の反応域および/または第2の反応域へリサイクルされる、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
プロセスが連続プロセスとして稼働される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタノールおよび/またはその反応性誘導体のロジウム触媒の存在下でのカルボニル化による酢酸の製造は、例えば、英国特許出願公開第1,233,121号明細書、欧州特許第0384652号明細書および欧州特許第0391680号明細書に記載されている。イリジウム触媒存在下での方法は、例えば、英国特許出願公開第1234641号明細書、米国特許第3772380号明細書、欧州特許第0616997号明細書、欧州特許第0618184号明細書、欧州特許第0786447号明細書、欧州特許第0643034号明細書、欧州特許第0752406号明細書に記載されている。
【0003】
Howardらは、Catalysis Today、18(1993)、325−354で、ロジウムおよびイリジウムで触媒される、メタノールの酢酸への一般的なカルボニル化を説明している。連続的に触媒される、均一なメタノールカルボニル化のプロセスは、反応、精製および排気処理の3つの基本的なセクションからなると言われている。反応セクションは、高温で稼働される攪拌槽型反応器およびフラッシュ容器を含む。液体反応組成物は、反応器から取り出され、フラッシングバルブを通してフラッシュ容器に送られ、そこで、凝縮される成分(生成物の酢酸を含む)および低圧の排気を含む蒸気画分が、液体画分から分離される。次いで、蒸気画分は精製セクションに送られ、一方で液体画分は反応器にリサイクルされる。精製セクションは、不純物を酢酸生成物から除去する一連の蒸留カラムを含むと言われている。
【0004】
欧州特許第0685446号明細書は、第1の反応器において、ロジウム触媒の存在下で、一酸化炭素ともにメタノールをカルボニル化することを含む、酢酸の調製法に関する。溶解した一酸化炭素を含有する反応液は、第1の反応器から第2の反応器へ送られ、そこで、溶解した一酸化炭素は、反応液がフラッシュ域に導入される前に、追加の一酸化炭素の供給なしにさらに反応する。
【0005】
欧州特許第0846674号明細書は、第1の反応域において、イリジウム触媒の存在下で一酸化炭素とともにアルキルアルコールをカルボニル化することを含み、少なくとも一部の液体反応組成物が、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに、第1の反応域から取り出され、第2の反応域へ送られ、取り出された反応組成物中の溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部が、反応組成物がフラッシュ域に送られる前に、第2の反応域において、さらにカルボニル化によって反応し、さらなるカルボン酸生成物を製造する、カルボン酸の製造のための液相プロセスを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第1,233,121号明細書
【特許文献2】欧州特許第0384652号明細書
【特許文献3】欧州特許第0391680号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第1234641号明細書
【特許文献5】米国特許第3772380号明細書
【特許文献6】欧州特許第0616997号明細書
【特許文献7】欧州特許第0618184号明細書
【特許文献8】欧州特許第0786447号明細書
【特許文献9】欧州特許第0643034号明細書
【特許文献10】欧州特許第0752406号明細書
【特許文献11】欧州特許第0685446号明細書
【特許文献12】欧州特許第0846674号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0161874明細書
【特許文献14】米国特許第6,211,405号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0728727号明細書
【特許文献16】欧州特許第1506151号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Catalysis Today、18(1993)、325−354、Howardら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
欧州特許第0685446号明細書および欧州特許第0846674号明細書のいずれも、第2の反応器にわたって温度が増加することにより、カルボニル化プロセスになんらかの有益な効果が得られうることを、教示または提案していない。
【0009】
一酸化炭素とのメタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造において、第2の反応器を通して液体反応組成物を送る際、液体反応組成物の温度が上昇する場合、意外にも、様々な利点が生じることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、酢酸の製造方法の方法を提供し、該方法は、
(a)メタノールおよび/またはその反応性誘導体並びに一酸化炭素を、カルボニル化触媒、随意にカルボニル化触媒促進剤、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸および水を含む液体反応組成物を含有する第1の反応域に導入する工程、
(b)第1の反応域から、少なくとも一部の液体反応組成物を、溶解および/または同伴する一酸化炭素並びに他のガスとともに取り出す工程、
(c)取り出された液体反応組成物の少なくとも一部を、溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部が消費される第2の反応域へ送る工程、
(d)少なくとも一部の液体反応組成物を第2の反応域からフラッシュ分離域へ送り、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、および一酸化炭素含有低圧排気を含む蒸気画分、並びにカルボニル化触媒および随意にカルボニル化触媒促進剤を含む液体画分を形成する工程、
(e)蒸気画分をフラッシュ分離域から1つ以上の蒸留域へ送り、酢酸生成物を回収する工程からなり、
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度が、170〜195℃の範囲であり、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より少なくとも8℃高い。
【0011】
本発明の方法において、第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、第1の反応域液体から取り出された反応組成物の温度より少なくとも8℃高い。この温度の上昇により、フラッシュ分離域において、カルボニル化触媒および随意のカルボニル化触媒促進剤から酢酸および他の凝縮可能成分をより良く分離できるようになる。これにより、フラッシュ分離域からの蒸気画分は、より酢酸に富み、これにより、より高い収率で酢酸を得ることが可能になる。さらに、液体画分の容量および流速が、減じるであろう。
【0012】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけて、液体反応組成物の温度を上げることにより、そうしなければ採用されたであろう温度より低い温度で、第1の反応域を稼働することができる。第1の反応域の低下した温度での稼働により、一酸化炭素の分圧の増加がもたらされるであろう。一酸化炭素の分圧の増加によりカルボニル化の速度の増加がもたらされるであろうから、これは好都合で有りうる。
【0013】
あるいは、カルボニル化の速度の増加が望ましくない場合、例えば、高圧の排気を第1の反応域から放出する速度を減じることによって、一酸化炭素の分圧を維持することができる。このことは、一酸化炭素の大気への消失が減少されるので、好都合である。
【0014】
これにより、本発明は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造のより良い方法を提供する。特に、上述のように、酢酸生成物の収率が向上し、それにより、より経済的な方法が提供される。
【0015】
本発明の方法において、適切なメタノールの反応性誘導体として、酢酸メチル、ジメチルエーテルおよびヨウ化メチルが挙げられる。本発明の方法において、メタノールおよび/またはその反応性誘導体の混合物を反応物として用いてもよい。好ましくは、メタノールおよび/または酢酸メチルが、反応物として用いられる。
【0016】
酢酸メチルは、メタノールおよび/またはその反応性誘導体が酢酸生成物または溶媒と反応することによって、液体反応組成物中において、その場(in situ)で形成されうる。好ましくは、第1の反応域における液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、2〜50重量%の範囲であり、より好ましくは、3〜35重量%である。
【0017】
好ましくは、第1の反応域における液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、独立して、1〜20重量%の範囲であり、好ましくは、2〜16重量%である。
【0018】
本発明の方法では、VIII族貴金属のカルボニル化触媒を採用してよい。好ましくは、カルボニル化触媒は、ロジウム、イリジウムまたはその混合物を含む。触媒がロジウムである場合、随意のカルボニル化触媒促進剤は、例えば、ヨウ化リチウムなどのヨウ化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ土類金属、アルミニウム族金属のヨウ化物および/または有機ヨウ化物塩から成る群から選ばれうる。触媒が、イリジウムの場合などの、随意のカルボニル化触媒促進剤は、ルテニウム、オスミウム、レニウムおよびその混合物からなる群から選ばれうる。
【0019】
カルボニル化触媒がイリジウムである場合、イリジウム触媒は、液体反応組成物に可溶な、任意のイリジウム含有化合物を含んでよい。イリジウム触媒は、液体反応組成物に可溶であるか可溶な形態に変換可能である、いずれの適切な形態で、液体反応組成物に加えられてもよい。好ましくは、イリジウムは、例えば、水および/または酢酸などの1つ以上の液体反応組成物成分に可溶な酢酸塩などの塩化物を含まない化合物として使用してよく、従って、そのなかで溶液として反応に加えられてよい。液体反応組成物に加えられてよい適切なイリジウム含有化合物として、IrCl、IrI、IrBr、[Ir(CO)I]、[Ir(CO)Cl]、[Ir(CO)Br]、[Ir(CO)、[Ir(CO)Br、[Ir(CO)、[Ir(CH)I(CO)、Ir(CO)12、IrCl.4HO、IrBr.4HO、Ir(CO)12、イリジウム金属、Ir、IrO、Ir(acac)(CO)、Ir(acac)、酢酸イリジウム、[IrO(OAc)(HO)][OAc]および六塩化イリジウム酸H[IrCl]、好ましくは、酢酸塩、シュウ酸塩およびアセト酢酸塩などのイリジウムの塩化物を含まない錯体が挙げられる。
【0020】
好ましくは、第1のおよび第2の反応域における、液体反応組成物中のイリジウム触媒の濃度は、独立して、イリジウムの重量で100〜6000ppmの範囲である。
【0021】
カルボニル化触媒がイリジウムの場合、カルボニル化触媒促進剤は、好ましくは、ルテニウムである。促進剤は、液体反応組成物に可溶である、任意のルテニウム含有化合物を含んでよい。ルテニウム促進剤は、液体反応組成物に可溶であるか可溶な形態に変換可能である、いずれかの適切な形態で、液体反応組成物に加えられうる。好ましくは、ルテニウム促進剤化合物は、例えば、水および/または酢酸などの1つ以上の液体反応組成物成分に可溶な酢酸塩などの塩化物を含まない化合物として使用してよく、従って、そのなかで溶液として反応に加えてよい。
【0022】
使用することのできる適切なルテニウム含有化合物として、ルテニウム塩化物(III)、ルテニウム塩化物(III)三水和物、ルテニウム塩化物(IV)、ルテニウム臭化物(III)、ルテニウムヨウ化物(III)、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、ギ酸ルテニウム(III)、[Ru(CO)、テトラ(アセト)クロロルテニウム(II,III)、酢酸ルテニウム(III)、プロピオン酸ルテニウム(III)、酪酸ルテニウム(III)、ペンタカルボニルルテニウム、トリルテニウムドデカカルボニル、およびジクロロトリカルボニルルテニウム(II)ダイマー、ジブロモトリカルボニルルテニウム(II)ダイマーなどの混合ルテニウムハロカルボニル、およびテトラクロロビス(4−サイメン)ジルテニウム(II)、テトラクロロビス(ベンゼン)ジルテニウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)ルテニウム(II)ポリマーおよびトリス(アセチルアセトネート)ルテニウム(III)などの他の有機ルテニウム錯体が挙げられる。
【0023】
好ましくは、ルテニウム含有化合物は、例えばアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩または他の金属塩といった、反応を阻害しうるイオン性のヨウ化物を供与したり、その場(in−situ)で生じたりする不純物を含まない。
【0024】
好ましくは、ルテニウム促進剤は、1つ以上の蒸留域からカルボニル化反応域へリサイクルされた液体反応組成物、液体画分および/またはいかなる液体プロセスストリームにおける溶解度まで、有効量で存在する。
【0025】
ルテニウム促進剤は、液体反応組成物において、各ルテニウム促進剤:イリジウムのモル比が[0.1〜100]:1、好ましくは[0.5超]:1、より好ましくは[1超]:1、並びに、好ましくは[20以下]:1、より好ましくは、[15以下]:1、およびさらに好ましくは、[10以下]:1の範囲で、適切に存在する。
【0026】
第1および第2の反応域の各々において、液体反応組成物中のルテニウム促進剤の濃度は、独立して、6000ppm未満である。適切な促進剤濃度は、400〜5000ppm、例えば2000〜4000ppmである。
【0027】
適切なロジウムカルボニル化触媒は、例えば欧州特許出願公開第0161874明細書、米国特許第6,211,405号明細書および欧州特許出願公開第0728727号明細書に記載されている。
【0028】
カルボニル化触媒がロジウムの場合、液体反応組成物中のロジウム触媒濃度は、好ましくは、ロジウムの重量で、50〜5000ppm、好ましくは、100〜1500ppmの範囲である。
【0029】
ロジウムが、触媒として用いられる場合、例えば欧州特許出願公開第0161874号明細書、米国特許第6,211,405号明細書および欧州特許出願公開第0728727号明細書に記載のように、ヨウ化リチウムなどのヨウ化アルカリ金属が、促進剤として好ましくは用いられる。
【0030】
一酸化炭素は、第1の反応域に、1×10〜7×10Nm−2、好ましくは、1×10〜3.5×10Nm−2の分圧で適切に存在する。
【0031】
水は、例えばメタノールと酢酸生成物のエステル化反応によって、液体反応組成物において、その場(in situ)で形成されうる。さらにまたはあるいは、水は、液体反応組成物の他の成分とともにまたは別に、第1の反応域に独立して導入されることができる。イリジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第1の反応域における、液体反応組成物中の水の量は、適切には最高15重量%まで、例えば少なくとも0.5重量%、10重量%まで、好ましくは8重量%までである。ロジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第1の反応域における水の量は、好ましくは0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは、1〜8重量%の範囲である。
【0032】
第1の反応域は、従来の液相カルボニル化反応域を含んでよい。第1の反応域は、1×10〜2×10Nm−2、好ましくは1.5×10〜1×10Nm−2、より好ましくは1.5×10〜5×10Nm−2の範囲の反応圧力で稼働してよい。
【0033】
本発明の方法の工程b)において、液体反応組成物の少なくとも一部は、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに、第1の反応域から取り出され、工程c)において、取り出された液体並びに溶解および/または同伴する一酸化炭素の少なくとも一部は、第2の反応域に送られ、そこで、溶解および/または同伴する一酸化炭素は、さらなるカルボニル化によって消費され、さらなる酢酸を製造する。好ましくは、実質的にすべての液体反応組成物が、溶解および/または同伴する一酸化炭素とともに第1の反応域から取り出され、第2の反応域に送られる。
【0034】
好ましくは、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度は、185〜195℃の範囲である。
【0035】
第2の反応域は、第1の反応域の反応圧力と実質的に同じ反応圧力で稼働してよい。
【0036】
好ましくは、第2の反応域は、第1の反応域の容量の5〜20%、より好ましくは、10〜20%の範囲の容量を有する。
【0037】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前に、液体反応組成物の温度を上げることは、第1の反応域から取り出された液体反応組成物に溶解および/または同伴する一酸化炭素に加え、一酸化炭素を第2の反応域へ導入することによって達成することができる。
【0038】
あるいはまたはさらに、温度上昇は、第2の反応域に熱を加えることによって達成することができる。
【0039】
追加の一酸化炭素を第2の反応域へ導入することにより、そこで起こるカルボニル化の量が増加する。未反応のメタノールが存在しない場合、カルボニル化の増加により、液体反応組成物中に存在する酢酸メチルおよび水が消費され、酢酸が形成される。具体的には、1モルの酢酸メチル、1モルの水および1モルの一酸化炭素により、2モルの酢酸が生成されるであろう。そのような酢酸メチルのカルボニル化は、発熱性であり、従って、このカルボニル化により、第2の反応域における温度上昇がもたらされる。
【0040】
第2の反応域に導入することのできる追加の一酸化炭素の適当な量は、第1の反応域に導入された一酸化炭素の全量の0.5〜20%、好ましくは1〜15%、より好ましくは1〜10%である。
【0041】
一酸化炭素は、第2の反応域に、1×10〜3.5×10Nm−2、好ましくは1×10〜1.5×10Nm−2の範囲の分圧で適切に存在する。
【0042】
第2の反応域におけるカルボニル化の増加は、それ自体、多くの利点がある。特に、酢酸が製造されるため、フラッシュ分離域における蒸気画分は、さらに酢酸に富むであろう。また、酢酸メチルおよび水が消費されるため、そうでない場合に必要とされるであろうエネルギーより少ない必要エネルギーで、生成物酢酸が軽質成分(酢酸メチルおよび水を含む)から分離されるであろう。
【0043】
あるいは、酢酸メチルおよび水が、第2の反応域において消費されるので、第1の反応域は、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の組成に悪影響を与えることなく、より高い酢酸メチルおよび水の濃度で稼働されうる。また、メタノールカルボニル化プロセスにおける副産物の形成は、酢酸メチルおよび水の濃度が増加するにしたがって、減少する傾向にあるので、より高い酢酸メチルおよび水の濃度で、第1の反応域を稼働することにより、副産物を全体的に減少させることができる。
【0044】
第2の反応域における液体反応組成物の全滞留時間は、適切には、10秒〜5分、好ましくは、30秒〜3分の範囲である。
【0045】
追加の一酸化炭素が第2の反応域に導入される場合、その追加の一酸化炭素は、第2の反応域内の複数の場所に別々に供給されてよい。そのような追加の一酸化炭素は、H、N、COおよびCHなどの不純物を含有してよい。追加の一酸化炭素は、第1の反応域からの高圧の排気で構成されていてよく、これにより、第1の反応域はより高いCO圧力での稼働が可能となり、結果として一酸化炭素のより速い流れが第2の反応域に供給される。さらに、これにより、高圧の排気処理の必要性を取り除くことができる。
【0046】
また、追加の一酸化炭素は、例えば別のプラントからの一酸化炭素に富んだストリームなどの、別の一酸化炭素含有ガスストリームで構成されていてよい。
【0047】
イリジウムにより触媒され、ルテニウムにより促進されたカルボニル化プロセスにおいて、第1および第2の反応域に導入された一酸化炭素の全量が、イリジウム触媒および/またはルテニウム促進剤の沈澱を最小限にするのに十分であることが好ましい。欧州特許第1506151号明細書によると、フラッシュ分離域で形成された蒸気画分から複数の蒸留域に分けることのできる、低圧排気中の一酸化炭素の濃度を、式Y>mX+C(式中、Yは低圧排気中の一酸化炭素のモル濃度、Xは液体反応組成物中のルテニウムの重量ppm濃度、mは約0.012、Cは約−8.7)にしたがって、維持することにより、(イリジウム触媒およびルテニウム促進剤である)触媒系の沈澱が最小限となる。本発明の方法において、低圧排気中の一酸化炭素の濃度は、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度に対して、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度が、10℃上昇する毎に、mX+Cの値より約15モル%高いことが好ましい。
【0048】
好ましくは、第1および第2の反応域は、溶解および/または同伴する一酸化炭素を含む液体反応組成物を第1の反応容器から取り出して第2の反応容器に送る手段で別々の反応容器に維持される。適切な独立した第2の反応容器反応容器は、栓流反応器として働くことができる容器を含んでより。例えば、第2の反応容器は、第1の反応容器とフラッシュ分離域との間のパイプの部分であってよい。
【0049】
あるいは、第2の反応容器は、例えばシールパン(seal pan)といった第1の反応容器の一体化した部分を含んでよい。さらなる実施形態において、第2の反応域は、第1の反応容器の一体化した部分と独立した第2の反応容器の両方を含みうる。第2の反応域の設計は、適切には、例えば、第2の反応域における逆混合を最小限にする、または実質的に排除するものである。
【0050】
好ましくは、第2の反応域における液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、2〜40重量%、より好ましくは、2〜25重量%の範囲である。
【0051】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけての液体反応組成物の温度の増加が、第2の反応域への追加の一酸化炭素の導入によって達成される場合、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、好ましくは、第1の反応域から取り出された反応組成物中の酢酸メチルの濃度より、少なくとも1.5重量%低い。
【0052】
イリジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第2の反応域における液体反応組成物中の水の量は、適切には、少なくとも0.5重量%、最大15重量%まで、例えば10重量%まで、好ましくは、8重量%までである。ロジウムが、カルボニル化触媒として用いられる場合、第2の反応域における水の量は、好ましくは0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜8重量%の範囲である。
【0053】
液体反応組成物を第1の反応域から取り出した後からフラッシュ分離域へ送る前にかけての液体反応組成物の温度の増加が、第2の反応域への追加の一酸化炭素の導入によって達成される場合、フラッシュ分離域に送られた液体反応組成物中の水の濃度は、好ましくは、第1の反応域から取り出された反応組成物中の水の濃度より少なくとも0.4重量%低い。
【0054】
好ましくは、第2の反応域における液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、1〜20重量%,好ましくは2〜16重量%の範囲である。
【0055】
本発明の方法の工程d)において、工程c)からの液体反応組成物の少なくとも一部は、フラッシュ分離域へ送られる。適切に、工程c)からの液体反応組成物の実質的にすべては、フラッシュ分離域に送られる。あるいは、工程c)からの液体反応組成物の1つ以上の部分は、第2の反応域から取り出され、例えば、廃熱ボイラーループ(loop)へ送られてよい。
【0056】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、215℃以下である。フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度を215℃以下に維持することにより、カルボニル化触媒および/またはカルボニル化触媒促進剤の分解など、いくつかの不利な点を回避しうる。
【0057】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、195〜215℃、より好ましくは、200〜215℃の範囲である。
【0058】
好ましくは、フラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物は、第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度より10〜20℃高い温度である。
【0059】
液体反応組成物は、フラッシングバルブを介して、フラッシュ分離域に送られてよい。
【0060】
フラッシュ分離域は、断熱性のフラッシュ容器を含んでよい。あるいは、フラッシュ分離域は、加熱手段を含んでよい。
【0061】
フラッシュ分離域は、0〜10barg、好ましくは、0〜3bargの範囲の圧力で稼働してよい。
【0062】
好ましくは、フラッシュ分離域からの液体画分の少なくとも一部は、第1の反応域および/または第2の反応域にリサイクルされる。
【0063】
前述のように、フラッシュ分離域における分離の改善により、液体画分の量および流速の減少をもたらされる。これにより、少なくとも一部の液体画分が第1の反応域にリサイクルされる場合、液体画分の流速減少は、第1の反応域における冷却の低下をもたらすであろう。第1の反応域における冷却の低下によって、もしそうでなければ無駄に消費されたかもしれない熱を有用に活用できるようにし、それによって、プロセスのエネルギー必要量を減じられる。さらに、液体画分の流速が減少するので、第1の反応域から第2の反応域へ送られた液体反応組成物および第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の流速もまた減少するであろう。その結果、フラッシュ分離域へ送られたカルボニル化触媒および随意のカルボニル化触媒促進剤の単位時間当たりの量が、減少するであろう。また、蒸気画分は酢酸に富むので、フラッシュ分離域へ送られた触媒および随意の促進剤の生成された酢酸単位当たりの量もまた、減少するであろう。
【0064】
該方法の工程e)において、酢酸生成物は、フラッシュ分離域からの蒸気画分より蒸留によって回収される。蒸留域は、酢酸の製造において用いられる従来のいずれの蒸留装置であってもよい。例えば、蒸留域は、酢酸産物をヨウ化メチルおよび酢酸メチルなどの軽質成分から分離する、第1の蒸留カラムを含んでよい。軽質成分は、頂部において(overhead)除去され、第1のまたは第2の反応域にリサイクルされよい。他に頂部において除去されるのは、窒素、一酸化炭素、水素および二酸化炭素などの凝縮不能なガスを含む低圧排気である。そのような低圧排気ストリームは、排気処理セクションへ送られてよく、例えばフレアを介して大気に放出される前に、ヨウ化メチルなどいかなる凝縮可能な物質も除去される。蒸留域は、水およびより高い沸点をもつ副産物などのさらなる不純物を生成物酢酸から取り除くためのさらなる蒸留カラムを含んでよい。
【0065】
第1の反応域から取り出された液体反応組成物の温度は、そこを通して液体反応組成物が取り出される第1の反応域の排気口で測定してよい。
【0066】
第2の反応域からフラッシュ分離域へ送られた液体反応組成物の温度は、そこを通して液体反応組成物が送られるフラッシュ分離域の注入口で測定することができる。液体反応組成物が、フラッシングバルブを介してフラッシュ分離域へ送られる場合、第2反応域から送られた液体反応組成物の温度は、フラッシングバルブにおいて測定されてよい。
【0067】
本発明の方法は、バッチまたは連続プロセスとして、好ましくは連続プロセスとして、行われうる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明の方法を実施するために適した装置の概略を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0069】
次に、本発明の方法を、下記の非限定的な例および図1を参照して説明する。図1は、本発明の方法を実施するために適した装置の概略を表わす。
【0070】
装置は、第1の反応域(1)、第2の反応域(2)、フラッシュ分離域(3)および軽質留分・乾燥複合蒸留カラム(図示せず)を含む。使用の際、メタノールおよび一酸化炭素は、それぞれライン(4)および(5)を通して、第1の反応域(1)に供給される。第1の反応域(1)中で、一酸化炭素は、カルボニル化触媒、随意のカルボニル化触媒促進剤、メタノール、酢酸メチル、水、ヨウ化メチルおよび酢酸からなる液体反応組成物と接触する。液体反応組成物は、ライン(6)を通して第1の反応域(1)から取り出され、第2の反応域(2)へ送られ、そこに、一酸化炭素の追加供給が、ライン(7)を通して供給される。第2の反応域(2)からの液体反応組成物は、フラッシングバルブ(8)を通して、フラッシュ分離域(3)へ送られ、そこで、蒸気画分および液体画分の2つの相に分離される。酢酸、ヨウ化メチル、水、メタノールおよび酢酸メチルを含む蒸気画分は、精製酢酸の回収のために、低圧の排気が除去される軽質留分および乾燥複合蒸留カラム(図示せず)を含む蒸留域へ、ライン(9)を通して供給される。触媒種および酢酸を含む液体画分は、ライン(10)を通して、第1の反応域(1)へ返送される。
【0071】
次の例では、酢酸を、図1の装置を用いて、イリジウム触媒およびルテニウム促進剤の存在下で、一酸化炭素とメタノールをカルボニル化することによって製造した。第1の反応域(1)は、6リットルの第1のカルボニル化攪拌槽型反応器を含み、第2の反応域(2)は、加熱器を装備し、第1の反応器の容量の約12%の容量を有する第2のプラグ流反応器を含み、また、フラッシュ分離域(3)は、断熱性のフラッシュ容器から構成された。第1の反応器の稼働圧力は、27.6barg(2.76×10Nm−2)であり、第1の反応器の温度を、約190℃に維持した。第1の反応器は、液体およびガスの反応物の均質な混合を確実にするように、攪拌棒/プロペラおよびバッフルケージを装着した。一酸化炭素を、攪拌棒の下に取り付けたスパージ(sparge)を介して、圧力ボトルから第1の反応器へ供給した。反応器(1)への鉄の侵入を最小限にするため、一酸化炭素を、炭素フィルター(図示せず)を通した。高温のオイルが循環するジャケット(図示せず)により、第1の反応器中の液体反応組成物を、一定の反応温度に維持することができた。断熱性のフラッシュ容器は、1.48barg(1.48×10Nm−2)の圧力で稼働した。軽質留分および乾燥複合カラムから取り除かれた低圧排気中の一酸化炭素濃度は、50〜55mol%に維持された。フラッシュバルブにおいて、液体反応組成物を、4分毎に近赤外線分光法で、また1日3回まで、ガスクロマトグラフィーで分析した。高圧排気を、反応器の頭部(head)からパージした。
【0072】
第2の反応器は使用せず、前述の装置、方法および稼働条件を用いて、ベースライン実験(実験A)を行った。その実験において、第1の反応器中の液体反応組成物は、5重量%水、7重量%ヨウ化メチルおよび12重量%酢酸メチルに維持された。第1の反応器およびフラッシュバルブにおける液体反応組成物の温度、液体反応組成物データおよび様々なプロセスストリームの流速を、表1に示す。
【0073】
ベースライン実験完了後、第2の反応器を繋げ、ライン(10)にイリジウムおよびルテニウムを添加することにより、カルボニル化速度を上げ、約5.8kg.h‐1の生産速度とした。第1の反応域から取り出した液体反応組成物の温度を、約190℃に維持し、フラッシュ分離域に送った液体反応組成物の温度を、約210℃に維持した。このプロセスをこれらの条件で8週間稼働させた。3週間後(実施例1)および5週間後(実施例2)の、第1の反応器およびフラッシュバルブにおける液体反応組成物の温度、液体反応組成物データ、および様々なプロセスストリームの流速を、表1に示す。8週間プロセスを稼働させた後、プラントを停止し、液体反応組成物と接触した装置の表面を、沈殿物および腐食の兆候について、目視で検査した。実施例1および2は、本発明に従った実施例である。
【0074】
目視検査完了後、プラントを再始動し、約4.6kg.h‐1の製造速度になるよう制御した。第1の反応域から取り出した液体反応組成物の温度を約190℃に維持し、フラッシュ分離域へ送った液体反応組成物の温度を約230℃に維持した。このプロセスをこれらの条件下で4週間稼働させた。試験終了の3日前(実施例3)および2日前(実施例4)の、第1反応器およびフラッシュバルブにおける液体反応組成物の温度、液体反応組成物データおよび様々なプロセスストリームの流速を、表1に示す。プロセスを4週間稼働した後、プラントを停止し、液体反応組成物と接触した装置の表面を、沈殿物および腐食の兆候について、目視で検査した。
【0075】
表1から、実施例1、2、3、および4において、液体画分の流速が、第2の反応器を繋げた後に減少したことがわかる。このことは、第2の反応器にわたっての温度増加により、凝縮物が触媒および促進剤から、より良く分離されるようになることを示す。
【0076】
また、表1から、実施例1、2、3、および4において、蒸気画分に存在する酢酸の濃度が、第2の反応器を繋げた後に増加したことがわかる。このことは、本発明のプロセスにより、酢酸生成物の収率の増加が達成されるようになることを示す。
【0077】
加えて、表1から、実施例1、2、3、および4において、フラッシュ容器へ送った液体反応組成物中の酢酸の酢酸メチルおよび水に対する濃度比が、第2の反応器を繋げた後に増加したことがわかる。このことは、さらなるカルボニル化が、第2の反応器で起こっていることを示す。
【0078】
さらに、表1から、実施例1、2、3、および4において、フラッシュ容器へ送った液体反応組成物の流速が、第2の反応器を繋げた後に減少したことがわかる。このことは、フラッシュ容器へ送られる触媒および促進剤の酢酸生成物単位あたりの量が減少することを示す。
【0079】
フラッシュバルブにおける液体反応組成物の温度を約210℃に維持した、プロセスの8週間の稼働完了後、液体反応組成物と接触した装置の表面は、元の外観を保っていた。
【0080】
フラッシュバルブにおける液体反応組成物の温度を約230℃に維持した、プロセスの4週間の稼働完了後、液体反応組成物と接触した装置の表面に、黒い跡(dark marks)があり、触媒および/または促進剤の分解が起こったかもしれないことを示唆している。
【0081】
【表1】
図1