【解決手段】溶媒中に含まれるポリマーが、アンモニウム塩基を含有する帯電防止ポリマー(A)と、水酸基およびアンモニウム塩基を含有するカチオン性ポリビニルアルコールである塗布性向上ポリマー(B)とを含有し、樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を形成することを特徴とする帯電防止剤。
前記塗布性向上ポリマー(B)は、下記一般式、
(B1)m−(B2)n−(B3)o
[1≦m,n、0≦o]
で表記される構造を含むポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止剤。
式(B1)はアンモニウム塩基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B1−1)〜(B1−5)の少なくともいずれか1種。
【化1】
[式(B1−1)中、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の1−アミノアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基を示し、R
3はエーテル基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を示し、X
−はそれぞれ独立に1価のアニオンを示す。]
【化2】
[式(B1−2)中、R
5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【化3】
[式(B1−3)中、R
6はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【化4】
[式(B1−4)中、R
7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
9は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【化5】
[式(B1−5)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキレン基を示し,Yは−O−または−NH−を示し、R
5,R
6,R
7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。X
−は1価のアニオンを示す。]
式(B2)は水酸基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B2−1)〜(B2−3)の少なくともいずれか1種。
【化6】
[式(B2−1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または水酸基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【化7】
[式(B2−2)中、R
1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
2は酸素原子を有していてもよい。炭素数1〜4のアルキレン基を示す。]
【化8】
[式(B2−3)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R
4,R
5,R
6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
式(B3)は、上記式(B1)および式(B2)に示すモノマーと重合してポリマー化できるモノマーである。
前記帯電防止ポリマー(A)と前記塗布性向上ポリマー(B)の前記アンモニウム塩基が、一級から四級アンモニウム塩基の少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の帯電防止剤。
前記帯電防止ポリマー(A)と前記塗布性向上ポリマー(B)との配合比が、90:10〜20:80であり、前記帯電防止ポリマー(A)および前記塗布性向上ポリマー(B)を合計した固形分濃度は、0.1%〜50%で、前記溶媒は少なくとも水を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の帯電防止剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように白化が抑制された塗布層が形成された樹脂フィルムに帯電防止機能を付与するためには、塗布層上または塗布層下に帯電防止剤をさらに塗布し、乾燥することによって帯電防止層を形成しなければならない。したがって、白化抑制機能および帯電防止機能の両方を備える樹脂フィルムを製造するのに手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルム上に白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を形成することができる帯電防止剤およびその塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂フィルムのオリゴマーに起因する白化を抑制することが知られている四級アンモニウム塩基のみならず、一級から四級アンモニウム塩基の電荷密度を高めることにより、白化抑制機能および帯電防止機能が高いカチオン性の帯電防止ポリマー(A)と、白化抑制機能および帯電防止機能を有する一級から四級アンモニウム塩基を含有し、かつ、水酸基を含むカチオン性の塗布性向上ポリマー(B)とを組み合わせることによって、帯電防止剤の塗布性を向上させつつ、白化抑制機能および帯電防止機能が同時に発現するような高いカチオン電荷密度を帯電防止剤に付与することにより本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記した目的を達成するために、本発明の帯電防止剤は、溶媒中に含まれるポリマーが、アンモニウム塩基を含有する帯電防止ポリマー(A)と、水酸基およびアンモニウム塩基を含有するカチオン性ポリビニルアルコールである塗布性向上ポリマー(B)とを含有し、樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を形成することを特徴としている(請求項1)。
【0011】
このように構成された発明では、帯電防止ポリマー(A)は、帯電防止機能が発現するように電荷密度を十分に高くしたカチオン性の一級から四級アンモニウム塩基を含有するので、帯電防止層に帯電防止機能を付与することができる。また、帯電防止ポリマー(A)は、一級から四級アンモニウム塩基を含有しているので、樹脂フィルムのオリゴマーに起因する帯電防止層の白化を抑制する白化抑制機能を帯電防止層に付与することができる。
【0012】
また、塗布性向上ポリマー(B)は、水酸基を含有しているので、樹脂フィルムに対する帯電防止剤の塗布性を向上すると共に、帯電防止層の樹脂フィルムに対する延伸追従性および密着性を向上することができる。また、塗布性向上ポリマー(B)は、一級から四級アンモニウム塩基を含有している。したがって、従来、延伸追従性を向上するために使用されるポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー等と比較すると、塗布性向上ポリマー(B)は、帯電防止層のカチオン電荷密度を高め、樹脂フィルムのオリゴマーに起因する帯電防止層の白化抑制にも寄与することができる。
【0013】
以上のように、電荷密度の高いアンモニウム塩基含有ポリマーを含む帯電防止剤が樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより、樹脂フィルム上に白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を形成することができる。
【0014】
また、前記塗布性向上ポリマー(B)は、少なくとも一級から四級アンモニウム塩基を含むモノマー(B1)と水酸基を含むモノマー(B2)を重合して得られるポリマーで、下記一般式、
(B1)m−(B2)n−(B3)o
[1≦m,n、0≦o]
で表記される構造を含むポリマーであるとよい(請求項2)。
【0015】
また、式(B1)は一級から四級アンモニウム塩基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B1−1)〜(B1−5)の少なくともいずれか1種である。
【0016】
【化1】
【0017】
[式(B1−1)中、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の1−アミノアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基を示し、R
3はエーテル基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を示し、X
−はそれぞれ独立に1価のアニオンを示す。]
【0018】
【化2】
【0019】
[式(B1−2)中、R
5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【0020】
【化3】
【0021】
[式(B1−3)中、R
6はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【0022】
【化4】
【0023】
[式(B1−4)中、R
7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
9は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
【0024】
【化5】
【0025】
[式(B1−5)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキレン基を示し,Yは−O−または−NH−を示し、R
5,R
6,R
7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0026】
また、式(B2)は水酸基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B2−1)〜(B2−3)の少なくともいずれか1種である。
【0027】
【化6】
【0028】
[式(B2−1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または水酸基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0029】
【化7】
【0030】
[式(B2−2)中、R
1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を、R
2は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基を示す。]
【0031】
【化8】
【0032】
[式(B2−3)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R
4,R
5,R
6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0033】
また、式(B3)は、上記式(B1)および式(B2)に示すモノマーと重合してポリマー化できるモノマーであればどのようなモノマーであっても構わないが、下記の一般式(B3−1)のモノマー、一般式(B3−2)の無水マレイン酸が由来となるモノマーの少なくともいずれか1種であることが好ましい(請求項3)。
【0034】
【化9】
【0035】
[式(B3−1)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0036】
【化10】
【0037】
また、前記帯電防止ポリマー(A)は、
(A1)下記一般式(1):
【0038】
【化11】
【0039】
[式(1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基を示し、R
3はエーテル基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を示し、X
−はそれぞれ独立に1価のアニオンを示す。]
で表される構造を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂、
(A2)下記一般式(2):
【0040】
【化12】
【0041】
[式(2)中、R
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
で表される構造を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂、および、
(A3)下記一般式(3−1):
【0042】
【化13】
【0043】
[式(3−1)中、R
5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
で表される構造、下記一般式(3−2):
【0044】
【化14】
【0045】
[式(3−2)中、R
6はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
で表される構造、および、
【0046】
【化15】
【0047】
[式(4)中、R
7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
9は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、X
−は1価のアニオンを示す。]
で表される構造のうちの少なくとも1種を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂、
からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン性水性樹脂であるとよい(請求項4)。
【0048】
なお、前記帯電防止ポリマー(A)と前記塗布性向上ポリマー(B)の前記アンモニウム塩基が、一級から四級アンモニウム塩基の少なくともいずれか1種であるとよい(請求項5)。
【0049】
また、前記帯電防止ポリマー(A)と前記塗布性向上ポリマー(B)との配合比が、90:10〜20:80であり、前記帯電防止ポリマー(A)および前記塗布性向上ポリマー(B)を合計した固形分濃度は、0.1%〜50%で、溶媒は少なくとも水を含むとよい(請求項6)。
【0050】
このようにすると、水系で安定して取り扱うことができる帯電防止剤を提供することができる。
【0051】
また、前記樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであるとよい(請求項7)。
【0052】
また、本発明の塗布方法は、前記樹脂フィルムに請求項1ないし5のいずれかに記載の帯電防止剤を塗布する塗布方法において、未延伸の前記樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に前記帯電防止剤を塗布した後に、前記樹脂フィルムを延伸することを特徴としている(請求項8)。
【0053】
このように構成された発明では、特にインラインコーティング法により、樹脂フィルムの製造と同時に帯電防止層を形成することができる。また、オフラインコーティング法によっても帯電防止層が形成できるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、優れた塗布性および密着性を有する1液性の帯電防止剤が樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより、樹脂フィルム上に優れた白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を煩雑な工程を経ずに形成することができる。また、本発明の帯電防止剤は優れた延伸追従性をも有するため、未延伸の樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に本発明の帯電防止剤を塗布した後に、樹脂フィルムを延伸し、樹脂フィルムの製造と同時に帯電防止層を形成することができる、いわゆるインラインコーティング法にも適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の一実施形態について
図1を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる帯電防止層を備える樹脂フィルムを示す断面図である。
【0057】
図1に示すように、樹脂フィルム1の一方の主面に塗布された帯電防止剤が乾燥することにより帯電防止層2が形成される。
【0058】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルム1は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の一般的な樹脂により形成されている。
【0059】
(帯電防止層)
帯電防止層2は、インラインコーティング法により、未延伸の樹脂フィルム1の一方の主面に帯電防止剤が塗布されて乾燥した後に、樹脂フィルム1と一緒に延伸されることにより形成される。なお、帯電防止層2が、オフラインコーティング法により樹脂フィルム1の一方の主面に形成されていてもよい。なお、インラインコーティング法およびオフラインコーティング法は、周知の技術であるのでその詳細な説明は省略する。
【0060】
(帯電防止剤)
帯電防止剤は、水系溶媒中にポリマーが分散または溶解することにより形成されている。また、帯電防止ポリマー(A)と塗布性向上ポリマー(B)のアンモニウム塩は一級から四級のアンモニウム塩であり、帯電防止ポリマー(A)と塗布性向上ポリマー(B)との配合比が、90:10〜20:80、好ましくは90:10〜50:50に調整されると共に、帯電防止ポリマー(A)および塗布性向上ポリマー(B)を合計した固形分濃度が、0.1%〜50%、好ましくは0.2%〜10%に調整されている。また、さらなる密着性および耐水性・耐薬品性等の向上のため、アニオン基を有する水溶性ポリマーを添加してもよい。なお、溶媒がアルコール成分を含んでいてもよいが、インラインコーティング法を採用するには、水系であるのが望ましい。
【0061】
(1)帯電防止ポリマー(A)
帯電防止ポリマー(A)は、一級から四級アンモニウム塩基を含有しているので、樹脂フィルム1のオリゴマーに起因する帯電防止層2の白化を抑制する白化抑制機能を帯電防止層2に付与することができる。
【0062】
帯電防止ポリマー(A)は、一級から四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性水性樹脂であり、下記の(A1)カチオン性水性樹脂、(A2)カチオン性水性樹脂、および、(A3)カチオン性水性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0063】
また、帯電防止ポリマー(A)は、一級から四級アンモニウム塩基に由来する窒素原子の含有量が、帯電防止ポリマー(A)の総量に対して5〜15質量%であることが好ましく、7〜12質量%であることがより好ましい。窒素原子の含有量が下限未満である場合には、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下する傾向にある。
【0064】
なお、カチオン性水性樹脂における一級から四級アンモニウム塩基に由来する窒素原子の含有量は、カチオン性水性樹脂の合成に用いたモノマーのうち、窒素原子の由来となる窒素原子を有するモノマーの使用量から求めることができる。
【0065】
また、帯電防止ポリマー(A)は、重量平均分子量が4,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量が下限以上である場合には、延伸追従性、並びに、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性がより向上する傾向にある。他方、重量平均分子量が上限以下である場合には、カチオン性水性樹脂の水分散性がより向上し、帯電防止剤の分散媒を水とした場合に分散しやすくなる傾向にある。
【0066】
なお、本発明において、カチオン性水性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(「HLC−8120」東ソー社製;溶媒:0.3Mトリエタノールアミン水溶液をリン酸でpH2.9に調整したもの;カラム:「TSK−GEL αM」および「TSK−GEL α3000」の2本(各東ソー社製)を接続;温度40℃;速度:1.0ml/分)を用いて測定し、標準ポリエチレングリコールで換算することにより求めることができる。
【0067】
(A1)カチオン性水性樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂である。
【0069】
式(1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。R
1の炭素数が上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
1としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。
【0070】
式(1)中、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。R
2の炭素数が下限未満のカチオン性水性樹脂を合成することは困難であり、他方、R
2の炭素数が上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルムと1の密着性が低下する。このようなR
2としては、帯電防止性、密着性および入手のしやすさの観点から、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基であることが好ましい。
【0071】
式(1)中、R
3は、エーテル基(−O−)を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を示す。R
3の炭素数が下限未満のカチオン性水性樹脂を合成することは困難であり、他方、R
3の炭素数が上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下する。このようなR
3としては、帯電防止性、密着性および入手のしやすさの観点から、−C
2H
4−O−C
2H
4−で表される基、−C
3H
6−O−C
3H
6−で表される基、−C
4H
8−O−C
4H
8−で表される基であることが好ましい。
【0072】
式(1)中、X
−は、それぞれ独立に、1価のアニオンを示す。アニオンの価数が2価以上である場合には、カチオン性水性樹脂がゲル化しやすくなり、水分散性が低下する。1価のアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンが挙げられる。これらの中でも、剤安定性がより向上し、得られる帯電防止層2の帯電防止性がより向上する傾向にあるという観点から、X
−としては、塩素イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオンであることが好ましい。特に帯電防止性を向上させる観点からX
−は、電荷密度が高くなる塩素イオンが好ましい。
【0073】
(A2)カチオン性水性樹脂は、下記一般式(2)で表される構造を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂である。
【0075】
式(2)中、R
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。R
4の炭素数が上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
4としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(2)中、X
−は1価のアニオンを示す。このようなX
−としては、(A1)カチオン性水性樹脂において述べたX
−と同様である。
【0076】
(A3)カチオン性水性樹脂は、下記一般式(3−1)で表される構造、下記一般式(3−2)で表される構造および下記一般式(4)で表される構造のうちの少なくとも1種を繰り返し単位として含有するカチオン性水性樹脂である。
【0079】
式(3−1)および(3−2)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
5、R
6の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
5およびR
6としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(3−1)および(3−2)中、X
−は、それぞれ独立に1価のアニオンを示す。このようなX
−としては、(A1)カチオン性水性樹脂において述べたX
−と同様である。
【0081】
式(4)中、R
7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
7の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
7としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることが好ましい。
【0082】
式(4)中、R
8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
8の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
8としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(4)中R
9は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。式(4)中、X
−は1価のアニオンを示す。このようなX
−としては、(A1)カチオン性水性樹脂において述べたX
−と同様である。
【0083】
なお、帯電防止ポリマー(A)は、得られる帯電防止層2の帯電防止性がより向上する傾向にあるという観点から、(A3)カチオン性水性樹脂であることが好ましい。
【0084】
(A3)カチオン性水性樹脂は式(3−1)、式(3−2)および式(4)で表わされる構造のうち、式(3−1)で表わされる構造および式(3−2)で表わされる構造を含むことが帯電防止性の観点から好ましい。また、(A3)カチオン性水性樹脂においては、式(3−1)、式(3−2)および式(4)で表わされる構造のうちの少なくとも1種と共重合可能な他の構造を、本発明の効果を阻害しない範囲内において含んでいてもよい。共重合可能な他の構造としては下記一般式(5)で表わされる構造が帯電防止性の観点から好ましい。
【0086】
式(5)中、R
13は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
14はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
13、R
14の炭素数が前記上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性が低下する。このようなR
13としては帯電防止性の観点から水素原子またはメチル基である事が好ましい。また、R
14としては帯電防止性の観点から水素原子が好ましい。式(5)で表わされる構造の由来となるモノマーとしてはアクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0087】
また、(A3)カチオン性水性樹脂における式(3−1)で表わされる構造、式(3−2)で表わされる構造および式(4)で表わされる構造のうち少なくとも1種と、式(5)で表わされる構造との割合としては、帯電防止性維持の観点から両者の構造の由来となるモノマー使用量のモル比で95:5〜50:50が好ましく、90:10〜60:40がより好ましい。
【0088】
帯電防止ポリマー(A2)の具体例としては、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン系ポリマーであるカチオマスターPD−30、PDT−2(四日市合成株式会社製)、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロルヒドリン系ポリマーPE−10、PE−30(四日市合成株式会社製)が挙げられる。
【0089】
帯電防止ポリマー(A3)の具体例としては、以下の製品が挙げられる。式(3−1)および式(3−2)の具体例として、ジアリルアミン塩酸塩重合体PAS−21CL、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体PAS−M−1L,PAS−M−1、メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体PAS−22SA、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体PAS−M−1A、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体PAS−H−1L,PAS−H−5L,PAS−H−10L、PAS−A−5、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体PAS−J−81L,PAS−J−81、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド−ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体PAS−880(ニットボーメディカル株式会社製)、ネオフィックスR−800(日華化学株式会社製)が挙げられる。式(4)の具体例として、ポリアリルアミンPAA−HCl−01,PAA−HCl−03,PAA−HCl−05,PAA−HCl−3L,PAA−HCl−10L,PAA−1112CL(ニットボーメディカル株式会社製)が挙げられる。式(3−1)と式(4)との共重合体の具体例として、PAA−D11−HCl,PAA−D41−HCl,PAA−D19−HCl(ニットボーメディカル株式会社製)が挙げられる。
【0090】
(2)塗布性向上ポリマー(B)
塗布性向上ポリマー(B)は、水酸基および一級から四級アンモニウム塩基を含有するポリマーである。塗布性向上ポリマー(B)は、水酸基を含有しているので、樹脂フィルム1に対する帯電防止剤の塗布性を向上すると共に、帯電防止層2の樹脂フィルム1に対する延伸追従性および密着性を向上することができる。また、塗布性向上ポリマー(B)は、一級から四級アンモニウム塩基を含有している。したがって、従来、延伸追従性を向上するために使用されるポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー等と比較すると、塗布性向上ポリマー(B)は、樹脂フィルム1のオリゴマーに起因する帯電防止層の白化抑制にも寄与することができる。
【0091】
また、塗布性向上ポリマー(B)は、少なくとも一級から四級アンモニウム塩基を含むモノマー(B1)と水酸基を含むモノマー(B2)を重合して得られるポリマーで、下記一般式、
(B1)m−(B2)n−(B3)o
[1≦m、n,0≦o]
で表記される構造を含むポリマーである。
【0092】
塗布性向上ポリマー(B)の式(B1)は、一級から四級アンモニウム塩基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B1−1)〜(B1−5)の少なくともいずれか1種である。
【0094】
式(B1−1)中、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の1−アミノアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。R
1の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
1としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。
【0095】
式(B1−1)中、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。R
2の炭素数が下限未満のカチオン性水性樹脂を合成することは困難であり、他方、R
2の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルムと1の密着性が低下する。このようなR
2としては、帯電防止性、密着性および入手のしやすさの観点から、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基であることが好ましい。
【0096】
式(B1−1)中、R
3は、エーテル基(−O−)を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を示す。R
3の炭素数が下限未満のカチオン性水性樹脂を合成することは困難であり、他方、R
3の炭素数が上限を超えると、四級アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下する。このようなR
3としては、帯電防止性、密着性および入手のしやすさの観点から、−C
2H
4−O−C
2H
4−で表される基、−C
3H
6−O−C
3H
6−で表される基、−C
4H
8−O−C
4H
8−で表される基であることが好ましい。
【0097】
式(B1−1)中、X
−は、それぞれ独立に、1価のアニオンを示す。アニオンの価数が2価以上である場合には、カチオン性水性樹脂がゲル化しやすくなり、水分散性が低下する。1価のアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンが挙げられる。これらの中でも、剤安定性がより向上し、得られる帯電防止層2の帯電防止性がより向上する傾向にあるという観点から、X
−としては、塩素イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオンであることが好ましい。
【0101】
式(B1−2)および(B1−3)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
5、R
6の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
5およびR
6としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(B1−2)および(B1−3)中、X
−は、それぞれ独立に1価のアニオンを示す。
【0102】
アニオンの価数が2価以上である場合には、カチオン性水性樹脂がゲル化しやすくなり、水分散性が低下する。1価のアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンが挙げられる。これらの中でも、剤安定性がより向上し、得られる帯電防止層2の帯電防止性がより向上する傾向にあるという観点から、X
−としては、塩素イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオンであることが好ましい。
【0103】
式(B1−4)中、R
7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
7の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
7としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることが好ましい。
【0104】
式(B1−4)中、R
8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
8の炭素数が上限を超えると、アンモニウム塩基の含有量が不十分となり、得られる帯電防止層2の帯電防止性および樹脂フィルム1との密着性が低下し、また、カチオン性水性樹脂の水分散性が低下する。このようなR
8としては、帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(B1−4)中、R
9は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。式(B1−4)中、X
−は1価のアニオンを示す。このようなX
−としては式(B1−2)および式(B1−3)において述べたX
−と同様である。
【0106】
式(B1−5)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキレン基を示し,Yは−O−または−NH−を示し、R
5,R
6,R
7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
1からR
3は、入手性の観点から、水素原子またはメチル基が好ましい。R
5,R
6,R
7は帯電防止性、密着性および水分散性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、式(B1−5)中、X
−は1価のアニオンを示す。このようなX
−としては、式(B1−2)および式(B1−3)において述べたX
−と同様である。
【0107】
塗布性向上ポリマー(B)の式(B2)は、水酸基を含むモノマーで、重合後のモノマーが下記の一般式(B2−1)〜(B2−3)の少なくともいずれか1種である。
【0109】
式(B2−1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または水酸基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。具体的には、入手性の観点からビニルアルコールが好ましい。または、酢酸ビニルを重合し、ケン化しても良い。
【0111】
式(B2−2)中、R
1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
2は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基を示す。具体的には、入手性の観点から2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(CH
2=CH−O−CH
2CH
2−OH)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(CH
2=CH−(OCH
2CH
2)
2−OH)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(CH
2=CH−O(CH
2)
4−OH)が好ましい。
【0113】
式(B2−3)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R
4,R
5,R
6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0114】
また、式(B3)は、上記式(B1)および式(B2)に示すモノマーと重合してポリマー化できるモノマーであればどのようなモノマーであっても構わないが、下記の一般式(B3−1)のモノマー、一般式(B3−2)の無水マレイン酸が由来となるモノマーの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0116】
式(B3−1)中、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキル基を示す。酢酸ビニルの場合は、R
1,R
2,R
3は水素原子、R
4はメチル基となる。
【0118】
塗布性向上ポリマー(B)の具体例としては、ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製)、クラレポバールC−506,CM−318(クラレ株式会社社製)が挙げられる。
【0119】
以上のように、上記した実施形態では、一級から四級アンモニウム塩基含有ポリマーのみを含む帯電防止剤が樹脂フィルム1の少なくとも一方の主面に塗布されることにより、樹脂フィルム1上に白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層2を形成することができる。
【実施例】
【0120】
具体的な実施例とその比較例ついて、
図2および
図3を参照して説明する。
図2および
図3は、それぞれ、本発明の帯電防止剤の一例を示す図である。なお、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。まず、帯電防止ポリマー(A)の製造方法の一例について説明する。
【0121】
(帯電防止ポリマーa1)
まず、撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコにジメチルジアリルアンモニウムクロライド(70質量%水溶液)589.3g、アクリルアミド32g、イオン交換水274g、およびニトリロ3酢酸ナトリウム塩0.1gを仕込み、撹拌しながら窒素ガスを液中に通気し、80℃まで加熱昇温した。次いで、イオン交換水2gに無水重亜硫酸過硫酸ナトリウム2.8gを溶解させたものを加えた後、イオン交換水22.2gに過硫酸アンモニウム2.8gを溶解させたものを80〜90℃において6時間かけて滴下した。次いで、80℃において2時間反応させた後、40℃まで冷却し、イオン交換水36.6gに水酸化ナトリウム0.8gを溶解させたものを用いてpHを3.5〜5.0に調整した。式(3−1)中のR
5がメチル基であり、X
−が塩化物イオンである繰り返し単位および式(3−2)中のR
6がメチル基であり、X
−が塩化物イオンである繰り返し単位と、式(5)中のR
13が水素原子であり、R
14が水素原子である繰り返し単位とを、各単量体のモル比で85:15で有する帯電防止ポリマーa1の水分散体液を得た。得られた水分散液の固形分濃度は45.8質量%であった。
【0122】
(帯電防止ポリマーa2)
帯電防止ポリマーa1の製造において、アクリルアミド量を11.4gに変えたこと以外は同様にして、式(3−1)中のR
5がメチル基であり、X
−が塩化物イオンである繰り返し単位および式(3−2)中のR
6がメチル基であり、X
−が塩化物イオンである繰り返し単位と、式(5)中のR
13が水素原子であり、R
14が水素原子である繰り返し単位とを、各単量体のモル比で94:6で有する帯電防止ポリマーa2の水分散体液を得た。得られた水分散液の固形分濃度は45.8質量%であった。
【0123】
(実施例1)
a)帯電防止ポリマー(A)
PAS−H−5L(ニットボーメディカル株式会社製):0.4重量%
b)塗布性向上ポリマー(B)
ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて実施例となる帯電防止剤を調整した。
【0124】
(実施例2)
a)帯電防止ポリマー(A)
PAS−21CL(ニットボーメディカル株式会社製):0.4重量%
b)塗布性向上ポリマー(B)
ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて実施例となる帯電防止剤を調整した。
【0125】
(実施例3)
a)帯電防止ポリマー(A)
PAA―HCL―10L(ニットボーメディカル株式会社製):0.4重量%
b)塗布性向上ポリマー(B)
ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて実施例となる帯電防止剤を調整した。
【0126】
(実施例4)
a)帯電防止ポリマー(A)
帯電防止ポリマーa1:0.4重量%
b)塗布性向上ポリマー(B)
ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて実施例となる帯電防止剤を調整した。
【0127】
(実施例5)
a)帯電防止ポリマー(A)
帯電防止ポリマーa2:0.4重量%
b)塗布性向上ポリマー(B)
ゴーセネックスK434(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて実施例となる帯電防止剤を調整した。
【0128】
(比較例1)
a)帯電防止ポリマー(A)
PAS−H−5L(ニットボーメディカル株式会社製):0.4重量%
b)ノニオン性ポリビニルアルコールポリマー
ゴーセノールKP−08R(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)溶媒
イオン交換水:99.4重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて比較例1となる帯電防止剤を調整した。
【0129】
(比較例2)
a)帯電防止ポリマー(A)
PAS−H−5L(ニットボーメディカル株式会社製):0.4重量%
b)ノニオン性ポリビニルアルコールポリマー
ゴーセノールKP−08R(日本合成化学工業株式会社製):0.2重量%
c)一級から四級アンモニウム塩基を含まないウレタン系エマルジョンポリマー
ネオステッカー400(日華化学株式会社製):0.2重量%
d)溶媒
イオン交換水:99.2重量%
上記した割合で各ポリマーを溶媒中に分散または溶解させて比較例3となる帯電防止剤を調整した。
【0130】
(評価方法)
図2および
図3に示す各帯電防止剤それぞれを、未延伸PETフィルムにWET膜厚で10μmとなるように塗布して、90℃で40秒間加熱することにより乾燥させた。その後、220℃で50秒間、未延伸のPETフィルムを約3倍に延伸することにより、各帯電防止剤のそれぞれにより帯電防止処理が為されたPETフィルムを得た。そして、帯電防止処理が為された各PETフィルムについて、以下の評価を行った。
【0131】
(1)剤安定性
実施例および各比較例で得られた各帯電防止剤を45℃の条件下で静置して状態を観察し、次の基準:
A:1〜2週間沈降無し
B:3〜6日間沈降無し
C:1〜2日で沈降あり
に従って評価した。
【0132】
(2)濡れ性
実施例および各比較例で得られた各帯電防止剤を、上記未延伸PETフィルムの一方の主面上に、それぞれ、#5バーコーターを用いて、塗布層の厚さが12μmとなるよう塗布した際の状態を観察し、次の基準:
A:フィルム全体に均一な塗布層が形成されている
B:フィルム端部分のみに僅かなはじきが見られるが、ほぼ均一な塗布層が形成されている
B
−:フィルム端部分、塗布層内部に小さなはじき部分が見られる
C:フィルム端部分、塗布層内部に大きなはじき部分が見られる
C
−:フィルム内部に塗布層が点在している状態である
D:フィルム上に剤が少し塗布されている
D
−:フィルム上に剤がほとんど塗布されていない
に従って評価した。
【0133】
(3)成膜性
実施例および各比較例で得られた各帯電防止剤を用いて上記帯電防止処理が為されたPETフィルムの帯電防止層の外観をそれぞれ観察し、次の基準:
A:未加工フィルム(未延伸PETフィルム)と変わらない
B:剤が凝集し、薄い曇りや凸凹となっている部分が極僅かに見られるが、未加工フィルムとほぼ変わらない
C:剤が凝集し、薄い曇りや凸凹となっている部分が見られる
D:剤が凝集し、薄い曇りや凸凹となっている部分が多く見られる
に従って評価した。
【0134】
(4)密着性
実施例および各比較例で得られた各帯電防止剤を用いて上記帯電防止処理が為されたPETフィルムを作製し、その帯電防止層を消しゴム((株)トンボ鉛筆製 MONO消しゴム)にて擦った後、その部分の表面抵抗率を、JIS C 2151(2006)に準じて測定した。なお、各測定は、帯電防止処理が為されたPETフィルムを20℃、40%RHの条件下において24時間放置して調湿した後、同条件下において、抵抗計(東亜電波工業(株)社製、SM−8210 極超絶縁計)およびサンプルチャンバー((株)アドバンテスト社製、TR42)を用いて測定した。
【0135】
表面抵抗率が10
12Ω以上となる摩擦回数を計測し、次の基準:
A:表面抵抗率が10
12Ω以上となるのに摩擦回数が10回以上必要である
B:表面抵抗率が10
12Ω以上となるのに摩擦回数が5回以上必要である
C:表面抵抗率が10
12Ω以上となるのに摩擦回数が3回以上必要である
D:摩擦回数が3回未満で表面抵抗率が10
12Ω以上となる
に従って評価した。なお、摩擦回数1回とは、消しゴムで1方向に1回擦ることをいう。
【0136】
(5)帯電防止性
実施例および各比較例で得られた帯電防止剤を用いて上記帯電防止処理が為されたPETフィルムを作製し、上記(4)と同様にして表面抵抗率を測定した。なお、i)未処理のもの、および、ii)170℃で20分加熱処理したもの、について、それぞれ、表面抵抗率の測定を行った。なお、表面抵抗率の値が小さい程、帯電防止性が優れていることを示す。
【0137】
(6)白化防止性
実施例および各比較例で得られた帯電防止剤を用いて上記帯電防止処理が為されたPETフィルムを作製し、i)未処理のもの、および、ii)170℃で5分加熱処理したもの、について、それぞれ、目視外観検査による白化評価を行い、次の基準:
A:ほぼ変化なし
B:うっすら白化
C:白化
に従って評価した。
【0138】
(評価)
図2および
図3に示すように、実施例および各比較例で得られた帯電防止剤は、それぞれ、優れた帯電防止性を備えているが、加熱処理後において、各比較例では白化が生じたが、実施例においては白化が生じなかった。
【0139】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、樹脂フィルムの両面に帯電防止剤が塗布されていてもよい。
【0140】
また、帯電防止剤に、アンモニア塩基による上記した各効果を喪失しない範囲内で、昜滑性付与可能な粒子や、密着性向上が可能な水溶性ポリマーが添加されていてもよい。
【0141】
また、カチオン性のアンモニウム塩基を含有するモノマーから成り、電荷密度が非常に高い帯電防止ポリマー(A)、および、水酸基を含有しているので、樹脂フィルムに対する帯電防止剤の塗布性を向上すると共に、帯電防止層の樹脂フィルムに対する延伸追従性および密着性を向上することができる塗布性向上ポリマー(B)のみにより帯電防止剤が構成されていてもよい。このようにしても、アンモニウム塩基含有ポリマーのみを含み、非常に電化密度が高い帯電防止剤が樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより、樹脂フィルム上に白化抑制機能および帯電防止機能を備える帯電防止層を形成することができる。
【0142】
そして、樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に塗布されることにより帯電防止層を形成する帯電防止剤およびその塗布方法に本発明を広く適用することができる。