【課題】接合範囲よりもその面積が小さい押圧面を有する小型の押圧体により、各シート状部材を押圧体による押圧方向にほぼ直交する方向に確実に移動させながら押圧して接合範囲の全範囲に渡って接合することができる技術を提供する。
【解決手段】押圧面35aにより各シート状部材Sが押圧方向Zに押圧されて加圧された状態で、ホーン35を予め設定された低周波振動周期で低周波振動させることにより、低周波振動周期の1周期における所定の加圧期間に各シート状部材Sがホーン35により繰り返し加圧される。したがって、各シート状部材Sを押圧方向Zにほぼ直交する方向に確実に移動させながら、接合範囲よりもその面積が小さい押圧面35aを有する小型のホーン35により、各シート状部材Sをホーン35による押圧方向Zにほぼ直交する方向に確実に移動させながら押圧して接合範囲の全範囲に渡って接合することができる。
前記移動手段は、前記各シート状部材が重ね合わされた状態で前記バックアップ面に固定配置された前記バックアップ部材を前記押圧方向にほぼ直交する方向に一定速度で移動させることを特徴とする請求項1に記載の接合装置。
前記移動手段は、前記加圧期間における移動速度を、前記低周波振動周期の1周期における前記加圧期間を除く期間における移動速度よりも低下させて、前記各シート状部材が重ね合わされた状態で前記バックアップ面に固定配置された前記バックアップ部材を前記押圧方向にほぼ直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の接合装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる接合装置を示す側面図、
図2は
図1の接合装置を正面から見た要部拡大図である。また、
図3は押圧体の振動態様を説明するための図である。
【0018】
(接合装置)
図1および
図2に示す接合装置1は、振動を印加しながら重ね合わされた複数のシート状部材Sを押圧して加圧することにより超音波接合するものであり、ステージ2と、シート状部材Sに超音波振動を印加する共振器31を備えるヘッド部3と、支持手段33に支持された共振器31を駆動して押圧方向である矢印Z方向に往復移動させる加圧手段4と、ステージ2を駆動して押圧方向にほぼ直交する矢印Y方向(移動方向)に往復移動させる移動手段5と、接合装置1の各部の制御を行う制御装置(図示省略)とを備えている。なお、シート状部材Sは、不織布、Cu、Al、Au、Ni、Ag等の金属板や金属箔、炭素繊維複合材料、熱可塑性や熱硬化性の樹脂シートにより構成されたり、それぞれ接合部を有する半導体ウエハや回路基板、合成樹脂による積層基板、樹脂板、もしくはこれらの積層体などにより構成される。
【0019】
ステージ2(本発明の「バックアップ部材」に相当)は、各シート状部材Sが重ね合わされた状態で固定配置されるバックアップ面21を有し、バックアップ面21には真空吸着機構や静電吸着機構、機械式のチャック機構等の一般的な保持機構(図示省略)が設けられており、重ね合わされた状態の各シート状部材Sは保持機構によって保持されることによりバックアップ面21に配置される。また、バックアップ面21に配置された各シート状部材Sの矢印Y方向における両端部が、それぞれ、長尺の板状のクランプ部材22とステージ2の矢印Y方向における両側部に形成されたフランジ部23との間に矢印X方向に沿って挟持されて図示省略されたねじやボルトにより締め付けられることにより、シート状部材Sがバックアップ面21に固定配置される。
【0020】
ヘッド部3は、振動子32(振動生成手段)がその一方端に接続された共振器31と、共振器31を支持する支持手段33とを備え、振動子32が共振器31(ホーン35)を超音波振動させることにより押圧面35aからシート状部材Sに超音波振動が印加される。
【0021】
具体的には、共振器31は、制御装置に制御されて振動子32が生成する超音波振動に共振してその中心軸の方向に超音波振動するものであって、ブースタ34とホーン35とを備え、ブースタ34の他方端とホーン35の一方端とが、互いの中心軸が同軸になるように無頭ねじにより連結されている。
【0022】
ブースタ34は、この実施形態では、例えば
図1中の矢印Z方向におけるそのほぼ中央の位置と、その両端位置とが最大振幅点となるように、共振周波数の一波長の長さに形成されている。このとき、矢印Z方向において各最大振幅点から1/4波長離れた2つの位置が、それぞれブースタ34の第1および第2最小振幅点に相当する。また、ブースタ34は、その断面形状が円形状である円柱状に形成されている。そして、ブースタ34の一方端に、ブースタ34の中心軸と同軸になるように振動子32が無頭ねじにより接続されている。
【0023】
また、ブースタ34の第1および第2最小振幅点に相当する位置の外周面には、それぞれの周方向に沿って凹状の溝が形成されることによりブースタ34(共振器31)が支持手段33に把持されるための被把持部が形成されている。なお、この実施形態では、ブースタ34の中心軸にほぼ直交する断面形状が八角形状となるように被把持部が形成されているが、その断面形状が円形状やその他の多角形状となるように被把持部を形成してもよい。
【0024】
ホーン35(本発明の「押圧体」に相当)は、各シート状部材Sの接合範囲よりもその面積が小さい押圧面35aを有し、該押圧面35aにより各シート状部材Sをステージ2のバックアップ面21に対して押圧方向Zに押圧し、振動子32の振動に共振して超音波振動することにより押圧面35aから各シート状部材Sに超音波振動を印加するものである。ホーン35は、例えば
図1中の矢印Z方向におけるその両端位置が最大振幅点となるように、共振周波数の半波長の長さに形成されている。このとき、矢印Z方向におけるホーン35のほぼ中央の位置が第3最小振幅点に相当する。また、
図1および
図2に示すように、ホーン35は、直方体状に形成されている。そして、ホーン35の押圧面35aは、各シート状部材Sの接合範囲に対して、押圧方向Zおよび移動方向Yにほぼ直交する幅方向Xにおいて幅広に(ホーン35の幅Wh≧接合範囲の幅Wm)、移動方向Yにおける長さLhが短く形成されている(ホーン35の長さLh<接合範囲の長さLm)。
【0025】
なお、この実施形態では、共振器31は、その共振周波数が約15kHz〜約60kHz、その振動振幅が約2μm〜約300μmとなるように構成されており、振動子32により生成される超音波振動に共振して共振器31が超音波振動することにより、ホーン35の押圧面35aからシート状部材Sに対して超音波振動が印加される。
【0026】
支持手段33は、基部36とクランプ手段37とを備え、クランプ手段37でブースタ34の被把持部を把持することにより共振器31を支持するものであり、基部36には、加圧手段4のボールねじ42に螺合するねじ穴が矢印Z方向に形成されている。
【0027】
また、クランプ手段37は、ブースタ34に形成された2つの被把持部を把持できるように、基部36の2ヶ所に設けられており、それぞれ、ブースタ34の被把持部を挟持する第1および第2部材を備えている。具体的には、クランプ手段37の第1および第2の部材には、被把持部の断面形状に係合可能な形状を有する凹部がそれぞれ設けられている。そして、第1および第2部材の凹部でブースタ34の被把持部を狭持するように、被把持部を形成する凹状の溝に、基部36に支持されたクランプ手段37の第1および第2部材が嵌挿され、ボルトで第1および第2部材が固定されることにより、ブースタ34の被把持部がクランプ手段37により把持される。
【0028】
なお、共振器31を支持する支持手段33の構成は、上記したように、ブースタ34に形成された被把持部を把持(クランプ)した状態でボルトにより固定されるクランプ手段37に限られず、例えば、電気制御可能に構成された機械的なクランプ機構や、ワンタッチで取り付け可能なクランプ機構など、ブースタ34の被把持部を支持することができる構成あればどのようなものであってもよい。
【0029】
また、共振器31に形成される被把持部の位置は、最小振幅点に限らず、共振器31の任意の位置に被把持部を形成すればよい。また、被把持部の構成は、共振器31の外周面に周方向に沿って凹状の溝が形成された構成に限られず、例えば、共振器31の外周面に周方向に沿って凸状のフランジが形成された構成など、支持手段33により把持することができれば、被把持部がどのような形状に構成されてもよい。また、被把持部が支持手段33により、Oリングやダイアフラム等の弾性部材を介して支持されていてもよい。
【0030】
加圧手段4(本発明の「加圧部」「振動生成手段」に相当)は、ホーン35の押圧面35aがステージ2のバックアップ面21と対向するように支持手段33に支持された共振器31を、押圧方向Zに駆動してステージ2に近接またはステージ2から離間させるものであって、駆動モータ41とボールねじ42とを備えている。また、架台(図示省略)に立設された支柱(図示省略)にガイド43が結合されており、加圧手段4は、フレーム44を介して支柱およびガイド43に連結されている。
【0031】
そして、制御装置に制御されて駆動モータ41が回転することにより、ガイド43に矢印Z方向に設けられた凸状のレール43aと支持手段33に設けられたガイド(図示省略)とが摺接しつつ、ボールねじ42に螺合された支持手段33が移動方向Zにおいて上下動し、これにより、支持手段33に支持された共振器31がステージ2に近接またはステージ2から離間する。
【0032】
また、加圧手段4は、制御装置による制御に基づいて駆動モータ41の駆動トルクを調整することにより、所定の加圧力で支持手段33に支持された共振器31をステージ2に近接させることができるように構成されている。また、加圧手段4は、制御装置による制御に基づいて駆動モータ41を所定の振動周期で正逆方向に回転方向を切り換えることにより、支持手段33に支持された共振器31を押圧方向Zにおいて所定の振動周期および振幅で振動させることができるように構成されている。
【0033】
また、支柱にはリニアエンコーダ(図示省略)が設けられており、これによりヘッド部3の高さが検出されて、リニアエンコーダの検出信号に基づいて制御装置により駆動モータ41を制御することにより、ヘッド部3の高さを調整することができる。
【0034】
そして、共振器31の中心軸の方向が基部36に形成されたねじ穴とほぼ同じ方向、すなわち、共振器31の中心軸の方向と加圧手段4による共振器31の移動方向(押圧方向Z)とがほぼ同方向となり、ホーン35の押圧面35aがステージ2と対向するように、支持手段33により共振器31が支持されている。したがって、加圧手段4により基部36が下動されることで共振器31(ホーン35)が押圧方向Zに駆動されて一体的にステージ2に近接し、これにより、加圧手段4による加圧力が押圧面35aからステージ2のバックアップ面21に載置された各シート状部材Sに加えられる。すなわち、加圧手段4により制御されることにより、超音波振動するホーン35の押圧面35aによりシート状部材Sがステージ2のバックアップ面21に対して押圧されて加圧される。
【0035】
また、
図1および
図3に示すように、加圧手段4は、振動子32により超音波振動する共振器31を、押圧方向Zに平行な振動方向に予め設定された振動周期(約1Hz〜約1kHz:本発明の「低周波振動周期」に相当)および振幅Ah(約0.01mm〜約5.0mm)で正弦波状に低周波振動させながら、低周波振動周期の1周期における所定の加圧期間Pに各シート状部材Sを繰り返し加圧する。なお、この実施形態における低周波振動とは、振動子32による超音波振動よりも低周波の振動のことであり、この実施形態では、例えば、その振動周期が、約5Hz〜約100Hzに設定され、振幅Ahが、約0.1mm〜約2.0mmに設定される。また、この実施形態では、共振器31の低周波振動の振動周期において、
図3中の実線で示す共振器31が下動する期間に各シート状部材Sに押圧方向Zへの加圧力が加わるときの加圧力が所定値で一定となるように加圧手段4が制御装置により制御される。この実施形態では、低周波振動の中心である位置Oにおいて押圧面35aが各シート状部材Sに接触するように構成されている。したがって、押圧面35aが各シート状部材Sに接触する
図3中に示す加圧期間Pのうち実線で示される期間において、各シート状部材Sが押圧面35aにより一定の加圧力で加圧される。
【0036】
なお、ホーン35の押圧面35aが各シート状部材Sに接触する位置は、低周波振動の中心である位置Oに限られるものではない。例えば、各シート状部材Sが押圧面35aにより加圧される時間をより長くする必要があれば、ホーン35の上限位置近傍もしくは若干ホーン35が下動した位置において、押圧面35aと各シート状部材Sとが接触するように構成すればよい。また、例えば、各シート状部材Sが加圧される時間をより短くする必要があれば、ホーン35が振動の中心位置Oよりもさらに下動した位置において、押圧面35aと各シート状部材Sとが接触するように構成すればよい。また、押圧面35aが各シート状部材Sに接触する
図3中に示す加圧期間Pの全ての期間において、+Z方向における加圧力が所定値で一定となるように加圧手段4が制御装置により制御されるようにしてもよい。
【0037】
移動手段5は、ステージ2を移動方向Yに一定速度で移動させることで、各シート状部材Sが押圧面35aに対向する部分を、押圧方向Zにほぼ直交する移動方向Yに一定速度で押圧面35aに対して相対的に移動させものであって、駆動モータ51と、ボールねじ52と、ボールねじ52に螺合するねじ穴が設けられた移動部材53と、ガイド54とを備えている。
【0038】
ステージ2は、
図2に示すように、基台55の矢印X方向における両側それぞれに矢印Y方向に沿って設けられたガイド54に、矢印Y方向(移動方向Y)において往復移動自在にガイドされた状態でその下面側から支持されている。また、ボールねじ52は、基台55の矢印X方向におけるほぼ中央の位置においてその長軸方向が矢印Y方向に沿うように配置されており、ボールねじ52は、基台55の矢印Y方向における両側に設けられたフレーム56にその中心軸を回転中心として回転自在に支持されている。また、移動部材53は、ボールねじ52と螺合した状態でステージ2の下面に結合されている。
【0039】
そして、制御装置に制御されてボールねじ52の一端に連結された駆動モータ51が回転することにより、ボールねじ52と螺合した移動部材53が移動方向Yにおいて往復移動し、これにより、結合部材53に結合されたステージ2がガイド54にガイドされつつ移動方向Yにおいて往復移動する。
【0040】
(接合処理)
次に、接合装置1において実行される接合処理の一例について説明する。
【0041】
まず、複数のシート状部材Sがステージ2のバックアップ面21上の所定位置に重ね合わされた状態で固定配置された後、移動手段5によりステージ2が駆動されることにより、各シート状部材Sの接合範囲の移動方向Yにおける先端部分(
図1の紙面に向かって左側)がホーン35の押圧面35aに対向する位置に位置決めされる。次に、加圧手段4によりヘッド部3が押圧方向Zに駆動されることにより、ステージ2のバックアップ面21に対して、ホーン35の押圧面35aにより重ね合わされた状態の各シート状部材Sが押圧方向Zに押圧されて加圧される。
【0042】
続いて、振動子32が駆動されて共振器31が超音波振動することにより押圧面35aから各シート状部材Sへの超音波振動の印加が開始されると共に、加圧手段4により、超音波振動する共振器31の低周波振動が開始される。そして、移動手段5によりステージ2が駆動されることにより、押圧面35aに対して移動方向Y(
図1の紙面に向かって左方向)への各シート状部材Sの一定速度での移動が開始される。
【0043】
次に、ステージ2が移動手段5により移動方向Yに駆動されることにより、接合範囲の移動方向Yにおける後端部分(
図1の紙面に向かって右側)がホーン35の押圧面35aに対向する位置まで移動すると、振動子32が駆動されることによる共振器31の超音波振動および加圧手段4による共振器31の低周波振動が停止され、共振器31が加圧手段4によりステージ2から離間する方向に駆動されて所定の待機位置まで移動することにより接合処理が終了する。
【0044】
以上のように、この実施形態では、振動を印加しながら重ね合わされた複数のシート状部材Sが接合される際に、各シート状部材Sの接合範囲よりもその面積が小さい押圧面35aを有するホーン35(共振器31)が加圧手段4により押圧方向Zに駆動される。そして、ステージ2のバックアップ面21に対して、加圧手段4により駆動されたホーン35の押圧面35aにより各シート状部材Sが押圧方向Zに押圧されて加圧された状態で、振動子32が超音波振動させたホーン35の押圧面35aから各シート状部材Sに超音波振動が印加される。このとき、加圧手段4により、振動子32により超音波振動するホーン35を押圧方向Zと平行な振動方向に予め設定された低周波振動周期で低周波振動させながら、低周波振動周期の1周期における所定の加圧期間Pに各シート状部材Sがホーン35により繰り返し加圧される。したがって、加圧手段4によるホーン35の低周波振動周期において、加圧期間Pを除く期間および加圧期間Pにおけるホーン35によるバックアップ面21に対する各シート状部材Sへの加圧力が弱くなるタイミングで、移動手段5により、各シート状部材Sが押圧面35aに対向する部分をホーン35の押圧方向Zにほぼ直交する移動方向Yに確実に移動させることができる。
【0045】
そのため、シート状部材Sと押圧面35aとの移動手段5による相対的な移動速度と、加圧手段4によるホーン35の低周波振動周期とが適切に設定されることで、次のような効果を奏することができる。すなわち、接合範囲よりもその面積が小さい押圧面35aを有する小型のホーン35により各シート状部材Sに超音波振動を印加しつつ、超音波振動するホーン35を押圧方向Zに低周波振動させながら各シート状部材Sをその加圧期間Pにおいて繰り返し加圧すると共に、シート状部材Sが押圧面に対向する部分を、移動手段5によりステージ2を移動方向Yに移動させることで押圧方向Zにほぼ直交する移動方向Yに確実に移動させることができる。したがって、各シート状部材Sが固定配置されたステージ2を移動手段5により移動方向Yに移動させて、矢印Y方向におけるホーン35の押圧面35aとステージ2のバックアップ面21(各シート状部材S)とを相対的に移動させることによって、ホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sの押圧位置を連続的に確実に移動させながら、小型のホーン35により各シート状部材Sを接合範囲の全範囲に渡って押圧して接合することができる。
【0046】
また、加圧手段4は、超音波振動するホーン35(共振器31)を押圧方向Zにおいて低周波振動させるため、ホーン35により各シート状部材Sがバックアップ面21に対して加圧される際に、加圧手段4によりホーン35が押圧方向Zに駆動されるときのホーン35の押圧面35aとバックアップ面21との間隔(ギャップ)を精度よく制御するのは困難である。したがって、加圧手段4により、ホーン35が下動するときの各シート状部材Sへの加圧力が所定値で一定となるようにホーン35が振動すべく制御されることで、ホーン35によってバックアップ面21に固定配置された各シート状部材Sが過剰に押圧され加圧されるのを防止することができるので、各シート状部材Sがホーン35により押圧されて破損するのを防止することができる。
【0047】
また、ホーン35の押圧面35aが、各シート状部材Sの接合範囲に対して、押圧方向Zおよび移動方向Yに直交する幅方向Xにおいて幅広に、移動方向Yにおける長さLhが短く形成されているので、移動手段5により、バックアップ面21に重ね合わされた状態で固定配置された各シート状部材Sを、移動方向Yにおける接合範囲の長さLmだけホーン35の押圧面35aに対して相対的に移動させるだけで、ホーン35の押圧面35aにより接合範囲の全範囲に渡って各シート状部材Sをバックアップ面21に対して効率よく押圧して加圧することができる。
【0048】
また、バックアップ部材として、各シート状部材Sが重ね合わされた状態でバックアップ面21に固定配置されたステージ2を、移動手段5により移動方向Yに一定速度で移動させることにより、シート状部材Sが押圧面35aに対応する部分を押圧面35aに対して相対的に一定速度で移動方向Yに移動させることができる実用的な構成の接合装置1を提供することができる。
【0049】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態について
図4を参照して説明する。
図4は本発明の第2実施形態にかかる接合装置の加圧期間におけるステージの移動状態を説明するための図である。
【0050】
この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、
図4中に実線で示すように、加圧期間Pにおける移動手段5によるステージ2の移動がオフされて、加圧期間Pの間、ステージ2が移動停止する点である。その他の構成および動作は、上記した第1実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0051】
この実施形態によれば、上記した実施形態と同様の効果を奏することができると共に、次のような効果を奏することができる。すなわち、各シート状部材Sがバックアップ面21に対してホーン35の押圧面35aにより押圧されて大きな摩擦力が発生する加圧期間Pにおいて、各シート状部材Sがそのバックアップ面21に固定配置されたステージ2の移動手段5による移動が停止するので、加圧期間Pにおいて発生する摩擦力によって、押圧面35とバックアップ面21との間に挟持された各シート状部材Sに位置ずれが生じたり、各シート状部材Sが破損するのを防止することができる。
【0052】
なお、この実施形態では、加圧期間Pにおけるステージ2の移動を停止させることにより、加圧期間Pにおけるステージ2の移動速度が、低周波振動周期の1周期における加圧期間Pを除く期間におけるステージ2の移動速度よりも低下するように構成されているが、加圧期間Pにおけるステージ2の移動速度を、加圧期間Pを除く期間におけるステージ2の移動速度よりも遅くしてステージ2を移動手段5により移動方向Yに移動させるだけでもよい。このようにしても、各シート状部材Sがバックアップ面21に対してホーン35の押圧面35aにより押圧されて大きな摩擦力が発生する加圧期間Pにおいて、ステージ2の移動手段5による移動速度が低下するので、加圧期間Pにおいて発生する摩擦力によって、ホーン35とバックアップ面21との間に挟持された各シート状部材Sに位置ずれが生じたり、各シート状部材Sが破損するのを防止することができる。
【0053】
なお、ステージ2やヘッド部3にロードセル等により構成される加圧センサを設け、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧力を加圧センサにより検出できるようにしてもよい。この場合、加圧センサにより押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧力を検出することによって、加圧センサによる検出加圧力に基づいて加圧期間Pを検出し、加圧期間Pにおける各シート状部材S(ステージ2)の移動速度が、低周波振動周期の1周期における加圧期間Pを除く期間におけるシート状部材Sの移動速度よりも低下するように構成してもよい。すなわち、加圧センサによる検出加圧力に基づいて、シート状部材S(ステージ2)の移動速度が調整されるようにしてもよい。
【0054】
<第3実施形態>
この発明の第3実施形態について
図5を参照して説明する。
図5は本発明の第3実施形態にかかる接合装置を示す側面図である。
【0055】
この実施形態が上記した第1および第2実施形態と異なるのは、
図5に示すように、接合装置100が、本発明のバックアップ部材として、ホーン35の押圧面35aに対向する位置に配置され、その外周面121により本発明のバックアップ面が形成される回転ドラム102を備えている点である。以下では上記した第1実施形態と異なる点を中心に説明し、その他の構成および動作は上記した第1実施形態と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、
図5に示すように、回転ドラム102は、図示省略された駆動モータやプーリー等が組み合わされることにより構成された移動手段によって駆動されることによりその中心軸を回転中心として矢印α方向に回転する。具体的には、移動手段により駆動された回転ドラム102は、回転ドラム102の外周面121のホーン35の押圧面35aとの間にシート状部材Sを挟持する位置が移動方向Yに一定速度で移動するように回転する。また、重ね合わされた状態の各シート状部材Sは、図示省略された巻回ローラや駆動モータ等により構成された移動手段により駆動されて回転ドラム102の周速と同じ速度で移動方向Yに移動する。
【0057】
以上のように、この実施形態では、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができると共に、次のような効果を奏することができる。すなわち、バックアップ部材として、その外周面121によりバックアップ面が形成された回転ドラム102を、図示省略された移動手段により回転ドラム102の外周面121の押圧面35aとの間にシート状部材Sが挟持される位置が移動方向Yに一定速度で移動するように回転させることにより、回転ドラム102の外周面121の押圧面35aとの対向位置に供給される各シート状部材Sを押圧面35aに対して相対的に一定速度で移動させることができる実用的な構成の接合装置100を提供することができる。
【0058】
なお、回転ドラム102の外周面102aに複数のシート状部材Sが重ね合わされた状態で貼り付けられていてもよい。
【0059】
<第4実施形態>
この発明の第4実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は本発明の第4実施形態にかかる接合装置のヘッド部および加圧手段を示す側面図である。
【0060】
この実施形態が上記した実施形態と異なるのは、
図6に示すように、加圧手段4がシリンダ45を備え、そのねじ穴が加圧手段4のボールねじ42に螺合する支持手段33の基部36aと、クランプ手段37が設けられた支持手段33の基部36bとが、シリンダ45を介して連結されている点である。そして、この実施形態では、シリンダ45は、基部36aに対して基部36bを押圧方向Z(同図に向かって下方向)に所定の一定加圧力で加圧するように空気等の流体の流入量が設定されている。その他の構成および動作は上記した実施形態と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0061】
以上のように、この実施形態では、上記した実施形態と同様の効果を奏することができると共に、次のような効果を奏することができる。すなわち、この実施形態では、
図6に示すように、加圧手段4により共振器31が押圧方向Zに駆動されてホーン35の押圧面35aにより重ね合わされた状態の複数のシート状部材Sが加圧される際に、各シート状部材S(ステージ2)側からの応力に応じてシリンダ45内でピストンが移動することにより、各シート状部材Sは、シリンダ45が基部36bを加圧する所定の一定加圧力と同じ加圧力でホーン35の押圧面35aにより加圧される。したがって、各シート状部材Sを、加圧期間Pにおいて、ホーン35の押圧面35aにより所定の一定加圧力でより高精度に加圧することができる。
【0062】
<第5実施形態>
この発明の第5実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は本発明の第5実施形態にかかる接合装置へのシート状部材の供給方法の一例を示す図である。
【0063】
この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、
図7に示すように、第1および第2の供給ローラ57a,57bそれぞれに巻回保持された各シート状部材Sが、矢印方向に回転する駆動ローラ58aおよび従動ローラ58bによりニップされることで重ね合わされた状態で、ステージ2のバックアップ面21とホーン35の押圧面35aとの間に供給される点である。また、ホーン35の押圧面35aにより加圧されて接合された後の各シート状部材Sは収納ローラ59に巻回されて収納される。その他の構成および動作は上記した実施形態と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0064】
第1および第2の供給ローラ57a,57bそれぞれに巻回保持された各シート状部材Sは、例えば駆動ローラ58aおよび収納ローラ59が図示省略された駆動モータ等の駆動手段により
図7中の矢印方向に回転することにより、重ね合わされた状態で押圧面35aに対向する位置に供給される。したがって、重ね合わされた状態の各シート状部材Sを、駆動ローラ58aおよび収納ローラ59により駆動して押圧面35に対して所定の移動速度で相対的に移動させることにより、接合後の各シート状部材Sを収容ローラ59に収容しつつ、第1および第2の供給ローラ57a,57bから新しいシート状部材Sを、押圧面35aとバックアップ面21との間に重ね合わされた状態で供給することができる。
【0065】
以上のように、この実施形態では、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、駆動ローラ58aおよび収容ローラ59が本発明の「移動手段」として機能している。また、この実施形態では、ステージ2は移動手段により必ずしも駆動される必要はない。
【0066】
<第6実施形態>
この発明の第6実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は本発明の第6実施形態にかかる接合装置の加圧期間におけるステージの移動状態を説明するための図である。
【0067】
この実施形態が上記した第2実施形態と異なるのは、
図8中に示すように、加圧手段4が、共振器31を矩形波状に低周波振動させている点である。その他の構成および動作は、上記した実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0068】
加圧手段4は、
図8中に点線で示すように、矩形波状に低周波振動するように制御装置から出力された制御信号に基づいて駆動される。なお、加圧手段4をステップ状に駆動する制御信号に対して多少の制御遅れが加圧手段4に生じることがある。この場合には、共振器31は、例えば、
図8中の実線に示すように矩形波状の制御信号(
図8中の点線)に対して少し制御遅れが生じた状態で低周波振動する。そして、上記した第2実施形態と同様に、
図8中に太い実線で示す加圧期間Pにおいて、移動手段5によるステージ2の移動がオフされてステージ2が移動停止する。
【0069】
なお、上記したように加圧手段4に制御遅れが生じる場合には、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧力を検出する加圧センサによる検出加圧力に基づいて、シート状部材S(ステージ2)の移動速度が調整されるようにするとよい。このようにすると、確実に加圧期間Pにおけるシート状部材S(ステージ2)の移動速度を調整することができる。また、上記した第1、第3〜第5実施形態において、共振器31を矩形波状に低周波振動させてもよい。また、共振器31を矩形波状に低周波振動させるデューティ比は、接合の対象物であるシート状部材Sの材質等に応じて適宜設定すればよい。
【0070】
この実施形態によれば、上記した第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
<第7実施形態>
この発明の第7実施形態について
図9を参照して説明する。
図9は本発明の第7実施形態にかかる接合装置が備えるホーンを示す縦断面図である。
【0072】
この実施形態が上記した各実施形態と異なるのは、
図9のホーン35に示すように、押圧面35aの端縁に沿った角部が面取りされることにより、ホーン35の押圧面35の端縁に沿って曲面部35bが設けられている点である。その他の構成および動作は、上記した実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0073】
ホーン35の押圧面35aの端縁に沿って角部が設けられていると、この角部によりエッジが形成される。そのため、シート状部材Sの当該エッジが当接する部分が破損するおそれがある。しかしながら、上記したように、ホーン35の押圧面35aの端縁に沿って曲面部35bが設けられることにより、前記エッジによりシート状部材Sが破損するのを防止することができる。
【0074】
<第8実施形態>
この発明の第8実施形態について
図10を参照して説明する。
図10は本発明の第8実施形態にかかる接合装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0075】
この実施形態が上記した第6実施形態と異なるのは、
図10中においてホーン35の高さ位置を示す図に示すように、接合が完了するための条件を満足すればホーン35の押圧面35aによる押圧を停止してホーン35を初期位置(この実施形態では押圧面35aとシート状部材Sとの接触位置)まで復帰移動させる駆動信号を出力する点である。なお、この実施形態では、ホーン35の押圧面35aがシート状部材Sに接触してからの押込み量が所定値Z1に達したタイミングが、接合が完了するための条件として予め設定されている。また、この実施形態では、加圧期間Pの間に超音波振動が印加される。その他の構成および動作は、上記した実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0076】
加圧手段4は、
図10中に点線で示すように、ホーン35をステップ状に駆動させるように制御装置から出力された駆動信号に基づいて駆動される。すなわち、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧を開始する際に、ホーン35をZ方向に所定値Z1だけステップ状に駆動させる制御信号が制御装置から出力される。また、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧を開始する際に超音波振動の印加が開始される。また、ホーン35によるシート状部材Sの押込み量が所定値Z1に達して、接合が完了するための条件を満足すれば、ホーン35を初期位置にステップ状に復帰移動するように駆動させる制御信号が制御装置から出力される。なお、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧を開始する際に、ホーン35をZ方向に所定値Z1以上の大きさでステップ状に駆動させる制御信号が制御装置から出力されてもよい。
【0077】
また、
図10中に示すように、ホーン35の復帰移動が開始されると超音波振動の印加が停止されると共に、ステージ2の移動が開始される。そして、ステージ2が所定量だけ移動すれば、再度、ホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始される。なお、ステージ2が所定量だけ移動すれば、ホーン35の復帰移動が完了していなくてもホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始されるようにしてもよい。また、ステージ2の所定量の移動が完了する前にホーン35の復帰移動が完了した場合には、ステージ2の所定量の移動が完了するまで初期位置にホーン35を待機させてもよいし、ステージ2の移動を停止させてホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始されるようにしてもよい。
【0078】
以上のように、この実施形態では、ホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が、接合が完了するための条件を満足するまで継続されるので、シート状部材Sどうしを確実に接合することができる。
【0079】
なお、接合が完了するための条件を満足するのに要する加圧期間Pの長さは、接合の対象物であるシート状部材Sの材質や状態等に応じて、加圧動作ごとに変化するが、ホーン35を復帰移動させるのに要する時間はほぼ一定である。したがって、この実施形態では、各低周波振動周期T1,T2,T3は、接合が完了するための条件を満足するのに要する加圧期間Pの長さに応じて変化すると共に、各低周波振動周期T1,T2,T3における加圧期間Pのデューティ比も変化する。したがって、この実施形態では、接合が完了するための条件を満足するのに要した時間に応じてホーン35の低周波振動周期を変化させるように制御されている。
【0080】
また、この実施形態では、初期位置からのホーン35の押込み量が所定値Z1に達したタイミングでホーン35の押圧面35aによる押圧を停止するように設定されている。しかしながら、別途、加圧センサの検出加圧力等に基づいて実際にホーン35の押圧面35aがシート状部材Sに接触した位置を検出し、当該検出位置からのホーン35の押込み量が所定値Z1に達したタイミングでホーン35の押圧面35aによる押圧を停止するようにしてもよい。このようにすれば、シート状部材Sにうねりが生じていたり、シート状部材Sの厚みにばらつきが生じている場合であっても、シート状部材Sをホーン35の押圧面35aにより所定の押込み量だけ確実に押圧することができる。
【0081】
<第9実施形態>
この発明の第9実施形態について
図11を参照して説明する。
図11は本発明の第9実施形態にかかる接合装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0082】
この実施形態が上記した第8実施形態と異なるのは、
図11中においてホーン35の高さ位置を示す図と超音波振動エネルギーを示す図に示すように、接合が完了するための条件が異なる点である。なお、この実施形態では、ホーン35の押圧面35aからシート状部材Sに印加された超音波振動エネルギーの総量(ワット(W)またはジュール(J))が所定値に達したタイミングが、接合が完了するための条件として予め設定されている。また、この実施形態では、加圧期間Pの間、すなわち、シート状部材Sに印加された超音波振動エネルギーの総量が所定値に達するまでの間に超音波振動が印加される。その他の構成および動作は、上記した第8実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を付すことによりその構成および動作の説明を省略する。
【0083】
加圧手段4は、
図11中に点線で示すように、ホーン35をステップ状に駆動させるように制御装置から出力された駆動信号に基づいて駆動される。すなわち、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧を開始する際に、ホーン35をZ方向に例えば所定値Z1だけステップ状に駆動させる制御信号が制御装置から出力される。また、押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧を開始する際に超音波振動の印加が開始される。また、ホーン35によりシート状部材Sに印加された超音波振動エネルギーの総量が所定値に達して、接合が完了するための条件を満足すれば、ホーン35を初期位置にステップ状に復帰移動するように駆動させる制御信号が制御装置から出力される。なお、同図中に示すように、接合が完了するための条件を満足したタイミングでのホーン35の高さ位置にばらつきが生じても構わない。
【0084】
また、
図11中に示すように、ホーン35の復帰移動が開始されると超音波振動の印加が停止されると共に、ステージ2の移動が開始される。そして、ステージ2が所定量だけ移動すれば、再度、ホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始される。なお、ステージ2が所定量だけ移動すれば、ホーン35の復帰移動が完了していなくてもホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始されるようにしてもよい。また、ステージ2の所定量の移動が完了する前にホーン35の復帰移動が完了した場合には、ステージ2の所定量の移動が完了するまで初期位置にホーン35を待機させてもよいし、ステージ2の移動を停止させてホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が開始されるようにしてもよい。
【0085】
以上のように、この実施形態では、上記した第8実施形態と同様に、ホーン35の押圧面35aによるシート状部材Sに対する加圧が、接合が完了するための条件を満足するまで継続されるので、シート状部材Sどうしを確実に接合することができる。
【0086】
なお、上記した第8実施形態と同様に、接合が完了するための条件を満足するのに要する加圧期間Pの長さは、接合の対象物であるシート状部材Sの材質や状態等に応じて、加圧動作ごとに変化するが、ホーン35を復帰移動させるのに要する時間はほぼ一定である。したがって、この実施形態では、各低周波振動周期T4,T5,T6は、接合が完了するための条件を満足するのに要する加圧期間Pの長さに応じて変化すると共に、各低周波振動周期T1,T2,T3における加圧期間Pのデューティ比も変化する。したがって、この実施形態では、接合が完了するための条件を満足するのに要した時間に応じてホーン35の低周波振動周期を変化させるように制御されている。
【0087】
また、この実施形態において、接合が完了するための条件として、第8実施形態における押込み量の条件がさらに設定されていてもよい。この場合において、押込み量およびエネルギー総量の少なくとも一方の条件を満足した場合に、接合が完了するための条件を満足したと判定するようにしてもよいし、押込み量およびエネルギー総量の両方の条件を満足した場合に、接合が完了するための条件を満足したと判定するようにしてもよい。
【0088】
また、この実施形態では、初期位置においてホーン35の押圧面35aがシート状部材Sに接触することを前提としてシート状部材Sに超音波振動が印加されている。しかしながら、上記した第8実施形態と同様に、別途、加圧センサの検出加圧力等に基づいて実際にホーン35の押圧面35aがシート状部材Sに接触した位置を検出し、当該検出位置に基づいてホーン35の押圧面35aからシート状部材Sに超音波振動が印加されるようにしてもよい。このようにすれば、シート状部材Sにうねりが生じていたり、シート状部材Sの厚みにばらつきが生じている場合であっても、シート状部材Sにホーン35の押圧面35aから所定のエネルギー総量の超音波振動エネルギーを確実に印加することができる。
【0089】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0090】
また、上記した実施形態において、加圧しながら超音波振動を印加することによりシート状部材S(被接合物)を接合する際に、接合の対象物であるシート状部材Sをヒータ等の加熱手段により加熱するようにしてもよい。超音波振動による接合処理においては、一般的に、a)被接合物に対する加圧力、b)被接合物に印加される超音波振動の振幅の大きさ、c)被接合物に対する超音波振動の印加時間、により決定される接合のエネルギーに依存することが知られている。
【0091】
上記した実施形態では、移動手段により被接合物を加圧手段による加圧方向に直交する方向に確実に移動させるために、被接合物の種類によっては、被接合物に対する加圧力を小さくしたり、被接合物に対する超音波振動の印加時間を短くしなければならないときがある。この場合に、被接合物に印加される接合のエネルギーは小さくなるが、上記したように被接合物を加熱して熱エネルギーを加えることにより、被接合物に印加される接合のエネルギーが小さくなっても被接合物どうしを確実に接合することができる。
【0092】
したがって、移動手段により被接合物を加圧手段による加圧方向に直交する方向に確実に移動させるために、被接合物に対する加圧力を小さくしたり、被接合物に対する超音波振動の印加時間を短くしたり、超音波振動の振幅を小さくしても、被接合物を加熱することにより被接合物どうしを確実に接合することができる。また、加熱することにより、接合が完了するための条件を満足するのに要する時間を安定させることができる。なお、被接合物を加熱するためのヒータは、ステージ(バックアップ手段)やホーン(押圧体)に設けられた穴内に埋設することにより配設したり、ホーンの押圧面にセラミックヒータを貼り付けて配設したりするとよい。
【0093】
また、上記した実施形態では、2枚のシート状部材Sが重ね合わされて接合されているが、3枚以上のシート状部材Sが重ね合わされて接合されてもよい。
【0094】
また、上記した各実施形態において説明した構成をどのように組み合わせてもよい。例えば、上記した第1および第2実施形態において、第3実施形態と同様に、図示省略された巻回ローラや駆動モータ等により構成された移動手段により、重ね合わされた状態の複数のシート状部材Sが、ホーン35の押圧面35aとステージ2との間に供給されるようにしてもよい。また、例えば、上記した第3実施形態において、第5実施形態と同様に、各シート状部材Sが重ね合わされてホーン35の押圧面35aとステージ2との間に供給されるようにしてもよい。
【0095】
また、重ね合わされた状態の複数のシート状部材Sの移動方向は上記した矢印Yの方向に限定されるものではなく、移動方向は、押圧方向Zにほぼ直交する方向であればどの方向であってもよい。
【0096】
また、押圧体および押圧面の形状等の構成は上記したホーン35の構成に限定されるものではなく、押圧面を有し、シート状部材Sをバックアップ面に対して押圧面により押圧できる構成であれば、押圧体をどのような形状に構成してもよい。例えば、その側面視形状が押圧面35aに向ってくちばし状に先細りする形状にホーン35を構成することができる。また、押圧体によるシート状部材Sに対する加圧力は、シート状部材Sの材質や厚み等の構成に応じて、適宜、最適な加圧力を設定すればよい。
【0097】
また、各シート状部材Sの接合範囲に対して、幅方向Xにおいて幅が狭い押圧面35aを有するホーン35を複数個並設して各シート状部材Sが加圧されるようにしてもよい。このようにすることにより、複数個のホーン35により各シート状部材Sの接合範囲を全範囲に渡って加圧することができる。また、各シート状部材Sの接合範囲に対して、幅方向Xにおいて幅が狭い押圧面35aを有するホーン35の幅方向Xにおける位置をずらしながら各シート状部材Sが加圧されるようにしてもよい。このようにすることにより、1個のホーン35により各シート状部材Sの接合範囲を全範囲に渡って加圧することができる。
【0098】
また、本発明の加圧手段および移動手段は上記した構成に限られるものではなく、ステージ2や回転ドラム102、共振器31を移動させることができれば、リニアモータやシリンダ等の周知のアクチュエータを用いるなど、どのように加圧手段および移動手段を構成してもよい。また、ヘッド部2がシート状部材Sに対して相対的に移動するように移動手段を構成してもよいし、ヘッド部2と、シート状部材Sとの両方が互いに相対的に移動するように移動手段を構成してもよい。
【0099】
また、押圧体およびバックアップ部材それぞれの配置位置は、
図1の紙面に向かって上下方向に並べて配置された上記した例に限定されるものではなく、押圧体およびバックアップ部材の上下方向の位置を入れ換えて配置してもよいし、押圧体およびバックアップ部材を
図1の紙面に向かって左右方向に並べて配置してもよい。
【0100】
また、上記した実施形態において、加圧しながら超音波振動を印加することによりシート状部材S(被接合物)を接合する際に、接合の対象物であるシート状部材Sを空冷や水冷により冷却するようにしてもよい。このようにすると、シート状部材Sに対する過剰な超音波振動の印加が抑制されるので、シート状部材Sが破損するのを抑制することができる。
【0101】
また、上記した第8および第9実施形態における接合が完了するための条件を、上記した第1実施形態〜第7実施形態において、超音波振動の印加を停止するための条件としてもよい。このようにすると、シート状部材S(被接合物)に対して過剰な超音波振動が印加されるのが防止されるので、シート状部材Sが破損するのを防止することができる。
【0102】
そして、振動を印加しながら重ね合わされた複数のシート状部材を押圧して接合する技術に本発明を広く適用することができる。