側面に配管接続部等の突出部を備えた排水装置を、ナット部材を利用し機器等の取付孔に取り付ける、ナット部材を用いた排水装置の取り付け構造において、排水装置本体の全高(雄ネジ部の軸方向の幅)を狭くする構造を提供する。
排水装置の取り付け構造を、有底筒形状の筒体部、該筒体部の外側面に周縁に沿って突出して設けられたフランジ部、筒体部の、フランジ部よりも底面側外側面に設けられた雄ネジ部、筒体部の、雄ネジ部よりも底面側であって外側面方向に突出するようにして設けられた突出部、からなる排水装置本体と、略筒形状にして内側面に排水装置本体の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備えたナット部材と、からなり、ナット部材の、突出部側に配置される端部に、排水装置本体の突出部に対応した切り欠き部を設けて構成する。
雌ネジ部の螺合終了側端部が、ナット部材の切り欠き部と、ナット部材の中心軸方向において同じ位置にあることを特徴とする、請求項1又は請求項2又は請求項5に記載の排水装置の取り付け構造。
【背景技術】
【0002】
従来より、流し台や洗面台、浴槽など、使用により排水を生じる機器(以下、「排水機器」と記載)において、生じた排水を処理するため、排水機器の槽体底面等に排水装置を取り付け、排水装置の排水口から、管体等により構成した排水配管を介し下水側に排水を排出する方法が広く知られている。
以下に、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水配管の排水配管の一例を説明する。
【0003】
特許文献1に記載の、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置及び排水配管は、以下に記載した排水機器としての流し台、排水装置本体、ナット部材、トラップ部材、接続配管、等の部材から構成されてなる。尚、以下の説明における上下は、下記従来例の説明における施工完了時の上下に基づいて説明している。
流し台は、槽体としての、上方が開口した箱体からなるシンクと、該シンクを載架するキャビネットからなる。また、シンクの底面には、排水装置本体を取り付ける取付孔を備えてなる。
排水装置本体は、有底筒状の部材であって、外側面に他の排水装置である管体との配管接続部としての排出口を備える。
また、排水装置本体は、シンク内の排水が流入する排水口を形成する、上端の開口部分の周縁に、外方向に突出したフランジ部を備えてなる。
また、排水装置本体は、フランジ部の下方に雄ネジ部を設けてなる。
ナット部材は、略円筒形状にして、その上端に施工完了時取付孔周縁を介してフランジ部下面と当接する押当部を備えてなる。また、円筒形状の内側面に排水装置本体の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を備えてなる。
また、円筒部分の外側面に、ナット部材を回転させる際の掴み部分となるリブ片を複数備えてなる。
接続配管は、直管、屈曲管などの管体からなる配管部材であって、排水装置本体側面の排出口から、下水側に繋がる床下配管までを接続する。この接続配管は、シンク底面及びキャビネット内側面に沿って配置され、その途中箇所に、後述するトラップ部材を介してなる。
トラップ部材は、管体を略S字形状に屈曲させた部材であって、使用時その内部に排水の溜まり部分を形成する。この排水の溜まり部分によってトラップ部材内部の流路の一部が満水状態になり、下水側からの臭気や害虫類が満水部分よりも屋内側に侵入できなくなるため、屋内側に臭気や害虫類が侵入することを防止するようになる。このような、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する機能を「トラップ機能」と呼ぶ。
尚、詳述しないが、排水装置本体、シンクや各配管部材等、配管のそれぞれの接続箇所において、水密的な接続が必要となる箇所においては、接着や、パッキングと袋ナット等を利用して、水密的な接続が行われている。
【0004】
上記のように構成した排水装置及び排水配管は、以下のようにして槽体である流し台のシンクに施工される。
まず、排水装置本体を、シンクの底面の取付孔に上方から挿通し、フランジ部の下面がシンク底面の取付孔の周縁上面に当接するようにする。次に、ナット部材を、排出口から挿通し、
図28の矢印の向きに縦回転させて、排水装置本体の雄ネジ部の軸と、ナット部材の雌ネジ部の軸とを一致させる(以降、この雄ネジ部と雌ネジ部の中心軸を一致させるため、ナット部材を突出部の根元部分を中心に縦回転させる作業を「ネジ軸を一致させる為の回転」と呼び、螺合の為の回転と区別する)。その上で、ナット部材を雌ネジ部の軸を中心に回転させることにより、雄ネジ部の端部と雌ネジ部の端部が向き合って螺合が開始される。
そのままナット部材を回転させると、排水装置本体とナット部材の螺合が進み、ナット部材の上端の押当部上面が、シンク底面の取付孔の周縁下面に強く当接する。結果、取付孔周縁を、フランジ部の下面と押当部上面とで強く挟持することができ、排水装置本体をシンクの取付孔に取り付けることができる。
この後、排出口から床下配管までを、途中にトラップ部材を介した上で、直管、屈曲管等を利用した接続配管によって接続して、従来例の排水装置の取り付け構造を採用した、排水配管の施工が完了する。
【0005】
上記のように施工された流し台の排水配管において、流し台を使用し、シンク内に排水が生じると、排水は、シンク内から排水口を通過し、排水装置本体側面の排出口から排出され、トラップ部材を介しつつ接続配管を通過し、最終的に床下配管から下水側に排出される。
また、トラップ部材内部に排水が溜まることで、トラップ部材の排水の流路の一部が満水状態となる。これにより、下水側からの臭気や害虫類の逆流が防止される、トラップ機能を生じる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−344400号
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。尚、
図4、
図12、
図13では、突出部である排出口1cの上面を示すため、排出口1cを、排出口1のネジ部分を含まない位置で切断して図示してなる。
図1乃至
図16に示した、本発明の第一実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置及び排水配管は、以下に記載した排水機器としての流し台N、排水装置本体1、ナット部材3、トラップ部材T、接続配管P、等の部材から構成されてなる。尚、以下の説明における上下は、下記実施例の説明における、施工完了時の上下に基づいて説明している。
流し台Nは、槽体としての、上方が開口した箱体からなるシンクSと、該シンクSを載架するキャビネットCからなる。また、シンクSの底面には、排水装置本体1を取り付ける取付孔Hを備えてなる。
排水装置本体1は、有底筒状の部材であって、外側面に、突出部であり、他の排水装置である管体との配管接続部である排出口1cを備えてなる。
また、排水装置本体1は、シンクS内の排水が流入する排水口1bを形成する、上端の開口部分の周縁に、外方向に突出したフランジ部1aを備えてなる。
また、排水装置本体1は、フランジ部1aの下方に雄ネジ部2を設けてなる。
ナット部材3は、略円筒形状にして、その上端に施工完了時取付孔H周縁を介してフランジ部1a下面と当接する押当部3aを備えてなる。また、円筒形状の内側面に排水装置本体1の雄ネジ部2に螺合する雌ネジ部4を備えてなる。
また、円筒部分の外側面に、ナット部材3を回転させる際の掴み部分となるリブ片3bを複数備えてなる。
更にナット部材3には、押当部3aと反対側、即ち施工完了時には突出部である排出口1c側を向く下端側の端部部分に、下記のような特徴を備えた切り欠き部5を設けてなる。
該切り欠き部5は、排水装置本体1の突出部である排出口1cに対応した形状を備えてなる。具体的には、略円筒形状を成す排出口1cの上面の外径と同じか、それよりも大径の切り欠き部5を備えてなり、施工時に、一時的にこの切り欠き部5内部に、排出口1cの上部を収納することができる。
また、排水装置本体1の雄ネジ部2の中心軸と、ナット部材3の雌ネジ部4の中心軸を一致させ、且つ切り欠き部5内部に排出口1cの上部を収納した状態においては、ネジ部の中心軸方向視、排水装置本体1に対するナット部材3の方向が定まる。この状態において、軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置されてなる。
詳述すると、排水装置本体1の雄ネジ部2の螺合開始側端部2aとは、ナット部材3の雌ネジ部4に最初に接する、雄ネジ部2の下方側の端部、単に「雄ネジ部2の下端」の部分、と言うだけでなく、ネジ部分の螺旋の端部を指し示すものである。
また、ナット部材3の雌ネジ部4の螺合開始側端部4aとは、排水装置本体1の雄ネジ部2に最初に接する、雌ネジ部4の上方側の端部である。これも、単に「雌ネジ部4の上端」の部分、と言うだけでなく、ネジ部分の螺旋の端部を指し示すものである。
そして「軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置」とは、
図14にて示したように、雄ネジ部2と雌ネジ部4の各螺合開始側の端部が、軸方向視、実施例では平面視において近傍(雄ネジ部2及び雌ネジ部4の中心軸を中心として45度程度の角度内に収まる範囲)にあり、且つ両ネジ部の端部同士が重ならない状態である。
また、切り欠き部5は、雌ネジ部4の螺合終了側端部4bが、ナット部材3の切り欠き部5と、ナット部材3の中心軸方向において同じ位置にある。
詳述すると、まず、ナット部材3の雌ネジ部4の螺合終了側端部4bとは、排水装置本体1の雄ネジ部2に、最終的に接する、雌ネジ部4の下方側の端部である(つまり、上記「雌ネジ部4の螺合開始側端部4a」の反対側の端部である。また、取付孔H周縁の厚みによっては、螺合終了側端部まで螺合が達しない場合もある)。これも、単に「雌ネジ部4の下端」の部分、と言うだけでなく、ネジ部分の螺旋の端部を指し示すものである。
そして、「雌ネジ部4の螺合終了側端部4bが、ナット部材3の切り欠き部5と、ナット部材3の中心軸方向において同じ位置にある」とは、
図5に示したように、ネジ部の中心軸方向、図中では上下方向において、雌ネジ部4の螺合終了側端部4bと切り欠き部5とが、同じ高さ位置にある、という意味である。これにより、雌ネジ部4の螺合終了側端部4bの隣の雌ネジ部4を有さない箇所に切り欠き部5が設けられることとなり、切り欠き部5によって雌ネジ部4が分断され、螺合が弱くなる、ということが無い。
尚、切り欠き部5は軸方向視、ナット部材3の外周に沿って45度間隔で配置される8個のリブ片3bの内の2個のリブ片3bの中間部分に設けられてなる。このため、切り欠き部5によって、リブ片3bの一部が削除され、その強度が下がる、ということは無い。
接続配管Pは、直管、屈曲管などの管体からなる配管部材であって、排水装置本体1側面の排出口1cから、下水側に繋がる床下配管までを接続する。この接続配管Pは、シンクS底面及びキャビネットC内側面に沿って配置され、その途中箇所に、後述するトラップ部材Tを介してなる。
トラップ部材Tは、管体を略S字形状に屈曲させた部材であって、使用時その内部に排水の溜まり部分を形成する。この排水の溜まり部分によってトラップ部材T内部の流路の一部が満水状態になり、下水側からの臭気や害虫類が満水部分よりも屋内側に侵入できなくなるため、屋内側に臭気や害虫類が侵入することを防止するようになる。このような、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する機能を「トラップ機能」と呼ぶ。
尚、詳述しないが、排水装置本体1、シンクSや各配管部材等、配管のそれぞれの接続箇所において、水密的な接続が必要となる箇所においては、接着や、パッキングと袋ナット等を利用して、水密的な接続が行われている。
【0019】
上記のように構成した排水装置及び排水配管は、以下のようにして槽体である流し台NのシンクSに施工される。
まず、排水装置本体1を、シンクSの底面の取付孔Hに上方から挿通し、フランジ部1aの下面がシンクS底面の取付孔Hの周縁上面に当接するようにする。次に、
図8乃至
図10に示したように、ナット部材3を、排出口1cから挿通し、ナット部材3に、ネジ軸を一致させる為の回転(
図8の矢印方向への回転)を行う。
この際には、ナット部材3の方向を調整し、平面視において、切り欠き部5と排出口1cが同じ方向となるように配置する。この状態からネジ軸を一致させる為の回転を行うと、
図11に示したように、ナット部材3の切り欠き部5内に、排水装置本体1の排出口1cが収納され、切り欠き部5が排出口1cに跨るような状態となってネジ軸が一致する。このネジ軸を一致させる為の回転の作業は、ナット部材3に切り欠き部5を設けたことによって、ナット部材3と排出口1cの間に比較的広い遊び空間を設けることができ、容易に行うことができる。但し、この状態では、切り欠き部5以外のナット部材3の下端部分は、排出口1cの上端より下方にあるため、ナット部材3を、ネジの中心軸を中心として回転させることはできない。
この、雄ネジ部2の中心軸と、雌ネジ部4の中心軸が一致したこの状態では、切り欠き部5と排出口1cによって排水装置本体1に対してナット部材3が位置決めされたことで、
図12及び
図13に示したように、軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置されてなる。
以下に、
図13を用いて詳細に説明する。尚、
図13の簡略図では、ナット部材3の手前側の雌ネジ部4の山の頂点を、図中の点線で示してなる。詳述すると、ナット部材3の手前側の雌ネジ部4の山の頂点を図中の点線で示した、
図13の簡略図より明らかなように、ナット部材3を螺合の為上昇させても、排水装置本体1の雄ネジ部2の端部と、ナット部材3の雌ネジ部4の端部が衝突することが無い。このため、ナット部材3は容易に上昇し、
図15に示した状態、即ち雄ネジ部2の螺合開始側端部2aと雌ネジ部4の螺合開始側端部4aとが同じ高さ位置にて向き合うことができる。
こうしてナット部材3を上昇させたことで、ナット部材3の切り欠き部5以外の下端部分も、
図15に示したように、排出口1cの上端より上方に位置させることができ、ナット部材3を、ネジの中心軸を中心として回転させることができるようになる。そのままナット部材3をネジ部の中心軸を中心として回転させることで、雄ネジ部2と雌ネジ部4の螺合を開始することができる。
そのままリブ片3b等を利用して、ナット部材3を回転させると、排水装置本体1とナット部材3の螺合が進み、ナット部材3の上端の押当部3a上面が、シンクS底面の取付孔Hの周縁下面に強く当接する。結果、取付孔H周縁を、フランジ部1aの下面と押当部3a上面とで強く挟持することができ、
図16に示したように、排水装置本体1をシンクSの取付孔Hに取り付けることができる。
この後、排出口1cから床下配管までを、途中にトラップ部材Tを介した上で、直管、屈曲管等を利用した接続配管Pによって接続して、本発明の排水装置の取り付け構造を採用した、排水配管の施工が完了する。
【0020】
上記のように施工された流し台Nの排水配管は、段落0005に記載した従来例と同様にして使用することで、トラップ機能を有する排水配管として使用することができる。
【0021】
上記第一実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1においては、ナット部材3に切り欠き部5を設けたことで、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1に比べ、雄ネジ部2の下端から排出口1c、即ち突出部までの高さ幅を短くすることができ、その分全高を低くすることができる。
詳細に説明すると、仮に、雄ネジ部2下端から突出部である排出口の上端までの高さ幅(
図4のL1の長さ)では、排出口を切断して部分の)が、ナット部材3の雌ネジ部4上端からナット部材3下端までの高さ幅(
図5のL2)と全く同じ高さ幅であれば、ナット部材3又は突出部を撓ませる等しなければ、ネジ軸を一致させる為の回転を行うことができない。
これは、上記したような、L1とL2が同じ高さ幅の排水装置本体1とナット部材3が、
図15のように、ナット部材3の下端面と突出部上面とが当接した状態を想定すると理解しやすい。つまり、
図15の状態からネジ軸を一致させる際の回転とは逆方向の縦回転を行い、突出部からナット部材3を引き抜くためには、ナット部材3の下端面と突出部上面とが当接した状態を解除する必要があるが、L1とL2が同じ高さ幅の排水装置本体1とナット部材3では、本実施例のように切り欠き部5が無い限り、この当接を解除するための高さ方向の余裕が無く、ナット部材3を縦方向に回転させることは不可能である。従って、同様に、逆の手順によってネジ軸を一致させる為の回転を行うことも不可能である。
本第一実施例の排水装置の取り付け構造のように、ナット部材3の下端部分に、突出部に対応した切り欠き部5を設けると、L1とL2が同じ高さ幅の排水装置本体1とナット部材3であっても、切り欠き部5においてはネジ軸を一致させる為の回転を行うことを可能にするだけの遊び空間を確保することができ、ネジ軸を一致させる為の回転を行うことが可能となり、ナット部材3を排水装置本体1に螺合させることが可能となる。このように、従来例の排水装置の取り付け構造では、ネジ軸を一致させる為の回転が不可能な高さ幅であっても、本実施例の排水装置の取り付け構造ではネジ軸を一致させる為の回転が可能となるため、本実施例のほうが、従来例に比べ、排水装置本体1の高さ幅を狭く(低く)することができる。
もちろん、L1に対してL2が短いような高さ幅の排水装置本体1とナット部材3であっても、切り欠き部5において遊び部分が長くなるため、ネジ軸を一致させる為の回転を行う作業が容易になる、という効果を奏する。
【0022】
また、上記第一実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1においては、排水装置本体1の雄ネジ部2の中心軸と、ナット部材3の雌ネジ部4の中心軸を一致させ、且つ切り欠き部5内部に排出口1cの上部を収納した状態において、軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置されてなることから、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1に比べ、雄ネジ部2の下端から排出口1c、即ち突出部までの高さ幅を短くすることができ、その分全高を低くすることができる。
詳述すると、排水装置本体1の雄ネジ部2、またナット部材3の雌ネジ部4は、それぞれ螺旋構造であり、雄ネジ部2の端部の下方に雌ネジ部4の端部が配置されて、端部同士が干渉する位置(軸方向に衝突する位置)に配置される場合と、雄ネジ部2の端部の下方からずれた位置に雌ネジ部4の端部が配置されて、端部同士が干渉しない位置(軸方向に衝突しない位置)に配置される場合とではネジの一ピッチ分、雄ネジ部2下端から突出部上端までに必要とされる高さ幅に違いが生じる。従来例のように、軸方向視における雄ネジ部2の螺合開始側端部2aと雌ネジ部4の螺合開始側端部4aの方向が管理されていない排水装置本体1とナット部材3では、雄ネジ部2と雌ネジ部4の端部同士が干渉する位置となる場合があることを考慮して各部材の全高を設計する必要がある。これに対して、本発明では、排水装置本体1の突出部とナット部材3の切り欠き部5を利用し、軸方向視における雄ネジ部2の螺合開始側端部2aと雌ネジ部4の螺合開始側端部4aの方向を管理して、ネジ軸を一致させる為の回転を行った状態において、雄ネジ部2と雌ネジ部4の端部同士が軸方向視近傍且つ干渉しない位置になるよう意図的に配置することができる。このため、従来の排水装置本体1及びナット部材3と比較し、ナット部材3の全高や、雌ネジ部4のネジ巻き数が同じでも、雄ネジ部2の下端部分、つまり雄ネジ部2の螺合開始側端部2aから、突出部上面までの高さ幅を、ネジ部の一ピッチ分、狭くすることができ、その分、排水装置本体1の高さ幅を狭く(低く)することができる。
【0023】
次に、本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図17乃至
図27に示した、本発明の第二実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置及び排水配管は、以下に記載した排水機器としての流し台N、排水装置本体1、ナット部材3、トラップ部材T、捕集部材、目隠し部材、接続配管P、バイパス管6等の部材から構成されてなる。尚、以下の説明における上下は、下記実施例の説明における、施工完了時の上下に基づいて説明している。
流し台Nは、槽体としての、上方が開口した箱体からなるシンクSと、該シンクSを載架するキャビネットCからなる。また、シンクSの底面には、排水装置本体1を取り付ける取付孔Hを備えてなる。
排水装置本体1は、
図18乃至
図20に示したような、有底筒状の部材であって、外側面に、突出部であり、他の排水装置である管体との配管接続部である排出口1cと、同じく外側面に、突出部であり、他の排水装置であるバイパス管6との配管接続部であるバイパス管接続部7と、を隣接するようにして備えてなる。
尚、
図18、
図20における、図中左側の配管接続部が排出口1c、右側の配管接続部がバイパス管接続部7、であり、目印構造として、排出口1cの上面に「L」の文字を、バイパス管接続部7の上面に「R」の文字を、それぞれ印刷してなる。
また、排水装置本体1は、シンクS内の排水が流入する排水口1bを形成する、上端の開口部分の周縁に、外方向に突出したフランジ部1aを備えてなる。
また、排水装置本体1は、フランジ部1aの下方に切り欠き部5を備えた雄ネジ部2を設けてなる。
雄ネジ部2に設けた切り欠き部5について詳述すると、上記した、排出口1cの左側端部から、バイパス管接続部7の右側端部までの幅で、雄ネジ部2の下方二山までの部分の雄ネジ部2を切り欠いて切り欠き部5としてなる。
キャップ部材(図示せず)は、バイパス管接続部7を、排水装置本体1の内側から水密に閉塞する部材であり、排水口1bを介してバイパス管接続部7に着脱自在に取り付けられる。
ナット部材3は、
図18、
図19、
図21に示したような、略円筒形状にして、その上端に施工完了時取付孔H周縁を介してフランジ部1a下面と当接する押当部3aを備えてなる。また、円筒形状の内側面に排水装置本体1の雄ネジ部2に螺合する雌ネジ部4を備えてなる。
また、円筒部分の外側面に、ナット部材3を回転させる際の掴み部分となるリブ片3bを複数備えてなる。
また、ナット部材3の側面及び押当部3a上面には、
図21に示したように、目印構造として、印刷にて、「L」及び「R」とそれぞれ文字が記載されてなる。排水装置本体1の雄ネジ部2の中心軸と、ナット部材3の雌ネジ部4の中心軸を一致させ、且つ排水装置本体1の「L」「R」の文字と、ナット部材3の「L」「R」の排出口1cの文字を同じ方向に合致させることで、該ナット部材3は、ネジ部の軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置されるように構成されてなる。
詳述すると、排水装置本体1の雄ネジ部の螺合開始側端部2aとは、ナット部材3の雌ネジ部4に最初に接する、雄ネジ部2の下方側の端部、単に「雄ネジ部2の下端」の部分、と言うだけでなく、ネジ部分の螺旋の端部を指し示すものである。
また、本実施例においては、雄ネジ部2に切り欠き部5が設けられ、該切り欠き部5によって雄ネジ部2が中断されているが、「雄ネジ部2の螺合開始側端部2a」とは、この中断された部分の端部ではなく、あくまでネジ部分の螺旋が始まる(又は終わる)端部を指し示すものである(但し、切り欠き部5が設けられた位置によっては、ネジ部分の螺旋が始まる(又は終わる)端部に切り欠き部5が設けられ、切り欠き部5の端部が「雄ネジ部2の螺合開始側端部2a」を兼ねる場合がある)。
また、ナット部材3の雌ネジ部4の螺合開始側端部4aとは、排水装置本体1の雄ネジ部2に最初に接する、雌ネジ部4の上方側の端部である。これも、単に「雌ネジ部4の上端」の部分、と言うだけでなく、ネジ部分の螺旋の端部を指し示すものである。
そして「軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置」とは、
図26にて示したように、雄ネジ部2と雌ネジ部4の各螺合開始側の端部が、軸方向視近傍(雄ネジ部2及び雌ネジ部4の中心軸を中心として45度程度の角度内に収まる範囲)にあり、且つ両ネジ部の端部同士が重ならない状態である。
また、該ナット部材3においては、ナット部材3下端から、雌ネジ部4の螺合開始側端部4aまでの高さ幅を、排水装置本体1の排出口1c上面から雄ネジ部2の螺合開始側端部2aまでの高さ幅とほぼ同じ高さ幅で、若干(雌ネジ部4の1ピッチの高さの1/4以下程度)だけ低く構成してなる。
接続配管Pは、直管、屈曲管などの管体からなる配管部材であって、排水装置本体1側面の排出口1cから、下水側に繋がる床下配管までを接続する。この接続配管Pは、シンクS底面及びキャビネットC内側面に沿って配置され、その途中箇所に、後述するトラップ部材Tを介してなる。
トラップ部材Tは、管体を略S字形状に屈曲させた部材であって、使用時その内部に排水の溜まり部分を形成する。この排水の溜まり部分によってトラップ部材T内部の流路の一部が満水状態になり、下水側からの臭気や害虫類が満水部分よりも屋内側に侵入できなくなるため、屋内側に臭気や害虫類が侵入することを防止するようになる。このような、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する機能を「トラップ機能」と呼ぶ。
また、該トラップ部材Tにおいて、トラップ部材Tの下流側の管体の垂直部分の上方に、後述するバイパス管6との接続部であるバイパス管接続部7を備えてなる。
バイパス管6は、屈曲管からなる管体であり、一端は排水装置本体1のバイパス管接続部7に、他端はトラップ部材Tのバイパス管接続部7に、それぞれ接続される。
尚、詳述しないが、排水装置本体1、シンクSや各配管部材等、配管のそれぞれの接続箇所において、水密的な接続が必要となる箇所においては、接着や、パッキングと袋ナット等を利用して、水密的な接続が行われている。
【0024】
上記のように構成した排水装置及び排水配管は、以下のようにして槽体である流し台NのシンクSに施工される。
まず、排水装置本体1を、シンクSの底面の取付孔Hに上方から挿通し、フランジ部1aの下面がシンクS底面の取付孔Hの周縁上面に当接するようにする。次に、
図22及び
図23に示したように、ナット部材3を、排出口1cから挿通し、ナット部材3に、ネジ軸を一致させる為の回転を行う。
この際には、ナット部材3の方向を調整し、ネジ部の中心軸から見て排水装置本体1の「L」「R」の文字と、ナット部材3の「L」「R」の文字が、ネジ部の中心軸から見て同じ方向となるように配置する。
このネジ軸を一致させる為の回転の作業は、雄ネジ部2に切り欠き部5を設けたことによって、ナット部材3と、ナット部材3に干渉する排水装置本体1の雄ネジ部2との間に比較的広い遊び空間を設けることができ、容易に行うことができる。
また、排水装置本体1の「L」「R」の文字と、ナット部材3の「L」「R」の文字が同じ方向に配置され、排水装置本体1に対してナット部材3が位置決めされたことで、軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置される。
また、ナット部材3下端から、雌ネジ部4の螺合開始側端部4aまでの高さ幅を、排水装置本体1の排出口1c上面から雄ネジ部2の螺合開始側端部2aまでの高さ幅とほぼ同じ高さ幅に構成してなるため、ナット部材3のネジ軸を一致させる為の回転を行い、雄ネジ部2と雌ネジ部4の中心軸が一致した時点で、雄ネジ部2と雌ネジ部4の螺合開始側端部4aは、
図24に示したような、同じ高さ位置となり、そのままネジの中心軸を中心としてナット部材3を回転させるだけで、螺合を開始することができる(尚、この際には、排水装置本体1の「L」「R」の文字と、ナット部材3の「L」「R」の文字が同じ方向に配置されていなければ、ナット部材3のネジ軸を一致させる為の回転作業を行っても、雄ネジ部2と雌ネジ部4の中心軸が一致する位置まで回転を進めることはできず、当然雄ネジ部2と雌ネジ部4の螺合を行うこともできない)。
このように、雄ネジ部2の螺合開始側端部2aと、雌ネジ部4の螺合開始側端部4aが同じ高さ位置となり、そのままナット部材3を、ネジの中心軸を中心として回転させることで、雄ネジ部2と雌ネジ部4の螺合を開始することができる。
そのままリブ片3b等を利用して、ナット部材3を回転させると、排水装置本体1とナット部材3の螺合が進み、ナット部材3の上端の押当部3a上面が、シンクS底面の取付孔Hの周縁下面に強く当接する。結果、
図27に示したように、取付孔H周縁を、フランジ部1aの下面と押当部3a上面とで強く挟持することができ、排水装置本体1をシンクSの取付孔Hに取り付けることができる。
この後、排出口1cから床下配管までを、途中にトラップ部材Tを介した上で、直管、屈曲管等を利用した接続配管Pによって接続する。また、バイパス管6の一端を排水装置本体1のバイパス管接続部7に、他端をトラップ部材Tのバイパス管接続部7に、それぞれ接続させ、更にキャップ部材を、排水装置本体1の内側からバイパス管接続部7に水密的に取り付けて、本発明の排水装置の取り付け構造を採用した、排水配管の施工が完了する。
【0025】
上記のように施工された流し台Nの排水配管は、段落0005に記載した従来例と同様にして使用することで、トラップ機能を有する排水配管として使用することができる。
また、従来例及び第一実施例に無い構成・機能として、本第二実施例では、配管の清掃構造を有してなる。具体的に説明すると、トラップ部材Tよりも下流側の配管において、塵芥等が集まり、管詰まりを生じた場合、排水口1bからキャップ部材を取り外し、排水口1b内のバイパス管接続部7から、バイパス管6を介してトラップ部材Tの下流側まで、金属製のコイル線や高圧洗浄機等清掃機具を挿入して、管詰まりを解消することができる。尚、清掃後はバイパス管接続部7から清掃機具を取り出し、再びバイパス管接続部7にキャップ部材を取り付けて作業を完了させる。
【0026】
上記第二実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1においては、雄ネジ部2に切り欠き部5を設けたことで、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1に比べ、雄ネジ部2の下端から排出口1c、即ち突出部までの高さ幅を短くすることができ、その分全高を低くすることができる。全高を低くできる理由・効果は、遊び空間が生じる箇所が、第一実施例のナット部材3の切り欠き部5と排出口1cとの間から、本第二実施例では雄ネジ部2上の切り欠き部5とナット部材3との間である、という点を除き、段落0021に記載した、第一実施例の理由・効果と同じである。
【0027】
また、上記第二実施例の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1においては、排水装置本体1の雄ネジ部2の中心軸と、ナット部材3の雌ネジ部4の中心軸を一致させ、且つ切り欠き部5内部に排出口1cの上部を収納した状態において、軸方向視、排水装置本体1の雄ネジ部2と、ナット部材3の雌ネジ部4の、各螺合開始側端部が、近傍且つ互いに干渉しない位置に配置されてなることから、従来の排水装置の取り付け構造を採用した排水装置本体1に比べ、雄ネジ部2の下端から排出口1c、即ち突出部までの高さ幅を短くすることができ、その分全高を低くすることができる。
全高を低くできる理由・効果は、段落0022に記載した、第一実施例の理由・効果と同じである。
【0028】
本発明の実施例は以上のようであるが、本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、本発明の排水装置本体1を、流し台NのシンクSに採用して構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、洗面台や浴槽・浴室、また洗濯機用防水パン等の様々な排水機器の排水装置の取り付け構造に採用しても構わない。
【0029】
また、上記実施例では、雄ネジ部2また雌ネジ部4は、ネジが一条のネジからなる一条ネジにて構成されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、二回転対称形状体である二条ネジ、また三回転対称形状体である三条ネジなど、ネジによる螺合を利用する構造であれば、ネジの条数には特に関係なく利用することができる。
【0030】
また、上記第一実施例では、ナット部材3の雌ネジ部4に設けた切り欠き部5は、雌ネジ部4に干渉することの無いように構成されてなるが、強度が充分に確保され、切り欠きを設けたとしても支障なく雌ネジ部4として機能できる場合、切り欠き部5が雌ネジ部4の一部を削除するようにして配置されても構わない。
【0031】
また、上記実施例では、突出部は全て管体等他の排水装置との接続部であったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、固定用のリブなど、配管接続とは別の目的で構成された突出部でも構わない。また、配管接続部であったとしても、排出口1cやバイパス管6との接続部とは別の構造、例えばオーバーフロー排水口からの配管の接続部であっても構わない。