【解決手段】タッチパネル2は第一の面101と第一の面101の反対側の第二の面102とを有する透明基板100と、透明基板100の第一の面101に形成されるダイヤモンドライクカーボン層200と、透明基板100側の反対側の面であるダイヤモンドライクカーボン層200の一面に設けられる疎水層300を含む。さらに、透明基板100の第二の面102に設けられるタッチ制御ユニット11を含み、タッチ制御ユニット11は、タッチ感知電極層600を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記の図面と、下記の詳細な説明とは、本発明のスコープを説明するための目的の代表例である。
【0010】
なお、下記の詳細な説明における文言「上側」、「下側」、「上方」及び「下方」は、図面と説明と構成要素の位置関係とを説明する目的のために提供されるものであることに留意すべきである。開示された正確な形状は、徹底することや限定することを意図するものではない。添付した図面について、複合基板構造の上側は、ユーザに相対的に近い一方、複合基板構造の下側は、ユーザに相対的に遠い。
【0011】
図1を参照して、本発明にかかる複合基板構造を説明する。
図1は、本発明の、1つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図である。
図1に示すように、複合基板構造10は、第一の面101と、第一の面101の反対側の第二の面102とを有する透明基板100を含む。第一の面101と第二の面102とは、互いに実質的に平行に配置される。一部の実施の形態では、透明基板100は、絶縁性を有しつつ視覚的に透明な材料からなる。一部の実施の形態では、透明基板100は、エチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンテレフタレート、非晶ポリアリレート、ポリカーボネート、又は、ガラスのいずれかを含む材料から形成される。一部の実施の形態では、透明基板100は、剛性を有するプレート、又は、柔軟性を有するプレートである。一部の実施の形態では、透明基板100は、平らなボード、曲面を有するボード、又は、異なる形状を有するボードのいずれかである。少なくとも一つの実施の形態では、透明基板100は、平らなボードである。
【0012】
複合基板構造10は、透明基板100に形成されたダイヤモンドライクカーボン層200をさらに含む。ダイヤモンドライクカーボン層200は、第一の面101に位置しているが、本発明はそれに限定されない。実施の形態の一つでは、ダイヤモンドライクカーボン層200は、透明基板100の一面又は複数の面に配置されていればよい。
【0013】
複合基板構造10のダイヤモンドライクカーボン層200は、様々な目的を達するために設置される。ここで、二つの動機が考えられる。
【0014】
第一に、ダイヤモンドライクカーボン層200は、sp
2結合黒鉛構造と、sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造とを有し得る。sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造は、より良い硬度と、より良い耐擦傷性と、より良い耐摩耗性とを有する一方、透明基板100と比較して、高い内部応力と弱い結合力とを有する。従って、sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造をより多く含むダイヤモンドライクカーボン層200は、透明基板100との粘着性が劣化するおそれがある。そのため、ダイヤモンドライクカーボン層200を透明基板100に形成するプロセスは、ダイヤモンドライクカーボン層200と透明基板100との接着性を促進する。例えば、透明基板100に形成されたダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、その内部応力を減らすために、減少する。
【0015】
第二に、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度を考慮すると、sp
2結合黒鉛構造が、sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造と比較して、ダイヤモンドライクカーボン層200の光学特性に大きな影響を与える。詳細には、ダイヤモンドライクカーボン層200が、sp
2結合を有する黒鉛構造を多く含めば含むほど、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度は、ますます劣化する。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
2結合を有する黒鉛構造の含有量(含有率と称してもよい。)が少なければ少ないほど、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度は、ますます良好になる。
【0016】
それゆえ、接着性と視覚的な透明度とを最適化するため、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約15nm以下の厚みを有し、ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、約15%以上である。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、具体例として、約30%、又は、必要に応じて、約50%である。
【0017】
一部の実施の形態では、本発明にかかるダイヤモンドライクカーボン層200は、スパッタリングを用いて、透明基板100の表面に形成される。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、分解エネルギーと水素の流速を制御することにより、調整する。スパッタリングにより形成されるダイヤモンドライクカーボン層200は、水素流速が12sccm(standard cubic centimeter per minute)を超えるように制御されるとともに、分解エネルギーが100〜700eV(電子ボルト)となるように制御されるとき、約15%以上の含有量でsp
3結合を含み得る。
【0018】
本発明による視覚的な透明度と接着性とについて留意に値することを述べた。複合基板構造10への視覚的な効果へ向かう、さらなる動機がある。
【0019】
複合基板構造10への視覚的な効果は、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みが少なくとも関連する。実験結果は、複合基板構造10のダイヤモンドライクカーボン層200の厚みが大きくなれば大きくなるほど、複合基板構造10の視覚的な透明度が劣化し、関連分野で黄変現象として知られる、黄色がはっきりと出現することを示す。もし、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、約10nmよりも大きく増加する場合、黄変現象は、肉眼により確認される。もし、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、約15nmよりも大きく増加する場合、黄変現象は、重大な影響を複合基板構造10に与える。
【0020】
そのため、視覚的な透明度、接着性、及び、黄変現象の観点から、一部の実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約10nmよりも小さな厚みを有すると好ましい。他の好ましい実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約2nm〜約5nmの厚みを有する。これによれば、複合基板構造10の透明度は約89%よりも大きく、複合基板構造10の視覚的な効果と接着特性とについての最適化を可能とする。これ以降の記載では、透明度は、入射光を100%とした場合の入射光に対する透過光量、として記載される。この入射光は、約550nmの波長を有する。
【0021】
複合基板構造10は、疎水層300をさらに含み、疎水層300はダイヤモンドライクカーボン層200の一面に設けられ、ダイヤモンドライクカーボン層200の一面は、透明基板100側の反対側の面である。疎水層300におけるダイヤモンドライクカーボン層200側の反対側の面は、110°よりも大きい接触角を有する。だから、ダイヤモンドライクカーボン層200の反対側の面では、疎水層300の表面全体が疎水性を有すると好ましい。実験結果は以下のことを示した。対象物の接触角度が90°よりも大きいとき、対象物の表面は、液体の一塊をはじく。そのため、液体は対象物を容易に濡らせず、その対象物の表面上を移動する。一部の実施の形態では、疎水層300の材料は、複合基板構造10の疎水性を改善するために、F(フッ素)、N(窒素)、O(酸素)のうち、少なくとも1つの元素を含む化合物を含む。
【0022】
以下、疎水層300を有する複合基板構造10と、疎水層300を含まない複合基板構造とを比較するために、第一の耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を行った。
【0023】
実験条件:
ウルトラファインスチールウールに包まれた2cm四方の摩擦ヘッドを、力70Nで下方に押し付けることによって、試験を行った。
【0024】
実験結果:
疎水層300を有する複合基板構造10は、疎水層300を含まない複合基板構造と比較して、より良い耐擦傷性と、より良い耐摩耗性を有する。
【0025】
実験結果の説明:
疎水層300を有する複合基板構造10は、疎水層300を含まない複合基板構造と比較して、低い表面摩擦係数を有する。複合基板構造10の耐擦傷性と耐摩耗性とは、表面摩擦係数に関係する。具体的には、複合基板構造10の表面摩擦係数が大きくなればなるほど、耐擦傷性と耐摩耗性とが劣化する。複合基板構造10の表面摩擦係数が小さくなればなるほど、耐擦傷性と耐摩耗性とが向上する。
【0026】
したがって、疎水層300は、複合基板構造10の疎水性を改良する。そのため、疎水層300は、複合基板構造10が油や水を引き付けることを抑制する。その他に、疎水層300を有する複合基板構造10は、より小さい表面摩擦係数を有する。その結果、複合基板構造10が外部のスクラッチ力(an external scratching force)を受けたとき、生じる擦傷及び摩耗が少ない。
【0027】
疎水層300における疎水性原子の含有量が多ければ多いほど、疎水層300における疎水性原子の疎水性が向上する。したがって、表面摩擦係数が小さくなる。本発明の、1つ又は複数の実施形態によれば、疎水層300における疎水性原子(例えば、F(フッ素))の含有量は、50%よりも大きい。
【0028】
さらに、実際の製造プロセスでは、疎水層300の表面摩擦係数は、SiO結合に対するCF結合の比率(a proportion of carbon-fluorine bonds to silicon-oxygen bonds)に関係することが知られている。
【0029】
様々なSiO結合に対するCF結合の比率の疎水層300を有する複合基板構造10について行われた第二の耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を以下に記載する。
【0030】
実験条件:
クラス100の無塵布(dustless class 100 cloth)を複合基板上に配置し、200gの重りをその無塵布の上に配置する。複合基板構造において速度100mm/minで耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を行う。
【0031】
実験結果:
疎水層300においてSiO結合に対するCF結合の比率が50:1以上である複合基板構造10は、約0.1以下の静止摩擦係数を有する。疎水層300の表面は、好ましい平滑度を有するため、耐擦傷性及び耐摩耗性が促進される。
【0032】
実験結果の説明:
疎水層300は、複合基板構造10の表面の平滑度を促進する。そのため、複合基板構造10が外部のスクラッチ力を受けたときの、複合基板構造10の耐擦傷性及び耐摩耗性を高める。
【0033】
本発明の実施の形態の一部では、疎水層300は、ベーキングプロセス又はそれに類するプロセスにより、結晶体に変化する(become crystalline)。ベーキングプロセスにより形成される疎水層300では、分子が、非常に規則正しい微視的構造となるように配列されているため、疎水層300が、好ましい密度を有する。疎水層300の密度が大きくなればなるほど、疎水層300の摩擦係数がより安定化し、低い値を維持する。約50%を超える結晶率を有する疎水層300を備える複合基板構造10は、明確に促進した耐擦傷性及び耐摩耗性を有する。
【0034】
さらに、疎水層300の厚みが大きくなればなるほど、視覚的な透明度が劣化する。疎水性と視覚的な透明度とを最適化するために、疎水層300は、約5nm〜約30nmの厚みを有することが好ましい。
【0035】
図2は、本発明の一つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図を示す。
図2を参照する。
図1に示される複合基板構造と共通する構成についての説明を省略する。一部の実施形態では、複合基板構造20は、透明基板100とダイヤモンドライクカーボン層200との間に配置される接着層400をさらに含む。接着層400は、シリコンを主成分とする材料を含む。一部の実施形態では、接着層400は、ダイヤモンドライクカーボン層200と、透明基板100との結合を強化するために配置される。詳細には、接着層400中のSi原子は、透明基板100(ガラス基板など)のシリカネットワーク中に入り込むことができる。また、このSi原子は、ダイヤモンドライクカーボン層200における、C原子とH原子とからなるメッシュ構造(the carbon-hydrogen mesh structure)にも入り込むことができる。その結果、それらの接着性を増加させる。本実施の形態では、接着層400は二酸化ケイ素層であるが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
その反面、一部の実施の形態では、接着層400によって、ダイヤモンドライクカーボン層200と透明基板100との組成の差異による内部応力により引き起こされる層間剥離が回避され、ダイヤモンドライクカーボン層200は、透明基板100に強固に結合される。反面、細かい粒子により形成される接着層400(二酸化ケイ素など)は、好ましい平面度の表面を有するダイヤモンドライクカーボン層200の積層構造(後述)を供給し得る。
【0037】
図3は、本発明の一つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図を示す。
図3を参照する。
図1及び
図2に示される複合基板構造と共通する構成についての説明を省略する。一部の実施形態では、複合基板構造30は、ダイヤモンドライクカーボン層200と疎水層300との間に配置される中間層500をさらに含む。例えば、中間層500は、Si及びC(a silicon carbon)を主成分とした材料から形成される。中間層500は、Si原子を約10〜20%含み、C原子を約80〜90%含む。
【0038】
一部の実施の形態では、中間層500によって、中間層500とダイヤモンドライクカーボン層200との結合と、中間層500と疎水層300との結合とは、共通する原子構造を有することができる。疎水層300は、ダイヤモンドライクカーボン層200に強固に結合される。特に、ダイヤモンドライクカーボン層200と疎水層300との組成の差異による内部応力により引き起こされる層間剥離が回避される。
【0039】
さらに、中間層500の厚みが大きくなればなるほど、複合基板構造30の視覚的な透明度が劣化する。視覚的な透明度と複合基板構造30の接着性とを最適化するために、中間層500は、約10nm〜約13nmの厚みを有することが好ましい。
【0040】
図4は、本発明の一つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図を示す。
図4を参照する。
図1、
図2及び
図3に示される複合基板構造と共通する構成についての説明を省略する。一部の実施形態では、複合基板構造40は、透明基板100とダイヤモンドライクカーボン層200との間に配置される接着層400をさらに含む。
【0041】
図5は、本発明の一つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図を示す。
図5を参照する。
図1、
図2、
図3及び
図4に示される複合基板構造と共通する構成についての説明を省略する。一部の実施形態では、複合基板構造50は、透明基板100とダイヤモンドライクカーボン層200との間に配置される反射防止膜1010をさらに含む。反射防止膜1010は、複数の第一反射防止層1011、1013と、複数の第二反射防止層1012、1014とを含んでもよい。例えば、第一反射防止層1011と、第二反射防止層1012と、第一反射防止層1013と、第二反射防止層1014とは、透明基板100から外方に延びる方向に順次、積層されている。一部の実施の形態では、反射防止膜1010は、二つの第一反射防止層と、二つの第二反射防止層とを含むが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一反射防止層の数、又は、第二反射防止層の数は、3、4、又は、4よりも多い。なお、第一反射防止層の数は、第二反射防止層の数に一致し、第一反射防止層と第二反射防止層とは、それぞれ、交互に積層されている。
【0042】
一部の実施の形態では、透明基板100とダイヤモンドライクカーボン層200との間に配置される反射防止膜1010において、第一反射防止層1011は、透明基板100に隣接して配列され、第二反射防止層1014は、ダイヤモンドライクカーボン層200に隣接して配列される。各第二反射防止層1012、1014は、各第一反射防止層1011、1013の屈折率よりも、低い屈折率を有する。例えば、複数の第一反射防止層1011、1013は、それぞれ、約1.6よりも大きい屈折率を有し、複数の第二反射防止層1012、1014は、それぞれ、約1.55よりも小さい屈折率を有する。好ましい一部の実施の形態では、複数の第一反射防止層1011、1013は、それぞれ、約1.8よりも大きい屈折率を有し、複数の第二反射防止層1012、1014は、それぞれ、約1.5よりも小さい屈折率を有する。
【0043】
一部の実施の形態では、第一反射防止層1011、1013は、それぞれ、酸化ニオブ、酸化チタン(TiO
2、Ti
3O
5、Ti
2O
3)、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸窒化シリコン、又は、窒化シリコンのいずれかにより、主に形成される。第二反射防止層1012、1014は、それぞれ、酸化シリコン又はフッ化マグネシウムにより、主に形成される。
【0044】
透明基板100に配置された反射防止膜1010により、複合基板構造50の視覚的な透明度は促進されている。複合基板構造50は、約92%よりも大きい透明度を有することができる。透明基板100上の環境における外部から光の影響が明確に減じる。透明基板100の反射防止効果は促進され、複合基板構造50の光学的特性は、強化される。
【0045】
一部の実施の形態では、中間層500(
図5では不図示)は、ダイヤモンドライクカーボン層200と疎水層300との間に適宜、配置されていてもよい。中間層500が配置されると、疎水層300はダイヤモンドライクカーボン層200と強固に結合されている。
【0046】
図6は、本発明の一つ又は複数の実施形態にかかる複合基板構造の断面図を示す。
図6を参照する。
図1〜
図5に示される複合基板構造と共通する構成についての説明を省略する。一部の実施の形態では、複合基板構造60は、透明基板100と反射防止膜1010との間に配置された接着層400を含み、第一反射防止層1011は、接着層400に隣接して配列され、第二反射防止層1014は、ダイヤモンドライクカーボン層200に隣接して配列される。
【0047】
一部の実施の形態では、中間層500(
図6では不図示)は、ダイヤモンドライクカーボン層200と疎水層300との間に適宜、配置されていてもよい。中間層500が配置されると、疎水層300はダイヤモンドライクカーボン層200と強固に結合されている。
【0048】
図7は、本発明の様々な実施形態に従う
図1の複合基板構造を有するタッチパネルの断面図を示す。
図7に示すように、タッチパネル1は、第一の面101と、第一の面101に平行な第二の面102とを有する透明基板100を含む。透明基板100は、絶縁性を有しつつ視覚的に透明な材料からなる。透明基板100は、エチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、非晶ポリアリレート、ポリカーボネート、又は、ガラス等の、いずれかを含む材料から形成される。透明基板100は、剛性を有するプレート、又は、柔軟性を有するプレートである。透明基板100は、平らなボード、曲面を有するボード、又は、異なる形状を有するボードのいずれかである。一部の実施の形態では、透明基板100は、具体例として、平らなボードである。
【0049】
タッチパネル1は、透明基板100に形成されたダイヤモンドライクカーボン層200をさらに含む。以下、実施の形態の具体例について説明する。本具体例では、ダイヤモンドライクカーボン層200が透明基板100の第一の面101に位置する。下記の理由のため、ダイヤモンドライクカーボン層200が第一の面101に位置すると好ましい。タッチパネル1が、タッチ制御電子デバイス(スマートフォン又はタブレットコンピュータ等)に適用するために、設けられる。他の構成要素と組み立てられることでタッチ制御電子デバイスを形成するためのタッチパネル1では、タッチ制御電子デバイスを操作するためにユーザによるタッチが伝達される透明基板100の第一の面101は、露出される必要がある。一方、透明基板100の他の面は、他の構成要素により、覆われている。第一の面101に積層されるダイヤモンドライクカーボン層200は、引っ掻き(スクラッチ)や凹み(cavities)から第一の面101を防護するために、設けられる。一部の実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボン層200は、透明基板100の他の面に積層される。例えば、透明基板100に配置されるダイヤモンドライクカーボン層200は第二の面102の下に位置し、本発明はこれに限られない。
【0050】
特に、ダッチパネル1のダイヤモンドライクカーボン層200は、タッチパネルへの利用の必要性を満たすように、設計される。ここで、少なくとも二つの動機が考えられる。
【0051】
第一に、ダイヤモンドライクカーボン層200は、sp
2結合黒鉛構造と、sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造とを有してもよい。sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造は、より良い硬度と、より良い耐擦傷性と、より良い耐摩耗性とを有する一方、比較的に高い内部応力と、劣った透明基板100との粘着性とを有する。そのため、ダイヤモンドライクカーボン層200を透明基板100に形成するプロセスは、ダイヤモンドライクカーボン層200と透明基板100との接着性を促進する。例えば、透明基板100に形成されたダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、その内部応力を減らすために、減少する。
【0052】
第二に、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度を考慮すると、sp
2結合黒鉛構造が、sp
3結合ダイヤモンド立方晶構造と比較して、ダイヤモンドライクカーボン層200の光学特性に大きな影響を与える。詳細には、ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
2結合を有する黒鉛構造の含有量が多ければ多いほど、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度は、ますます劣化する。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
2結合を有する黒鉛構造の含有量が少なければ少ないほど、ダイヤモンドライクカーボン層200の視覚的な透明度は、ますます良好になる。
【0053】
それゆえ、接着性と視覚的な透明度とを最適化するため、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約15nm以下の厚みを有し、ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、約15%以上である。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、具体例として、約30%、又は、必要に応じて、約50%である。
【0054】
一部の実施の形態では、本発明にかかるダイヤモンドライクカーボン層200は、スパッタリングを用いて、透明基板100の表面に形成される。ダイヤモンドライクカーボン層200におけるsp
3結合の含有量は、分解エネルギーと水素の流速を制御することにより、調整する。スパッタリングにより形成されるダイヤモンドライクカーボン層200は、水素流速が12sccm(standard cubic centimeter per minute)を超えるように制御されるとともに、分解エネルギーが100〜700eV(電子ボルト)となるように制御されるとき、約15%以上の含有量でsp
3結合を含み得る。
【0055】
本発明による視覚的な透明度と接着性とについて留意に値することを述べた。タッチパネル1への視覚的な効果へ向かう、さらなる動機がある。
【0056】
タッチパネル1への視覚的な効果は、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みが少なくとも関連する。実験結果は、タッチパネル1のダイヤモンドライクカーボン層200の厚みが大きくなれば大きくなるほど、タッチパネル1の視覚的な透明度が劣化し、関連分野で黄変現象として知られる、黄色がはっきりと出現することを示す。もし、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、約10nmよりも大きく増加する場合、黄変現象は、肉眼により確認される。もし、ダイヤモンドライクカーボン層200の厚みは、約15nmよりも大きく増加する場合、黄変現象は、重大な影響を複合基板構造10に与える。
【0057】
そのため、視覚的な透明度、接着性、及び、黄変現象の観点から、一部の実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約10nmよりも小さな厚みを有すると好ましい。別の好ましい実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボン層200は、約2nm〜約5nmの厚みを有する。これによれば、タッチパネルの透明度は約89%よりも大きく、タッチパネル1の視覚的な効果と接着特性とについての最適化を可能とする。これ以降の記載では、透明度は、入射光を100%とした場合の入射光に対する透過光量、として記載される。この入射光は、約550nmの波長を有する。
【0058】
タッチパネル1は、疎水層300をさらに含み、疎水層300はダイヤモンドライクカーボン層200の一面に設けられ、ダイヤモンドライクカーボン層200の一面は、透明基板100側の反対側の面である。疎水層300におけるダイヤモンドライクカーボン層200側の反対側の面、110°よりも大きい接触角を有する。だから、ダイヤモンドライクカーボン層200の反対側の面では、疎水層300の表面全体が疎水性を有すると好ましい。(実験結果は以下のことを示した。対象物の接触角度が90°よりも大きいとき、対象物の表面は、液体の一塊をはじく。そのため、液体は対象物を容易に濡らせず、その対象物の表面上を移動する。)疎水層300の材料は、タッチパネル1の疎水性を改善するために、F(フッ素)、N(窒素)、O(酸素)のうち、少なくとも1つの元素を含む化合物を含む。
【0059】
以下、疎水層300を有するタッチパネル1と、疎水層300を含まないタッチパネルとを比較するために、第一の耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を行った。
【0060】
実験条件:
ウルトラファインスチールウールに包まれた2cm四方の摩擦ヘッドを、力70Nで下方に押し付けることによって、試験を行った。
【0061】
実験結果:
スクラッチ回数が6000回を超えた後で、疎水層300を含まないタッチパネルは、大きく摩滅した。
【0062】
スクラッチ回数が8000回を超えた後で、透明基板100が大きく摩滅した。疎水層300の接触角度は、90°よりも大きな角度を保ち、好ましい疎水性を示した。
【0063】
実験結果の説明:
疎水層300を有するタッチパネル1は、疎水層300を含まないタッチパネル1と比較して、低い表面摩擦係数を有する。タッチパネルの耐擦傷性と耐摩耗性とは、表面摩擦係数に関係する。具体的には、タッチパネル1の表面摩擦係数が大きくなればなるほど、耐擦傷性と耐摩耗性とが劣化する。タッチパネル1の表面摩擦係数が小さくなればなるほど、耐擦傷性と耐摩耗性とが向上する。
【0064】
したがって、疎水層300は、タッチパネル1の疎水性を改良する。そのため、疎水層300は、タッチパネル1が油や水を引き付けることを抑制する。その他に、疎水層300を有するタッチパネル1は、より小さい表面摩擦係数を有する。その結果、タッチパネル1が外部のスクラッチ力(an external scratching force)を受けたとき、生じる擦傷及び摩耗が少ない。
【0065】
疎水層300における疎水性原子の含有量が多ければ多いほど、疎水層300における疎水性原子の疎水性が向上する。したがって、表面摩擦係数が小さくなる。本発明の、1つ又は複数の実施形態によれば、疎水層300における疎水性原子(例えば、F(フッ素))の含有量は、50%よりも大きい。
【0066】
さらに、実際の製造プロセスでは、疎水層300の表面摩擦係数は、SiO結合に対するCF結合の比率(a proportion of carbon-fluorine bonds to silicon-oxygen bonds)に関係することが知られている。
【0067】
様々なSiO結合に対するCF結合の比率の疎水層300を有するタッチパネル1について行われた第二の耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を以下に記載する。
【0068】
実験条件:
クラス100の無塵布(dustless class 100 cloth)をタッチパネル上に配置し、200gの重りをその無塵布の上に配置する。複合基板構造において速度100mm/minで耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験を行う。
【0069】
実験結果:
疎水層300においてSiO結合に対するCF結合の比率が50:1以上であるタッチパネルは、約0.1以下の静止摩擦係数を有する。疎水層300の表面は、好ましい平滑度を有するため、耐擦傷性及び耐摩耗性が促進される。
【0070】
実験結果の説明:
疎水層300は、タッチパネルの表面の平滑度を促進させる。そのため、複合基板構造10が外部のスクラッチ力を受けたときの、タッチパネルの耐擦傷性及び耐摩耗性を高める。
【0071】
本発明の実施の形態では、疎水層300は、ベーキングプロセス又はそれに類するプロセスにより、結晶体に変化する(become crystalline)。ベーキングプロセスにより形成される疎水層300では、分子が、非常に規則正しい微視的構造となるように配列されているため、好ましい密度を有する。疎水層300の密度が大きくなればなるほど、疎水層300の摩擦係数がより安定化し、低い値を維持する。約50%を超える結晶率を有する疎水層300を備えるタッチパネル1は、明確に促進した耐擦傷性及び耐摩耗性を有する。
【0072】
さらに、疎水層300の厚みが大きくなればなるほど、視覚的な透明度が劣化する。疎水性と視覚的な透明度とを最適化するために、本発明の実施の形態に係る疎水層300は、約5nm〜約30nmの厚みを有することが好ましい。
【0073】
以下、本発明にかかる複合基板構造の他の実施の形態について説明する。複合基板構造20、複合基板構造30、及び、複合基板構造40は、タッチパネル1に適用することができる。その結果、タッチパネル1の耐擦傷性及び耐摩耗性を促進することができる。また、光学的な効果を最適化することができる。
図1〜
図6に示す構成と共通する構成及び手段についての説明を省略する。
【0074】
図8は、本発明の様々な実施形態に従う
図1の複合基板構造を有するタッチパネルの断面図である。タッチパネル2はタッチ制御ユニット11を含み、タッチ制御ユニット11は、透明基板100の第二の面102に設けられるタッチ感知電極層600を含む。タッチ感知電極層600は、ユーザによるタッチ制御の操作を促進するように、設けられる。タッチ感知電極層600は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO)、カドミウム酸化物(CdO)、ハフニウム酸化物(HfO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(InGaZnO)、インジウムガリウム亜鉛マグネシウム酸化物(InGaZnMgO)、インジウムガリウムマグネシウム酸化物(InGaMgO)、インジウムガリウムアルミニウム酸化物(InGaAlO)、シルバーナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等のように、視覚的に透明でありつつ伝達可能な材料から形成される。
【0075】
タッチ感知電極層600は、複数の第一軸の電極(図示略)と複数の第二軸の電極とから形成される。一つ又は複数の実施の形態では、複数の第一軸の電極と複数の第二軸の電極とは、いずれも、透明基板100の第二の面102に配置されている。
【0076】
図9は、本発明の様々な実施形態に従う
図1の複合基板構造を有するタッチパネルの断面図である。実施の形態の一部では、タッチパネル3のタッチ制御ユニット11は、透明基板100の下に位置する第一の支持基板700を含む。タッチ感知電極層600は第一の支持基板700に配置されている。タッチ感知電極層600は、複数の第一軸の電極(図示略)と複数の第二軸の電極とから形成される。実施の形態の一部では、複数の第一軸の電極(図示略)と複数の第二軸の電極とは、第一の支持基板700の同じ面にいずれも配置されている。実施の形態の一部では、複数の第一軸の電極は、第一の支持基板700の下側の面に配置されており、複数の第二軸の電極は、第一の支持基板700の上側の面に配置されている。また、その逆に配置されている。実施の形態の一部では、複数の第一軸の電極は、透明基板100の第二の面102に配置されており、複数の第二軸の電極は、透明基板100の第二の面102に平行な面に配置されている。
【0077】
図10は、本発明の様々な実施形態に従う
図1の複合基板構造を有するタッチパネルの断面図である。実施の形態の一部では、タッチパネル4は、第二の支持基板800と、第三の支持基板900とを含む。第二の支持基板800は透明基板100の下方に位置し、第三の支持基板900は、第二の支持基板800の下に位置する。タッチ感知電極層600における複数の第一軸の電極(又は、複数の第二軸の電極)は、第二の支持基板800の下側の面(又は、上側の面)に配置され、タッチ感知電極層600における複数の第二軸の電極(又は、複数の第一軸の電極)は、第二の支持基板800の下側の面に平行な(又は、上側の面)に配置さる。
【0078】
第一の支持基板700、第二の支持基板800、及び、第三の支持基板900は、それぞれ、絶縁性を有しつつ視覚的に透明な材料からなり、また、エチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、非晶ポリアリレート、ポリカーボネート、又は、ガラス等の、いずれかを含む材料から形成される。特に、第一の支持基板700、第二の支持基板800、及び、第三の支持基板900は、平らなボード、曲面を有するボード、又は、異なる形状を有するボードのいずれかである。
【0079】
本発明の実施の形態によれば、透明基板の耐擦傷性と耐摩擦性とを向上させた、複合基板構造と、複合基板構造を有するタッチパネルを提供する。さらに、提供された複合基板構造を有するタッチパネルは、好ましい耐摩耗性と、透明度と、視覚的な効果とを有する。
【0080】
本発明の実施の形態に係る複合基板構造は、タッチパネルのタッチ表面として操作されることに限定されるものではなく、様々な他の製品に大いに利用することができる。例えば、複合基板構造は、カメラのフロントレンズのような、他の光学デバイスの耐摩耗性を有する表面として使用される。
【0081】
さらに、製品が透明度を要求しないとき、透明基板の代わりに、金属プレート又は不透明なプラスチックプレートが、本発明の複合基板構造に利用される。また、金属プレート又は不透明なプラスチックプレートは、必要に応じて、携帯電話のサイドカバーや背面カバー、コンピュータ、カメラ、家電製品の外側ケースなどのような、様々な製品の筐体の耐摩耗性表面として使用される。
【0082】
以上、説明した記載は、好ましい本発明の実施の形態を容易に明らかにする。しかし、本発明の特徴は、それによって限定されるものではない。当業者によって容易に想到される全ての変形、代替、及び、改良は、以下に記載する特許請求の範囲によって描写される本発明のスコープにより、包含されるべきである。