【解決手段】位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の幹線30Kと分岐線30Vとの分岐点31に取り付けられるものであり、前記幹線30Kを一の方向に挿通可能な略筒状をなす幹線保持部13を少なくとも一対と、前記幹線30Kから前記一の方向とは異なる他の方向に前記分岐線30Vを挿通可能な略筒状をなす分岐線保持部14と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の位置決め部材は、前記分岐点を覆う平板状をなす分岐点覆い部を有するものとしてもよい。このような構成によれば、分岐点覆い部により幹線と分岐線との分岐点を保護することができ、また、分岐点覆い部は平板状をなしているから位置決め部材の形状をシンプルなものとすることができる。
【0009】
また、本発明の位置決め部材は、前記分岐点を挟むように一方側と他方側とに配置される一対の分割体を有し、前記一対の分割体は略同一形状とされているものとしてもよい。このような構成によれば、位置決め部材が一対の異なる形状をなす分割体を有するものである場合に比して部品点数が減るので、位置決め部材の製造コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明の位置決め部材は、前記分岐点を挟むように一方側と他方側とに配置される一対の分割体を有し、前記一対の分割体は、互いに嵌合して前記幹線保持部および前記分岐線保持部を構成する幹線保持構成部および分岐線保持構成部を有するものとしてもよい。このような構成によれば、一対の分割体において幹線保持構成部および分岐線保持構成部がそれぞれ一体に組み付けられるから、確実に分岐線の分岐方向を決めることができる。
【0011】
また、本発明の位置決め部材は、前記分岐点を覆う金属製の分岐点覆い部を有するものとしてもよい。このような構成によれば、位置決め部材がシールド機能を有するものとすることができる。
また、本発明の位置決め部材は、前記分岐点とともにモールド部により覆われているものとしてもよい。このような構成によれば、分岐点の周りを防水することができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1〜
図10を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例における位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の幹線30Kと、幹線30Kから分岐する分岐線30Vとの分岐点31に取り付けられるものである。なお、本実施例では、分岐線30Vを、幹線30Kに対して略直角方向に分岐する場合について説明する。
【0013】
ワイヤハーネス30はシールド線によって構成されている。ワイヤハーネス30は、2本の被覆電線32が内側被覆33内に相互に離間した状態で平行に配索されてなり、さらに内側被覆33が編組線34によって包囲され、編組線34が外側被覆35によって覆われた形態とされている。
【0014】
幹線30Kを構成する2本の被覆電線32は、その途中の異なる位置において被覆が剥がされて内部の導線36が露出されている。また、分岐線30Vを構成する2本の被覆電線32は、その端末部分の被覆が剥がされて内部の導線36が露出されている。そして、分岐線30V及び幹線30Kにおいて露出された導線36同士が、
図3および
図4に示すように、スプライス端子を介してかしめ付けられ、またはスプライス溶接によって接続されている。こうして、幹線30Kと分岐線30Vとは接続部37を介して接続される。なお、分岐線30Vと幹線30Kとの接続部37には、その全体にわたりテープ38が巻き付けられている。
【0015】
さて、ワイヤハーネス30の幹線30Kと分岐線30Vとの分岐点31に取り付けられる位置決め部材10は、分岐点31を挟むように上側(一方側)と下側(他方側)とに配置される一対の分割体11を有している(
図1参照)。一対の分割体11は、いずれも導電性の金属板材(例えば銅製の板材)により略同一形状に形成されている。
【0016】
各分割体11は、分岐点31の上側または下側を覆う分岐点覆い部12を有している。分岐点覆い部12は、全体として、分岐点31の形状に沿った略T字形の平板状をなしている(
図2参照)。分岐点覆い部12は、幹線30Kおよび分岐線30Vのうち編組線34に覆われていない部分を覆うものである(
図5参照)。
【0017】
分岐点覆い部12は、幹線30Kを覆う幹線覆い部12Kと、分岐線30Vを覆う分岐線覆い部12Vとを有している。幹線覆い部12Kは、幹線30Kの延び方向に長い略長方形の平板状をなし、分岐線覆い部12Vは、分岐線30Vの延び方向に長い略長方形の平板状をなしている。幹線覆い部12Kの長手方向の寸法は、分岐線覆い部12Vの長手方向の寸法よりも大きく、2倍程度とされている。
【0018】
幹線覆い部12Kおよび分岐線覆い部12Vの短手方向の寸法(幅寸法)は、少なくとも2本分の被覆電線32の径寸法よりも大きく、また外側被覆35の径寸法よりも若干大きくされている。また、幹線覆い部12Kおよび分岐線覆い部12Vの短手方向の寸法は同等とされている。
【0019】
分岐線覆い部12Vは、幹線覆い部12Kの長手方向の途中部分(略中心部)に連結されている。分岐線覆い部12Vと幹線覆い部12Kとは略直角をなしている。
一対の分割体11は、後述する幹線保持部13を構成する幹線保持構成部13Cと、後述する分岐線保持部14を構成する分岐線保持構成部14Cとを有している。
【0020】
幹線保持構成部13Cは、各分割体11に一対ずつ設けられ、一対の幹線保持構成部13Cは、幹線覆い部12Kの長手方向の両端部にそれぞれ連結されている。分岐線保持構成部14Cは、各分割体11に一ずつ設けられ、分岐線覆い部12Vの長手方向の両端部のうち幹線覆い部12Kとの連結側とは反対側の端部に連結されている。
【0021】
一対の幹線保持構成部13Cおよび一の分岐線保持構成部14Cは、互いに略同形状とされている。各保持構成部13C,14Cは、
図2に示すように、幹線30Kまたは分岐線30Vの軸方向と直交する方向に細長い長方形状をなす板部材が、
図1に示すように、幹線30Kまたは分岐線30Vの外周側をそれぞれ囲むような半円形状に曲げ形成されたものである。各保持構成部13C,14Cの周方向における両端部の離間寸法は、各覆い部12K,12Vの幅寸法よりも大きくされている(
図5参照)。
【0022】
各保持構成部13C,14Cは、それぞれ略同形態の連結部15を介して幹線覆い部12Kまたは分岐線覆い部12Vの端部に連結されている。連結部15は、各覆い部12K,12Vの幅寸法よりも小さい幅寸法とされ、その両側が他の部分よりも窪んだ形態とされている(
図2参照)。連結部15は、各覆い部12K,12Vの端部から斜め外側(被覆電線32が配置される側とは反対側)に屈曲されており、各保持構成部13C,14Cのうち連結部15との連結部15分は各覆い部12K,12Vの外面よりも外側に位置している。幹線保持構成部13Cと分岐線保持構成部14Cとは、互いの軸線が直角をなす向きで、分岐線覆い部12Vに連結されている。
【0023】
各保持構成部13C,14Cには、他の分割体11に設けられた保持構成部13C,14Cと嵌合可能な嵌合部16が設けられている。嵌合部16は、
図1に示すように、各保持構成部13C,14Cの周方向における両端部のうち一方の端部に設けられた凸側嵌合部16Tと、他方の端部に設けられた凹側嵌合部16Uとを有している。
【0024】
凸側嵌合部16Tは、一対の分割体11の組み付け方向に略平行(分岐点覆い部12の板面に対して略垂直)をなす略方形の板面を有する凸側嵌合受け部17と、凸側嵌合受け部17の幅方向の略中心から一対の分割体11の組み付け方向に突出する凸部18とを有している。凸部18は、その突出端の両角部が丸められた略方形状に形成されている。凸部18の基端側(突出端とは反対側)の両側にはスリット19が形成され、凸部18は、スリット19の端部付近から外側に一枚板厚分だけ段差状にずれて設けられている。
【0025】
凹側嵌合部16Uは、一対の分割体11の組み付け方向に略平行(分岐点覆い部12の板面に対して略垂直)をなす板面を有する凹側嵌合受け部21と、凹側嵌合受け部21の幅方向の略中心から一対の分割体11に組み付け方向に凹む凹部22とを有している。各保持構成部13C,14Cにおいて凸側嵌合受け部17と凹側嵌合受け部21とは略平行をなして対向している(
図1参照)。凹部22は、凸部18の形状に整合する略方形状をなし、その両側の部分(以下、凹側部23と称する)は、凹部22の端部付近から外側に一枚板厚分だけ段差状にずれて設けられている。
【0026】
位置決め部材10は、一対の分割体11を組み付けることで構成される。一対の分割体11が組み付けられた状態では、幹線覆い部12K同士、および分岐線覆い部12V同士が対向し、分岐点覆い部12は所定の間隔(内側にワイヤハーネス30を収容可能な間隔)をあけて略平行をなして配置される。一対の幹線覆い部12Kの間には、幹線30Kが挿通される幹線挿通路24が形成され、一対の分岐線覆い部12Vの間には、分岐線30Vが挿通される分岐線挿通路25が形成される。
【0027】
また、幹線保持構成部13Cによって幹線保持部13が構成され、分岐線保持構成部14Cによって分岐線保持部14が構成される。幹線保持部13および分岐線保持部14は、互いに略同形の周方向に閉じた円筒形状をなし、内側に幹線30Kまたは分岐線30Vをそれぞれ挿通可能とされている。幹線保持構成部13Cと分岐線保持構成部14Cとは、互いの軸線がワイヤハーネス30の幹線30Kの延び方向およびそれに対する分岐線30Vの分岐方向と一致する向きで設けられている。
【0028】
位置決め部材10が組み付けられたワイヤハーネス30の分岐点31は、モールド部26により覆われている(
図7および
図8参照)。モールド部26は、位置決め部材10の全体と、編組線34のうち外側被覆35から露出された部分の全体と、ワイヤハーネス30のうち外側被覆35から露出されて位置決め部材10および編組線34の内側に配索される部分の全体とにわたり覆うものとされている。
【0029】
次に、ワイヤハーネス30の分岐点31に位置決め部材10を取り付ける作業の一例について説明する。
まず、幹線30Kと分岐線30Vとを接続する(
図3および
図4参照)。幹線30Kおよび分岐線30Vの接続箇所において被覆電線32の導線36を露出させ、導線36同士を接続する。
【0030】
次に、ワイヤハーネス30の分岐点31に位置決め部材10を組み付ける(
図5および
図6参照)。まず、一対の分割体11のうち一方の分割体11を、幹線覆い部12Kが幹線30Kに沿うように、かつ分岐線覆い部12Vが分岐線30Vに沿うようにして配置する。このとき、一対の幹線保持構成部13Cに幹線30Kを通し、分岐線保持構成部14Cに分岐線30Vを通すようにする。
【0031】
次いで、ワイヤハーネス30を挟み込むようにして他方の分割体11を一方の分割体11に組み付ける。他方の分割体11の各保持構成部13C,14Cの凸側嵌合部16Tおよび凹側嵌合部16Uが、一方の分割体11の各保持構成部13C,14Cの凸側嵌合部16Tおよび凹側嵌合部16Uに向かい合うように配置して両分割体11を接近させる。すると、凸側嵌合部16Tの凸部18が凹側嵌合部16Uの凹部22を通過して凹側嵌合受け部21の外面側に重なって配され、凹側嵌合部16Uの凹側部23が凸側嵌合部16Tの凸部18の両側を通過して凸側嵌合受け部17の外面側に重なって配される。こうして、各保持構成部13C,14Cにおいて互いの嵌合部16が嵌合した状態になる。
【0032】
その後、嵌合した嵌合部16をかしめ付け、一対の分割体11の保持構成部13C,14C同士を強固に組み付ける。これらのことによって、一対の分割体11が分離不能に合体されて位置決め部材10が一体に組み立てられる。この際には、幹線30Kは、幹線挿通路24内に配索されてその両端の幹線保持部13から位置決め部材10の外側に導出された状態になる。また分岐線30Vは、分岐線挿通路25内に配索されてその端部の分岐線保持部14から位置決め部材10の外側に導出された状態になる。
【0033】
次に、外側被覆35から露出された編組線34の端部を、位置決め部材10の幹線保持部13および分岐線保持部14の外周面にそれぞれ被せ付けてかしめリング39によってかしめ付ける。これにより、編組線34は位置決め部材10に対して電気的に接続される。
【0034】
次に、ワイヤハーネス30の分岐点31とともに位置決め部材10の周りをモールド部26で覆う(
図7および
図8参照)。ワイヤハーネス30の分岐点31を位置決め部材10とともに型開き状態にある図示しない成形用金型に仕掛ける。そして、型閉じによって成形用金型内に形成される成形空間へ溶融樹脂を充填する。成形用金型内の樹脂が固化した後、型開きを行えばモールド部26によって包囲されたワイヤハーネス30の分岐点31および位置決め部材10を取り出すことができる。なお、本実施例では、位置決め部材10から導出された分岐線30Vは、モールド部26により斜め方向に緩やかに曲げられた状態で固定される。
【0035】
次に、上記のように構成された本実施例の作用および効果について説明する。
本実施例の位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の幹線30Kと分岐線30Vとの分岐点31に取り付けられるものであり、幹線30Kを一の方向に挿通可能な略筒状をなす幹線保持部13を一対と、幹線30Kから直角方向(一の方向とは異なる他の方向)に分岐線30Vを挿通可能な略筒状をなす分岐線保持部14と、を備えている。
【0036】
この構成によれば、幹線30Kと分岐線30Vとの分岐点31に位置決め部材10を取り付けることにより、幹線30Kの延び方向に対して分岐線30Vの延び方向が固定されるから、分岐線30Vの分岐方向を決めることができる。
【0037】
また、位置決め部材10は、分岐点31を覆う平板状をなす分岐点覆い部12を有している。この構成によれば、分岐点覆い部12により幹線30Kと分岐線30Vとの分岐点31を保護することができ、また、分岐点覆い部12は平板状をなしているから位置決め部材10の形状をシンプルなものとすることができる。
【0038】
また、位置決め部材10を構成する一対の分割体11は、略同一形状をなしている。この構成によれば、例えば位置決め部材が一対の異なる形状をなす分割体を有するものである場合に比して部品点数が減るので、位置決め部材10の製造コストを低減することができる。
【0039】
また、一対の分割体11は、互いに嵌合して幹線保持部13および分岐線保持部14を構成する幹線保持構成部13Cおよび分岐線保持構成部14Cを有している。この構成によれば、一対の分割体11において幹線保持構成部13Cおよび分岐線保持構成部14Cはそれぞれ一体に組み付けられるから、確実に分岐線30Vの分岐方向を決めることができる。
【0040】
また、位置決め部材10に設けられた分岐点覆い部12は金属製であるから、位置決め部材10がシールド機能を有するものとすることができる。
また、位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の分岐点31とともにモールド部26により覆われている。この構成によれば、位置決め部材10およびワイヤハーネス30の分岐点31の周りを防水することができる。また、モールド部26により、ワイヤハーネス30の分岐点31の分岐形状を、所定の形状に確実に固定することができる。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ワイヤハーネス30の分岐方向が一方向のみである場合について説明したが、これに限らず、分岐方向は2方向以上であってもよい。
(2)上記実施例では、位置決め部材10が、シールド機能を有するワイヤハーネス30の分岐点31に取り付けられる場合について説明したが、これに限らず、例えば位置決め部材10をシールド機能のない通常の電線の分岐点に取り付けるものとしてもよい。
(3)上記実施例では、位置決め部材10が、一対の幹線保持部13と一の分岐線保持部14とを有しているが、これに限らず、位置決め部材は、3以上の幹線保持部および2以上の分岐線保持部を備えるものとしてもよい。
(4)上記実施例では、分岐線30Vの分岐方向が幹線30Kに対して直角方向である場合について説明したが、これに限らず、分岐線の分岐方向はどのような方向であってもよい。
(5)上記実施例では、幹線保持部13および分岐線保持部14は閉じた円筒形状をなすものとしているが、これに限らず、幹線保持部および分岐線保持部は、幹線または分岐線を所定の方向に保持可能であれば必ずしも閉じた円筒形状をなす必要はなく、例えば周方向の一部が開放されていてもよく、また例えば角筒形状であってもよい。
(6)上記実施例では、分岐点覆い部12は平板状をなすものとされているが、これに限らず、例えば分岐点覆い部は内側に電線を収容可能な凹形状または筒形状をなすものとしてもよい。
(7)上記実施例では、一対の分割体11は略同一形状をなすものとしているが、これに限らず、一対の分割体が異なる形状を有するものとしてもよい。
(8)上記実施例では、一対の分割体11は別体とされているが、これに限らず、例えば一対の分割体はヒンジを介して一体に連結されたものであってもよい。
(9)上記実施例では、位置決め部材10は金属製とされているが、これに限らず、位置決め部材はどのような材料により形成してもよく、例えば合成樹脂製であってもよい。
(10)上記実施例では、一対の分割体11は組み付けられて一体にされるものとしているが、これに限らず、例えば一対の分割体は互いに組み付けられることなく、それぞれがワイヤハーネスに取り付けられるものとしてもよい。
(11)上記実施例では、幹線保持部13および分岐線保持部14を構成する幹線保持構成部13Cおよび分岐線保持構成部14Cが互いに嵌合するものとされているが、これに限らず、幹線保持構成部および分岐線保持構成部は互いに嵌合しないものとしてもよく、例えば別途、互いに係止する係止部を設けるものとしてもよい。
(12)上記実施例では、位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の分岐点31とともにモールド部26により覆われているが、これに限らず、位置決め部材は露出していてもよく、また例えばモールド部の代わりに保護部材を被せるものとしてもよい。
(13)上記実施例では、位置決め部材10は、ワイヤハーネス30の分岐点31を覆う分岐点覆い部12を有しているが、これに限らず、位置決め部材は分岐点覆い部を有さないものであってもよく、幹線保持部と分岐線保持部とが、例えば棒状の連結体を介して一体に設けられたものとしてもよい。