【解決手段】軸方向に延びるとともに糸半田Wが供給される貫通孔51を有する筒形状の鏝先5と、鏝先5の軸方向端部が着脱可能な凹部421を有する鏝先保持部4と、鏝先5が、凹部421に挿入された結合状態を維持する結合維持部7とを備えている半田鏝A。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる半田鏝を備えた電子機器の製造装置の一例の斜視図であり、
図2は
図1に示す電子機器の製造装置をII-II線で切断した断面図である。なお、
図1では、支持部1の一部を切断し、電子機器の製造装置の内部を表示するようにしている。
【0025】
図1、
図2に示すように電子機器の製造装置Sdは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた半田鏝を利用して、鏝先5の下方に配置される配線基板Bdと、電子部品Epとを半田付けする装置である。電子機器の製造装置Sdは支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6及び半田鏝Aを備えている。
【0026】
電子機器の製造装置Sdは、治具Gjに取り付けられた配線基板BdのランドLdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子とに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具Gjを縦横に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、そして、電子機器の製造装置Sdは上下方向に移動可能であり、位置決め後上下方向に移動することで、半田鏝Aの先端をランドLdに接触させることができる。
【0027】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片に切断するものである。カッターユニット2は、摺動ガイド13に固定されたカッター下刃22と、カッター下刃22の上部に配置され、摺動可能に配置されたカッター上刃21とを備えている。また、カッターユニット2は、駆動機構3の後述する第2アクチュエータ32によって、上下方向(カッター上刃21の摺動方向と交差する方向)に駆動するプッシャーピン23を備えている(
図2参照)。
【0028】
図2に示すように、カッター上刃21は、半田送り機構6にて送られた糸半田Wが挿入される貫通孔である上刃孔211と、プッシャーピン23が挿入された貫通孔であるピン孔212とを備えている。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。カッター下刃22は、上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される貫通孔である下刃孔221を備えている。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とは、糸半田Wが挿入されている状態で、糸半田Wと交差する方向にずれることで、互いの切刃によって糸半田Wを半田片に切断する。
【0029】
上刃孔211とピン孔212とは、カッター上刃21の摺動方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置と、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置との間を摺動する。
【0030】
図2に示すように、駆動機構3は、カッター下刃22に固定されカッター上刃21を摺動させる第1アクチュエータ31と、カッター上刃21に取り付けられ、プッシャーピン23を駆動する第2アクチュエータ32とを備えている。第1アクチュエータ31は、カッター下刃22に固定されたシリンダ311と、シリンダ311の内部に配置され、供給される空気の圧力で伸縮するピストンロッド312とを備えている。ピストンロッド312の先端部分がカッター上刃21に固定されており、ピストンロッド312の伸縮動作によってカッター上刃21が摺動する。
【0031】
なお、
図2に示す電子機器の製造装置Sdでは、第1アクチュエータ31のピストンロッド312がシリンダ311から最も突出したとき、カッター上刃21が図中左端にあり、上刃孔211が下刃孔221と上下に重なるようになっている。また、図示はしないが、ピストンロッド312がシリンダ311に収納されたとき、カッター上刃21が図中右端に移動し、ピン孔212が下刃孔221と上下に重なるようになっている。
【0032】
第2アクチュエータ32は、カッター上刃21に固定されたシリンダ321と、シリンダ321の内部に配置され、空気圧で伸縮するピストンロッド322とを備えている。ピストンロッド322の先端にはプッシャーピン23が固定されている。第2アクチュエータ32は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なっている状態のとき、ピストンロッド322を伸長させることで、プッシャーピン23を下刃孔221に挿入し、ピストンロッド322をシリンダ321に収容することでプッシャーピン23を下刃孔221から抜く。
【0033】
半田送り機構6は、糸半田Wを供給するものであり、糸半田Wを送る一対の送りローラ61と、送りローラ61で送られる糸半田Wをガイドするガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持部1に取り付けられており、糸半田Wを挟むとともに、回転することで糸半田Wを下方に送る。送りローラ61は回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田の長さを決定している。
【0034】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、上刃孔211に連結されている。ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で引っ張られたり、突っ張ったりしないように設けられている。
【0035】
図1、
図2に示すように、半田鏝Aは、カッターユニット2の下方に固定されている。本発明にかかる半田鏝Aの詳細について新たな図面を参照して説明する。
図3は本発明にかかる半田鏝の分解斜視図であり、
図4は
図3に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。
【0036】
半田鏝Aでは、半田付け時の半田の残りや半田に含まれるフラックスの付着等により鏝先5の半田孔51が栓塞したり、鏝先5が変形したりする場合がある。そのため、半田鏝Aでは、鏝先5を鏝先保持部4に対して簡単に着脱できるとともに、結合状態を維持できるようになっていることが好ましい。このような要求に応えるため、
図3、
図4に示すように、本発明にかかる半田鏝Aは、鏝先5と、鏝先5を保持する鏝先保持部4と、鏝先保持部4と鏝先5との結合状態を維持する結合維持部7とを備えている。
【0037】
図3、
図4に示すように、鏝先保持部4は、通電によって発熱するヒータ41と、ヒータ41を取り付けるためのヒータブロック42と、ヒータブロック42を保持するヒータブロック保持部43とを備えている。
【0038】
ヒータブロック42は円筒形状を有しており、外周面には、ヒータ41が巻き付けられている。ヒータブロック42は、軸方向の下端部に鏝先5をとりつけるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通する半田供給孔422とを備えている。
【0039】
ヒータブロック保持部43は、平板状の本体部に形成された貫通孔である保持孔430を備えている。この保持孔430にヒータブロック42の凹部421と反対側の端部を圧入することでヒータブロック42はヒータブロック保持部43に保持されている。なお、
図4に示すように、ヒータブロック42の保持孔430に圧入される部分は、小径になるように段差が形成されているが、これに限定されるものではなく、段差無しの形状であってもよい。
【0040】
ヒータブロック保持部43を支持部1に取り付けることで、半田鏝Aが支持部1に固定される。
図2に示すように、半田鏝Aは、ヒータブロック保持部43を支持部1に取り付けたとき、カッター下刃22の下刃孔221とヒータブロック42の半田供給孔422とが連通するようになっている。
【0041】
図3、
図4に示すように、鏝先5は、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5は、軸方向の上部をヒータブロック42の凹部421に挿入したとき、下端部がヒータブロック42より下方に突出する。そして、鏝先5を凹部421に挿入したとき、ヒータブロック42の中心軸と鏝先5の中心軸とが重なり、半田孔51と半田供給孔421とが連通する。カッターユニット2で切断された糸半田は、下刃孔221から半田供給孔421を介して半田孔51に供給される。
【0042】
半田鏝Aで半田付けを行う場合、鏝先5はヒータブロック42を介してヒータ41の熱が伝達され、その熱で半田孔51に供給された半田片を溶融する。ヒータ41の熱が鏝先5に効率よく伝達されるようにするため、鏝先5と凹部421との間に隙間ができない或いは略隙間ができないように、鏝先5は凹部421の内面と密着している。なお、鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されていることが好ましい。
【0043】
次に、鏝先5を凹部421に挿入した結合状態を維持するための結合維持部7について説明する。
図3及び
図4に示すように、ヒータブロック42の鏝先5を着脱する凹部421は下方に向かって開口している。そのため、鏝先5は重力によって凹部421から抜けやすく(脱落しやすく)なっている。結合維持部7は、凹部421に挿入した鏝先5が重力で下方に脱落するのを抑制する構成を有している。
【0044】
結合維持部7は、ヒータブロック保持部43に一体的に設けられた受け部71と、鏝先5に設けられた当接部72とを備えている。受け部71は、ヒータブロック保持部43より突出した梁状部431の先端から下方に延びている。梁状部431はヒータブロック42から離れる方向に延びている。つまり、受け部71は、ヒータブロック42から離れた位置に設けられている。
【0045】
当接部72は、筒状の鏝先5の外面に取り付けられ、半径方向外方に延びる棒状の部材である。当接部72は鏝先5に固定されるものであり、固定方法としては、例えばねじ込みによるもの、圧入によるもの等を挙げることができるが、これに限定されない。鏝先5が加熱され昇温したときに、ゆるんだり、破損したりしない固定方法を広く採用することができる。
【0046】
受け部71の先端には、磁石711(例えば、フェライト、ネオジウム磁石等)が取り付けられており、当接部72は、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体で形成されている。すなわち、受け部71の先端に設けられた磁石711の磁力によって、強磁性体で形成された当接部72に受け部71に引っ張る力が作用する。なお、ここで磁石として永久磁石としているが、電磁石を用いてもよい。しかしながら、電磁石を用いる場合、鏝先5と鏝先保持部4との結合状態を維持するため、電磁石に常に通電が必要である。省エネルギ化の観点からすると、永久磁石を利用するものが好ましい。
【0047】
当接部72は、鏝先5を凹部421に挿入したとき、受け部71と当接できるように形成されている。当接部72と受け部71とが当接することで、当接部72が磁石711の磁力によって引っ張られる。この磁力によって、当接部72に作用する上方に引っ張る力が、鏝先5にも作用する。結合維持部7では、この鏝先5に作用する上方に引っ張る力が重力よりも強くなるように磁石711と当接部72を構成し、鏝先5を凹部421に固定している。なお、鏝先5を凹部421に挿入し、鏝先5を中心軸周りに回転させることで、当接部72を受け部71に簡単に当接させることができる。
【0048】
また、鏝先5を中心軸周りに回転させることで、受け部71と当接部72を離間させることができる。受け部71と当接部72とが離間することで、磁石711の磁力による当接部72を引っ張る力が取り除かれる。これにより、鏝先5は自重で凹部421から脱落する。
【0049】
半田鏝Aにおいて、結合維持部7を利用することで、鏝先5のヒータブロック42への着脱を簡単に行うことができるとともに、簡単且つ確実に鏝先5とヒータブロック42(鏝先保持部4)との結合状態を維持することが可能である。また、磁石711は受け部71のヒータブロック42から遠い方の面(
図4の受け部71の左側の面)に取り付けられている。これにより、ヒータブロック42からの輻射熱が受け部71で遮断されて磁石711の温度が上昇しにくくなる。さらに、ヒータブロック42と受け部71との間に遮熱版(不図示)を設けヒータブロック42からの輻射熱の影響を受けにくくしてもよい。これらのことは、強力な磁力を有するが温度上昇による寺領低下が激しいネオジウム磁石の使用時により大きな効果を発揮する。
【0050】
なお、半田鏝Aでは結合維持部7として、受け部71に磁石711を取り付け、当接部72を強磁性体で形成しているものとしているが、それに限定されるものではない。例えば、当接部72の受け部71と当接する部分の近傍に磁石を設けてもよいし、当接部72の全体を磁石で形成してもよい。さらには、当接部72が磁石を有する又は磁石で形成されている場合、受け部71には磁石711の替わりに、強磁性体の部材を配置するようにしてもよい。また、受け部71の全体又は当接部72と接触する部分の近傍を強磁性体で形成するようにしてもよい。以下の実施形態でも同様である。
【0051】
本実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
図5は本発明にかかる半田鏝に用いられる鏝先の他の例の斜視図である。
図5に示す結合維持部7は、当接部72と鏝先5との間に、棒状の接続部73を設けている。この棒状の接続部73は、ジルコニア等の低熱伝導材で形成されており、半田付け時に鏝先5にヒータ41から供給される熱が、当接部72に伝達するのを抑制している。これにより、ヒータ41から伝達される熱を効率よく鏝先に供給することが可能である。
【0052】
また、磁石及び強磁性体は、温度が上昇すると磁力が低下する性質を有しているものが多い。このことから、接続部73の先端に当接部72を取り付けた構成を有することで、当接部72及び当接部72と当接する受け部71の温度上昇を抑制し、磁力が低下するのを抑制することが可能である。
【0053】
本実施形態に示す半田鏝Aは、以上のような構成を有することで、凹部421の下方から鏝先5を挿入し、受け部71と当接部72とを接触させるだけで、鏝先5とヒータブロック42(鏝先保持部4)との結合を維持することが可能である。また、磁石を利用したものであるため、着脱及び結合の維持に特殊な道具や複雑な操作を行う必要がなく、鏝先5の着脱に伴う半田付け時間のロスを低減することが可能である。
【0054】
これらのことより、本発明にかかる半田鏝Aでは簡単な構造を有し、コストの上昇を抑制するともに、精度よく且つ効率よく半田付けを行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ヒータブロック保持部43に形成された梁状部431に受け部71が形成されているものとしているが、これに限定されるものではない。受け部71は、鏝先5をヒータブロック42の凹部421に挿入したとき、当接部72が接触する位置で、当接部72と接触したときに受け部71がヒータブロック42に対して移動しないような構成を広く採用することができる。
【0056】
なお、以下の各実施形態では、鏝先5と当接部72との間に接続部73を備えた構成で説明を行うが、実際には
図3等に示すような、当接部72が鏝先5と直接固定される構成のものであってもよい。
【0057】
(第2実施形態)
本発明にかかる半田鏝の他の例について図面を参照して説明する。
図6は本発明にかかる半田鏝の他の例の鏝先を取り外した状態の斜視図であり、
図7は
図6に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。
図6及び
図7に示す半田鏝Bは、奥側(図中上側)が小さくなるテーパー状の内面の凹部441を有するヒータブロック44を備えている。そして、鏝先5bの凹部441に挿入される部分は、凹部441に嵌合することができるテーパー形状の挿入部52を備えている。
【0058】
半田鏝Aにおいて、ヒータ41の熱がヒータブロック42を介して鏝先5に効率よく伝達させるため、凹部421の内面と鏝先5の外面とに隙間が形成されてないようにしている。凹部421の内面及び鏝先5の外形が円柱状である場合、鏝先5の先端と凹部421の開口とが同じ又は略同じ形状であるため、鏝先5を凹部421に挿入するとき、鏝先5の先端と凹部421の開口との正確な位置決めが必要となり、鏝先5の凹部421への着脱に手間がかかる場合がある。
【0059】
そこで、
図6、
図7に示す半田鏝Bでは、内面を奥側が細くなるようなテーパー形状の凹部441を有するヒータブロック44と、凹部441のテーパー形状と嵌合するテーパー形状の挿入部52を有する鏝先5bとを備えている。
【0060】
図4等に示すように、鏝先5bの挿入部52の先端は、凹部441の開口部よりも小さくなっている。鏝先5bの中心軸と凹部441の中心軸が多少ずれていても、そのまま鏝先5bを押し込むこととで、挿入部52のテーパー形状の外面が凹部441のテーパー形状の内面を摺動し、鏝先5bの中心軸を凹部441の中心軸と重なるようにガイドする。
【0061】
そして、挿入部52が凹部441に嵌合する形状であるため、挿入部52の先端が凹部441の最奥部と当接したとき、挿入部52の外面と凹部441の内面とが接触する、つまり、ヒータブロック44と鏝先5bとの中心軸が一致する。これにより、鏝先5bの半田孔51とヒータブロック44の半田供給孔442とが連通する。なお、挿入部52凹部441に挿入したとき、当接部72が受け部71と当接し、磁石711の磁力によって当接部72が引っ張られる。これにより、鏝先5bとヒータブロック44(鏝先保持部4)との結合状態が維持される。
【0062】
また、鏝先5bを凹部441から取り外すときについても、凹部441の内面及び挿入部52の外面がテーパー形状を有しているため、引っ張り方向が鏝先5bの軸方向からテーパー形状の外面に沿う方向のまでの角度であれば、鏝先5bを凹部441から確実に取り外すことができる。つまり、中心軸とずれた方向に引っ張られても、取り外すことが可能である。
【0063】
このように、凹部441の内面及び挿入部52の外面をテーパー形状に形成することで、鏝先5bの取り付け及び取り外しを簡単に且つ正確に行うことができる。これにより、鏝先5bの着脱のために半田付け作業が中断される時間を減らすことができ、効率よく半田付けを行うことが可能である。
【0064】
以下に、凹部441と挿入部52との密着力とテーパー形状の関係について説明する。
図8は鏝先をヒータブロックに押し付ける力と挿入部が凹部の内面を押す力との関係を示す図であり、
図9は面圧力と押付力との比とテーパー角との関係を示す図である。
図8に示すように、テーパー角θの挿入部52を有する鏝先5bを中心軸に沿ってヒータブロック44に向けて押付力F1で押しているとする。このとき、挿入部52の外面が凹部441の内面を押す力を面圧力F2とすると、仮想仕事の原理により、押付力F1と面圧力F2とは
図8に示すような関係になる。この関係を数式で表すと、以下のとおりとなる。
F2=F1/sin(θ/2)(0<θ≦180°)
【0065】
押付力F1は上述のとおり磁石711の磁力による力であることから、形状にかかわらず一定の押圧力F1を作用させたとすると、面圧力F2はテーパー角θの変化に伴って
図9に示すような変化を示す。
図9において、縦軸は面圧力F2の押付力F1に対する比であり、横軸はテーパー角θである。
図9に示すように、面圧力F2の押付力F1に対する比はテーパー角θが小いほど大きい。
【0066】
鏝先5bにおいて、押付力F1が同じ場合、テーパー角θを小さくすることで、大きな力で挿入部52を凹部441の内面に押し付けることが可能である。面圧力F2が大きくなると、挿入部52と凹部441との密着が強くなり、ヒータブロック44と鏝先5bとが密着し、熱の伝達効率が上昇する。すなわち、テーパー角θを小さくすることで、押付力F1が小さくても、挿入部52と凹部441との密着を強くすることができ、ヒータブロック44から鏝先5bへの熱の伝達効率を高めることができる。そこで、テーパー角θとして、押付力F1に対し、およそ4倍の面圧力F2を発生できる30°以下を採用している。
【0067】
一方で、凹部441及び挿入部52のテーパー角θは、加工精度等に変動する場合がある。テーパー角θが変動すると、凹部441及び挿入部52の軸に沿う方向の長さも変動する。このとき、テーパー角θが小さい場合、角度の変動が凹部441及び挿入部52の軸方向の長さの変動に与える影響が大きく、鏝先5bのヒータブロック44から突出する長さの変動が大きくなる。すなわち、テーパー角θが小さくなると、鏝先5b及びヒータブロック44の製造に高い精度が要求され、生産性が低下する。半田鏝Bでは、鏝先5b及びヒータブロック44の生産性を維持しつつ、鏝先5bのヒータブロック44からの突出長さを一定範囲内に抑えるためテーパー角θは7°以上としている。
【0068】
押付力F1が小さくても、挿入部52を凹部441にしっかり押し付けることができるとともに、鏝先5b及びヒータブロック44の生産性を維持しつつ鏝先5bのヒータブロック44から突出する突出長さを一定範囲内に抑えるため、凹部441及び挿入部52のテーパー角θは7°以上30°以下が好ましい。
【0069】
また、これ以外の構成及び効果については、第1実施形態と同じである。
【0070】
なお、以下の各実施形態の説明では、便宜上、テーパー形状の凹部を有するヒータブロック及びテーパー形状の挿入部を有する鏝先を備えているものについて説明するが、円柱状のものであってもよいことはもちろんである。
【0071】
(第3実施形態)
本発明にかかる半田鏝の他の例について図面を参照して説明する。上述してきた結合維持部7は、
図6に示すように、鏝先5(5b)に1個の当接部72が設けられている。また、ヒータブロック保持部43に設けられた当接部72と当接する受け部71も1個である。このような構成の場合、鏝先5(5b)を上方に引っ張る力(磁力による力)は当接部72に作用する。一方、当接部72に比べて鏝先5(5b)の方が重く、当接部72及び接続部73を含む鏝先5(5b)の重心(重力による力が作用する点)は、鏝先5(5b)を引っ張る力が作用する部分(引っ張る点)とずれる。このように磁力による引っ張る点と重心とにずれがあると、鏝先5(5b)が傾いたり、挿入時に鏝先5(5b)を凹部421(441)にうまく挿入できなかったりする場合がある。
【0072】
図10は本発明に示す半田鏝の鏝先を取り外した状態の断面図である。
図10に示す半田鏝Cは、結合維持部7cを備えている。結合維持部7cは、鏝先5cの中心軸を挟んで対称となるように、一対の当接部72、72と、一対の当接部72、72のそれぞれと鏝先5cとを接続する接続部73、73を備えている。そして、ヒータブロック保持部45はヒータブロック44を挟んで対向するように延びる一対の梁状部451、451を有しており、結合維持部7cは、その一対の梁状部451、451の先端部より下方に延びる一対の受け部71、71を形成する。
【0073】
そして、一対の当接部72、72のそれぞれが、一対の受け部71、71に当接するように、鏝先5cを凹部441に挿入することで、鏝先5cとヒータブロック44(鏝先保持部)との結合状態を維持する。
【0074】
このような構成とすることで、鏝先5cを引っ張る力は、鏝先5cの中心軸を挟んで対称となるように配置された当接部72、72のそれぞれに作用する。このとき、当接部72、72が鏝先5の中心軸を挟んで対称とうなるように設けられているため、鏝先5cを引っ張る力の中心は鏝先5cの中心軸と重なる。同様に、当接部72、72が対称に設けられているため、当接部72、72及び接続部73、73を含む鏝先5の重心は、鏝先5cの中心軸と重なる。このように、作用する力の中心と重心とが重なるため、鏝先5cを取り付けるとき及び取り付けた状態で力の偏りが発生しにくく、鏝先5cの着脱を円滑かつ正確に行うことが可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、受け部71、当接部72及び接続部73がそれぞれ2個のものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、3個又はそれ以上であっても、引っ張り力の中心が鏝先5cの中心軸と重なる位置に設けられているものを広く採用することが可能である。
【0076】
(第4実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図6、
図7に示すように、上述した結合維持部7(7b)は、鏝先5(5b)に1個の当接部72が設けられている。そのため、当接部72に作用する磁力と、鏝先5に作用する重力のずれにより、鏝先5(5b)が凹部421(441)にしっかり押し付けられない場合がある。
【0077】
図11は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図12は
図11に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。半田鏝Dでは、鏝先5bを確実に凹部441に押し付けることができる結合維持部7dを備えている。
図11、
図12に示すように、結合維持部7dは、ヒータブロック保持部43から突出する梁状部431に設けられた受け部74を備えている。そして、受け部74は、梁状部431の先端より下方に突出した接触部741と、梁状部431の中間部分より下方に突出した近接部742と、近接部742の先端部分に配置された磁石743を備えている。
【0078】
結合維持部7dにおいて、接触部741の梁状部431との接続部分から先端までの長さは、近接部742の梁状部431との接続部分から先端までの長さよりも長くなっている。そして、鏝先5bを凹部441に挿入したとき、当接部72は、接触部741と接触するとともに、近接部742との間には間隙が形成されるようになっている。
【0079】
そして、近接部742に磁石743が取り付けられており、当接部72は、近接部742に備えられている磁石743の磁力で引っ張られる。このとき、当接部72は接触部741と接触し、近接部742と当接部72との間に隙間が形成されているため、当接部72は、当接部72と接触部741と接触している部分を中心として、近接部742側を上方に持ち上げるような力(モーメント)が作用する。このモーメントによって鏝先5bには、凹部441に押し当てるような力が作用する。
【0080】
受け部74と当接部72との間に上述のようなモーメントが発生するように構成することで、鏝先5bを凹部441に挿入した結合状態をしっかり維持することが可能である。
【0081】
なお、当接部72及び接続部73の少なくとも一方が弾性変形可能な構成の場合、当接部72と近接部742が接触していてもよい。近接部742は、当接部72と近接部742とが接触したとき、当接部72及び(又は)接続部73が弾性変形するような位置に形成されている。当接部72及び(又は)接続部73が弾性変形することで、その反力によって鏝先5bがヒータブロック44の凹部441に押し付けられる。これにより、鏝先5bを凹部441に挿入した結合状態をしっかり維持することが可能である。
【0082】
また、これ以外の構成及び効果については、第1実施形態−第3実施形態と同じである。
【0083】
(第5実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図13は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図14は
図13に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。
図13に示すように、半田鏝Eは、結合維持部7eの形状が異なる以外、
図6等に示す半田鏝Bと同じ形状を有している。そのため、半田鏝Eにおいて、半田鏝Bと実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0084】
図13に示すように、結合維持部7eは受け部71と、当接部75と、支持部76と、接続部73とを備えている。当接部75は長方形状の板状部材であり、受け部71と面接触するように形成されている。支持部76は鏝先5eに取り付け固定されている。なお、支持部76の鏝先5eへの固定の方法については、圧入によるものを挙げることができるが、それに限定されるものはない。例えば、鏝先5eと支持部76とを一体で形成してもよいし、ねじ等の固定具を利用してもよい。鏝先5eが高温になったときに、支持部76が鏝先5eからずれないように固定する方法を広く採用することができる。
【0085】
図13に示すように、支持部76と当接部75とは、2個の接続部73で接続されている。2個の接続部73は離れて配置されている。このように、接続部73が離れて配置されていることで、当接部75は支持部76に対してねじれにくい状態で支持される。
【0086】
図14に示すように、鏝先5eの挿入部52を凹部441に挿入したとき、当接部75が受け部71に接触する。挿入部52の外面が凹部441の内面と接触したとき、支持部76がヒータブロック44から反力を受けない状態で取り付けられている。ここでは、反力を受けない状態とは、支持部76がヒータブロック44に接触しないか、接触したとしても支持部76がヒータブロック44に押し付けられていない状態である。そして、上述しているように、当接部75に伝わる熱量を減らすため、支持部76がヒータブロック44と接触しない方が好ましい。
【0087】
このような、結合維持部7eに平板状の当接部75と支持部76とを備えていることで、当接部75と受け部71との接触面積を広くし、磁石711と当接部75との間に発生する磁力を大きくすることができる。これにより、鏝先5eをヒータブロック44にしっかり押し付け、ヒータ41の熱を効率よく鏝先5eに伝達することができる。
【0088】
また、当接部75と受け部71との接触面積を大きくすることで、当接部75に作用する力の向きが変化しにくくなる。半田鏝Eが移動したり、衝撃や振動等の外乱を受けたりした場合でも、鏝先5eの挿入部52の一部がヒータブロック44に強く押し付ける状態を維持できる。これにより、ヒータブロック44から鏝先5eへの熱伝導が低下したり、鏝先5e及び(又は)ヒータブロック44が変形したりするのを抑制することが可能である。
【0089】
また、受け部71と当接部75との間の磁力をより大きくするため、また、磁力の向きをより安定させるため、受け部71の先端の当接部75と接触する部分を大きく形成してもよい。
【0090】
本実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
図15は本発明にかかる半田鏝に用いられる鏝先の他の例の斜視図であり、
図16は本発明にかかる半田鏝に用いられる鏝先の他の例の斜視図である。
【0091】
図15に示すように、当接部75の受け部71と接触する部分の近傍に磁石751を設けていてもよい。このように当接部75に磁石751を設けることで、磁石711と磁石751との両方の磁石による磁力で引き合うので、鏝先5eをより強くヒータブロック44に押し付けることができる。
【0092】
また、
図16に示すように、鏝先5eを挟んで対称に設けられた一対の当接部75、75を備える構成であってもよい。また、当接部75は、2個に限定されるものではない。
【0093】
なお、これら以外の構成及び効果については、第1実施形態−第4実施形態に示すものと同じである。
【0094】
(第6実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図17は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図18は
図17に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。本実施形態に示す半田鏝Fの結合維持部7fは、結合維持部7dが備えている受け部74と、結合維持部7eの当接部75及び支持部76とを組み合わせた構成を有している。そのため、半田鏝Fにおいて、上述の半田鏝D又は半田鏝Eと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0095】
図17に示すように、半田鏝Fの結合維持部7fは、接触部741、近接部742及び磁石743を備える受け部74と、当接部75と及び支持部76を備えている。そして、当接部75は、長尺状の部材であり、鏝先5eの挿入部52を凹部441に挿入したとき、長手方向の先端側の端部は接触部741と接触するとともに、近接部742に設けられている磁石743によって引っ張られる。このように形成することで、半田鏝Dと同様に、鏝先5eを凹部441に強く押し付けることができる。
【0096】
当接部75が平板状に形成されていることで、作用する磁力を強くすることができるとともに、鏝先5eを凹部441に押し付ける力の向きがぶれるのを抑制することができる。これにより、鏝先5eの挿入部52と凹部441の内面とをしっかり接触させることができ、鏝先5eにヒータ41の熱を効率よく伝達することができる。
【0097】
これ以外の、構成及び効果については第1実施形態−第5実施形態と同じである。
【0098】
(第7実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図19は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図20は
図19に示す半田鏝の鏝先を凹部に挿入した状態の断面図である。本実施形態に示す半田鏝Gは、結合維持部7gに端子701、702を備えている以外は、結合維持部7fと同じ構成である。そのため、半田鏝Gにおいて、上述の半田鏝Fと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0099】
半田付けを行う場合、鏝先5gで半田を溶融し、溶融した半田で半田付けを行うため、鏝先の情報(温度等)を正確に取得していることが好ましい。そのため、本実施形態にかかる半田鏝Gでは、鏝先5gにセンサ(不図示)を取り付けている。そして、当接部75は受け部74の接触部741と面接触しているため、センサからの信号をやり取りする端子を配置しやすい。
【0100】
そこで、当接部75の先端部分に上方に突出する第1端子701と、受け部74の接触部741に第1端子701と接触するように設けられた第2端子702とを備えている。そして、鏝先5gに設けられたセンサからの信号を取り出す信号線700が支持部76から当接部75に配索されており、信号線700は当接部75の内部で第1端子701と接続されている。そして、第2端子702は、図示を省略した制御機器と接続する取り出し線Sgに接続されている。
【0101】
このような半田鏝Gにおいて、鏝先5gをヒータブロック44に挿入し、当接部75が接触部741と接触したとき、第1端子701と第2端子702とが接触する(
図20参照)。これにより、取り出し線Sgと信号線700が接続され、鏝先5gのセンサと、制御機器とを接続し、センサに電力を供給したり、センサからの情報を制御機器に送信したりすることができる。
【0102】
これにより、半田鏝Gは、センサの情報から鏝先5gの状態を正確に知ることが可能であるため、正確な半田付けを効率よく行うことができる。なお、鏝先5gに取り付けられるセンサとしては、温度を検出する温度センサ、鏝先5gが基板と接触したことを検出する圧力センサ等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、以上示した各実施形態において、鏝先は中心軸と垂直な断面が円形のものを挙げているが、これに限定されるものではなく、円以外、例えば、四角形、六角形等の多角形や楕円等でもよい。
【0103】
また、鏝先5gの温度を測定することで、温度変化を利用して鏝先5gがヒータブロック44の凹部441に正しく接続された(挿入された)か否かの判定を行うことも可能である。
【0104】
なお、これ以外の構成及び効果については、第1実施形態−第7実施形態と同じである。
【0105】
(第8実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図21は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図22は
図21に示す半田鏝を用いた電子機器の製造装置の一部の斜視図である。
図21に示す半田鏝Hは、鏝先5hと結合維持部7hが異なる以外、
図3等に示す半田鏝Aと同じ構成を有している。また、
図22に示す電子機器の製造装置Sd2は、角度調整部Acを備えている以外、
図1等に示す電子機器の製造装置Sdと同じ構成を有している。それぞれ、既出の部分と実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0106】
図21に示すように、鏝先5hは、円筒形状を有しており、挿入部52と反対側の端部には、絞り部53が形成されている。絞り部53は、平行な2つの平面を有しており、この2つの平面は中心を挟んで対称に配置されている。そして、2つの平面の両端部は、鏝先5hの円筒形状の外面と一致する曲面形状となっている。
【0107】
結合維持部7hは、鏝先5hの外周面から径方向に突出する2個の接続部73、73と、接続部73、73のそれぞれの先端に当接部72、72を備えている。そして、2個の接続部73、73のうち一方は、絞り部53の平面と平行な方向に延びており、他方は直交する方向に延びている。また、
図21に示すように、受け部71は2個の当接部72のうちどちらか一方と接触する。鏝先5hは受け部71と当接する当接部72を変更することで、絞り部53の方向を変更することができるようになっている。
【0108】
このような絞り部53を備えた鏝先5hと、結合維持部7hとの利用方法として、次のようなものを挙げることができる。例えば、ランドLdの形状が長方形状で、円形の鏝先での正確な接触が困難な場合、絞り部53を備えた鏝先5hを利用し、その鏝先5hをランドLdの方向に合わせて回転させることで、鏝先5hをランドLdに正確に接触させることが可能である。これにより、半田付け前の予備加熱で半田付けを行わない隣接するランドを加熱してしまうのを抑制することでき、正確で効率のよい半田付けが可能となる。
【0109】
次に、半田鏝Hを備えた電子機器の製造装置について
図22を参照して説明する。電子機器の製造装置では、配線基板Bdに備えられた複数の電子部品Epの各端子と、対応するランドLdとを連続して半田付けを行う。連続して半田付けを行う場合、半田鏝Hの鏝先5hは高温になっており、作業者が手作業で鏝先の角度を変えるのは危険である。鏝先5hを冷却した後、鏝先5hを操作することは可能であるが、方向を変更するたびに、冷却/加熱を行うとエネルギの浪費であるとともに、時間も多く必要となり効率が悪い。
【0110】
そこで、
図22に示す電子機器の製造装置Sd2では、鏝先5hの角度を調整する角度調整部Acを備えている。角度調整部Acは、本体Ac1と、本体Ac1の端部に設けられ結合維持部7hの接続部73と当接可能なように設けられている押圧部Ac2と、同じく端部に設けられ鏝先5hの半田孔51に挿入可能な係合部Ac3と、を備えている。
【0111】
押圧部Ac2は、クランク状の部材であり、本体Ac1の端部に固定され、径方向に延びる固定部Ac21と、固定部Ac21の端部に設けられ本体Ac1と反対側に突出し、本体Ac1の中心軸と平行に延びる円柱部Ac22とを備えている。
【0112】
図22に示すように、角度調整部Acの本体Ac1は円柱形状を有しており、軸周りに回転可能となっている。本体部Ac1が回転することで、押圧部Ac2の円柱部Ac22は本体Ac1の中心軸と平行を維持しながら、中心軸周りを回るように移動する。
【0113】
角度調整部Acは、軸に沿う方向にも移動可能な構成を有している。角度調整部Acは、軸方向に移動することで、係合部Ac3を半田孔51に挿入し鏝先5hを下方から支持する。このとき、押圧部Ac2の円柱部Ac22は接続部73よりも上方に突出しており、本体部Ac1の回転によって、押圧部Ac2で接続部73が周方向に押される。この回転によって、鏝先5hが軸周りに回転され、絞り部53の方向が変更されるとともに、受け部71と当接する当接部72が変更される。
【0114】
以上のようにして、鏝先5hとヒータブロック44(鏝先保持部4)との結合状態を維持しつつ、鏝先5hの絞り部53の角度を変更することができる。なお、角度調整部Acは、半田孔51に挿入する係合部Ac3を備えることで、正確に支持する構成を有しているが、これに限定されるものではなく、鏝先5hを正確に支持することができる構成を広く採用することが可能である。
【0115】
本実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
図23は本発明にかかる半田鏝に用いられる鏝先の他の例の斜視図である。
図23に示すように、結合維持部7h2が平板状の当接部75と支持部76とを備えていてもよい。当接部75、75は、支持部76から互いに直交するように突出した2対の接続部73、73で支持部76と接続している。このように形成することで、受け部71と当接部75との間に作用する磁力による吸引力を高めることが可能である。なお、当接部75、75の受け部71と接触する部分及びその近傍に磁石を配置してもよい。
【0116】
このような構成の結合維持部7h2を備えた鏝先5h2を回転させる場合、角度調整部Acの押圧部Ac2の円柱部Ac22を、1つの当接部75と支持部76とを接続する2個の接続部73、73の間に配置し、接続部73、73の一方を押すようにしてもよい。また、2個の接続部73、73で囲まれた空間の外側から接続部73、73の一方を押すようにしてもよい。
【0117】
なお、本実施形態では、2方向に突出した接続部73、73が鏝先5h(5h2)の中心軸回りに90度あけて設けられているものを示しているが、この角度に限定されるものではない。また、当接部72(又は75)の個数も2個に限定されるものではなく、3個以上設けられているものであってもよい。さらには、受け部71を複数個設けておき、受け部71と当接する当接部72(又は75)の組み合わせを変更することで、細かく角度を調整できるようにしてもよいし、複数の受け部71が複数の当接部72(又は75)と同時に当接するようにして、ヒータブロック44と鏝先5hとの結合を強めるようにしてもよい。
【0118】
また、絞り部53を備えずに、半田孔51の端面形状が円以外の形状(例えば、長方形、楕円)等で形成されているものであっても、その端面形状の形状異方軸を回転させるために結合維持部7h(7h2)の構成を備えるようにしてもよい。なお、絞り部53を備えた鏝先5h(5h2)で半田孔51の端面形状を円以外の形状としてもよい。なお、本実施形態にかかる半田鏝の鏝先は、軸周りに回転するものであるため、軸に垂直な面で切断した断面形状が円形状のものである。
【0119】
なお、本実施形態の鏝先として、凹部内で中心軸周りに回転する必要があるため、中心軸と直交な面で切断した断面が円形状のもののみを採用することができる。まあ、これ以外の構成及び効果については、第1実施形態−第7実施形態と同様である。
【0120】
(第9実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図24は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図25は
図24に示す半田鏝の断面図であり、
図26は
図24に示す半田鏝の変形例を示す断面図である。
図24に示す半田鏝Iは、結合維持部7iが異なる以外は、半田鏝Aと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0121】
図24に示すように、半田鏝Iの接続維持部7iは、受け部71と、固定部77とを備えている。固定部77は、受け部71と接触する当接部771と、当接部771に取り付けられた棒状の固定ピン772と、ヒータブロック44に形成され固定ピン772が貫通する貫通孔773と、鏝先5iの外面から軸方向に延びる有底の凹穴774とを備えている。
【0122】
当接部771は、強磁性体で形成された円板形状の部材を有している。そして、その円板状の部材の中心より垂直に突出する突出部に、固定ピン772が固定されている。当接部771と固定ピン772とは、中心軸が重なるように形成されている。そして、固定ピン772は、貫通孔773に摺動可能な状態で挿入されている。
【0123】
また、固定ピン772の貫通孔773より突出した先端部分を鏝先5iの凹穴774に挿入可能となっており、固定ピン772を凹穴774に挿入することで、鏝先5iとヒータブロック44との結合状態を維持することができる。すなわち、鏝先5iが脱落するのを抑制している。このとき、凹穴774の構成として、固定ピン772が凹穴774の側壁を押し、鏝先5iをヒータブロック44に向けて押圧するような構成であることが好ましい。このような構成として、例えば、固定ピン772の先端が接触する凹穴774の内面を斜めに形成しておくものを挙げることができる。このように構成することで、固定ピン772の先端が凹穴774の内面と接触しているとき、固定ピン772の挿入方向の力を鏝先5iを押し上げる力として利用することができる。
【0124】
そして、当接部771が円板形状の部材を有していることで、当接部771は受け部71と接触したとき、受け部71に設けられた磁石711の磁力によって、当接部771には、固定ピン772を鏝先5iに向けて押す方が作用する。
【0125】
結合維持部7iは、固定ピン772が貫通孔773を貫通し、その先端が凹穴774に挿入されるように配置したとき、磁石711の磁力によって当接部771が固定ピン772を凹穴774の奥に押すように力を受ける。これにより、固定ピン772の先端が凹穴774から抜けるのを抑制している。これにより、固定部77で鏝先5iを固定し、鏝先5iとヒータブロック44(鏝先保持部4)との結合状態を維持することが可能である。
【0126】
なお、固定部77は、固定ピン772の先端に貫通孔773から抜けないような抜け止め構造を備えていてもよいし、固定部77を着脱可能な構成としてもよい。また、当接部771は円板形状に限定されるものではなく、磁石711の磁力でピン772を凹穴774に挿入させる方向に力発生させることができる形状を広く採用することが可能である。
【0127】
また、
図26に示す結合維持部7i2のような形状を有していてもよい。梁状部431に貫通孔を備えた摺動支持部775を形成しておき、摺動支持部775を固定ピン772が摺動可能に貫通することで、固定ピン772の鏝先5iの軸方向の移動を摺動支持部775によって規制するようなっていてもよい。このように構成することで、鏝先5iに形成された凹穴774が凹部441に隠れないので、凹穴774に固定ピン772を挿入する作業が容易になる。
【0128】
このように、固定部77の固定ピン772を鏝先5iに形成された凹穴774に挿入する構成とすることで、鏝先の外面の穴あけを行うだけでよいため、鏝先の製造が容易になる。また、固定部77は、貫通孔773や摺動支持部775のように固定ピン772の鏝先の軸方向の移動を規制している。そのため、磁力による固定ピン772を押しつける力の方向と、鏝先5iが脱落する方向とが交差するため、強い磁力が発生しなくても、鏝先5iとヒータブロック44(鏝先保持部4)との結合状態を安定して維持することが可能である。
【0129】
また、結合維持部7iの別の変形例について説明する。
図27は鏝先がヒータブロックに取り付けられている状態を示す断面図であり、
図28は
図27に示す鏝先の斜視図である。
図27に示すように、結合維持部7i3は、貫通孔776及び凹穴777の形状が異なる以外、結合維持部7iと同じ構成を有している。
図27に示すように、貫通孔776はヒータブロック44の軸と直交する線と平行であり、挿入された固定ピン772が凹部441の内部に露出するように、径方向と角度をつけて形成されている。
【0130】
また、鏝先5i2の凹穴777は軸と直交する線と平行に配置された円柱(ここでは、固定ピン772)が一部重なるような形状を有している。凹部441に鏝先5i2に挿入し、固定部77の固定ピン772を貫通孔776に挿入した後、鏝先5i2を回転させることで、固定ピン772を凹穴777と接触するように挿入することが可能である。
【0131】
なお、鏝先5i2の先端が異方軸を持たない形状(例えば、円形状)の場合、凹穴777として、外面周りに一周するような溝形状のものとしてもよい。このような鏝先5i2を用いることで、取り付け時に鏝先5i2を回転させなくても、固定ピン772と凹穴777とを簡単に係合させることが可能である。また、上述の鏝先5i、5i2では、凹穴774、777が形成される部分として、テーパー形状の挿入部を避けて形成しているが挿入部に形成されるものであってもよい。
【0132】
(第10実施形態)
本発明にかかる半田鏝のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図29は本発明にかかる半田鏝のさらに他の例の斜視図であり、
図30は
図29に示す半田鏝の断面図である。
図30に示す半田鏝Jは、結合維持部7jを備えており、鏝先5iをヒータブロック44に取り付けるものとしている。そして、結合維持部7jは、固定ピン772の先端を鏝先5iに形成された凹穴774に対する挿入排出の動作をアクチュエータ78で行う構成となっている。
【0133】
図30に示すように、結合維持部7jはヒータブロック保持部43に設けられた梁状部431より突出する固定部79に固定されるアクチュエータ78を備えている。そして、アクチュエータ78は、貫通孔773に摺動可能に支持された固定ピン772を摺動させる駆動部材である。アクチュエータ78として、例えば、空気圧を利用したエアシリンダやソレノイド等を挙げることができるがこれに限定されない。
【0134】
アクチュエータ78を利用することで、固定ピン772の凹穴774からの抜き差しを電気的な制御で行うことが可能となる。また、アクチュエータ78の動作を確認することで、鏝先5iとヒータブロック44(鏝先保持部4)との結合が確実に行われているかどうか検出することが可能である。
【0135】
なお、本実施形態では、結合維持部7jとして、凹穴774を利用するものとしているが、凹穴777を利用するものとしてもよい。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。