【解決手段】プラスチック基材(I)にガスバリア層(II)が積層されてなるフィルムであって、プラスチック基材(I)が金属化合物を0.1〜50質量%含有し、ガスバリア層(II)がポリカルボン酸を含有し、370nm以下の光線透過率が20%以下である紫外線吸収フィルム。プラスチック基材(I)が紫外線吸収剤を、0.1〜30質量%含有するポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の少なくとも一種であり、ガスバリア層(II)がポリアルコールを含有する紫外線吸収フィルム。
プラスチック基材(I)にガスバリア層(II)が積層されてなるフィルムであって、プラスチック基材(I)が金属化合物を0.1〜50質量%含有し、ガスバリア層(II)がポリカルボン酸を含有し、370nm以下の光線透過率が20%以下であることを特徴とする紫外線吸収フィルム。
95℃、30分の熱水処理後において、20℃、相対湿度90%の雰囲気下の酸素透過度が300ml/(m2・day・MPa)以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線吸収フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の紫外線吸収フィルムは、プラスチック基材(I)にガスバリア層(II)が積層されたものであり、プラスチック基材(I)は、金属化合物を含有することが必要である。
【0011】
金属化合物を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属や、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。中でも、カルボン酸と反応しやすいという観点から、イオン化傾向の高い金属が好ましく、ガスバリア性の観点から、1価や2価の金属であることが好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることが好ましく、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることがより好ましい。金属の種類は1種に限定されず、2種以上でもよい。
【0012】
本発明において金属化合物は、上記金属を含有する化合物であり、化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物や、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩などのカルボン酸塩や、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、酸化物、炭酸塩であることが好ましい。また、金属化合物として金属単体を用いてもよい。
【0013】
上記の金属化合物のうち、好ましい例として、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛などを挙げることができ、ガスバリア性の観点からは、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどのマグネシウム塩や炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの2価金属化合物が好ましく、プラスチック基材(I)の透明性の観点からは、炭酸リチウムや炭酸水素ナトリウムなどの1価の化合物や、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム塩が好ましい。これらは1種類で用いてもよく、2種類以上を添加してもよい。
【0014】
さらに、紫外線吸収性能の観点からは、金属化合物としてチタンや亜鉛を含有する化合物を用いることが好ましい。化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物や、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩などのカルボン酸塩や、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、酸化物、炭酸塩であることが好ましい。
【0015】
金属化合物は、無機処理や有機処理などの表面処理を施すことで、分散性や耐候性、熱可塑性樹脂との濡れ性、耐熱性を向上させることができる。無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、酸化錫処理、酸化アンチモン処理、酸化亜鉛処理等が挙げられる。有機処理としては、脂肪酸化合物、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン等のアミン化合物、シリコーン樹脂、アルキルクロロシラン等のシリコーン系の化合物を用いた処理が挙げられる。
【0016】
プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量は、0.1〜50質量%であることが必要であり、中でも0.1〜40質量%であることが好ましく、0.2〜30質量%であることがより好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量が、0.1〜50質量%であると、得られる紫外線吸収フィルムは、高湿度下においても優れたガスバリア性と紫外線吸収性能を有する。しかし、プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ガスバリア層(II)のポリカルボン酸と反応して形成される架橋構造が少なくなり、ガスバリア性が低下するとともに、紫外線吸収性能も低下する。一方、基材(I)中の金属含有量が50質量%を超える場合は、可視部での透明性が低下する。
【0017】
本発明において、フィルムの紫外線吸収性能を向上させるために、プラスチック基材(I)に紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤に分類される。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、環状イミノエステル系等、及びこれらの化合物の組み合わせが挙げられる。
【0018】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2、2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4オン)。
【0020】
1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン。
【0021】
2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)。
【0022】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0023】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、p−n−オクチルフェニルサリチレート等を挙げることができる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば2−エチルへキシルー2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等を挙げることが可能である。
【0024】
以上説明した紫外線吸収剤の中でも、耐久性の観点からベンゾトリアゾール系が特に好ましい。また、操業性の観点から、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくすることができるため好ましい。
【0025】
金属化合物や紫外線吸収剤は粉末状であることが好ましく、その平均粒径は、特に限定されないが、0.001〜20.0μmであることが好ましく、0.005〜10μmであることがより好ましく、0.01〜5.0μmがさらに好ましく、0.05〜2.0μmが特に好ましい。金属化合物や紫外線吸収剤の平均粒径が0.001μm未満だと、表面積が大きいため凝集しやすく、粗大凝集物がフィルム中に散在し、基材の機械物性を低下させることがある。一方、平均粒径が20.0μmを超える金属化合物や紫外線吸収剤を含有するプラスチック基材(I)は、製膜する時に破断する頻度が高くなり、生産性が低下する傾向がある。
【0026】
プラスチック基材(I)中の紫外線吸収剤の含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、中でも0.1〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。プラスチック基材(I)中の紫外線吸収剤が、0.1〜30質量%であると、得られる紫外線吸収フィルムは、優れた紫外線吸収性能を有するものとなる。プラスチック基材(I)中の紫外線吸収剤の含有量が0.1質量%未満であると、紫外線吸収量が低下する。一方、含有量が30質量%を超えると、プラスチック基材(I)は、製膜時の延伸において破断する頻度が高くなり、生産性が低下しやすくなり、機械物性も低下しやすい。
【0027】
プラスチック基材(I)に金属化合物や紫外線吸収剤を含有させる方法は特に限定されず、その製造工程の任意の時点で、配合することができる。例えば、プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂を重合するときに金属化合物や紫外線吸収剤を添加する方法や、熱可塑性樹脂と金属化合物や紫外線吸収剤とを押出機にて混練する方法や、金属化合物や紫外線吸収剤をそれぞれ高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれを熱可塑性樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)などが挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法が好ましく採用される。
【0028】
本発明において、プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのまたはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装用袋を構成したときに、突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、中でもナイロン6が好ましい。また、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、プラスチック基材(I)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加してもよい。また、熱可塑性樹脂には、プラスチック基材(I)のスリップ性を向上させるなどの目的で、金属化合物や紫外線吸収剤以外の無機粒子や有機系滑剤を添加してもよく、中でも、シリカを添加することが好ましい。
【0030】
プラスチック基材(I)の厚みは、得られる紫外線吸収フィルムが必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、プラスチック基材(I)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。プラスチック基材(I)は、厚みが5μm未満であると十分な機械強度が得られず、突刺し強力が悪化する傾向がある。
【0031】
プラスチック基材(I)は、単層構成のフィルムであっても、複層構成のフィルムであってもよい。プラスチック基材(I)が複層フィルムである場合は、その少なくとも1層が金属化合物を0.1〜50質量%含有することが好ましい。
【0032】
以下、複層フィルムの構成について説明する。なお、複層フィルム(プラスチック基材(I))における金属化合物を含有する層を「金属含有層(M)」とし、それ以外の層を「樹脂層(R)」と称する。プラスチック基材(I)が複層フィルムである場合、得られる紫外線吸収フィルムの構成としては、ガスバリア層(II)とプラスチック基材(I)の金属含有層(M)とが接触している、(R)/(M)/(II)や、(M)/(R)/(M)/(II)や、(II)/(M)/(R)/(M)/(II)などが好ましい。これらの構成は、ガスバリア層(II)と金属含有層(M)とが接触し、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸と金属含有層(M)中の金属化合物とが反応しやすいため、効率的にガスバリア性を得ることができる。その中でも、製造するための設備や操業性を考慮すると、(R)/(M)/(II)の構成が好ましい。
【0033】
そして、紫外線吸収剤は、上記の金属含有層(M)と樹脂層(R)のいずれに含有してもよく、また両層ともに含有してもよい。
複層フィルムを構成する金属含有層(M)と樹脂層(R)の厚み構成比率は、1/100〜100/1であることが好ましく、中でも1/10〜10/1であることが好ましい。
【0034】
また、本発明の紫外線吸収フィルムの最外層となる層には、スリップ性を向上させる目的で、シリカなどを添加することが好ましい。
【0035】
本発明の紫外線吸収フィルムを構成するガスバリア層(II)は、ポリカルボン酸を含有することが必要である。ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することによって、ガスバリア性を発現することができる。
【0036】
本発明におけるポリカルボン酸は、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物や重合体であり、これらのカルボキシル基は、無水物の構造を形成していてもよい。
ポリカルボン酸の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体などのオレフィン−マレイン酸共重合体、アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、カルボキシル基含有のポリアミド、ポリエステルなどを例示することができる。上記ポリカルボン酸は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
ポリカルボン酸が重合体である場合、その重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましくは、15,000〜110,000であることがさらに好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
【0038】
本発明において、上記ポリカルボン酸のうち、ポリアクリル酸やオレフィン−マレイン酸共重合体、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAと略記することがある)が、ガスバリア性の点から、好ましく用いられる。EMAは、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られる。
オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。
【0039】
EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが最も好ましい。
また、EMAの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜500,000 であることがより好ましく、7,000〜300,000であることがさらに好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。
【0040】
本発明においてガスバリア層(II)は、ポリアルコールを含有することが好ましい。ポリアルコールを含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することに加えて、ポリアルコールとも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、低分子化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの糖アルコール、グルコースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、ガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖が挙げられ、高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、でんぷんなどの多糖類が挙げられる。上記ポリアルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。また、平均重合度は、50〜2,000であることが好ましく、200〜1,000であることがより好ましい。
【0041】
ガスバリア層(II)における、ポリカルボン酸とポリアルコールとは、OH基とCOOH基のモル比(OH基/COOH基)が、0.01〜20となるように含有することが好ましく、0.01〜10となるように含有することがさらに好ましく、0.02〜5となるように含有することがより好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。
【0042】
また、本発明においてガスバリア層(II)は、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドまたはポリアミンを含有することも好ましい。これらの化合物を含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することに加えて、これらの化合物とも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
【0043】
ポリアミンは、分子中にアミノ基として第一級、第二級から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を2個以上有するものであり、その具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、分岐状ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサンのように側鎖にアミノ基を有する多糖類、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類などが挙げられる。
ポリアミンの重量平均分子量は、5,000〜150,000であることが好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
【0044】
ガスバリア層(II)における、ポリアミンとポリカルボン酸との質量比(ポリアミン/ポリカルボン酸)は、12.5/87.5〜27.5/72.5であることが好ましい。ポリアミンの質量比がこれより低いと、ポリカルボン酸のカルボキシル基の架橋が不十分となり、逆に、ポリアミンの質量比がこれより高いと、ポリアミンのアミノ基の架橋が不十分となり、いずれの場合も、得られる紫外線吸収フィルムは、ガスバリア性に劣ることがある。
【0045】
本発明におけるガスバリア層(II)は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有することによって、ガスバリア性を高めることができる。
ガスバリア層(II)における架橋剤の含有量は、ポリカルボン酸100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、ガスバリア層(II)がポリアルコールを含有する場合は、水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよい。具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム塩化合物、金属アルコキシド等が好ましく挙げられる。これらの架橋剤は、組み合わせて使用してもよい。
【0046】
金属アルコキシドとは、アルコキシ基が結合した金属を含む化合物であり、一部のアルコキシ基の代わりにハロゲンやカルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基が結合していてもよい。ここで、金属とは、Si、Al、Ti、Zrなどの原子が挙げられ、ハロゲンとは、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられ、カルボキシル基との反応性を有する官能基とは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基などが挙げられ、アルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基などが挙げられる。このような化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタンなどのアルコキシチタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウムなどのアルコキシアルミニウム化合物、テトライソプロポキシジルコニウムなどのアルコキシジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0047】
これらの金属アルコキシドは、その一部または全部が加水分解したもの、部分的に加水分解、縮合したもの、完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいは、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
【0048】
上記の金属アルコキシドとポリカルボン酸とを混合すると、両者が反応して塗工することが困難になる場合があるので、予め、加水分解縮合物を形成させてから混合することが好ましい。加水分解縮合物を形成させる方法としては、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用することができる。
【0049】
本発明におけるガスバリア層(II)には、ガスバリア性や、プラスチック基材(I)との接着性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、濡れ剤、粘度調整剤などが添加されていてもよい。
熱安定剤、酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが挙げられ、これらを混合して使用してもよい。
強化材としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、珪酸亜鉛、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70など)、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0050】
本発明においてプラスチック基材(I)上に積層される上記ガスバリア層(II)の厚みは、紫外線吸収フィルムのガスバリア性を充分高めるために、0.05μmより厚いことが好ましく、経済性の点から、5.0μmより薄いことが好ましい。
【0051】
本発明におけるガスバリア層(II)は、プラスチック基材(I)上に、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布、乾燥することによって、形成することができる。
上記塗工液は、作業性の面から水性であることが好ましいため、塗工液を構成するポリカルボン酸や、ポリアルコールやポリアミンは、水溶性または水分散性であることが好ましく、水溶性であることがより好ましい。
【0052】
本発明において、ポリカルボン酸とポリアルコールとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。ポリカルボン酸は、カルボキシル基の含有量が多いと親水性が高くなるので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができる。しかし、アルカリ化合物を適正量添加することにより、得られる紫外線吸収フィルムのガスバリア性を格段に向上することができる。アルカリ化合物は、ポリカルボン酸のカルボキシル基を中和できるものであればよいが、中でも1価金属のアルカリ化合物とアンモニアが好ましく、1価金属のアルカリ化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。これらの添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20モル%であることが好ましい。
【0053】
上記塗工液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて、公知の方法で行うことができ、例えば、ポリカルボン酸とポリアルコールとを別々に水溶液とし、塗工前に混合する方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
【0054】
また本発明において、ポリカルボン酸とポリアミンとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ゲル化を抑制するために、ポリカルボン酸に塩基を添加しておくことが好ましい。塩基は、得られる紫外線吸収フィルムのガスバリア性を阻害しないものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化亜鉛等の無機物や、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン等の有機物が挙げられ、乾燥、熱処理で揮発しやすいことから、アンモニアであることが好ましい。塩基の添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.6当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましくは、0.8当量以上であることがさらに好ましい。塩基の添加量が少ないと、塗工液は塗工中にゲル化し、プラスチック基材(I)上にガスバリア層(II)を形成することが困難となることがある。
【0055】
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布する方法は特に限定されず、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等、あるいはこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0056】
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布後、直ちに加熱処理を行い、乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、また塗布後、ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(II)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、塗布後、直ちに加熱処理を行うことが好ましい。
加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。工程の短縮化等を考慮すると、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布した後でプラスチック基材(I)の延伸を行うのが好ましい。
上記のいずれの場合においても、ガスバリア層(II)を形成したプラスチック基材(I)を、100℃以上の加熱雰囲気中で5分間以下の熱処理を施すことが好ましい。
【0057】
ガスバリア層(II)が、ポリカルボン酸とポリアルコールとを含有する場合においては、それらの比率や、添加成分の有無やその含有量等によっても影響を受け得るので、塗工液を塗布後の加熱処理温度は、一概には言えないが、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、140〜240℃であることがさらに好ましく、160〜220℃であることが特に好ましい。熱処理温度が低過ぎると、ポリカルボン酸とポリアルコールとの架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、ガスバリア層(II)などが脆化するおそれなどがある。
また、熱処理時間は、5分間以下であることが好ましく、1秒間〜5分間であることがより好ましく、3秒間〜2分間であることがさらに好ましく、5秒間〜1分間であることが特に好ましい。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を充分に進行させることができず、ガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0058】
また、プラスチック基材(I)に塗布されたガスバリア層(II)形成用塗工液は、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射が施されてもよい。このような場合には、高エネルギー線照射により架橋または重合する成分が配合されていてもよい。
【0059】
本発明の紫外線吸収フィルムは、上記の構成を有するため、ガスバリア性に優れるものであり、95℃、30分の熱水処理した紫外線吸収フィルムは、20℃、相対湿度90%の雰囲気下で測定した酸素透過度を、300ml/(m2・day・MPa)以下とすることができ、酸素透過度は、0.01〜300ml/(m2・day・MPa)であることが好ましく、0.01〜200ml/(m2・day・MPa)であることがより好ましく、0.01〜100ml/(m2・day・MPa)であることがさらに好ましい。
【0060】
そして、本発明の紫外線吸収フィルムの紫外線吸収性能を示す指標として、370nm以下の光線透過率が20%以下であるものであり、中でも光線透過率が19%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましい。光線透過率が20%を超えると、内容物の変質および変色が生じやすいものとなる。
なお、本発明における光線透過率は、分光光度計(島津製作所製 紫外可視分光光度計:Spectrophotometer UV−2450)を用いて、波長370nmにおける光線透過率をJIS A5759に準じて測定するものである。
【0061】
さらに、本発明の紫外線吸収フィルムは、引張強度が150MPa以上であることが好ましく、180MPa以上であることがより好ましい。引張強度が150MPa未満であると、機械強度が十分ではなく、突刺し強力が低下する傾向がある。また、引張伸度は、引張強度と同様の観点から、60%以上が好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0062】
本発明の紫外線吸収フィルムは、以下のような方法により製造することができる。
単層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、金属化合物として亜鉛化合物を混合した熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して、未延伸状態のプラスチック基材(I)のフィルムを得ることができる。
【0063】
また、複層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、亜鉛化合物を混合した熱可塑性樹脂を押出機Aで加熱溶融し、また熱可塑性樹脂を押出機Bで加熱溶融し、それぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、2層構成のフィルムをTダイから押出し、上記同様、冷却固化することによって、未延伸状態で得ることができる。
【0064】
このような方法でプラスチック基材(I)に亜鉛化合物を含有させることにより、従来行われていた、亜鉛化合物を含む層をコーティング法などを用いて基材に積層する工程を省略することができる。
【0065】
得られた単層や複層の未延伸フィルムに、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、テンター式同時二軸延伸機にて、縦方向(MD)および横方向(TD)に同時二軸延伸を施すことで、同時二軸延伸された紫外線吸収フィルムを得ることができる。
また得られた未延伸フィルムを縦方向(MD)に延伸したのち、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、次いで横方向(TD)に延伸を施すことで、逐次二軸延伸された紫外線吸収フィルムを得ることができる。
なお、未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
【0066】
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合は、未延伸フィルムを、80℃を超えないように温調した水槽に移送し、5分間以内で浸水処理を施し、0.5〜15%吸湿処理することが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率は、一軸延伸の場合は1.5倍以上であることが好ましく、縦横二軸延伸の場合も、縦横に各々1.5倍以上であることが好ましく、面積倍率で、通常3倍以上であることが好ましく、6〜20倍であることがより好ましく、6.5〜13倍であることがさらに好ましい。延伸倍率がこの範囲であると、優れた機械物性の紫外線吸収フィルムを得ることが可能となる。
延伸処理工程を経たフィルムは、延伸処理が行われたテンター内において150〜300℃の温度で熱固定され、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で、縦方向および/または横方向の弛緩処理が施される。熱収縮率を低減するためには、熱固定時間の温度および時間を最適化するだけでなく、熱弛緩処理を熱固定処理の最高温度より低い温度で行うことが望ましい。
【0067】
延伸方法は特に限定されないが、同時二軸延伸方法を用いる方が好ましい。同時二軸延伸方法は、一般に、機械的特性、光学特性、熱寸法安定性、耐ピンホール性などの実用特性を兼備させることができる。このほか、縦延伸の後に横延伸を行う逐次二軸延伸方法では、縦延伸時にフィルムの配向結晶化が進行して横延伸時の熱可塑性樹脂の延伸性が低下することにより、金属化合物や紫外線吸収剤の配合量が多い場合にフィルムの破断頻度が高くなる傾向がある。このため、本発明においては、吸水処理を施し、同時二軸延伸方法を採ることが好ましい。
【0068】
本発明の紫外線吸収フィルムは、ガスバリア性を高める目的で、積層体を製造した後に加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、プラスチック基材(I)の金属化合物とガスバリア層(II)のポリカルボン酸との作用を、より促進することができる。このような加湿処理は、高温、高湿度下の雰囲気において積層体を放置してもよいし、高温の水に直接積層体を接触させてもよい。加湿処理条件は種々目的により異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。加湿処理時間は処理条件により異なるが、一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
【0069】
本発明の紫外線吸収フィルムには、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
【0070】
本発明の紫外線吸収フィルムは、シーラントなど樹脂層を積層することにより、種々の積層フィルムとすることができる。
シーラントとして用いる樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、また他の樹脂と共重合や溶融混合して用いても、さらに酸変性などが施されていてもよい。
【0071】
シーラント層を紫外線吸収フィルムに形成する方法としては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートを、接着剤を介して、紫外線吸収フィルムにラミネートする方法や、シーラント樹脂を紫外線吸収フィルムに押出ラミネートする方法などが挙げられる。前者の方法においては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートは、未延伸状態であっても低倍率の延伸状態でもよいが、実用的には、未延伸状態であることが好ましい。
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜70μmであることがより好ましい。
【0072】
本発明の紫外線吸収フィルムを用いて包装用袋を作製することができ、この包装用袋は、例えば、飲食品、果物、ジュ−ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体ス−プ、調味料、その他等の各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、化成品といった内容物を充填包装することができる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
1.測定方法
(1)平均粒径
レーザー式粒度分析計「マイクロトラック HRA」(日機装社製)にて測定した粒径分布(体積分布)カーブにおける50%の累積パーセントの値を求めた。平均粒径測定用の試料は、金属化合物0.5gに対して50gのイソプロパノールを加え、超音波分散処理を3分間行なって調製した。
【0075】
(2)各層厚み
得られた紫外線吸収フィルムを23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、走査型電子顕微鏡(SEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
【0076】
(3)酸素透過度
得られた紫外線吸収フィルムを95℃、30分の条件で熱水処理した後、23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。単位はml/(m2・day・MPa)である。
【0077】
(4)光線透過率
前記の方法で測定した。
【0078】
2.原料
下記の実施例・比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
(1)プラスチック基材(I)構成用の熱可塑性樹脂
・PA6:ナイロン6樹脂(ユニチカ社製 A1030BRF、相対粘度3.0)
・PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ社製 UT−CBR 極限粘度0.62)
【0079】
(2)プラスチック基材(I)構成用の金属化合物
・ZnO1:酸化亜鉛(堺化学工業社製 FINEX−50 平均粒径0.02μm)
・ZnO2:酸化亜鉛(ハクスイテック社製 一種 平均粒径0.05μm)
・ZnCO
3:炭酸亜鉛(純正化学社製 塩基性炭酸亜鉛 平均粒径0.8μm)
・MgO:酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製 PUREMAG FNM−G 平均粒径0.4μm)
【0080】
(3)プラスチック基材(I)構成用の紫外線吸収剤
・HOBT:2,2−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ-ル(ケミプロ化成社製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
・BTP:2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン(ケミプロ化成社製 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)
【0081】
(4)プラスチック基材(I)構成用のマスターチップ
以下の組成となるように前記原料を溶融混練して得たもの。
・マスターチップ1
PA6/ZnO1=20/80(質量比)
・マスターチップ2
PA6/ZnO2=80/20(質量比)
・マスターチップ3
PA6/ZnCO
3=80/20(質量比)
・マスターチップ4
PET/ZnO1=80/20(質量比)
・マスターチップ5
PA6/MgO=80/20(質量比)
・マスターチップ6
PA6/HOBT=80/20(質量比)
・マスターチップ7
PA6/BTP=80/20(質量比)
【0082】
(5)ガスバリア層(II)形成用塗工液のポリカルボン酸成分
・塗工液A
EMA(重量平均分子量60,000)と水酸化ナトリウムとを水に加え、加熱溶解後、室温に冷却して調製した、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液を作製した。ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を作製した。そして、PVAとEMAの質量比(固形分)が50/50になるように、PVA水溶液とのEMA水溶液とを混合して、固形分10質量%のガスバリア層(II)形成用塗工液Aを得た。
・塗工液B
ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のガスバリア層(II)形成用塗工液Bを得た。
【0083】
実施例1
ナイロン6樹脂とマスターチップ1を用いて、ZnO1の含有量が1質量%となるように混合した。この混合物を押出機に投入し、260℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸プラスチック基材(I)フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、塗工液Aを、浸水処理を施した未延伸フィルムの片面に塗布した後、乾燥した。
フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのプラスチック基材(I)に、厚みが0.3μmのガスバリア層(II)を積層した紫外線吸収フィルムを得た。
【0084】
実施例2〜8、14 比較例1〜4
表1に記載の金属化合物や含有量になるように、マスターチップの種類と量を変更し、ナイロン6樹脂と各種マスターチップとを混合した以外は、実施例1と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
なお、実施例6においては、延伸倍率を変更し、厚みが30μmのプラスチック基材(I)に、厚みが0.3μmのガスバリア層(II)を積層した紫外線吸収フィルムを得た。
【0085】
実施例9
熱可塑性樹脂として、ナイロン6樹脂の代わりにポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、マスターチップ4を用いてZnO1の含有量が5質量%となるように混合させ、270℃のシリンダー内で溶融させた以外は、実施例1と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
【0086】
実施例10
ナイロン6樹脂とマスターチップ5とマスターチップ6を用いて、MgOの含有量が1質量%、HOBTの含有量が2質量%となるように混合した以外は、実施例1と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
【0087】
実施例11〜12
MgOの含有量が表1に示す値となるようにマスターチップ5の混合量を変更した以外は、実施例10と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
【0088】
実施例13
ナイロン6樹脂とマスターチップ5とマスターチップ7を用いて、MgOの含有量が1質量%、BTPの含有量が5質量%となるように混合した以外は、実施例1と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
【0089】
実施例15
ナイロン6樹脂とマスターチップ1を用いて、ZnO1の含有量が5質量%となるように混合した。この混合物を押出機Aに投入し、260℃で溶融押出した。一方、ナイロン6樹脂を押出機Bに投入し260℃で溶融押出した。
押出機A、押出機Bでそれぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、金属化合物含有層(M)/樹脂層(R)の2層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、(M)/(R)=100/50となる厚み150μmの未延伸の複層フィルムを得た。得られた未延伸の複層フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、塗工液Aを、未延伸複層フィルムの金属化合物含有層(M)面に塗布した後、乾燥した。
実施例1と同様にして、同時二軸延伸、熱処理を施して、厚みが10μmの金属化合物含有層(M)と厚みが5μmの樹脂層(R)とからなる、厚みが15μmのプラスチック基材(I)の金属化合物含有層(M)面に、厚みが0.3μmのガスバリア層(II)を積層した紫外線吸収フィルムを得た。
【0090】
実施例16〜21、27 比較例5〜7
表1に記載の金属化合物や含有量になるように、マスターチップの種類と量を変更し、ナイロン6樹脂と各種マスターチップとを混合した以外は、実施例15と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
なお、実施例19においては、延伸倍率を変更し、厚みが5μmの金属化合物含有層(M)と厚みが10μmの樹脂層(R)とからなる、厚みが15μmのプラスチック基材(I)とした以外は、実施例15と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
【0091】
実施例22
熱可塑性樹脂として、ナイロン6樹脂の代わりにポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、マスターチップ4を用いてZnO1の含有量が5質量%となるように混合させ、270℃のシリンダー内で溶融させた以外は、実施例15と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
【0092】
実施例23
塗工液Aを、未延伸複層フィルムの樹脂層(R)面に塗布し、紫外線吸収フィルムの層構成を(M)/(R)/(II)にした以外は、実施例15と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
【0093】
実施例24
ナイロン6樹脂とマスターチップ1を用いて、ZnO1の含有量が5質量%となるように混合した混合物を、押出機Aと押出機Bともにに投入し、紫外線吸収フィルムの層構成を(M)/(M)/(II)にした以外は、実施例15と同様の操作により紫外線吸収フィルムを得た。
【0094】
実施例25
ナイロン6樹脂とマスターチップ5を用いて、MgOの含有量が5質量%となるように混合した混合物を押出機Aに投入し、ナイロン6樹脂とマスターチップ6を用いて、HOBTの含有量が3質量%となるように混合した混合物を押出機Bに投入した以外は、実施例15と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
【0095】
実施例26
ナイロン6樹脂とマスターチップ5を用いて、MgOの含有量が1質量%となるように混合した混合物を押出機Aに投入した以外は、実施例25と同様にして紫外線吸収フィルムを得た。
【0096】
実施例1〜27、比較例1〜7で得られた紫外線吸収フィルムの組成と構成、光線透過率、酸素透過度を測定した結果を表1、2に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
実施例1〜27では、いずれも、光線透過率およびガスバリア性に優れた紫外線吸収フィルムが得られた。
一方、比較例1、2、5、6で得られたフィルムは、プラスチック基材(I)に含まれる金属化合物が0.1質量%未満であったため、十分な紫外線吸収性能を有しておらず、、かつガスバリア性にも乏しいものであった。
比較例3、7では、プラスチック基材(I)に含まれる金属化合物が50質量%を超えていたため、製膜時の延伸において、比較例3ではフィルムの破断が生じ、また、比較例7では金属化合物含有層(M)の凝集破壊が発生し、いずれも、紫外線吸収フィルムが得られなかった。
比較例4では、ガスバリア層(II)にポリカルボン酸を含有していなかったため、十分なガスバリア性を有する紫外線吸収フィルムが得られなかった。