【解決手段】LD10およびレンズ9を備える光アセンブリ2に、レンズに対向する入射端面がその光軸に対して傾斜したファイバを光結合させた光モジュールの製造方法である。LDに対するレンズの位置を決める際に、レンズが出射する光をマルチモードファイバ(MMF)22により受光し、MMFとレンズとの相対位置について、受光強度が極大となる二つの点(M
該(2)の第2の仮位置を求める操作の後さらに、該(1)の第1の仮位置を求める操作および該(2)の第2の仮位置を求める操作を該第2の仮位置が収斂するまで繰り返す、請求項3に記載の光モジュールの製造方法。
該レンズと該単一モードファイバとの間にさらに別のレンズを有し、該別のレンズの一方の焦点を該単一モードファイバの端面に一致させ、該レンズと該半導体レーザとの相対位置は、該レンズの焦点を該別のレンズの他方の焦点に一致させて調整する、請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願の光モジュールの製造方法は、(1)半導体レーザからの出射光を、レンズと、端面がその光軸に対して斜めに研磨された単一モードファイバとを介して外部に出力する光モジュールの製造方法であって、該レンズの光軸に対し垂直であって、該レンズに対する距離を互いに異とする第1の仮想面、第2の仮想面それぞれの面内において、該レンズと該レンズを介して該半導体レーザの出射光を受光するマルチモードファイバとの相対位置を調整し、該マルチモードファイバが受光する該半導体レーザの出射光の受光強度の極大値を与える、当該第1の仮想面内における第1の位置、および該第2の仮想面内における第2の位置をそれぞれ決定する工程と、決定した該第1の位置、第2の位置を元に算出される該レンズから出射される光の出射角度と、該単一モードファイバに対する光の設計入射角度とを比較する工程と、該光の出射角度と該光の設計入射角度との差が所定の設定範囲より大きい場合、該光の出射角度と該光の設計入射角度との差が該所定の設定範囲内に収斂するように、該レンズと該半導体レーザとの相対位置を調整する工程と、を含む。レンズの位置を決める際、マルチモードファイバとレンズとの相対位置について、レンズの光軸に対して垂直方向のうち第1の仮想面内と第2の仮想面内だけで調整すればよく、例えば光ファイバをレンズの光軸方向に沿って結合効率の最大値が得られるように細かく移動させずに済む。このため、レンズの位置を決める調芯作業を短時間で済ませることができる。
【0012】
(2)該レンズは該半導体レーザの出射光をコリメートするコリメートレンズと、該コリメートレンズのコリメート光を集光する集光レンズを含み、該半導体レーザの出射光は該コリメートレンズの出射光であり、該レンズと該半導体レーザとの相対位置の調整は、該コリメートレンズと該集光レンズとの相対位置の調整である。上記の調芯手法を用いれば、調芯トレランス(ずれ)を伴いやすい二レンズ系モジュールの場合にも、調芯作業を短時間で済ませることができる。
【0013】
(3)該第1の仮想面内における第1の位置、および該第2の仮想面内における第2の位置は、(1)該マルチモードファイバと該レンズとの相対位置を第1の方向に移動させつつ該マルチモードファイバによる該半導体レーザの出射光の受光強度の極大値を与える第1の仮位置を求め、(2)求めた該第1の仮位置を中心に該第1の方向と直交する第2の方向に沿って、該マルチモードファイバと該レンズとの相対位置を移動させつつ該マルチモードファイバによる該半導体レーザの出射光の受光強度の極大値を与える第2の仮位置を求め、求めた該第2の仮位置で決定される。第1の方向に移動させて第1の仮位置を求め、求めた第1の仮位置から第1の方向に直交する第2の方向に移動させて第2の仮位置を求めており(十字調芯)、高精度の位置決めが可能になる。
【0014】
(4)該(2)の第2の仮位置を求める操作の後さらに、該(1)の第1の仮位置を求める操作および該(2)の第2の仮位置を求める操作を該第2の仮位置が収斂するまで繰り返す。上記の十字調芯に次いで、直前に決めた位置から十字状の位置合わせを繰り返し、収束した位置を決める手法によれば、十字調芯の場合に比べてより一層高精度の位置を得ることができる。
【0015】
(5)該マルチモードファイバと該レンズとの相対位置は、該レンズを固定し該マルチモードファイバを移動させて求め、該レンズから出射される光の出射角度は、さらに、該レンズの位置を原点とし、該第1の位置、および該第2の位置を合わせた三点で決定する。マルチモードファイバをレンズに対して相対移動させるので、マルチモードファイバを移動させる構造を用いて容易に実現可能である。
【0016】
(6)該マルチモードファイバと該レンズとの相対位置は、該マルチモードファイバを固定し該レンズと該半導体レーザを一体に移動させて求め、該レンズから出射される光の出射角度は、さらに、該マルチモードファイバの位置を原点とし、該第1の位置、および該第2の位置を合わせた三点で決定する。レンズと半導体レーザをマルチモードファイバに対して相対移動させるので、レンズと半導体レーザを一体に移動させる構造を用いて容易に実現可能である。
【0017】
(7)該レンズと該単一モードファイバとの間にさらに別のレンズを有し、該別のレンズの一方の焦点を該単一モードファイバの端面に一致させ、該レンズと該半導体レーザとの相対位置は、該レンズの焦点を該別のレンズの他方の焦点に一致させて調整する。上記の手法によれば、レンズと単一モードファイバとの間にさらに別のレンズを有していても、調芯作業を短時間で済ませることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
【0018】
図面を参照しながら本発明の一形態に係る光モジュールの製造方法を説明する。
図1は、本発明が適用される光モジュールの一例を示しており、光モジュール1は、例えば、光レセプタクル付きの送信用光サブアセンブリ(TOSA)である。光モジュール1は、光信号を送信する光アセンブリ2、外部機器に光接続する光レセプタクル4、光アセンブリ2と光レセプタクル4とを連結する連結部3を備える。
【0019】
光アセンブリ2は角型のパッケージ2aを備え、同パッケージ2a内に温度制御素子6、同素子上にLD10を搭載している。温度制御素子6はパッケージ2aの底板2b上に搭載されており、さらに同素子6上には第1レンズ7も第1レンズホルダ7aに保持された状態で搭載している。LD10への信号はパッケージの後部(光アセンブリ2に対し連結部3が組立てられている方向を仮に前部とする)に設けられた電極2cから供給される。さらに、角型パッケージ2aの前壁には角型パッケージ2aのLD10搭載空間を気密に封止するために光透過窓2dがホルダ2eにより保持されている。
【0020】
連結部3は、第2レンズホルダ9a、9bに保持された第2レンズ9とジョイントスリーブ3aを有する。第2レンズホルダはパッケージ2aの前壁に固定される外ホルダ9bと、この外ホルダ9bの内孔に挿入される内ホルダ9aに分割されている。そして、この第2レンズホルダ9a、9bがジョイントスリーブの内孔に挿入されている。第2レンズホルダ9a、9bとジョイントスリーブ3aとの重なり度で第2レンズ9と結合ファイバ14との距離を調整する。内ホルダ9aは第2レンズ9を信頼性よく保持するために、一方、外ホルダ9bは下記ジョイントスリーブ3aとの溶接固定のために別部材とされている。重なり度の調整は、後述するZ軸方向の光軸調芯に相当する。この調芯後、第2レンズホルダ9a、9bとジョイントスリーブ3aとは、ジョイントスリーブ3aの薄肉部について貫通溶接により固定される。
【0021】
光レセプタクル4は円筒形状の部材であり、その中心に結合ファイバ14を有する。結合ファイバ14は単一モードファイバ(SMF)である。スタブ15の連結部3に面する入射端面16は、結合ファイバ14の端面と一緒に、結合ファイバ14の光軸に対して有意な角度に研磨されている。LD10の出射光が二つのレンズ7、9により結合ファイバ14の同端面に集光されるが、同端面で反射した光が再びLD10に入射するのを防止するためである。反射光はLD10に対しては雑音源となりLD10の光学特性を著しく悪化させる。
【0022】
スタブ15はスタブホルダ17内に圧入される。スタブホルダ17の連結部3側の端面20と、ジョイントスリーブ3aの光レセプタクル4側の端面13は平坦に形成されており、光レセプタクル4をこの端面20上で光軸に対して垂直方向(後述のXY方向)にスライドさせてXY調芯を実行する。調芯後にスタブホルダ17の端部において隅肉溶接により、光レセプタクル4は接合部3に対して組立られる。スタブ15の前方側にはスリーブ18が挿入されている。
図1の例では、スリーブ18は、いわゆる、割れスリーブを想定しているが、光モジュール1は精密スリーブを採用することも可能である。スタブホルダ17は、スタブ15の前方側においてスリーブ18を保護しており、さらに、スリーブカバー19がスリーブ18の前方側を保護している。
【0023】
所定の電気信号が電極2cを介してLD10に供給されると、LD10は光信号を送出する。この光信号は、第1レンズ7で実質的に平行光線に変換され、第2レンズ9により結合ファイバ14の端面に集光される。このため、第1レンズ7をコリメートレンズ、第2レンズ9を集光レンズと呼ぶこともある。
図1に記載した光モジュール1は、外部光コネクタと係合する光レセプタクル4の構成を採用している。しかし、光レセプタクル4ではなく、いわゆる、ピグテールファイバによりLD10の出射光を取り出すことも可能である。
【0024】
LD10、第2レンズ9、結合ファイバ14には、高精度の位置決め、すなわち、光学アラインメントが要求されている。LD10と第2レンズ9との結合効率や、第2レンズ9と結合ファイバ14との光結合効率は、各部品の加工精度だけでは、この要求に応えることができない。そのため、実際の光モジュール1の組立においては、LD10に対する第2レンズ9の位置を決める工程(レンズ固定とも言う)や、LD10(実施例で言えばLD10および第2レンズ9を備えた中間組立体)に対する結合ファイバ14の位置を決める工程(ファイバ固定とも言う)、等の相対位置の調整作業(調芯作業)を実行している。
【0025】
まず、レンズ固定について説明する。
図2にはレンズ固定工程を模式的に示したものである。レンズ固定の場合には、
図1で説明した光レセプタクル4に替えて、受光装置21を用いる。受光装置21は例えばマルチモード光ファイバ(MMF)22を有する。MMF22は、コア径が0.050mm程度で形成され、第2レンズ9に対向する入射端面22aを有している。受光素子23は、入射端面22aの反対側に設けられ、MMF22で受光した光強度を測定する。この測定結果は演算部24に出力される。なお、受光装置21は、MMFに替えて、このMMFのコア径と同程度の大きさの受光面を有した受光素子であって、LD10の発する光の波長帯に感度を有する素子を用いてもよい。
【0026】
演算部24は、測定した光強度(結合効率)が最大となる、例えば、後述の測定平面上の位置を決定する。演算部24は、第2レンズ9とMMF22の入射端面22aとの距離を、少なくとも2条件(2つの仮想面)設定し、それぞれの条件下、すなわち、光軸に垂直な仮想面内において受光装置21、厳密にはMMFの光入射端面22aをX、およびY方向にスライドさせて最大光強度を与える位置を求め、それぞれの最大強度位置から第2レンズ9を介して出射される光アセンブリ2からの光の出射方向を求め、メモリ25に格納する。なお、メモリ25には、例えば第2レンズ9の焦点距離などの光学パラメータや、第2レンズ9の中心と結合ファイバ14の端面16を結ぶ光軸の設計値等も格納されている。この設計値とは、光アセンブリ2からの出射方向の理想値(後述の目標方向Ltar)であり、結合ファイバ14の入射端面16の結合ファイバ14の光軸に対する傾斜角度と結合ファイバ14のコアの屈折率の関係で決定される。具体的には、光軸に対して傾斜している入射端面に対して設計値の角度をもって光を入射させると、その入射光の進行方向が結合ファイバの光軸と実質的に平行となる。すなわち、Z方向と光アセンブリ2からの出射方向とのなす角(後述のα)で示すと、この設計値は、いわゆる入射端面が光軸に対して傾斜していない場合には0°であり、入射端面16を光軸に対して6°(光軸に垂直な面に対して6°に形成した端面)に設定したカットファイバの場合には、この設計値は2.7°になる。
【0027】
演算部24は、結合ファイバ14の端面16の角度、および上記計測により求めた光アセンブリ2が発する出射光の実際の角度に基づいて第2レンズ9の設計値からのずれを求めることが可能であり、このずれ情報をメモリ25に格納し、また制御部26に出力する。制御部26が、このずれを補償する移動量を第2レンズ9に与えた後、再度上記光アセンブリ2の出射方向の測定を反復することで、光アセンブリ2からの出射方向の理想値を満たす、LD10に対する第2レンズ9の位置を決めることができる。
【0028】
図3〜
図5はレンズ固定をさらに具体的に説明する模式図である。
図3に示すように、第2レンズ9を有したホルダ9a、9b、光アセンブリ2、受光装置21は、調芯装置30にセットされる。調芯装置30には、例えば、LD用ポジショナ32、レンズ用ポジショナ33、受光装置用ポジショナ34が作業台31上に設けられている。LD用ポジショナ32は、光アセンブリ2を保持している。
【0029】
レンズ用ポジショナ33は、X方向ステージ33x、Y方向ステージ33yを有し、第2レンズ9の外ホルダ9bを保持している。受光装置用ポジショナ34は、X方向ステージ34x、Y方向ステージ34yおよびZ方向ステージ34zを有し、受光装置21を保持している。そして、
図4に示すように、演算部24は、第2レンズ9と受光装置21とを結んだ方向(例えばZ方向)に垂直な第1の測定平面(第1の仮想面)P1および第2の測定平面(第2の仮想面)P2それぞれおいて、LD10と受光装置21との結合効率が最大になる、測定平面上の受光装置21の位置M
1(x
1、y
1、z
1)、M
2(x
2、y
2、z
2)を決定し、当該2点を結ぶ直線の傾きから、光アセンブリ2が出射するLD光の出射方向を求めている。
【0030】
具体的には、受光装置用ポジショナ34は、Z方向ステージ34zを調整して受光装置21のZ位置を測定平面P1(z=z
1)に設定する。レンズ用ポジショナ33は、外ホルダ9bを光アセンブリ2上にセットする。その状態で、LD10に実際に電流を供給しつつ、受光装置用ポジショナ34のX方向ステージ34xを、例えばX方向に平行にスライドさせてMMF22で受光するLD光の強度を検知する。演算部24は受光強度が極大となる受光装置のX位置x
1を決定する。ついで、受光装置用ポジショナ34のY方向ステージ34yをこのX位置x
1を中心にスライドさせて、受光強度が極大となる位置y
1を決定する。この様にして、測定平面P1における最大受光強度を与える位置(x
1、y
1)を決定し、演算部24に伝える。
【0031】
次いで、受光装置用ポジショナ34のZ位置を第2の測定平面P2(z=z
2)にセットする。測定平面P1における操作と同様に、X方向、Y方向に受光装置用ポジショナ34のそれぞれのステージ34x、34yを移動させて最大光強度を与える位置(x
2、y
2)を特定し、当該座標を演算部24に伝える。
ここで、一実施の形態に係る調芯装置30の特徴は、当該装置が光検知機構としてMMF22を備えている点である。MMF22はその等価的な受光面積を広くすることができるので、X、Y方向ステージの微小移動に合わせて受光素子23による光強度は連続的に、かつ、ゆるやかに変化する。さらに、MMF22の端面22aがレンズ9の焦点位置にない場合であっても、入射光強度が極端に低下することはない。したがって、それぞれレンズ9の焦点距離とは異なる距離の仮想面内であっても、当該面内での最大受光強度を与える位置の特定が容易になる。MMF22に替えて単一モードファイバ(SMF)を採用した場合には、その等価的な受光面積が限られるため、有意な受光強度を与える受光装置21の位置的範囲が限られてしまう。また、受光装置21の微小な移動に対して受光強度が急激に変化するため、最大受光強度を与える位置の決定が困難になる。
【0032】
上記光出射方向の決定においては、第1、第2の測定平面それぞれにおいて、受光装置21のXY方向の移動を各一回で終了させている。すなわち、まずX方向(第1の方向)に受光装置21をスライドさせて受光強度の極大値を与える位置(第1の仮位置)を決定し、当該X位置(x
1)について受光装置21をY方向(第2の方向)にスライドさせて、受光強度の極大値を与える位置(y
1:第2の仮位置)を決定した。この十字調芯により、高精度の位置決めが可能になる。
なお、Y位置(y
1)決定後、再度当該Y位置(y
1)についてX方向に受光装置21をスライドさせて最大受光強度を与える修正X位置(例えばx
1’)を探索し、さらにこの修正X位置(x
1’)についての修正Y位置(例えばy
1’)、という様に、修正位置(x
1’、y
1’)での光強度と前回位置での光強度との差が実質的に無視できるまでこの操作を繰り返して、最大受光強度を与える位置を決定してもよい。このように、上記の十字調芯に次いで、直前に決めた位置から十字状の位置合わせを繰り返し、収束した位置を決める手法によれば、十字調芯の場合に比べてより一層高精度の位置を得ることができる。
【0033】
演算部24は、この様にして得られた二つの点、M
1(x
1、y
1、z
1)、M
2(x
2、y
2、z
2)の座標をもとに、光アセンブリ2から出射されるLD光の出射方向、およびその角度を算出する。ここで、現在の出射角度を求める際に、測定の結果得られた二つの点を直線で単純に結ぶことにより当該角度を決定することも可能であるし、光アセンブリ2の光出射位置を原点(0、0、0、)とし、測定点2点を合わせたて3点の近似直線により方向、傾きを決定することもできる。さらに、ここで求める近似直線が必ず原点(0、0、0)を通る仮定を置き、残る2点M
1(x
1、y
1、z
1)、M
2(x
2、y
2、z
2)について近似直線とすることもできる。
【0034】
次いで、演算部24は光レセプタクル4、連結部3の各部品について、その設計値から決定される第2レンズ9からの光Ltarの出射角度、方向と、上記操作により求めた実際の光出射角度α、方向とを比較する(
図5)。実際に求めた値が設計値と所定の範囲内で一致していない場合には、その差から、第2レンズ9に対する位置補正量を算出し、この情報を、制御部26を介してレンズ用ポジショナ33に伝える。第2レンズ9の焦点距離をf、光出射方向の設計角度Ltarを(θtx, θty)、上記測定により決定された測定角度 を(θx, θy)とすると、光アセンブリ2に対する第2レンズ9の位置変更量Δx、Δyは次式で与えられる:
Δx=f×(tan(θx)−tan(θtx))
Δy=f×(tan(θy)−tan(θty))
そしてレンズ用ポジショナ33は、光アセンブリ2に対する第2レンズ9の位置を、制御部26から指示された値だけ外ホルダ9bを介してX方向、Y方向についてスライドさせる。ここで、第2レンズ9のZ方向の位置は、あくまで光アセンブリ2の端面を基準として移動させない。その後再び、受光装置用ポジショナ34を調整し、第2レンズ9に対するZ方向の位置二箇所において、最大受光強度を与える位置を探索し、第2レンズ9からの出射光についてその角度、方向を求める。以上の操作を、第2レンズ9の当該位置について、その出射光の角度、方向が設計値と所定の範囲で一致するまで繰り返す。
【0035】
上記のように、レンズの位置を決める際、マルチモードファイバとレンズとの相対位置について、レンズの光軸に対して垂直方向のうち第1の仮想面内と第2の仮想面内だけで調整すればよく、例えば光ファイバをレンズの光軸方向に沿って結合効率の最大値が得られるように細かく移動させずに済む。このため、レンズの位置を決める調芯作業を短時間で済ませることができる。
また、上記の調芯手法を用いれば、調芯トレランス(ずれ)を伴いやすい二レンズ系モジュールの場合にも、調芯作業を短時間で済ませることができる。
【0036】
以上の操作では、光アセンブリ2および第2レンズ9を固定し、受光装置21を3軸方向にスライドさせて最大受光強度を与える位置を見出していた。この場合、受光装置21を移動させる構造を用いて容易に実現可能であるが、受光装置用ポジショナ34について、三軸のステージ34x〜34zが必要となり、機構が複雑となるばかりでなく、XY操作時にZ軸方向の設定距離が移動する可能性も無視できない。
図6は別の調芯装置30Aを模式的に示した図である。調芯装置30Aは、受光装置用ポジショナ34AとLD用ポジショナ32Aの構成において、先に説明した調芯装置30と異なる。すなわち、受光装置用ポジショナ34AはZ軸ステージ34zのみを備えており、一方、LD用ポジショナ32Aは、X方向ステージ32xおよびY方向ステージ32yを備えている。
【0037】
この調芯装置30Aにおいて、第2レンズ9の光出射方向を決定する作業は、等価的に第1の実施の形態と同様である。すなわち、第2レンズ9と受光装置21との相対位置を、そのZ軸方向の間隔を異とする二箇所(P
1、P
2)においてXY調芯を行い、それぞれ、最大受光強度を与える位置を決定し、この二つの位置(第2レンズ9の出射位置を含めると三つの位置)から、第2レンズ9からの光出射方向、角度を見積もる。第一の調芯装置と異なるのは、この第二の調芯装置においては、XY調芯を受光装置ポジショナ34ではなく、LD用ポジショナ32AのX方向ステージ32xおよびY方向ステージ32yで行っている点にある。
【0038】
この場合、光アセンブリを移動させる構造を用いて容易に実現可能であり、LD用ポジショナ32AをX、Y方向にスライドさせて、受光装置21において最大受光強度を与えるLD用ポジショナ32Aの位置を決定することができる。そして、Z軸方向についてその距離を異とする二箇所において、LD用ポジショナ32Aをスライドさせることで、第2レンズ9から出射される光の方向、角度を上記LD用ポジショナ32Aのスライドにより決定された二つの点、例えばM
1’(x
1、y
1、z
1)、M
2’(x
2、y
2、z
2)から決定することが可能となる。さらに、この調芯装置30Aにおいては、原点(0,0,0)を受光装置21の光入射点に仮定することで、第一の形態において説明した三点による、第2レンズ9の光出射方向を決定することができる。
【0039】
以上の操作によりその光出射方向が設計値と所定範囲で一致する様に調整された第2レンズ9について、その外ホルダ9aと内ホルダ9b、および光アセンブリ2aとを、例えばYAG溶接により固定する。
【0040】
図7は、ファイバ固定を説明する図である。ファイバの固定では、受光装置21に替えて、光レセプタクル4を受光装置ポジショナ34Aにセットする。光レセプタクル4にはダミーファイバ4aを係合し、ダミーファイバ4aの一端から出射される光の強度を検知することにより、光レセプタクル4と光アセンブリ2を調芯する。第2レンズホルダ9a、9bにジョイントスリーブ3aを被せた後、Z方向ポジショナ34zを調整して光レセプタクル4をジョイントスリーブ3aの端面13に接触させる。そして、光レセプタクル4に対する光アセンブリ2とジョイントスリーブ3aの集合体との相対位置を、例えば第2の調芯装置30Cに係る実施の形態ではLD用ポジショナ32AのX、Y方向ステージ32x、32yをスライドさせることにより調整する。すなわち、光レセプタクル4内の結合ファイバ14の端面位置をジョイントスリーブ3aの端面13上でスライドさせることで、第2レンズ9の光出射方向に整合させる。
【0041】
さらに、光レセプタクル4と、光アセンブリ2およびジョイントスリーブ3aの集合体とのZ軸方向の距離を調整するために、ジョイントスリーブ3aと第2レンズ9用のホルダ9bとの重ね代を調整する。第2レンズ9用の外ホルダ9bのジョイントスリーブ3aの内孔への挿入深さを調整することで、Z軸方向の間隔を調整することができる。具体的には、ジョイントスリーブ3aは外ホルダ9aに被せてあるので、LD用ポジショナ32Aをスライドさせるとジョイントスリーブ3aも光アセンブリ2aに連動してスライドする。ジョイントスリーブ3aの内孔と外ホルダ9aの外周との隙間分だけ両者はあそびがあるが調芯作業には問題とならない。他方、光レセプタクルはポジショナ34Aに保持されている。ポジショナ34Aの先端チャック34aは磁力を備える部材を含んでおり、磁気力によりステンレス製のジョイントスリーブ3a引き付ける機能を有している。
【0042】
ポジショナ34AのZ方向ステージ34zを上下方向にスライドすると、光レセプタクル4も上下方向にスライドする。この時、磁気力によりジョイントスリーブ3aが光レセプタクル4を介して先端チャック34aに引き寄せられているので、ポジショナ34Aの上下スライドに合わせてジョイントスリーブ3aも、外ホルダ9aとの重なり度を変更しつつ上下方向にスライドする。ジョイントスリーブ3aと外ホルダ9bの重なり度を調整するために、ポジショナ34Aがジョイントスリーブ3aを保持していたとすると、光レセプタクル4と光アセンブリ2と第2レンズ9の中間組立体の間のXY調芯の際に、ポジショナ34AもXY方向にスライドさせる複雑な機構が必要となる。例えば、ポジショナ34AもLD用ポジショナ32A上に搭載する等の機構が必要となってしまう。
図7に示す磁気力によるジョイントスリーブ3aの間接保持機構を採用することにより、一般的なポジショナ34Aを用いることができる。
【0043】
これらXY方向の調芯と、Z方向の調芯を繰り返して、光アセンブリ2、ジョイントスリーブ3a、および光レセプタクル4の光学的位置を決定する。3部材の調芯後、光アセンブリ2とジョイントスリーブ3aとは、ジョイントスリーブ3aの外周からの貫通溶接により外ホルダ9bが固定され、一方、ジョイントスリーブ3aと光レセプタクル4とは、スタブホルダ17の端面に形成されたフランジ部をジョイントスリーブ3aの端面13に隅溶接することで固定される。
【0044】
ところで、上述の一連の操作において、レンズ用ポジショナを不要することが可能である。
図8の受光装置用ポジショナ34Bの先端には、キャップ40が取り付けられている。キャップ40は、レンズホルダ9bを囲むことができ、X、Y方向ステージ34x、34yで受光装置用ポジショナ34BをXY方向に移動させることで、キャップ40の内面で外ホルダ9bの外周を押し付け、その結果、外ホルダ9bを光アセンブリ2に対して微小移動させることができる。第2レンズ9を、外ホルダ9bを介して微小移動させる工程は、既に演算部24によりその移動方向、距離が見積もられている状態であり、受光装置用ポジショナ34B、あるいは、受光装置21の位置を所定位置に保持しておく必要のない工程となっている。
【0045】
この調芯装置30Bでは第2レンズ用ポジショナ33を備える必要がなく、装置の構成を簡略化することが可能となる。さらに、
図8に示す調芯装置では、受光装置用ポジショナ34BにX、Y方向ステージ34x、34yを有する第1の形態をもとにした例を示しているが、第2の例を基にした構造も可能である。すなわち、受光装置用ポジショナ34BはZ方向ステージのみを備え、一方、LD用ポジショナ32BにX、Y方向ステージ32x、32yを備える形態においても、まったく同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、上記光モジュール1は、光レセプタクル4に外部光コネクタが係合する、いわゆる光レセプタクル型光モジュールを中心に説明した。しかしながら、本実施の形態に係る光モジュールの製法は、光レセプタクル型に限定されることはなく、スリーブ18を有していなく、スタブ15内の結合ファイバ14がそのまま外部に引き出されてピグテールファイバとなる、いわゆる、ピグテールファイバ型光モジュールに対してもなんらの変更を加えることなく適用可能である。
【0047】
図9は更に別の形態に係る光モジュール1Aの一部断面形状を示す図である。この光モジュール1Aは、
図1に示す光モジュール1が有する光アセンブリ2に加えて別の光アセンブリ50、および
図9には示していないが第3の光アセンブリを有する、所謂、トライプレクサ(Tri-Plexer)の構成を有する。さらに、光アセンブリ4と連結部3との間に光機能部5を有する。光アセンブリ50および第3の光アセンブリは光機能部5に取り付けられている。光機能部5の本体12中には第1波長選択フィルタ12a、第3レンズ11、第3レンズホルダ11a、光アイソレータ12c、および第2の波長選択フィルタ12bを有する。第3レンズ11および光アイソレータ12cは光機能部5の本体12に固定されており、光機能部はその調芯機構を有していない。
【0048】
光アセンブリ2、50は発光アセンブリでありそれぞれ発光素子としてLDを含み、当該LDは互いに異なる波長の信号光を出射する。光アセンブリ2に搭載されているLD10が出射する光は、第1、第2のレンズを通過して結合ファイバ14に結合する。一方、他の光アセンブリ50が発する信号光は、光アセンブリ50の光出射端に備えられているレンズを通過して第1の波長選択フィルタ12aによりその光軸が90°曲げられた後第3レンズ、光アイソレータ12cを通過して結合ファイバ14端面に結合する。第1の波長選択フィルタは、光アセンブリ2が出射する光を透過し、第2の光アセンブリ50が出射する光を反射する。
【0049】
一方、図示されていない第3の光アセンブリは内部に受光素子を含む受光アセンブリであり、結合ファイバ14が提供する外部光信号を受信する。すなわち、外部光コネクタと光結合している結合ファイバ14の端面から出射した光は第2の波長選択フィルタにより反射されて第3の光アセンブリに入射する。第2の波長選択フィルタは、二つの光アセンブリ2、50の出射する光を透過し、結合ファイバ14が提供する光を選択的に反射する。ここで、アイソレータ12cは、前者の二つの光を光機能部5から結合ファイバ14に向けて透過し、結合ファイバ14から光機能部5に向かう光信号を遮断する機能を有する。
【0050】
図9の光結合系について説明する。LD10が出射する光は発散光である。第1レンズ7によりこの発散光を実質的に平行光(コリメート光に変換する)。このコリメート光を結合ファイバ14の端面上に集光する場合、本モジュール1Aでは光機能部5が結合部3と光レセプタクル4の間に挿入されているので、両者の距離が長くなってしまう。結合ファイバ14端面に所定の角度で入射させようとすると、結合部3と光レセプタクル4の光軸のオフセット量(軸ずれ量)が大きくなってしまう。これを克服するために、光モジュールAでは第3レンズ11を導入した。
【0051】
すなわち、第3レンズ11の一方の焦点に対して結合ファイバ14端面を位置させ、他方の焦点に対して第2レンズ9の焦点が一致する様に第2レンズ9を調芯する。そうすると、第3レンズの他方の焦点を実質的に結合ファイバ14の端面とみなすことができることになり、第2レンズ9の位置を、上記説明に従って光アセンブリ2に対して位置決めすることで、光アセンブリ2、第2レンズ9、第3レンズ11、結合ファイバ14の調芯を行うことができる。
【0052】
一方、第2の光アセンブリ50については、その端面にレンズを有しており、当該レンズによりその出射光を実質的にコリメート光に変更する。このコリメート光は第1の波長選択フィルタ12aにより反射されて第34レンズ11に入射した後、第3レンズ11により結合ファイバ14端面に集光される。実質的なコリメート光がレンズに入射する場合、その出射光は当該レンズの焦点に集光されるからである。この様に、本光モジュール1Aでは、第1の光アセンブリ2に対して3レンズ系でその出射光を光レセプタクル4に結合させ、第2の光アセンブリ50に対しては2レンズ系で結合させている。その場合であっても、本発明に係る調芯方法、具体的には、光アセンブリ2の出射する光の進行方向を、MMFを用いて短時間で決定する方法を適用することができる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。