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特開2015-166399ロピニロール含有貼付剤及びその包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-166399(P2015-166399A)
(43)【公開日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ロピニロール含有貼付剤及びその包装体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20150828BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20150828BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150828BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150828BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20150828BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20150828BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20150828BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
   A61K31/4045
   A61K9/70 401
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/16
   A61K47/34
   A61P25/14
   A61P25/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-133512(P2015-133512)
(22)【出願日】2015年7月2日
(62)【分割の表示】特願2013-517996(P2013-517996)の分割
【原出願日】2012年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-122531(P2011-122531)
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 祐香
(72)【発明者】
【氏名】山口 登志郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD30
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD45
4C076DD52
4C076EE04A
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA11
4C086ZA02
(57)【要約】
【課題】 ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、十分な粘着性を有するロピニロール含有貼付剤を提供すること。
【解決手段】 粘着剤層と支持体層とを備え、前記粘着剤層がロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有するロピニロール含有貼付剤であって、前記粘着剤層における前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した含有量が、下記2条件:
前記粘着剤層の全質量に対して5〜13.2質量%であること、
前記粘着剤層の単位面積当たり0.12〜2.7mg/cmであること、
を満たし、且つ、
前記粘着剤層の単位面積当たりの質量が50〜200g/mであり、
前記粘着剤層が、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール酸付加物に換算した酸塩基当量に対して0.5〜1当量のアルカリ金属水酸化物をさらに含有する、
ロピニロール含有貼付剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と支持体層とを備え、前記粘着剤層がロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有するロピニロール含有貼付剤であって、前記粘着剤層における前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した含有量が、下記2条件:
前記粘着剤層の全質量に対して5〜13.2質量%であること、
前記粘着剤層の単位面積当たり0.12〜2.7mg/cmであること、
を満たし、且つ、
前記粘着剤層の単位面積当たりの質量が50〜200g/mであり、
前記粘着剤層が、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール酸付加物に換算した酸塩基当量に対して0.5〜1当量のアルカリ金属水酸化物をさらに含有する、
ロピニロール含有貼付剤。
【請求項2】
貼付面の面積が0.5〜100cmである請求項1に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項3】
パーキンソン病の治療に用いられ、貼付面の面積が3〜100cmであり、ロピニロールの血漿中濃度が500〜18000pg/mlとなるように投与される請求項1又は2に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項4】
レストレスレッグ症候群の治療に用いられ、貼付面の面積が0.5〜30cmであり、ロピニロールの血漿中濃度が125〜4500pg/mlとなるように投与される請求項1又は2に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層における前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した含有量が、前記粘着剤層の単位面積当たり0.88〜1.32mg/cmである請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項6】
前記粘着剤層がさらに、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ジメチルイソソルビドからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物を、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して5〜50質量部含有する請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項7】
前記粘着剤層がさらに、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、グリセリンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ラウリン酸ジエタノールアミドからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物を、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して10〜150質量部含有する請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項8】
前記粘着剤層が、前記粘着剤層の全質量に対して15〜35質量%のゴム系粘着剤をさらに含有する請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項9】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、前記粘着剤層が前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算したモル数1モルに対して0.5〜1.0モルの水酸化ナトリウムを含有する請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のロピニロール含有貼付剤が脱酸素剤と共に包装袋内に密封されている包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロピニロール含有貼付剤及びその包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーキンソン病の疾患治療としては、その治療製剤として知られているL−ドーパ(L−Dopa)の投与によってドーパミンを補充するL−Dopa療法が知られている。しかしながら、L−Dopa療法は、長期間の継続投与が必要であったり、長期間の継続投与に伴って次第に薬物の効果が低下したり、症状の日内変動が激しくなるといった問題を有していた。そこで、このようなL−Dopa療法における問題を解決する薬物としてロピニロールが開発され、近年では、パーキンソン病やレストレスレッグ症候群等の疾患治療を目的として、ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する製剤に関して様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、胃腸における副作用を回避できる外用製剤としては、特表2009−518376号公報(特許文献1)及び特表2007−516265号公報(特許文献2)において、ロピニロールを含有する局所投与用の組成物が開示されている。さらに、副作用が生じた場合に取り外しが容易であったり、薬物の投与量がより調整しやすいといった観点から、経皮吸収製剤に関する検討も試みられており、例えば、特表2001−518058号公報(特許文献3)及び特表平11−506462号公報(特許文献4)には、ロピニロールを含有する経皮吸収製剤として、支持体層とロピニロールを含有する粘着剤層とを備える貼付剤が開示されている。しかしながら、上記特許文献3〜4に記載されている貼付剤においては、ロピニロールの皮膚透過性が未だ十分ではなく、ロピニロールの血漿中濃度を十分に高い水準に維持することが困難であるという問題を有していた。
【0004】
また、通常、薬物はその取り扱い性や安定性の面から酸付加塩の形態で市場に出回っているが、薬物の酸付加塩をそのまま経皮吸収製剤等に用いた場合には薬物の皮膚透過性が低くなる傾向にあり、皮膚透過性の面では薬物の遊離体を用いることが好ましいことが知られている。例えば、国際公開第2009/107478号(特許文献5)においては、ロピニロールの酸付加塩と該酸付加塩の等倍モル以下の金属イオン含有脱塩剤との反応により生じせしめたロピニロールの遊離体及び金属塩と、水酸基及びカルボキシル基を有していない粘着基剤とを粘着剤層に含有する貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−518376号公報
【特許文献2】特表2007−516265号公報
【特許文献3】特表2001−518058号公報
【特許文献4】特表平11−506462号公報
【特許文献5】国際公開第2009/107478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、パーキンソン病やレストレスレッグ症候群の疾患治療に効果を奏する経皮吸収製剤を開発することを目的として、上記特許文献5に記載されているように、ロピニロール酸付加塩を製造中もしくは製剤中において脱塩せしめた経皮吸収製剤の製造を試みたところ、粘着剤層におけるロピニロール酸付加塩の含有量が同文献の実施例に記載されているように5質量%の場合(ロピニロール遊離体に換算して4.4質量%)には、ロピニロールの皮膚透過量が未だ十分ではないという問題があることを見出した。また、一方で、ロピニロールの皮膚透過量が十分な量になるように粘着剤層中のロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量を調整し、単にその濃度を高くすると、貼付剤の粘着特性を維持することが困難になり、貼付剤の粘着性が低下すること、並びに、その原因が、驚くべきことに、ロピニロール遊離体は室温で固体であるにもかかわらず、粘着剤層に含有される粘着基剤を可塑化させ、粘着剤層の凝集力を低下させる作用を有することにあることを本発明者らは見出した。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、十分な粘着性を有するロピニロール含有貼付剤及びその包装体であって、ロピニロールの経時安定性に優れた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層と支持体層とを備え、前記粘着剤層がロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有するロピニロール含有貼付剤において、前記粘着剤層におけるロピニロール遊離体の濃度を特定の範囲に保ったまま、前記粘着剤層の単位面積当たりに含有される前記ロピニロール遊離体の絶対量を特定の範囲とすることにより、優れたロピニロールの皮膚透過性が発揮されると共に十分な粘着性が達成されることを見出した。また、本発明者らは、このようなロピニロール含有貼付剤を脱酸素剤と共に密封して保存することにより、ロピニロールの経時安定性がより向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のロピニロール含有貼付剤は、粘着剤層と支持体層とを備え、前記粘着剤層がロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有するロピニロール含有貼付剤であって、前記粘着剤層における前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した含有量が、下記2条件:
前記粘着剤層の全質量に対して5〜13.2質量%であること、
前記粘着剤層の単位面積当たり0.12〜2.7mg/cmであること、
を満たし、且つ、
前記粘着剤層の単位面積当たりの質量が50〜200g/mであり、
前記粘着剤層が、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール酸付加物に換算した酸塩基当量に対して0.5〜1当量のアルカリ金属水酸化物をさらに含有するものである。
【0010】
さらに、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、貼付面の面積が0.5〜100cmであることが好ましい。
【0011】
また、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、パーキンソン病の治療に用いられ、貼付面の面積が3〜100cmであり、ロピニロールの血漿中濃度が500〜18000pg/mlとなるように投与されることが好ましい。さらに、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、レストレスレッグ症候群の治療に用いられ、貼付面の面積が0.5〜30cmであり、ロピニロールの血漿中濃度が125〜4500pg/mlとなるように投与されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、前記粘着剤層における前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した含有量が、前記粘着剤層の単位面積当たり0.88〜1.32mg/cmであることが好ましい。また、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、前記粘着剤層がさらに、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ジメチルイソソルビドからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物を、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して5〜50質量部含有することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、前記粘着剤層がさらに、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、グリセリンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ラウリン酸ジエタノールアミドからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物を、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して10〜150質量部含有することがより好ましい。
【0014】
また、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、前記粘着剤層が、前記粘着剤層の全質量に対して15〜35質量%のゴム系粘着剤をさらに含有することが好ましく、さらに、前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、前記粘着剤層が前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算したモル数1モルに対して0.5〜1.0モルの水酸化ナトリウムを含有することが好ましい。
【0015】
本発明の包装体は、前記本発明のロピニロール含有貼付剤が脱酸素剤と共に包装袋内に密封されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、十分な粘着性を有するロピニロール含有貼付剤、及びその包装体であってロピニロールの経時安定性に優れた包装体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のロピニロール含有貼付剤の好適な一実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。
図2】実施例1〜2及び比較例1〜2において得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を示すグラフである。
図3】実施例3〜5において得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を示すグラフである。
図4】実施例6及び比較例3において得られた製剤について血漿中ロピニロール濃度測定試験を行った結果を示すグラフである。
図5】実施例6及び比較例3において得られた製剤について血漿中ロピニロール濃度の反復投与シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明のロピニロール含有貼付剤の好適な一実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。図1において、貼付剤1は、支持体層2と、支持体層2上に積層された粘着剤層3と、粘着剤層3上に貼着された剥離シート4とを備えるものである。本実施形態においては、貼付剤1を使用する際には剥離シート4をはがして使用する。なお、本発明のロピニロール含有貼付剤は図1に示す実施形態に限定されるものではない。例えば、粘着剤層は2層以上積層されていてもよく、支持体層2の一方の面だけでなく両方の面に積層されていてもよい。粘着剤層が複数存在する場合には、そのうちの少なくとも一つが本発明に係る粘着剤層3であればよい。
【0020】
支持体層2の材料としては、特に制限されず、通常貼付剤の支持体層として使用できるものを適宜用いることができ、伸縮性であっても非伸縮性であってもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂や、紙材が挙げられる。支持体層2の形態としては、フィルム、シート、及びこれらの積層体;多孔質膜;発泡体;織布及び不織布が挙げられる。
【0021】
剥離シート4の材料としては、特に制限されず、通常貼付剤の剥離シートとして使用できるものを適宜用いることができ、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙、又はこれらの積層体からなるフィルムが挙げられ、このようなフィルムとしては、容易に剥離出来るようにシリコーンコート等の離型処理が施されているものが好ましい。
【0022】
粘着剤層3は、少なくとも粘着基剤と、ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩とを含有する。
【0023】
前記粘着基剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、凝集力が強く、ロピニロール遊離体による粘着基剤の可塑化作用が抑制されるという観点から、前記粘着基剤のうちの少なくともいずれか1種が、ゴム系粘着剤であることが好ましい。前記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、合成ゴムが挙げられ、粘着剤層3中におけるロピニロールの分解生成物(ロピニロール類縁物質)の発生を十分に抑制することができ、ロピニロールの経時安定性がより向上するという観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と略記する)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、「PIB」と略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」と略記する)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、「SBR」と略記する)、ポリブテン等の水酸基及びカルボキシル基を有していない合成ゴムからなる群から選択される少なくともいずれか1種であることがより好ましい。また、これらのゴム系粘着剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、好ましい凝集力を有し、且つ、貼付剤において好ましい粘着力が発揮され、特に水酸化ナトリウムと組み合わせた場合にロピニロールの経時安定性がより向上するという観点から、SISを単独で用いるか、又は、SISとPIBとを質量比(SISの質量:PIBの質量)が9:1〜1:1の範囲となるように組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0024】
前記ゴム系粘着剤の含有量としては、粘着剤層3の全質量に対し、15〜35質量%であることが好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、ロピニロール遊離体を高濃度で含有する本発明の貼付剤において、粘着剤層3に十分な凝集力を持たせることが困難になり、貼付剤を皮膚に貼付して剥離した後に皮膚に粘着基剤が残る傾向にある。他方、前記含有量が前記上限を超える場合には、粘着剤層3が硬くなりすぎて貼付剤の粘着性が低下する傾向にある。
【0025】
前記アクリル系粘着剤を用いる場合、前記アクリル系粘着剤としては、「医薬品添加物辞典2000(日本医薬品添加剤協会編集、2000年4月28日第1刷発行)」に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子等が挙げられ、これらの中でも、市販されているDURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ナショナルスターチアンドケミカル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会社製)等を用いることが好ましい。
【0026】
前記シリコーン系粘着剤を用いる場合、前記シリコーン系粘着剤としては、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーを用いることが好ましい。前記オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーが水酸基(例えばシラノール基)を有している場合は、その水酸基の少なくとも一部がトリメチルシリル基によってキャッピングされていることがより好ましい。また、前記オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーは粘着性を有していることがさらに好ましい。なお、前記トリメチルシリル基によるキャッピングとしては、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーの末端シラノール基を、トリメチルシリル基によりエンドキャッピングする態様が含まれる。このようなオルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではMQと表されるポリマー等)、ポリメチルビニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではVMQと表されるポリマー等)、ポリメチルフェニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではPVMQと表されるポリマー等)等が挙げられる。
【0027】
前記アクリル系粘着剤及び/又は前記シリコーン系粘着剤を用いる場合、その合計含有量としては、粘着剤層3の形成性及び有効成分の皮膚透過性が優れるという観点から、粘着剤層3の全質量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。
【0028】
粘着剤層3に含有されるロピニロールとしては、遊離体であってもその薬学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてロピニロールの薬学的に許容される塩が脱塩されて遊離体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上が混合されていてもよい。このようなロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の粘着剤層3における含有量としては、ロピニロール遊離体に換算した含有量が、粘着剤層3の全質量に対して5〜13.2質量%であることが必要である。粘着剤層3の全質量に対する含有量が前記下限未満である場合には、ロピニロールの皮膚透過量が少なくなり、さらに、十分な量の皮膚透過量を長時間維持することができず、ロピニロールの血漿中濃度を有効な範囲に維持することができない。他方、前記上限を超える場合には、ロピニロール遊離体による粘着基剤を可塑化させる作用が強くなるめに粘着剤層3の凝集力が低下して貼付剤の粘着性が低下し、さらに、ロピニロールの経時安定性が低下してロピニロール類縁物質が発生しやすくなる。
【0029】
さらに、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の粘着剤層3における含有量としては、ロピニロール遊離体に換算した含有量が、粘着剤層3の単位面積当たり0.12〜2.7mg/cmであることが必要である。粘着剤層3の単位面積当たりの含有量が前記下限未満である場合には、ロピニロールの皮膚透過量が少なくなり、さらに、十分な量の皮膚透過量を長時間維持することができず、ロピニロールの血漿中濃度を有効な範囲に維持することができない。他方、前記上限を超える場合には、ロピニロール遊離体による粘着基剤を可塑化させる作用が強くなるめ、粘着剤層3の凝集力が低下して貼付剤の粘着性が低下する。
【0030】
ロピニロールの血漿中濃度を有効な範囲に維持するためには、粘着剤層におけるロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量を所定の量以上にする必要があるが、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の濃度を単に増加させるだけでは、粘着剤層の凝集力が低下することを本発明者らは見出した。本発明のロピニロール含有貼付剤においては、粘着剤層3の全質量に対する含有量、及び粘着剤層3の単位面積当たりの含有量(絶対量)がいずれも前記範囲内にあることにより、ロピニロールの皮膚透過量に優れ、ロピニロールの血漿中濃度を有効な範囲に維持することができ、且つ、十分な粘着性を有することができる。なお、粘着剤層3の全質量に対する含有量、及び粘着剤層3の単位面積当たりの含有量(絶対量)をいずれも満たすようにする方法としては、例えば、粘着剤層3の厚さを調整する方法が挙げられる。
【0031】
前記ロピニロールの薬学的に許容される塩としては、ロピニロール酸付加物が好ましい。前記酸としては、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸等の単塩基酸;フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等の多塩基酸が挙げられる。
【0032】
また、このようなロピニロール酸付加物を本発明の貼付剤の原材料として粘着剤層3中に含有せしめる場合には、本発明に係る粘着剤層3としては、金属イオン含有脱塩剤(中和剤)をさらに含有していることが好ましい。前記金属イオン含有脱塩剤と前記ロピニロール酸付加物とを製造時に粘着剤層3に含有せしめることにより、製造過程及び/又は製造された製剤中において前記ロピニロール酸付加物の全部又は一部が脱塩されて遊離塩基の状態のロピニロール遊離体が得られ、結果的に、製剤を貼付する際に、より組織吸収性が高いロピニロール遊離体を粘着剤層3中に存在せしめることができる。前記金属イオン含有脱塩剤としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらの中でも、製造時に取り扱いが容易であり、且つ、ゴム系粘着剤(より好ましくはSIS)と組み合わせた場合にロピニロールの経時安定性がより向上するという観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0033】
前記金属イオン含有脱塩剤を含有せしめる場合、その添加は、製造工程において1回で行ってもよく、数回に分けて行ってもよく、1種を単独で添加しても2種以上を組み合わせて添加してもよい。また、その含有量は、過剰な金属イオン含有脱塩剤によるロピニロールの分解を引き起こさないようにするという観点から、前記ロピニロール酸付加物の酸塩基当量に対して0.5〜4当量となる量であることが好ましい。
【0034】
また、前記ロピニロール酸付加物の酸塩基当量の等倍を超える当量の金属イオン含有脱塩剤を添加するとロピニロールの経時安定性が低下してロピニロール類縁物質が多く生成し、粘着剤層の着色が生じる傾向があり、他方、等倍以下の当量にすると、特にゴム系粘着剤(より好ましくはSIS)と組み合わせた場合に、ロピニロール類縁物質の生成が少なくなり、粘着剤層の着色も生じなくなる傾向にあるという観点から、前記金属イオン含有脱塩剤の含有量は、前記ロピニロール酸付加物の酸塩基当量に対して0.5〜1当量となる量であることがより好ましく、0.6〜1当量となる量であることがさらに好ましい。すなわち、本発明に係る粘着剤層3としては、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算したモル数1モルに対して0.5〜1.0モル、さらに好ましくは0.6〜1.0モルの水酸化ナトリウムをさらに含有することが好ましい。
【0035】
前記ロピニロール酸付加物の脱塩(中和)反応においては、前記ロピニロール酸付加物と、該酸付加物の酸塩基当量の等倍以下の当量の前記金属イオン含有脱塩剤とを反応させることにより、前記ロピニロール酸付加物の酸塩基当量の等倍モル以下のロピニロール遊離体及び金属塩が得られる。したがって、本発明に係る粘着剤層3としては、このような金属塩をさらに含有していてもよい。前記金属塩としては、上記脱塩(中和)反応により生じたものであれば特に制限されず、前記ロピニロール酸付加塩とそれを脱塩するための前記金属イオン含有脱塩剤(中和剤)との組み合わせにより決定されるが、金属塩化物、金属臭化物、金属よう化物、有機酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、臭化ナトリウム、コハク酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
【0036】
また、上記のような中和反応によって生じた金属塩は、製造工程で使用した水等の極性溶媒が粘着剤層3中に極微量に残留している場合には、生成後暫くすると結晶として凝集・成長する傾向にある。したがって、このような金属塩の結晶の凝集・成長を抑制、又は結晶を均一分散させるために、本発明に係る粘着剤層3としては、吸着剤をさらに含有していることがより好ましい。
【0037】
前記吸着剤としては、吸湿性を有する無機及び/又は有機の物質であればよく、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されないが、一般的に「医薬品添加物辞典2000(日本医薬品添加剤協会編集、2000年4月28日第1刷発行)」に挙げられている添加物のうち、吸湿性、防湿性、吸着性を有すると記載されている無機物質及び有機物質、並びに前記「医薬品添加物辞典2000」には記載されていないが吸湿性を有することが知られている、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、酸化亜鉛等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような吸着剤としては、タルク、カオリン、ベントナイト等の鉱物;フュームドシリカ(アエロジル(登録商標)等)、含水シリカ等のケイ素化合物;酸化亜鉛、乾燥水酸化アルミニウムゲル等の金属化合物;乳酸、酢酸等の弱酸;デキストリン等の糖;ポリビニルピロリドン、プロピレングリコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、クロスポビドン及びカルボキシビニルポリマー等の高分子ポリマーが挙げられる。
【0038】
前記吸着剤を含有せしめる場合、その含有量は、粘着剤層3の全質量に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、金属塩の結晶の凝集・成長を抑制し、結晶を均一に分散させる効果が十分に得られなくなる傾向にある。他方、前記含有量が前記上限を超える場合には、粘着剤層3の粘着力が低下して貼付が困難になる傾向にある。
【0039】
また、本発明の貼付剤においては、粘着剤層3が、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ジメチルイソソルビドからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物(以下、場合により化合物(A)という。)をさらに含有することが好ましく、これらの中でも、オクチルドデカノールをさらに含有することがより好ましい。本発明の貼付剤においては、高濃度のロピニロール遊離体を粘着剤層3中に含有せしめた場合には、粘着剤層3中にロピニロール遊離体由来の結晶が経時的に析出する場合があり、さらに、このようなロピニロール遊離体の結晶化は、前記化合物(A)(特にオクチルドデカノール)を粘着剤層3にさらに含有せしめることにより抑制することができるということを本発明者らが見出した。
【0040】
このような化合物(A)の含有量としては、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましく、10〜40質量部であることが特に好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、結晶の析出を十分に抑制できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、十分なロピニロールの皮膚透過性が維持できなくなる傾向にある。
【0041】
さらに、本発明の貼付剤においては、ロピニロールの皮膚透過性がより向上するという観点から、粘着剤層3が、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、グリセリンモノオレエート(GMO)、プロピレングリコールモノラウレート(PGML)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)、ラウリン酸ジエタノールアミド(LADA)からなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物(以下、場合により化合物(B)という。)をさらに含有することが好ましく、これらの中でも、パルミチン酸イソプロピルをさらに含有することが特に好ましい。本発明の貼付剤においては、前記化合物(A)(特にオクチルドデカノール)を粘着剤層3に含有せしめた場合には、ロピニロールの皮膚透過性が低下する場合があり、さらに、このような皮膚透過性の低下は、粘着剤層3に前記化合物(B)(特にパルミチン酸イソプロピル)をさらに含有せしめることにより抑制され、また、ロピニロールの皮膚透過量が極めて高い水準で長時間維持されるということを本発明者らが見出した。
【0042】
このような化合物(B)の含有量としては、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算した質量100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましく、15〜120質量部であることが特に好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、ロピニロールの皮膚透過性の向上効果を達成することが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えて前記化合物(B)を含有しても、それ以上の皮膚透過性の向上効果が得られないばかりか、前記化合物(B)が粘着剤層3から染み出して貼付剤の粘着力が低下する傾向にある。
【0043】
本発明においては、ロピニロール遊離体の結晶化が十分に抑制され、且つ、ロピニロールの皮膚透過性がより向上し、さらに、ロピニロールの皮膚透過量を極めて高い水準に長時間維持できるという観点から、粘着剤層3が、前記化合物(A)及び前記化合物(B)を含有することがさらに好ましく、前記オクチルドデカノール及び前記パルミチン酸イソプロピルを含有することが特に好ましい。前記化合物(A)と前記化合物(B)との混合比(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)としては、1/10〜1/2であることが好ましい。前記混合比が前記下限未満である場合には、ロピニロールの結晶の析出を十分に抑制できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ロピニロールの皮膚透過性が低下したり、粘着剤層3にブリードが発生する傾向にある。
【0044】
本発明の貼付剤としては、上記の組成物の他、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲において、粘着剤層3が、粘着付与剤、可塑剤、吸収促進剤、抗酸化剤、充填剤、保存剤、紫外線吸収剤等をさらに含有していてもよい。
【0045】
前記粘着付与剤としては、例えば、「エステルガム(商品名、荒川化学工業社製)」、「ハリエスター(商品名、ハリマ化成社製)」、「ペンタリン(商品名、イーストマンケミカル社製)」、「フォーラル(商品名、イーストマンケミカル社製)」等のロジン系樹脂;「YSレジン(商品名、ヤスハラケミカル社製)」、「ピコライト(商品名、ルースアンドディルワース社製)」等のテルペン系樹脂;「アルコン(商品名、荒川化学工業社製)」、「リガレッツ(商品名、イーストマンケミカル社製)」、「ピコラスチック(商品名、イーストマンケミカル社製)」、「エスコレッツ(商品名、エクソン社製)」、「ウイングタック(商品名、グッドイヤー社製)」、「クイントン(商品名、日本ゼオン社製)」等の石油樹脂;フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等の脂環族炭化水素樹脂が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような粘着付与剤を粘着剤層3に含有せしめる場合、その含有量としては、貼付剤の十分な粘着力及び剥離時の局所刺激性を考慮すると、粘着剤層3の全質量に対し、10〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
前記可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン、スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記可塑剤としては、粘着剤層3に好ましい粘着力を付与することができるという観点から、流動パラフィン、液状ポリブテンであることが好ましい。このような可塑剤を粘着剤層3に含有せしめる場合、その含有量としては、貼付剤としての十分な粘着力の維持を考慮して、粘着剤層3の全質量に対し、5〜60質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
前記吸収促進剤としては、前記化合物(B)を除く、イソステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;カプリン酸等の脂肪酸;脂肪酸誘導体;ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような吸収促進剤を粘着剤層3に含有せしめる場合、その含有量としては、製剤としての組織への有効成分の充分な透過性及び局所刺激牲等を考慮すると、粘着剤層3の全質量に対して、前記化合物(B)の含有量を除いて、1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
前記抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと略記する)、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記充填剤としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム;ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;ケイ酸;硫酸バリウム、硫酸カルシウム;亜鉛酸カルシウム;酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。前記保存剤としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。前記紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が挙げられる。
【0050】
前記抗酸化剤、前記充填剤、前記保存剤、前記紫外線吸収剤を粘着剤層3に含有せしめる場合、その含有量としては、合計で、粘着剤層3の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明に係る粘着剤層3の厚さとしては、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の粘着剤層3における含有量の各条件をいずれも満たすことができる厚さであればよい。また、本発明に係る粘着剤層3の厚さとしては、粘着剤層3の単位面積当たりの質量が25〜200g/mとなる厚さであることが好ましく、25〜180g/mとなる厚さであることがより好ましく、50〜150g/mとなる厚さであることがさらに好ましい。前記厚さが前記下限未満である場合には、十分な量のロピニロールの皮膚透過量を維持することが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えた厚さとしても、ロピニロールの皮膚透過量の持続性はそれ以上向上せず、また、厚さが増加する分、必要となるロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の量も増加することになるため、製造コストが割高になる傾向にある。
【0052】
本発明のロピニロール含有貼付剤としては、一枚当たりの貼付面の面積が0.5〜100cmであることが好ましく、パーキンソン病の治療に用いられる場合には3〜100cmであることがより好ましく、また、レストレスレッグ症候群の治療に用いられる場合には0.5〜30cmであることがより好ましい。前記面積が前記下限未満又は前記上限を超える場合には、取り扱いが困難になる傾向にある。
【0053】
本発明のロピニロール含有貼付剤は、パーキンソン病又はレストレスレッグ症候群の治療に用いられることが好ましい。本発明のロピニロール含有貼付剤としては、前記パーキンソン病の治療に用いられる場合には、ロピニロールの血漿中濃度が500〜18000pg/mlとなるように投与されることが好ましく、前記レストレスレッグ症候群の治療に用いられる場合には、ロピニロールの血漿中濃度が125〜4500pg/mlとなるように投与されることが好ましい。なお、前記ロピニロールの血漿中濃度とは、反復投与においてロピニロールの血漿中濃度が定常状態に達したときのロピニロールの血漿中濃度をいう。
【0054】
また、本発明のロピニロール含有貼付剤としては、その貼付期間は適宜調整することができるが、1〜7日間当たりに1回貼付されることが好ましい。
【0055】
本発明のロピニロール含有貼付剤の製造方法としては、例えば、前記粘着基剤と、前記ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩と、必要によりその他の上記組成物を溶媒中で混合して得られた粘着剤層組成物を支持体層2の上に直接展延して粘着剤層3を形成した後に粘着剤層3を保護するための剥離シート4を粘着剤層3上に粘着させる方法や、前記粘着剤層組成物を剥離シート4上に展延して粘着剤層3を形成し、その上に支持体層2を載せて、粘着剤層3を支持体層2上に圧着転写させる方法が挙げられる。
【0056】
前記溶媒としては、特に制限されず、溶解又は分散させる成分に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、酢酸ブチル、エタノール、メタノール、キシレン、イソプロパノール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明の包装体は、本発明のロピニロール含有貼付剤が脱酸素剤と共に包装袋内に密封されているものである。本発明の貼付剤としては、ロピニロール類縁物質の発生をさらに効果的に抑制でき、ロピニロールの経時安定性がより向上するという観点から、製造後から使用時までの間、前記脱酸素剤と共に前記包装袋内に密封されていることが好ましい。前記包装袋としては、特に制限されず、通常貼付剤の包装袋として使用できるものを適宜用いることができ、例えば、プラスチック製包装袋、金属層(例えばアルミニウム層)が形成されたプラスチック製包装袋、金属製包装袋(例えばアルミニウム性包装袋)等を用いることが好ましい。前記脱酸素剤としては、鉄粉を用いたものやビタミンCを主成分とするものを挙げることができ、より具体的には、エージレスシリーズ(三菱ガス化学社製)、ファーマキープシリーズ(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
【0058】
前記脱酸素剤の量としては貼付剤の質量、容器の材質や容積等に応じて適宜調整することができるが、脱酸素剤の酸素吸収量が2.0μl以上となるような質量であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、皮膚透過試験、経時安定性評価試験、粘着剤層の凝集性評価試験、粘着性評価試験、血漿中ロピニロール濃度測定試験、血漿中ロピニロール濃度の反復投与シミュレーションはそれぞれ以下に示す方法により行った。
【0060】
(皮膚透過試験(in vitro))
先ず、ヘアレスマウスの背部皮膚を剥離し、その真皮側がレセプター層側になるようにして、32℃の温水を外周部に循環させたフランツ型フロースルーセルに装着した。次いで、この皮膚の角質層側に5cmの大きさに切断して剥離シートを除去した製造直後(製造から72時間以内)の貼付剤を貼付した。前記フロースルーセルのレセプター層にはpH7.4のリン酸緩衝溶液(PBS)を一定の流量でフローして、レセプター層から2時間毎に24時間まで試料液を採取し、採取したそれぞれの試料液について高速液体クロマトグラフ法により薬物(ロピニロール)の濃度を定量し、各時間毎に皮膚を透過した薬物の量を求め、薬物の最大透過速度(Flux:μg/cm/hr)を、以下の式:
Flux(μg/cm/hr)=[薬物濃度(μg/ml)×流量(ml)]/貼付剤面積(cm)/時間(hr)
により算出した。また、貼付剤製造時に含有させた薬物の質量(初期量)に対する測定開始から24時間で透過した薬物の合計質量(累積透過量)の割合(利用率:%)を以下の式:
利用率(%)=[累積透過量(μg/cm)/初期量(μg/cm)]×100
により算出した。最大透過速度及び利用率の値が大きい製剤は、薬物の皮膚透過性に優れたものと認められる。
【0061】
さらに、貼付剤をそのまま又は脱酸素剤(Ageless ZJ−15PT、三菱ガス化学社製)と共にセロニウムからなる包装袋内に密封包装し、60℃において2週間(14日間)静置して保管し、保管後の貼付剤を用いたこと以外は上記と同様にして最大透過速度(Flux)及び利用率を求めた。
【0062】
(経時安定性評価試験)
製造直後(製造から72時間以内)の貼付剤から試料として6.25cmを採取し、ここにテトラヒドロフラン10mlを加えて粘着剤層を溶解させた。この溶液に50%メタノール水溶液を全量が50mlとなるように加えた後、フィルター濾過により測定サンプルを得た。得られた測定サンプルについて、高速液体クロマトグラフィー装置((株)島津製作所製、カラム:ODSカラム、移動相:10mMノナンスルホン酸ナトリウム−0.2%リン酸水溶液/メタノール(50/50(体積比))、検出波長:250nm)を用いてロピニロール及び未知化合物(ロピニロール類縁物質)の含有量(質量%)の測定を行った。また、残存薬物量(%)を以下の式:
残存薬物量(%)=ロピニロール含有量/[ロピニロール含有量+ロピニロール類縁物質合計含有量]×100
に従って算出した。
【0063】
さらに、貼付剤をそのまま又は脱酸素剤(Ageless ZJ−15PT、三菱ガス化学社製)と共にセロニウムからなる包装袋内に密封包装し、60℃において2週間(14日間)静置して保管し、保管後の貼付剤を用いたこと以外は上記と同様にして測定を行い、残存薬物量を求めた。
【0064】
(粘着剤層の凝集性評価試験)
剥離シートを除去した貼付剤の粘着剤層表面を指で強く抑え、引き剥がす際に指に残る粘着基剤の量を目視にて観察し、以下の基準:
A:粘着基剤が残ることがなく、良好な凝集力を有する
B:粘着基剤が僅かに残る程度であり、凝集力を有する
C:粘着基剤が多量に残り、凝集力が弱い
に従って評価した。
【0065】
(粘着剤層の粘着性評価試験)
製造直後(製造から72時間以内)の貼付剤から剥離シートを除去し、タッキング試験器(TAC−2、RHESCA社製)を用いて、ステンレスプローブで接触時間1sec、測定速度5mm/secの条件でタック値(gF)を測定した。タック値が大きい製剤は、粘着性に優れたものと認められる。
【0066】
さらに、貼付剤をそのまま又は脱酸素剤(Ageless ZJ−15PT、三菱ガス化学社製)と共にセロニウムからなる包装袋内に密封包装し、60℃において2週間(14日間)静置して保管し、保管後の貼付剤を用いたこと以外は上記と同様にしてタック値を求めた。
【0067】
(血漿中ロピニロール濃度測定試験)
先ず、パーキンソン病の治療における血漿中ロピニロール濃度を測定することを目的として、経皮投与用の製剤(貼付剤)を4cmの大きさに切断し、剥離シートを除去して成人12人に対してそれぞれ貼付し、1日(24時間)の間、経時的に採血を行った。また、経口投与用の製剤は、成人一人当たり2mg投与(服用)し、1日(24時間)の間、経時的に採血を行った。次いで、それぞれ採血した血液の血漿中の薬物(ロピニロール)濃度(pg/ml)を、液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー法にて測定し、測定した値の12人の平均値を求めて血漿中ロピニロール濃度(pg/ml)とした。
【0068】
また、レストレスレッグ症候群の治療における血漿中ロピニロール濃度を測定することを目的として、経皮投与用の製剤(貼付剤)を1cmの大きさに切断し、剥離シートを除去して成人12人に対してそれぞれ貼付し、1日(24時間)の間、経時的に採血を行った。次いで、それぞれ採血した血液の血漿中の薬物(ロピニロール)濃度(pg/ml)を、液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー法にて測定し、測定した値の12人の平均値を求めて血漿中ロピニロール濃度(pg/ml)とした。
【0069】
(血漿中ロピニロール濃度の反復投与シミュレーション)
パーキンソン病及びレストレスレッグ症候群の治療における血漿中ロピニロール濃度測定試験において測定されたそれぞれの結果に基づいて、経皮投与及び経口投与をそれぞれ1日間(24時間)の間隔で14回連続して反復投与した場合の血漿中ロピニロール濃度を求めた。
【0070】
(実施例1)
先ず、混合機を用いて、塩酸ロピニロール10.0質量部(ロピニロール遊離体に換算して8.8質量部)、水酸化ナトリウム(脱塩剤)1.1質量部、流動パラフィン29.6質量部、トルエン(溶媒)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)(SIS5000、JSR社製)29.6質量部、及び脂環族炭化水素樹脂29.6質量部を混合し、粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物をシリコーンにより離型処理されたフィルム(ポリエステル製)からなる剥離シート上に展延し、トルエンを乾燥除去することにより粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の前記剥離シートとは反対の面上に支持体層としてフィルム(ポリエステル製)を積層して貼付剤を得た。前記粘着剤層組成物の組成(トルエンを除く)を表1に示す。なお、得られた貼付剤において粘着剤層の厚さは、粘着剤層の単位面積当たりの質量が100g/mとなる厚さであり、塩酸ロピニロールのロピニロール遊離体に換算した含有量は、前記粘着剤層の単位面積当たり0.88mg/cmであった。
【0071】
(実施例2、比較例1〜2)
粘着剤層組成物の組成を表1に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。実施例1〜2及び比較例1〜2において得られた貼付剤について、それぞれ皮膚透過試験及び粘着剤層の凝集性評価試験を行った。粘着剤層の凝集性評価試験の結果を各実施例及び比較例における粘着剤層組成物の組成と共に表1に示し、皮膚透過試験の結果を図2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1及び図2に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤は、ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、粘着剤層の凝集力が強く、十分な粘着性を発揮できることが確認された。これに対して、ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が少ない貼付剤(比較例1)は、ロピニロールの皮膚透過量が少なく、且つ、十分な皮膚透過量を長時間維持できないことが確認された。また、ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の粘着剤層における濃度(ロピニロール遊離体換算)が多い貼付剤(比較例2)は、粘着剤層の凝集力が弱く、貼付性が極めて劣り、貼付剤として使用することが困難であることが確認された。
【0074】
(実施例3〜5)
粘着剤層組成物の組成をそれぞれ表2に示す組成とし、粘着剤層の単位面積当たりの質量をそれぞれ表2に示す質量となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。実施例3〜5において得られた貼付剤について、それぞれ皮膚透過試験及び粘着剤層の凝集性評価試験を行った。粘着剤層の凝集性評価試験の結果を各実施例における粘着剤層組成物の組成と共に表2に示し、皮膚透過試験の結果を図3に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2及び図3に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤は、ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、粘着剤層の凝集力が強く、十分な粘着性を発揮できることが確認された。また、粘着剤層の単位面積当たりの質量が増加すると、より最大透過速度が上昇し、且つ、長時間継続的に十分な皮膚透過量を維持することが確認された。
【0077】
(実施例6)
実施例1と同様にして得られた貼付剤を血漿中ロピニロール濃度測定試験用の経皮投与用製剤とした。
【0078】
(比較例3)
徐放性経口剤(ReQuipXL、グラクソ・スミスクライン社製)を血漿中ロピニロール濃度測定試験用の経口投与用製剤とした。
【0079】
実施例6及び比較例3で得られた製剤についてパーキンソン病及びレストレスレッグ症候群の治療における血漿中ロピニロール濃度測定試験をそれぞれ行い、得られた結果を基に血漿中ロピニロール濃度の反復投与シミュレーションを行った。パーキンソン病の治療における血漿中ロピニロール濃度測定試験の結果を図4に示し、パーキンソン病及びレストレスレッグ症候群の治療における血漿中ロピニロール濃度の反復投与シミュレーションの結果を図5に示す。
【0080】
図4〜5に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤は、ロピニロールの血漿中濃度をパーキンソン病及びレストレスレッグ症候群の治療に有効な濃度に維持できることが確認された。また、本発明の貼付剤は、血漿中のロピニロールの濃度の変動を小さく押さえられることが確認され、比較的安定な血漿中濃度を維持できるとされる徐放性経口剤(比較例3)と比べてもその効果が優れていることが確認された。
【0081】
(実施例7〜8、比較例4〜5)
粘着剤層組成物の組成を表3に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。実施例7〜8及び比較例4〜5において得られた貼付剤について、それぞれ皮膚透過試験、経時安定性評価試験及び粘着剤層の粘着性評価試験を行った。皮膚透過試験により求められた利用率及び測定開始から24時間の間の最大透過速度、粘着剤層の粘着性評価試験により求められたタック値を各実施例及び比較例における粘着剤層組成物の組成と共に表3に示し、経時安定性評価試験の結果を表4に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表3〜4に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤は、ロピニロールの皮膚透過性及び経時安定性に優れ、且つ、十分な粘着性を発揮できることが確認された。また、ロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が多くなると、ロピニロールの皮膚透過性は向上するが、経時安定性及び粘着性が低下することが確認された。さらに、本発明の貼付剤は、脱酸素剤と共に包装して保管することにより、ロピニロールの経時安定性がより向上することが確認された。
【0085】
(比較例6〜17)
粘着剤層組成物の組成を表5に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。比較例6〜17において得られた貼付剤について、それぞれ皮膚透過試験及び経時安定性評価試験を行った。皮膚透過試験により求められた測定開始から24時間の間の最大透過速度及び経時安定性評価試験の結果を表6に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
表6に示した結果から明らかなように、ロピニロールを含有する貼付剤において、粘着基剤としてアクリル系粘着剤を用いるとロピニロールが分解されやすい傾向にあることが確認された。また、SISと水酸化ナトリウムとを組み合わせて粘着剤層に含有させると、ロピニロールの分解が抑制される傾向にあることが確認された。
【0089】
(実施例9〜11)
粘着剤層組成物の組成を表7に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。実施例9〜11において得られた貼付剤について、それぞれ皮膚透過試験、及び経時安定性評価試験を行った。皮膚透過試験により求められた利用率及び測定開始から24時間の間の最大透過速度、並びに、経時安定性評価試験の結果を表8に示す。
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
表8に示した結果から明らかなように、SISと水酸化ナトリウムとを組み合わせて粘着剤層に含有させ、さらに水酸化ナトリウムの含有量をロピニロール及び/又はその薬学的に許容される塩のロピニロール遊離体に換算したモル数1モルに対して1モル以下とすると、よりロピニロールの分解が抑制される傾向にあることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、ロピニロールの皮膚透過性に優れ、且つ、十分な粘着性を有するロピニロール含有貼付剤及びロピニロールの経時安定性に優れた包装体を提供することが可能となる。
【0094】
また、本発明によれば、粘着剤層の厚さを特定の範囲にすることにより、血漿中のロピニロールの濃度の変動を小さくすることができ、患者の負担を軽減することができるばかりでなく、薬効を安定させることもできるため、患者コンプライアンスの高いロピニロール含有貼付剤を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1…貼付剤、2…支持体層、3…粘着剤層、4…剥離シート。
図1
図2
図3
図4
図5