【構成】 変換継手10は、一方端部に樹脂管接続部20を有する金属製の継手本体12を備える。樹脂管接続部20には、樹脂管14の一方端部が外嵌されると共に、樹脂管接続部20と樹脂管14との嵌合部分には、金属製のリング16が外嵌される。リング16の内周面奥側には、周方向に延びる環状の凹部30が形成される。また、樹脂管接続部20の外周面には、周方向に延びる複数の環状凸部が形成される。この環状凸部は、凹部30の対向位置に配置される第1凸部24と、第1凸部24より手前側に配置される第2凸部26とを含む。そして、第1凸部24を第2凸部26より高くすることで、凹部30と第1凸部24とで挟まれた部分において樹脂管14を径方向にたわませている。
少なくとも2つの前記第1凸部があって、前記第1凸部間の溝の深さは、前記第1凸部と前記第1凸部に隣接する前記第2凸部との間の溝の深さより浅い、請求項1ないし3記載の変換継手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の変換継手では、リングの内周面には、拡径部より手前側の小径部分において、複数本の滑り止め用の溝が環状に形成されているものの、リングの抜け止め対策が不十分であり、たとえば樹脂管が低温時に収縮したり、経年変化して痩せてきたりすると、リングの締め付けが緩くなり、リングが離脱してしまうおそれがある。また、特許文献1の変換継手では、接続ソケットの管接続部の外周面に同じ高さの凹凸が単純に並んでいるだけで、樹脂管が抜け易い構造になっている。このため、特許文献1の変換継手では、リングの軸方向長さを長くすることによって締め付け性能を確保しようとしているが、リングを長くすると、製造コストが高くなってしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、変換継手を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、リングおよび樹脂管の離脱を適切に防止できる、変換継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、一方端部に樹脂管接続部を有する金属製の継手本体、一方端部が樹脂管接続部に外嵌される樹脂管、樹脂管の一方端部に外嵌されて、当該樹脂管の一方端部の内周面を樹脂管接続部の外周面に押し付けるリング、リングの内周面奥側に形成され、周方向に延びる環状の凹部、凹部の対向位置において樹脂管接続部の外周面に形成され、周方向に延びる環状の第1凸部、および第1凸部より手前側において樹脂管接続部の外周面に形成され、周方向に延びる環状の第2凸部を備え、第1凸部を第2凸部より高くすることによって、凹部と第1凸部とで挟まれた部分において樹脂管を径方向にたわませた、変換継手である。
【0008】
第1の発明では、変換継手は、たとえば鋳造によって形成される金属製の継手本体を備え、継手本体の一方端部には、樹脂管接続部が形成される。樹脂管接続部には、樹脂管の一方端部が外嵌されると共に、樹脂管接続部と樹脂管との嵌合部分には、樹脂管の一方端部内周面を樹脂管接続部の外周面に押し付ける金属製のリングが外嵌される。リングの内周面奥側には、周方向に延びる環状の凹部が形成される。また、樹脂管接続部の外周面には、周方向に延びる複数の環状凸部が形成される。この環状凸部は、凹部に対向する位置に配置される第1凸部と、第1凸部より手前側に配置される第2凸部とを含む。そして、第1凸部を第2凸部より高くする(外径を大きくする)ことで、凹部と第1凸部とで挟まれた部分において樹脂管を径方向にたわませている。
【0009】
このように、リングの凹部に対向する位置の樹脂管接続部の外周面に高さの高い第1凸部を形成することによって、樹脂管の樹脂が凹部内にしっかりと入り込む。これによって、温度変化などによって樹脂管が収縮した場合でも、凹部に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リングの軸方向の移動が規制される。また、凹部と第1凸部とで挟まれた部分において樹脂管を径方向にたわませることによって、樹脂管の軸方向の移動が効果的に規制される。さらに、奥側に形成される第1凸部を第2凸部より高く設定することによって、樹脂管の一方端部に掛かる応力が軸方向に分散される。
【0010】
第1の発明によれば、温度変化などによって樹脂管が収縮した場合でも、リングの凹部に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リングの軸方向の移動が規制されるので、リングの離脱を適切に防止できる。また、樹脂管を径方向にたわませることによって、樹脂管の軸方向の移動が効果的に規制され、樹脂管の抜けを確実に防止できる。さらに、樹脂管の一方端部に掛かる応力が軸方向に分散されるので、応力集中による樹脂管の破断を防止できる。さらにまた、リングおよび樹脂管の離脱防止効果が高いことにより、リングおよび樹脂管接続部の軸方向長さを短くすることができ、製造コストを抑えることができると共に、重量を抑えて施工性をよくすることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、第1凸部と第2凸部との高低差は、リングの内周面と樹脂管接続部の外周面との間の距離の10〜60%の大きさに設定される、変換継手である。
【0012】
第2の発明では、リングおよび樹脂管の離脱防止効果を適切に発揮できるように、第1凸部と第2凸部との高低差(突出高さの差)の好適な値を規定した。樹脂管の抜止効果を高めるためには、樹脂管を大きくたわませることが望ましい。しかしながら、樹脂管を大きくたわませるために、第1凸部と第2凸部との高低差をリングの内周面と樹脂管接続部の外周面との間の距離の60%より大きくすると、第1凸部とリングとの間の距離が小さくなり過ぎて、樹脂管と樹脂管接続部の嵌合部分にリングを外嵌するときに、第1凸部とリング内周面との間で樹脂管がねじ切られてしまうおそれがある。一方、10%未満にすると、樹脂管のたわみによる抜け止め効果を適切に発揮できない。このため、第2の発明では、第1凸部と第2凸部との高低差をリングの内周面と樹脂管接続部の外周面との間の距離の10〜60%の大きさに設定することによって、樹脂管のねじ切れが防止されると共に、樹脂管のたわみによる抜け止め効果を適切に発揮できるようにした。
【0013】
第2の発明によれば、リングおよび樹脂管の離脱防止効果を適切に発揮することができる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、凹部の軸方向の長さは、樹脂管接続部の外周面とリングの内周面との間の距離以上の長さに設定される、変換継手である。
【0015】
第3の発明では、リングの凹部の軸方向長さが樹脂管接続部外周面とリング内周面との間の距離よりも小さくならないように規定した。ここで、凹部の軸方向長さが小さいと、樹脂管のたわみが急になり過ぎ、応力集中により樹脂管が破断してしまうおそれがある。また、リングの締め付け性能を確保するために、リング内周面と樹脂管接続部外周面との間の距離を小さく設定したときに、収まりきらない樹脂管の樹脂がリングの奥側からはみ出すおそれがある。このため、第3の発明では、リングの凹部の軸方向長さを樹脂管接続部外周面とリング内周面との間の距離以上の長さに設定することによって、樹脂管のたわみが急になり過ぎることを防止している。また、これによって、リングの凹部が肉除けスペースとなって、樹脂管の樹脂がリング奥側からはみ出ることなく凹部に逃げるので、樹脂管をしっかりと挟み込むことができる。
【0016】
第3の発明よれば、樹脂管のたわみが急になり過ぎることを防止しているので、応力集中による樹脂管の破断を防止できる。また、余った樹脂管の樹脂を凹部に逃がすことができるので、リング内周面と樹脂管接続部外周面との間の距離を小さく設定することができ、リングおよび樹脂管の離脱防止効果をより適切に発揮できる。
【0017】
第4の発明は、第1ないし第3いずれかの発明に従属し、少なくとも2つの第1凸部があって、第1凸部間の溝の深さは、第1凸部と第1凸部に隣接する第2凸部との間の溝の深さより浅い、変換継手である。
【0018】
第4の発明では、第1凸部間の溝の深さは、第1凸部と第1凸部に隣接する第2凸部との間の溝の深さより浅い。第1凸部間の溝を浅くすることによって、樹脂管の樹脂が第1凸部間の溝内全体に回り込み易くなるので、外径の大きい第1凸部を形成することができるようになる。
【0019】
第4の発明によれば、樹脂管の樹脂が第1凸部間の溝内全体に回り込み易いので、樹脂管内周面と樹脂管接続部外周面との圧着性能を保持しつつ、外径の大きい第1凸部を形成できる。また、第1凸部間の溝を浅くすることによって、リングの奥側部分での締め付け性能が確保される。したがって、第4の発明によれば、リングおよび樹脂管の離脱防止効果をより適切に発揮できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、温度変化などによって樹脂管が収縮した場合でも、リングの凹部に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リングの軸方向の移動が規制されるので、リングの離脱を適切に防止できる。また、樹脂管を径方向にたわませることによって、樹脂管の軸方向の移動が効果的に規制され、樹脂管の抜けを確実に防止できる。さらに、樹脂管の一方端部に掛かる応力が軸方向に分散されるので、応力集中による樹脂管の破断を防止できる。さらにまた、リングおよび樹脂管の離脱防止効果が高いことにより、リングおよび樹脂管接続部の軸方向長さを短くすることができ、製造コストを抑えることができると共に、重量を抑えて施工性をよくすることができる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、この発明の一実施例である変換継手10は、金属製の管部材(図示せず)と合成樹脂製の管部材(図示せず)とを接続する変換継手であり、継手本体12、樹脂管14およびリング16等を備える。たとえば、変換継手10は、水道用配管において、鋳鉄などの金属によって形成されるバルブなどの管部材に対して、ポリエチレン等の合成樹脂によって形成される配管を接続するために用いられる。なお、変換継手10の樹脂管14と配管とは、合成樹脂製の管部材の一例である電気融着継手などを適宜用いて連結される。変換継手10の呼び径は、たとえば40−300mmであり、その軸方向長さは、たとえば100−3000mmである。
【0024】
図1および
図2に示すように、変換継手10の継手本体12は、たとえば鉄などの金属を鋳造することによって形成される筒状体であり、その一方端部には樹脂管接続部20が形成される。また、継手本体12の他端部には、金属製の管部材を受け入れる拡径受口18が形成される。
【0025】
継手本体12の拡径受口18は、樹脂管接続部20よりも拡径された筒状に形成される。拡径受口18には、鋳鉄などの金属製の管部材がゴム輪接合などによって接続される。
【0026】
樹脂管接続部20は、短筒状に形成され、樹脂管接続部20の先端部には、導入部22が形成される。導入部22の外周面は、樹脂管14の管端を受け入れ易く、かつ導入部22での応力集中の発生を抑制できるように、先端側に向かって縮径するテーパ状に形成される。
【0027】
また、樹脂管接続部20の外周面奥側部分には、後述するリング16の凹部30に対向する位置において、周方向に延びる環状の第1凸部24が形成される。この実施例では、軸方向に並ぶ2つの第1凸部24が形成されている。また、第1凸部24より手前側の樹脂管接続部20の外周面には、周方向に延びる環状の第2凸部26が形成される。この実施例では、軸方向に並ぶ5つの第2凸部26が形成されている。
【0028】
第1凸部24は、略台形状の断面を有し、その手前側側面は、手前側に向かって縮径するテーパ面とされ、奥側側面は、略垂直面とされる。奥側の第1凸部24の奥側側面の根元には、樹脂管14の樹脂が回り込み易いように、奥側に向かって縮径するテーパ面が形成される。2つの第1凸部24の外径は略同じ大きさに設定される。また、詳細は後に説明するように、第1凸部24は、第2凸部26よりも高く(外径が大きく)される。
【0029】
ここで、樹脂管14の抜け止め効果を高めるためには、外径(突出高さ)の大きい複数の第1凸部24を形成することが望ましい。しかしながら、鋳造では、軸方向幅が狭く突出高さの大きい複数の第1凸部24を設けることは難しい。また、突出高さの大きい複数の第1凸部24を並べると、第1凸部24間の溝内に樹脂管14の樹脂が回り込み難くなり、樹脂管接続部20外周面と樹脂管14の内周面との圧着性能が低下する。さらに、第1凸部24の突出高さが大き過ぎると、樹脂管14を破断してしまう恐れがある。このため、この実施例では、第1凸部24間の溝の深さを、手前側の第1凸部24とそれに隣接する第2凸部26との間の溝の深さより浅くした。これによって、樹脂管16内周面と樹脂管接続部20外周面との圧着性能を保持しつつ、外径の大きい2つの第1凸部24を形成することができるようにした。
【0030】
第2凸部26は、略台形状の断面を有し、その手前側側面は、手前側に向かって縮径するテーパ面とされ、奥側側面は、略垂直面とされる。第2凸部26は、奥側のものほど外径が大きい。
【0031】
以上のように、第1凸部24および第2凸部26を形成することによって、樹脂管接続部20に樹脂管14を外嵌し易くなると共に、樹脂管14を係止し易くなって樹脂管14の抜けを防止できる。
【0032】
さらに、樹脂管接続部20には、樹脂管14の一方端部が外嵌されると共に、樹脂管接続部20と樹脂管14との嵌合部分には、リング16が外嵌される。樹脂管14は、ポリエチレン等の合成樹脂によって形成される短管であって、合成樹脂製の管部材との接続部として利用される。樹脂管14の内径は、継手本体12の樹脂管接続部20の外径よりも小さく設定されており、樹脂管14の一方端部を樹脂管接続部20に外嵌するときには、樹脂管14内に樹脂管接続部20が無理入れされる。
【0033】
リング16は、樹脂管14の一方端部を外部から締め付けて、樹脂管14の内周面を樹脂管接続部20の外周面に押し付けることによって樹脂管14の離脱を防止するための部材であって、たとえば鉄などの金属を鋳造することによって短筒状に形成される。この実施例では、リング16の内径は、樹脂管接続部20に外嵌した状態の樹脂管14の一方端部の外径よりも小さく設定されており、リング16を樹脂管14の一方端部に外嵌するときには、リング16内に樹脂管14の一方端部が無理入れされる。
【0034】
また、リング16の内周面奥側(挿入方向先頭側)の角部分は面取りされており、そこにテーパ部28が形成される。さらに、リング16の内周面奥側部分には、凹部30が形成される。凹部30は、周方向に延びる断面略台形状の環状溝であって、深さよりも軸方向幅の方が大きい幅広に形成される。このように、リング16内周面の奥側部分に凹部30を形成し、その対向位置に第1凸部24を配置したので、第1凸部24の高さを高くすることができる。そして、高さの高い第1凸部24を設けたことによって、樹脂管14の外周面が凹部30内にしっかりと入り込み、凹部30に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リング16の軸方向の移動が規制される。
【0035】
図3を参照して、樹脂管接続部20の第1凸部24の突出高さeは、第2凸部26の突出高さfより高くされる。つまり、第1凸部24の外径は、第2凸部26の外径より大きくなるように設定される。このように、リング16内周面に幅広の凹部30を形成し、凹部30の対向位置に第2凸部26より外径の大きい第1凸部24を形成することによって、凹部30と第1凸部24とで挟まれた部分において樹脂管14が径方向(肉厚方向)にたわむ。仮想線xは、樹脂管14の外周面と内周面との間の距離の略中間を示す線であり、樹脂管14が径方向にたわむ様子を表している。このように、樹脂管14を径方向にたわませることによって、樹脂管14の軸方向の移動が効果的に規制される。
【0036】
ここで、樹脂管14のたわみによる高い抜け止め効果を発揮するためには、樹脂管14のたわみを大きくする、つまり、第1凸部24と第2凸部26との高低差(e−f)を大きくすることが望ましい。具体的には、高低差(e−f)を、リング16の内周面と樹脂管接続部20の外周面との間の距離gの10%以上にするとよい。距離gとは、リング16の内周面と樹脂管接続部20のベース部分の外周面との間の距離のことをいう。高低差(e−f)が10%未満になると、樹脂管14のたわみによる抜け止め効果が十分に得られない。一方、高低差(e−f)が大き過ぎても、樹脂管14の抜け止め効果を適切に発揮することができない。すなわち、第1凸部24の突出高さeを大きくすることによって、高低差(e−f)が60%よりも大きくなると、第1凸部24の頂点とリング16内周面との間の距離が小さくなり過ぎて、樹脂管14と樹脂管接続部20の嵌合部分にリング16を外嵌するときに、第1凸部24とリング16内周面との間で樹脂管14がねじ切られてしまうおそれがある。また、第2凸部26の突出高さfを小さくすることによって、高低差(e−f)が60%よりも大きくなると、第2凸部26によって樹脂管14を係止する性能が低下する。したがって、高低差(e−f)は、距離gの10〜60%の大きさに設定するのが好適である。これによって、樹脂管14の抜け止め効果を適切に発揮することができる。
【0037】
ところで、樹脂管14のたわみが急になり過ぎると、応力集中により樹脂管14が破断してしまうおそれがある。このため、リング16凹部30の軸方向の長さbは、リング16の内周面と樹脂管接続部20の外周面との間の距離g以上の長さに設定されることが好ましい。これによって、樹脂管14のたわみが急になり過ぎることが防止される。また、リング16の締め付け性能を確保するために、距離gを小さくしたときでも、長さbを大きくしておくことで、凹部30が肉除けスペースとなって、樹脂管14の樹脂のはみ出しが防止される。
【0038】
また、リング16の凹部30の深さiは、距離gの5%以上の大きさに設定することが好ましい。これによって、樹脂管14の外周面が凹部30に引っ掛かり易くなる。
【0039】
さらに、リング16の凹部30の奥側からテーパ部28の手前側までの距離cは、凹部30の手前側からリング16の手前側までの距離dよりも大きくならないように設定するのが好ましい。距離cを小さくすることによって、樹脂管14と樹脂管接続部20の嵌合部分にリング16を外嵌するときに、第1凸部24とリング16内周面の奥側部分との間で樹脂管14がねじ切れ難くくなる。
【0040】
ここで、リング16の締め付け性能を高くするためには、リング16内周面と樹脂管接続部20外周面との間の距離gを小さくするのが好ましい。しかしながら、距離gを小さくし過ぎると、リング16内に樹脂管14を無理入れし難くなる。このため、距離gは、樹脂管14の厚みaの90%以上となるようにするとよい。これによって、リング16内に樹脂管14を無理入れし易くなる。
【0041】
また、リングの締め付け性能を高くするためには、第2凸部26の頂点とリング16内周面との間の距離jも小さくすることが好ましい。具体的には、距離jを、樹脂管14の厚みaの90%以下に設定するとよい。これによって、第2凸部26とリング16内周面との間で樹脂管14をしっかりと挟み込むことができる。
【0042】
続いて、
図4を参照して、各部材12,14,16を組み立てて変換継手10を製作する方法について説明する。まず、
図4(a)に示すように、継手本体12、樹脂管14、およびリング16を用意する。
【0043】
次に、
図4(b)に示すように、継手本体12の樹脂管接続部20に対して樹脂管14の一方端部を外嵌する。具体的には、樹脂管接続部20の導入部22のテーパ面に沿わせて樹脂管14を押し込み、そのまま樹脂管14内に樹脂管接続部20を無理入れする。すなわち、樹脂管14の一方端部を樹脂管接続部20によって拡径させながら、樹脂管14を押し込む。このとき、樹脂管接続部20の無理入れによって拡径された樹脂管14の一方端部には、元の径に戻ろうとする復元力が生じるので、樹脂管14の内周面は第1凸部24に密着する。
【0044】
その後、
図4(c)に示すように、樹脂管14の一方端部、つまり樹脂管14と樹脂管接続部20との嵌合部分にリング16を外嵌する。具体的には、樹脂管14の外周面に沿わせてリング16を移動させ、そのままリング16内に樹脂管14の一方端部を無理入れする。すなわち、樹脂管14の一方端部をリング16によって外部から押圧しながら、リング16の奥側端面が樹脂管14の奥側端面の位置にくるまでリング16を押し込む。そして、樹脂管14と樹脂管接続部20との嵌合部分にリング16を外嵌すると、樹脂管14の内周面に第1凸部24および第2凸部26が食い込んで樹脂管14の内周面と樹脂管接続部20の外周面とが圧着されると共に、リング16の凹部30内に樹脂管14の樹脂が入り込む。また、凹部30と第1凸部24とで挟まれた部分において、樹脂管14が径方向にたわませられる。
【0045】
このように、樹脂管14の内周面に第1凸部24および第2凸部26が食い込んで樹脂管14の内周面と樹脂管接続部20の外周面とが圧着されることによって、樹脂管14と樹脂管接続部20との間の止水性能が確保されると共に、樹脂管接続部20からの樹脂管14の離脱が防止される。
【0046】
この実施例によれば、リング16の凹部30に対向する位置の樹脂管接続部20の外周面に高さの高い第1凸部24を形成したので、リング16の凹部30内に樹脂がしっかりと入り込む。このため、温度変化などによって樹脂管14が収縮した場合でも、凹部30に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リング16の軸方向の移動が規制される。また、樹脂管14を径方向にたわませたので、樹脂管14の軸方向の移動が効果的に規制され、樹脂管14の抜けを確実に防止できる。さらに、第1凸部24を第2凸部26より高く設定したので、樹脂管14の一方端部に掛かる応力が軸方向に分散され、応力集中による樹脂管14の破断を防止できる。また、リング16および樹脂管14の離脱防止効果が高いので、リング16および樹脂管接続部20の軸方向長さを短くすることができ、製造コストを抑えることができると共に、重量を抑えて施工性をよくすることができる。
【0047】
また、この実施例によれば、第1凸部24と第2凸部26との高低差(e−f)が、樹脂管接続部20外周面とリング16内周面との間の距離gの10〜60%の大きさとなるように規定したので、樹脂管14のねじ切れが防止されると共に、樹脂管14のたわみによる抜け止め効果を適切に発揮できる。
【0048】
さらに、この実施例によれば、リング16の凹部30の軸方向長さbが樹脂管接続部20外周面とリング16内周面との間の距離gよりも小さくならないように規定したので、樹脂管14のたわみが急になり過ぎることが防止され、応力集中による樹脂管14の破断を防止できる。また、リング16の締め付け性能を確保するために、距離gを小さくしたときでも、余った樹脂管14の樹脂を凹部30に逃がすことができる。
【0049】
さらにまた、この実施例では、第1凸部24間の溝を浅くしたので、樹脂管14内周面と樹脂管接続部20外周面との圧着性能を保持しつつ、外径の大きい第1凸部24を形成することができる。また、リング16の奥側部分での締め付け性能が確保される。
【0050】
また、この実施例によれば、凹部30の深さiを、距離gの5%以上の大きさに設定したので、樹脂管14の外周面が凹部30に引っ掛かり易くなり、リング16の離脱防止効果を適切に発揮できる。
【0051】
さらに、この実施例によれば、凹部30の奥側からテーパ部28の手前側までの距離cを、凹部30の手前側からリング16の手前側までの距離d以下に設定したので、樹脂管14と樹脂管接続部20の嵌合部分にリング16を外嵌するときに、第1凸部24とリング16内周面の奥側部分との間で樹脂管14がねじ切れ難い。
【0052】
また、この実施例によれば、第2凸部26の頂点とリング16内周面との間の距離jを、樹脂管14の厚みaの90%以下となるようにしたので、第2凸部26とリング16内周面との間で樹脂管14をしっかりと挟み込むことができる。
【0053】
また、この実施例によれば、樹脂管接続部20外周面とリング16内周面との間の距離gを、樹脂管14の厚みaの90%以上となるようにしたので、リング16内に樹脂管14を無理入れし易い。
【0054】
したがって、この実施例によれば、リング16および樹脂管14の離脱防止効果を適切に発揮できる。
【0055】
なお、上述の実施例では、樹脂管接続部20の外周面に、軸方向に並ぶ2つの断面略台形状の第1凸部24を形成したが、第1凸部24の形状および数などは、これに限定される必要はない。第1凸部24の形状としては、断面略三角形状や断面略長方形状などであってもよい。また、第1凸部24の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0056】
たとえば、
図5に示す変換継手10の変形実施例では、リング16の凹部30の対向位置において、樹脂管接続部20の外周面には周方向に延びる1つの環状の第1凸部24が形成されている。
【0057】
第1凸部24は、軸方向幅が広い略台形状の断面を有し、その手前側側面は、手前側に向かって緩やかに縮径するテーパ面とされ、奥側側面は、奥側に向かって縮径するテーパ面とされる。奥側側面の根元には、樹脂管14の樹脂が回り込み易いように、奥側に向かって縮径するテーパ面が形成される。
【0058】
図5に示す実施例においても、
図1に示す実施例と同様に、リング16の凹部30に対向する位置の樹脂管接続部20の外周面に高さの高い第1凸部24を形成したので、凹部30内に樹脂がしっかりと入り込む。このため、凹部30に入り込んだ樹脂がストッパとなって、リング16の軸方向の移動が規制される。また、樹脂管14を径方向にたわませたので、樹脂管14の軸方向の移動が効果的に規制され、樹脂管14の抜けを確実に防止できる。さらに、第1凸部24を第2凸部26より高く設定したので、樹脂管14の一方端部に掛かる応力が軸方向に分散され、応力集中による樹脂管14の破断を防止できる。
【0059】
また、
図5に示す実施例では、凹部30に対向する位置の樹脂管接続部20には溝が形成されないので、樹脂管14内周面と樹脂管接続部20外周面との圧着性能が高く、リング16の奥側部分での締め付け性能が高い。
【0060】
したがって、
図5に示す実施例でも、
図1に示す実施例と同様に、リング16および樹脂管14の離脱防止効果を適切に発揮できる。
【0061】
さらに、上述の各実施例では、リング16の内周面に形成される凹凸は、凹部30だけであるが、これに限定される必要はない。
【0062】
たとえば、
図6に示す変換継手10の変形実施例では、リング16の凹部30の手前側に窪み部32が形成されている。窪み部32は、周方向に延びる断面略台形状の環状溝である。窪み部32の軸方向長さは凹部30の軸方向長さよりも小さく設定され、その深さは凹部30の深さよりも浅くされる。このように、凹部30の手前側に窪み部32を設けたことによって、窪み部32に入り込んだ樹脂管14の樹脂がストッパとなって、リング16の離脱防止効果をさらに高めることができる。
【0063】
図6に示す実施例においても、
図1に示す実施例と同様に、リング16および樹脂管14の離脱防止効果を適切に発揮できる。
【0064】
なお、窪み部32の形状および数などは、この実施例に示すものに限定されない。
【0065】
また、上述の各実施例では、凹部30の奥側のリング16の内径と、凹部30の手前側のリング16の内径とが同じ大きさに設定されているが、これに限定される必要はない。
【0066】
たとえば、
図7に示す変換継手10の変形実施例では、凹部30の奥側におけるリング16内周面と樹脂管接続部20外周面との間の距離hが、凹部30の手前側におけるリング16内周面と樹脂管接続部20外周面との間の距離gよりも大きく設定されている。つまり、凹部30の奥側は、凹部30の手前側より内径が大きい。
【0067】
図7に示す実施例では、凹部30の奥側のリング16内径を、凹部30の手前側のリング16の内径より大きく設定したので、リング16内に樹脂管14の一方端部を無理入れし易くなると共に、リング16の内周面と第1凸部24との間で樹脂管14がねじ切れ難くなる。
【0068】
図7に示す実施例においても、
図1に示す実施例と同様に、リング16および樹脂管14の離脱防止効果を適切に発揮できる。
【0069】
さらに、上述の各実施例では、継手本体12の拡径受口18と樹脂管接続部20との境界にあたる部分は、なだらかなテーパ状に形成されているが、これに限定される必要はない。
【0070】
たとえば、
図8に示す変換継手10の変形実施例では、継手本体12の拡径受口18と樹脂管接続部20との境界にあたる部分に段差部34を形成した。段差部34の外径はリング16の内径よりも大きく設定され、リング16を樹脂管14の一方端部に外嵌したときに、リング16と継手本体12の段差部34とが当接する。このように継手本体12に段差部34を形成すれば、樹脂管接続部20に樹脂管14およびリング16を無理入れするときに、段差部34に突き当たるまで樹脂管14およびリング16を押し込めばよいので、作業効率が向上する。また、リング16と継手本体12の段差部34とが隙間なく当接するので、リング16奥側から樹脂管14の樹脂がはみ出し難くなると共に、樹脂管14の奥側端面が段差部34によって保護される。さらに、リング16および樹脂管14の奥側への移動が規制される。
【0071】
なお、上述の各実施例では、第1凸部24の手前側の樹脂管接続部20の外周面に、軸方向に並ぶ5つの断面略台形状の第2凸部26を形成したが、第2凸部26の形状および数などは、これに限定される必要はない。第2凸部26の形状としては、断面略三角形状や断面略長方形状などであってもよい。また、第2凸部26の数は、たとえば4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0072】
また、第1凸部24および第2凸部26の突出高さは、
図1に示す実施例において規定したものに限定される必要はなく、適宜変更可能である。たとえば、第1凸部24および第2凸部26は、奥側のものほど外径が大きくなるようにしてもよい。これによって、樹脂管の一方端部にかかる応力がより適切に軸方向に分散される。
さらに、第1凸部24は、必ずしもリング16の凹部30が形成される軸方向範囲内に収まっている必要はない。
【0073】
また、上述の各実施例では、リング16の内周面奥側部分に1つの断面略台形状の凹部30を形成したが、凹部30の形状および数などは、これに限定される必要はない。また、凹部30の深さおよび軸方向の長さなどは、適宜変更可能である。
【0074】
さらに、
図1に示す実施例では、変換継手10は、継手本体12の樹脂管接続部20に樹脂管14とリング16とを無理入れする構造としたが、これに限定される必要はなく、樹脂管14と樹脂管接続部20との嵌合部分にリングを外嵌した後、リング16をかしめることによって、リング16の締め付けるようにしてもよい。
【0075】
また、リング16および樹脂管接続部20に形成される凹凸は、鋳造後に切削加工してもよい。
【0076】
さらに、
図1に示す実施例では、リング16は、金属を鋳造することによって形成されるようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、リング16は、金属の棒材(中空)を切削加工することにより形成されるようにしてもよい。
【0077】
さらにまた、上述の各実施例では、継手本体12の樹脂管接続部20と反対側の端部に拡径受口18を形成したが、これに限定される必要はなく、差口、ソフトシール仕切弁、バタフライ弁、フランジなどを形成してもよい。また、継手本体12の両端部に、樹脂管接続部20、樹脂管14、およびリング16のセットを設けてもよい。つまり、継手本体12の他端部に接続される管部材は、かならずしも金属製の管部材である必要はなく、合成樹脂製の樹脂管などであってもよい。要するに、継手本体12の樹脂管接続部20と反対側の端部の形状(構成)は、適宜変更可能である。
【0078】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。