【構成】 分岐部の施工方法では、継手本体12、分岐管接続部14、ゴム輪16および押圧部材18等を備える分岐継手10を用いて、本管100に対して分岐管102を接続するための分岐部を施工する。この施工方法では、先ず、本管100を穿孔して分岐孔104を形成する。また、本管100に分岐継手10を外嵌して、分岐継手10をスライドさせて分岐孔104と分岐管接続部14との位置を合わせる。その後、押圧部材18によってゴム輪16を圧縮変形させて、本管100に対して分岐継手10を水密的に固定する。
(e)前記ステップ(c)において前記分岐孔と前記分岐管接続部との位置を合わせる前に、前記本管の前記分岐孔周縁部の外周面に補強部材を取り付けるステップを含む、請求項1記載の分岐部の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の分岐部の施工方法では、分岐箇所に合わせて本管6を切断する作業、および分岐継手1のゴム輪受口4に接続する本管6の管端6aに対して面取り加工を施す作業が必要となるが、これらの作業には手間および時間がかかる。特に、本管6の口径が大きくなるほど、本管6の切断および面取り加工に要する作業負担は増大する。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、分岐部の施工方法および分岐継手を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、施工性に優れる、分岐部の施工方法および分岐継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、本管に対して分岐管を接続するための分岐部を施工する分岐部の施工方法であって、(a)本管を受容可能な内径を有する円筒状の継手本体と、継手本体から側方に分岐する分岐管接続部と、継手本体の両端部に設けられ、本管の外径と略同じ大きさの内径を有するゴム輪と、ゴム輪を押圧可能な押圧部材とを備える分岐継手を用意するステップ、(b)本管を穿孔して分岐孔を形成するステップ、(c)本管に分岐継手を外嵌し、当該分岐継手をスライドさせて分岐孔と分岐管接続部との位置を合わせるステップ、および(d)押圧部材によってゴム輪を圧縮変形させて、本管に対して分岐継手を水密的に固定するステップを含む、分岐部の施工方法である。
【0009】
第1の発明では、たとえば内圧管を新設または補修するに際して、本管に対して分岐管を接続するための分岐部を施工する。ステップ(a)では、本管を受容可能な内径を有する円筒状の継手本体と、継手本体から側方に分岐する分岐管接続部と、継手本体の両端部に設けられて本管の外径と略同じ大きさの内径を有するゴム輪と、ゴム輪を押圧可能な押圧部材とを備える分岐継手を用意する。すなわち、本管の外周面上をスライド可能な分岐継手を用意する。ステップ(b)では、本管に分岐部を設ける位置において、ホールソー等を用いて本管を穿孔して分岐孔を形成する。また、ステップ(c)では、本管に対して、押圧部材によってゴム輪を押圧する前の状態の分岐継手を外嵌する。そして、本管の外周面上に沿って分岐継手をスライドさせて、本管の分岐孔の位置と分岐管接続部の位置とを合わせる。その後、ステップ(d)では、押圧部材によってゴム輪を圧縮変形させて、分岐継手および本管に一定以上の止水面圧でゴム輪を密着させ、本管に対して分岐継手を水密的に固定する。これによって、本管の分岐箇所に分岐継手が施工される。つまり、本管に分岐管を接続するための分岐部が施工される。
【0010】
第1の発明によれば、本管の外周面上をスライド可能な分岐継手を用いて分岐部の施工を行うので、分岐箇所に合わせて本管を切断する作業、および分岐継手に接続する本管の管端を面取り加工する作業が不要となり、作業負担を軽減できる。したがって、施工性に優れる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、(e)ステップ(c)において分岐孔と分岐管接続部との位置を合わせる前に、本管の分岐孔周縁部の外周面に補強部材を取り付けるステップを含む。
【0012】
第2の発明では、本管外周面に対して補強部材を取り付けるステップ(e)をさらに含む。すなわち、ステップ(e)では、分岐継手をスライドさせて分岐孔の位置と分岐管接続部の位置とを合わせる前に、本管の分岐孔周縁部の外周面に対して補強部材を取り付ける。たとえば、本管の分岐孔に対応した大きさの孔を有する補強部材を用意し、本管の分岐孔の位置と補強部材の孔の位置とを合わせた状態で、本管外周面に補強部材を固定するとよい。また、たとえば、孔なしの補強部材を本管外周面に固定した後、重なった状態の補強部材および本管を穿孔して、本管の分岐孔と補強部材の孔とを一度に形成するようにしてもよい。
【0013】
第2の発明によれば、分岐孔周縁部の本管の強度を向上させることができ、分岐管側から本管に加えられる荷重に対する抵抗力が向上する。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に係る分岐部の施工方法に用いられる分岐継手であって、本管を受容可能な内径を有する円筒状の継手本体、継手本体から側方に分岐する分岐管接続部、継手本体の両端部に設けられ、本管の外径と略同じ大きさの内径を有するゴム輪、およびゴム輪を押圧可能な押圧部材を備える、分岐継手である。
【0015】
第3の発明では、分岐継手は、本管を受容可能な内径を有する円筒状の継手本体を備える。この継手本体には、側方に分岐する短円筒状の分岐管接続部が一体的に形成される。また、継手本体の両端部には、本管の外径と略同じ大きさの内径を有するゴム輪が設けられる。さらに、分岐継手は、ゴム輪を押圧可能な押圧部材を備える。
【0016】
このような分岐継手は、押圧部材によってゴム輪を押圧する前の状態においては、ゴム輪が本管の外径と略同じ大きさの内径を有することから、本管の外周面上を容易にスライド可能である。一方、本管に分岐継手を外嵌した状態で、押圧部材によってゴム輪を圧縮変形させると、ゴム輪は、分岐継手と本管とに一定以上の止水面圧で密着する。これによって、本管と分岐継手とが水密的に固定される。
【0017】
第3の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏し、分岐箇所に合わせて本管を切断する作業、および分岐継手に接続する本管の管端を面取り加工する作業を行うことなく、本管に対して分岐管を接続するための分岐部を施工することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、本管の外周面上をスライド可能な分岐継手を用いて分岐部の施工を行うので、分岐箇所に合わせて本管を切断する作業、および分岐継手に接続する本管の管端を面取り加工する作業が不要となり、作業負担を軽減できる。したがって、施工性に優れる。
【0019】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、この発明の一実施例である分岐部の施工方法は、農業用水管などの内圧が作用する管路(内圧管)を新設するに際して、本管100に対して分岐管102を接続するための分岐部を施工する方法である。この分岐部の施工方法では、本管100は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂などによって形成され、直管100aおよび曲管100bなどの本管部材をゴム輪接合などを用いて適宜連結することによって構成される。また、詳細は後述するように、本管100の分岐部は、本管100(直管100a)の外周面上をスライド可能な分岐継手10を用いて形成される。
【0022】
ただし、この発明に係る分岐部の施工方法は、農業用水管の他、工業用水管、下水圧送管、上水道管およびガス管などの管路に適用できる。また、内圧管だけでなく、無圧管(外圧管)にも適用可能である。さらに、新設する管路の口径は、特に限定されないが、この発明に係る分岐部の施工方法は、本管100および分岐管102の呼び径が75−700mmである管路に好適に利用される。
【0023】
以下の説明では、管路は硬質塩化ビニル製の農業用水管であって、呼び径が600mmの本管100に対して、呼び径が100mmの分岐管102を接続する場合を想定して説明するが、後述する分岐継手10の各部の大きさは、接続する本管100および分岐管102の口径や材質などに応じて適宜変更されることに留意されたい。
【0024】
先ず、
図2−
図4を参照して、この実施例の分岐部の施工方法に用いる分岐継手10の構成について説明する。
図2−
図4に示すように、分岐継手10は、本管100に分岐部を形成するための部材であり、継手本体12、分岐管接続部14、ゴム輪16および押輪18などを備える。
【0025】
継手本体12は、FRP(繊維強化プラスチック)および硬質塩化ビニル等の合成樹脂または鉄等の金属などの硬質材によって円筒状に形成される。継手本体12の内径は、本管100を受容可能な大きさとされ、この実施例では、本管100の外径である630mmよりも少し大きい638mmである。また、後述するゴム輪装着部24を含む継手本体12の軸方向長さは、たとえば800mmである。
【0026】
継手本体12の軸方向中央部には、側方に分岐する短円筒状の分岐管接続部14が一体的に形成される。分岐管接続部14は、分岐管102の端部が挿入されるゴム輪受口であって、分岐管接続部14の内周面には、ゴム輪20および離脱防止リング22が装着される。ゴム輪20は、SBR(スチレンブタジエンゴム)等のゴムによって形成され、分岐管接続部14の内周面と分岐管102の外周面との間で圧縮されることによってこの間を止水する。離脱防止リング22は、ステンレス等の金属によって略C形状に形成され、分岐管接続部14に挿入された分岐管102の抜けを防止する。具体的には、離脱防止リング22の内周面には、断面形状が略鋸歯状の突起が形成されており、この略鋸歯状の突起は、分岐管102の端部が分岐管接続部14から抜ける方向に移動するときに、分岐部102の外周面に食い込む方向に傾斜している。分岐管接続部14の内径は、分岐管102の端部を受容可能な大きさとされ、たとえば116mmである。また、分岐管接続部14の継手本体12からの突出長さは、たとえば162mmである。
【0027】
また、継手本体12の両端部には、先端側に向かって拡径するテーパ面24aを有するゴム輪装着部24が一体的に形成される。そして、ゴム輪装着部24のそれぞれには、ゴム輪16が装着される。ゴム輪16は、SBR(スチレンブタジエンゴム)等のゴムによって形成され、略台形状の断面形状を有する。ゴム輪16の内径は、本管100の外径と略同じ大きさとされ、たとえば635mmである。
【0028】
さらに、継手本体12の両端には、押輪18が設けられる。押輪18は、ゴム輪16を軸方向に押圧可能な押圧部材であって、短円筒状の押し部18aと、押し部18aのゴム輪16と反対側の一方端から径方向外側に張り出すフランジ部18bとを含む。フランジ部18bには、周方向に所定間隔で並ぶ複数(この実施例では7つ)の孔が形成される。そして、フランジ部18bの各孔のそれぞれに挿通した両ねじボルト26およびその両端に取り付けられるナット28によって、押輪18同士が連結される。
【0029】
このような分岐継手10では、ナット28を締め付ける前の状態においては、上述のように、ゴム輪16は本管100の外径と略同じ大きさの内径を有する。一方、両ねじボルト26に対してナット28を締め付けると、2つの押輪18が互いに近づく方向に移動する。すると、ゴム輪16の一方端面が押輪18の押し部18aによって軸方向に押圧され、ゴム輪16の他端面がゴム輪装着部24のテーパ面24aに押し付けられる。このように軸方向に圧縮されたゴム輪16は、径方向に伸長するように変形する。
【0030】
以下、
図5を参照して、この実施例の分岐部の施工方法によって、分岐部を有する管路を新規に施工する手順の一例について説明する。この実施例では、上述の分岐継手10を用いて、本管100に対して分岐管102を接続するための分岐部を形成する。
【0031】
先ず、
図5(a)に示すように、本管部材を軸方向に適宜連結して、分岐部の施工箇所(分岐箇所)の手前まで本管100を施工する。本管100を構成する本管部材としては、たとえば、一方端にゴム輪受口を有する片受け直管などの直管100aおよび両端にゴム輪受口を有する両受け曲管などの曲管100bを用いるとよい。ただし、接着接合や融着接合などによって連結される本管部材を用いることもできる。
【0032】
次に、
図5(b)に示すように、本管100を穿孔して分岐孔104を形成する。具体的には、施工済みの本管100の管端から分岐箇所までの距離を計測する。そして、接続前の直管(本管部材)100aに対して、計測した施工済みの本管100の管端から分岐箇所までの距離に応じた位置に、ホールソー等を用いて分岐孔104を形成する。分岐孔104の大きさは、分岐継手10の分岐管接続部14の基端部の内径とほぼ同じまたは少し大きい径とするとよい。また、直管100aの差口には、施工済みの本管100のゴム輪受口に挿入するための面取り加工を施しておく。
【0033】
ここで、分岐孔104を形成する直管100aとしては、基本長さ(たとえば全長が5323mmであって接続時の有効長が5000mm)の直管100aを切断することなくそのまま用いるとよい。これは、従来のゴム輪接合タイプの分岐継手を用いる分岐部の施工方法(
図10および
図11参照)と違って、本管100の管端の間に分岐継手10を挟み込む必要がないからである。すなわち、この実施例では、本管100の外周面上をスライド可能な分岐継手10を用いることによって、分岐箇所に合わせて本管100を切断する作業を省略できる。
【0034】
本管100に分岐孔104を形成すると、続いて、
図5(c)に示すように、本管100に分岐継手10を外嵌し、分岐継手10をスライドさせて分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせる。そして、その位置で分岐継手10を本管100に対して水密的に固定する。
【0035】
具体的には、押輪18によってゴム輪16を押圧する前の状態の分岐継手10の継手本体12内に、分岐孔104を形成した直管100aの差口側の管端を挿入することによって、直管100aに分岐継手10を外嵌する。そして、直管100aの外周面上に沿って分岐継手10をスライドさせて、分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせる。この際、ゴム輪16が非押圧状態である分岐継手10においては、ゴム輪16は本管100の外径と略同じ大きさの内径を有するので、本管100の管端に対する面取り加工の有無に関係なく、継手本体12内に本管100を容易に差し込むことができる。また、分岐継手10をスライドさせる際には、ゴム輪16による抵抗がほとんど作用しないので、容易に分岐継手10をスライドさせることができる。
【0036】
分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせると、その位置で分岐継手10を本管100に対して水密的に固定する。すなわち、分岐継手10のナット28を締め付けることで、押輪18によってゴム輪16を圧縮変形させて、分岐継手10のゴム輪装着部24の内周面および直管100aの外周面に一定以上の止水面圧でゴム輪16を密着させる。これによって、直管100aと分岐継手10とが水密的に固定される。
【0037】
直管100aに対して分岐継手10を固定すると、続いて、
図5(d)に示すように、施工済みの本管100のゴム輪受口に対して分岐継手10を固定した直管100aの差口を挿入して接合する。これによって、本管100の分岐箇所に分岐継手10が設けられ、本管100に分岐管102を接続するための分岐部が施工される。その後、施工済みの本管100に対して、直管100aなどの本管部材を順次接合すると共に、分岐継手10の分岐管接続部14に分岐管102を接合することによって、
図1に示すような本管100に分岐管102が接続された管路が施工される。
【0038】
ここで、この実施例では、本管100の外周面上に沿って分岐継手10をスライドさせることによって、本管100の分岐箇所に分岐継手10を配置する。このため、上述のように、分岐箇所に合わせて本管100(直管100a)を切断する必要がない。また、分岐箇所には本管100の管端が存在せず、分岐箇所において本管100の管端に面取り加工を施す必要がない。すなわち、この実施例では、分岐継手10を用いることによって、従来のゴム輪接合タイプの分岐継手を用いる分岐部の施工方法(
図10および
図11参照)で必要であった、分岐箇所において本管100の管端に施す2ヶ所分の面取り加工を省略できる。
【0039】
また、
図11に示す従来の分岐部の施工方法では、管路が内圧管であって、曲り部7の近くに分岐部を設ける場合には、曲り部7に接続する本管6の一体化長さ(本管部材の長さ)Lが短くなってしまう。曲り部7との接続部から次の接続部までの本管6の一体化長さLが一定以上確保できないときには、不平均力(スラスト力)に対する防護として、離脱防止金具8を接続部に取り付ける等の抜け止め施工が別途必要となる。しかしながら、離脱防止金具8の装着作業には、手間および時間がかかる上、部品費用なども必要となるので、施工コストが嵩んでしまう。
【0040】
これに対して、この実施例では、分岐箇所に合わせて本管100(直管100a)を切断する必要がないので、曲管(曲り部)100bの近くに分岐部を設ける場合であっても、曲管100bに接続する本管100の一体化長さ(直管100aの長さ)Lを十分に大きくとることができる。このため、管路が内圧管の場合でも、不平均力(スラスト力)への拘束力に対して有利に作用し、分岐継手10の継手本体12や本管100に対して離脱防止金具を取り付ける等の抜け止め施工が不要となる。
【0041】
以上のように、この実施例によれば、本管100の外周面上をスライド可能な分岐継手10を用いて分岐部の施工を行うので、分岐箇所に合わせて本管100を切断する作業、および分岐継手10に接続する本管100の管端を面取り加工する作業が不要となり、作業負担を軽減できる。したがって、施工性に優れる。特に、本管100の切除および面取り加工の省略による作業負担の軽減効果は、本管100の口径が大きいほど顕著である。なお、この実施例では、本管100の穿孔作業が必要となるものの、本管100の切除および面取りにかかる作業負担に比べると、本管100の穿孔にかかる作業負担は遥かに軽い。
【0042】
また、この実施例によれば、管路が内圧管であって、曲り部の近くに分岐部を設ける場合でも、曲り部に接続する本管100の一体化長さLを十分に大きくとることができるので、分岐継手10の継手本体12や本管100に対する抜け止め施工が不要となる。したがって、作業負担を軽減でき、施工コストも低減できる。
【0043】
なお、上述の実施例では、本管部材(直管100a)に分岐孔104を形成した後、本管部材に分岐継手10を外嵌して、分岐継手10を所定位置までスライドさせて固定し、その後、分岐継手10を固定した本管部材を施工済みの本管100に接続するようにしたが、これらの作業を行う順序は適宜変更可能である。たとえば、本管部材に分岐継手10を外嵌した後、本管部材に分岐孔104を形成し、その後、分岐継手10を所定位置までスライドさせて固定することもできる。また、たとえば、本管部材に分岐継手10を外嵌した後、施工済みの本管100にその本管部材を接続し、その後、分岐孔104を形成することもできる。
【0044】
また、上述の実施例では、管路を新設する場合について説明したが、この発明に係る分岐部を施工する方法は、分岐部を含む既設管路を補修する場合、或いは既設管路に分岐部を増設する場合などにも適用できる。
【0045】
以下、
図6を参照して、分岐部または分岐部近傍の本管100が損傷等した場合に、この発明の他の実施例である分岐部の施工方法によって、その損傷部分を補修する手順の一例について説明する。なお、上述の
図5に示す実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0046】
先ず、
図6(a)に示すように、既設管路において分岐継手110またはその近傍の本管100が損傷等した場合には、分岐継手10周囲の本管100および分岐管102を切断し、その損傷部分を含む管路を除去する。また、切断した本管100の管端間の距離、および本管100の一方側の管端から分岐箇所までの距離などを計測しておく。
【0047】
次に、
図6(b)に示すように、本管100を穿孔して分岐孔104を形成し、本管100に分岐継手10を外嵌する。そして、分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせて固定する。
【0048】
具体的には、本管100の管端間の距離に対応する長さの直管(本管部材)100aを用意し、この直管100aに対して、本管100の一方端から分岐箇所までの距離に応じた位置に分岐孔104を形成する。そして、本管100に分岐継手10を外嵌し、分岐継手10をスライドさせて分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせる。その後、分岐継手10のナット28を締め付けることで、押輪18によってゴム輪16を圧縮変形させて、直管100aと分岐継手10とを水密的に固定する。
【0049】
続いて、
図6(c)に示すように、直管100aの差口と接続する側の本管100に対してドレッサ(やりとり継手)106を外嵌した後、もう一方の本管100の管端に対して分岐継手10を固定した直管100aのゴム輪受口を外嵌して接合する。そして、ドレッサ106を直管100a側にスライドさせて、直管100aと本管100とをやりとり接続する。また、分岐管102にドレッサ108を外嵌すると共に、分岐継手10の分岐管接続部14に対して長さ調整した分岐管部材を接続する。そして、ドレッサ108を分岐管部材側にスライドさせて、分岐管部材と分岐管102とをやりとり接続する。
【0050】
これによって、分岐部を含む管路(本管)の補修が完了し、
図6(d)に示すような本管100に対して分岐管102が接続された管路が施工される。
【0051】
ここで、従来のゴム輪接合タイプの分岐継手を用いて本管の分岐部を補修する場合には、分岐継手を本管に挟み込むように接合するので、分岐継手に接続する2つの本管部材を用意する必要がある。つまり、分岐箇所において本管が切断されている必要がある。また、分岐継手のゴム輪受口に差し込む側の各本管部材の管端には、面取り加工を行う必要がある。さらに、本管側では、分岐継手の両側の2ヶ所において、ドレッサを用いて本管部材と本管とをやりとり接続する必要がある。
【0052】
これに対して、この実施例では、本管100の外周面上に沿って分岐継手10をスライドさせることによって、本管100の分岐箇所に分岐継手10を配置する。このため、分岐箇所に合わせて本管100を切断する必要がなく、本管100の管端に面取り加工を施す必要もない。また、本管100側では、分岐継手10の片側の1ヶ所においてやりとり接続を行うだけでよい。
【0053】
以上のように、
図6に示す実施例においても、本管100の外周面上をスライド可能な分岐継手10を用いて分岐部の施工を行うので、分岐箇所に合わせて本管100を切断する作業、および分岐継手10に接続する本管100の管端を面取り加工する作業が不要となり、作業負担を軽減できる。したがって、施工性に優れる。
【0054】
また、本管100側では、分岐継手10の片側の1ヶ所においてやりとり接続を行うだけでよいので、使用するドレッサ106の数を低減できる。
【0055】
なお、上述の各実施例では、本管100に対して分岐孔104を単に形成するだけであったが、
図7に示すように、分岐継手10をスライドさせて分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせる前に、本管100の分岐孔104周縁部の外周面に対して、補強部材50を設けるようにしてもよい。
【0056】
たとえば、補強部材50は、FRPおよび硬質塩化ビニル等の合成樹脂またはステンレス等の金属などの硬質材によって形成される。補強部材50は、本管100の外周面に沿う内周面を有するサドル状に形成され、補強部材50の中央部には、本管100に形成される分岐孔104と略同じ大きさの孔50aが形成される。補強部材50の大きさは、分岐孔104の大きさに応じて適宜設定され、たとえば、軸方向長さおよび周方向長さのそれぞれが300mmとされる。なお、補強部材50の厚みは、本管100の外周面上に沿って分岐継手10をスライドさせるときの邪魔にならないように、2mm以内に設定することが好ましい。
【0057】
補強部材50を本管(本管部材)100に取り付けるときには、本管100の分岐孔104の位置と補強部材50の孔50aの位置とを合わせた状態で、本管100の外周面と補強部材50の内周面とを接着接合するとよい。そしてその後、補強部材50を取り付けた本管100の外周面上に沿って分岐継手10をスライドさせて、分岐孔104の位置と分岐管接続部14の位置とを合わせ、本管100に対して分岐継手10を固定するとよい。
【0058】
このように、補強部材50を取り付ける工程を加えることによって、本管100の分岐孔104周縁部の強度を向上させることができ、分岐管102側から本管100に加えられる荷重に対する抵抗力が向上する。
【0059】
なお、補強部材50の内周面には、孔50aの周縁に沿って連続的または離散的に形成される環状の突起(図示せず)が設けられていてもよい。この環状の突起を本管100の分岐孔104に嵌め込むことによって、本管100の分岐孔104と補強部材50の孔50aとの位置合わせが容易となるので、施工性が向上する。
【0060】
また、補強部材50に対して孔50aを予め形成しておく必要はなく、本管100に補強部材50を取り付けた後に、孔50aを形成することもできる。たとえば、分岐孔104を形成する前の本管100に対して孔なしの補強部材50を接着接合し、その後、重なった状態の補強部材50および本管100をホールソー等を用いて一度に穿孔するようにしてもよい。つまり、本管100の分岐孔104と補強部材50の孔50aとを一度に形成してもよい。
【0061】
また、上述の各実施例では、押圧部材として押輪18を用いてゴム輪16を圧縮変形させるようにしたが、ゴム輪16および押圧部材の具体的形状、および押圧部材によるゴム輪16の圧縮方式などについては、適宜変更可能である。
【0062】
たとえば、
図8に示すように、押輪18のフランジ側面と継手本体12の管端との間に断面円形状のゴム輪16を設け、押輪18を継手本体12側に移動させることによってゴム輪16を押圧して圧縮変形させることもできる。また、たとえば、
図9に示すように、継手本体12の管端外周面にフランジ52を設け、このフランジ52と押輪18とをT頭ボルト54およびナット28等を介して連結することによって、継手本体12の両側に配置される押輪18を個別に移動させるようにしてもよい。さらに、押圧部材として締め込みリングを用いてゴム輪16を圧縮変形させることもできる。
【0063】
さらに、上述の各実施例では、分岐継手10の分岐管接続部14には、離脱防止リング22を内蔵したゴム輪受口を採用したが、これに限定されず、分岐管接続部14には、適宜の接合方式を採用できる。たとえば、分岐管接続部14は、離脱防止リングなしのゴム輪受口、接着受口、差口およびフランジ等であってもよい。
【0064】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。