【課題】撚りの入った樹脂含浸ストランドを硬化して作製された繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチックストランド、及び、該扁平繊維強化プラスチックストランドを使用して作製された扁平繊維強化プラスチックストランドシートを提供する。
【解決手段】扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造方法によれば、(a)多数本の強化繊維fを含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドf2を緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルト41A、41Bの間に送給し、(b)樹脂含浸ストランドf2をスチールベルト41A、41Bにて挟持して加熱すると共に、樹脂含浸ストランドf2をその両面側から加圧してストランドの断面形状を扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却する。
前記樹脂含浸ストランドは、500g/本〜10kg/本の強さにて緊張されることを特徴とする請求項1又は2に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法。
回転移動する前記スチールベルトに常時、或いは、定期的に離型剤を塗布し、更にスチールベルトを加熱することで離型剤を焼き付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法。
前記(b)工程にて作製され、前記スチールベルトから分離して送出された前記扁平繊維強化プラスチックストランドの表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去することを特徴とする請求項4に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法。
(a)多数本の強化繊維を含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドを多数本、このストランドの長手方向に沿って一方向に引き揃えて平面状に並べ、緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルトの間に送給し、
(b)前記樹脂含浸ストランドを前記スチールベルトにて挟持して加熱すると共に、前記樹脂含浸ストランドをその両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却して扁平繊維強化プラスチックストランドを作製し、
(c)その後、平面状に配列された前記各扁平繊維強化プラスチックストランドを固定部材にて一体に保持し、シート状とする、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法。
前記樹脂含浸ストランドは、500g/本〜10kg/本の強さにて緊張されることを特徴とする請求項6又は7に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法。
回転移動する前記スチールベルトに常時、或いは、定期的に離型剤を塗布し、更にスチールベルトを加熱することで離型剤を焼き付けることを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法。
前記(b)工程にて作製された前記扁平繊維強化プラスチックストランドの表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去し、その後、前記工程(c)工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法。
前記(c)工程にて、平面状に配列された前記各扁平繊維強化プラスチックストランドは、その長手方向に沿って所定の間隙(g)が形成されていることを特徴とする請求項6〜10のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の製造方法では、ピールプライ(剥離クロス材)などの副資材を用いることが必須とされ、材料費や設備費、更には使用済み副資材の廃棄など多くの問題がある。
【0009】
本発明者らは、上記特許文献1、2に記載される技術を基にして、更に研究実験を行い、撚りの入った樹脂含浸された未硬化の樹脂含浸ストランドを、加熱した2枚のスチールベルトで挟持することにより扁平化しながら硬化して扁平形状の繊維強化プラスチックストランド(扁平繊維強化プラスチックストランド)を極めて効率よく製造し得ることを見出した。
【0010】
本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づくものである。
【0011】
本発明の目的は、撚りの入った樹脂含浸ストランドを硬化して作製された繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチックストランド、及び、該扁平繊維強化プラスチックストランドを使用して作製された扁平繊維強化プラスチックストランドシートを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、副資材の使用をなくし、材料費や設備費、更には使用済み副資材の廃棄などの問題を解決した、上記扁平繊維強化プラスチックストランド及び扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る扁平繊維強化プラスチックストランド、扁平繊維強化プラスチックストランドシート及びその製造方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、(a)多数本の強化繊維を含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドを緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルトの間に送給し、
(b)前記樹脂含浸ストランドを前記スチールベルトにて挟持して加熱すると共に、前記樹脂含浸ストランドをその両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却する、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法が提供される。
【0014】
第2の本発明によれば、(a)多数本の強化繊維を含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドを多数本、このストランドの長手方向に沿って一方向に引き揃えて平面状に並べ、緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルトの間に送給し、
(b)前記樹脂含浸ストランドを前記スチールベルトにて挟持して加熱すると共に、前記樹脂含浸ストランドをその両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却して扁平繊維強化プラスチックストランドを作製し、
(c)その後、平面状に配列された前記各扁平繊維強化プラスチックストランドを固定部材にて一体に保持し、シート状とする、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法が提供される。
【0015】
第1及び第2の本発明の一実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドの撚り回数は、5回/m〜30回/mである。
【0016】
第1及び第2の本発明の他の実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドは、500g/本〜10kg/本の強さにて緊張される。
【0017】
第1及び第2の本発明の他の実施態様によれば、回転移動する前記スチールベルトに常時、或いは、定期的に離型剤を塗布し、更にスチールベルトを加熱することで離型剤を焼き付ける。
【0018】
第1及び第2の本発明の他の実施態様によれば、前記(b)工程にて作製された前記扁平繊維強化プラスチックストランドの表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去する。
【0019】
第2の本発明の他の実施態様によれば、上記第2の本発明における前記(b)工程にて作製された前記扁平繊維強化プラスチックストランドの表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去し、その後、前記工程(c)工程を行う。
【0020】
第2の本発明の他の実施態様によれば、前記(c)工程にて、平面状に配列された前記各扁平繊維強化プラスチックストランドは、その長手方向に沿って所定の間隙(g)が形成されている。
【0021】
第2の本発明の他の実施態様によれば、前記所定の間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmである。
【0022】
第3の本発明によれば、横断面形状が扁平とされる繊維強化プラスチックストランドであり、前記繊維強化プラスチックストランドは、上記第1の本発明の上記扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法によって製造され、厚さ(t)が0.2〜5.0mm、幅(w)が1.0〜10.0mmとされる、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチックストランドが提供される。
【0023】
第4の本発明によれば、平面状に配列された扁平繊維強化プラスチックストランドを固定部材にて一体に保持し、シート状とした扁平繊維強化プラスチックストランドシートであって、
前記繊維強化プラスチックストランドシートは、上記第2の本発明の上記扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法によって製造され、
前記扁平繊維強化ストランドは、厚さ(t)が0.2〜5.0mm、幅(w)が1.0〜10.0mmとされる、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチックストランドシートが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチックストランド、及び、該扁平繊維強化プラスチックストランドを使用して作製された扁平繊維強化プラスチックストランドシートを提供することができる。また、本発明によれば、副資材の使用をなくし、材料費や設備費、更には使用済み副資材の廃棄などの問題を解決した、上記扁平繊維強化プラスチックストランド及び扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る扁平繊維強化プラスチックストランド及びその製造方法、並びに、扁平繊維強化プラスチックストランドを用いて作製された扁平繊維強化プラスチックストランドシート及びその製造方法について、図面に即して詳しく説明する。
【0027】
実施例1
(扁平繊維強化プラスチックストランド及び扁平繊維強化プラスチックストランドシート)
先ず、本発明の製造方法によって作製される横断面が扁平形状の繊維強化プラスチック線材、即ち、扁平繊維強化プラスチックストランド2について説明する。
【0028】
図8に、本発明の製造方法で製造される扁平繊維強化プラスチックストランド2の横断面を示す。扁平繊維強化プラスチックストランド2は、横断面形状が扁平形状、即ち、矩形状とされ、複数本の強化繊維fにマトリックス樹脂Rが含浸され、樹脂硬化された線材である。
【0029】
本発明の製造方法で製造される扁平繊維強化プラスチックストランド2は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mm、が妥当である。厚み(t)が0.2mm未満であると、製造時に強化繊維fの破断が頻発する。一方、厚み(t)が5.0mmを超えると、詳しくは
図1を参照して後で説明されるが、樹脂含浸強化繊維束(樹脂含浸ストランド)f2を巻き取り用ボビン22に巻き取る際に、繊維fの腰折れが発生し、硬化後の扁平繊維強化プラスチックストランド2の強度等の物性低下が著しくなる。扁平繊維強化プラスチックストランド2は、特に、厚み(t)0.4mm〜1.5mm、幅(w)1.2mm〜4.5mm、が好適である。
【0030】
一方、本発明の製造方法においては、強化繊維としては、炭素繊維が最も好適に使用し得るが、これに限定されるものではなく、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維とされ、その中のいずれか一種又は複数種を混入して使用することができる。
【0031】
マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかとされる。
【0032】
次に、上記扁平繊維強化プラスチックストランド2を使用して作製される扁平繊維強化プラスチックストランドシートについて説明する。
【0033】
図9に示すように、扁平繊維強化プラスチックストランドシート1は、扁平繊維強化プラスチックストランド2を一方向に引き揃えてスダレ状に配置し、各線材2を互いに空隙(g)(g=0.1〜3.0mm)だけ近接離間して、固定用繊維材3にて固定したものである。
【0034】
このようにして作製された扁平繊維強化プラスチックストランドシート1は、使用される目的に応じて適宜決定されるが、取り扱い上の問題から、一般には、全幅(W)は100mm〜500mmとされ、長さ(L)は100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
【0035】
上述した固定用繊維材3は、
図9にて緯糸3bのみとすることもできるが、図示するように、縦糸3a及び緯糸3bから成る2軸構成のメッシュ状織物とすることができる。勿論、1軸、2軸構成に限定されるものではなく、3軸、その他の多軸構成のメッシュ状織物とすることもできる。なお、本実施例のメッシュ状織物3にて各縦糸3a、緯糸3bの離間距離w1、w2は、これに限定されるものではないが、作製された繊維シート1の取り扱い性を考慮して、通常0.1〜100mm間隔の範囲で選定される。離間距離w1、w2は、同じでもよく、異なる値とすることもできる。
【0036】
糸条としては、直径50〜1000μmとされる、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維などの合糸品を使用することができる。
【0037】
固定用繊維材3としては、本実施例では、メッシュ状織物を使用する態様について説明したが、これに限定されるものではない。従来使用されている、織物ではなく単に糸条を互いに重ね合わせて融着した1軸、2軸、又はそれ以上の多軸で作製された融着メッシュ支持体シートを使用できる。融着メッシュ支持体シートとしては、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させた糸条からなる2軸以上の多軸で作製された融着メッシュ支持体シート、又は、芯部をなす直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維の表面に熱融着性樹脂(例えば、熱融着性ポリエステル)を配した二重構造の複合繊維からなる融着メッシュとされる支持体シートなども使用し得る。
【0038】
更に、固定用繊維材3としては、ガラス繊維或いは有機繊維などにて作製される厚さが0.1〜0.3mm程度とされる不織布等も使用し得る。
【0039】
扁平繊維強化プラスチックストランド2及び扁平繊維強化プラスチックストランドシート1などの更に詳しい構成は、以下に説明する扁平繊維強化プラスチックストランド2及び扁平繊維強化プラスチックストランドシート1の製造方法の説明においてより明らかとなるであろう。
【0040】
(扁平繊維強化プラスチックストランドの製造方法及び装置)
次に、扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造方法について説明する。
【0041】
図1〜
図5に、本発明に係る扁平繊維強化プラスチックストランド2を製造するための製造装置100(100A、100B)の一実施例を示す。
【0042】
本実施例にて、扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造装置100(100A、100B)は、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100A(
図1)と、扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却、及び引き取りセクション100B(100B1、100B2、100B3)(
図3)とにて構成される。
【0043】
図1は、製造装置100における繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aを示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成るストランド(繊維束)f1が移動し、その間に撚り加工と樹脂含浸を行い、樹脂含浸ストランドf2を作製する。
【0044】
図3は、製造装置100の扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100Bを示しており、撚り加工と樹脂含浸工程を施された樹脂含浸ストランドf2が図面上、左側から右側に移動し、ストランドf2の扁平形状成形と樹脂硬化を行い、扁平繊維強化プラスチックストランド2を作製する。
【0045】
更に説明すると、
図1に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、複数(通常、3〜18個)の、本実施例では図面を簡単とするために2つの繊維供給用の巻き出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束したストランドf1が巻回されている。
【0046】
各ボビン11に巻回されたストランドf1は、樹脂含浸槽17が配置された樹脂含浸工程へと連続的に送給される。同時に、ストランドf1には撚りが入れられる(繊維束供給、撚り加工工程)。
【0047】
つまり、樹脂含浸工程へと送給されたストランドf1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸され、樹脂含浸されたストランドf2は、撚りが入った状態で巻き取り用ボビン22(22a、22b)に巻き取られる(樹脂含浸、撚り加工工程)。
【0048】
図3に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100Bでは、樹脂含浸され、且つ、撚りが入れられたストランドf2は、少なくとも1本以上の、通常、複数本のストランドf2が、通常、50〜300個とされる複数のボビン22から、本実施例では図面を分かり易くするために2個とされるボビン22(22a、22b)から巻き出され、緊張されて、扁平成形(加熱・加圧・硬化)セクション100B1及び冷却セクション100B2を構成する加熱・加圧・硬化、冷却装置(以下、「成形硬化装置」という。)40へと導入される。樹脂含浸ストランドf2は、緊張状態にて加熱・加圧されることにより、横断面が丸形状のストランドf2が扁平形状に成形され、引き続いて、硬化され、冷却されることにより扁平繊維強化プラスチックストランド2となる。特に、後述するように、成形硬化装置40にて離型剤が使用される場合には、この離型剤をストランド2の表面から除去するために、離型剤除去手段50、例えば、ストランド表面研磨装置が配置される。従って、成形硬化装置40から送出される扁平繊維強化プラスチックストランド2は、引き取りセクション100B3にて表面研磨装置50により、各扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面が研磨された後、直径1m以上の大径の巻取リール80により所定の速度で巻き取られる。
【0049】
このように、成形硬化装置40へと導入される撚りが入った樹脂含浸ストランドf2には、成形硬化装置40及び巻取リール80により加熱・加圧・硬化工程時において所定の緊張力が加えられることとなり、各樹脂含浸ストランドf2は、所定の緊張状態にて扁平形状に成形される。従って、並列状態にて加熱・加圧・硬化セクション100B1へと導入された多数本の樹脂含浸ストランドf2は、進行方向に整列した状態にて加熱・加圧・硬化が行われ、ストランドf2(即ち、フィラメントf)の配向の乱れが抑制される。
【0050】
次に、上記各工程を、更に詳しく説明する。
【0051】
・繊維束供給、撚り加工工程
本実施例では、
図1、
図2を参照すると理解されるように、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、ボビン11(11a、11b)は、巻き出し装置51に設けられた回転軸12(12a、12b)に取り付けられ、さらに、この回転軸12は、巻き出し装置の回転主軸13(13a、13b)に回転自在に取り付けられている。
【0052】
各ボビン11(11a、11b)は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン11(11a、11b)の回転軸12(12a、12b)の回りに回転して、ボビン11(11a、11b)に巻回されたストランドf1を巻き出す。同時に、各ボビン11(11a、11b)は、それぞれ、上述のように、回転軸12(12a、12b)の回りに回転しながら、回転軸12(12a、12b)と共に回転主軸13(13a、13b)の回りに回転される。
【0053】
つまり、ボビン11は、回転軸12の回りに回転し、同時に回転主軸13の回りにも回転して、ストランドf1を巻き出す。
【0054】
ボビン11から巻き出されたストランドf1は、ガイド14に形成したガイド穴15(15a、15b)により案内され、入口ガイドロール16により樹脂含浸槽17内へと導入される。
【0055】
上記構成により、樹脂含浸槽17を設けた含浸工程へと供給されるストランドf1には撚りが入ったものが供給される。
【0056】
ボビン11の回転主軸13の回りの回転数と、ストランドf1の巻き出しスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0057】
本実施例によると、上述したように、例えば、厚さ(t)0.2〜5.0mm、幅(w)1.0〜10.0mmの扁平繊維強化プラスチックストランド2を作製するために、扁平成形(加熱・加圧・硬化)セクション100B1に送入される前の撚りの入った樹脂含浸ストランドf2の線径は、直径(d)(
図6(a))が0.8〜3.0mmであることが好ましい。従って、含浸工程へと供給されるストランドf1は、例えば強化繊維が炭素繊維とされる場合などには、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを6000〜60000(60K)本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0058】
更に説明すると、本実施例の製造法で製造される扁平繊維強化プラスチックストランド2には、撚りが1m当り5回から30回(5回/m〜30回/m)の範囲のいずれかで入れられている。特に50K〜60K程度の大径のストランドf2においては、5回/m未満であると樹脂硬化前にテンションをいれても安定した円形状(丸形状)を確保するのが難しく、撚りが30回/mを越えると扁平形状への成形が難しくなり、30回/mを越えることは好ましくない。特に、撚りは、10回/mから25回/mの範囲が最適である。
【0059】
・樹脂含浸工程
樹脂含浸槽17には、マトリックス樹脂Rが収容されており、含浸槽17の入口部には、上述のように、ストランドf1を案内する入口ガイドローラ16が配置されている。また、含浸槽17内には、含浸ローラ18が配置されており、含浸槽17の出口部には出口ガイドローラ対19が配置されている。
【0060】
入口ガイドローラ16は、ストランドf1に樹脂を含浸させる工程において、含浸槽17に供給されるストランドf1を構成する複数の強化繊維fを、含浸前に揃える役目である。
【0061】
含浸ローラ18は、ストランドf1を強制的に樹脂Rに浸ける役目で、含浸槽17に溜められた樹脂Rの中に、少しでも浸かった状態で使用される。
【0062】
出口ガイドローラ対19(19a、19b)は、樹脂が含浸されたストランドf2をしごく役目で、ここで樹脂付着量が制御される。
【0063】
つまり、上下のローラ19a、19bのすき間及び押し付け圧力を制御することにより、樹脂含浸ストランドf2の含浸樹脂量が制御される。
【0064】
本実施例では、樹脂含浸ストランドf2における強化繊維fの含有量(Vf)は、強化繊維の体積比率で30%〜70%であることが好ましい。
【0065】
更に説明すると、強化繊維含有量が体積比率(Vf)で30%未満であると繊維量が少ないため強度等の物性が低下する。一方、70%を越えると樹脂不足となり、これも又、製造後の線材の強度等の物性が低下する。従って、強化繊維の体積比率は、40%〜60%の範囲が最適である。
【0066】
又、本実施例の製造方法においては、上述したように、強化繊維としては、炭素繊維が最も好適に使用し得るが、これに限定されるものではなく、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維の一種又は複数種を混入して使用することができる。
【0067】
マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が使用可能であるが、中でもエポキシ樹脂が好適に使用される。高温で使用されるマーケット、特殊耐食性の要求されるマーケット等の特殊用途向けに他の樹脂が用いられる。
【0068】
樹脂含浸されたストランドf2は、ガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b)により案内され、巻き取り装置52における巻き取りボビン22(22a、22b)により巻き取られる。
図6(a)に撚りが入った且つ樹脂Rが含浸されたストランドf2を示す。
【0069】
各巻き取りボビン22は、それぞれ、回転軸23(23a、23b)の回りに回転駆動されている。
【0070】
樹脂含浸されたストランドf2を巻きつけたボビン22は、
図3に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却セクション100B1、100B2における加熱・加圧・硬化、冷却工程を経て引き取りセクション100B3へと供給される。
【0071】
・加熱・加圧・硬化成形、冷却工程及び引き取り工程
図3を参照すると、加熱・加圧・硬化成形、冷却セクション(以下の説明では、単に「成形硬化セクション」と記載することもある。)100B1及び100B2では、上記巻き取り装置52にて樹脂含浸ストランドf2を巻き取ったボビン22(22a、22b)が、巻き出し装置53の回転軸24(24a、24b)に設置される。即ち、巻き取りボビン22は、加熱・加圧・硬化及び冷却硬化工程における巻き出しボビンとして機能する。
【0072】
巻き出しボビン22(22a、22b)に巻かれた樹脂含浸した、撚り加工済みの樹脂含浸未硬化ストランドf2は、ボビン22より巻き出される。ストランドf2は、巻き出し装置53と、成形硬化セクション100B1、100B2を構成する成形硬化装置40との間、及び、成形硬化装置40と後述の引き取り装置80との間にて所定の緊張力が付与された状態にて、成形硬化装置40を通され、扁平繊維強化プラスチックストランド2とされる。扁平繊維強化プラスチックストランド2は、その後引き取りセクション100B3へと緊張下に送給される。
【0073】
更に説明すると、成形硬化セクション100B1、100B2のこの巻き出し装置53には、電磁ブレーキ等の機能が付与されており、ボビン22から巻き出される未硬化樹脂含浸ストランドf2に適切な緊張力を与えることができる。
【0074】
つまり、巻き出し装置53と成形硬化装置40との間で、撚りが入れられた、且つ、未硬化樹脂含浸のストランドf2に適切な緊張力を与えることにより、束となっている強化繊維fを一様に緊張し、成形硬化セクション100B1、100B2に送入される前のストランドf2の横断面形状を円形断面、即ち、丸形状とすることができる(
図6(b))。
【0075】
なお、本実施例にて、上述したように、炭素繊維束f1として6000〜60000本を収束した炭素繊維ストランドを使用した場合などには、緊張力としては、樹脂含浸されたストランドf2に500g/本から10kg/本の強さを付与するのが好ましい。500g/本未満だと、丸形状を確保するのが難しくなり、10kg/本を越えると製造途中で繊維fが破断するというトラブルが発生し、安定した製造ができなくなるという問題がでてくる。テンション力は、特に、2kg/本から8kg/本の範囲が最適である。
【0076】
尚、本願明細書にて、「円形」とは、断面における縦方向、横方向における直径比が1.0〜1.5の範囲内とされる「略円形」をも含めて意味するものとする。
【0077】
本実施例によると、上記構成の製造装置100にて、巻き出しボビン22から巻き出される撚り加工済みの、且つ、未硬化の樹脂含浸ストランドf2は、必要に応じて、ガイド部材25により案内され、
図6(b)に示すように、所定間隔(P1)に並べた状態で、加熱・加圧・硬化セクション100B1へと連続的に供給される。
【0078】
本実施例にて、上述のように、加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2は、
図3に示す成形硬化装置40にて実施される。成形硬化装置40は、本実施例では、上下方向に対称配置された上、下ベルト装置40A、40Bとされる。上、下ベルト装置40A、40Bは、本実施例では同じ構造とされるので、上ベルト装置40Aについて説明する。
【0079】
図3〜
図5(a)、(b)を参照して説明すると、上ベルト装置40Aは、スチールベルトとされるベルト本体41Aと、該ベルト本体41Aを巻回して回転移動させるための加熱加圧ローラ42Aと、冷却ローラ43Aと、加圧ローラ44Aとを備えている。ベルト本体41Aは、厚さt41が0.5〜1.5mmの無端状の鋼製のベルトなどを好適に使用し得る。本実施例では、厚さt41が1.0mm、幅w41(
図5(a)参照)が500mm、周長が5530mmのステンレススチールベルトを使用した。
【0080】
また、加熱加圧ローラ42Aは、
図3、
図5(a)に示すように、本実施例では、外径D42が500mm、胴長L42が600mmとされる円筒状の鋼製ドラムを使用し、ドラム内部に加熱源としての電気ヒータ(図示せず)を備えた構成とした。加熱加圧ローラ42Aは、加熱・加圧・硬化セクション100B1に位置し、樹脂含浸ストランドf2を加熱加圧するベルト本体41Aを所定温度、例えば、130℃〜180℃にまで加熱する。
【0081】
冷却ローラ43Aは、本実施例では、上記加熱加圧ローラ42Aと同様の鋼製ドラムを使用した。即ち、
図3、
図5(b)に示すように、外径D43が500mm、胴長L43が600mmの円筒状の鋼製ドラムを使用し、ドラムの内部に冷却系統(冷却水配管など)(図示せず)を配置した。冷却ローラ43Aは、冷却セクション100B2に位置したベルト本体41Aを所定温度に、例えば、5℃〜20℃程度にまで冷却する。
【0082】
上記本実施例の構成のベルト装置40Aでは、加熱加圧ローラ42Aと冷却ローラ43Aの離間距離、即ち、各ローラの回転軸線間の距離L40は1980mmであった。
【0083】
本実施例によると、加熱加圧ローラ42Aと冷却ローラ43Aとの間に位置して複数個の、本実施例では6個の加圧ローラ44Aが配置されている。加圧ローラ44Aは、本実施例では、直径D44が85mm、胴長L44(
図5(b)参照)は600mmとした。勿論、加圧ローラ44Aは、このような本実施例の形状、寸法構成に限定されるものではない。また、加圧ローラ44A自体も加熱源を有した加熱加圧ローラとしても良い。
【0084】
上述のように、本実施例では、下ベルト装置40Bも又、上記上ベルト装置40Aと同様の構成とした。従って、下ベルト装置40Bにて、上ベルト装置40Aと同様の構成及び機能をなす部材には、同じ参照番号に添え字「B]を付して示し、詳しい説明は省略する。
【0085】
ここで、特に、
図4及び
図5(a)、(b)をも参照して、成型硬化装置40の全体構成について更に説明する。
【0086】
成形硬化装置40は、上下方向に対称配置された上、下ベルト装置40A、40Bを支持するための筐体である、上ベルト装置40Aのための上フレーム70Aと、下ベルト装置40Bのための下フレーム70Bとを備えている。
【0087】
上フレーム70Aには、上ベルト装置40Aの加熱加圧ローラ42A、冷却ローラ43A、加圧ローラ44A、が回転自在に担持されており、これらローラ42A、43A、44Aにてスチールベルト41Aを回動自在に巻回している。同様に、下フレーム70Bには、下ベルト装置40Bの加熱加圧ローラ42B、冷却ローラ43B、加圧ローラ44Bが回転自在に担持されており、これらローラ42B、43B、44Bにてスチールベルト41Bを回動自在に巻回している。
【0088】
上記構成にて、本実施例によれば、上フレーム70Aは、例えば油圧装置とされる上下間隔調整手段(昇降装置)71(71a〜71d)を介して下フレーム70Bに上下動自在に支持されている。昇降装置71(71a〜71d)は、本実施例では各ベルト装置40A、40Bの各ローラ42(42A、42B)、43(43A、43B)、44(44A、44B)を回転自在に保持している上、下フレーム70A、70Bの両側部に対称配置にて合計4個配置されている。
【0089】
従って、上下間隔調整手段71(71a〜71d)を駆動することにより、上ベルト装置40Aが下ベルト装置40Bに対して上下方向に可動とされ、両スチールベルト41A、41Bの間隔G41(
図3)が所定の値に設定される。
【0090】
又、本実施例では、上、下ベルト装置40A、40Bの加熱加圧ローラ42A、42Bの回転軸に取付けた駆動プーリ72A、72Bと、下フレーム70Bに設置した駆動モータ73の駆動プーリ74と、張力調整ローラ75との間に張設された駆動ベルト76により、駆動モータ73が駆動されることにより加熱加圧ローラ42A、42Bが回転駆動され、それにより、上、下ベルト装置40A、40Bのスチールベルト41A、41Bが回転駆動される。従って、冷却ローラ43A、43B及び加圧ローラ44A、44Bも回転駆動される。スチールベルト41A、41Bは、例えば、0.1〜5m/分の範囲で一定の速度で移動される。
【0091】
従って、本実施例では、未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドf2が、少なくとも1本以上、通常、50〜300本のストランドf2が緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルト41A、41Bの間に送給される。スチールベルト41A、41Bは、加熱加圧ローラ42A、42Bを介して所定の温度に加熱されており、従って、樹脂含浸ストランドf2はスチールベルト41A、41Bにて挟持されることにより加熱される。更に、スチールベルト41A、41Bは、加熱加圧ローラ42A、42B及び加圧ローラ44A、44Bにより所定の距離G41に設定されているために、樹脂含浸ストランドf2は、スチールベルト41A、41Bによりその両面側から加圧され、ストランドf2の断面形状を丸形状から扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却ローラ43A、43Bにて冷却される。
【0092】
本発明によると、樹脂含浸ストランドf2は撚りが入っているので、スチールベルト加圧部で扁平に成形されたときに幅方向にも拘束されるため、一定幅の扁平ストランドが製造される。
【0093】
このように、上記本実施例で説明した具体的構成のベルト装置40A、40Bを備えた成形硬化装置40へと送給された樹脂含浸ストランドf2は、加熱・加圧・硬化セクション100B1にて所定の圧力及び温度にて加熱・加圧されて扁平形状へと成形され、そして硬化されて扁平繊維強化プラスチックストランド2とされる。本実施例では、所望の厚さ(t)の扁平繊維強化プラスチックストランド2を得るためにストランドf2を挟持しているベルト本体41A、41Bの間隔G41は、上述のように、上下ベルト装置間隔調整手段(昇降手段)71(71a〜71d)により適宜調整される。
【0094】
通常、成形硬化セクション100B1、100B2を移動するストランドf2の移動速度、並びに、加熱・加圧・硬化セクション100B1の加熱温度、加圧力、及び冷却セクション100B2の冷却温度は、含浸されている樹脂の種類、製品としての扁平繊維強化プラスチックストランド2の樹脂含浸量、などによって適宜決められる。加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2の長さLB1、LB2を長くすることにより、扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造スピードが上げられる。
【0095】
以上説明した本実施例の製造方法により、
図6(a)、(b)に示すように、丸形状断面を有する所定の間隔P1にて配列された複数本の樹脂含浸ストランドf2は、
図6(c)に示すように、加熱・加圧・硬化セクション100B1にて、横断面が矩形とされる扁平の樹脂未硬化のストランド2sに成形される。その後、扁平ストランド2sは、硬化されて扁平繊維強化プラスチックストランド2とされる。
【0096】
引き続いて、冷却セクション100B2にて冷却されてベルト41A、41Bから剥離された複数の扁平繊維強化プラスチックストランド2は、引き取りセクション100B3へと送給され、ストランド表面研磨装置50を経てリール80に巻き取られる。ストランド表面研磨装置50については、後で詳しく説明する。
【0097】
なお、成形硬化装置40のベルト41(41A、41B)に未硬化状態の扁平ストランド2sが粘着し、硬化された状態の扁平繊維強化プラスチックストランド2のベルト41A、41Bからの良好な剥離が阻害されるのを防止するために、ベルト41A、41Bの外表面は平滑に維持しておくことが好ましい。そのために、
図3に示すように、例えば磨き布などとされる研磨手段45(45A、45B)を設け、常時に、或いは、定期的に当接させて、スチールベルト表面を研磨するのが良い。また、必要に応じて、上記スチールベルト研磨手段45と共に、或いは、研磨手段45に代えて、離型剤塗布手段46(46A、46B)を設けることができる。離型剤塗布手段46を設け、ベルト表面に離型剤を薄く塗布することで継続して良好な剥離が可能となる。離型剤を使用した場合について説明すると次の通りである。
【0098】
本発明者らは、スチールベルト41(41A、41B)への樹脂付着を防止するために、スチールベルト表面にフッ素樹脂、シリコン樹脂、シロキサン樹脂などのコーティングや、テフロン材(「テフロン」:ポリテトラフルオロエチレンのデュポン社の商品名)を表層に用いるなどの離型処理を行うことを検討した。しかしながら、これらの離型処理にて得られる表面層は、スチールベルトの硬度に比べて硬さが大幅に減少し、熱硬化の繊維強化プラスチック材などの硬質材料をサンドイッチ成形する製造には、厚み精度が出にくいといった問題や、連続使用で変形したり傷が付くなどにして長期連続運転には耐えられないといった問題がある、ことが分かった。
【0099】
そこで、上述したように、スチールベルト41と樹脂含浸ストランドf2の樹脂との離型性を良くするために、スチールベルト表面に薄く離型剤を塗布し、更にスチールベルトを加熱することで離型剤を焼き付けることで、以下のことが分かった。
(1)離型紙や離型フィルムを用いなくてもスチールベルトへの樹脂付着を最少に抑えることができ、成形した扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面もきれいな仕上がりとなる。
(2)離型剤はごく薄い塗膜のため、テフロンフィルムのような柔らかさが無いため表面が変形したり傷が付くなどの不具合が無く、スチールベルト41の硬度がブレス成形にそのまま活かせ、厚み精度の良い製品に仕上げることができる。また、
(3)離型剤を定期的に塗布することにより、離型性が落ち表面コートのやり直しを行う必要などがないなど、長期連続製造が可能である。離型剤としては、フッ素系離型剤、シリコン系離型剤が好適に使用される。
【0100】
なお、スチールベルト表面に離型剤を塗布した場合には、成形した扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面に離型剤が付くため、その後の使い方によっては必要な接着性能が出ないといった問題がある。そのため離型剤を使用しない場合には、上述のように、ベルト41(41A、41B)と樹脂含浸ストランドf2との間に離型紙や離型フィルム又はピールプライ(剥離クロス材)などを用いることが考えられる。しかしながら、離型紙などの副資材を用いる場合は、材料費や設備費、更には使用済み副資材の廃棄など多くの問題が生じる。
【0101】
そこで、本実施例では、必要に応じて離型剤を使用した場合には、上述したように、成形硬化装置40の後に離型剤除去手段50としての表面研磨装置が設置される。表面研磨装置50としては、成形硬化された扁平繊維強化プラスチックストランド2の上下面を軽く、サンドペーパ、鉄ヤスリ、ブラスト処理によりストランド表面を研磨する装置とされる。このような簡単な研磨装置50によりストランド表面から離型剤が取れ、更には研磨の凹凸がアンカー効果によって、離型剤のない扁平繊維強化プラスチックストランド以上に接着性が向上することが実験の結果分かった。扁平繊維強化プラスチックストランドの離型剤除去は、上記表面研磨の他、溶剤、例えばトルエンなどを使用した薬剤洗浄装置なども採用可能である。
【0102】
なお、製品としての繊維強化プラスチックストランドの横断面が円形状とされる場合には、曲面の研磨が必要とされ、表面研磨が困難である。これに対して、本発明では、得られる製品の繊維強化プラスチックストランドの横断面は、繊維に撚りを入れた一定厚みの扁平形状とされており、そのため、例えば上述した#400〜#800程度のサンドペーパ等の使用により連続的な表面研磨が容易にできるようになった。
【0103】
上述のように、成形硬化装置40から送出される扁平繊維強化プラスチックストランド2は、引き取りセクション100B3にて表面研磨装置50により、各扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面が研磨された後、直径1m以上の大径の巻取リール80により所定の速度で巻き取られる。
【0104】
(扁平繊維強化プラスチックストランドシートの製造方法及び装置)
次に、扁平繊維強化プラスチックストランドシート1の製造方法について説明する。扁平繊維強化プラスチックストランドシート1を作製するための扁平繊維強化プラスチックストランド2は、
図1〜
図3などを参照して説明した扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造方法と同様にして製造され、従って、同様の製造装置100(100A、100B)を使用することができる。ただ、扁平成形、冷却及び引き取りセクション100Bにおける引き取りセクション100B3は、
図7に示すように、表面研磨装置50の後にシート化装置60が配置される点で異なるだけである。
【0105】
つまり、本発明に係る扁平繊維強化プラスチックストランドシート1を製造するための製造装置100(100A、100B)は、
図1に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100A(
図1)と、
図7に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却、及び引き取りセクション100B(100B1、100B2、100B3)とにて構成される。
【0106】
本実施例によると、
図1に示す製造装置100にて、上述したようにして、撚り加工と樹脂含浸工程を施された樹脂含浸ストランドf2が製造される。
【0107】
次いで、撚り加工と樹脂含浸工程を施されたストランドf2は、
図7に示す製造装置100の扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100Bにて、ストランドf2の扁平形状成形と樹脂硬化を行い、扁平繊維強化プラスチックストランド2を作製し、次いで、扁平繊維強化プラスチックストランドシート1が作製される。
【0108】
更に説明すれば、本実施例によれば、
図7に示すように、加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2にて冷却されてベルトから剥離された複数の扁平繊維強化プラスチックストランド2は、表面研磨装置50及びシート化装置60を経て扁平繊維強化プラスチックストランドシート1とされ、リール80に巻き取られる。
【0109】
上述したように、加熱・加圧・硬化及び冷却装置40から剥離された扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面は極めて平滑性が高く、また、場合によっては、離型剤が付着している場合もある。扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面平滑性が良いこと、或いは、表面に付着した離型剤は、製品としての扁平繊維強化プラスチックストランドシート1を補強材として構造物に接着する際に、或いは、RTM成型用FRP材として使用する場合には好ましくない。
【0110】
従って、成形硬化装置40の出口に、上述したように、例えば表面研磨装置50のような離型剤除去手段を設け、成形硬化装置40からの扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面を粗面化すること、また、扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面から離型剤を除去することが好ましい。
【0111】
表面研磨装置50により、その表面が所望の粗さに粗面化され、また、離型剤が除去された扁平繊維強化プラスチックストランド2は、
図6(c)に示すように、互いに間隔(g)を持って長手方向に引き揃えられた状態でシート化装置60に送給される。各扁平繊維強化プラスチックストランド2は、シート化装置60にて固定部材3が接着され、
図9に示すような扁平繊維強化プラスチックストランドシート1とされる。シート化装置60には、固定部材3を供給する固定部材供給手段61、及び、固定部材3を扁平繊維強化プラスチックストランド2に接着し、複数の扁平繊維強化プラスチックストランド2を一体化し、シート状とする加熱接着冷却加圧手段62が配置されている。
【0112】
つまり、本実施例にて、固定部材供給手段61は、上述したように、緯糸、メッシュ状部材などとされる固定部材3を、整列された扁平繊維強化プラスチックストランド2の両側或いは一側に供給し、次いで、加熱接着冷却加圧手段62にて一体とする。
【0113】
上記説明した本発明に従った扁平繊維強化プラスチックストランド2及び扁平繊維強化プラスチックストランドシート1の製造方法によれば、次のような特長を有している。
【0114】
本発明の製造方法では、所定の撚りをいれた樹脂含浸したストランドに適切な緊張力を付与することにより丸形状とされた樹脂含浸のストランドf2を、加熱したスチールベルト41A、41Bの間に挟んで加圧することにより、例えば50Kといった大径のストランドを用いて繊維目付の大きい、厚み(t)1.0mm〜2mm(繊維目付900〜1800g/m
2の)、幅(W)が5mm〜500mmとされる扁平繊維強化プラスチックストランドシート1を効率よく、即ち、大幅に成形歩留まりを増大して製造することができる。また、本実施例の製造方法によれば、樹脂含浸のストランドf2へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どないことが分かった。従って、特に、本発明の扁平繊維強化プラスチックストランドシート1は、高目付、高強度であるにも拘らず、変形性能が良く、RTM成型等に好適使用することができ、高強度の大型成型体を製造することができる。