(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-166683(P2015-166683A)
(43)【公開日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20150828BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20150828BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 L
G01T7/00 B
G01T1/161 B
G01T1/20 C
G01T1/161 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-40716(P2014-40716)
(22)【出願日】2014年3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克茂
(72)【発明者】
【氏名】竹下 徹
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188CC13
2G188CC21
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD17
4C188EE02
4C188GG15
4C188GG18
4C188GG19
4C188JJ05
4C188JJ12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】SPECT装置に例示される放射線検出装置において、コリメータ後部にシンチレータを配置する従来の方式による装置に対して、より小さな位置分解能を実現する放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線に反応して発光するシンチレータ20と、該シンチレータの発光を検出する光検出部30と、前記光検出部が検出した光を処理する信号処理部40と、前記シンチレータに入射する放射線を配向させるための貫通孔を備えたコリメータ10とを備える放射線検出装置であって、前記シンチレータが、前記コリメータの貫通孔の内径より小さく、かつ、前記コリメータの貫通孔内に配置されていることを特徴とする。上記構成を採用することにより、コリメータ終端部と、シンチレータ中心部との距離を0とすることができ、これにより、装置の位置分解能を向上させることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線に反応して発光するシンチレータと、前記シンチレータと対となるよう配置され該シンチレータの発光を検出する光検出部と、前記光検出部が検出した光を処理する信号処理部と、前記シンチレータに入射する放射線を配向させるための貫通孔を備えたコリメータとを備える放射線検出装置であって、前記シンチレータが、前記コリメータの貫通孔の内径より小さく、かつ、前記コリメータの貫通孔内に配置されていることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記光検出部が、ピクセル化光子検出器であることを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記コリメータが、前記貫通孔が面方向に複数配列したパラレルコリメータであって、前記光検出部が、前記貫通孔の配列と対応するように配列されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記シンチレータが、YSO、LSOから選択される1の結晶であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記シンチレータが、前記光検出部と接触していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記シンチレータが、前記光検出部と光ファイバによって接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【請求項7】
SPECT装置に用いるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記コリメータを構成する材料が金属であって、前記シンチレータが配置される箇所と配置されない箇所とで異なる金属であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSPECT(Single photon emission computed tomography:単一光子放射断層撮影)装置に関し、より詳細にはSPECT装置を構成する放射線検出装置の構成を特徴とする放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の体内に放射線源を投与し、被検者の外部からこの放射線源から放出される放射線を測定することにより、その代謝挙動を観測する方法の一つに、単一光子放射断層撮影(Single photon emission computed tomography; SPECT)がある。このSPECT装置は、体内の放射線源から全方向に放出される放射線を、コリメータにより検出器に入射する方向を規制することにより、放射線の入射位置を検出し、その位置ごとに放射線の強度を測定することにより、放射線の放出源の二次元画像を得るものである。
【0003】
従来のSPECT装置では、コリメータの背後にシンチレータを配置し、さらにその背後に光電子増倍管(PMT)を配置し、シンチレータに放射線が入射することにより発光した光を光電子増倍管により検出する方法で放射線を検出している。光電子増倍管の径はコリメータの径よりもはるかに大きいから、光電子増倍管は蜂の巣状に多数個配置したコリメータの背後に複数個配置し、複数の光電子増倍管の出力から放射線源を特定している。光電子増倍管は、放射線の強さ(エネルギー)を測定することができるから、複数本の光電子増倍管のエネルギー重心を求めることにより、管径が50mmにもなる光電子増倍管の大きさよりもかなり小さな分解能を達成している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002―341035号公報
【特許文献2】特開2012―189345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SPECTを用いた検査においては、被検者の体内にある微小な対象を検出する必要があるため、これら装置において、対象の位置を詳細に特定する位置分解能を向上させることは、当業者にとって重大な関心事である。特に、体内の微小な腫瘍等を検出するため、1mm程度の位置分解能を実現したSPECT装置が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであって、従来のSPECT装置より小さな位置分解能を実現する放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された放射線検出装置は、
【0008】
放射線に反応して発光するシンチレータと、前記シンチレータと対となるよう配置され該シンチレータの発光を検出する光検出部と、前記光検出部が検出した光を処理する信号処理部と、前記シンチレータに入射する放射線を配向させるための貫通孔を備えたコリメータとを備える放射線検出装置であって、前記シンチレータが、前記コリメータの貫通孔の内径より小さく、かつ、前記コリメータの貫通孔内に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された放射線検出装置は、請求項1に記載されたものであって、前記光検出部が、ピクセル化光子検出器であることを特徴とする。
【0010】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載された放射線検出装置は、請求項1または2のいずれか1項に記載されたものであって、前記コリメータが、前記貫通孔が面方向に複数配列したパラレルコリメータであって、前記光検出部が、前記貫通孔の配列と対応するように配列されていることを特徴とする。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された放射線検出装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載されたものであって、前記シンチレータが、YSO、LSOから選択される1の結晶であることを特徴とする。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された放射線検出装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載されたものであって、前記シンチレータが、前記光検出部と接触していることを特徴とする。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載された放射線検出装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載されたものであって、前記シンチレータが、前記光検出部と光ファイバによって接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項7に記載された放射線検出装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載されたものであって、SPECT装置に用いるものであることを特徴とする。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項8に記載された放射線検出装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載されたものであって、前記コリメータを構成する材料が金属であって、前記シンチレータが配置される箇所と配置されない箇所とで異なる金属であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のSPECT装置より小さな位置分解能の放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る放射線検出装置の断面図である。
【
図2】導光路を用いて装置を構成した本発明の断面図である。
【
図3】コリメータの長さ、厚さを変更したシミュレーション結果のグラフである。
【
図4】シミュレーション結果をy方向に投射したヒストグラムでる。
【
図5】シンチレータと光検出部を接続した試作機により光検出を行った結果のグラフである。
【
図6】シンチレータと光検出部を導光路で接続した試作機により光検出を行った結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
本発明に係る放射線検出装置は、装置を構成するコリメータ穴、シンチレータ、光検出部を一対一に対応せしめ、またこれと同時に従来コリメータの外側に配置されていたシンチレータを、コリメータの各開口部以下の大きさに分割し、コリメータの中に挿入することで、シンチレータの厚みから生じる位置分解能の低下を防止し、高い位置分解能での検出を可能にするものである。
【0020】
図1に、本発明に係る放射線検出装置の断面図を示す。図中、コリメータ10は、被検者から生じる放射線の点線源の位置を特定するため、点線源から平行に入射する光のみを通過させるよう、筒状の部材がマトリクス状に複数配列する構成となっている。ここに入射した光を、コリメータの後部に備えられた光検出部30が検出する。各光検出部により検出された光は、信号として信号処理部40により演算処理され、これにより被検者から発生した放射線の位置と強度を詳細に測定する。
【0021】
本発明における放射線検出装置では、コリメータの筒の長さを、シンチレータの厚み分延長し、光の接触面の大きさが、コリメータの開口部の径の大きさ以下のシンチレータをコリメータに挿入する。そして、シンチレータの後部に配置した光検出部により、前記シンチレータから発生した光を検出する。
【0022】
放射線検出装置における幾何学的位置分解能Rgは次式で表すことができる。
【0024】
ここで、aはコリメータの長さであり、a
eは、コリメータを突き抜けることで実際のコリメータの長さより短縮された長さである。また、bは点線源からコリメータまでの距離であり、cはコリメータ終端部からシンチレータ中心までの距離である。またdは、コリメータの各開口部の直径である。
【0025】
本発明に係る放射線検出装置においては、入射した放射線に反応するシンチレータがコリメータの内部に配置されているため、シンチレータの中心部は、コリメータの終端部より手前に配置されることとなる。そのため、上記式のうち、装置の位置分解能に影響するcが0となり、その分位置分解能を小さくすることが可能となる。
【0026】
また、従来法である重心法では、測定のために放射線のエネルギーを測定する必要があったが、本発明に係る放射線検出装置では、検出装置に入射した放射線のエネルギーが、所定の大きさを越えるかどうかのみを把握できれば良く、より少ない発光量のシンチレータを使用することが可能となる。これにより、必要に応じてよりバックグラウンドの小さいシンチレータを選択することを可能とし、同時に、後部に配置された信号処理回路を簡素な構成とすることを可能とする。
【0027】
本発明に係る放射線検出装置においては、光検出部の種類は特に限定せず、ピクセル化光子検出器、光電子増倍管、PINフォトダイオード等、本出願時点において、いわゆる当業者が使用可能な光検出部を適宜選択することが可能である。ただし、コリメータの開口部の中に挿入されたシンチレータの後部に直接配置するためには、部品の大きさが十分小さいことが望ましく、その点で、光検出部としては、ピクセル化光子検出器が望ましい。
【0028】
本発明に係る放射線検出装置においては、シンチレータの種類は特に限定せず、所望する放射線に反応する機能を有するものであれば、当業者が適宜選択することが可能である。使用可能なシンチレータの例としては、YSO(Y2SiO5:Ce)、GSO(Gd2SiO5:Ce)、LSO(Lu2SiO5)、LGSO(Lu2-xGdxSiO5: Ce)、LYSO(Lu2-xYxSiO5:Ce)、BGO(Bi4Ge3O12)、YAP系結晶(YAlO3)が挙げられ、良好な反応とバックグラウンドの抑制を両立するためには、YSO、LSOが特に好ましい。
【0029】
本発明に係る放射線検出装置においては、コリメータの開口径以下の大きさのシンチレータそれぞれについて、発光を検出するため、また、シンチレータからの光の減衰を少なくするために、シンチレータと光検出部を直接接触して、または並べて配置することが好適である。また、その他の構成として、例えば、シンチレータの後部から光検出部まで導光路を設けることにより、光検出部は、シンチレータの位置に制限されることなく、装置内に自由に配置することが可能となる。また、この場合には、光検出部の大きさについても、コリメータの開口部の大きさ以下である必要がない。導光路の例としては、例えば光ファイバが挙げられる。導光路を用いて装置を構成した例を
図2に示す。
【実施例1】
【0030】
本発明に係る放射線検出装置について、計算機シミュレーションを利用して評価した。
シミュレーションでは、プログラムとしてGeant4を使用して、コリメータの長さ、厚さを変更させた場合のガンマ線検出の位置分解能について、モンテカルロ法による評価を行った。
【0031】
本実施例においては、検出器の構成として、鉛製の9x9マトリクスのパラレルコリメータを用い、シンチレータはLu2SiO5(LSO)結晶(密度:7.4g/cm3、蛍光効率:170)を用いるよう設定した。また、点線源におけるガンマ線の強度は140keV、点線源からコリメータまでの距離は40mmと設定した。また、本実施例においては、ガンマ線は装置を十分に覆う範囲に等方的に入射されるものとし、この際、コリメータ穴の中心位置のそれぞれでカウントされた計測数から計測位置のRMS値を求め、これを装置の位置分解能として評価した。
【0032】
図3は、コリメータの長さ、厚さを変更した際の位置分解能の変化の様子を示す。図中、形状の異なる各マーカーは、コリメータ厚さごとにプロットされ、白抜き三角のマーカーはコリメータ厚さが0.02mm、白抜き四角のマーカーはコリメータ厚さが0.03mm、白抜き丸のマーカーは0.04mm、黒三角のマーカーは0.05mm、黒四角のマーカーは0.06mm、黒丸のマーカーは0.12mmを示す。図から、本実施例における検出器において、コリメータ長等の調整を行うことによって、位置分解能1mmを達成することが可能であることが認められる。また位置分解能1mmの性能を達成するためには、コリメータ厚さが0.12mmの際に、30mm以上のコリメータ長が必要であることが確認できた。
【0033】
図4は、コリメータ長40mm、コリメータ厚さ0.12mmでシミュレーションを行った際のエネルギーを落としたシンチレータの分布をy方向に投射したヒストグラムを示す。図から位置分解能としてRMSを算出すると、0.7345の位置分解能が達成されていることが認められた。
【実施例2】
【0034】
本発明に係る放射線検出装置について、試作機を制作し、評価を行った。検出器の構成として、鉛製のパラレルコリメータ(3x3マトリクス、開口部径1.2mm)を用い、シンチレータはLSO結晶を使用した。光源には、122keVの57Co(公益社団法人日本アイソトープ協会製)を使用し、光検出部としては、MPPC(浜松ホトニクス社製)を使用した。
【0035】
図5は、本実施例に係る試作機によって、光検出を行った結果のグラフを示す。図から、2000チャネルから2500チャネルの間において、検出器のカウント数が400を越え、本実施例に係る放射線検出装置により、検出を行えることが確認できた。
【実施例3】
【0036】
本発明に係る放射線検出装置について、シンチレータから導光路を用いて、コリメータ外の光検出部と接続する試作機を制作し、評価を行った。導光路としては直径1mmの光ファイバ(株式会社クラレ製)を用い、この際のファイバ長は60mmとした。光ファイバ以外の装置構成、実験条件については、実施例2と同様である。
【0037】
図6は、本実施例に係る試作機によって、光検出を行った結果のグラフを示す。図から、1800チャネルから2200チャネルの間において、検出器のカウント数が3000を越え、本実施例に係る放射線検出装置により、検出を行えることが確認できた。
【符号の説明】
【0038】
10 コリメータ
20 シンチレータ
30 光検出部
40 信号処理部
50 導光路