【解決手段】本発明に係る発泡性飲料の製造方法は、植物原料を使用して第一の原料液を調製すること、前記第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び前記第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行うことを含み、前記pH低下処理後の前記第二の原料液を使用して、前記pH低下処理を行うことなく前記第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造する。
前記pH低下処理後の前記第二の原料液を使用して製造される前記発泡性飲料のpHが、前記pH低下処理を行うことなく前記第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.26以上低下するように、前記pH低下処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の発泡性飲料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0017】
本実施形態に係る方法(本方法)の一つは、植物原料を使用して第一の原料液を調製すること、当該第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び当該第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行うことを含み、当該pH低下処理後の当該第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく当該第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造する方法である。本実施形態に係る発泡性飲料は、この方法により製造される。
【0018】
本方法の他の一つは、発泡性飲料の製造に使用される原料液の製造方法であって、植物原料を使用して第一の原料液を調製すること、当該第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び当該第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行うことを含み、当該pH低下処理後の当該第二の原料液は、当該発泡性飲料の製造に使用された場合に、当該発泡性飲料のNIBEM値が、当該pH低下処理を行うことなく製造される当該第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より大きくなるような原料液である。本実施形態に係る原料液は、この方法により製造され、発泡性飲料の製造に使用される。
【0019】
本方法のさらに他の一つは、原料液を使用して製造される発泡性飲料の泡特性を向上させる方法であって、当該原料液として、植物原料を使用して第一の原料液を調製すること、当該第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び当該第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行うことを含む方法により製造される当該pH低下処理後の当該第二の原料液を使用することにより、当該発泡性飲料のNIBEM値を、当該pH低下処理を行うことなく製造される当該第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料に比べて増加させる。
【0020】
本実施形態において、発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0021】
本発明は、このような発泡性飲料の泡特性の向上に関し、特に、NIBEM値の増加に関する。NIBEM値は、ビール等の発泡性飲料の泡持ち特性を示す指標値として使用されている。NIBEM値は、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として測定される。NIBEM値が大きいほど、発泡性飲料の泡持ち特性が優れていることになる。なお、飲料に発泡性を付与する方法は、特に限られないが、例えば、アルコール発酵、炭酸水の使用、及びカーボネーション処理からなる群より選択される1つ以上の方法を使用する。
【0022】
発泡性飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、アルコール濃度が1体積%以上(アルコール分1度以上)(例えば、1〜20体積%又は1〜10体積%)の発泡性飲料である。発泡性アルコール飲料のアルコール濃度は、1体積%以上であれば特に限られないが、3体積%以上(例えば、3〜20体積%又は3〜10体積%)であってもよく、4体積%超(例えば、4体積%超、20体積%以下、又は4体積%超、10体積%以下)であってもよく、4.1体積%以上(例えば、4.1〜20体積%又は4.1〜10体積%)であってもよい。
【0023】
なお、一般に、発泡性飲料のアルコール濃度が低下すると、当該発泡性飲料の香味(例えば、コク)も低下する。さらに、アルコール濃度が低い発泡性飲料のpHを低下させると、pHの低下により酸味が増強されるため、当該発泡性飲料の香味のバランスが損なわれる。このため、発泡性飲料のアルコール濃度は、特に、4体積%超であることが好ましい。
【0024】
また、発泡性飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。発泡性ノンアルコール飲料は、アルコール濃度が1体積%未満の発泡性飲料である。発泡性ノンアルコール飲料のアルコール濃度は、1体積%未満であれば特に限られないが、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。
【0025】
本方法において使用される植物原料は、飲料の製造に使用される原料であれば特に限られないが、穀類(例えば、大麦、小麦、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上)、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。これら穀類、豆類及びいも類は、発芽させたもの(例えば、大麦麦芽、小麦麦芽、発芽豆類)であってもよく、発芽させていないものであってもよい。
【0026】
植物原料は、麦芽を含むこととしてもよい。麦芽は、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽であってもよい。大麦麦芽及び小麦麦芽は、それぞれ大麦及び小麦を発芽させることにより得られる。麦芽を含む植物原料は、麦芽エキスを含む植物原料であってもよい。麦芽エキスは、麦芽から、糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる麦芽抽出物である。麦芽エキスは、市販の麦芽エキスであってもよい。植物原料は、1〜99重量%、又は20〜90重量%の麦芽を含むこととしてもよい。
【0027】
本方法においては、ホップを使用することとしてもよい。ホップは、特に限られないが、例えば、ホップエキス(ホップをエタノールまたは炭酸ガスで抽出して得られる)、プレスホップ(乾燥させたホップの球果を圧縮して得られる)、ホップパウダー(乾燥させたホップの球果を粉砕して得られる)、及びホップペレット(当該ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られる)からなる群より選択される1種以上である。
【0028】
本方法においては、消化酵素を外的に添加しないこととしてもよい。すなわち、例えば、トランスグルコシダーゼを外的に添加しないこととしてもよい。また、アミラーゼを外的に添加しないこととしてもよい。また、プロテアーゼを外的に添加しないこととしてもよい。
【0029】
本方法においては、上述したような植物原料を使用して第一の原料液を調製する。具体的に、第一の原料液は、植物原料と水(例えば、20℃〜90℃の水)とを混合して調製される。
【0030】
第一の原料液は、植物原料を使用し、糖化を行って調製することとしてもよい。この場合、第一の原料液は、例えば、麦芽を含む植物原料液を使用し、糖化を行って調製される。糖化は、植物原料と水とを混合して得られた混合液を、当該植物原料(例えば、麦芽)に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜90℃)に維持することにより行う。
【0031】
第一の原料液のアルコール濃度は、特に限られないが、例えば、0.005体積%未満であってもよい。第一の原料液は、アルコール発酵を行うことなく調製されてもよい。
【0032】
次いで、本方法においては、上述のように調製され第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製する。第一の原料液の煮沸は、例えば、当該第一の原料液を100℃以上に加熱することにより行う。そして、第二の原料液は、煮沸後の第一の原料液として得られる。ホップを使用する場合、第一の原料液に当該ホップを添加して煮沸し、第二の原料液を調製することとしてもよい。
【0033】
次いで、本方法においては、第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行う。第二の原料液のpHを低下させる方法は、特に限られないが、例えば、酸(例えば、乳酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸からなる群より選択される1種以上)の添加により当該第二の原料液のpHを低下させることとしてもよい。pH低下処理を行うタイミングは、第二の原料液が調製された後(すなわち、第一の原料液の煮沸後)であれば、特に限られない。
【0034】
pH低下処理は、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料(本方法により製造される発泡性飲料)のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料(当該pH低下処理を行わない以外は本方法と同一の方法により製造される発泡性飲料)のpHより低くなるように、当該第二の原料液のpHを低下させる処理である。
【0035】
具体的に、例えば、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.26以上低下するように、pH低下処理を行うこととしてもよい。
【0036】
さらに、この場合、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.40以上、0.41以上、0.42以上、0.43以上、0.44以上又は0.45以上低下するように、pH低下処理を行ってもよい。
【0037】
また、pH低下処理は、後述するように、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値が、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より大きくなるように、当該第二の原料液のpHを低下させる処理である。
【0038】
すなわち、pH低下処理は、例えば、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値が、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より10以上、20以上、又は30以上大きくなるように、当該第二の原料液のpHを低下させる処理である。
【0039】
pH低下処理は、アルコール発酵を行うことなく調製された第二の原料液のpHを低下させる処理であってもよい。pH低下処理は、アルコール濃度が0.005体積%未満である第二の原料液のpHを低下させる処理であってもよい。本方法においては、pH低下処理後に煮沸を行わないこととしてもよい。
【0040】
本方法は、第二の原料液のアルコール発酵を行うことをさらに含むこととしてもよい。アルコール発酵は、例えば、第二の原料液に酵母(例えば、ビール酵母)を添加して行う。この場合、アルコール発酵は、酵母が添加された第二の原料液を所定の温度(例えば、5℃〜40℃)で所定の時間(例えば、1日〜14日)維持することにより行う。アルコール発酵開始時の第二の原料液における酵母の密度は、例えば、1×10
6個/mL〜3×10
9個/mLである。
【0041】
酵母を添加してアルコール発酵を行う場合、第二の原料液は、当該酵母が資化できる糖質(発酵性糖質)を十分量含むことが好ましい。この場合、第二の原料液に含まれる、酵母が資化できない糖質(非発酵性糖質)の含有量は比較的小さくなる。そこで、糖質の全量に対する非発酵性糖質の割合が30質量%未満、好ましくは25質量%未満である第二の原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うこととしてもよい。この場合、上述した第一の原料液は、酵母が添加される第二の原料液の糖質の全量に対する非発酵性糖質の割合が30質量%未満、好ましくは25質量%未満となるように糖化を行って調製されることとしてもよい。
【0042】
本方法においては、アルコール発酵に続いて、熟成を行うこととしてもよい。熟成は、アルコール発酵後の第二の原料液をさらに所定の温度(例えば、−3℃〜20℃)で所定の時間(例えば、1日〜100日)維持することにより行う。熟成により、第二の原料液中の不溶物が沈殿して濁りが取り除かれ、香味が向上する。
【0043】
本方法においてアルコール発酵を行う場合、当該アルコール発酵の開始前(例えば、酵母の添加前)にpH低下処理を行ってもよい。すなわち、第二の原料液のpH低下処理を行い、その後、当該第二の原料液のアルコール発酵を行ってもよい。具体的に、この場合、例えば、pH低下処理後の第二の原料液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う。
【0044】
また、アルコール発酵の開始時(例えば、第二の原料液への酵母の添加時)にpH低下処理を行ってもよい。また、アルコール発酵の開始後(例えば、第二の原料液への酵母の添加後)にpH低下処理を行ってもよい。また、アルコール発酵の終了後にpH低下処理を行ってもよい。
【0045】
本方法においては、アルコール発酵を行わないこととしてもよい。すなわち、この場合、アルコール発酵を行うことなく、原料液又は発泡性飲料を製造する。具体的に、例えば、アルコール発酵を行うことなく調製された第二の原料液(例えば、アルコール濃度が0.005体積%未満の第二の原料液)を使用して、アルコール発酵を行うことなく、原料液又は発泡性飲料を製造する。より具体的に、例えば、アルコール発酵を行うことなく調製されたpH低下処理後の第二の原料液(例えば、アルコール濃度が0.005体積%未満であるpH低下処理後の第二の原料液)を使用して、アルコール発酵を行うことなく、原料液又は発泡性飲料を製造する。これらの場合、アルコール濃度が0.005体積%未満の原料液又は発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。
【0046】
そして、本方法においては、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく当該第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料(当該pH低下処理を行わない以外は本方法と同一の方法で製造される発泡性飲料)のNIBEM値より大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造する。
【0047】
すなわち、例えば、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より10以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造する。
【0048】
この場合、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.26以上低下するように、当該pH低下処理を行い、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より10以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【0049】
また、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より20以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【0050】
この場合、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.40以上、0.41以上、0.42以上、0.43以上又は0.44以上低下するように、当該pH低下処理を行い、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より20以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造してもよい。
【0051】
さらに、この場合、pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上である(例えば、pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上となるように当該第二の原料液を調製する、又はpH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上となるように当該第二の原料液の調製及びアルコール発酵を行う)こととしてもよい。
【0052】
また、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より30以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造してもよい。
【0053】
この場合、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHより0.45以上低下するように、当該pH低下処理を行い、当該pH低下処理後の第二の原料液を使用して、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より30以上大きなNIBEM値を有する発泡性飲料を製造してもよい。
【0054】
さらに、この場合、pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上である(例えば、pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上となるように当該第二の原料液を調製する、又はpH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料のpHが4.4以上、又は4.5以上となるように当該第二の原料液の調製及びアルコール発酵を行う)こととしてもよい。
【0055】
本方法において製造される発泡性飲料のpHは、特に限られないが、例えば、3.5以上、3.6以上、又は3.6超のpHを有する発泡性飲料を製造することとしてもよい。この場合、酸味が適度に抑えられた発泡性飲料を製造することができる。また、製造される発泡性飲料のpHは、例えば、5.0以下、又は4.5以下であってもよい。すなわち、発泡性飲料のpHは、例えば、3.5以上、且つ5.0以下、又は4.5以下の範囲であってもよく、3.6以上、且つ5.0以下、又は4.5以下の範囲であってもよく、3.6超、且つ5.0以下、又は4.5以下の範囲であってもよい。
【0056】
本方法においてアルコール発酵を行う場合、pH低下処理後であり、且つアルコール発酵後である第二の原料液を使用して、最終的な製品である発泡性飲料(例えば、発泡性アルコール飲料)を製造する。この場合、pH低下処理後であり、且つアルコール発酵後である第二の原料液にスピリッツを添加して、発泡性アルコール飲料を製造することとしてもよい。
【0057】
本方法においてアルコール発酵を行わない場合、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、最終的な製品である発泡性飲料を製造する。この場合、第二の原料液と他の原料とを混合することにより発泡性飲料を製造してもよい。他の原料としては、例えば、糖類、食物繊維、酸味料、色素、香料、甘味料及び苦味料からなる群より選択される1種以上を使用する。アルコール発酵を行わない場合、発泡性ノンアルコール飲料を製造してもよい。また、アルコール発酵後の第二の原料液にアルコール(例えば、エタノール)を添加して、発泡性アルコール飲料を製造してもよい。
【0058】
本方法によれば、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料を製造することができる。すなわち、本方法により製造される発泡性飲料は、pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料(当該pH低下処理を行わない以外は本方法と同一の方法で製造される発泡性飲料)のNIBEM値より大きなNIBEM値を有する。
【0059】
また、本方法によれば、発泡性飲料の泡特性を効果的に向上させる原料液を製造することができる。すなわち、本方法により製造される原料液は、発泡性飲料の製造に使用された場合に、当該発泡性飲料のNIBEM値が、pH低下処理を行うことなく製造される当該原料液(当該pH低下処理を行わない以外は本方法と同一の方法で製造される原料液)を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値より大きくなるような原料液である。
【0060】
したがって、本方法によれば、原料液として、上述のようなpH低下処理後の第二の原料液を使用することにより、当該原料液を使用して製造される発泡性飲料のNIBEM値を、当該pH低下処理を行うことなく製造される第二の原料液を使用して製造される発泡性飲料に比べて、効果的に増加させることができる。
【0061】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
麦芽、ホップ及び副原料を使用して製造された市販のビールを第二の原料液として使用した。すなわち、第二の原料液として、麦芽を使用し、糖化を行って第一の原料液を調製すること、次いで当該第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び当該第二の原料液のアルコール発酵を行うことを含む方法により製造された市販のビールを使用した。
【0063】
この第二の原料液に乳酸又はリン酸を添加して、そのpHを低下させるpH低下処理を行った。なお、添加する酸の種類及び量を変えて、pHが異なる6種類の第二の原料液を調製した。
【0064】
そして、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、発泡性飲料を製造した。すなわち、pH低下処理後の第二の原料液を、そのまま発泡性アルコール飲料(ビール)として得た。また、比較のため、pH低下処理を行わなかったこと以外は同一の方法により、発泡性飲料(ビール)を製造した。製造された発泡性飲料のアルコール濃度は、約5体積%であった。
【0065】
[実施例2]
副原料を使用することなく麦芽及びホップを使用して製造された市販のビール(麦芽100%ビール)を第二の原料液として使用した。すなわち、第二の原料液として、麦芽を使用し、糖化を行って第一の原料液を調製すること、次いで当該第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製すること、及び当該第二の原料液のアルコール発酵を行うことを含む方法により製造された市販のビールを使用した。
【0066】
この第二の原料液に乳酸を添加して、そのpHを低下させるpH低下処理を行った。なお、添加する酸の種類及び量を変えて、pHが異なる3種類の第二の原料液を調製した。
【0067】
そして、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、発泡性飲料を製造した。すなわち、pH低下処理後の第二の原料液を、そのまま発泡性アルコール飲料(ビール)として得た。また、比較のため、pH低下処理を行わなかったこと以外は同一の方法により、発泡性飲料(ビール)を製造した。製造された発泡性飲料のアルコール濃度は、約5体積%であった。
【0068】
[実施例3]
第二の原料液として、他の市販の麦芽100%ビールを使用したこと以外は上述の実施例2と同様にして、pH低下処理後の当該第二の原料液を使用して、pHが異なる4種類の発泡性飲料を製造した。また、比較のため、pH低下処理を行わなかったこと以外は同一の方法により、発泡性飲料を製造した。製造された発泡性飲料のアルコール濃度は、約5体積%であった。
【0069】
[実施例4]
まず、麦芽を使用して第一の原料液を調製した。すなわち、粉砕された大麦麦芽、及び副原料としてのコーンスターチ、コーングリッツ及び米に50℃の湯を加え、デコクチオン法にて65℃で糖化を行った。次いで、糖化後の混合液から大麦麦芽の穀皮を除去した。こうして、第一の原料液を得た。次いで、第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製した。すなわち、第一の原料液にホップを添加して煮沸を行い、第二の原料液を得た。
【0070】
そして、第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行った。すなわち、第二の原料液に乳酸を添加して、そのpHを低下させた。なお、添加する乳酸の量を変えて、pHが異なる2種類の第二の原料液を調製した。その後、第二の原料液のアルコール発酵を行った。すなわち、pH低下処理後の第二の原料液にビール酵母を添加して、アルコール発酵を行い、さらに熟成を行った。
【0071】
そして、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、発泡性飲料を製造した。すなわち、アルコール発酵後の第二の原料液をろ過し、発泡性アルコール飲料(ビール)を得た。また、比較のため、pH低下処理を行わなかったこと以外は同一の方法により、発泡性飲料(ビール)を製造した。製造された発泡性飲料のアルコール濃度は、約5体積%であった。
【0072】
[実施例5]
まず、麦芽を使用して第一の原料液を調製した。すなわち、粉砕された大麦麦芽に50℃の湯を加え、得られた混合液を65℃で維持することにより、糖化を行った。次いで、糖化後の混合液から大麦麦芽の穀皮を除去した。こうして、第一の原料液を得た。次いで、第一の原料液を煮沸して第二の原料液を調製した。すなわち、第一の原料液にホップを添加して煮沸を行い、第二の原料液を得た。
【0073】
そして、第二の原料液のpHを低下させるpH低下処理を行った。すなわち、第二の原料液に乳酸又はリン酸を添加して、そのpHを低下させた。なお、添加する酸の種類及び量を変えて、pHが異なる4種類の第二の原料液を調製した。
【0074】
そして、pH低下処理後の第二の原料液を使用して、発泡性飲料を製造した。すなわち、pH低下処理後の第二の原料液をろ過し、さらにカーボネーション処理を施すことにより、発泡性ノンアルコール飲料を得た。すなわち、アルコール発酵を行うことなく、発泡性飲料を製造した。製造された発泡性飲料のアルコール濃度は、0.005体積%未満であった。
【0075】
[発泡性飲料のpH及びNIBEM値の評価]
上述のようにして実施例1〜5において製造された発泡性飲料のpH及びNIBEM値を測定した。さらに、各実施例について、対応する比較例においてpH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料のpHから、当該実施例においてpH低下処理後の第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料のpHを減じて得られるpHの差分を、ΔpHとして算出した。
【0076】
また、各実施例について、当該実施例においてpH低下処理後の第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料のNIBEM値から、対応する比較例においてpH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料のNIBEM値を減じて得られるNIBEM値の差分を、ΔNIBEMとして算出した。
【0077】
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5には、それぞれ上述の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4及び実施例5で製造された発泡性飲料のpH及びNIBEM値を測定した結果、及び算出されたΔpH及びΔNIBEMを示す。
【0078】
また、
図6には、実施例1〜5において製造された発泡性飲料のpH低下処理によるpHの低下とNIBEM値の増加との関係を示す。すなわち、
図6に示すグラフは、
図1〜
図5に示すΔNIBEMをΔpHに対してプロットして得られたものである。
【0079】
図1〜
図5に示すように、pH低下処理を行うことにより、pH低下処理を行わない場合に比べて、発泡性飲料のNIBEM値が効果的に増加した。すなわち、pH低下処理後の第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料(実施例の発泡性飲料)のNIBEM値は、当該pH低下処理を行うことなく第二の原料液を使用して製造された発泡性飲料(比較例の発泡性飲料)のNIBEM値より大きかった。
【0080】
具体的に、例えば、
図1〜
図6に示すように、実施例の発泡性飲料のpHが、比較例の発泡性飲料のpHより0.26以上低下するようにpH低下処理を行った場合(ΔpHが0.26以上)には、当該比較例の発泡性飲料のNIBEM値より10以上大きなNIBEM値を有する実施例の発泡性飲料が製造された(ΔNIBEMが10以上)。
【0081】
また、例えば、比較例の発泡性飲料のpHが4.37超である場合(
図3〜
図5、
図6に示す実施例3〜5)には、実施例の発泡性飲料のpHが、当該比較例の発泡性飲料のpHより0.43以上低下するようにpH低下処理を行うことにより(ΔpHが0.43以上)、当該比較例の発泡性飲料のNIBEM値より20以上大きなNIBEM値を有する実施例の発泡性飲料が製造された(ΔNIBEMが20以上)。
【0082】
さらに、この場合、実施例の発泡性飲料のpHが、当該比較例の発泡性飲料のpHより0.45以上低下するようにpH低下処理を行うことにより(ΔpHが0.45以上)、当該比較例の発泡性飲料のNIBEM値より30以上大きなNIBEM値を有する実施例の発泡性飲料が製造された(ΔNIBEMが30以上)。
【0083】
なお、本発明では、第一の原料液の煮沸により得られる第二の原料液にpH低下処理を施す。この点、予備的な検討において、まず第一の原料液にpH低下処理を施し、次いで、当該pH低下処理後の第一の原料液を煮沸し、その後、当該煮沸により得られた第二の原料液を使用して発泡性飲料を製造する場合には、当該煮沸によって当該pH低下処理の効果が損なわれることが確認された。