(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-167524(P2015-167524A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】藻場造成礁
(51)【国際特許分類】
A01K 61/00 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
A01K61/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-45542(P2014-45542)
(22)【出願日】2014年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】598093484
【氏名又は名称】有徳コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晋市
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB03
2B003CC04
2B003DD01
2B003DD02
2B003DD08
2B003EE04
(57)【要約】
【課題】着生のための面積を広くとることができると共に、低コストで且つ取扱い容易な藻場造成礁を提供する。
【解決手段】海藻の着生を促す着生ブロック11および魚介類の幼稚仔の成育を促す成育マット12を有する着生部2と、着生部2を囲繞するようにして収容するかご部3と、を備え、着生部2は、直方体形状に形成され、かご部3は、着生部2と相補的形状の内法形状を有する直方体形状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻の着生を促す複数の着生ブロックを有する着生部と、
前記着生部を囲繞するようにして収容するかご部と、を備えたことを特徴とする藻場造成礁。
【請求項2】
前記着生部は、直方体形状に形成され、
前記かご部は、前記着生部と相補的形状の内法形状を有する直方体形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の藻場造成礁。
【請求項3】
前記かご体部、鉄製の棒状材をかご状に組んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の藻場造成礁。
【請求項4】
前記かご部は、「コ」字状の2つのかご構成体を噛み合わせるようにして、接合したものであることを特徴とする請求項2または3に記載の藻場造成礁。
【請求項5】
前記かご部は、少なくとも1の面に、海底に定着させるための複数の突起を有していることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の藻場造成礁。
【請求項6】
前記着生部は、魚介類の幼稚仔の成育を促す成育マット、を更に有していることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の藻場造成礁。
【請求項7】
前記各着生ブロックは、ポーラスコンクリートブロックで構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の藻場造成礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻の着生を促進する藻場造成礁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の藻場造成礁として、上部をポーラスコンクリートとし、下部を普通コンクリートとした海藻群落造成用コンクリートブロックが知られている(特許文献1参照)。
この海藻群落造成用コンクリートブロックは、海藻類着生層を構成する上部のポーラスコンクリートと、ポーラスコンクリートを支持する下部の普通コンクリートとを備えている。ポーラスコンクリートは薄手に形成され、普通コンクリートは厚手に形成され、全体として方形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の海藻群落造成用コンクリートブロック(藻場造成礁)では、ポーラスコンクリートおよび普通コンクリートをプレキャストコンクリートとして製造することになるため、それぞれのサイズに合わせた金型が必要となる。このため、コスト高になる問題があった。
また、海藻群落造成用コンクリートブロックには、手持ち用の部位が無く、人力で海中に投入するような小型のものでは、運搬等の取扱いが煩雑になる問題がある。
さらに、普通コンクリートの側面は、海藻類着生層と機能しないため、着生のための面積が制限される問題がある。
【0005】
本発明は、着生のための面積を広くとることができると共に、低コストで且つ取扱い容易な藻場造成礁を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の藻場造成礁は、海藻の着生を促す複数の着生ブロックを有する着生部と、着生部を囲繞するようにして収容するかご部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、着生部が複数の着生ブロックを有するため、全体サイズの大小に対し、着生ブロックの個数の多少で対応させることができる。このため、全体サイズの大小に対応したサイズの着生ブロックを用意する必要がなく、コストの低減を図ることができる。また、かご部は、着生部を囲繞するようにして収容しているため、複数の着生ブロックのガタつきが抑制される。しかも、かご部は、それ自体が手持ち用の部位として機能する。したがって、運搬等の取扱いが極めて容易となる。さらに、かご部の内部が、複数の着生ブロックで満たされるため、着生のための面積を十分に執ることができる。また、かご部は、藻場造成礁の複数個を連結する場合に、その連結を容易にする。
【0008】
この場合、着生部は、直方体形状に形成され、かご部は、着生部と相補的形状の内法形状を有する直方体形状に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、十分な着生面積を確保しつつ、潮流に流され難い形態とすることができる。また、かご部により、複数の着生ブロックを直方体形状に一体化することができ、取扱い性を向上させることができる。
【0010】
この場合、かご部は、鉄製の棒状材をかご状に組んで構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、海藻の成育に有用な鉄分を、簡単に供給することができる。また、かご部を重くすることで、これをアンカーとして機能させることができる。したがって、専用のアンカーが不要であり、この点でも、低コストで且つ潮流に流され難いものとすることができる。
【0012】
また、かご部は、「コ」字状の2つのかご構成体を噛み合わせるようにして、接合したものであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、かご部を、主要部分が共通な2つの部品(かご構成体)で構成することができる。したがって、かご部を簡単に作製することができ、かご部のコストを低減することができる。なお、2つのかご構成体は、同一のものであることが好ましい。かかる場合には、1種類の部品でかご部を構成することができる。
【0014】
さらに、かご部は、少なくとも1の面に、海底に定着させるための複数の突起を有していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、かご部をアンカーとして効果的に機能させることができる。なお、突起は、かご部を構成する棒状材を延長したものでもよいし、棒状材に別途取り付けた(固定した)部材であってもよい。
【0016】
一方、着生部は、魚介類の幼稚仔の成育を促す成育マット、を更に有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、成育マットにより、魚介類の幼稚仔の成育が促進され、生物多様性の成育環境(藻場)を造成することができる。なお、成育マットとして、透水マットを用いることが好ましい。また、成育マットは、複数の着生ブロック間に介設することが好ましい。
【0018】
また、各着生ブロックは、ポーラスコンクリートブロックで構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、低コストで、海藻の着生に有用な着生ブロックを構成することができる。この場合、ポーラスコンクリートブロックは、市販のものを用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る藻場造成礁の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る藻場造成礁の分解斜視図である。
【
図3】第2実施形態に係る藻場造成礁の斜視図である。
【
図4】第3実施形態に係る藻場造成礁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る藻場造成礁について説明する。この藻場造成礁は、クレーン等を用いることなく、人力で船積みされ且つ人力で浅瀬(水深5m以内)に投入される比較的小型のものであり、主に「磯焼け」対策を意図した小規模の人口漁礁として用いられる。
【0022】
図1の斜視図および
図2の分解斜視図に示すように、藻場造成礁 1は、海藻の着生を促す着生部2と、着生部2を囲繞するようにして収容するかご部3と、を備えている。着生部2は、全体として直方体形状に形成され、かご部3は、着生部2と相補的形状の内法形状を有する直方体形状に形成されている。すなわち、かご部3は、着生部2の構成部材(後述する)を囲繞して、これを一体化する機能を有している。したがって、かご部3には、着生部2の構成部材が充填されている。
【0023】
実施形態の藻場造成礁1は、取扱い性を考慮し、例えば1辺が300mm程度の直方体形状(立方体形状)に形成されている。また、その重量は、人力で扱えるように30Kg程度としている。
【0024】
着生部2は、2枚の着生ブロック11と、2枚の着生ブロック11間に介設された成育マット12と、を有している。すなわち、着生部2は、成育マット12を2枚の着生ブロック11でサンドイッチした形態を有している。
【0025】
各着生ブロック11は、海藻の着生を促すものであり、ポーラスコンクリートブロックで構成されている。言うまでもないが、ポーラスコンクリートブロックは、空隙に直物の生育や微生物の生息が可能な多孔質のコンクリートであり、海藻の胞子・幼芽の着床や海藻の根の活着を促進する。
【0026】
この場合、各着生ブロック11は、1枚(1個)のポーラスコンクリートブロックで構成してもよいが、実施形態の着生ブロック11は、市販のポーラスコンクリートブロック(例えば、舗装用のもの)を、複数個並べて構成されている(
図2参照)。具体的には、300mm×300mmの着生ブロック11は、200mm×100mmの市販品ブロックの4個と、100mm×100mmの市販品ブロックの1個と、を方形に並べて構成されている。
【0027】
なお、ポーラスコンクリートブロックとして、球形のものを用いてもよい。もっとも、ポーラスコンクリートブロックは、かご部3から抜け落ちないサイズであれば、その形状は任意である。また、ポーラスコンクリートとして、海藻の着生を促進すべく、骨材に鉄片や貝殻を混入しもの、栄養塩を混入したもの等を用いることも好ましい。さらに、ポーラスコンクリートに、酸化鉄や栄養塩を塗着および含浸させておくことも好ましい。
【0028】
成育マット12は、魚介類の幼稚仔の成育を促すものであり、例えば透水マットで構成されている。透水マットは、大きな空隙を有しており、外敵から幼稚仔を守ると共に、幼稚仔の生育に必要な適度な潮流を許容する。実施形態の成育マット12は、市販の定尺の透水マットを、着生ブロック11の大きさに合わせて適宜裁断して構成されている。
【0029】
また、成育マット12は、適度な弾力性を有しており、両側に位置する2枚の着生ブロック11を外方に押圧する。すなわち、成育マット12は、各着生ブロック11をかご部3に押し付け、複数の市販品(のポーラスコンクリートブロック)で構成された着生ブロック11の型崩れを防止する。
【0030】
なお、成育マット12を、一方の着生ブロック11の外側に配置するようにしてもよい。もっとも、成育マット12は、上記のポーラスコンクリートブロックと同様に、かご部3から抜け落ちないサイズであれば、その形状は任意であり、またその配置位置も任意である。
【0031】
かご部3は、「コ」字状の一対のかご構成体3A,3Bを噛み合わせるように接合して、構成されている。各かご構成体3A,3Bは、例えば細い普通鉄筋(丸鋼)を縦横に配筋し、側面視「コ」字状に形成したものである。この場合、縦横に配筋された丸棒は、その交差部分を溶接により接合するものであってもよいし、丸棒自体、縦横に編み込んだものであってもよい。また、鉄筋に代えて、チャンネル材等の棒状材を用いてもよい。
【0032】
一方のかご構成体3A(図示の下側)と他方のかご構成体3B(図示の上側)とは、同一の形態を有するものであり、これらを対向させ且つ相互に90°ずらし、噛み合わせるように接合することで、かご部3が構成されている。この場合、一方のかご構成体3Aと他方のかご構成体3Bとの接合は、溶接や線材(針金)をからげることにより行われる。
【0033】
なお、かご部3は、藻場造成礁1を海底に定着させるアンカーとして機能させることができる。この場合、アンカーとしての重量は、使用する丸鋼の径で調整する。もっとも、コンクリート製や鋼製のアンカーを、別途、かご部3内に収容するようにしてもよい。また、特に図示しないが、かご部3の6つの面のうちの少なくとも1の面に、海底に定着させるための複数の突起部材(アンカー機能を促進)を設けるようにしてもよい。突起部材は、例えば鉄筋工事に用いる樹脂製のスペーサーを用い、これを縦横に配筋した丸棒の交差部分に装着する。
【0034】
次に、
図2を参照して、藻場造成礁1の組立方法について簡単に説明する。この組立方法では、先ず一方のかご構成体3Aを上向きにして、床等に設置する。次に、下側の着生ブロック11、成育マット12および上側の着生ブロック11を、この順で、一方のかご構成体3Aに載せ込むようにする。ここで、他方のかご構成体3Bを下向きにし、一方のかご構成体3Aに嵌め入れるようにする。一方のかご構成体3Aに他方のかご構成体3Bを組み込んだら、溶接等によりこれらを接合し、藻場造成礁1が完成する。
【0035】
このように構成された藻場造成礁1は、その複数個を海中に投入して藻場を形成する。複数個の藻場造成礁1は、潮流に流されないように海底に並べ、ロープ等により相互に連結しておくことが好ましい。船上にクレーン等がある場合には、予め複数個の藻場造成礁1を連結してから投入する。或いは、船上から複数個の藻場造成礁1を投入し、海中でこれらを連結する。
【0036】
次に、
図3を参照して、第2実施形態に係る藻場造成礁1Aについて説明する。この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
同図に示すように、第2実施形態の藻場造成礁1Aは、かご部3の底面に相当する部分に複数の突起3aが設けられている。この突起3aは、かご部3における縦方向の丸鋼を延長することで、構成されている。
【0037】
このように構成された藻場造成礁1Aは、海底において、複数の突起3aを砂地に突き刺しておくことで、或いは複数の突起3aが岩場に引っかかることで、潮流に抗する。すなわち、複数の突起3aが、潮流に抗するアンカーとして機能し、海底における藻場造成礁1Aの姿勢を安定させる。
【0038】
次に、
図4を参照して、第3実施形態に係る藻場造成礁1Bについて説明する。この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
同図に示すように、第3実施形態の藻場造成礁1Bは、かご部3の底面に相当する部分に複数の突起状キャップ21が設けられている。第2実施形態と同様に、かご部3における縦方向の丸鋼が、底面から僅かに突出(延長)しており、この延長部3bに突起状キャップ21が装着されている。突起状キャップ21は、例えば鉄筋の端部に装着される樹脂製のキャップであり、先端が尖塔形状に形成されている。
【0039】
このように構成された藻場造成礁1Bにおいても、海底において、複数の突起状キャップ21を砂地に突き刺しておくことで、或いは複数の突起状キャップ21が岩場に引っかかることで、潮流に抗する。すなわち、複数の突起状キャップ21が、潮流に抗するアンカーとして機能する。
【0040】
以上のように、本実施形態の藻場造成礁1,1A,1Bによれば、着生ブロック11および成育マット12を、囲むように直方体形状のかご部3に収容するようにしているため、運搬等における取扱い性を向上させることができる。また、着生ブロック11を市販のポーラスコンクリートブロックで構成しているため、海藻の着生を促す部材としての機能を損なうことなく、コストの低減を図ることができる。
【0041】
さらに、鉄製のかご部3は、アンカーとして機能させることができると共に、着生した海藻に鉄分を供給することができる。しかも、かご部3は、全部または一部が共通となる部品を組み合わせることで簡単に作製することができ、この点でも、コストの低減を図ることができる。また、かご部3は、複数個の藻場造成礁1の連結を容易にする。さらに、藻場造成礁1,1A,1Bの形状は、かご部3により決定されるため、運搬し易い大きさ、潮流に流され難い大きさ等、その形状やサイズを簡単に設計変更することができる。
【0042】
なお、実施形態の藻場造成礁1,1A,1Bでは、直方体形状としたが、藻場造成礁1,1A,1Bの立体形状は、円錐台形状、角錐台形状、多面体形状等であってもよいし、蛇かごや布団かごに倣った形状であってもよい。また、かご部3には、カキやサザエの貝殻(ネットで包む)や溶岩やタコつぼとなる筒体を収容するようにしてもよい。すなわち、着生部は、上記実施形態に限定されるものではない
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B 藻場造成礁、2 着生部、3 かご部、11 着生ブロック、12 成育マット、3A,3B かご構成体、3a 突起、21 突起状キャップ