(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-167534(P2015-167534A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】リゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/00 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
A01K61/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-46273(P2014-46273)
(22)【出願日】2014年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000214191
【氏名又は名称】長崎県
(71)【出願人】
【識別番号】514031891
【氏名又は名称】株式会社二枚貝養殖研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090088
【弁理士】
【氏名又は名称】原崎 正
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智志
(72)【発明者】
【氏名】岩永 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 浩
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA22
2B104AA26
2B104AA38
2B104BA06
2B104BA08
2B104BA09
2B104BA13
2B104DA01
2B104DA06
(57)【要約】
【課題】リゾチームを経口的に介類浮遊幼生に摂取させることによって消化管上皮細胞および周辺組織の消炎活性を促進することで、消化管上皮細胞への細胞障害因子の取り込みとその影響を軽減し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、介類浮遊幼生の成長を維持したまま生残率を向上させることができるリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法を提供することにある。
【解決手段】介類浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とするリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介類浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とするリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項2】
介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とする請求項1記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項3】
介類浮遊幼生としての棘皮動物浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とする請求項1記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項4】
介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生では、殻頂(アンボ)期幼生期以降に、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給することを特徴とする請求項2記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項5】
リゾチームをリゾチーム塩酸塩として飼育水中に適量を添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項6】
リゾチームをリゾチーム塩酸塩として飼育水中に適量を毎日添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項7】
リゾチームをリゾチーム塩酸塩として抗菌作用を発揮しない低濃度で飼育水に添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項8】
リゾチームをリゾチーム塩酸塩として抗菌作用を発揮しない0.01〜0.1ppmの低濃度で飼育水に添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項9】
介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生では、殻頂(アンボ)期幼生期以降着底期まで、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として、抗菌作用を発揮しない0.02〜0.1ppmの低濃度で飼育水に毎日、餌料藻類とともに添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【請求項10】
介類浮遊幼生としてのマナマコ浮遊幼生では、アウリクラリア期以降ペンタクチュラ幼生期まで、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として、抗菌作用を発揮しない0.02〜0.1ppmの低濃度で飼育水に毎日、餌料藻類とともに添加する飼育方法であることを特徴とする請求項1又は請求項3の何れかに記載のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二枚貝(カキ類、アカガイ類、タイラギ、アサリ,ハマグリなど)および棘皮動物(ウニ類,ナマコ類)の浮遊期に餌を摂取して成長する介類浮遊幼生の飼育において、生残向上・斃死軽減に効果のあるリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二枚貝類の浮遊幼生期は、摂餌しながら初期のD型期を経過して消化器官の完成した殻頂期(アンボ期)浮遊幼生に成長し、一定の大きさに成長すると変態を行なって成貝と同じ形態になって浮遊生活から底棲生活に移行する。同様の浮遊期を持つ棘皮動物浮遊幼生、例えばナマコ類では、アウリクラリア期と呼ばれる浮遊幼生期に摂餌を行ないながら成長し、過渡期の浮遊幼生形態であるドリオラリア幼生を経て底棲生活を行なうペンタクチュラ幼生となり成体のナマコへ成長する。介類の種苗生産では、浮遊幼生期の飼育成績が生産の成否を決めるため、これまでの介類浮遊幼生の飼育においては、生残・成長を良好に保つために、餌料となる微細藻類種の検討や添加栄養剤の検討、あるいは飼育装置の改良や飼育水の管理技術の検討が行なわれてきた。しかし、それらの努力にもかかわらず、前述の観点では説明ができない成長停滞や大量斃死の発生が存在し、安定的な種苗生産に支障をきたしている。
発明者は不調を呈した浮遊幼生の病理組織学的検討を行なったところ、消化管上皮細胞の細胞内容物吐出像(ブレッブ)を確認し、不調の一因として、栄養の吸収に関与する消化管上皮細胞の機能不全の可能性を示唆した。この障害は細胞障害因子(過酸化物等の毒性を有する微細顆粒等)が消化活動の一環として細胞内へ取り込まれることによって発生するとされている(非特許文献1)。すなわち原因不明の成長停滞や減耗の一因として、消化吸収細胞が、何らかの障害因子(例として過酸化物や変性した脂質あるいはタンパク粒子等の有毒顆粒)を取り込み機能不全に至ると推察した(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】杉下佳之・平野瑞樹・Mobin, SMA.・堤健一・金井欣也・吉越一馬・原研治(2002) アコヤガイ大量死の原因と発生機構 日本水産学会春季大会講演要旨集
【非特許文献2】大橋智志・岩永俊介・杉原志貴・松倉一樹・山田敏之・富場英二・新山洋・吉越一馬(2013)マガキ種苗生産において生産不良がみられた浮遊幼生の組織学的特徴 日本水産学会春季大会講演要旨集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、障害因子は組成・形状も不明で微細(1ミクロン以下)であるため、除去は容易ではない。また、物質も特定できていないため、対処法も未知である。そこで、発明者は細胞障害因子を除去するのではなく、障害を発生する消化管上皮細胞への取り込みを阻害する方法を検討した。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、リゾチームを経口的に介類浮遊幼生に摂取させることによって消化管上皮細胞および周辺組織の消炎活性を促進することで、消化管上皮細胞への細胞障害因子の取り込みとその影響を軽減し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、介類浮遊幼生の成長を維持したまま生残率を向上させることができるリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を達成するために、請求項1の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項1の好ましい態様として、請求項2の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項1の好ましい態様として、請求項3の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生としての棘皮動物浮遊幼生に経口的にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、成長を維持したまま生残率を向上させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の好ましい態様として、請求項4の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生では、殻頂(アンボ)期幼生期以降に、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として供給することを特徴とする。
【0010】
また、請求項1〜請求項4の好ましい態様として、請求項5の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として飼育水中に適量を添加する飼育方法であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項1〜請求項4の好ましい態様として、請求項6の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として飼育水中に適量を毎日添加する飼育方法であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項1〜請求項6の好ましい態様として、請求項7の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として抗菌作用を発揮しない低濃度で飼育水に添加する飼育方法であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項1〜請求項7の好ましい態様として、請求項8の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として抗菌作用を発揮しない0.01〜0.1ppmの低濃度で飼育水に添加する飼育方法であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項1、請求項2、請求項4の好ましい態様として、請求項9の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生としての貝類浮遊幼生では、殻頂(アンボ)期幼生期以降着底期まで、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として、抗菌作用を発揮しない0.02〜0.1ppmの低濃度で飼育水に毎日、餌料藻類とともに添加する飼育方法であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項1、請求項3の好ましい態様として、請求項10の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、介類浮遊幼生としてのマナマコ浮遊幼生では、アウリクラリア期以降ペンタクチュラ幼生期まで、経口的に浮遊幼生にリゾチームをリゾチーム塩酸塩として、抗菌作用を発揮しない0.02〜0.1ppmの低濃度で飼育水に毎日、餌料藻類とともに添加する飼育方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法によれば、リゾチームを経口的に介類浮遊幼生に摂取させることによって消化管上皮細胞および周辺組織の消炎活性を促進することで、消化管上皮細胞への細胞障害因子の取り込みとその影響を軽減し、消化管上皮細胞の障害発生を抑制することで、介類浮遊幼生の成長を維持したまま生残率を向上させることができる。
【0017】
請求項2及び請求項4〜請求項9の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法によれば、請求項1の効果に加えて、介類浮遊幼生が貝類浮遊幼生では、殻頂期以降の大量斃死、成長停滞を軽減、成長停滞および着底率の向上を実現させ、種苗生産数の向上を実現させることができる。
【0018】
請求項3、請求項5〜請求項8及び請求項10の発明に係るリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法によれば、請求項1の効果に加えて、介類浮遊幼生が棘皮動物の例えばマナマコ浮遊幼生では、アウリクラリア期からドリオラリア期、ペンタクチュラ期幼生への変態率の向上を実現させ、種苗生産数の向上を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1におけるマナマコの日齢15での各期幼生の出現率を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるマナマコの日齢20での各期幼生の出現率を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2におけるリゾチーム投与区(日齢6以降)と対照区の平均殻長の推移図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明を利用するためには、卵白由来リゾチーム塩酸塩として、貝類浮遊幼生の場合は殻頂(アンボ)期以降着底期まで、マナマコ浮遊幼生の場合はアウリクラリア期以降ペンタクチュラ幼生期までの間、毎日飼育水中に飼育水中に例えば0.02〜0.1ppmの低濃度の範囲で通常の餌料藻類とともに添加する。添加は1日1回でよい。なお、低濃度でない場合、例えば0.2ppmを超える濃度で添加すると生残率が低下する。
本発明のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として低濃度例えば0.01〜0.1ppmの濃度となるように飼育水に添加することで、貝類浮遊幼生では殻頂期以降の大量斃死、成長停滞を軽減し、成長停滞および着底率を向上する。
本発明のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法は、リゾチームをリゾチーム塩酸塩として低濃度例えば0.01〜0.1ppmの濃度となるように飼育水に添加することで、棘皮動物例えばナマコ浮遊幼生ではアウリクラリア期からドリオラリア期、ペンタクチュラ期幼生への変態率の向上を実現させ、種苗生産数の向上を実現させる(
図1、
図2)。
【実施例】
【0021】
実施例1〜実施例2の本発明のリゾチームを用いた介類浮遊幼生飼育方法においては、貝類では例えばマガキ、棘皮動物では例えばマナマコ浮遊幼生を用いた比較試験を行った結果、種苗生産成功率を向上させる効果の内容を見出すに至った。
以下に、実施例1〜実施例2について、さらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定したものではない。
【0022】
〔実施例1〕
マナマコ浮遊幼生の種苗生産効率の向上を目的として、卵白由来リゾチーム塩酸塩の飼育水中への添加効果を調べた。
実験は2013年4月9日から4月29日の20日間行った。実験開始時の飼育密度は0.75個体/mlとし、実験区、対照区ともに飼育水槽は500リットル円形水槽を用いた。餌料藻は
C .calcitrans,
C .gracilisを用いた。また補助餌料としてマガキ卵磨砕物(乾燥重量で10mg/ml)を用いた。実験区は卵白由来リゾチーム塩酸塩顆粒(日医工株式会社製 リゾチーム含量10%)を粉砕したものを、日齢1から20までの間、飼育水に0.02,0.1,0.2ppmの濃度で添加した。対照区は卵白由来リゾチーム塩酸塩顆粒を除く餌料条件を同一とした。給餌量は
C. calcitransは10,000〜20,000細胞/ml・日、
C .gracilisは20,000〜50,000細胞/ml・日を給餌し、補助餌料の卵磨砕物は乾燥重量で10mg/ml・日を給餌した。水温はウォーターバスを用いて20.0〜22.0℃とした。換水は半量を毎日サイホンで交換した。ドリオラリア幼生へは日齢14から出現し、日齢15からペンタクチュラ幼生が出現して着底が開始された。このため日齢20における各ステージの幼生出現率を比較して実験を終了した。
対照区では、ドリオラリア期以降の幼生の出現率が日齢20で44.5%であったが、実験区では0.02ppm,0.1,0.2ppmの濃度毎にそれぞれ61.2%,82.7%,74.0%であった(
図1、
図2)。ただし生残率は日齢15において対照区および0.02ppm区,0.1ppm区が98〜100%の高成残率を示したのに対して0.2ppm区では68.0%と低く、飼育状況においても白色に変色した浮遊幼生が目立つなどの悪影響がみられた(表1)。
【0023】
【表1】
【0024】
〔実施例2〕
マガキ浮遊幼生の種苗生産数の向上を目的として、殻頂期幼生以降の卵白由来リゾチーム塩酸塩の飼育水中への添加効果を調べた。
実験は2013年5月26日から6月20日の26日間行った。実験はあらかじめ日齢6まで予備飼育を行い、実験開始時に分槽した。開始時の飼育密度は2.28、2.46個体/mlとし、実験区、対照区ともに飼育水槽は500リットル円形水槽を用いた。餌料藻は
C .calcitrans,
P .lutheriを用いた。また補助餌料としてマガキ卵磨砕物(乾燥重量で10mg/ml)を用いた。実験区は卵白由来リゾチーム塩酸塩顆粒(日医工株式会社製 リゾチーム含量10%)を粉砕したものを、日齢6以降飼育水に0.01ppmの濃度で添加した。対照区は卵白由来リゾチーム塩酸塩顆粒を除く餌料条件を同一とした。給餌量は
C. calcitransは10,000〜30,000細胞/ml・日、
P .lutheriは2,000〜4,000細胞/ml・日を給餌し、補助餌料として卵磨砕物を乾燥重量で10mg/ml・日を給餌した。水温はウォーターバスを用いて23.2〜24.9℃とした。換水は半量を毎日サイホンで交換するとともに3〜5日毎に全量を交換した。実験期間中の平均殻長の推移を
図3に、日齢20における生残率、剥離稚貝数、コレクター100cm
2あたりの平均稚貝数を表2に示した。
平均殻長は日齢14以降実験区がやや上回った。日齢20における生残率は対照区が14.6%に対して実験区では29.8%とほぼ2倍であった。飼育中に対照区ではしばしば浮遊幼生の沈降現象がみられたが、実験区ではみられなかった。日齢20以降は着底用コレクター(塩化ビニール製10cm×10cm厚さ0.5mm)を各300枚投入して採苗し、日齢54で剥離して比較した。剥離個体数は対照区が695個体に対して、実験区は8044個体で、約11倍の差がみられた。平均殻高はそれぞれ8.9mm、11.7mmであった。
【0025】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、他の貝類人工種苗(カキ類、アカガイ類、アサリ、ハマグリおよびアコヤガイ)およびウニ類(アカウニ、ムラサキウニ、バフンウニ、シラヒゲウニ、エゾバフンウニ、キタムラサキウニ)にも応用可能で、これらの安定生産を可能とし、水産業における増養殖分野(養殖業および栽培漁業)において貢献度が高い。