(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-167910(P2015-167910A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】グリスフィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 45/08 20060101AFI20150901BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
B01D45/08 Z
F24F7/06 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-44623(P2014-44623)
(22)【出願日】2014年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】599094990
【氏名又は名称】サンタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100173989
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 友文
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅博
【テーマコード(参考)】
3L058
4D031
【Fターム(参考)】
3L058BK05
4D031AB01
4D031AB22
4D031BA07
4D031CA01
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】 組立や分解及び清掃が容易に行なえると共に、低静圧で処理風量が向上し、排気ファンの小型・省力化を期待できるグリスフィルターを提供する。
【解決手段】 本発明のグリスフィルターは、吸気口側と排気口側とが略く字状に屈曲した通風路を複数並設して成る。表裏のカバー材2,2で中間板材3を挟着して本体を構成する。前記カバー材2,2には定間隔で穿設したコ型スリット21内の舌片22を中間板材3側へ折曲して開口部を形成すると共に、折り曲げた舌片22,22間を通風路26とした。表側のカバー材2の開口部を吸気口23とし、裏側のカバー材2の開口部を排気口24とし、吸気口側の通風路26と排気口側の通風路26を略く字状に配置する。対向する各通風路26,26を連通する窓孔31を前記中間板材3に形成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口側と排気口側とが略く字状に屈曲した通風路を複数並設して構成するグリスフィルターにおいて、表裏のカバー材で中間板材を挟着して本体を構成し、前記カバー材には定間隔で穿設したコ型スリット内の舌片を中間板材側へ折曲して開口部を形成すると共に、折り曲げた舌片間を通風路としたこと、表側のカバー材の開口部を吸気口とし、裏側のカバー材の開口部を排気口とし、吸気口側の通風路と排気口側の通風路を略く字状に配置すると共に、対向する各通風路を連通する窓孔を前記中間板材に形成したことを特徴とするグリスフィルター。
【請求項2】
通風路の横幅に対して中間板材に形成する窓孔の横幅を通風路の横幅に対して狭い巾に設定することを特徴とする請求項1に記載のグリスフィルター。
【請求項3】
表裏のカバー材は同一の構成であり、上下・左右面を形成する周壁片を備え、上記舌片の折曲した先端が周壁片の先端平面に近接するものとしたこと、この表裏のカバー材を互いに上下位置を逆にして中間板材を挟着して本体を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のグリスフィルター。
【請求項4】
上下壁片の一方を他の同巾の三壁片の倍の長巾とし、上記舌片の折曲した先端が前記同一の三壁片の先端平面に近接するものとしたことを特徴とする請求項3に記載のグリスフィルター。
【請求項5】
舌片の折曲方向をカバー材の中央部で左右反対方向とし、吸気口から側方へ通風路を形成し、中間板材の窓孔から中央方向へ通風路を略く字状に形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載のグリスフィルター。
【請求項6】
底面と成るカバー材の下壁片に油抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項3乃至5に記載のグリスフィルター。
【請求項7】
表カバー材に取手を設けたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のグリスフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油煙等の排気中に含まれる粒子(ミスト状態のものも含まれる)を捕捉するためのグリスフィルターに関するもので、特に厨房などで発生する油脂分やダストを捕捉するためのグリスフィルターに適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房などで発生する油煙等の排気中に含まれるミストを捕捉するため断面視概略「く」字状をした通風経路を有し、吸気側の通風経路と排気側の通風経路、及び吸気側から排気側へ風向きを変える中間のコーナ通風経路とで構成されるグリスフィルターが知られている。
【0003】
この屈曲径路を構成したグリスフィルターは、その径路を通風する時に発生する遠心力によってミストを分離し、遠心力によりミストが飛ばされる方向の外周側壁にミストを衝突させ、油脂分を凝集させて捕捉するものである。
【0004】
そして、分離性能が高くなるにしたがって屈曲径路の抵抗が大きくなる関係にあり、遠心効果を高める為に屈曲径路を狭くして流速を速くし、遠心力による分離箇所を増加させるため繰り返し屈曲径路を構成する等、通風抵抗を大きくすることで分離捕捉効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−100318号公報
【特許文献2】特開2004−130257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平07−100318号公報、及び特開2004−130257号公報で開示されているグリスフィルターは、吸引側と排気側とが略く字状に屈曲させて連続したく字状板を複数並設し、これを枠体で囲んで構成したパネル状を成し、前記く字状板の両端部を、枠体を構成する枠材のうち一対の対向する枠材内にはめ込んで固着し、隣り合うく字状板間を通風径路に形成したものである。
【0007】
したがって、グリスフィルターは、基本的には一体的に固定されているのであり、分解すると枠材と多数のく字状板に分離するものとなるため、グリスフィルターを清掃するにはそのままの構成状態で行うか、或いは分解して行い、清掃後に改めて組み立てる必要がある。
【0008】
よって、そのままの構成状態での清掃は細部までの清掃に問題があり、分解・組立を行う場合は大変な手数を要することになる。
そこで、本発明は組立や分解及び清掃が容易に行なえると共に、低静圧で処理風量が向上し、排気ファンの小型・省力化を期待できるグリスフィルターを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明のグリスフィルターは、吸気口側と排気口側とが略く字状に屈曲した通風路を複数並設して構成するグリスフィルターにおいて、表裏のカバー材で中間板材を挟着して本体を構成し、前記カバー材には定間隔で穿設したコ型スリット内の舌片を中間板材側へ折曲して開口部を形成すると共に、折り曲げた舌片間を通風路としたこと、表側のカバー材の開口部を吸気口とし、裏側のカバー材の開口部を排気口とし、吸気口側の通風路と排気口側の通風路を略く字状に配置すると共に、対向する各通風路を連通する窓孔を前記中間板材に形成したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において、通風路の横幅に対して中間板材に形成する窓孔の横幅を通風路の横幅に対して狭い巾に設定することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の発明において、表裏のカバー材は同一の構成であり、上下・左右面を形成する周壁片を備え、上記舌片の折曲した先端が周壁片の先端平面に近接するものとしたこと、この表裏のカバー材を互いに上下位置を逆にして中間板材を挟着して本体を構成したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の発明において、上下壁片の一方を他の同巾の三壁片の倍の長巾とし、上記舌片の折曲した先端が前記同一の三壁片の先端平面に近接するものとしたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、請求項3又は4に記載の発明において、舌片の折曲方向をカバー材の中央部で左右反対方向とし、吸気口から側方へ通風路を形成し、中間板材の窓孔から中央方向へ通風路を略く字状に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、請求項3乃至5に記載の発明において、底面と成るカバー材の下壁片に油抜き孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至6に記載の発明において、表カバー材に取手を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本願発明は、表裏のカバー材で中間板材を挟着して本体を構成したものであるから、中間板材を挟着した表裏カバー材を連結するのみで簡単容易に組立・解体ができる効果を有するものである。
そして、三枚の板状体の材であるから清掃も容易に且つ汚れを残さずに洗い落とすことができるものである。
【0017】
また、カバー材に定間隔で穿設したコ型スリット内の舌片を、中間板材側へ折曲して開口部を形成すると共に、折り曲げた舌片間を通風路とするものであるから、従来のように、く字状板の両端部を一対の対向する枠材内にはめ込んでく字状板を複数並設して通風路を形成するのに比べ、その製造が格段に容易で、手数を省ける効果を発揮する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、通風路の横幅に対して中間板材に形成する窓孔の横幅を通風路の横幅に対して狭い巾に設定するものであるから、遠心効果を高める為に屈曲径路を狭くして流速を速くし、通風抵抗を大きくすることで油分の分離捕捉効果を高める効果を有するものであり、設定を変更することによって簡単に通風抵抗を増減できる効果を発揮する。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の発明の効果に加えて、表裏のカバー材は同一の構成であり、上下・左右面を形成する周壁片を備え、上記舌片の折曲した先端が周壁片の先端平面に近接するものとしたこと、この表裏のカバー材を互いに上下位置を逆にして中間板材を挟着して本体を構成したことにより、同一のカバー材を表裏に使用可能で、製造コストを抑えられると共に材料の歩留まりを向上させる効果を発揮するものである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3の発明の効果に加えて、上下壁片の一方を他の同巾の三壁片の倍の長巾とし、上記舌片の折曲した先端が前記同一の三壁片の先端平面に近接するものとしたため、長巾部分が他方の上下壁片重合し、当該部を利用して連結手段で一体化することができる効果を有する。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4の発明の効果に加えて、舌片の折曲方向をカバー材の中央部で左右反対方向とし、吸気口から側方へ通風路を形成し、中間板材の窓孔から中央方向へ通風路を略く字状に形成したものであるから、吸気口へは広い範囲か吸引でき、排気口からは中央方向へ集約させて排気できる効果を有するものである。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5の発明の効果に加えて、遠心力によりミストが飛ばされる方向の外周側壁に衝突して凝集した油分が流下して底面と成るカバー材の下壁片に形成された油抜き孔から回収できる効果がある。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の発明の効果に加えて、表カバー材に取手を設けたため、換気扇等への取付・取外し作業が容易となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す分解した斜視図である。
【
図3】
図2のA−A線断面図(a)及び一部拡大断面図(b)である。
【
図5】
図4のB−B線断面図(a)及び一部拡大断面図(b)である。
【
図8】本発明のグリスフィルターの油分分離作用を示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図面の一実施例に基づいて説明する。
本発明のグリスフィルターは、吸気口側と排気口側とが略く字状に屈曲した通風路を複数並設して構成されるものであり、グリスフィルター1は、表裏のカバー材2,2で中間板材3を挟着して本体を構成している。
図1は本発明の一実施の形態を示す分解した斜視図、
図2は組み立てた状態を示す斜視図である。
【0026】
カバー材2は、矩形の正面板に一定間隔で穿設したコ型スリット21を利用して、スリット21内の舌片22が裏側へ折り曲げてある。
また、周囲端は、グリスフィルター1の上下・左右面を形成する周壁片を裏側に有し、上下壁片の一方231の巾が他の同一巾の三壁片232,233,234の倍の長巾と成っている。
【0027】
上記舌片22の折曲した先端221は、前記同一巾の三壁片の先端平面に近接する位置まで折り曲げられ、舌片22は側方への傾斜面と成っている。
そして、折曲した後の開口部を吸気口24又は排気口25に形成すると共に、折り曲げた舌片22間を通風路26としたものである。
【0028】
このカバー材2,2を表裏として互いに上下位置を逆にして前記中間板材3を挟着して本体を構成する。
互いに上下位置を逆にして表裏とするため、長巾の上下壁片の一方231が上下壁片の他方232に一部に重複し、当該の重複面に対応して穿設した螺子孔5にボルト6を螺入して連結され、図面では上下各4箇所で組み立てている。
【0029】
そして、表側となるカバー材2の開口部を吸気口24とし、裏側となるカバー材2の開口部を排気口25とし、吸気口側の通風路26と排気口側の通風路26とは略く字状に配置される。
一方、中間板材3には、上下方向に一定間隔で窓孔31が設けられている。
そして、挟着した中間板材3に設けた窓孔31は、対向する各通風路26,26に対応し、両各通風路26,26が連通するものと成っている。
【0030】
舌片22の折曲方向をカバー材2の中央部で左右反対方向とし、吸気口24から側方へ通風路26を形成し、中間板材3の窓孔31から中央方向へ通風路26を略く字状に形成した通風路26の横幅に対して中間板材3に形成する窓孔31の横幅を通風26の横幅に対して狭い巾に設定されている。
【0031】
したがって、フィルター1は、表側カバー材2の吸気口24から側方へ形成した通風路26を通り、中間板材3の窓孔31を抜けて裏側カバー材2の中央方向へ向かう通風路26を通って排気口25に至る屈曲径路を構成し、油脂分を含んだ空気が中間板材3の窓孔31を通過する際に、縮流をおこすと同時に気流がVターンをし、油分が慣性分離するもので、その径路を通風する時に発生する遠心力によってミストを分離し、遠心力によりミストが飛ばされる方向の舌片22や中間板材3にミストを衝突させ、凝集させてグリース等を捕捉する作用を奏するものである。
【0032】
中間板材3はカバー材2の正面板と殆ど同形で拡大するものでなければ、表裏のカバー材2,2を互いに上下位置を逆にして挟着する際に、上下位置となる上下壁片が重合してその厚み分ずれるけれど挟着には支障を与えるものではない。
また、カバー材2,2が形成する通風路26,26を連通する窓孔31は通風路の断面形状の横幅より狭い巾であることが設計条件であるから、実際の挟着において、設計より多少誤差が生じても目的の作用効果を得られるものである。
【0033】
また、油脂分等の分離性能は屈曲径路の抵抗の大小が関っているため、通風路26の横幅に対して中間板材3に形成する窓孔31の横幅を任意に設定することによって、通風抵抗を増減できる適所のグリスフィルター1を簡単に提供することが可能である。
【0034】
底面を形成するカバー材2,2の下壁片231,232に油抜き孔4が形成され、長巾の下壁片231には巾間中央部に長孔を穿設し、重合する他方の下壁片232には対応する半長円が切り欠いてある。
さらに、表側となるカバー材2には取手7が設けられ、各部材を組み立てる前に当該取手7を適宜手段で取り付けるものである。
【0035】
この種のフィルターの材質はステンレスを用いることが多く、油脂分等の付着を防止する表面処理や、洗浄時に流れ落ち易くするための特殊処理を行うこともできる。
【0036】
図面では舌片22への傾斜は中央部を境に左右方向に分かれているけれど、何れかの同一方向へ統一させても良く、使用場所等の条件に併せて設計する事項である。
また、上下壁片の一方231の巾が他の三壁片232,233,234の倍の長巾とし、重合部を形成して連結組立を容易としているけれど、周壁片を総て同一巾としてもよく、この場合は連結片等を当てる等の適宜連結手段により固定することとなる。
【0037】
以上、本発明を実施の形態を図面に基づき具体的に説明したが、本考案は上記の実施形態に限定されるものではなく、考案の思想を逸脱することない範囲の他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 グリスフィルター
2 カバー材
3 中間板材
4 油抜孔
5 螺子孔
6 ボルト
7 取手
21 スリット
22 舌片
24 吸気口
25 排気口
26 通風路
31 窓孔
231,232 上下壁片
233,234 左右壁片