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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168078(P2015-168078A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】デジタル印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/00 20060101AFI20150901BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150901BHJP
   B65H 29/06 20060101ALI20150901BHJP
   B65H 5/12 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   B41J11/00 A
   B41J2/01 305
   B65H29/06
   B65H5/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-42370(P2014-42370)
(22)【出願日】2014年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 大
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 敏彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F101
3F106
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056FA13
2C056HA29
2C058AB15
2C058AB17
2C058AC07
2C058AC12
2C058AE02
2C058AE09
2C058AF20
2C058AF29
2C058AF31
2C058AF59
2C058BA01
2C058BA08
3F101CA14
3F101CB02
3F101CC07
3F101LA06
3F101LB03
3F106AA10
3F106AC02
3F106AC11
3F106LA06
3F106LB03
(57)【要約】
【課題】バックラッシによる印刷不良を未然に防止する。
【解決手段】シートS1を保持して搬送する印刷胴33と、印刷胴33により搬送されるシートS1にデジタル印刷処理を施す処理部3とを備えたデジタル印刷機1において、印刷胴33の軸に固定された印刷胴歯車33gと、当該印刷胴歯車33g、あるいは当該印刷胴歯車33gと駆動力伝達方向の下流側で噛合または歯車連結された歯車33g,36g,37g,38gに制動力を付与する制動力付与装置80とを設けることにより、制動力付与装置80により付与される制動力が、印刷胴歯車33gと歯車50gとのバックラッシ分の位相ずれを防止することができるので、印刷不良を無くすことができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを保持して搬送する印刷胴と、
前記印刷胴により搬送されるシートにデジタル印刷処理を施す処理部と
を備えたデジタル印刷機において、
前記印刷胴の軸に固定された印刷胴歯車と、
前記印刷胴歯車、あるいは当該印刷胴歯車と駆動伝達方向の下流側で噛合または歯車連結された歯車に制動力を付与する制動力付与装置と
を備えることを特徴とするデジタル印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車伝達機構を介して互いに対接した複数の胴を回転駆動するデジタル印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式によりシートに印刷を行うデジタル印刷機として、印刷部の搬送胴としての圧胴に保持されて搬送されるシートに複数のインクヘッドから各色のインクの液滴を吐出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−226703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1のデジタル印刷機は、圧胴およびその圧胴と対接する他の胴を駆動するための歯車伝達機構が一般的に用いられている。
【0005】
図11(A)および(B)に示すように、図示しない搬送胴(圧胴)の軸に固定された従動ギア1の歯と図示しない駆動モータに接続された駆動ギア2の歯とが噛合され、その従動ギア1の歯と図示しない渡し胴の軸に固定された従動ギア3の歯とが噛合された状態で、駆動モータにより駆動ギア2が回転駆動されると、駆動ギア2と噛合された従動ギア1が従動回転されるとともに、従動ギア1と噛合された従動ギア3が従動回転される。
【0006】
このとき駆動ギア2の歯と従動ギア1の歯との間には、バックラッシが設けられているため、従動ギア1に何らかの負荷変動が生じて図11(B)に破線矢印で示すように負荷変動による回転力が付与されると、駆動ギア2の歯によって押されている従動ギア1の歯が当該駆動ギア2の歯から離れてしまい、駆動ギア2に対する従動ギア1の位相が変動してしまう。
【0007】
従動ギア1に生じる負荷変動の原因の一つとして、従動ギア1と一体に固定された搬送胴(圧胴)のくわえ爪装置の開閉動作が挙げられる。
【0008】
搬送胴(圧胴)には、シートをくわえて保持するくわえ爪装置が備えられ、くわえ爪装置の爪軸に連結されたカムフォロワにはくわえ爪装置の爪がシートをくわえた状態を維持するための付勢力がばね等により付与されている。従って、くわえ爪装置のカムフォロワが、印刷機フレームに設けられた爪開閉カムの山を乗り越える際に、搬送胴(圧胴)のくわえ爪装置の爪が付勢力に抗して一旦開いた後に付勢力により閉じるという開閉動作が行われる。
【0009】
このとき、くわえ爪装置の爪軸に連結されたカムフォロワには爪開閉カムへ向かって付勢力が常に付与されているため、爪開閉カムの山をくわえ爪装置のカムフォロワが乗り越える際、付勢力の付与されたカムフォロワによる爪開閉カムの山を押し付ける力が搬送胴(圧胴)の従動ギア1の回転力(破線矢印で示す)として付与されるので、駆動ギア2に対する従動ギア1の位相が変動し、印刷不良が発生するという問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながらもバックラッシによる印刷不良を無くすことのできるデジタル印刷機を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、シートを保持して搬送する印刷胴と、前記印刷胴により搬送されるシートにデジタル印刷処理を施す処理部とを備えたデジタル印刷機において、前記印刷胴の軸に固定された印刷胴歯車と、前記印刷胴歯車、あるいは当該印刷胴歯車と駆動伝達方向の下流側で噛合または歯車連結された歯車に制動力を付与する制動力付与装置とを備えるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印刷胴歯車、あるいは当該印刷胴歯車と駆動伝達方向の下流側で噛合または歯車連結された歯車に制動力が付与されることによって、印刷胴歯車と歯車とのバックラッシ分の位相ずれを防止することができるので、簡易な構成でありながらも印刷不良を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】デジタル印刷機の全体構成を示す側面図である。
図2】歯車伝達機構の構成を示す側面図である。
図3】第1の排紙側渡し胴の構造を示す側面図である。
図4】制動力付与装置の連結状態を示す上面図である。
図5】他の実施の形態における制動力付与装置の第1の連結状態を示す上面図である。
図6】他の実施の形態における制動力付与装置の第2の連結状態を示す上面図である。
図7】他の実施の形態における制動力付与装置の第3の連結状態を示す上面図である。
図8】他の実施の形態における制動力付与装置の第4の連結状態を示す上面図である。
図9】他の実施の形態における制動力付与装置の第5の連結状態を示す上面図である。
図10】他の実施の形態における制動力付与装置の第6の連結状態を示す上面図である。
図11】従来の歯車伝達機構におけるバックラッシの影響の説明に供する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<デジタル印刷機の構成>
図1に示すように、デジタル印刷機1は、供給部としての給紙部2、処理部としてのデジタル印刷ユニット3及び排出部としての排紙部4を備える。
【0016】
給紙部2には、複数のシートS1が積載された積載台21および、その積載台21の最上段のシートS1をフィーダボードFBへ搬送するサッカー装置23が設けられている。サッカー装置23は間欠供給バルブ27と接続されており、その間欠供給バルブ27は図示しない負圧源と接続されている。
【0017】
フィーダボードFBのシート搬送方向の先端側には、シートS1を保持して搬送するスイング装置31fが設けられ、そのスイング装置31fには給紙側渡し胴32が対向して配置され、その給紙側渡し胴32がデジタル印刷ユニット3のフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。給紙側渡し胴32には、スイング装置31fの爪部により受け渡されるシートS1をくわえた状態で保持するくわえ爪装置32aが設けられている。
【0018】
給紙側渡し胴32には、スイング装置31fよりもシート搬送方向下流側に搬送胴としての印刷胴33が対向して配置され、その印刷胴33がフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。印刷胴33は、給紙側渡し胴32の3倍の直径を有する3倍胴として構成され、シートS1を保持するくわえ爪装置33a、33b、33cが円周方向に互いに120度位相をずらした状態で設けられている。
【0019】
印刷胴33には、給紙側渡し胴32との対接部分よりもシート搬送方向下流側に、当該印刷胴33の周面と僅かな隙間を介してインクジェットノズル部34が対向配置されている。
【0020】
インクジェットノズル部34には、互いに異なる色のインクジェットノズルヘッド34a〜34dが印刷胴33のシート搬送方向下流側へ向かって配置されている。これらインクジェットノズルヘッド34a〜34dは、印刷胴33の周面に沿って順番に配置され、それぞれが印刷胴33の周面を指向している。
【0021】
印刷胴33には、インクジェットノズル部34よりもシート搬送方向下流側に、第1の排紙側渡し胴36が対向して配置され、その第1の排紙側渡し胴36がフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。第1の排紙側渡し胴36には、印刷胴33のくわえ爪装置33a、33b、33cにより搬送されるシートS1をくわえ替えして保持するくわえ爪装置36aが設けられている。
【0022】
第1の排紙側渡し胴36の印刷胴33との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、第2の排紙側渡胴37が第1の排紙側渡し胴36と対向して配置され、その第2の排紙側渡し胴37がフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。第2の排紙側渡し胴37には、第1の排紙側渡し胴36により搬送されるシートS1をくわえ替えして保持するくわえ爪装置37aが設けられている。
【0023】
第2の排紙側渡し胴37の第1の排紙側渡し胴36との対接部分よりもシート搬送方向下流側には紙取胴38が対向して配置され、その紙取胴38がフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。紙取胴38には、第2の排紙側渡し胴37により搬送されるシートS1をくわえ替えして保持するくわえ爪装置38aが設けられている。
【0024】
紙取胴38の下方には、シートS1を排紙部4へ搬送するベルトコンベア状のデリバリーベルト40が配設されている。デリバリーベルト40は、プーリ40a、40b間にベルト40dが張架されるとともに、所定のテンションを付与するためのローラ40cが設けられている。
【0025】
排紙部4には、デリバリーベルト40のシート搬送方向先端側に、デジタル印刷ユニット3で印刷処理の施されたシートS1を積載する積載台41が設けられている。
【0026】
第2の排紙側渡し胴37の紙取胴38との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、反転前倍胴39が対向して配置され、その反転前倍胴39がフレーム3a(図3)に回動自在に支持されている。反転前倍胴39は、第2の排紙側渡し胴37の2倍の直径を有する2倍胴であり、後述する駆動モータ50m(図4)とは別個の反転前倍胴39用の単独モータにより独自に駆動される。反転前倍胴39は、第2の排紙側渡し胴37により搬送されるシートS1をくわえ替えして保持し搬送するくわえ爪装置39aが設けられている。
【0027】
反転前倍胴39の第2の排紙側渡し胴37との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、シートS1を保持して搬送する反転スイング装置31bが対向して配置される。この反転スイング装置31bは、図1に破線で示される反転前倍胴39から搬送されるシートS1の尻側端部を受け取る受取位置と、図1に実線で示される印刷胴33のくわえ爪装置33a、33b、33cにシートS1の尻側端部を受け渡す受渡位置との間で揺動自在にフレーム3a(図3)に支持されている。
【0028】
<歯車伝達機構の構成>
次に、駆動ギア50gによる印刷胴33およびその周辺に配置された給紙側渡し胴32、第1の排紙側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37、紙取胴38を回転駆動するための歯車伝達機構の構成について、図2を用いて説明する。
【0029】
印刷胴33の軸に固定された印刷胴歯車としての印刷胴ギア33gには、後述する駆動モータ50m(図4)に駆動連結された駆動歯車としての駆動ギア50gが噛合されている。印刷胴ギア33gには、給紙側渡し胴32の軸に固定された給紙側渡し胴ギア32gが噛合されるとともに、第1の排紙側渡し胴36の軸に固定された第1の排紙側渡し胴ギア36gが噛合されている。
【0030】
第1の排紙側渡し胴ギア36gには、第2の排紙側渡し胴37の軸に固定された第2の排紙側渡し胴ギア37gが噛合されており、その第2の排紙側渡し胴ギア37gには、紙取胴30の軸に固定された紙取胴ギア38gが噛合されている。
【0031】
すなわち駆動ギア50gに印刷胴ギア33gが直接噛合されるとともに、駆動ギア50gよりも駆動伝達方向の下流側で、印刷胴ギア33gを介して給紙側渡し胴ギア32g、第1の排紙側渡し胴ギア36g、第2の排紙側渡し胴ギア37gおよび紙取胴ギア38gが当該駆動ギア50gに歯車連結される。
【0032】
<第1の排紙側渡し胴の構成>
図3に示すように、第1の排紙側渡し胴36の軸36bは、デジタル印刷ユニット3のフレーム3a、3aにベアリング60、60を介して回動自在に支持されている。第1の排紙側渡し胴36の軸36bの一方の端部には、当該軸36bと同軸上に第1の排紙側渡し胴ギア36gがボルト61により一体に取付固定されている。第1の排紙側渡し胴36の軸36bの他方の端部には、当該軸36bよりも小径の軸端部36cが形成されており、その軸端部36cに制動力付与装置80が設けられている。
【0033】
軸端部36c側のフレーム3aから植設された支柱62、62には、制動力付与装置80の薄円板状でなるベース63がボルト62a、62aにより取り付けられている。ベース63には、その中央に貫通孔が形成され、その貫通孔に軸端部36cが挿通されている。
【0034】
ベース63には、ボルト64を介して制動力付与装置80の固定部65が一体に固定されており、その固定部65には軸端部36cよりも直径の大きな貫通孔65hが形成されている。固定部65における貫通孔65hの両端部には、ベアリング69a、69bが設けられている。
【0035】
固定部65は、ベース63に固定された部分の大径部65aと、大径部65aよりも径の小さい小径部65bと、当該小径部65bよりも径が大きく、大径部65aよりも径の小さいコイル収納部としての中径部65cとが一体となって形成されており、その中径部65c内に軸端部36cを囲むように図示しない電源部に接続されたコイル70が埋め込まれている。
【0036】
軸端部36cの周面上には回転部66が一体に固定されており、当該回転部66と固定部65とがベアリング69a、69bを介して互いに支持されている。回転部66における片側断面略U字状の腕部66aは、固定部65の中径部65cの周囲4辺を囲み、当該腕部66aの先端が小径部65bと僅かな隙間を介して対向され、その隙間にシール材としてのパッキン71が介装されている。回転部66の腕部66aと中径部65cとパッキン71とにより閉じられた閉鎖空間68が形成され、その閉鎖空間68にパウダー状の磁性鉄粉68aが収納されている。固定部65、回転部66、ベアリング69a、69b、閉鎖空間68、コイル70およびパッキン71によって制動力付与装置80が構成される。
【0037】
<デジタル印刷機の印刷動作>
このように構成されたデジタル印刷機1の印刷動作について次に説明する。デジタル印刷機1では、電源がオンされた後スタートスイッチが押下されると、駆動モータ50m(図4)を介して駆動ギア50gが回転されるので、駆動ギア50gと噛合している印刷胴ギア33gが回転され、印刷胴ギア33gと噛合している給紙側渡し胴ギア32gおよび第1の排紙側渡し胴ギア36gについても回転される。第1の排紙側渡し胴ギア36gが回転されると、第1の排紙側渡し胴ギア36gと噛合している第2の排紙側渡し胴ギア37gが回転され、当該第2の排紙側渡し胴ギア37gと噛合している紙取胴ギア38gが回転される。
【0038】
これにより、印刷胴33が回転駆動され、この印刷胴33と一緒に給紙側渡し胴32、第1の排紙側渡し胴36が回転されるとともに、第1の排紙側渡し胴36と一緒に第2の排紙側渡し胴37が回転され、第2の排紙側渡し胴37と一緒に紙取胴38についても回転される。
【0039】
この状態で、作業者のスイッチ操作によりシートS1の表面だけを印刷する片面印刷モードが選択された場合、給紙部2の積載台21に積載された最上段のシートS1がサッカー装置23により吸着された状態で当該サッカー装置23が移動しフィーダボードFBへ搬送される。
【0040】
フィーダボードFBにより搬送されたシートS1はスイング装置31fの爪部によって保持された後に給紙側渡し胴32へ向かって搬送され、その給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aにくわえ替えされる。
【0041】
給紙側渡し胴32の回転に伴って搬送されたシートS1は、印刷胴33との対接部分において給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aから印刷胴33のくわえ爪装置33a〜33cの何れかにくわえ替えされた後、印刷胴33の回転とともに搬送される。
【0042】
印刷胴33により搬送されるシートS1の表面には、インクジェットノズル部34のインクジェットノズルヘッド34a〜34dから微滴化されたインクが吹き付けられることによりデジタル印刷処理が施され、その後、第1の排紙側渡し胴36へ搬送される。
【0043】
印刷胴33と第1の排紙側渡し胴36との対接部分において印刷胴33から第1の排紙側渡し胴36のくわえ爪装置36aにくわえ替えされたシートS1は、第1の排紙側渡し胴36と第2の排紙側渡し胴37との対接部分において、第1の排紙側渡し胴36のくわえ爪装置36aから第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aにくわえ替えされる。
【0044】
片面印刷モードの場合、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aの爪は開いて閉じるように動くことによりシートS1をくわえて保持し、搬送しているシートS1を紙取胴38へ受け渡すように動き、紙取胴38のくわえ爪装置38aの爪は第2の排紙側渡胴37のくわえ爪装置37aにくわえられた状態で搬送されるシートS1を受け取るように開いて閉じるように動く。これによりシートS1は第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へくわえ替えされて搬送される。
【0045】
第2の排紙側渡し胴37と紙取胴38との対接部分において、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aから紙取胴38のくわえ爪装置38aにくわえ替えされたシートS1は、デリバリーベルト40の上方に紙取胴38のくわえ爪装置38aが位置したタイミングで当該くわえ爪装置38aによる保持が解除され、デリバリーベルト40のベルト40d上に載せられる。
【0046】
デリバリーベルト40のベルト40d上に載せられたシートS1はベルト40dの走行とともに搬送され、表面にデジタル印刷処理の施されたシートS1が排紙部4の積載台41上に排出される。
【0047】
一方、作業者のスイッチ操作によりシートS1の表面および裏面の双方を印刷する両面印刷モードが選択された場合、シートS1の表面に関しては、片面印刷モードの場合と同様の印刷処理が施されるが、片面が印刷されたシートS1は、片面印刷の場合とは異なり、第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へシートS1が受け渡されることなく反転前倍胴39へ受け渡される。
【0048】
このとき、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aの爪は開かずに閉じたまま、搬送しているシートS1を紙取胴38へ受け渡さずに搬送し続けるように動き、紙取胴38のくわえ爪装置38aの爪は第2の排紙側渡胴37のくわえ爪装置37aにくわえられた状態で搬送されるシートS1を受け取らないように開き放しの状態となる。これによりシートS1は第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へくわえ替えされることなく反転前倍胴39へ搬送される。
【0049】
反転前倍胴39の回転とともに搬送されるシートS1は、反転スイング装置31bの破線で示される受取位置にシートS1の尻側端部が対向したタイミングで当該反転スイング装置31bの爪部によってその尻側端部が保持されると同時に、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aによるシートS1の保持が解除される。
【0050】
反転スイング装置31bの破線で示す受取位置から実線で示す受渡位置へのスイング動作によりシートS1は印刷胴33に向けて搬送され、反転スイング装置31bの爪部から印刷胴33のくわえ爪装置33a〜33cの何れかにシートS1の尻側端部がくわえ替えされる。
【0051】
このときインクジェットノズル部34により既にデジタル印刷処理の施されたシートS1の表面(印刷処理済みの面)が印刷胴33の周面と対接し、シートS1の裏面(印刷未処理の面)が露出した状態で、印刷胴33によりシートS1の尻側端部がくわえ爪装置33a〜33cの何れかにより保持されて搬送され、インクジェットノズル部34によりシートS1の裏面にデジタル印刷処理が施される。
【0052】
反転スイング装置31bによりシートS1が印刷胴33へ再度搬送されるときには、サッカー装置23は間欠供給バルブ27を介して積載台21からシートS1を間欠的に供給するように制御されているため、給紙側渡し胴32から搬送される新規なシートS1と裏面印刷のために反転スイング装置31bから搬送されるシートS1とが干渉することはない。
【0053】
その後、裏面にデジタル印刷処理の施されたシートS1は、片面印刷モードの場合と同様に、第1の排出側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37、紙取胴38を順次介してデリバリーベルト40から排紙部4の積載台41へ排出される。
【0054】
<負荷変動による印刷胴の回転不良除去動作>
図3に示されたように、第1の排紙側渡し胴36における軸36bの軸端部36c側に設けられた制動力付与装置80は、デジタル印刷機1の電源がオンされると同時に作動し、電源部を介して固定部65のコイル70が通電される。
【0055】
コイル70が通電されると、当該コイル70の周囲に破線で示す磁束が発生し、固定部65と回転部66との閉鎖空間68に収納されたパウダー状の磁性鉄粉68aが界磁して互いに繋がり、回転部66の腕部66aの内周面に対して磁性鉄粉68aの引っ掛かりが生じ、これが固定部65に対する回転部66の回転抵抗となる。
【0056】
この回転抵抗は、駆動ギア50gおよび印刷胴ギア33gを介して伝達された駆動力により第1の排紙側渡し胴36における回転部66が回転するときの制動力となって作用する。この制動力は、負荷変動によって印刷胴ギア33gが動かされるときの力よりも大きく、かつ、駆動ギア50gの駆動力よりも小さく設定されている。
【0057】
ここで、制動力付与装置80による第1の排紙側渡し胴ギア36gに対する制動力は、第1の排紙側渡し胴36の回転速度を遅くするものではなく、制動力を作用させる前後で回転速度は基本的に変わらないまま、印刷胴ギア33gがバックラッシ分だけ駆動ギア50gに対して位相がずれることを防止するものである。
【0058】
このように第1の排紙側渡し胴36には、一定の制動力が常時付与されているため、例え印刷胴33に負荷変動が生じたとしても、駆動ギア50gに対する従動ギア1の位相が変動することはない。
【0059】
このような制動力付与装置80の制動力がデジタル印刷機1の電源がオンされたときから第1の排紙側渡し胴ギア36gに終始作用しているため、印刷胴33に何らかの負荷変動が生じたとしても、駆動ギア50gに対して印刷胴ギア33gの位相がずれ、印刷胴33の回転が乱れることを予め回避することができる。かくして、簡易な構成でありながらもバックラッシによる印刷不良を未然に防止することができる。
【0060】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、図4に示すように、駆動モータ50mに接続された駆動ギア50gと直接噛合された印刷胴33の印刷胴ギア33g、その印刷胴ギア33gと噛合された第1の排紙側渡し胴ギア36gと固定された第1の排紙側渡し胴36に制動力付与装置80を設けるようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、図5に示すように、印刷胴ギア33gと固定された印刷胴33に制動力付与装置80を直接設けたり、図6に示すように、印刷胴ギア33gとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で接続された第1の排紙側渡し胴ギア36g、第2の排紙側渡し胴ギア37gまたは紙取胴ギア38gと固定された第1の排紙側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37または紙取胴38の何れかに制動力付与装置80を設けるようにしても良い。
【0061】
また、図7に示すように、駆動ギア50gと印刷胴ギア33gとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で接続された印刷胴ギア33gと固定された印刷胴33に制動力付与装置80を設けたり、図8に示すように、駆動ギア50gと印刷胴ギア33gとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で印刷胴ギア33gに接続された第1の排紙側渡し胴ギア36gと固定された第1の排紙側渡し胴36に制動力付与装置80を設けたり、図9に示すように、駆動ギア50gと印刷胴ギア33gとの間に図示しない複数のギアが介在し、印刷胴ギア33gとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で接続された第1の排紙側渡し胴ギア36g、第2の排紙側渡し胴ギア37gまたは紙取胴ギア38gと固定された第1の排紙側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37または紙取胴38の何れかに制動力付与装置80を設けるようにしても良い。
【0062】
さらに、図10に示すように、印刷胴ギア33gbとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で接続された第1の排紙側渡し胴ギア36gではなく、その第1の排紙側渡し胴36と平行に配置され、印刷胴ギア33gbに直接または印刷胴ギア33gbとの間に図示しない複数のギアが介在した状態で接続された専用のギア81gに制動力付与装置80を連結するようにしても良い。すなわち、制動力付与装置80は、駆動ギア50gよりも駆動伝達方向の下流側で当該駆動ギア50gに噛合または歯車連結された何れかの歯車に制動力をかける様に設けられていれば良い。
【0063】
また、上述した実施の形態においては、磁性鉄粉68aが用いられた制動力付与装置80を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、制動力付与装置として例えば第1の排紙側渡し胴ギア36gにモータを取り付け、駆動ギア50gの駆動モータよりも僅かに低速で回転駆動することにより制動力を付与するようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1…デジタル印刷機、2…給紙部、3…デジタル印刷ユニット(処理部)、4…排紙部、21、41…積載台、23…サッカー装置、27…間欠給紙バルブ、31f…スイング装置、31b…反転スイング装置、32…給紙側渡胴、33…印刷胴、33g…印刷胴ギア(印刷胴歯車)、34…インクジェットノズル部、36…第1の排紙側渡胴、37…第2の排紙側渡胴、38…紙取胴、39…反転前倍胴、40…デリバリーベルト、50g…駆動ギア(駆動歯車)、80…制動力付与装置、FB…フィーダボード、S1…シート。
図1
図2
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図11